以下、添付図面を参照して本発明に係るフォーミング装置及びフォーミング方法を実施するにあたり最良と思われる形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
まず、本実施形態に係るフォーミング装置及びフォーミング方法の説明に先立ち、フォーミング装置及びフォーミング方法が適用されるコモンモードフィルタ1の構成について、図1〜図6を参照しつつ説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るコモンモードフィルタを示す斜視図である。図2及び図3は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるコアを示す斜視図である。図4は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれる金属端子を示す斜視図である。図5及び図6は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるコアの鍔部周辺の断面図である。
コモンモードフィルタ1は、図1に示されるように、コア10と、巻線30と、金属端子40とを備えている。
コア10は、図2及び図3にも示されるように、巻芯部12と、当該巻芯部12の軸方向の両端に形成された一対の鍔部13とを有している。コア10は、いわゆるドラムコアである。コア10は、磁性体(例えば、フェライト等)又は非磁性体(例えば、セラミック等)からなる。巻芯部12は、四角柱形状を呈している。各鍔部13は、直方体形状を呈している。巻芯部12と鍔部13とは、一体的に形成されている。コア10は、その巻芯部12の軸心方向に平行な断面での形状がH字状を呈している。以下、鍔部13については、それぞれが略同一形状であるため、特に明記しない限り、片側のみで説明し、図2及び図3に示すように、巻芯部12の長手方向をX軸方向、巻芯部12の幅方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向と定義して説明する。
各鍔部13は、巻芯部12に連結する第1の部分14と、当該第1の部分14よりY軸方向に延出されている第2の部分15と、第2の部分15の反対方向に延出されている第2の部分16と、を有している。これら第1の部分14と第2の部分15とは、巻芯部12の軸芯を通るZX平面に対して面対称な構成になっている。
第1の部分14は、Z軸方向が長手方向であり且つY軸方向が幅方向であって、巻芯部12と略同一の幅である略直方体形状を呈している。第1の部分14は、一対の第1の側面14a,14bと、一対の第2の側面14c,14dと、一対の第3の側面14e,14fと、を有している。第1の側面14a,14b同士は、X軸方向で見て互いに対向するように位置している。第2の側面14c,14d同士は、Z軸方向で見て互いに対向し、且つ、各第1の側面14a,14bに交差する方向(本実施形態においては、直交する方向)に伸びるように位置している。第3の側面14e,14f同士は、Y軸方向で見て互いに対向し、且つ、各第1の側面14a,14b及び各第2の側面14c,14dに交差する方向(本実施形態においては、直交する方向)に伸びるように位置している。各第1の側面14a,14bは巻芯部12の軸心方向に直交することとなる。第1の側面14bには、巻芯部12が連結されることとなる。
第2の部分15は、第1の部分14の第3の側面14eからY軸方向に伸び、Z軸方向が長手方向である略直方体形状を呈している。第2の部分15は、一対の第1の側面15a,15bと、一対の第2の側面15c,15dと、第3の側面15eと、を有している。第1の側面15a,15b同士は、X軸方向で見て互いに対向するように位置している。第2の側面15c,15d同士は、Z軸方向で見て互いに対向し、且つ、各第1の側面15a,15bに交差する方向に伸びるように位置している。第3の側面15eは、各第1の側面15a,15b及び各第2の側面15c,15dに交差する方向に伸びるように位置している。各第1の側面15a,15bは巻芯部12の軸心方向に直交することとなる。第1の部分14の第2の側面14c及び第3の側面14eと、第2の部分15の第2の側面15cとで、段差が形成されており、第2の部分15の第2の側面15cは第1の部分14の第2の側面14cよりも低い位置にある。
第2の側面15c,15dは、第1〜第3の平面17a〜17cを含んでいる。第2の側面16c,16dは、第1〜第3の平面18a〜18cを含んでいる。
