JP4366048B2 - 電子写真用部材の製造方法および該方法により製造された電子写真用部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電潜像を担持する潜像担持体に形成された潜像を担持体により担持搬送される現像剤にて現像するのに用いられる電子写真法に関し、特に円筒状もしくは円柱状の基体および該基体上に形成された表面被覆層を有する電子写真法に用いられる部材およびこれを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子写真法としては多数の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナー(現像剤)で現像を行って可視像とするものである。これらを必要に応じて紙等の転写材にトナー像を転写した後、熱、圧力等により転写材上にトナー画像を定着することで複写物を得ることができる。これらの電子写真法の各プロセスにおいては、例えば図8に見られるように円筒状の部材もしくは円柱状の部材が数多く使用されている。より具体的には現像スリーブ(現像剤担持体)、感光ドラム、帯電ローラ、転写ローラ、及び定着ローラ等がある。
【0003】
これらの円筒状もしくは円柱状の部材にはそれぞれ抵抗調整や帯電付与、トナー付着防止、均一な表面凹凸形成などを目的として、金属や金属酸化物粒子、炭素系粒子、セラミック系粒子、樹脂粒子、固体潤滑剤粒子、導電性粒子といった種々の粒子を目的に応じて溶媒又は溶媒に溶解された樹脂に分散した塗料を用いて基体表面に被覆層を形成して用いられることが一般的である。例えば現像剤担持体においては、トナーへの帯電付与の適正化やトナーの搬送性のために均一な表面の凹凸を形成する目的として、金属酸化物など導電性粒子、荷電制御剤などの粒子を分散含有した樹脂層を基体表面に形成したものが提案されている。具体的には現像剤担持体への表面被覆層形成の例として、特開平1−277265号公報や特開平3−200986号公報には、現像剤担持体のトナーへの過剰帯電(チャージアップ)を防止することを目的として導電性基体上に導電性微粒子を含有する樹脂被覆層が形成されたものが開示されている。
【0004】
また帯電部材における被覆層形成の例としては、従来のコロナ帯電器に代わり低オゾン・低電力等の利点を有する接触系の帯電装置である帯電用ゴムローラに、抵抗調整を目的として導電性粒子などを分散した被覆層が用いられている。
【0005】
さらにまた磁気ブラシ帯電装置では、例えば特開平08−254880号公報には、磁気ブラシ帯電部材の磁気粒子担持体表面を磁気粒子の搬送性を安定させるために導電性粒子や凹凸形成粒子を含有した表面被覆層を形成したものが提案されている。
【0006】
また定着ローラの例としては、トナーが定着ローラ表面に転移するオフセット現象の発生を抑制するために定着ローラとトナーとの離型性を向上させることを目的として、例えば特開平06−186881号公報には、PTFEなどのフッ素樹脂からなる表面被覆層を定着ローラ表面に形成したものが開示されている。
【0007】
一般にこれらの表面被覆層を基体上に形成する方法としては、目的に応じて金属や金属酸化物粒子、炭素系粒子、セラミック系粒子、樹脂粒子、固体潤滑剤粒子、導電性粒子といった種々の粒子を樹脂に分散した塗料をディッピング法、スプレー法、はけ塗り法などによって形成する方法がある。これらの形成法の中でスプレー法は表面被覆層の均一性、すなわち塗布ムラや塗布欠陥を抑え密着性に富む表面被覆層を形成するための安価で工業的に優れた生産技術であるため広く用いられている。
【0008】
前記のスプレー法により表面被覆層を形成する方法としては、より具体的には、エアーにより霧化する方法、ディスク等を高速回転しメカ的に霧化する方法、塗料自体に圧力を与えて噴出させて外気と衝突させることにより霧化する方法、超音波振動により霧化する方法等がある。これらのスプレー法の中でもエアースプレー法は、塗料を微粒子化する力が強く、幅広い範囲の塗料粘度においても均一なスプレー化が可能なため、好ましく用いられている。エアースプレー法により表面被覆層を形成する方法としては、本出願人が開示した特許第2886593号公報に記載されている方法などがある。
【0009】
しかしながら、昨今電子写真の高画質化や電子写真装置の高速化に伴って画像品質に大きな影響を与える現像部材や帯電部材に求められる表面物性や耐久性が一層高度なものになってきている。このために高画質化や高速化に耐える性能を長期にわたり安定して得ることが必要され、より均一に形成された表面被覆層が求められている。被覆層に求められるこれらのより高度な要求に応えるため、被覆層の導電性制御、トナーに対する帯電付与能の最適化、トナー付着防止、被覆層の高耐久化、均一な表面凹凸形成などを目的として被覆層に添加される各種粒子は、金属や金属酸化物粒子、炭素系粒子、セラミック系粒子、樹脂粒子、固体潤滑剤粒子、導電性粒子など多種多様なものが用いられる傾向にある。
【0010】
一般に固体分散系の塗料は経時とともに固体粒子の再凝集が発生しやすく、また、塗料の循環経路内に多少なりとも塗料流量の安定しないデッドスペースがある場合にはそれが増長されやすい。また、塗料溜めなど気体との界面を有する部分があると撹拌や溶媒の蒸発などの作用で粒子の凝集が発生しやすくなる。また、例えば、溶媒に溶解された被覆用樹脂と比重差の大きい粒子や凝集性の高い粒子を添加した塗料を用いて被覆層を形成する際に、従来の方法では塗料組成物中に分散添加された粒子の沈降や分離、凝集などにより被覆中に局所的な体積抵抗のバラツキが発生したり、被覆層の表面粗さの不均一化が生ずるなどの問題が発生し、表面被覆層に求められる高度な要求を満たすことができない場合がある。
【0011】
また、被覆層に所望の表面凹凸を形成するために粒子を分散含有した場合に、比重差による粒子の沈降や分離などの発生により被覆層中の粒子の分布が不均一となり、被覆表面に突起や塗布ムラなどの問題が発生し安定した所望の表面形状を得ることが難しい。また生産面においては、連続して複数本の塗工を行っていく際はこれらの理由から塗料中の粒子の分散状態を保ちにくく、連続生産時の初期と後期で表面粗さや抵抗値などのばらつきが大きくなってしまうという問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、装置の連続運転や塗料の経時保管が発生する場合でも塗料中の固形分の凝集や沈殿により、被覆層形成時における不具合を発生させない電子写真用部材の製造方法を提供することである。
【0013】
さらに本発明の目的は、上記問題点を解決し、塗料中に分散液との比重差の大きい粒子や再凝集性の高い粒子を添加する場合や、導電性微粒子などの粒子径の小さいものを添加した場合でも、塗料中の粒子の再凝集や分離を起こさず、また表面被覆層に突起、塗布ムラなどが発生しない均一な表面被覆層を形成する電子写真用部材の製造方法を提供することである。
