JP4368520B2 - 偏波面保持型利得等化器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報通信分野で用いられる利得等化器に関し、特に、偏波面保持型光増幅器用に用いられる偏波面保持型利得等化器を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
波長多重光通信の高密度化に伴い、偏波面を保持して光増幅を行う偏波面保持型光増幅器が開発されている。この偏波面保持型光増幅器は、波長多重光通信に用いられる場合、増幅波長帯域が広いことが必要となるが、単に増幅波長帯域が広いばかりでなく、波長の異なる複数の光信号に対して利得ができるだけ一定であることが要求される。このため、光増幅器自体の増幅波長依存性を打ち消すことを目的として、利得等化器を用いて利得の平坦化を行っている。
【0003】
このような利得等化器として、大別して、非偏波面保持型の利得等化器と、偏波面保持型の利得等化器とが開発されている。
このうち、非偏波面保持型の利得等化器としては、エタロン、誘電体多層膜等のバルク型利得等化器と、非偏波面保持型ファイバにグレーティングを形成するなどしたファイバ型利得等化器があり、一方の偏波面保持型の利得等化器としては、偏波面保持型ファイバにグレーティングを形成するなどしたファイバ型利得等化器がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの利得等化器はいずれも、無偏光の増幅光の利得等化を行うか、増幅光のうちX偏波のみまたはY偏波のみの利得等化を行うものであり、偏波面保持型の利得等化器として、X偏波とY偏波とをともに良好な特性で利得等化することはできなかった。
【0005】
偏波面保持型光増幅器により増幅された増幅光を、非偏波面保持型の利得等化器を用いて利得等化を行うと、偏波面保持型ファイバと非偏波面保持型の利得等化器との接続点において偏波クロストークの劣化が発生し、良好な偏波クロストークを実現することは困難であった。
【0006】
一方、偏波面保持型ファイバを用いて利得等化器を構成する場合には、X偏波とY偏波とでは、利得等化時に損失を受ける中心波長が異なり、X偏波とY偏波とに対する透過損失波長依存性を等しくすることができなかった。これは、充分な偏波面保存性能を持つファイバでは、通常複屈折率は10-4程度であり、これによってX偏波とY偏波とでは、損失を受ける中心波長が異なることによるものである。
偏波による損失の中心波長のずれは、短周期ファイバグレーティングの場合で0.3〜0.4nm、長周期ファイバグレーティングの場合は50〜200nm程度となり、X偏波とY偏波の両偏波に対して等価な損失波長依存性を持つ利得等化器を実現することは困難であった。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、例えば偏波面保持型光増幅器により増幅された増幅光の利得等化を行うにあたり、各偏波に対する透過損失波長依存性を等しくすることができる利得等化器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、信号光の偏波面を保持しつつ利得等化を行う偏波面保持型利得等化器であって、X偏波に対して利得等化を行う第1の利得等化器と、Y偏波に対して利得等化を行う第2の利得等化器とが縦続接続されてなり、前記第1の利得等化器および前記第2の利得等化器は、偏波面保持型ファイバを用いて形成された長周期ファイバグレーティングからなることを特徴とする偏波面保持型利得等化器である。
【0008】
請求項2記載の発明は、増幅媒体の増幅率が偏波依存性をもつ偏波面保持型光増幅器により増幅された信号光の偏波面を保持しつつ利得等化を行う偏波面保持型利得等化器であって、X偏波に対して利得等化を行う第1の利得等化器と、Y偏波に対して利得等化を行う第2の利得等化器とが縦続接続されてなり、前記第1の利得等化器および前記第2の利得等化器は、偏波面保持型ファイバを用いて形成された長周期ファイバグレーティングからなることを特徴とする偏波面保持型利得等化器である。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記長周期ファイバグレーティングは、単一周期を有する長周期ファイバグレーティングであることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記長周期ファイバグレーティングは、チャープ型長周期ファイバグレーティングまたは複数の周期を有する長周期ファイバグレーティングであることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の発明において、長周期ファイバグレーティングは、1箇所以上の位相シフト部位を有することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1、2、3、4は、本発明の偏波面保持型利得等化器の第1の例を示すものである。