第2の側面15cに含まれる第2の平面17bは、巻芯部12の軸心方向(X軸方向)に見て第1の平面17aよりも巻芯部12(第1の側面15b)側に位置し且つ巻芯部12の軸心方向(X軸方向)に直交する方向(Z軸方向)に見て第1の平面17aよりも他方の第2の側面15d側に位置している。第2の側面15cは、第1の平面17aから第2の平面17bにわたって、段下がり形状を呈することとなる。第2の側面15cに含まれる第3の平面17cは、巻芯部12の軸心方向に見て第1の平面17aよりも第1の側面15a側に位置し且つ巻芯部12の軸心方向に直交する方向に見て第1の平面17aよりも他方の第2の側面15d側に位置している。
第2の側面15dに含まれる第2の平面17bは、巻芯部12の軸心方向(X軸方向)に見て第1の平面17aよりも巻芯部12(第1の側面15b)側に位置し且つ巻芯部12の軸心方向(X軸方向)に直交する方向(Z軸方向)に見て第1の平面17aよりも他方の第2の側面15c側に位置している。第2の側面15dは、第1の平面17aから第2の平面17bにわたって、段下がり形状を呈することとなる。第2の側面15dに含まれる第3の平面17cは、巻芯部12の軸心方向に見て第1の平面17aよりも第1の側面15a側に位置し且つ巻芯部12の軸心方向に直交する方向に見て第1の平面17aよりも他方の第2の側面15c側に位置している。第2の側面15dに含まれる第2の平面17bは、第1の部分14の第2の側面14dと同一平面上に位置する。
第1〜第3の平面17a〜17cは、第1の側面15a側から第1の側面15b側に向かって、第3の平面17c、第1の平面17a、第2の平面17bの順に位置している。第1の平面17aと第2の平面17bとの間には傾斜面17dが位置しており、第1の平面17a、傾斜面17d及び第2の平面17bとで段差が形成されている。第1の平面17aと第3の平面17cとの間には、傾斜面17eが位置しており、第1の平面17a、傾斜面17e及び第3の平面17cとで段差が形成されている。
第2の側面15c,15dには、第1の平面17aと第2の平面17bとの境界段差を跨ぐように凹部20が設けられている。凹部20の開口端は、第1の平面17aにおけるX軸方向での途中位置から、傾斜面17d及び第2の平面17bにわたって伸びており、第2の平面17bの第1の側面15b側の端まで至っている。凹部20は、第2の側面15c,15dにおけるY軸方向での略中央に位置している。
第1の平面17aには、当該第1の平面17aの第1の側面15a側の端から凹部20にわたるように、溝部21が設けられている。溝部21の深さは、凹部20の深さよりも浅く設定されている。また、溝部21の開口端の幅(Y軸方向での長さ)は、凹部20の開口端の幅(Y軸方向での長さ)よりも小さく設定されている。
第2の部分16は、第1の部分14の第3の側面14fからY軸方向に伸び、Z軸方向が長手方向である略直方体形状を呈している。第2の部分16は、一対の第1の側面16a,16bと、一対の第2の側面16c,16dと、第3の側面16eと、を有している。第1の側面16a,16b同士は、X軸方向で見て互いに対向するように位置している。第2の側面16c,16d同士は、Z軸方向で見て互いに対向し、且つ、各第1の側面16a,16bに交差する方向に伸びるように位置している。第3の側面16eは、各第1の側面16a,16b及び各第2の側面16c,16dに交差する方向に伸びるように位置している。各第1の側面16a,16bは巻芯部12の軸心方向に直交することとなる。第1の部分14の第2の側面14c及び第3の側面14fと、第2の部分16の第2の側面16cとで、段差が形成されており、第2の部分16の第2の側面16cは第1の部分14の第2の側面14cよりも低い位置にある。
第2の側面16cに含まれる第2の平面18bは、巻芯部12の軸心方向(X軸方向)に見て第1の平面17aよりも巻芯部12(第1の側面16b)側に位置し且つ巻芯部12の軸心方向(X軸方向)に直交する方向(Z軸方向)に見て第1の平面18aよりも他方の第2の側面16d側に位置している。第2の側面16cは、第1の平面18aから第2の平面18bにわたって、段下がり形状を呈することとなる。第2の側面16cに含まれる第3の平面18cは、巻芯部12の軸心方向に見て第1の平面18aよりも第1の側面16a側に位置し且つ巻芯部12の軸心方向に直交する方向に見て第1の平面18aよりも他方の第2の側面16d側に位置している。
