JP4368969B2 - 溶融金属めっき方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき鋼板へのスプラッシュ付着を防止する溶融金属めっき方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4を参照しながら通常のガスワイピング法による溶融金属めっきの原理について説明する。図4に示すように、浴(溶融金属浴の意、以下同じ)1内から垂直に鋼板Sを引き上げると、鋼板面には溶融金属が付着する。この付着した溶融金属をスリット状のワイピングノズル2から噴出するエア等のガスによって絞り落とす。ワイピングノズル2から噴出するガスの圧力を調整することによって所定のめっき厚を得る。これがガスワイピング法による溶融金属めっきの原理である。
【0003】
ワイピングノズル2から鋼板S面に向けて噴出したガスの一部は前記絞り落とし(ワイピング)に利用された後、鋼板Sに沿って下方に向かう気流3となって浴1面に衝突する。前記所定のめっき厚を薄く設定するいわゆる薄目付の場合、ワイピングノズル2から噴出するガスの圧力(ワイピング圧)が比較的高圧側に調整されるため、浴1面に衝突する気流3も比較的高圧のものとなる。そのため、浴1面に乱れが生じて溶融金属のスプラッシュ(飛沫)4が発生する。
【0004】
このスプラッシュ4がワイピング後のめっき面に付着すると、めっき鋼板の表面外観を著しく阻害し、しかもめっき厚が局部的に不均一になる原因となる。とくに、亜鉛−鉄合金めっきの場合には局部的な未合金化の原因となる。なお、図4において、6は浴1内での鋼板S支持・搬送に与るシンクロールであり、浴1を画定する浴槽、浴1入側の鋼板S(侵入板)をカバーするスナウト、ワイピングノズルにガスを供給するヘッダ等は図示を省略した。
【0005】
上記問題を解決策として、特開平5−306449号公報に、ワイピングノズル上方に鋼板面に沿ってフィルタを設けるという方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平5−306449号公報記載の方法では、フィルタが目詰まりを起こし、頻繁に交換する必要があって、メンテナンス負荷が大きく、また生産性を阻害する。また、目詰まりを回避するためにフィルタのメッシュを粗くするとスプラッシュが通過してしまう。また、図4のような、鋼板Sパスライン画定のための浴上サポートロール5を有するめっき装置では、上昇気流に乗ってフィルタと鋼板間に飛散したスプラッシュが浴上サポートロールに付着し、これがめっき面に押疵を作って製品表面不良の原因になる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決し、めっき鋼板あるいはさらに浴上サポートロールへのスプラッシュ付着を有効に防止できしかもメンテナンス負荷が小さく生産性を阻害しない溶融金属めっき方法および装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、実機装備された主ノズル(ワイピングノズルの意、以下同じ)の周囲をビデオ観察した結果、スプラッシュ欠陥の1/3 程度は主ノズル上方に生じる鋼板正面に向かう気流に乗って鋼板に付着したスプラッシュによるものであることが判明した。なお、残り2/3 は鋼板エッジからの飛散分と経路不明分とからなる。
【0009】
鋼板エッジからの飛散分によるスプラッシュ欠陥ついては、例えば、特開昭57−210966号公報や特開平4−221054号公報に開示されるように、浴面〜主ノズル間に設けた補助ノズル(エッジワイピングノズル)を用いて主ノズルの入側で鋼板エッジ部を軽くワイピングし、主ノズル部での絞り落とし量を減らすことにより相当程度まで防止できる。
【0010】
しかし、主ノズル上方に生じる鋼板正面に向かう気流は、これを前記特開平5−306449号公報記載技術のようにフィルタによって阻止しようとしても前記のようにフィルタが目詰まりを起こし、頻繁な交換を余儀なくされて、メンテナンス負荷が大きく、また生産性が悪化する。なお、目詰まり状態のままにしておくと、フィルタに代えて遮蔽板を設置したのと同じことになり、鋼板正面に向かう気流は阻止できても遮蔽板と鋼板との間の空間に煙突効果による上昇気流が生じて該空間が負圧化しそこへの鋼板エッジ側からの気流侵入を誘発し、このエッジ側からの侵入気流に乗ったスプラッシュが鋼板面に付着するため、かえってスプラッシュ欠陥の発生を助長する。
【0011】
そこで、本発明者らは、メンテナンス負荷が小さくかつ生産性を阻害しないスプラッシュ付着防止手段を鋭意検討し、その結果、主ノズルに整流板を設ける、または、堰を設けることにより、所望の効果を挙げることができるという知見を得て、本発明を完成した。
