JP4364970B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂及び特定の星状ポリマーを含有してなる熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、耐熱安定性及び相溶性に優れ、流動性と耐衝撃性のバランスにも優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は種々の分野で広く用いられているが、耐衝撃性や成形性を改良する目的で各種エラストマー材料を配合する試みがなされている。
例えば、特公平7−100763号公報には、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、芳香族ビニル化合物系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂の耐熱安定性や耐衝撃性等を改良するために、スチレン−イソブチレン−スチレンからなるトリブロック共重合体を配合する方法が開示されている。しかし、耐熱安定性や耐衝撃性等は改善されるものの、耐衝撃性と流動性のバランスが充分ではなかった。
また、熱可塑性樹脂とスチレン系エラストマーと必要に応じて炭化水素系の可塑剤からなる樹脂組成物が知られている。このような組成物でも可塑剤の使用量が少ない場合、充分な流動性が得られないという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の現状に鑑み、耐熱安定性及び相溶性に優れ、流動性と耐衝撃性のバランスにも優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、熱可塑性樹脂及び特定の星状ポリマーを含有してなる熱可塑性樹脂組成物が上記課題を解決することを見出して本発明に至ったものである。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂(A)99〜1重量%、及び、多官能性化合物(b−1)と、上記多官能性化合物(b−1)からなるコアに結合する3以上のイソブチレン系ブロック共重合体(b−2)とからなる星状ポリマー(B)1〜99重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物であって、
上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)は、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックとイソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックとから形成されるものである熱可塑性樹脂組成物である。
以下に、本発明を詳述する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)99〜1重量%、及び、星状ポリマー(B)1〜99重量%を含有するものである。
【0006】
上記熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、芳香族ビニル化合物系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酸化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、星状ポリマー(B)との相溶性等の点から、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、芳香族ビニル化合物系樹脂、及び、ポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0007】
上記ポリカーボネート系樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールAすなわち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAの芳香族水素の一部又は全部をアルキル基又はハロゲン原子で置換したもの、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等に基づくポリカーボネート系樹脂を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0008】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジブチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,5,6−テトラメチルフェノールとの共重合体等を挙げることができる。また、これらにスチレンをグラフト共重合したものも使用することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0009】
上記芳香族ビニル化合物系樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリp−メチルスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0010】
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、例えば、α−オレフィンの単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物;α−オレフィンと他の不飽和単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体;これら重合体の酸化、ハロゲン化又はスルホン化したもの等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。具体的には、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂;ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンの(共)重合体等が例示できる。なかでも、コスト、及び、熱可塑性樹脂の物性バランスの点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及び、環状オレフィンの(共)重合体が好ましく使用できる。これらは単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるもう1つの必須成分である星状ポリマー(B)は、多官能性化合物(b−1)と、上記多官能性化合物(b−1)からなるコアに結合する3以上のイソブチレン系ブロック共重合体(b−2)とからなる星状ポリマーであって、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)は、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックとイソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックとから形成されるものである。
【0012】
上記多官能性化合物(b−1)としては、3官能以上の化合物を挙げることができるが、2官能の化合物であっても、重合体を形成して3官能以上の化合物を形成することができる場合は、使用を妨げるものではない。
【0013】
上述の意味において、上記多官能性化合物(b−1)としては、ジビニル芳香族化合物、トリビニル芳香族化合物、ジエポキシド、ジケトン、ジアルデヒド及び下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
(CR1 R2 X)n R3 (1)
式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシル基及び炭素数2〜6のアシルオキシル基からなる群より選択される置換基を表す。R1 及びR2 は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表し、R1 及びR2 は同一であっても異なっていてもよい。R3 は、n個の置換基(CR1 R2 X)を有することができる多価の芳香族炭化水素基又は多価の脂肪族炭化水素基を表す。nは3〜6の整数を表す。
