JP4366462B2 - 循環水系の洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水系やボイラ水系などの工業用の循環水系の洗浄方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、配管などにスケールが付着して洗浄が必要になった装置や機器類を、運転を中断することなく該スケールを洗浄除去する循環水系の洗浄方法に関する。
【0002】
【従来技術】
各種工業用の循環水系、ことに冷却水系やボイラ水系においては、循環水中の硬度成分や溶存塩類に起因して、炭酸カルシウムのようなカルシウム塩、リン酸亜鉛のような亜鉛塩や酸化鉄のような腐食生成物がスケールとして系内(例えば、熱交換器のチューブ)に付着する。スケールの付着は循環水系の伝熱効率を低下させるため、スケールの発生を防止あるいはできるだけ抑制する必要がある。
【0003】
他方、水の有効利用の観点から、最近、循環水を再利用する頻度がますます高まってきており、循環水中の硬度成分や溶存塩類は濃縮化されて高濃度となる傾向にある。このような状況においては、スケールの発生頻度はますます高くなる。
【0004】
上記の問題を解決するために、従来から、循環水に添加してスケールの発生を防止あるいは抑制する薬剤、いわゆるスケール防止剤が用いられてきた。これらの薬剤としては、例えば、ポリアクリル酸系重合体類、有機ホスホン酸類および有機キレート剤などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらのスケール防止剤を添加しても、完全にスケールの付着を防止あるいは抑制することができず、経時的にスケールの付着量が増加して、熱交換器などの伝熱効率が低下する傾向にあった。このような傾向は、循環水を再利用する循環水系、および熱交換効率の向上のために伝熱部の伝熱量を増大させた循環水系において特に顕著であった。
【0006】
そこで、循環水系へのスケール防止剤の添加に加えて、一般に半年から2〜3年周期で循環水系の水循環を完全に停止し、付着したスケールの除去作業を行っている。この除去方法としては、高圧スプレー、ブラッシングおよびピグ洗浄などの機械(物理)洗浄と、付着したスケール成分を溶解除去する薬剤による化学洗浄に大別される。
【0007】
化学洗浄としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびNTA(ニトリロ三酢酸)などのポリアミノカルボン酸型キレート化剤またはそれらのアルカリ金属塩;クエン酸、グルコン酸およびヒドロキシ酢酸などのヒドロキシカルボン酸型キレート化剤またはそれらのアルカリ金属塩;塩酸およびスルファミン酸などの無機酸または有機酸;水酸化ナトリウム、過酸化水素などの薬剤等が用いられている。
【0008】
例えば、特開昭59−20479号公報には、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸および界面活性剤を含有する酸性洗浄剤組成物が開示されている。
また、特公平7−23600号公報には、ケイ酸アルミニウムおよびグルコン酸ソーダを含有するpH10以上のアルカリ性水溶液を洗浄液として用いる、紙パルプ製造工程におけるスケールの洗浄方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、上記のような洗浄作業は、定期的に循環水系の水循環を停止しなければならなかったり、作業自体が煩雑であったり、あるいは高価な機械や高濃度の洗浄剤を使用したりするため、満足できるものではなかった。特に、化学洗浄の場合には、洗浄作業中のガスの発生、発泡現象、洗浄廃液の処理および鉄系配管の腐食などの問題に留意する必要があった。
よって、熱交換器などの伝熱効率が低下した場合に、循環水系の水循環を停止しないで該水系の配管などに付着したスケールを除去する簡便な方法が望まれていた。
【0010】
そこで、上記の公報に記載されているような酸性洗浄剤やアルカリ性洗浄剤をスケール防止剤として運転中の循環水系に添加することがまず考えられる。
しかしながら、循環水のpHが5未満では、循環水系の鉄系配管が腐食し、循環水系の寿命を短くする恐れがあるので、通常運転時に酸性洗浄剤を用いることはできない。また、循環水のpHが10を超えると炭酸カルシウムを主成分とするスケールが再析出し易くなるので、通常運転時にアルカリ性洗浄剤を用いることもできない。
【0011】