【0014】
またさらに本発明の目的は、表面被覆層が所望の表面形状および表面被覆層における添加粒子の均一な分散を有する電子写真用部材の製造方法を提供することである。
【0015】
さらに本発明の目的は、表面被覆層の磨耗、剥がれ等が発生し難く、繰り返しの使用に対する耐久性、耐摩耗性を有する表面被覆層を有する電子写真用部材の製造法を提供することである。
【0016】
さらに本発明の目的は、均一な被覆層を有し、長期にわたり高精細な画像を提供することのできる電子写真用部材およびその製造方法を提供することである。
【0017】
さらに本発明の目的は、現像剤搬送の不均一性や現像剤への帯電付与の不均一性による濃度ムラやスジ等の画像欠陥の発生しない現像剤担持体を提供することである。
【0018】
またさらに本発明の目的は、表面被覆層が所望の表面形状および表面被覆層における添加粒子の均一な分散を有し、現像剤層厚規制ブレードに傷が発生し難く、画像上にスジ等の欠陥の現れない現像剤担持体を提供することである。
【0019】
さらに本発明の目的は、表面被覆層の磨耗、剥がれ等が発生し難く、繰り返しの使用に対する耐久性、耐摩耗性を有し、長期にわたり安定して良好な画像の得られる現像剤担持体を提供することである。
【0020】
本発明は、前記特許2886593号に記載された被覆層形成方法では達成し得なかった、より高精度な分散均一性及び表面均一性を要求される表面被覆層の形成に適する。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。
【0022】
即ち、基体および該基体上に表面被覆層を有する電子写真用部材の製造方法であって、
該表面被覆層は塗料組成物を基体上に塗布することにより該表面被覆層を形成する工程を含み、
該塗料組成物は、溶媒に溶解された結着樹脂中に固体粒子が分散されたものであり、該塗料組成物には塗工操作部を経由する塗料の循環経路中の配管部において、流動性媒体を介して超音波が照射されることを特徴とする電子写真用部材の製造方法により達成される。
【0023】
さらにこの超音波は、循環経路中の配管部、塗工操作部の液溜め部、もしくは塗料の貯蔵部において、流動性媒体を介して塗料組成物に照射されることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる流動性媒体としては、室温で流動性である液体、例えば水又は有機溶剤、例えばアルコール、エステル、脂肪族及び芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アミン、アミド及びニトロ化合物などが用いられる。もちろん、これらの物質の混合物を使用することもできる。また、シリコーンオイルや流動パラフィン等粘性の低い潤滑油類も使用可能である。更に、室温よりも高い温度で初めて流動性になる物質、例えばろう及び熱可塑性ポリマーなども使用温度によって選択することができる。水など熱容量が大きい媒体は温調の際に熱交換の効率の点で、より好ましい。
【0025】
またこの際に流動性媒体に対して温調操作が行われることがより好ましく、超音波は方向の異なる複数方向から照射されること、複数方向から超音波を照射する発振子が被照射部を中心とする同心円上に配置されることが本目的を達成する上で、より好ましい。
【0026】
また超音波の周波数が2種以上の異なる周波数を同時に発振しているマルチの超音波であることが好ましく、超音波の周波数が2種以上の異なる周波数を高速で順次繰り返して発振するマルチの超音波であることが好ましい。
【0027】
さらにこれらの超音波の周波数が10kHz〜1.5MHzであることが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に本発明の表面被覆層の製造方法について現像剤担持体を例にとり説明する。
【0029】
図1において、塗料は溶媒に溶解された樹脂中に固体粒子と導電性微粒子が分散含有されたものであり、該塗料の貯蔵部及び塗工操作部の液溜部において撹拌されており、さらに塗工操作部を経由する循環路の配管に流動性媒体を介して超音波が照射されている。
【0030】
図の塗工操作部において、例えばエアースプレー法を用いる場合、図2のように現像剤担持体の基体をスプレーガンの移動方向に平行に垂直に立てて、基体を回転させつつ、基体とスプレーガンのノズル先端との距離を一定に保ちスプレーガンを一定速度で上昇させながら、例えば下記に示す実施例1の塗料を用いて塗料を基体に塗布する。
【0031】
図示した基体は中空円筒状の形態を有しているが、勿論、円柱状の形態を有する基体であってもよい。完成した円筒状もしくは円柱状の基体および表面被覆層を有する部材が現像剤担持体である場合、このスリーブを使用する現像装置が磁性現像剤を用いる形式の装置であるときは公知の如くスリーブは非磁性体が好ましく、ここでは基体として非磁性体からなるものを用いる。
【0032】
このような本発明の製造方法で形成した表面被覆層は、塗料中に分散液との比重差の大きい粒子や、再凝集性の高い粒子を添加する場合や、導電性微粒子などの粒子径の小さいものを添加した場合でも再凝集を防止できるとともに元々凝集粒子が存在している場合でも凝集体をほぐしながら塗布されるためブツと呼ばれる被覆層上の突起の発生を防ぐことができる。更に分子量の大きい結着樹脂を用いた場合においても、塗料中の固体粒子や導電性微粒子の分散状態が良くなるため、塗工後の該表面被覆層中の固体粒子及び導電性微粒子の分散性が均一になるため、被覆層表面の凹凸形状が均一になると共に、基体との密着性及び耐磨耗性に優れる。
【0033】
図3は塗工操作部の液溜部に流動性媒体を介して超音波を照射するようにしたものであり、図4は塗料の貯蔵部に流動性媒体を介して超音波を照射するようにしたものである。
【0034】
図示したように塗料の配管部に直接に超音波発振子を取り付けるのでなく、流動性媒体を介して超音波を照射するようにすることで、広範囲に超音波を照射できる。またこれらの流動性媒体に対し温調操作を行うことで超音波照射による塗料の昇温を防ぎ一定温度に保つことができるため、塗料の粘度変動を抑制することができる。このためにスプレー法での塗料の吐出量や図5に示す様なディッピング法による被覆層の膜厚や表面粗さ等の制御が可能になる。
【0035】
図6は、超音波を照射される配管部と超音波発振子との配置を模式的に表したものである。超音波を異なる複数の方向から、さらには被照射部を中心とする同心円上に配置することでムラ無く均一に超音波が照射され、被覆層中の固体粒子及び導電性微粒子の分散が均一化されるとともに凝集を防ぎ、膜厚の均一化、表面粗さの制御、ブツの抑制が達成され、基体との密着性及び耐磨耗性に優れた被覆層を得ることができる。
【0036】