【0014】
上記ジビニル芳香族化合物としては特に限定されず、例えば、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,8−ジビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニル−4,5,8−トリブチルナフタレン、2,2′−ジビニル−4−エチル−4′−プロピルビフェニル等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記ジビニル芳香族化合物としては、例えば、エチルビニルベンゼン等との混合物として通常市販されており、上記ジビニル芳香族化合物が主たる成分であればそのまま使用することが可能であり、必要に応じて精製して純度を高めて用いてもよい。
【0016】
上記トリビニル芳香族化合物としては特に限定されず、例えば、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルナフタレン、3,5,4′−トリビニルビフェニル、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記ジエポキシドとしては特に限定されず、例えば、シクロヘキサンジエポキシド、1,4−ペンタンジエポキシド、1,5−ヘキサンジエポキシド等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記ジケトンとしては特に限定されず、例えば、2,4−ヘキサン−ジオン、2,5−ヘキサン−ジオン、2,6−ヘプタン−ジオン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記ジアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、1,4−ブタンジアール、1,5−ペンタンジアール、1,6−ヘキサンジアール等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記一般式(1)において、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシル基又は炭素数2〜6のアシルオキシル基を表す。上記ハロゲン原子としては、例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。上記炭素数1〜6のアルコキシル基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−又はイソプロポキシ基等を挙げることができる。上記炭素数2〜6のアシルオキシル基としては特に限定されず、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等を挙げることができる。
【0021】
上記一般式(1)において、R1 及びR2 は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表す。R1 及びR2 は同一であっても異なっていてもよい。また、複数存在するR1 及びR2 は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。上記炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−又はイソプロピル基等を挙げることができる。
【0022】
上記一般式(1)において、R3 は、n個の置換基(CR1 R2 X)を有することができる多価の芳香族炭化水素基又は多価の脂肪族炭化水素基を表す。nは、3〜6の整数を表す。
【0023】
上記一般式(1)で表される化合物としては、下記化学式;
1,3,5−(ClC(CH3 )2 )C6 H3
で表される1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンが好ましい。
【0024】
上記多官能性化合物(b−1)としては、反応性及び得られる星状ポリマーの物性等の点から、上記ジビニル芳香族化合物が好ましい。より好ましくは、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン及び1,4−ジイソプロペニルベンゼンである。
【0025】
上記星状ポリマー(B)のコアは、3以上のイソブチレン系ブロック共重合体(b−2)が結合するものである限り、上述した多官能性化合物(b−1)の単一の分子によって形成されてもよいし、同一又は異なる2分子以上が重合又は反応して形成されてもよい。
【0026】
上記星状ポリマー(B)においてコアに結合するイソブチレン系ブロック共重合体(b−2)としては、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック及びイソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックを有しているものであれば特に限定されず、例えば、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックからなるジブロック共重合体、イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックからなるトリブロック共重合体、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックからなるトリブロック共重合体、あるいはマルチブロック共重合体等が例示できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)のなかでも、機械物性、加工性等の点から、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックからなるジブロック共重合体が好ましい。
【0028】
上記イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックは、イソブチレン以外の単量体を使用してなるものであってもよく、使用していなくてもよいが、イソブチレン以外の単量体を使用してなる場合は、イソブチレンは50重量%以上含有され、通常、イソブチレンを60重量%以上含有する単量体成分からなるものであることが好ましい。より好ましくは、80重量%以上である。
【0029】
上記イソブチレン以外の単量体としては、カチオン重合可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、脂肪族オレフィン系単量体、芳香族ビニル系単量体、ジエン系単量体、ビニルエーテル系単量体、シラン系単量体、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記脂肪族オレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、オクテン、ノルボルネン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記芳香族ビニル系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記ジエン系単量体としては特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記ビニルエーテル系単量体としては特に限定されず、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記シラン系単量体としては特に限定されず、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックは、イソブチレンを主成分としない単量体成分からなる。上記イソブチレンを主成分としない単量体成分は、イソブチレンの含有量が30重量%以下である単量体成分である。好ましくは、10重量%以下である。より好ましくは、3重量%以下である。
