JP4367581B2 - 高解像の撮影レンズ系 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は撮影レンズ系に関し、特にCCD等の固体撮像素子を用いた電子画像用の高解像の撮影レンズ系に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、60度以上の広画角を有する撮影レンズが、特公昭57−54767号公報や特公平1−53765号公報や特公平8−20593号公報などに開示されている。
なお、特公昭57−54767号公報は、主として銀塩写真用の光学系で用いる技術を開示している。また、特公平1−53765号公報および特公平8−20593号公報は、ITV用の光学系および電子画像用の光学系で用いる技術を開示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の各公報に開示された従来技術では、近年の撮像素子の画素の微細化に対して解像力が不足気味となっている。加えて、バックフォーカスを充分に長く確保することができないこと、射出瞳を像面から充分に遠ざけることができないこと、諸収差の補正、特に歪曲収差の補正が充分でないことのうちのいずれか1つの欠点を有する。その結果、従来技術にしたがう撮影レンズ系では、高解像な電子画像システム用の撮影レンズに適用するのに充分な解像力を保有していない。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の高解像な電子画像機器用の撮影レンズに適用するのに充分な解像力を有する撮影レンズ系を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明では、開口絞りと、該開口絞りの物体側に配置された負の屈折力を有する前方レンズ群GFと、前記開口絞りの像側に配置された正の屈折力を有する後方レンズ群GRとからなり
前記前方レンズ群GFは、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成された非球面を有する正レンズLAを少なくとも有し、
前記後方レンズ群GRは、物体側に凸面を向け且つ最大像高よりも大きい中心厚を有する負メニスカスレンズLUと、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成された非球面を有する正レンズLBとを少なくとも有し、
前記前方レンズ群GFは、負メニスカスレンズLMと、両凹レンズLRと、両凸レンズLWとを含み、
前記後方レンズ群GRは、前記負メニスカスレンズLUとの貼り合わせからなり全体として正の屈折力を有する接合レンズLSを含み、
前記負メニスカスレンズLMの中心厚をdMとし、前記接合レンズLSの中心厚をdSとし、最大像高をY0としたとき、
0.5<dM/Y0<5.0 (5)
1.5<dS/Y0<10.0 (6)
の条件を満足することを特徴とする撮影レンズ系を提供する。
【0006】
本発明の好ましい態様によれば、前記撮影レンズ系の最も物体側の面から像面までの光軸に沿った距離をTLとし、最大像高をY0とし、前記撮影レンズ系の焦点距離をfとし、像面から射出瞳までの光軸に沿った距離をEPとしたとき、
8.0<TL/Y0<25.0 (1)
−0.5<f/EP<0.5 (2)
の条件を満足する。
【0007】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、前記前方レンズ群GF中の前記正レンズLAは、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズであり、
前記後方レンズ群GR中の前記正レンズLBは、両凸レンズであり、
前記正メニスカスレンズLAの焦点距離をfLAとし、前記両凸レンズLBの焦点距離をfLBとし、前記正メニスカスレンズLAの最も像側の面と前記両凸レンズLBの最も物体側の面との間の光軸に沿った距離をDABとし、最大像高をY0としたとき、
2.0<fLA/fLB<30.0 (3)
5.0<DAB/Y0<25.0 (4)
の条件を満足する。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の電子画像機器用の撮影レンズに適する条件について説明する。
第1の条件は、光学的ローパスフィルターや色分解プリズム等を挿入するために、前述のように充分に長いバックフォーカスが確保されていることである。第2の条件は、シェーディングを回避するために、周辺光量が充分に確保され、射出瞳が像面から充分に離れていることである。
【0009】
このため、本発明では、物体側に負レンズ群(前方レンズ群GF)が配置され像側に正レンズ群(後方レンズ群GR)が配置されたレトロフォーカスタイプの構成を採用している。この構成の採用により、レンズ系全体の焦点距離に比して十分に長いバックフォーカスが確保し易くなっている。
また、充分なテレセン性を確保するには、開口絞りよりも像側の光学系全体の物側主点位置の近傍に開口絞りを配置する必要がある。本発明では、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの間の光路中において開口絞りを適切な位置に配置することにより、良好な結像性能を達成しつつ充分なテレセン性を確保することができることを見い出した。
【0010】
また、本発明においては、以上の構成に加えて、全長の比較的長い構成を採用し且つ非球面を効果的に使用することにより、高解像力を得ることに成功している。さらに、高解像力を得るには、中心厚の大きなレンズを用いることや、各レンズ群に適切な屈折力配分を施すことが重要であることも見い出した。
また、最も物体側に配置される正レンズと最も像側に配置される正レンズのうちの少なくともいずれか一方を回折作用を有する回折光学素子として機能させることにより、特に色収差に関して優れた補正が可能となり、その結果優れた光学性能を達成することができることを見い出した。
【0011】
以下、条件式の説明に沿って本発明の構成を説明する。
本発明においては、次の条件式(1)および(2)を満足することが望ましい。
8.0<TL/Y0<25.0 (1)
−0.5<f/EP<0.5 (2)
ここで、TLは撮影レンズ系の最も物体側の面から像面までの光軸に沿った距離であり、Y0は最大像高である。また、fは撮影レンズ系の焦点距離であり、EPは像面から射出瞳までの光軸に沿った距離である。なお、EPの符号は、射出瞳が像面よりも物体側にある場合には正とし、射出瞳が像面よりも後方にある場合には負とする。
【0012】