かくして完成された本発明の要旨とするところは、以下に記載の溶融金属めっき方法(3)および装置(6)、(7)にある。なお、方法(1)、(2)および装置(4)、(5)は参考発明である。
【0012】
(1)ワイピングノズルの上方および下方の鋼板を無囲いとした溶融金属めっき方法において、前記ワイピングノズル下方から後方を経て上方に回り込んで鋼板正面に向かう気流の流速を、前記ワイピングノズルの後方に張り出すように付設した整流板により弱めることを特徴とする溶融金属めっき方法。
(2)ワイピングノズルの上方および下方の鋼板を無囲いとした溶融金属めっき方法において、前記ワイピングノズル下方から後方を経て上方に回り込んで鋼板正面に向かう気流に乗って運ばれるスプラッシュを、前記ワイピングノズルの上面の前方側の端部に付設した堰により止めることを特徴とする溶融金属めっき方法。
【0013】
(3)前記気流に乗って運ばれるスプラッシュを、前記ワイピングノズルの上面の前方側の端部に付設した堰により止めることを特徴とする(1)記載の溶融金属めっき方法。
(4)ワイピングノズルの上方および下方の鋼板を無囲いとした溶融金属めっき装置において、前記ワイピングノズルにその後方に張り出した整流板を付設したことを特徴とする溶融金属めっき装置。
(5)ワイピングノズルの上方および下方の鋼板を無囲いとした溶融金属めっき装置において、前記ワイピングノズル上面の前方側の端部に堰を付設したことを特徴とする溶融金属めっき装置。
【0014】
(6)前記ワイピングノズル上面の前方側の端部に堰を付設したことを特徴とする(4)記載の溶融金属めっき装置。
(7)前記溶融金属めっき装置が、浴上サポートロールを有することを特徴とする(6)に記載の溶融金属めっき装置。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、参考発明に係る方法(1)、装置(4)の一実施形態を示す側断面模式図である。図1に示すように、装置(4)は、溶融金属めっき装置において、ワイピングノズル2にその後方に張り出した整流板7を設けたものであり、これにより、ワイピングノズル2下方から後方を経て上方に回り込んで鋼板S正面に向かう気流3の流速を整流板7により弱める方法(1)を好適に実施することができる。
【0016】
本発明者らの鋭意実験・計算により獲得した知見によれば、表面欠陥の原因となるスプラッシュは飛沫粒径2mm程度(溶融亜鉛飛沫の場合、重量約0.009g)以上のものであり、その浮上に要する下限速度は略4m/s である。一方、薄目付めっき操業では、浴1面からの反射上昇気流の流速は4.2 〜5.7m/s程度に達するのであるが、整流板7を設けることにより、気流がワイピングノズル後方に偏向されて鋼板正面に向かう流勢が減衰するから、この流速4.2 〜5.7m/s程度を略4m/s 以下に抑制することが可能となり、それゆえ、鋼板S正面からのスプラッシュ付着による表面欠陥の発生を確実に防止することができるのである。また、ワイピングノズル上方の鋼板S正面空間は縦に仕切られないから、煙突効果による鋼板エッジ側からの気流侵入も生じない。なお、整流板7のサイズや形状は、前記流速を略4m/s 以下に抑制できさえすれば、とくに限定されない。
【0017】
方法(1)によれば、整流板下面にスプラッシュが付着するが、この付着による重量増に耐える取付け構造としておけば、そこにいくら付着してもめっき鋼板の表面品質に悪影響を及ぼすことはなく、定期休工時までそのまま放置しておくことができ、メンテナンス負荷はほとんど無視できるくらい小さく、また、不定期の整流板交換を行う必要はないから生産性を阻害することもない。
【0018】
また、浴上サポートロール5を有する図1のような装置(7)では、整流板7の気流減衰作用により、鋼板S面だけでなく浴上サポートロール5へのスプラッシュ付着も有効に防止することができる。
図2は、参考発明に係る方法(2)、装置(5)の一実施形態を示す側断面模式図である。図2に示すように、装置(5)は、ワイピングノズル2の上方および下方の鋼板Sを無囲いとした溶融金属めっき装置において、ワイピングノズル2の上面の前方側の端部に堰8を設けたものであり、これにより、ワイピングノズル2下方から後方を経て上方に回り込んで鋼板S正面に向かう気流3に乗って運ばれるスプラッシュ4を堰8により止める方法(2)を好適に実施することができる。
【0019】
方法(2)は、方法(1)とは独立の手段であり、浴面反射気流を、浴面〜ワイピングノズル間では敢えて減衰させず、ワイピングノズル2上面の前方側の端部において堰8によりスプラッシュを補捉し、鋼板面へのスプラッシュ付着を阻止するものである。