【0036】
上記イソブチレンを単量体主成分としない単量体成分中の、イソブチレン以外の単量体としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0037】
上記イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックは、物性及び重合特性等のバランスから、上記芳香族ビニル系単量体を単量体主成分としてなるものであることが好ましい。
【0038】
上記単量体主成分である芳香族ビニル系単量体の含有量は、60重量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80重量%以上である。
【0039】
上記芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びインデンからなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることが好ましい。より好ましくは、コストの面から、スチレン、α−メチルスチレン、又は、これらの混合物を用いる。
【0040】
上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を構成する上記イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックと上記イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックとの割合としては特に限定されず、例えば、物性と加工性のバランスから、上記イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックが98〜40重量%、及び、上記イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックが2〜60重量%であることが好ましい。より好ましくは、上記イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックが95〜50重量%、及び、上記イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックが5〜50重量%である。
【0041】
上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)の製造方法としては特に限定されず、例えば、ルイス酸触媒を共存させて単量体を重合する製造方法等を挙げることができる。
【0042】
上記ルイス酸触媒としては、カチオン重合に用いることができるものであれば特に限定されず、例えば、TiCl4 、TiBr4 、BCl3 、BF3 、BF3 ・OEt2 、SnCl4 、SbCl5 、SbF5 、WCl6 、TaCl5 、VCl5 、FeCl3 、ZnBr2 、AlCl3 、AlBr3 等の金属ハロゲン化物;Et2 AlCl、EtAlCl2 等の有機金属ハロゲン化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記ルイス酸触媒のなかでは、触媒としての能力及び工業的な入手の容易さを考慮すると、TiCl4 、BCl3 、SnCl4 が好ましい。
上記ルイス酸触媒の使用量としては特に限定されず、用いる単量体の重合特性又は重合濃度等から設定することができる。
【0044】
また、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)の製造においては、必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。
上記電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長する炭素カチオンを安定化させるものと考えられており、上記電子供与体成分の添加によって、分子量分布が狭くて構造が制御された共重合体が生成する。
上記電子供与体成分としては特に限定されず、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
更に、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で重合することができる。
上記有機溶媒としてはカチオン重合を本質的に阻害するものでなければ特に限定されず、例えば、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。
これらは、ブロック共重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記有機溶媒の使用量としては、得られる共重合体溶液の粘度及び除熱の容易さから、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)の濃度が1〜50wt%となるようにすることが好ましい。より好ましくは、3〜35wt%である。
【0047】
更にまた、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)の製造方法としては、共重合するにあたって、冷却下、例えば、−100℃以上0℃未満の温度で、共重合に用いる上記各成分を混合するのが好ましい。より好ましくは、エネルギーコストと重合の安定性とのバランスから、−80℃〜−30℃である。
【0048】
上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)1本あたりの重量平均分子量としては特に限定されず、例えば、流動性、加工性、物性等の面から、1000〜500000であることが好ましい。上記重量平均分子量が1000未満であると、機械物性が充分に発現せず、500000を超えると、流動性、加工性等の面で不利になる。より好ましい重量平均分子量は、2000〜300000である。
【0049】
次に、上記星状ポリマー(B)の製造方法について詳述する。
上記コアが、3官能以上の多官能性化合物(b−1)の単一の分子から形成される場合には、該多官能性化合物(b−1)を重合開始剤として用いて、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分と上記イソブチレンを主成分としない単量体成分とを共重合することによって上記星状ポリマー(B)を得ることができる。
【0050】
また、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分と上記イソブチレンを主成分としない単量体成分とを共重合して上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を製造し、その後に、該多官能性化合物(b−1)をカップリング剤として用いて、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を結合(カップリング)させることでも上記星状ポリマー(B)を得ることができる。
【0051】
上述のように上記多官能性化合物(b−1)を重合開始剤又はカップリング剤として用いる場合には、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)が3本以上、コアに結合した星状ポリマーを得るために、上記多官能性化合物(b−1)は、1分子あたり3つ以上の重合活性点又はカップリング可能な反応点を有するものであることが必要である。これらの方法は、特定の数のイソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を有する星状ポリマー(B)の製造に適している。
【0052】
上記多官能性化合物(b−1)であって、1分子あたり3つ以上の重合活性点又はカップリング可能な反応点を有するものとしては特に限定されず、例えば、上記一般式(1)で表される化合物、カチオン重合可能な活性点又はカップリング可能な反応点を1分子中に3つ以上有するカリックスアレン、シロキサン系化合物等を挙げることができる。