この際に塗料に発振する超音波の周波数としては、塗料の粘度や塗料中の固体粒子の凝集性及び塗料の超音波による変質が発生しないように考慮して調整が必要だが、10kHz〜1.5MHzが好ましい。10kHz未満であると、塗料中に伝わるエネルギー密度が十分でなく塗料中の固体粒子を均一に分散するのに好ましくない。1.5MHz超になると、超音波による変位幅が小さくなってしまい粒径の大きな固体粒子の分散性が不十分となりやすい。
【0037】
また、特に10kHz〜1.5MHzの間で周波数の異なる2種以上の超音波を同時に発振するマルチの超音波を発振すると、塗料中での固体粒子や導電性微粒子の分散性が良好となり好ましい。更に、10kHz〜1.5MHzの間で異なる2種以上の周波数の超音波を高速で順次繰り返して発振するマルチの超音波を発振する場合も、塗料中での固体粒子や導電性微粒子の分散性がより良好となり好ましい。
【0038】
本発明の塗布方法は、現像剤担持体のみばかりでなく磁性粒子搬送部材や帯電部材など他の電子写真用部材の被覆層形成にも同様に用いることができる。
【0039】
一方、図7に示すような塗料の循環経路において超音波を照射せずマグネットスターラー等で塗料を機械的な撹拌のみでエアースプレー塗工した場合、塗料中に分散液との比重差の大きい粒子や再凝集性の高い粒子を添加する場合や導電性微粒子などの粒子径の小さいものを添加した場合、凝集の発生を抑制することができず膜の不均一化の原因となることがあった。特に塗料循環がくり返されるような長時間にわたる製造において、この傾向が強く見られた。またスプレー塗工時に塗料が充分に微粒化できなくなり、塗料中の固体粒子の凝集粒子や微粒子化されない塗料の粗大粒子が被覆層に突起状の欠陥として発生するものもあり、更に、被覆層表面の形状も不均一にもなりやすく、均一な表面粗さが得られない場合があった。
【0040】
次に本発明の樹脂被覆層の形成に用いる塗料についてさらに詳しく説明をおこなう。
【0041】
塗料に用いる結着樹脂材料としては一般に公知の樹脂が使用可能である。例えば、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱あるいは光硬化性樹脂等を使用することができる。なかでもシリコーン樹脂、フッ素樹脂のような離型性のあるもの、或いはポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアミド、フェノール、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような機械的性質に優れたものがより好ましい。バインダー樹脂を溶解する為の溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、キシレン、メチルセロソルブ、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等従来公知のものがいずれも使用が可能であり、特に限定されないが添加粒子の濡れ性、分散安定性、粘度、沸点や気化スピードなどの塗工時の成膜に関わる特性等を考慮して選択することが好ましい。
【0042】
またこの塗料中には、表面被覆層の抵抗値を調整やトナーの付着の軽減や表面粗さの安定化、トナーへの帯電付与能の制御など用いられる各部材の目的に応じて、導電性物質、潤滑物質、表面凹凸形成用粒子、補強剤粒子、荷電制御剤などが分散含有して用いられる。
【0043】
これらの分散には一般的に公知の分散装置、例えばペイントシェーカー、サンドミル、アトライター、ダイノミル、パールミル等のビーズを用いた分散機が好ましく用いられる。
【0044】
この被覆層の抵抗値を調整するためには、下記に挙げる導電性物質を塗料中に分散含有させることが好ましい。この際に使用される導電性物質としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粉体、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ等の金属酸化物、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト等の炭素物等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与するとともに、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電度を得ることができるため好適に用いられる。また、これらの導電性物質の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲とすることが好ましい。
【0045】
本発明の表面被覆層を形成する塗料中には、体積平均粒径が1〜30μmの固体微粒子を分散させることで、表面被覆層に凹凸形状を形成し、現像剤担持体上の現像剤コート量を最適化することが可能である。
【0046】
本発明の表面被覆層を現像剤担持体として用いる場合には、該粒子は、現像剤担持体の表面被覆層に均一な凹凸形状からなる表面粗度を形成保持させると同時に、表面被覆層が摩耗した場合でも被覆層の表面粗度の変化が少なく、且つトナー汚染やトナー融着を発生しにくくする効果がある。これらの粒子としては、削れや摩耗に優れていることが好ましく、例えばフェノール樹脂やアクリル樹脂などの機械的強度の高い樹脂粒子、炭素系粒子、金属又は金属酸化物粒子、シリカ、アルミナ、ホウ酸アルミ、炭化ホウ素等の無機粒子が用いられる。これらの表面粗さを安定化させるために用いる粒子の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲とすることが好ましい。
【0047】
更に、表面被覆層を形成する塗料中には前述した固体粒子に加えて、表面被覆層への現像剤の付着をより軽減化するため、固体潤滑材を混合させることもできる。この際に使用し得る固体潤滑材としては、例えば、二硫化モリブデン、窒化硼素、グラファイト、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石、フッ素系樹脂粒子が挙げられる。また、これらの固体潤滑材の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲とすることが好ましい。
【0048】
表面被覆層を形成する塗料中にはさらに被覆層のトナーへの帯電付与能を制御するため荷電制御剤を添加することも可能である。荷電制御剤としては例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩などによる変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;チブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン類、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0049】