現に、ヒドロキシカルボン酸またはそのアルカリ金属塩単独の酸性洗浄剤を用いた場合、pH2以下では洗浄効果があるが、pH5以上ではほとんど洗浄効果がない。また、アミノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩単独の洗浄剤を用いた場合、洗浄効果を得るためには多くの添加量を必要とし、特に腐食生成物に対する洗浄効果が不十分であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、工業用循環水系の配管などに付着したスケールを循環水系の水循環を停止しないで簡便に除去する、より経済的な循環水系の洗浄方法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、スケールの洗浄剤として公知の脂肪族のジカルボン酸、ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種と、脂肪族ポリアミノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種とを有効成分とする洗浄剤をpH5〜10で使用すると効果的であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0014】
すなわち、本発明によれば、循環水系の排水量をゼロにするか、あるいは循環水系の通常運転時の排水量より少なくし、循環水に脂肪族のジカルボン酸、ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種(A)と、脂肪族ポリアミノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種(B)とを循環水量に対して0.5〜100g/lの割合で添加し、pHを5〜10に維持して循環水系内に付着したスケールを除去するのに十分な時間、循環水系内の水を循環させた後、循環水系の排水量を循環水系の通常運転時の排水量より増加させることを特徴とする循環水系の洗浄方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明における「循環水」としては工業用の循環水、例えば、冷却対象を熱交換器や電磁コイルなどを介して冷却する間接冷却水系の冷却水およびボイラ水などが挙げられる。このような冷却水を用いる具体的な例としては、火力発電所および原子力発電所の発電ボイラの復水器の冷却、石油化学工場の製品の冷却および製鉄所の炉体冷却などが挙げられる。
【0016】
本発明の方法で除去対象となる「系内に付着したスケール」としては、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムなどのカルシウム塩、リン酸亜鉛などの亜鉛塩ならびに酸化鉄(主に、三酸化二鉄)および水酸化鉄などの金属の腐食生成物が挙げられる。
【0017】
本発明の洗浄方法で用いられる洗浄剤は、脂肪族のジカルボン酸、ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種(A)と、脂肪族ポリアミノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種(B)とからなる。
【0018】
A成分の「脂肪族ジカルボン酸」としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸およびフマル酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。
また、A成分の「脂肪族ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸」としては、グリコール酸、乳酸およびグルコン酸などの脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、酒石酸およびリンゴ酸などの脂肪族ヒドロキシジカルボン酸、ならびにクエン酸などの脂肪族ヒドロキシトリカルボン酸などが挙げられる。
【0019】
「脂肪族ジカルボン酸」および「脂肪族ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸」のアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などが挙げられる。
本発明の洗浄剤のA成分は上記の化合物群から選択される少なくとも1種であり、中でもグルコン酸、リンゴ酸およびクエン酸が特に好ましい。
【0020】
一方、B成分の「脂肪族ポリアミノカルボン酸」としては、脂肪族ポリアミノ酢酸が好ましく、具体的には、ニトリロ三酢酸(略称:NTA)、エチレンジアミン四酢酸(略称:EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(略称:DTPA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(略称:GEDTA)および1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(trans-シクロヘキサン−1,2−ジアミン四酢酸、略称:Cy−DTA)などが挙げられる。
【0021】