条件式(1)は、撮影レンズ系の第1面(最も物体側の面)から像面までの光軸に沿った距離(すなわち撮影レンズ系の全長)TLの最大像高Y0に対する比について適切な範囲を規定している。
一般に、高解像を目的とした光学系ではその全長が長くなりがちであるが、実用的な全長の長さと良好な結像性能とをバランスさせることはレンズの構成上極めて重要である。これは、瞳位置、バックフォーカスの大きさ、達成可能なFナンバー、軸外収差の発生量等が、全長TLの大きさに依存して大きく変わるためである。このように、撮影レンズ系の全長TLは、最終的に形成されるレンズ系の具体的な構成や達成性能に大きな影響を与えるため重要なファクターである。条件式(1)では、最大像高Y0で全長TLを規格化している。
【0013】
条件式(1)の上限値を上回ると、全長TLが長くなりすぎて、大型化しやすくなるだけでなく、レンズ径の増大を招いて、撮影レンズ系が実用に向かなくなってしまうので好ましくない。また、高次の像面湾曲、非点コマ収差が発生しやすくなり、画面周辺の解像の低下を招きやすくなるので好ましくない。
一方、条件式(1)の下限値を下回ると、全長TLが短くなりすぎて、充分なバックフォーカスを確保しにくくなるので好ましくない。また、像面湾曲および非点収差が発生しやすくなり、その結果、画面周辺の解像の低下を招きやすくなるので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(1)の上限値を20.0とし、下限値を10.0とすることが好ましい。
【0014】
条件式(2)は、撮影レンズ系の焦点距離と像面から射出瞳までの光軸に沿った距離との比について適切な範囲を規定している。
条件式(2)の上限値を上回ると、射出瞳位置が像面から遠くなりすぎて、開口絞りよりも後方の光学系(すなわち後方レンズ群GR)の径の大型化を招くので好ましくない。加えて、歪曲収差が負側に大きくなりやすく、結像性能の観点からも好ましくない。
【0015】
一方、条件式(2)の下限値を下回ると、バックフォーカスが小さくなりすぎて、フィルターやプリズム等を配置するためのスペースを確保しにくくなるので好ましくない。さらには、射出瞳が像面に近くなりすぎて、シェーディングが発生しやすくなるので好ましくない。
なお、開口絞りの位置は、それよりも後方の光学系の径の大型化を避けるために、その物側主点位置よりもやや像側にずらしておくことが望ましい。この観点から、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(2)の下限値を0.03とし、上限値を0.25とすることが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、正レンズLAは物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズであり、正レンズLBは両凸レンズであり、次の条件式(3)および(4)を満足することが望ましい。
2.0<fLA/fLB<30.0 (3)
5.0<DAB/Y0<25.0 (4)
ここで、fLAは正メニスカスレンズLAの焦点距離であり、fLBは両凸レンズLBの焦点距離である。また、DABは、正メニスカスレンズLAの最も像側の面と両凸レンズLBの最も物体側の面との間の光軸に沿った距離である。さらに、Y0は最大像高である。
【0017】
条件式(3)は、正メニスカスレンズLAの焦点距離fLAと両凸レンズLBの焦点距離fLBとの比について適切な範囲を規定している。すなわち、条件式(3)は、正メニスカスレンズLAと両凸レンズLBとに関して適切な屈折力配分を規定している。
本発明では、前方レンズ群GFに非球面を導入することは、諸収差のうちディストーションの補正および主光線よりも下側のコマ収差の補正に特に有効であることが判った。また、後方レンズ群GRに非球面を導入することは、十分なバックフォーカスを確保し且つ射出瞳を像面から十分に遠ざけつつ、諸収差のうちディストーションの補正および主光線よりも上側のコマ収差の補正に特に有効であることも判った。条件式(3)は、ともに非球面を有する正メニスカスレンズLAと両凸レンズLBとに関して見い出した適切な近軸屈折力配分を規定している。
【0018】
条件式(3)の上限値を上回ると、正メニスカスレンズLAの焦点距離fLAが大きくなりすぎて、ディストーションが負側に大きくなり易く、さらには主光線よりも下側の光線にコマ収差が発生しやすくなる。その結果、全体の収差バランスを失いやすくなるので好ましくない。
一方、条件式(3)の下限値を下回ると、両凸レンズLBの焦点距離fLBが大きくなりすぎて、ディストーションが正側に大きくなり易く、さらには主光線よりも上側の光線にコマ収差が発生しやすくなる。その結果、全体の収差バランスを失いやすくなるので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(3)の上限値を25.0とし、下限値を3.0とすることが好ましい。
【0019】
本発明においては、前方レンズ群GF中の正メニスカスレンズLAの非球面および後方レンズ群GR中の両凸レンズLBの非球面がともに、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成されることが好ましいことも見い出した。これは、両方のレンズの非球面において、局所的な曲率半径の大きさが光軸から離れるにしたがって大きくなることを意味している。また、前方レンズ群GFを光学系の最も物体側に配置し、後方レンズ群GRを光学系の最も像側に配置することが最も効果的であることを見い出した。さらに、仮に非球面を使用しない場合、像面湾曲およびコマ収差に関して十分な補正をすることができないために高解像力を達成することが不可能であることも判った。
【0020】
なお、正メニスカスレンズLAおよび両凸レンズLBは、片側のレンズ面だけが非球面状に形成されていても、両側のレンズ面がともに非球面状に形成されていてもよい。しかしながら、片側のレンズ面だけを非球面状に形成する場合、正メニスカスレンズLAの像側の面および両凸レンズLBの物体側の面を非球面状に形成することが望ましい。これは、鏡胴のメカニカルな構成上、非球面を直接胴付きとすることにより、組み込み偏芯による性能劣化を減少させる構造をとることができるからである。
【0021】
条件式(4)は、正メニスカスレンズLAと両凸レンズLBとの配置に関して適切な範囲を示すものである。具体的には、正メニスカスレンズLAの最も像側の面と両凸レンズLBの最も物体側の面との軸上距離DABを最大像高Y0で規格化した値について適切な範囲を規定している。