本発明の表面被覆層の表面粗さとしては、JIS算術平均粗さ(Ra)で0.4〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。更に好ましくは0.5〜3μmである。即ち、Raが0.4μm未満では、現像剤担持体上の現像剤コート量が不十分となると共に表面被覆層が少し摩耗するだけで現像剤の搬送性が大幅に低下し、現像剤のチャージアップによるゴーストの悪化や画像濃度低下を引き起こしてしまう。一方、Raが3.5μmを超えると、現像剤のコートムラや現像剤の摩擦帯電の不均一化による濃度ムラやカブリを発生してしまう。
【0050】
上記の表面被覆層のRaを0.4〜3.5μmに制御するためには、表面被覆層中へ分散させる固体粒子の体積平均粒径と添加量を変えることで容易に行うことができる。
【0051】
本発明の方法によれば塗布時の塗料の分散状態が安定なため、また使用する溶媒選定や塗布条件の選定幅が広がるため、上記好ましい表面被覆層を形成することが可能である。
【0052】
本発明に用いられる粒子の粒径は以下の測定方法を用いて行った。装置としてはレーザ回折型粒度分布計のコールターLS−230型粒度分布計(ベックマンコールター社製)を用いた。測定方法としては水系モジュールを用い、測定溶媒としては純水を使用した。純水にて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行し、次に純水10ml中に界面活性剤3〜4滴を加え、更に測定試料を5〜25mg加えた。試料を懸濁した水溶液は超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行って試料液を得て、前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、個数平均粒径および体積平均粒径を求めた。
【0053】
次に、上記したような本発明の現像剤担持体が組み込まれる現像装置及び画像形成装置について説明する。
【0054】
図8は、本発明の一実施形態である現像装置の模式図を示す。
【0055】
図8において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を保持する静電潜像保持体潜像保持体,例えば、電子写真感光ドラム1は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像剤担持体8は、現像剤容器としてのホッパー3によって供給された磁性トナーを有する一成分系現像剤4を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像剤担持体8と感光ドラム1とが対向している現像領域Dに現像剤4を搬送する。図8に示すように、現像剤担持体8内には、現像剤4を現像剤担持体8上に磁気的に吸引且つ保持する為に、磁石が内接されているマグネットローラー5が配置されている。
【0056】
本発明の現像装置で用いられる現像剤担持体8は、基体としての金属円筒管6上に被覆された導電性被覆層7を有する。ホッパー3中には、現像剤4を撹拌するための撹拌翼10が設けられている。12は現像剤担持体8とマグネットローラー5とが非接触状態にあることを示す間隙である。
【0057】
現像剤4は、磁性トナー相互間及び現像剤担持体8上の導電性被覆層7との摩擦により、感光ドラム1上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図8の例では、現像領域Dに搬送される現像剤4の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード2が、現像剤担持体8の表面から約50〜500μmのギャップ幅を持って現像剤担持体8に臨む様に、ホッパー3から垂下されている。マグネットローラー5の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード2に集中することにより、現像剤担持体8上に現像剤4の薄層が形成される。本発明においては、この磁性規制ブレード2にかえて非磁性ブレードを使用することもできる。
【0058】
この様にして、現像剤担持体8上に形成される現像剤4の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像剤担持体8と感光ドラム1との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
【0059】
本発明の現像剤担持体は、以上の様な現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置に組み込むのが特に有効であるが、現像領域Dにおいて、現像剤層の厚みが現像剤担持体8と感光ドラム1との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、即ち接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。
【0060】
説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、上記したような非接触型現像装置を例に採って行う。
【0061】
上記現像剤担持体8に担持された磁性トナーを有する一成分系現像剤4を飛翔させる為、上記現像剤担持体8にはバイアス手段としての現像バイアス電源9により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、静電潜像の画像部(現像剤4が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像剤担持体8に印加するのが好ましい。
【0062】
現像された画像の濃度を高め、或は階調性を向上するためには、現像剤担持体8に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像剤担持体8に印加するのが好ましい。
【0063】
高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用する。
【0064】
高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。
【0065】
ここで高電位,低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、現像剤4は少なくとも現像剤担持体8との摩擦により帯電する。
【0066】
図9は、本発明の現像装置の他の実施形態を示す構成模式図、図10は、本発明の現像装置の更に他の実施形態を示す構成模式図である。
【0067】