第2の側面16dに含まれる第2の平面18bは、巻芯部12の軸心方向(X軸方向)に見て第1の平面18aよりも巻芯部12(第1の側面16b)側に位置し且つ巻芯部12の軸心方向(X軸方向)に直交する方向(Z軸方向)に見て第1の平面18aよりも他方の第2の側面16c側に位置している。第2の側面16dは、第1の平面18aから第2の平面18bにわたって、段下がり形状を呈することとなる。第2の側面16dに含まれる第3の平面18cは、巻芯部12の軸心方向に見て第1の平面18aよりも第1の側面16a側に位置し且つ巻芯部12の軸心方向に直交する方向に見て第1の平面18aよりも他方の第2の側面16c側に位置している。第2の側面16dに含まれる第2の平面18bは、第1の部分14の第2の側面14dと同一平面上に位置する。
第1〜第3の平面18a〜18cは、第1の側面16a側から第1の側面16b側に向かって、第3の平面18c、第1の平面18a、第2の平面18bの順に位置している。第1の平面18aと第2の平面18bとの間には傾斜面18dが位置しており、第1の平面18a、傾斜面18d及び第2の平面18bとで段差が形成されている。第1の平面18aと第3の平面18cとの間には、傾斜面18eが位置しており、第1の平面18a、傾斜面18e及び第3の平面18cとで段差が形成されている。
第2の側面16c,16dには、第1の平面18aと第2の平面18bとの境界段差を跨ぐように凹部22が設けられている。凹部22の開口端は、第1の平面18aにおけるX軸方向での途中位置から、傾斜面18d及び第2の平面18bにわたって伸びており、第2の平面18bの第1の側面16b側の端まで至っている。凹部22は、第2の側面16c,16dにおけるY軸方向での略中央に位置している。
第1の平面18aには、当該第1の平面18aの第1の側面16a側の端から凹部22にわたるように、溝部23が設けられている。溝部23の深さは、凹部22の深さよりも浅く設定されている。また、溝部23の開口端の幅(Y軸方向での長さ)は、凹部22の開口端の幅(Y軸方向での長さ)よりも小さく設定されている。
巻線30は、2本の導体線31を含んでいる。2本の導体線31は、絶縁被覆されており、巻芯部12に巻回されている。2本の導体線31は、互いに電気的に絶縁されると共に、互いに磁気結合する。各導体線31として、絶縁被膜銅線(例えば、ポリウレタン銅線、ポリアミドイミド銅線等)を用いることができる。
金属端子40は、第1の金属端子41,42と、第2の金属端子51,52とを含んでいる。第1の金属端子41,42は、鍔部13の第2の部分15にそれぞれ装着されている。第2の金属端子51,52は、鍔部13の第2の部分16にそれぞれ装着されている。第1の金属端子41及び第2の金属端子51には、一方の導体線31が電気的に接続されている。第1の金属端子42及び第2の金属端子52には、他方の導体線31が電気的に接続されている。
第1の金属端子41,42は、図4にも示されているように、第1の端子部分43と、当該第1の端子部分43の各端部から伸びる一対の第2の端子部分44,45と、第2の端子部分44から伸びる第1及び第2の片部分46,47を有している。第1の端子部分43と、一対の第2の端子部分44,45と、第1及び第2の片部分46,47とは、金属板を折り曲げ加工することにより形成される。第1の端子部分43は、鍔部13の第2の部分15の第1の側面15aに対峙する。第2の端子部分44は、鍔部13の第2の部分15の第2の側面15cに対峙する。第2の端子部分45は、鍔部13の第2の部分15の第2の側面15dに対峙する。一対の第2の端子部分44,45のそれぞれの先端部は、巻芯部12方向に折り曲げられている。
第2の端子部分44には、凸部48が第2の側面15cに設けられた凹部20に対応する位置に設けられている。凸部48は、第2の端子部分45に向かって突出している。第2の端子部分45には、凸部49が第2の側面15dに設けられた凹部20に対応する位置に設けられている。凸部49は、第2の端子部分44に向かって突出している。