条件式(4)の上限値を上回ると、軸上距離DABが大きくなりすぎて、高次の像面湾曲やコマ収差が発生しやすくなるため、全体の収差バランスを失いやすくなるので好ましくない。また、非球面の製造公差が厳しくなる傾向となるので、この観点からも好ましくない。
【0022】
一方、条件式(4)の下限値を下回ると、軸上距離DABが小さくなりすぎて、コマ収差や像面湾曲の補正の自由度が少なくなるので好ましくない。特に、主光線よりも下側のコマ収差の補正が困難となり、更にはペッツバール和が正側に過大となりやすい。その結果、全体の収差バランスを失いやすくなるので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(4)の上限値を13.0とし、下限値を8.0とすることが好ましい。
【0023】
また、本発明においては、前方レンズ群GFが負メニスカスレンズLMと両凹レンズLRと両凸レンズLWとを含み、後方レンズ群GRが負メニスカスレンズLUとの貼り合わせからなり全体として正の屈折力を有する接合レンズLSを含み、次の条件式(5)および(6)を満足することが望ましい。
0.5<dM/Y0<5.0 (5)
1.5<dS/Y0<10.0 (6)
ここで、dMは負メニスカスレンズLMの中心厚であり、dSは接合レンズLSの中心厚であり、Y0は最大像高である。
【0024】
条件式(5)は、前方レンズ群GF中の負メニスカスレンズLMの中心厚dMと最大像高Y0との比について適切な範囲を規定している。
条件式(5)の上限値を上回ると、負メニスカスレンズLMの中心厚が大きくなりすぎて、レンズ成分そのものが大きくなり、全体の小型化および軽量化に不利になるので好ましくない。また、ペッツバール和が過大に負側に変移し、その結果、像面湾曲が正側に甚大となるので好ましくない。
一方、条件式(5)の下限値を下回ると、主光線よりも下側のコマ収差が発生し易くなってしまうので好ましくない。また、ペッツバール和が正側に過大に変移し、その結果、像面湾曲が負側に甚大となるので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(5)の上限値を3.0とし、下限値を0.8とすることが好ましい。
【0025】
条件式(6)は、後方レンズ群GR中の接合レンズLSの中心厚dSと最大像高Y0との比について適切な範囲を規定している。
条件式(6)の上限値を上回ると、接合レンズLSの中心厚が大きくなりすぎて、レンズ成分そのものが大きくなり、全体の小型化および軽量化に不利になるので好ましくない。また、ペッツバール和が負側に変移し、その結果、像面湾曲が正側に甚大となるので好ましくない。
一方、条件式(6)の下限値を下回ると、主光線よりも下側のコマ収差が発生し易くなってしまうので好ましくない。また、ペッツパール和が正側に変移し、その結果、像面湾曲が負側に甚大となるので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(6)の上限値を4.0とし、下限値を2.3とすることが好ましい。
【0026】
また、本発明においては、次の条件式(7)および(8)を満足することが望ましい。
2.0<Φ1/Y0<12.0 (7)
0.015<fLB/fLS<2.0 (8)
ここで、Φ1は撮影レンズ系の最も物体側の面の有効径であり、Y0は最大像高である。また、fLBは正レンズLBの焦点距離であり、fLSは接合レンズLSの焦点距離である。
【0027】
条件式(7)は、撮影レンズ系の最も物体側の面の光線が通過する有効径Φ1と最大像高Y0との比について適切な範囲を規定している。前方レンズ群GFの正レンズLAが最も物体側に配置されている場合、Φ1は正レンズLAの物体側の有効径となる。
条件式(7)の上限値を上回ると、有効径が大きくなりすぎて、光学系全体の大型化を招きやすくなるので好ましくない。加えて、迷光が混入しやすくなり、その結果、結像性能が劣化しやすくなるので好ましくない。
一方、条件式(7)の下限値を下回ると、有効径が小さくなりすぎて、周辺光量が不足がちとなり、画面周辺での明るさ不足となりやすいので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(7)の上限値を8.0とし、下限値を3.0とすることが好ましい。
【0028】
条件式(8)は、後方レンズ群GRの内部の屈折力配分を規定する条件式であって、正レンズLBの焦点距離fLBと接合レンズLSの焦点距離fLSとの比について適切な範囲を規定している。
条件式(8)の上限値を上回ると、充分なバックフォーカスを確保しにくくなるので好ましくない。また、正レンズLBでの収れんが強くなりすぎて、全体の収差バランスを失いやすくなり、特に球面収差およびコマ収差の補正が困難となるので好ましくない。
一方、条件式(8)の下限値を下回ると、バックフォーカスは確保しやすくなるものの、正レンズLBでの偏角が大きくなりすぎて、コマ収差の補正が困難となるので好ましくない。また、ペッツバール和が正側に変移しやすくなるため、像面湾曲が負側に過大となりやすく、この観点からも好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(8)の上限値を1.2とし、下限値を0.02とすることが好ましい。
【0029】
また、実際に本発明の撮影レンズ系を構成する際は、前述の諸条件に加えて、以下の条件式(9)〜(11)を満たすことが望ましい。
−3.0<(Rbm+Ram)/(Rbm−Ram)<−0.2 (9)
−5.0<(Rbu+Rau)/(Rbu−Rau)<−1.5 (10)
1.5<BF/Y0<10.0 (11)
ここで、Ramは負メニスカスレンズLMの最も物体側の面の曲率半径であり、Rbmは負メニスカスレンズLMの最も像側の面の曲率半径である。また、Rauは負メニスカスレンズLUの最も物体側の面の曲率半径であり、Rbuは負メニスカスレンズLUの最も像側の面の曲率半径である。さらに、BFは撮影レンズ系のバックフォーカスであり、Y0は最大像高である。
【0030】
条件式(9)および(10)は、負メニスカスレンズLMの形状因子(シェイプファクター)および負メニスカスレンズLUの形状因子について適切な範囲を規定している。すなわち、条件式(9)および(10)では、負メニスカスレンズLMおよび負メニスカスレンズLUについて、良好な結像性能を達成することのできる形状であって生産技術的に良好な形状を規定している。
条件式(9)の上限値を上回ると、像面湾曲が正側に過大となるので好ましくない。また、加工しにくい形状となって、生産技術的に無理が生じるので好ましくない。