図9及び図10に示した現像装置では、現像剤担持体8上の現像剤4の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、ウレタンゴム,シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、或いはリン青銅、ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料の弾性板からなる弾性規制ブレード11を使用し、この弾性規制ブレード11を図9の現像装置では、現像剤担持体8の回転方向と逆方向の向きで圧接させており、図10の現像装置では、この弾性規制ブレード11を現像剤担持体8の回転方向と順方向の向きで圧接させているのが特徴である。
【0068】
これらの現像装置では、現像剤担持体8に対して、現像剤層を介して現像剤層厚規制部材を弾性的に圧接することによって、現像剤担持体上に現像剤の薄層を形成することから、現像剤担持体8上に、上記した図8の場合よりも更に薄い現像剤層を形成することができる。
【0069】
図9及び図10に示す現像装置の他の基本的構成は、図8に示した現像装置と同じであり、同符号のものは、基本的には同一の部材であることを示す。
【0070】
図8〜10はあくまでも本発明の現像装置を模式的に例示したものであり、現像剤容器(ホッパー3)の形状、撹拌翼10の有無、磁極の配置に様々な形態があることは言うまでもない。勿論、これらの装置では、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤を用いる現像に使用することもできる。
【0071】
図11を参照しながら画像形成装置の一例について説明する。
【0072】
先ず、一次帯電手段としての接触(ローラ)帯電手段29により静電潜像担持体としての感光ドラム1の表面を負極性に帯電し、レーザー光の露光25によるイメージスキャニングによりデジタル潜像が感光ドラム1上に形成される。
【0073】
次に、現像剤層厚規制部材としての規制ブレード11を有し、現像剤担持体としての現像スリーブ8が具備されている現像装置によって、上記のデジタル潜像が、現像容器としてのホッパー3内の磁性トナーを有する負帯電性一成分系現像剤4によって反転現像される。
【0074】
図11に示す様に、現像領域において感光ドラム1の導電性基体は接地されており、現像スリーブ8にはバイアス印加手段9により交互バイアス、パルスバイアス及び/又は直流バイアスが印加されている。
【0075】
次に、被記録材Pが搬送されて転写部に来ると、転写手段としての接触(ローラ)転写手段23により被記録材Pの背面(感光ドラム側と反対面)から電圧印加手段24で帯電されることにより、感光ドラム1の表面上に形成されている現像画像が接触転写手段23で被記録材P上へ転写される。
【0076】
次に、感光ドラム1から分離された被記録材Pは、定着手段としての加熱加圧ローラ定着器27に搬送され、該定着器によって被記録材P上の現像画像の定着処理がなされる。
【0077】
転写工程後の感光ドラム1に残留する一成分系現像剤4は、クリーニングブレード28aを有するクリーニング手段28で除去される。残留する一成分系現像剤4が少ない場合には、クリーニング工程を省くことも可能である。
【0078】
クリーニング後の感光ドラム1は、必要によりイレース露光26により除電され、再度、一次帯電手段としての接触(ローラ)帯電手段29による帯電工程から始まる上記工程が繰り返される。
【0079】
上記の一連の工程において、感光ドラム(即ち、静電潜像担持体)1は感光層及び導電性基体を有するものであり、矢印方向に動く。現像スリーブ8は、現像領域において感光ドラム1の表面と同方向に進む様に回転する。ホッパー3内の一成分系現像剤4は、現像スリーブ8上に担持され、且つ現像スリーブ8の表面との摩擦及び/又トナー同士の摩擦によって、例えば、マイナスのトリボ電荷が与えられる。更に、規制ブレード11により、現像剤層の厚さを薄く(30〜300μm)且つ均一に規制して、現像領域における感光ドラム1と現像スリーブ8との間隙よりも薄い現像剤層を形成させる。規制ブレード11の代わりに、弾性ブレードを用いることも可能である。
【0080】
現像スリーブ8の回転速度を調整することによって、現像スリーブ8の表面速度が感光ドラム1の表面の速度と実質的に等速、もしくはそれに近い速度となる様にする。現像領域において、現像スリーブ8に現像バイアス電圧として、交流バイアス又はパルスバイアスをバイアス印加手段9により印加してもよい。この交流バイアスはfが200〜4,000Hz、Vppが500〜3,000Vであればよい。
【0081】
現像領域における現像剤の移転に際し、感光ドラム1の表面の静電気力、及び交流バイアス又はパルスバイアスの如き現像バイアス電圧の作用によって、現像剤は静電潜像側に移転する。
【0082】
一次帯電手段としては、以上の如く接触帯電手段として帯電ローラ29を用いて説明したが、帯電ブレード、帯電ブラシの如き接触帯電手段でもよく、更に非接触のコロナ帯電手段でもよい。しかしながら、帯電によるオゾンの発生が少ない点で接触帯電手段の方が好ましい。
【0083】
転写手段としては、以上の如く転写ローラ23の如き接触転写手段を用いて説明したが、非接触のコロナ転写手段でもよい。しかしながら、こちらも転写によるオゾンの発生が少ない点で接触転写手段の方が好ましい。
【0084】
【実施例】
以下、実施例をもってさらに詳しく説明する。
【0085】
上記材料を用いて塗料を作製した。
【0086】
前記バインダーは予めMEKの一部に溶解させた。グラファイト、炭化ホウ素を添加しガラスビーズを用いたサンドミルで分散した。分散終了後、ガラスビーズを分離し、MEKを添加して固形分を固形分濃度32%とした。室温にて粘度を測定したところ115mPasであった。塗料粘度の測定方法としてはB型粘度計を使用し2号ロータ、回転数60rpmとし測定時間30秒にて測定した。塗工テストは塗料分散後3日後に行ない、3日間の間塗料はボールミル架台上で回転保持された。
【0087】
この塗料(1−1)を用いて図1に示したような塗工装置を用いてテストを行った。塗料貯蔵部に塗料を投入した後、撹拌を開始した。さらに塗料の循環路の配管部に流動性媒体を介して50kHzの超音波を照射した。塗料全量は20000mlとし塗料の循環量は50ml/秒、希釈後の塗料の状態を均一化させ安定させるため、予め30分間超音波を照射しつつ循環させ、その後塗工を開始した。
【0088】
図2に示したようなエアースプレー法により、外径20mmφのアルミニウム製の円筒管を回転台に立てて回転させ、両端部をマスキングしながら、エアースプレーガンを一定速度で上昇させ、円筒管表面に塗布をおこなった。塗工後乾燥炉にて160℃で30分加熱乾燥させ現像剤担持体のサンプルとした。
【0089】
エアースプレーの霧化圧は、2×105Pa、円筒管の塗布表面とガンノズル先端との距離は50mmの条件で行った。尚、エアースプレーガンの上昇速度は、現像剤担持体上の乾燥後の被覆層の付着質量が0.18×10-3〜0.20×10-3kgになるように適宜調整した。また流動性媒体は温調操作によって液温は25℃に保った。連続して300本の現像剤担持体を作製し、1本目、150本目、300本目のサンプルについて評価を行った。