第1及び第2の片部分46,47は導体線31を継線するためのものであり、第2の端子部分44とで導体線31を挟持する。第1及び第2の片部分46,47は、第2の端子部分44におけるY軸方向での一方の端部から伸びている。第1の片部分46は、導体線31を固定するための係止片であり、図4にて示された状態から曲げられることにより、第2の端子部分44とで導体線31を挟持する。第2の片部分47は、レーザー溶接により主に溶融状態とされるための係止片であり、図4にて示された状態から曲げられることにより、第2の端子部分44とで導体線31を挟持する。図1では、図示を省略するが、第1及び第2の片部分46,47と第2の端子部分44とで導体線31を挟持した状態でレーザー溶接を行うことにより、第1の金属端子41と導体線31とが機械的及び電気的に接続される。図4に示されるように、曲げられる前の状態では、第1の片部分46と第2の端子部分44とが成す角度は略45°であり、第2の片部分47と第2の端子部分44とが成す角度は略90°である。
図4に示されるように、第1の金属端子41,42が鍔部13に装着されていない状態で、第1の端子部分43と、一対の第2の端子部分44,45とがそれぞれ成す角度は、いずれも鋭角(例えば、86°程度)である。また、第1の金属端子41,42が鍔部13に装着されていない状態で、第1の端子部分43のZ軸方向の長さは第1の側面15aのZ軸方向の長さよりも僅かに大きく、一対の第2の端子部分44,45の端部のZ軸方向での間隔は、第1の側面15aのZ軸方向の長さよりも僅かに小さい。
第1の金属端子41,42は、図5にも示されるように、凸部48,49が凹部20に入った状態で一対の第2の端子部分44,45により一対の第2の側面15c,15dを狭持することにより、鍔部13の第2の部分15に設けられる。第1の金属端子41,42を鍔部13の第2の部分15にそれぞれ装着する場合、第1の金属端子41,42は、一対の第2の端子部分44,45の間隔が広げられながら、第2の部分15の第1の側面15a側から第2の部分15に外挿される。このとき、凸部48,49は、第2の側面15c,15dに設けられた溝部21に係合し、第1の金属端子41,42の導入方向を規定する。
第2の金属端子51,52は、図4にも示されるように、第1の端子部分53と、当該第1の端子部分53の各端部から伸びる一対の第2の端子部分54,55と、第2の端子部分54から伸びる第1及び第2の片部分56,57を有している。第1の端子部分53と、一対の第2の端子部分54,55と、第1及び第2の片部分56,57とは、金属板を折り曲げ加工することにより形成される。第1の端子部分53は、鍔部13の第2の部分16の第1の側面16aに対峙する。第2の端子部分54は、鍔部13の第2の部分16の第2の側面16cに対峙する。第2の端子部分55は、鍔部13の第2の部分16の第2の側面16dに対峙する。一対の第2の端子部分54,55のそれぞれの先端部は、巻芯部12方向に折り曲げられている。
第2の端子部分54には、凸部58が第2の側面16cに設けられた凹部22に対応する位置に設けられている。凸部58は、第2の端子部分55に向かって突出している。第2の端子部分55には、凸部59が第2の側面16dに設けられた凹部22に対応する位置に設けられている。凸部59は、第2の端子部分54に向かって突出している。
第1及び第2の片部分56,57は導体線31を継線するためのものであり、第2の端子部分54とで導体線31を挟持する。第1及び第2の片部分56,57は、第2の端子部分54におけるY軸方向での他方の端から伸びている。第1の片部分56は、導体線31を固定するための係止片であり、図4にて示された状態から曲げられることにより、第2の端子部分54とで導体線31を挟持する。第2の片部分57は、レーザー溶接により主に溶融状態とされるための係止片であり、図4にて示された状態から曲げられることにより、第2の端子部分54とで導体線31を挟持する。図1では、図示を省略するが、第1及び第2の片部分56,57と第2の端子部分54とで導体線31を挟持した状態でレーザー溶接を行うことにより、第2の金属端子51と導体線31とが機械的及び電気的に接続される。図4に示されるように、曲げられる前の状態では、第1の片部分56と第2の端子部分54とが成す角度は略45°であり、第2の片部分57と第2の端子部分54とが成す角度は略90°である。
図4に示されるように、第2の金属端子51,52が鍔部13に装着されていない状態で、第1の端子部分53と、一対の第2の端子部分54,55とがそれぞれ成す角度は、いずれも鋭角(例えば、86°程度)である。また、第2の金属端子51,52が鍔部13に装着されていない状態で、第1の端子部分53のZ軸方向の長さは第1の側面16aのZ軸方向の長さよりも僅かに大きく、一対の第2の端子部分54,55の端部のZ軸方向での間隔は、第1の側面16aのZ軸方向の長さよりも僅かに小さい。