一方、条件式(9)の下限値を下回ると、歪曲収差が負側に過大となるので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(9)の上限値を−1.5とし、下限値を−2.0とすることが好ましい。
【0031】
条件式(10)の上限値を上回ると、球面収差が正側に過大となって、良好な結像性能を得ることができなくなるので好ましくない。また、加工しにくい形状となって、生産技術的に無理が生じるので好ましくない。
一方、条件式(10)の下限値を下回ると、歪曲収差が負側に過大となるだけでなく、表面反射によるゴーストが発生しやすくなるので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(10)の上限値を−2.0とし、下限値を−3.5とすることが好ましい。
【0032】
条件式(11)は、最大像高に対するバックフォーカスの大きさについて適切な範囲を規定している。
条件式(11)の上限値を上回ると、バックフォーカスが大きくなりすぎて、光学系全体の大型化を招くので好ましくない。また、後玉径が大きくなりすぎて、光学系全体の大型化を招きやすい。加えて、歪曲収差が負側に大きくなりやすく、結像性能の観点からも好ましくない。
一方、条件式(11)の下限値を下回ると、バックフォーカスが小さくなりすぎて、フィルターやプリズム等を配置するためのスペースを確保しにくくなるので好ましくない。さらに、射出瞳が像面に近くなりすぎて、シェーディングが発生しやすくなるので好ましくない。
なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するには、条件式(11)の上限値を3.5とし、下限値を2.0とすることが好ましい。
【0033】
また、実際に光学系を構成する際は、以上の諸条件に加えて、以下の条件を満たすことが望ましい。
まず、諸収差を充分良好に補正するには、撮影レンズ系を、物体側から順に、正レンズLAと、負メニスカスレンズLMと、両凹レンズLRと、両凸レンズLWと、開口絞りと、接合レンズLSと、正レンズLBとから構成することが好ましい。
【0034】
正レンズLAは、前述の通り非球面を有するだけでなく、その基本的な形状も画角に対して強い構造をとることができるように、物体側に凸面を向けた正メニスカス形状にすることが望ましい。
レンズLMも同様に、画角に対して強い構造をとることができるように、物体側に凸面を向けた負メニスカス形状とすることが望ましい。また、ペッツバール和の補正のために、中心厚の大きい構造とすることが望ましい。一般的に、中心厚を十分に大きく確保することは、製造時に所望の形状に加工しやすく且つ製造誤差も発生しにくいため、生産技術上の観点からも好ましい。
【0035】
レンズLRは、収差補正上(特に主光線よりも下側の光線のコマ収差の補正上)、両凹形状が望ましく、像側の面よりも物体側の面の方が曲率半径の絶対値が大きいことが望ましい。両凹レンズLRは、負メニスカスレンズLMとは逆に、中心厚が最大像高よりも小さいことが望ましい。
レンズLWは、球面収差および主光線よりも下側の光線に対するコマ収差の補正のため、両凸形状であることが望ましく、その屈折率は1.55以上であることが望ましい。さらに、最大像高以上の中心厚を有することが、結像性能上の観点からも生産技術上の観点からも好ましい。
【0036】
前述したように、接合レンズLSは、特に軸上色収差の補正上、正屈折力の接合レンズであることが望ましい。具体的には、接合レンズLSは、物体側に凸面を向け且つ最大像高よりも大きい中心厚を有する負メニスカスレンズLUと両凸レンズとからなる接合レンズであることが望ましい。これは、厚肉の負メニスカスレンズLUによって、ペッツバール和を減じて適切にコントロールすることができるのみならず、その強い負屈折力によってテレセン性を確保し易いからである。
正レンズLBは、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成された非球面を有する両凸レンズであって、最大像高以上の中心厚を有することが結像性能上も生産技術上も好ましい。この非球面形状は、特に主光線よりも上側の光線のコマ収差の補正に対して特に有効である。
【0037】
以下、各レンズを形成するガラス(光学材料)に関して述べる。
まず、諸収差を十分良好に補正するには、開口絞りよりも物体側のレンズ成分は、屈折率が1.65以上で且つアッベ数が45以上のガラスで形成されることが望ましい。特に、負メニスカスレンズLMの屈折率が1.75以上であることが望ましい。一方、開口絞りよりも像側において、アッベ数が80以上の低分散ガラスからなるレンズ成分を少なくとも1枚有することが望ましい。
また、開口絞りの具体的な位置は、前述の条件式(2)を満たしつつ、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの間の光路中に配置することが望ましい。合焦時(フォーカシング時)には、開口絞りを光軸に沿って移動させることなく固定としても良い。
【0038】
後方レンズ群GRを3枚のレンズで構成する場合、1枚の負レンズと2枚の正レンズとで構成することが望ましい。より具体的には、像側に曲率の強い凹面を向けた中心厚の大きい負メニスカスレンズLUと両凸レンズとからなる正屈折力の接合レンズLSと、非球面を有する両凸レンズLBとから構成することが望ましい。また、接合レンズLSは発散性の接合面を有し、次の条件式(12)および(13)を満足することが望ましい。
Δν>35 (12)
Δn>0.25 (13)
ここで、Δνは、接合レンズLSの接合面を挟んだ2つのレンズのアッベ数の差である。また、Δnは、接合レンズLSの接合面を挟んだ2つのレンズのd線(λ=587.6nm)に対する屈折率の差である。
【0039】
また、諸収差をさらに良好に補正し且つ結像性能をさらに高めるには、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの屈折力配分も重要であって、以下の条件式(14)を満足することが望ましい。
−50<fR/fF<−1.5 (14)
ここで、fFおよびfRは、それぞれ前方レンズ群GFおよび後方レンズ群GRの焦点距離である。なお、前述した通り、レトロフォーカスタイプのレンズ系の構成上、開口絞りよりも前側の前方レンズ群GFは負屈折力を有し、後側の後方レンズ群GRは正屈折力を有する。
条件式(14)を満足することにより、十分なバックフォーカスを得ることができるとともに、像面湾曲やコマ収差の良好なバランスを得ることができる。
【0040】
以下、近距離物体への合焦(フォーカシング)について述べる。