【0090】
評価は次のように行った。
【0091】
(1)塗料液中の凝集物の有無
(2)ノズル詰まりの有無
(3)塗布ムラの有無
(4)ブツ発生の有無
【0092】
(5)表面粗さ(Ra)
算術平均粗さRaの測定は小坂研究所製 SE−3500を用い、測定条件としては、カットオフ0.8mm、規定距離8.0mm、送り速度0.5mm/secにて12箇所の測定値の平均をとった。
【0093】
(6)濃度一様性
画像濃度(濃度一様性)は反射濃度計RD918(マクベス社製)でベタ黒部の濃度差を測定した。
濃度差0〜0.02 :A 殆ど目立たず、問題ないレベル
濃度差0.03〜0.04:B やや目立つが、実用レベル
濃度差0.05〜 :C 非常に目立ち、実用不可レベル
【0094】
(7)ブレードキズ
ブレード傷A:軽微で画像には影響無し。
ブレード傷B:やや目立つが、画像には影響無し。
ブレード傷C:目立つ傷が数箇所に発生し、画像上軽微な黒スジとして現れる。
ブレード傷D:非常に目立つ傷が多数発生し、画像上に顕著な黒スジとして現れる。
【0095】
(8)導電性被覆層の削れ量(膜削れ)
導電性被覆層の削れ量(膜削れ)の測定としてはKEYENCE社製レーザー寸法測定器を用いた。コントローラLS−5500およびセンサーヘッドLS−5040Tを用い、スリーブ固定治具およびスリーブ送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、スリーブの外径寸法の平均値から測定を行った。測定はスリーブ長手方向に対し30分割して30箇所測定し、さらにスリーブを周方向に90°回転させた後さらに30箇所、計60箇所の測定を行い、その平均値をとった。表面被覆層塗布前のスリーブの外径を予め測定しておき、表面被覆層形成後の外径、さらに耐久使用後の外径を測定し、その差分をコート膜厚および削れ量とした。
【0096】
画像評価に用いたトナーとしては次のものを用いた。
【0097】
上記材料をヘンシェルミキサーにて予備混合した後、130℃に設定した二軸式エクストルーダーを用いて溶融混練を行った。混練物を冷却後、スピードミルで粗粉砕を行い、更にジェットミルを用いて微粉砕を行った。この微粉砕物をエルボジェット分級機を用いて分級し、トナーの粒度分布が、重量平均粒径7.1μm、4μm以下の粒子の個数割合が16.4%、12.7μm以上の粒子の質量割合が1.2%の磁性トナーを得た。
【0098】
このトナー100質量部に対し、シランカップリング剤とシリコーンオイルで処理した疎水性コロイダルシリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合しトナーとした。粒度分布の測定には、ベックマンコールター社製、マルチサイザーII型に100μmアパーチャーを取付け、測定を行った。
【0099】
このトナーと前記サンプルを用い、Laser Jet 9000(ヒューレット・パッカード社製)を用いて画出し評価を行った。Laser Jet 9000用のカートリッジに前記スリーブを装着可能に加工し取付け、さらに前記トナーを充填し、弾性規制ブレードとしては、シリコーンゴム中にコロイダルシリカを分散したシリコーンゴムをブレード様にカットし座金に貼り付けて用いた。このカートリッジを用いて、トナーが無くなるまで、N/N耐久環境(23℃/60%RH)で約30000枚の耐久画出しを行った。
【0100】
塗料(1−1)の組成及び物性を表1に示す。
【0101】
塗料循環路の配管部において流動性媒体を介し塗料に超音波を照射して、エアースプレー法により被覆層を形成した実施例1では、塗料の凝集物などの沈降は見られず、またノズル詰まり、塗布ムラ、表面粗さの均一性、ベタ黒の一様性、膜削れなどに問題はなく良好な画像が得られた。
【0102】
<実施例2〜3>
実施例1で用いた超音波の周波数を表2のように変えたことを除いては、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0103】
<比較例1>
実施例1で超音波を照射しなかったことを除いては、実施例1と同様に予め30分間循環させた後、塗工サンプルを作製し同様に評価を行った。結果を表2に示す。塗工初期から塗工面にブツが発生し、塗工本数の増加に従い塗布ムラが見られた。またサンプルの表面粗さが安定しなかった。
【0104】
実施例1〜3、および比較例1において塗工開始時及び300本塗工後の塗料について100gサンプリングして濾過(450メッシュ,線径0.025mm,目開き31μmおよび500メッシュ,線径0.025mm,目開き25μm)を行ない、メッシュ上の残さについて質量を測定した。結果を表3に示す。
【0105】
<実施例4>
実施例1において塗料の循環路の配管部に流動性媒体を介して超音波を照射する際に、3つの超音波発振子を正三角形に配置し、その重心位置を塗料の循環路の配管部が通過する様にした。安定させるため超音波を照射しながら30分間循環させた後、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0106】
<実施例5〜10>
実施例1で用いた塗料(1−1)と同様の分散により塗料(1−2)〜(1−7)を作製した。表1に塗料の組成及び物性を示す。
【0107】
塗料を安定させるため超音波を照射しながら30分間循環させた後、実施例1と同様の評価を塗料(1−2)〜(1−7)について行った。結果を表2に示す。
【0108】
<比較例2〜7>
実施例5〜10において超音波を照射しなかったことを除いては同様にして、予め30分間循環させた後、実施例5〜10と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0109】
<参考例1、2>
塗料に対し超音波を照射する部位を、実施例1での塗料循環路の配管部に代えて、参考例1は塗工操作部の液貯部、参考例2では塗料の貯蔵部としたことを除いては、実施例1と同様に塗料に超音波を照射しサンプルを作製した。結果を表2に示す。
【0110】
<実施例13>
塗料に対し超音波を照射する部位を、実施例1での塗料循環路の配管部の1ケ所のみでなく、塗料循環路の配管部および塗工操作部の液貯部としたことを除いては、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0111】
<実施例14〜15>
塗料(1−1)を用いて塗料循環路の配管部に表2に示したようなマルチの周波数を用いた超音波を照射したことを除いては、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
<実施例16>
実施例1において塗料の循環路の配管部に超音波を照射する際に流動性媒体に対し温調操作を行わなかった以外は同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0113】