堰高さ(ワイピングノズル2上面から堰8天端までの高さ)や堰形状は、スプラッシュを有効に止め得るものである限り任意選択可能であり、例えば薄目付めっき操業の場合、5mm程度以上の堰高さであれば、堰8前方へのスプラッシュ進出を十分に阻止することができる。
【0020】
方法(2)によれば、堰背後にスプラッシュが蓄積するが、堰高さを十分高くしておけばスプラッシュが堰前方に溢れ出ることはないから、めっき鋼板の表面品質に悪影響を及ぼすことはなく、定期休工時までそのまま放置しておくことができ、メンテナンス負荷はほとんど無視できるくらい小さく、また、不定期の堰交換を行う必要はないから生産性を阻害することもない。
【0021】
また、浴上サポートロール5を有する図2のような装置では、堰8のスプラッシュ進出阻止作用により、鋼板S面だけでなく浴上サポートロール5へのスプラッシュ付着も有効に防止することができる。
図3は、本発明に係る方法(3)、装置(6)、(7)の一実施形態を示す側断面模式図である。図3に示すように、装置(6)は、装置(4)、(5)を組み合わせたものであり、これにより、方法(1)、(2)を同時に実施することができる。方法(3)によれば、方法(1)、(2)の効果が重畳するので、最も有効にスプラッシュ欠陥の発生を防止することができる。整流板7、堰8は上記のようにメンテナンス負荷がごく小さく、また不定期交換せずともよいから生産性を阻害しない。また、図3に示した装置(7)において、鋼板Sのみならず浴上サポートロール5へのスプラッシュ付着をも防止できることはいうまでもない。
【0022】
【実施例】
薄目付めっき鋼板の製造に使用され、その際に表1に示すめっき条件にて操業される溶融亜鉛めっき設備(CGL)に本発明を適用した。このCGLのワイピングノズル部は、従来、図4に示した形態(例4;比較例)であったが、これを図1〜3に示す形態(例1,2;参考例、例3;実施例)に順次変更し、各例のスプラッシュ付着防止能を評価した。この防止能の評価指標は、鋼板1000mあたりの、鋼板面へのスプラッシュ付着個数(指標A)および浴上サポートロールへのスプラッシュ付着個数(指標B)とした。なお、例1〜3において、整流板張り出し幅は2000mm、堰高さは20mmとした。
【0023】
結果を表2に示す。表2に示すように、例4(比較例)では指標Aは0.5 、指標Bは0.25であるが、ワイピングノズルに整流板を設けた例1(参考例)、堰を設けた例2(参考例)で、それぞれ例4よりも指標値が低下し、整流板と堰を併設した例3(実施例)で、例1、例2よりも指標値がさらに低下し、本発明によるスプラッシュ付着防止効果が顕現した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、メンテナンス負荷が小さくかつ生産性を阻害することなく、めっき鋼板さらには浴上サポートロールへのスプラッシュ付着を有効に防止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】方法(1)、装置(4)、(7)の一実施形態を示す側断面模式図である。
【図2】方法(2)、装置(5)、(7)の一実施形態を示す側断面模式図である。
【図3】方法(3)、装置(6)、(7)の一実施形態を示す側断面模式図である。
【図4】スプラッシュ欠陥の発生機構を示す側断面模式図である。
【符号の説明】
1 浴(溶融金属浴)
2 ワイピングノズル
3 気流
4 スプラッシュ
5 浴上サポートロール
6 シンクロール
7 整流板
8 堰
S 鋼板
Claims (3)
- ワイピングノズルの上方および下方の鋼板を無囲いとした溶融金属めっき方法において、前記ワイピングノズル下方から後方を経て上方に回り込んで鋼板正面に向かう気流の流速を、前記ワイピングノズルの後方に張り出すように付設した整流板により弱め、および、前記気流に乗って運ばれるスプラッシュを、前記ワイピングノズルの上面の前方側の端部に付設した堰により止めることを特徴とする溶融金属めっき方法。
- ワイピングノズルの上方および下方の鋼板を無囲いとした溶融金属めっき装置において、前記ワイピングノズルにその後方に張り出した整流板を付設し、および、前記ワイピングノズルの上面の前方側の端部に堰を付設したことを特徴とする溶融金属めっき装置。
- 前記溶融金属めっき装置が、浴上サポートロールを有することを特徴とする請求項2記載の溶融金属めっき装置。
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