「脂肪族ポリアミノカルボン酸」のアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などが挙げられる。具体的には、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩(以下、「NTA・3Na」と略称する)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(以下、「EDTA・2Na」と略称する)、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(以下、「EDTA・4Na」と略称する)、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(以下、「DTPA・5Na」と略称する)、グリコールエーテルジアミン四酢酸四ナトリウム塩(以下、「GEDTA・4Na」と略称する)および1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(以下、「Cy−DTA・4Na」と略称する)などが挙げられる。
本発明の洗浄剤のB成分は上記の化合物群から選択される少なくとも1種であり、中でもDTPAおよびDTPA・5Naが特に好ましい。
【0022】
本発明の洗浄剤におけるA成分とB成分との併用割合は、重量比で10:1〜1:40、好ましくは4:1〜1:30、より好ましくは2:1〜1:15である。この範囲の併用割合であれば、十分にスケールを溶解除去することができる。
【0023】
本発明の洗浄方法は、循環水に上記の洗浄剤を添加し、循環水を所定のpHに維持して、系内に付着したスケールを除去するのに十分な時間、系内の水を循環させる。
【0024】
本発明の洗浄方法に用いられる洗浄剤は、循環水量に対して0.5〜100g/l、好ましくは1〜50g/l、より好ましくは10〜40g/lの割合で添加する。
洗浄剤の添加量が0.5g/l未満の場合には、スケール成分を十分に溶解することができず、スケールを除去することができないので好ましくない。また、100g/lを超える量の洗浄剤を添加してもスケールの溶解除去効果のさらなる向上は期待できず、経済的に好ましくない。
【0025】
洗浄剤は、循環水量に応じた量を一度に、または少量を連続的に添加してもよい。しかし、良好なスケール溶解除去効果を得るためには、洗浄剤を一度に添加して速やかに有効濃度にするのが、経済的にも作業効率の点からも好ましい。
【0026】
本発明の洗浄方法は、循環水系の水循環を停止しないでスケールを除去することができるが、該水系の排水(ブロー水)量をゼロにするか、あるいは通常より少なくすることにより、該水系中の洗浄剤の有効濃度の低下を抑えて、スケールの溶解除去効果を維持させることができる。
【0027】
本発明の洗浄方法では、循環水に上記の洗浄剤を添加し、循環水のpHを5〜10、好ましくは7.5〜8.5に維持する。
この範囲外のpH域では、十分なスケールの溶解除去効果が得られないばかりか、前記のような問題が発生する。すなわち、pHが5未満の場合には、循環水系の鉄系配管が腐食し易くなり、装置の寿命を縮めてしまうので好ましくない。また、pHが10を超える場合には、炭酸カルシウムを主成分とするスケールが再析出し易くなるので好ましくない。
【0028】
循環水のpHは、必要に応じて循環水にpH調整剤を添加して、上記の範囲に維持する。具体的には、循環水系内にpH調整剤の添加点とpH測定点を設け、pHの測定結果に応じて、pH調整剤を添加すればよく、公知の装置および方法を用いることができる。
【0029】
pH調整剤は、本発明に用いる洗浄剤のスケール溶解除去効果を阻害しないものであれば、特に限定されない。酸としては、例えば、塩酸、硫酸および硝酸などの無機酸が挙げられ、アルカリとしては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。
【0030】
「系内に付着したスケールを除去するのに十分な時間」は、洗浄剤の組成や添加量、循環水の水温やpH、循環水中の溶存イオン、スケール成分の種類や量により変動するが、通常、12〜72時間、好ましくは12〜48時間である。この範囲の時間であれば、十分にスケールを溶解除去することができる。
【0031】
本発明の洗浄処理の終了、すなわち「系内に付着したスケールを除去するのに十分な時間」に達したことを知るためには、循環水の水質を経時的に測定し、その数値の連続線が飽和に達する点を見極めればよい。
水質の測定項目としては、カルシウム硬度、全硬度、鉄イオン濃度、濁度および電気伝導度などが挙げられる。これらの測定項目は適用場面によって適宜選択することができ、2項目以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の洗浄処理の終了後には、該水系の排水量を通常より増加して、洗浄剤および溶出したスケール成分を該水系から排出するのが好ましい。