<比較例8>
実施例1において、流動性媒体を介さずに直接発振子を配管部に取り付け、塗料に超音波を照射した以外は同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
上記材料を用いて塗料(2−1)を作製した。
【0118】
導電性炭素粒子A−1の体積抵抗は7.5×10-2Ωcm、形状(長径/短径)は1.15の球状であった。表4に粒子物性を示す。
【0119】
上記材料をガラスビーズを用いたサンドミルで分散し塗工液を得た。塗工テストは実施例1同様塗料分散後3日後に行ない、3日間の間塗料はボールミル架台上で回転保持された。この塗料(2−1)にイソプロピルアルコールを添加して固形分濃度40%とした。
【0120】
この塗料を用いて図1に示したような塗工装置を用いてテストを行った。塗料貯蔵部に塗料を投入した後、撹拌を開始した。さらに塗料の循環路の配管部に流動性媒体を介して80kHzの超音波を照射した。塗料全量は20000mlとし塗料の循環量は50ml/秒、希釈後の塗料の状態を均一化させ安定させるため、予め30分間超音波を照射しつつ循環させ、その後塗工を開始した。
【0121】
図2に示したようなエアースプレー法により外径32mmφのアルミニウム製円筒管上に被覆層を形成させ、続いて熱風乾燥炉により150℃,30分間加熱して硬化させ現像剤担持体を作製した。塗料(2−1)の物性を表5に示す。この塗料を用いて塗工開始直後と5時間循環後の現像剤担持体を作製した。この際に流動性媒体は温調操作により塗料液温25℃一定となるように調整した。これらの作製した現像剤担持体を、iR600(キヤノン製)に取り付けられるように加工し、下記のトナーを供給しながら、N/N耐久環境(23℃/60%RH)で50万枚の現像剤担持体の耐久評価テストを行った。
【0122】
・スチレン−アクリル系樹脂 100質量部
・マグネタイト 83質量部
・正帯電制御剤(トリフェニルメタン化合物) 1.5質量部
・炭化水素系ワックス 2.5質量部
上記材料をヘンシェルミキサーにて予備混合した後、130℃に設定した二軸式エクストルーダーを用いて溶融混練を行った。混練物を冷却後、スピードミルで粗粉砕を行い、更にジェットミルを用いて微粉砕を行った。この微粉砕物をエルボジェット分級機を用いて分級し、トナーの粒度分布が、重量平均粒径7.4μm、4μm以下の粒子の個数割合が18.8%、12.7μm以上の粒子の重量割合が1.2%の磁性トナーを得た。
【0123】
このトナー100質量部に対し、疎水性コロイダルシリカ1.2質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合しトナーとした。粒度分布の測定には、ベックマンコールター社製、マルチサイザーII型に100μmアパーチャーを取付け、測定を行った。
【0124】
評価は次のように行った。
【0125】
(1)塗料液中の凝集物の有無
(2)塗布ムラの有無
(3)ブツ発生の有無
(4)表面粗さ(Ra)
【0126】
(5)濃度一様性
画像濃度(濃度一様性)は反射濃度計RD918(マクベス社製)でベタ黒部の濃度差を測定した。
濃度差 0〜0.02 :A 殆ど目立たず、問題ないレベル
濃度差 0.03〜0.04:B やや目立つが、実用レベル
濃度差 0.05〜 :C 非常に目立ち、実用不可レベル
【0127】
(6)導電性被覆層の削れ量(膜削れ)
実施例17において、塗料の沈降などによる凝集物は見られず、また塗布ムラ、表面粗さの均一性、濃度一様性などに問題はなく良好な画像が得られた。
【0128】
これらの結果を表6に示す。また塗工開始時及び5時間後の塗料を100gサンプリングして濾過(450メッシュ,線径0.025mm,目開き31μmおよび500メッシュ,線径0.025mm,目開き25μm)を行ない、メッシュ上の残さについて質量を測定した。結果を表7に示す。
【0129】
<比較例9>
実施例17で超音波を照射しなかったことを除いては、実施例17と同様に予め30分間循環させた後サンプルを作製し、評価を行った。結果を表6に示す。塗工初期から若干の塗布ムラ及び塗工面にブツが発生した。
【0130】
また実施例17同様に塗工開始時及び5時間後の塗料を濾過しメッシュ上の残さ質量を測定した。結果を表7に示す。
【0131】
<参考例3>
実施例17で用いた導電性炭素粒子A−1に代えて導電性炭素粒子A−2を用いた以外は実施例17と同様にして塗料(2−2)を作製した。塗料に対し超音波を照射する部位を、実施例17での塗料循環路の配管部に代えて、参考例3は塗工操作部の液貯部に流動性媒体を介して照射した。これ以外は実施例17と同様に現像剤担持体を作製し評価を行った。導電性炭素粒子A−2の物性を表4に、これを用いた塗料(2−2)の物性を表5、結果を表6に示す。
【0132】
<比較例10>
参考例3において超音波を照射しなかったことを除いては、参考例3と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0133】
<参考例4>
実施例17で用いた導電性炭素粒子A−1に代えてPMMA粒子A−3を用いた以外は実施例17と同様にして塗料(2−3)を作製した。塗料に対し超音波を照射する部位を、実施例17での塗料循環路の配管部に代えて、参考例4は塗料の貯蔵部に流動性媒体を介して照射した。これ以外は実施例17と同様に現像剤担持体を作製し評価を行った。PMMA粒子A−3の物性を表4に、これを用いた塗料(2−3)の物性を表5、結果を表6に示す。PMMA粒子A−3の真密度1.19g/cm3、体積抵抗1015以上Ω・cm、長径/短径比が1.12であった。
【0134】
<比較例11>
参考例4において超音波を照射しなかったことを除いては、参考例4と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0135】
<実施例20>
実施例17で用いた導電性炭素粒子A−1に代えてホウ酸アルミニウム粒子A−4((9Al2O3・2B2O3)個数平均粒径7.5μm、真密度3.00g/cm3、不定形粒子)を用いた以外は実施例17と同様にして塗料(2−4)を作製した。また塗料に対し超音波を照射する際に、塗料循環路の配管部に対し3つの超音波発振子を正三角形になるように配置し、その重心位置を塗料循環路の配管部が通過する様にして、超音波を流動性媒体を介し照射するようにした。これ以外は実施例17と同様に現像剤担持体を作製し評価を行った。塗料(2−4)の物性を表5、結果を表6に示す。
【0136】
<比較例12>
実施例20において超音波を照射しなかったことを除いては、同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0137】
<実施例21〜22>