図1は、この例による偏波面保持型利得等化器の構成を示すものである。
図1中、符号1は偏波面保持型光増幅器により増幅された信号光を伝送する光伝送路を示す。この光伝送路1は、第1の利得等化器2の入力端に接続されている。
この第1の利得等化器2の出力端には、光伝送路1を介して、第2の利得等化器3の入力端が接続され、この第2の利得等化器3の出力端には、光伝送路1が接続されている。この第1の利得等化器2と第2の利得等化器3とを接続する順番はこの逆であってもよい。
なお、第1の利得等化器2及び第2の利得等化器3が各々1個のみ接続されている場合に限られず、第1の利得等化器2及び第2の利得等化器3が各々2個以上接続されているものであってもよい。この場合にあっても、これらの利得等化器が接続されている順番は任意に選択できる。
【0013】
この、第1の利得等化器2及び第2の利得等化器3として、偏波面保持型ファイバを用いて形成された長周期ファイバグレーティングが用いられる。この長周期ファイバグレーティングは、単一周期の長周期ファイバグレーティングであってもよく、チャープ型長周期ファイバグレーティングまたは複数の周期を有する長周期ファイバグレーティングであってもよい。
チャープ型長周期ファイバグレーティングとは、グレーティング間隔について、ファイバの長手方向にわたって増加、減少等の変化を持たせた長周期ファイバグレーティングである。
さらに、これらの長周期ファイバグレーティングに1箇所以上の位相シフト部位が設けられたものであってもよい。
ここで、1箇所以上の位相シフト部位が設けられた長周期ファイバグレーティングとは、ファイバの長手方向について、グレーティングの基本周期を変化させた箇所を1箇所以上有する長周期ファイバグレーティングのことである。
【0014】
次に、この例の偏波面保持型利得等化器の動作例について説明する。
偏波面保持型光増幅器により増幅された信号光は、光伝送路1により伝送され、第1の利得等化器2に入射する。光通信に使用する波長帯域内において、この第1の利得等化器2によって、X偏波については、利得等化のため損失を生じさせたい波長の光について挿入損失を受ける一方、Y偏波については、Y偏波の受ける挿入損失は無視し得るほど充分に小さい。次に、信号光は第2の利得等化器3に入射する。使用する波長帯域内において、この第2の利得等化器3によって、X偏波については、X偏波の受ける挿入損失は無視し得るほど充分に小さいが、Y偏波については、利得等化のため損失を生じさせたい波長の光について挿入損失を受ける。
【0015】
このように、X偏波、Y偏波について別個の利得等化器によって、利得等化のための損失を受けるため、これらの利得等化器を通過した後の信号光は、挿入損失を受ける波長のずれを生じることなく、透過損失波長依存性が使用波長帯域において偏波依存性を持たない信号光となって光伝送路1上を伝送される。
【0016】
図2、3、4は、いずれも図1の構成による偏波面保持型利得等化器を実装したものの例である。
図2は、第1、第2の利得等化器2、3を独立したデバイスとし、第1の利得等化器2と第2の利得等化器3との間を光伝送路1で接続したものである。
【0017】
図3は、第1の利得等化器2と第2の利得等化器3との間で、導波モードと結合させるクラッドモードの次数をずらして、第1の利得等化器2と第2の利得等化器3との間のクラッドモードの干渉が生ずるのを防止して、単一のデバイスとしたものである。
【0018】
図4は、第1、第2の利得等化器2、3のクラッドに、Co等を添加して透過損失が大きくなるようにしたクラッドを有するファイバ4を挿入して、第1の利得等化器2と第2の利得等化器3との間のクラッドモードの干渉が生ずるのを防止して、単一のデバイスとしたものである。
【0019】
このような第1の例による偏波面保持型利得等化器においては、X偏波とY偏波の各々の偏波について利得等化を行うため、偏波による挿入損失の波長のずれを生じることがなく、各偏波に対する透過損失波長依存性を等しくすることができる。
【0020】
次に、本発明の偏波面保持型利得等化器の第2の例について説明する。
この例のものは、偏波面保持型の光増幅器において、増幅媒体の増幅率が偏波依存性(以下「増幅特性偏光依存性」という)をもつ場合に関するものである。
図1において、符号1は、増幅特性偏光依存性を有する偏波面保持型光増幅器により増幅された信号光を伝送する光伝送路を示す。光伝送路1、第1の利得等化器2、第2の利得等化器3の接続は、第1の例と同様である。