該水系に洗浄剤および溶出したスケール成分が残留すると、スケール成分が部分的に濃縮され、再度スケールとして析出する場合があるので好ましくない。
【0033】
本発明の洗浄方法は、公知の脂肪族のジカルボン酸、ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種と、脂肪族ポリアミノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種とを有効成分とする洗浄剤をpH5〜10で使用することを特徴とし、工業用循環水系の配管などに付着したスケールを循環水系の水循環を停止しないで除去することができるので、極めて簡便であり、経済的でもある。
前記のように、脂肪族のジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸およびアミノカルボン酸は、いずれも単独ではスケール除去効果が劣るのに、これらの洗浄剤を本発明の条件下で使用すると、以下の試験で示されるような優れた効果が得られる。このような本発明のスケールの溶解除去効果は意外な事実である。
【0034】
【実施例】
この発明を製剤例および試験例により以下に説明するが、これらの製剤例および試験例によりこの発明が限定されるものではない。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
試験例1(炭酸カルシウムの溶解試験)
容量500mlのビーカーに試験水として大阪市の上水道水500mlを入れ、製剤例の洗浄剤1〜8および比較製剤例の比較洗浄剤1〜2をそれぞれ所定量添加し、これに塩酸または水酸化ナトリウムを添加して試験水を所定のpHに調整した。
【0041】
次いで、試験水のカルシウム硬度が2000mg CaCO3/lになるように、試験水に炭酸カルシウム試薬を添加し、スターラーで24時間撹拌した。攪拌後、試験水のカルシウム硬度を測定した。
得られた結果を、用いた洗浄剤とその添加量および試験水のpHとともに表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
試験例2(鉄の腐食生成物の溶解試験)
容量500mlのビーカーに試験水として大阪市の上水道水500mlを入れ、脂肪族ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸と脂肪族ポリアミノカルボン酸のナトリウム塩とを所定の割合で合計2.0g/l添加し、さらに塩酸または水酸化ナトリウムを添加して試験水をpH7に調整した。
【0044】
次いで、試験水の入ったビーカーに予め腐食させておいた鉄のテストピース(材質:SS−41、寸法:50×30×1.0mm)を入れ、試験水をスターラーで撹拌しながら24時間放置した。放置後、テストピースの外観および試験水に溶解した鉄錆(腐食生成物)の重量を測定した。
得られた結果を、用いた洗浄剤の構成成分とその併用割合とともに表2に示す。
【0045】
テストピースの外観は以下の基準により評価した。
◎:鉄錆がすべて溶解する。テストピース表面の鉄錆がすべて除去される。
○:鉄錆の大部分が溶解する。テストピース表面に鉄錆が一部残るが、表面を擦ると除去される。
△:鉄錆の一部が溶解する。テストピース表面に鉄錆が残り、擦っても除去されない。
×:テストピース表面に変化がなく、鉄錆がほとんど溶解していない。
【0046】
【表2】
【0047】
試験例3(炭酸カルシウムの溶解試験)
容量500mlのビーカーに試験水として大阪市の上水道水500mlを入れ、DTPA・5Naとクエン酸とを所定の割合で合計3.0g/l添加し、さらに塩酸または水酸化ナトリウムを添加して試験水をpH7に調整した。
【0048】
次いで、試験水のカルシウム硬度が2000mg CaCO3/lになるように、試験水に炭酸カルシウム試薬を添加し、スターラーで24時間撹拌した。攪拌後、試験水のカルシウム硬度を測定した。
得られた結果を、用いた洗浄剤の構成成分とその併用割合とともに表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
試験例4(熱交換器チューブにおける洗浄試験)
某化学会社の循環開放冷却水系において、熱交換器チューブに炭酸カルシウムを主体とし酸化鉄を含有するスケールが付着し、熱交換効率が低下したため、本発明の方法により水系を洗浄した。
【0051】
すなわち、上記の熱交換器を通常通り運転しながら、冷却水系に並設された冷却水ピットに製剤例の洗浄剤1を水系の保有水量(=循環水量、約20m3 )に対して30g/lの割合で添加した。次いで、水系の排水を停止し(ブロー水なし)、洗浄剤を含む系内の水を2日間循環させた。その後、ブロー水量を通常運転の3倍に増加させ、本発明の方法による洗浄を終了した。
洗浄中の循環水のpHは7.5〜7.9であった。
【0052】
洗浄前、洗浄中(1日後)および洗浄後(2日後)に、前記水系の冷却水ピットで循環水を約500ml採取し、それらの水質を分析した。