【0053】
一方、上記コアが、2官能以上の上記多官能性化合物(b−1)の2分子以上が重合又は反応することにより形成される場合には、まず、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分と上記イソブチレンを主成分としない単量体成分とを共重合して上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を製造した後、コアを形成する上記多官能性化合物(b−1)として、例えば、ジビニル芳香族化合物、トリビニル芳香族化合物、ジエポキシド、ジケトン、ジアルデヒド等を添加すると、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)とコアを形成する上記多官能性化合物(b−1)との分子間での結合反応が起こり、更に、生成した分子と上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)若しくはコアを形成する上記多官能性化合物(b−1)との分子間での結合反応が起こるか、又は、生成した分子内での結合反応が起こり、上記星状ポリマー(B)を得ることができる。この方法は、多数のイソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を有する星状ポリマー(B)の製造に適している。
【0054】
この方法における上記多官能性化合物(b−1)の添加方法としては特に限定されず、星状ポリマー(B)の分子量、物性等を考慮して任意に設定することができる。具体的な添加方法としては、例えば、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)の共重合が完全に又はほぼ終了した時点で引き続き、上記多官能性化合物(b−1)又は必要に応じて溶剤等により希釈した上記多官能性化合物(b−1)を重合系中に添加する方法;上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)の重合が完全に又はほぼ終了した後、いったん上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を重合系から取り出し、必要に応じて有機溶媒に溶解せしめて、上記多官能性化合物(b−1)又は必要に応じて溶剤等により希釈した上記多官能性化合物(b−1)を添加する方法等を挙げることができる。
【0055】
後者の方法は、得られた上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を重合系からいったん取り出すことにより、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を精製したり、又は、重合時とは異なる溶剤若しくはルイス酸触媒等を使用することが容易となるが、工業的な生産性が低下する。従って、上記イソブチレン系ブロック共重合体の重合が完全に又はほぼ終了した時点で引き続き、上記多官能性化合物(b−1)又は必要に応じて溶剤等により希釈した上記多官能性化合物(b−1)を重合系中に添加する方法が好ましい。
【0056】
上記多官能性化合物(b−1)の添加量及び反応条件としては特に限定されず、所望の上記星状ポリマー(B)が得られるように、反応性や生産性等を考慮して設定される。
【0057】
なお、上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)を、上述した多官能性化合物(b−1)の単一の分子で結合(カップリング)させる場合、又は、上述した多官能性化合物(b−1)の2分子以上が重合若しくは反応してコアを形成する場合には、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分と上記イソブチレンを主成分としない単量体成分とを共重合する際に、例えば下記化合物の存在下に共重合することができる。
C6 H5 C(CH3 )2 Cl:(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
CH3 C(CH3 )2 CH2 C(CH3 )2 Cl:(2−クロロ−2,4,4−トリメチル)ペンタン
【0058】
上記星状ポリマー(B)におけるイソブチレン系ブロック共重合体(b−2)の本数は、上記星状ポリマー(B)1分子あたり3本以上である。3本未満であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と流動性のバランスが低下する。好ましくは、3〜100本であり、より好ましくは3〜60本である。
【0059】
上記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)は、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックからなるジブロック共重合体がより好ましい。この場合、好ましくは、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックが、コアを形成する多官能性化合物(b−1)に結合する。
【0060】
また、上記星状ポリマー(B)としては、分子鎖中又は分子末端に、必要に応じて、塩素等のハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、シリル基、ビニル基、アリル基等の官能基を有しているものでもよい。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、上記熱可塑性樹脂(A)と上記星状ポリマー(B)の配合割合は、熱可塑性樹脂が99〜1重量%で、星状ポリマーが1〜99重量%である。好ましくは、熱可塑性樹脂95〜20重量%及び星状ポリマー5〜80重量%である。
【0062】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、相溶性、耐衝撃性、流動性等のバランスを調整する等の目的で、イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックからなるトリブロック共重合体、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックからなるトリブロック共重合体、イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックからなるジブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のブロック共重合体を更に配合することもできる。
【0063】
これらのブロック共重合体の配合量としては、本発明の目的を本質的に妨げない範囲であれば特に限定されず、上記星状ポリマー(B)100重量部に対して0〜100重量部が好ましく、より好ましくは、0〜50重量部である。
【0064】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、可塑剤を更に配合することもできる。上記可塑剤としては特に限定されないが、室温で液体又は液状の材料が好適に用いられる。また、親水性及び疎水性のいずれの可塑剤も使用できる。このような可塑剤としては、鉱物油系、植物油系、合成系等の各種ゴム用又は樹脂用の可塑剤が挙げられる。鉱物油系としては、ナフテン系、パラフィン系等のプロセスオイル等が、植物油系としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、パインオイル、オリーブ油等が、合成系としては、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が例示できる。これらの中でも、相溶性と物性のバランスの点から、パラフィン系プロセスオイル又はポリブテンが好ましい。また、これらの可塑剤は2種以上を適宜組み合わせても使用できる。
【0065】