まず、後方レンズ群GRを光軸に沿って移動させて近距離物体へのフォーカシングを行う合焦方式には、いくつかの利点がある。まず第1に、撮影レンズ系を構成するレンズ群のうち後方レンズ群GRは比較的小型に構成することができるため、後方レンズ群GRを合焦レンズ群にすることがメカ構成上の観点から有利であり、この合焦方式は例えばオートフォーカス機構に対して好適である。
また、この合焦方式では、合焦に伴う収差変動が少なく、近距離合焦状態においても良い結像性能が得られるので、結像性能上も有利である。このとき、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの間は略平行系であることが望ましい。
【0041】
さらに、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの空気間隔を変化させながら前方レンズ群GFおよび後方レンズ群GRの両方を繰り出す合焦方式(いわゆるフローティング方式)の場合、画面周辺の結像性能を極めて良好に保ちつつフォーカシングを行うことが可能である。このときも、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの間は略平行系であることが望ましい。
なお、撮影倍率の大きさが大きくなるにしたがって被写界側の深度が浅くなるためピントがはずれ易くなるという不都合があるが、オートフォーカスシステムと組み合わせることによりピントずれを防ぐことができる。
【0042】
また、本発明では、後方レンズ群GRに、回折作用によるレンズ面(以下、「回折レンズ面」という)を導入することにより、特に色収差に関して優れた補正が可能であり、その結果さらに優れた光学性能を達成することができることを見い出した。以下、この点について詳述する。
一般に、光線を屈曲させる作用として、屈折作用、反射作用、および回折作用の3種類が知られている。本発明において、「回折レンズ面」とは、光波としての回折作用を利用することにより光線を屈曲させて、種々の光学作用を得ることのできるレンズ面をいう。具体的には、回折レンズ面は、負分散を生じさせることができること、小型化しやすいことなどにおいて数々の利点を有し、特に色収差の優れた補正が可能であることが知られている。
【0043】
なお、回折光学素子の性質および高屈折率法による設計手法に関しては、「応用物理学会日本光学会監修の回折光学素子入門」に詳細が掲載されている。図7は、高屈折率法による回折レンズ面がレンズ面上に形成された様子をモデル化して示す図である。図7では、レンズ1の一方のレンズ面に高屈折率ガラスからなる層2(図中斜線で示す)が形成されている。この高屈折率ガラス層2は、レンズ1の中心から周辺に向かって所定の光路差分布を有し、その表面は非球面状に形成されている。このように、図7に示すレンズ1の一方のレンズ面の上には、高屈折率法による回折レンズ面が形成されている。
本発明においては、後方レンズ群GRのいずれかの面に回折レンズ面を形成することが結像性能の向上に有効であることを見い出した。
【0044】
まず、電子画像用のレンズ系にとって重要な条件は、バックフォーカスを十分に大きく確保すること、および射出瞳を像面から十分に遠ざけることであることは前述した通りである。これは、電子画像用のレンズ系においてその最も物体側の部分または最も像側の部分で各光線高が高くなること(光軸からの距離が大きくなること)を示しており、収差の発生が大きくなりやすいことを意味している。本発明において、正レンズLAや正レンズLBに非球面や回折レンズ面を導入することは、収差の発生を抑えて良好な収差補正を可能とする。本発明においては、正レンズLBの非球面は上側コマ収差および像面湾曲の補正に有効であり、回折レンズ面は倍率の色収差および主光線よりも上側の光線のコマ収差の色差の補正に有効であることが判った。本発明においては、特に後方レンズ群GR中に回折レンズ面を配置することが良好な色収差補正に有効であって、特に正レンズLBに配置することが効果的であることを見い出した。
【0045】
また、結像光学系に回折レンズ面を使用する場合、高次の回折光によるフレアの問題が指摘されているが、電子画像の場合は画像信号の直流成分を適宜にカットすることにより十分に実用的な画像を得ることができるため、あまり問題とはならない。
なお、回折レンズ面の屈折力は、弱い正屈折力であることが望ましい。これは、特に倍率色収差の補正のために必要である。そして、回折レンズ面の焦点距離fdは、後方レンズ群GRの焦点距離fRの50倍以上で且つ100倍以下であることが好ましい。
さらに、本発明においては、もともと屈折面として非球面状に形成されたレンズLAやLBのレンズ面に回折作用を有するキノフォームまたはマルチレベルのバイナリ層を付加することが生産技術上好ましいことも見い出した。以下、この点について更に説明する。
【0046】
一般に、ガラスモールド法で非球面レンズを形成する場合、いわゆる「型」を作り、その「型」の形状を転写した多数のレプリカをガラスで安価に且つ精度良く作っている。したがって、もともと屈折面として非球面状に形成されたレンズ面の上に回折レンズ面を形成するには、その「型」にキノフォームまたはバイナリ層を付加するだけで良い。この方法は、コストアップおよび工程時間の増加をそれほど招かずに済むため、実用的価値が高い。特に、レンズ面にバイナリ層を付加する方法は、半導体チップの製造方法と似通っているため、より実用的価値が高い。図8は、高屈折率法で求めた光路差関数からキノフォームを求め、8レベルのバイナリ形状に変換する一連の流れ手順を示している。なお、レンズ面を平面状または球面状に形成し、その表面に薄い透明な樹脂層を付加して、キノフォームまたはバイナリ形状を作成しても良い。
【0047】
また、本発明の撮影レンズ系の一部のレンズまたはレンズ群を光軸とほぼ直交する方向に変位させることにより、防振(レンズ系のブレに起因する像位置のブレを補正すること)を行うことも可能である。また、後方レンズ群GRの一部またはその全体を防振レンズ群として光軸とほぼ直交する方向に変位させることにより、防振を行うことも可能である。このとき、防振レンズ群は、少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズとを有することが好ましい。
さらに、本発明のレンズ系を構成する各レンズに対して、非球面レンズ、回折光学素子、屈折率分布型レンズ等をさらに用いることにより、さらに良好な光学性能を得ることができることは言うまでもない。
【0048】
【実施例】
以下、本発明の各実施例を、添付図面に基づいて説明する。