実施例20において塗料循環路の配管部に流動性媒体を介して表5に示したようなマルチの周波数を用いた超音波を照射したことを除いては、実施例17と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
【発明の効果】
以上の如き本発明の製造方法で形成した表面被覆層は、塗料中に分散液との比重差の大きい粒子や、再凝集性の高い粒子を添加する場合や、導電性微粒子などの粒子径の小さいものを添加した場合でも再凝集を防止できるとともに、元々凝集粒子が存在している場合でも凝集体をほぐしながら塗布されるためブツと呼ばれる被覆層上の突起の発生を防ぐことができる。
【0143】
更に分子量の大きい結着樹脂を用いた場合においても、塗料中の固体粒子や導電性微粒子の分散状態が良くなるため、塗工後の該表面被覆層中の固体粒子及び導電性微粒子の分散性が均一になるため、被覆層表面の凹凸形状が均一になると共に、基体との密着性及び耐磨耗性に優れた被覆層を得ることができる。
【0144】
また、表面被覆層が所望の表面形状および表面被覆層における添加粒子の均一な分散を有する表面被覆層を形成することができる。
【0145】
またさらに、表面被覆層の磨耗、剥がれ等が発生し難く、繰り返しの使用に対する耐久性、耐摩耗性を有する表面被覆層を形成することができる。
【0146】
また、現像剤搬送の不均一性や現像剤への帯電付与の不均一性による濃度ムラやスジ等の画像欠陥の発生しない現像剤担持体を形成することができる。
【0147】
また、表面被覆層が所望の表面形状および表面被覆層における添加粒子の均一な分散を有し、現像剤層厚規制ブレードに傷が発生し難く、画像上にスジ等の欠陥の現れない現像剤担持体を形成することができる。
【0148】
また、表面被覆層の磨耗、剥がれ等が発生し難く、繰り返しの使用に対する耐久性、耐摩耗性を有し、長期にわたり安定して良好な画像を得られる現像剤担持体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】塗料の循環経路中の配管部において流動性媒体を介して塗料に超音波を照射しながら被覆層の形成の例を示す模式図である。
【図2】エアースプレー法による被覆層形成を示す模式図である。
【図3】塗工操作部の液溜め部において流動性媒体を介して塗料に超音波を照射しながらエアースプレー法による被覆層の形成の例を示す模式図である。
【図4】塗料貯蔵部において流動性媒体を介して塗料に超音波を照射しながら被覆層の形成の例を示す模式図である。
【図5】流動性媒体を介して塗料に超音波を照射しながらディッピング法により被覆層の形成の例を示す模式図である。
【図6】超音波発振子と塗料配管の配置の例を示す模式図である。
【図7】塗料の循環経路において超音波を照射しない場合の被覆層の形成例を示す模式図である。
【図8】本発明の一実施形態である現像装置の模式図を示す。
【図9】本発明の現像装置の他の実施形態を示す構成模式図である。
【図10】本発明の現像装置の更に他の実施形態を示す構成模式図である。
【図11】本発明の画像形成装置例の概略図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム(静電潜像保持体)
2 磁性規制ブレード
3 ホッパー(トナー容器)
4 現像剤(トナー)
5 マグネットローラー
6 金属製円筒管
7 導電性被膜層
8 現像スリーブ(現像剤担持体)
9 現像バイアス電源
10 トナー撹拌翼
11 弾性規制ブレード(現像剤層厚規制部材)
A 現像スリーブの回転方向
B 感光ドラムの回転方向
D 現像領域
Claims (14)
- 少なくとも基体および該基体上に表面被覆層を有する電子写真用部材の製造方法であって、
該表面被覆層は塗料組成物を基体上に塗布することにより該表面被覆層を形成する工程を含み、
該塗料組成物は、溶媒に溶解された結着樹脂中に固体粒子が分散されたものであり、該塗料組成物には塗工操作部を経由する塗料の循環経路中の配管部において、流動性媒体を介して超音波が照射されることを特徴とする電子写真用部材の製造方法。 - 流動性媒体に対して温調操作が行われることを特徴とする請求項1に項記載の電子写真用部材の製造方法。
- 超音波が方向の異なる複数方向から照射されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用部材の製造方法。
- 複数方向から超音波を照射する発振子が、被照射部を中心とする同心円上に配置されることを特徴とする請求項3に記載の電子写真用部材の製造方法。
- 該超音波の周波数が、2種以上の異なる周波数を同時に発振しているマルチの超音波であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真用部材の製造方法。
- 該超音波の周波数が、2種以上の異なる周波数を高速で順次繰り返して発振するマルチの超音波であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真用部材の製造方法。
- 該超音波の周波数が10kHz〜1.5MHzであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真用部材の製造方法。
- 表面被覆層の塗工操作がスプレー法により行われることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真用部材の製造方法。
- 表面被覆層の塗工操作がディッピング法により行われることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真用部材の製造方法。
- 該固体粒子は、導電性物質、表面凹凸形成用粒子、荷電制御剤、潤滑物質、及び補強剤粒子からなる群から選択される1種以上のものを含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電子写真用部材の製造方法。
- 電子写真用部材が現像剤担持体であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の電子写真用部材の製造方法。
- 該表面被覆層を有する該基体が円筒状または円柱状の部材からなることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の電子写真用部材の製造方法。
- 該電子写真用部材の表面被覆層の算術平均粗さRaが0.4〜3.5μmであることを特徴とする請求項11又は12に記載の電子写真用部材の製造方法。
- 少なくとも基体及び該基体上に表面被覆層を有する電子写真用部材であって、該電子写真用部材が少なくとも請求項1乃至13のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする電子写真用部材。
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