この例においても、第1の利得等化器2と第2の利得等化器3とを接続する順番は逆であってもよい。
また、第1の利得等化器2及び第2の利得等化器3が各々1個のみ接続されている場合に限られず、第1の利得等化器2及び第2の利得等化器3が各々2個以上接続されているものであってもよい。この場合にあっても、これらの利得等化器が接続されている順番は任意に選択できる。
【0021】
ここでは、増幅特性偏光依存性を有する偏波面保持型光増幅器として、例えば半導体増幅器等が用いられる。
第1の利得等化器2及び第2の利得等化器3として、偏波面保持型ファイバを用いて形成された長周期ファイバグレーティングが用いられることは、第1の例と同様である。この長周期ファイバグレーティングは、単一周期の長周期ファイバグレーティングであってもよく、チャープ型長周期ファイバグレーティングまたは複数の周期を有する長周期ファイバグレーティングであってもよい。さらに、これらの長周期ファイバグレーティングに1箇所以上の位相シフト部位が設けられたものであってもよいことも、第1の例と同様である。
【0022】
次に、この例の偏波面保持型利得等化器の動作例について説明する。
増幅特性偏光依存性を有する偏波面保持型光増幅器により増幅された信号光は、増幅媒体の増幅率が偏波依存性をもつため、X偏波とY偏波とで利得に差を生じている。このように偏波により利得の異なる増幅光は光伝送路1により伝送され、第1の利得等化器2に入射する。光通信に使用する波長帯域内において、この第1の利得等化器2によって、X偏波については、利得等化のため損失を生じさせたい波長の光について挿入損失を受ける一方、Y偏波については、Y偏波の受ける挿入損失は無視し得るほど充分に小さい。次に、信号光は第2の利得等化器3に入射する。使用する波長帯域内において、この第2の利得等化器3によって、X偏波については、X偏波の受ける挿入損失は無視し得るほど充分に小さいが、Y偏波については、利得等化のため損失を生じさせたい波長の光について挿入損失を受ける。
【0023】
このように、X偏波、Y偏波について別個に利得等化を受けるため、これらの利得等化器を通過した後の信号光は、挿入損失を受ける波長のずれを生じることなく、透過損失波長依存性が使用波長帯域において偏波依存性を持たない信号光となって光伝送路1上を伝送される。
これにより、増幅特性偏光依存性を有する偏波面保持型光増幅器による光増幅時に生じた増幅率の偏波依存性が解消される。
この第2の例においても、図2、3、4に示した偏波面保持型光増幅器用利得等化器を実装した例を用いることができることは、第1の例と同様である。
【0024】
このような第2の例による偏波面保持型利得等化器においては、X偏波とY偏波の各々の偏波について利得等化を行うため、増幅特性偏光依存性を有する偏波面保持型光増幅器による光増幅時に生じた増幅率の偏波依存性が解消され、各偏波に対する利得を等しくすることができる。
【0025】
(実施例)
以下、具体例を示す。
偏波面保持型ファイバを用いて長周期ファイバグレーティングを形成し、この長周期ファイバグレーティングを2つ縦続接続して偏波面保持型光増幅器用利得等化器を製作した。
なお、偏波面保持型ファイバとして、(株)フジクラ製1.55μm帯用PANDAファイバを使用した。
この例は、長周期ファイバグレーティングでは、挿入損失を受ける中心波長の偏光によるずれが50nmから200nm程度となることを利用して、光通信において使用する波長帯域内において、X偏波又はY偏波のみに対して挿入損失を与える長周期ファイバグレーティングを2つ製作し、この2つの長周期ファイバグレーティングを縦続接続して偏波面保持型光増幅器用利得等化器を製作したものである。
製作した2つの長周期ファイバグレーティングのX偏波、Y偏波に対する挿入損失の波長依存性を図5、図6に示す。
【0026】
図5は、第1の長周期ファイバグレーティングについてのX偏波、Y偏波に対する挿入損失の波長依存性を示したものである。この第1の長周期ファイバグレーティングのグレーティングピッチは322.5μm、グレーティング段数は112段、グレーティング長は36.1mmである。
第1の長周期ファイバグレーティングは、使用波長帯域である1500nmから1580nmの波長帯域内においては、X偏波に対してのみ損失のピークAを持ち、Y偏波に対してはこの損失ピークAよりも97nm短波長側にずれたところに損失ピークを生じるため、1500nmから1580nmの波長帯域内においてはY偏波に対する損失は充分に小さくなる。
【0027】
一方、図6は、第2の長周期ファイバグレーティングについてのX偏波、Y偏波に対する挿入損失の波長依存性を示したものである。この第2の長周期ファイバグレーティングのグレーティングピッチは386.5μm、グレーティング段数は90段、グレーティング長は34.8mmである。