上記可塑剤の配合量は、特に限定されないが、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する成分(A)及び(B)の合計量100重量部に対して0〜200重量部程度が好ましい。200重量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の物性の低下が起こり、好ましくない。
【0066】
上記ブロック共重合体を構成する、イソブチレンを主成分としない単量体成分及びイソブチレンを主成分とする単量体成分としては、上述したものと同様なものを挙げることができる。
また、上記ブロック共重合体の製造方法としては,上述したものと同様な製造方法を挙げることができる。
【0067】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、充填材を更に配合することもできる。上記充填剤としては特に限定されず、好適なものとしては、例えば、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム等の麟片状無機充填材;各種の金属粉、木片、ガラス粉、セラミックス粉、カーボンブラック、粒状若しくは粉末ポリマー等の粒状又は粉末状固体充填材;その他の各種の天然又は人工の短繊維、長繊維等を挙げることができる。また、中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン等の無機中空フィラー;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体からなる有機中空フィラーを配合することもできる。
【0068】
上記充填材の配合量は、上記熱可塑性樹脂(A)及び上記星状ポリマー(B)の合計量100重量部に対して0〜200重量部である。200重量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の物性が低下する。好ましい配合量は、0〜100重量部である。
【0069】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤及び紫外線吸収剤のうち少なくとも1種を更に配合することもできる。これらの配合量は、熱可塑性樹脂及び星状ポリマーの合計量100重量部に対して、0.000001〜20重量部であり、好ましくは0.00001〜10重量部である。
【0070】
更に他の添加剤として、難燃剤、抗菌剤、光安定剤、着色剤、流動性改良剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、架橋剤、架橋助剤等を添加することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物の性能を損なわない範囲であれば、各種物性を改良する目的で、SEBSやSEPS等のスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー又は他のゴム状成分を配合してもよい。
【0071】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、上記2成分をロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー、一軸又は二軸の押出機等を用いて混合することにより製造することができる。
【0072】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に具体的に説明すが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更実施可能である。
【0073】
参考例1 星状ポリマーの製造
攪拌機付き500mL反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)109mL、塩化メチレン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)81mL、(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン0.225g、及び、スチレン7.135gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.088mLを添加した。更に四塩化チタン1mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら20分間反応させた。次いで反応溶液にイソブチレン19.5mLを添加して40分間反応を続けた。その後、ジビニルベンゼン1.86gを添加して30分間反応させ、反応容器を室温に戻してから更に5時間反応させた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤等を除去してから、重合体をトルエンに再溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより星状ポリマー(以下、S−SIBと略す)を得た。
得られた星状ポリマーの重量平均分子量は100,000であった。この重量平均分子量はWaters社製510型GPCシステム(溶媒としてクロロホルムを使用し、流量は1mL/分とした)を用いて測定し、ポリスチレン換算の値で示した。
【0074】
参考例2 スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体の製造
攪拌機付き10L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)2166mL、塩化メチレン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)1634mL、p−ジクミルクロライド1.756gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.75mL、及び、イソブチレン633mLを添加した。更に四塩化チタン30mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら1.5時間反応させた。次いで反応溶液にスチレン270mLを添加し、更に20分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤等を除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をアセトン−メタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することによりイソブチレン系ブロック共重合体(以下、SIBSと略す)を得た。
得られたイソブチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量は118,000であった。この重量平均分子量はWaters社製510型GPCシステム(溶媒としてクロロホルムを使用し、流量は1mL/分とした)を用いて測定し、ポリスチレン換算の値で示した。
【0075】
実施例1〜2、比較例1〜4
ポリプロピレン(ノバテックMA−3、日本ポリケム社製、以下PPと略す)と、参考例1で製造した星状ポリマー(S−SIB)、参考例2で製造したイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEBSと略す。重量平均分子量112,000)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、SBSと略す。重量平均分子量146,000)をそれぞれ表1に示す配合割合で、200℃に設定した二軸押出機(TEX−30HSS、日本製鋼所製)を用いて混練し、熱可塑性樹脂組成物を作製した。更に、この熱可塑性樹脂組成物を射出成形機にて射出成形を行い試験片を作製した。
各試験片について下記に示す方法により耐熱安定性、耐衝撃性、流動性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
熱可塑性樹脂組成物の物性は以下に示す方法で測定した。
(1)耐熱安定性