得られた結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
上記の表に示されているように、スケールを形成する炭酸カルシウムおよび酸化鉄が水中に溶出した。すなわち,熱交換器チューブに付着していた固形分のスケールが除去された。
水質分析の結果によれば、水中のカルシウム硬度は112mg CaCO3/l、鉄イオンは31.85mg Fe /lそれぞれ増加している。これらの数値に保有水量(20m3 )を乗すると、カルシウムスケールが炭酸カルシウムとして2.24kg、腐食生成物がFeとして0.64kg、Fe2 O3 として0.91kgとなり、これらに相当するスケールが除去できたことになる。
【0055】
また、上記の試験中に水系の冷却水ピットに鉄のテストピース(材質:SS−41、寸法:50×30×1.0mm)を浸漬しておいたが、テストピースは腐食しなかった。
【0056】
試験例5(電磁コイルにおける洗浄試験)
某製鉄所の循環開放冷却水系において、電磁コイルに炭酸カルシウムを主体とするスケールが付着し、熱伝導率が低下したため、本発明の方法により水系を洗浄した。
【0057】
すなわち、上記の電磁コイルを通常通り運転しながら、冷却水系に並設された冷却水ピットに製剤例の洗浄剤1を水系の保有水量(=循環水量、33m3 )に対して13.3g/lの割合で添加した。次いで、水系の排水を停止し(ブロー水なし)、洗浄剤を含む系内の水を26時間循環させた。その後、ブロー水量を通常運転の3倍に増加させ、本発明の方法による洗浄を終了した。
洗浄中の循環水のpHは7.8〜8.6であった。
洗浄前および洗浄後に、前記水系の冷却水ピットで循環水を約500ml採取し、試験例4と同様にそれらの水質を分析した。
【0058】
その結果、炭酸カルシウムが水中に溶出したことから、電磁コイルに付着していた固形分のスケールが除去されたことがわかる。
水質分析の結果によれば、水中のカルシウム硬度は250mg CaCO3/l増加した。この数値に保有水量(33m3 )を乗すると、カルシウムスケールが炭酸カルシウムとして、約8.3kgとなり、これに相当するスケールが除去できたことになる。
【0059】
また、上記の試験中に水系の冷却水ピットに鉄のテストピース(材質:SS−41、寸法:50×30×1.0mm)を浸漬しておいたが、テストピースは腐食しなかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、工業用循環水系の配管、特に熱交換器等のチューブに付着(沈積)したスケールを、熱交換器等の装置や機器類を停止することなく、簡便な操作で、より経済的に洗浄・除去することができ、熱交換器等の伝熱効果の低減を速やかに解消することができる。
しかも、鉄系金属への腐食を伴わないため、循環水系の寿命を延ばすことができる。
Claims (6)
- 循環水系の排水量をゼロにするか、あるいは循環水系の通常運転時の排水量より少なくし、循環水に脂肪族のジカルボン酸、ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種(A)と、脂肪族ポリアミノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の少なくとも1種(B)とを循環水量に対して0.5〜100g/lの割合で添加し、pHを5〜10に維持して循環水系内に付着したスケールを除去するのに十分な時間、循環水系内の水を循環させた後、循環水系の排水量を循環水系の通常運転時の排水量より増加させることを特徴とする循環水系の洗浄方法。
- 前記A成分とB成分との併用割合が重量比で10:1〜1:40である請求項1に記載の洗浄方法。
- 前記脂肪族ジカルボン酸がシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸またはフマル酸であり、前記脂肪族ヒドロキシモノ、ジもしくはトリカルボン酸がグリコール酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸である請求項1または2に記載の洗浄方法。
- 前記脂肪族ポリアミノカルボン酸がニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グルコールエーテルジアミン四酢酸または1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸である請求項1〜3のいずれか1つに記載の洗浄方法。
- 前記スケールを除去するのに十分な時間が、12〜72時間である請求項1〜4のいずれか1つに記載の洗浄方法。
- 前記循環水が、工業用の循環水である請求項1〜5のいずれか1つに記載の洗浄方法。
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