第2の長周期ファイバグレーティングは、使用波長帯域である1500nmから1580nmの波長帯域内において、Y偏波に対してのみ損失のピークBを持ち、X偏波に対してはこの損失ピークBよりも116nm長波長側にずれたところに損失ピークを生じるため、1500nmから1580nmの波長帯域内においてはX偏波に対する損失は充分に小さくなる。
【0028】
この、第1、第2の長周期ファイバグレーティングを縦続接続し、X偏波、Y偏波に対する挿入損失を測定し、その測定結果を図7に示す。
図7のピークCに示すように、使用波長帯域である1500nmから1580nmの波長帯域内において、X偏波に対する第1の長周期ファイバグレーティングの損失ピークと、Y偏波に対する第2の長周期ファイバグレーティングの損失ピークとはほぼ一致している。
このように、2つの長周期ファイバグレーティングを縦続接続することにより、使用波長帯域において、偏波依存性を持たない利得等化器を実現することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数の利得等化器を縦続接続して、X偏波とY偏波の各々の偏波について利得等化を行うため、偏波による透過損失の波長のずれを生じることがなく、各偏波に対する透過損失波長依存性を等しくすることができる利得等化器の実現が可能である。
【0030】
また、偏波面保持型光増幅器が増幅特性偏光依存性を有する場合であっても、複数の利得等化器を縦続接続して、X偏波とY偏波の各々の偏波について利得等化を行うため、各偏波に対する利得を等しくすることができる利得等化器を提供することができる。
【0031】
さらに、利得等化器としてチャープ型長周期ファイバグレーティングや位相シフト部位を有する長周期ファイバグレーティングを用いることにより、部品数を減らして各偏波に対する利得を等しくすることができる利得等化器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1の例による偏波面保持型利得等化器の構成図である。
【図2】図2は、2つの利得等化器を各々単一のデバイスとして接続して構成した偏波面保持型利得等化器を示す図である。
【図3】図3は、2つの利得等化器を接続したものを単一のデバイスとして構成した偏波面保持型利得等化器を示す図である。
【図4】図4は、2つの利得等化器を、ドーパントを添加したクラッドを持つファイバで接続したものを単一のデバイスとして構成した偏波面保持型利得等化器を示す図である。
【図5】図5は、第1の長周期ファイバグレーティングについてのX偏波、Y偏波に対する挿入損失の波長依存性を示した図である。
【図6】図6は、第2の長周期ファイバグレーティングについてのX偏波、Y偏波に対する挿入損失の波長依存性を示した図である。
【図7】図7は、第1、第2の長周期ファイバグレーティングを縦続接続し、X偏波、Y偏波に対する挿入損失を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
1…光伝送路、2…第1の利得等化器、3…第2の利得等化器
Claims (5)
- 信号光の偏波面を保持しつつ利得等化を行う偏波面保持型利得等化器であって、
X偏波に対して利得等化を行う第1の利得等化器と、Y偏波に対して利得等化を行う第2の利得等化器とが縦続接続されてなり、
前記第1の利得等化器および前記第2の利得等化器は、偏波面保持型ファイバを用いて形成された長周期ファイバグレーティングからなることを特徴とする偏波面保持型利得等化器。 - 増幅媒体の増幅率が偏波依存性をもつ偏波面保持型光増幅器により増幅された信号光の偏波面を保持しつつ利得等化を行う偏波面保持型利得等化器であって、
X偏波に対して利得等化を行う第1の利得等化器と、Y偏波に対して利得等化を行う第2の利得等化器とが縦続接続されてなり、
前記第1の利得等化器および前記第2の利得等化器は、偏波面保持型ファイバを用いて形成された長周期ファイバグレーティングからなることを特徴とする偏波面保持型利得等化器。 - 前記長周期ファイバグレーティングは、単一周期を有する長周期ファイバグレーティングであることを特徴とする請求項1又は2記載の偏波面保持型利得等化器。
- 前記長周期ファイバグレーティングは、チャープ型長周期ファイバグレーティングまたは複数の周期を有する長周期ファイバグレーティングであることを特徴とする請求項1又は2記載の偏波面保持型利得等化器。
- 前記長周期ファイバグレーティングは、1箇所以上の位相シフト部位を有することを特徴とする請求項3又は4記載の偏波面保持型利得等化器。
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