各実施例において、本発明の撮影レンズ系は、開口絞りSの物体側に配置された負の屈折力を有する前方レンズ群GFと、開口絞りSの像側に配置された正の屈折力を有する後方レンズ群GRとから構成されている。
【0049】
各実施例において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をxとし、頂点曲率半径をrとし、円錐定数をκとし、n次の非球面係数をCn としたとき、以下の数式(a)で表される。また、第3実施例において、高屈折率法による回折レンズ面の非球面も同様に、以下の数式(a)で表される。
【数1】
Figure 0004367581
各実施例において、非球面状に形成されたレンズ面には面番号の右側に*印を付している。また、第3実施例において、回折レンズ面の非球面には面番号の右側に**印を付している。
【0050】
〔第1実施例〕
図1は、本発明の第1実施例にかかる撮影レンズ系のレンズ構成を示す図である。第1実施例では、電子画像機器用の撮影レンズに本発明を適用している。
図1の撮影レンズ系において、前方レンズ群GFは、物体側から順に、物体側に凸面を向け且つ像側の面が非球面状に形成された正メニスカスレンズLAと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズLMと、両凹レンズLRと、両凸レンズLWとから構成されている。
【0051】
また、後方レンズ群GRは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズLUと両凸レンズとの貼り合わせからなる接合正レンズLSと、物体側の面が非球面状に形成された両凸レンズLBとから構成されている。
なお、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの間の光路中には開口絞りSが配置され、両凸レンズLBと像面との間の光路中には平行平面板(フィルター)Fが配置されている。また、正メニスカスレンズLAの像側の非球面および両凸レンズLBの物体側の非球面は、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成されている。
【0052】
次の表(1)に、本発明の第1実施例の諸元の値を掲げる。表(1)において、fは焦点距離を、FNOはFナンバーを、2ωは画角を、φSは開口絞り径をそれぞれ表している。また、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序を、rはレンズ面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径)を、dはレンズ面の間隔を、n(d)およびn(g)はそれぞれd線(λ=587.6nm)およびg線(λ=435.8nm)に対する屈折率を、νはアッベ数をそれぞれ示している。
【0053】
【表1】
Figure 0004367581
Figure 0004367581
(条件式対応値)
TL=49.75
EP=38.81
Y0=3.3
fLA=73.184
fLB=12.084
DAB=32.25
dM=6
dS=9.5
Φ1=19.2
fS=32.286
BF=8.802
Δν=57.78
Δn=0.34966
fF=−27.041
fR=11.309
f =6.007
(1)TL/Y0=15.076
(2)f/EP=0.1548
(3)fLA/fLB=6.056
(4)DAB/Y0=9.773
(5)dM/Y0=1.818
(6)dS/Y0=2.879
(7)Φ1/Y0=5.818
(8)fLB/fLS=0.374
(9)(Rbm+Ram)/(Rbm−Ram)=−1.891
(10)(Rbu+Rau)/(Rbu−Rau)=−2.557
(11)BF/Y0=2.667
(12)Δν=57.78
(13)Δn=0.34966
(14)fR/fF=−2.391
【0054】
図2は、第1実施例の無限遠合焦状態における諸収差図である。
各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を、dはd線(λ=587.6nm)を、gはg線(λ=435.8nm)をそれぞれ示している。また、非点収差を示す収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。
各収差図から明らかなように、第1実施例では、諸収差が良好に補正され、高解像力が達成されていることがわかる。
【0055】
〔第2実施例〕
図3は、本発明の第2実施例にかかる撮影レンズ系のレンズ構成を示す図である。第3実施例においても第1実施例と同様に、電子画像機器用の撮影レンズに本発明を適用している。
図3の撮影レンズ系において、前方レンズ群GFは、物体側から順に、物体側に凸面を向け且つ像側の面が非球面状に形成された正メニスカスレンズLAと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズLMと、両凹レンズLRと、両凸レンズLWとから構成されている。
【0056】
また、後方レンズ群GRは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズLUと両凸レンズとの貼り合わせからなる接合正レンズLSと、物体側の面が非球面状に形成された両凸レンズLBとから構成されている。
なお、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの間の光路中には開口絞りSが配置され、両凸レンズLBと像面との間の光路中には平行平面板(フィルター)Fが配置されている。また、正メニスカスレンズLAの像側の非球面および両凸レンズLBの物体側の非球面は、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成されている。
【0057】
次の表(2)に、本発明の第2実施例の諸元の値を掲げる。表(2)において、fは焦点距離を、FNOはFナンバーを、2ωは画角を、φSは開口絞り径をそれぞれ表している。また、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序を、rはレンズ面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径)を、dはレンズ面の間隔を、n(d)およびn(g)はそれぞれd線(λ=587.6nm)およびg線(λ=435.8nm)に対する屈折率を、νはアッベ数をそれぞれ示している。
【0058】
【表2】
Figure 0004367581