実施例1〜2及び比較例1〜4で製造したダンベル型試験片を150℃に設定したオーブン中で60日間熱処理した後、各サンプルの破断強度を測定し、熱処理前の破断強度と比較し、保持率(%)を算出した。
【0078】
(2)耐衝撃性
JIS K7110に従い、試験片のアイゾット衝撃強度を測定した。
(3)流動性
JIS K7199に従い、配合物のキャピラリーレオメータによる流れ特性を測定した。測定条件は200℃、せん断速度1216s-1とした。
【0079】
実施例3、比較例5〜7
ポリプロピレン(ノバテックMA−3、日本ポリケム社製)70重量部と、参考例1で製造した星状ポリマー(S−SIB)(実施例3)、参考例2で製造したイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)(比較例5)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEBSと略す。重量平均分子量112,000)(比較例6)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、SBSと略す。重量平均分子量146,000)(比較例7)をそれぞれ30重量部を、200℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて混練し、各成分の相溶状態を肉眼で観察した。
【0080】
参考例1で製造した星状ポリマー(S−SIB)、参考例2で製造したイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEBSと略す。重量平均分子量112,000)を使用した場合には、ポリプロピレンとの混合状態が良好であり、相溶性に優れることが明らかになった。
【0081】
実施例4〜5、比較例8〜11
参考例1で製造した星状ポリマー(S−SIB)、参考例2で製造したイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS、重量平均分子量112,000)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS、重量平均分子量146,000)とポリプロピレン(PP、ノバテックMA−3、日本ポリケム社製)と高密度ポリエチレン(PE、ハイゼックス8000F、三井化学社製)、をそれぞれ表2に示す配合組成で配合し、200℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて混練し、得られた組成物をプレス成形することで試験片を得た。得られた試験片の以下の各種特性を評価した。
【0082】
(1)引張試験
実施例4〜5及び比較例8〜11で製造したダンベル型試験片を用いて、JISK6301に従い、破断試験を実施した。
(2)耐熱安定性
実施例4〜5及び比較例8〜11で製造したダンベル型試験片を150℃に設定したオーブン中で60日間熱処理した後、各サンプルの破断強度を測定し、熱処理前の破断強度と比較し、保持率(%)を算出した。
(3)流動性
JIS K7210、B法に従い、流れ試験を行いをMFRを測定した。
評価結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
以上のことより、本発明の熱可塑性樹脂組成物が、耐熱安定性に優れ、流動性、耐衝撃性のバランスに優れることがわかった。
【0085】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述の構成からなるので、耐熱安定性及び相溶性に優れ、流動性と耐衝撃性のバランスにも優れている。従って、自動車分野の成形品、OA機器分野の成形品、ハウジング部材、光学機器部材、建材、医療用機器の部品、食品分野の成形品等の各種用途に利用可能である。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂(A)99〜1重量%、及び、多官能性化合物(b−1)と、前記多官能性化合物(b−1)からなるコアに結合する3以上のイソブチレン系ブロック共重合体(b−2)とからなる星状ポリマー(B)1〜99重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物であって、前記イソブチレン系ブロック共重合体(b−2)は、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックとイソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックとから形成されるものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂(A)がポリエチレンまたはポリプロピレンであり、
イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックは、芳香族ビニル系単量体を単量体主成分としてなるものである熱可塑性樹脂組成物。 - 多官能性化合物(b−1)は、ジビニル芳香族化合物、トリビニル芳香族化合物、ジエポキシド、ジケトン、ジアルデヒド及び下記一般式(1);
(CR1 R2 X)n R3 (1)
(式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシル基及び炭素数2〜6のアシルオキシル基からなる群より選択される置換基を表す。R1 及びR2 は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表し、R1 及びR2は同一であっても異なっていてもよい。R3 は、多価の芳香族炭化水素基又は多価の脂肪族炭化水素基を表す。nは3〜6の整数を表す。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 多官能性化合物(b−1)は、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン及び1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 芳香族ビニル系単量体は、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン及びインデンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2又は3記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1、2、3又は4記載の熱可塑性樹脂組成物に対し、更に、イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロックから形成されるトリブロック共重合体、イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックから形成されるトリブロック共重合体、及び、イソブチレンを単量体主成分としない重合体ブロック−イソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックから形成されるジブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有してなる請求項1、2、3又は4記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 可塑剤を更に含有してなる請求項1、2、3、4又は5記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 充填材を更に含有してなる請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 酸化防止剤及び紫外線吸収剤のうち少なくとも1種を更に含有してなる請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の熱可塑性樹脂組成物。
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