Figure 0004367581
(条件式対応値)
TL=50.01
EP=72.01
Y0=3.3
fLA=200.677
fLB=8.904
DAB=34.222
dM=2.83183
dS=9.66972
Φ1=19.94
fS=322.617
BF=7.601
Δν=57.78
Δn=0.34966
fF=−315.193
fR=11.364
f =4.200
(1)TL/Y0=15.155
(2)f/EP=0.05833
(3)fLA/fLB=22.538
(4)DAB/Y0=10.370
(5)dM/Y0=0.858
(6)dS/Y0=2.930
(7)Φ1/Y0=6.042
(8)fLB/fLS=0.0276
(9)(Rbm+Ram)/(Rbm−Ram)=−2.969
(10)(Rbu+Rau)/(Rbu−Rau)=−2.066
(11)BF/Y0=2.303
(12)Δν=57.78
(13)Δn=0.34966
(14)fR/fF=−27.736
【0059】
図4は、第2実施例の無限遠合焦状態における諸収差図である。
各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を、dはd線(λ=587.6nm)を、gはg線(λ=435.8nm)をそれぞれ示している。また、非点収差を示す収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。
各収差図から明らかなように、第2実施例では、諸収差が良好に補正され、高解像力が達成されていることがわかる。
【0060】
〔第3実施例〕
図5は、本発明の第3実施例にかかる撮影レンズ系のレンズ構成を示す図である。第3実施例においても第1実施例および第2実施例と同様に、電子画像機器用の撮影レンズに本発明を適用している。
図5の撮影レンズ系において、前方レンズ群GFは、物体側から順に、物体側に凸面を向け且つ像側の面が非球面状に形成された正メニスカスレンズLAと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズLMと、両凹レンズLRと、両凸レンズLWとから構成されている。
【0061】
また、後方レンズ群GRは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズLUと両凸レンズとの貼り合わせからなる接合正レンズLSと、物体側の面が非球面状に形成された両凸レンズLBとから構成されている。そして、両凸レンズLBの物体側の非球面(面番号14)上に回折レンズ面(面番号13)が形成されている。この回折レンズ面は、光軸に関して回転対称な光路差分布を有する位相面であって、回折次数として+1次の回折光を用いるように構成されている。
なお、前方レンズ群GFと後方レンズ群GRとの間の光路中には開口絞りSが配置され、両凸レンズLBと像面との間の光路中には平行平面板(フィルター)Fが配置されている。また、正メニスカスレンズLAの像側の非球面および両凸レンズLBの物体側の非球面は、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成されている。
【0062】
次の表(3)に、本発明の第3実施例の諸元の値を掲げる。表(3)において、fは焦点距離を、FNOはFナンバーを、2ωは画角を、φSは開口絞り径をそれぞれ表している。また、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序を、rはレンズ面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径)を、dはレンズ面の間隔を、n(d)およびn(g)はそれぞれd線(λ=587.6nm)およびg線(λ=435.8nm)に対する屈折率を、νはアッベ数をそれぞれ示している。
【0063】
【表3】
Figure 0004367581
Figure 0004367581
(条件式対応値)
TL=48.558
EP=32.059
Y0=3.3
fLA=73.184
fLB=13.789
DAB=32.118
dM=6
dS=8.02339
Φ1=19.95
fS=22.929
BF=7.638
Δν=57.78
Δn=0.34966
fF=−27.041
fR=11.239
f =5.999
fd=647.55
(1)TL/Y0=14.715
(2)f/EP=0.1871
(3)fLA/fLB=5.307
(4)DAB/Y0=9.733
(5)dM/Y0=1.818
(6)dS/Y0=2.431
(7)Φ1/Y0=6.045
(8)fLB/fLS=0.601
(9)(Rbm+Ram)/(Rbm−Ram)=−1.891
(10)(Rbu+Rau)/(Rbu−Rau)=−3.038
(11)BF/Y0=2.315
(12)Δν=57.78
(13)Δn=0.34966
(14)fR/fF=−2.406
fd/fR=57.616
【0064】
図6は、第3実施例の無限遠合焦状態における諸収差図である。
各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を、dはd線(λ=587.6nm)を、gはg線(λ=435.8nm)をそれぞれ示している。また、非点収差を示す収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。
各収差図から明らかなように、第3実施例では、諸収差が良好に補正され、第1実施例および第2実施例よりも高解像力が達成されていることがわかる。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の電子画像機器用の撮影レンズに好適な高解像の撮影レンズ系を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例にかかる撮影レンズ系のレンズ構成を示す図である。
【図2】第1実施例の無限遠合焦状態における諸収差図である。
【図3】本発明の第2実施例にかかる撮影レンズ系のレンズ構成を示す図である。
【図4】第2実施例の無限遠合焦状態における諸収差図である。
【図5】本発明の第3実施例にかかる撮影レンズ系のレンズ構成を示す図である。
【図6】第3実施例の無限遠合焦状態における諸収差図である。
【図7】高屈折率法による回折レンズ面がレンズ面上に形成された様子をモデル化して示す図である。
【図8】高屈折率法で求めた光路差関数からキノフォームを求め、8レベルのバイナリ形状に変換する一連の流れ手順を示している。
【符号の説明】
GF 前方レンズ群
GR 後方レンズ群
S 開口絞り
F 平行平面板(フィルター)
L 各レンズ成分

Claims (14)

  1. 開口絞りと、該開口絞りの物体側に配置された負の屈折力を有する前方レンズ群GFと、前記開口絞りの像側に配置された正の屈折力を有する後方レンズ群GRとからなり
    前記前方レンズ群GFは、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成された非球面を有する正レンズLAを少なくとも有し、
    前記後方レンズ群GRは、物体側に凸面を向け且つ最大像高よりも大きい中心厚を有する負メニスカスレンズLUと、光軸から離れるにしたがって正の屈折力が弱くなるように形成された非球面を有する正レンズLBとを少なくとも有し、
    前記前方レンズ群GFは、負メニスカスレンズLMと、両凹レンズLRと、両凸レンズLWとを含み、
    前記後方レンズ群GRは、前記負メニスカスレンズLUとの貼り合わせからなり全体として正の屈折力を有する接合レンズLSを含み、
    前記負メニスカスレンズLMの中心厚をdMとし、前記接合レンズLSの中心厚をdSとし、最大像高をY0としたとき、
    0.5<dM/Y0<5.0 (5)
    1.5<dS/Y0<10.0 (6)
    の条件を満足することを特徴とする撮影レンズ系。
  2. 前記撮影レンズ系の最も物体側の面から像面までの光軸に沿った距離をTLとし、最大像高をY0とし、前記撮影レンズ系の焦点距離をfとし、像面から射出瞳までの光軸に沿った距離をEPとしたとき、
    8.0<TL/Y0<25.0 (1)
    −0.5<f/EP<0.5 (2)
    の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮影レンズ系。
  3. 前記前方レンズ群GF中の前記正レンズLAは、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズであり、
    前記後方レンズ群GR中の前記正レンズLBは、両凸レンズであり、
    前記正メニスカスレンズLAの焦点距離をfLAとし、前記両凸レンズLBの焦点距離をfLBとし、前記正メニスカスレンズLAの最も像側の面と前記両凸レンズLBの最も物体側の面との間の光軸に沿った距離をDABとし、最大像高をY0としたとき、
    2.0<fLA/fLB<30.0 (3)
    5.0<DAB/Y0<25.0 (4)
    の条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮影レンズ系。
  4. 前記撮影レンズ系の最も物体側の面の有効径をΦ1とし、最大像高をY0とし、前記正レンズLBの焦点距離をfLBとし、前記接合レンズLSの焦点距離をfLSとしたとき、
    2.0<Φ1/Y0<12.0 (7)
    0.015<fLB/fLS<2.0 (8)
    の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
  5. 前記負メニスカスレンズLMの最も物体側の面の曲率半径をRamとし、前記負メニスカスレンズLMの最も像側の面の曲率半径をRbmとし、前記負メニスカスレンズLUの最も物体側の面の曲率半径をRauとし前記負メニスカスレンズLUの最も像側の面の曲率半径をRbuとし、前記撮影レンズ系のバックフォーカスをBFとし、最大像高をY0としたとき、
    −3.0<(Rbm+Ram)/(Rbm−Ram)<−0.2 (9)
    −5.0<(Rbu+Rau)/(Rbu−Rau)<−1.5 (10)
    1.5<BF/Y0<10.0 (11)
    の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
  6. 前記撮影レンズ系は、物体側から順に、前記正レンズLAと、前記負メニスカスレンズLMと、前記両凹レンズLRと、前記両凸レンズLWと、前記開口絞りと、前記接合レンズLSと、前記正レンズLBとから構成され、
    前記両凸レンズLWおよび前記正レンズLBは、最大像高Y0よりも大きい中心厚を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
  7. 前記接合レンズLSは、発散性の接合面を有し、
    前記接合レンズLSの接合面を挟んだ2つのレンズのアッベ数の差をΔνとし、前記接合レンズLSの接合面を挟んだ2つのレンズのd線に対する屈折率の差をΔnとしたとき、
    Δν>35 (12)
    Δn>0.25 (13)
    の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
  8. 前記前方レンズ群GFの焦点距離をfFとし、前記後方レンズ群GRの焦点距離をfRとしたとき、
    −50<fR/fF<−1.5 (14)
    の条件を満足することを特徴とする請求項乃至7のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
  9. 前記後方レンズ群GRは、回折作用を有する回折光学素子を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
  10. 前記回折光学素子は、前記正レンズLBのレンズ面の上に形成された回折レンズ面であることを特徴とする請求項9に記載の撮影レンズ系。
  11. 前記回折レンズ面は、前記正レンズLBの非球面の上に形成されていることを特徴とする請求項10に記載の撮影レンズ系。
  12. 前記撮影レンズ系は、前記後方レンズ群GR中に配置されて回折レンズ面を形成する回折光学素子を有し、
    前記回折レンズ面の焦点距離fdは、前記後方レンズ群GRの焦点距離fRの50倍以上で且つ100倍以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
  13. 前記撮影レンズ系は、前記後方レンズ群GR中に配置されて回折レンズ面を形成する回折光学素子を有し、
    前記回折光学素子は、レンズ表面に樹脂層で形成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
  14. 前記後方レンズ群GRを光軸に沿って移動させて近距離物体への合焦を行うことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の撮影レンズ系。
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