第2の金属端子51,52は、図6にも示されるように、凸部58,59が凹部22に入った状態で一対の第2の端子部分54,55により一対の第2の側面16c,16dを狭持することにより、鍔部13の第2の部分16に設けられる。第2の金属端子51,52を鍔部13の第2の部分16にそれぞれ装着する場合、第2の金属端子51,52は、一対の第2の端子部分54,55の間隔が広げられながら、第2の部分16の第1の側面16a側から第2の部分16に外挿される。このとき、凸部58,59は、第2の側面16c,16dに設けられた溝部23に係合し、第2の金属端子51,52の導入方向を規定する。
次に、図7〜図14に基づいて、本実施形態に係るコモンモードフィルタ1の製造過程について説明する。図7〜図14は、本実施形態に係るコモンモードフィルタの製造過程を説明するための図である。
まず、コア10と、金属端子40(第1の金属端子41,42及び第2の金属端子51,52)とを用意する。そして、図7に示されるように、コア10に各金属端子41,42,51,52を装着する(端子装着工程)。ここでは、各金属端子41,42,51,52を、上述したように、鍔部13の各対応する部分15,16の第1の側面15a,16a側から各凸部48,49,58,59が対応する凹部20,22に嵌る位置まで外挿する。その後、第2の端子部分44,45,54,55の各先端部を、巻芯部12方向に折り曲げる。
次に、1本の導体線31を用意し、図8に示されるように、巻芯部12に巻回する(巻線工程)。そして、図9に示されるように、導体線31の所望の位置を第1の片部分46,56と第2の端子部分44,54とで挟持し、導体線31を各金属端子41,52に固定する(第1の仮固定工程)。その後、導体線31を各金属端子41,52に固定した後、導体線31を切断する(切断工程)。
次に、1本の導体線31を用意し、巻芯部12に巻回する(巻線工程)。そして、図10に示されるように、導体線31の所望の位置を第1の片部分46,56と第2の端子部分44,54とで挟持し、導体線31を各金属端子51,42に固定する(第1の仮固定工程)。その後、導体線31を各金属端子51,42に固定した後、導体線31を切断する(切断工程)。これらにより、巻線30が形成されることとなる。各第1の片部分46,56は、曲げられる前の状態では第2の端子部分44,54との成す角度が略45°であり、第1の片部分46,56を容易に曲げることができる。なお、図8〜10において、導体線31は既に切断した状態で示されている。
次に、図11に示されるように、巻線30(各導体線31)の被覆を除去する(被覆除去工程)。被覆の除去は、各金属端子41,42,51,52に固定された巻線30のうち少なくとも第2の片部分47,57に対応する部分の被覆をレーザー照射により行う。ここでは、互いに異なる複数の方向(本実施形態では、異なる2方向)D1,D2からのレーザー照射により被覆を除去する。第2の片部分47,57と第2の端子部分44,54とが成す角度は略90°であるので、第2の片部分47,57はレーザー照射に対して障害とはなり難い。レーザーには、例えばYAGレーザーを用いることができる。レーザー照射は、異なる2方向D1,D5から行ってもよく、また、異なる2方向D3,D4から行ってもよい。方向D1と方向D2とでは、135°程度ずれている。方向D1と方向D5、及び、方向D3と方向D4とでは、それぞれ180°程度ずれている。
次に、図1に示されるように、第2の片部分47,57を曲げて、巻線30における被覆が除去された部分を第2の端子部分44,54と第2の片部分47,57とで狭持する。これにより、巻線30の両端部が各金属端子41,42,51,52に固定されることとなる(第2の仮固定工程)。
次に、図12に示されるように、巻線30における被覆が除去された部分と各金属端子41,42,51,52とを第2の片部分47,57へのレーザー照射により溶接する。これにより、巻線30が各金属端子41,42,51,52に継線されることとなる(継線工程)。レーザー光の照射領域LAは、図13に示されるように、第2の片部分47,57と巻線30とを含むように設定されることが好ましい。レーザーには、被覆除去工程と同様に、例えばYAGレーザーを用いることができる。巻線30における被覆が除去された部分と各金属端子41,42,51,52との溶接には、レーザー照射による溶接の代わりに、アークによる溶接を用いることができる。
これらの工程を経て、上述した構成を有するコモンモードフィルタ1が得られることとなる。
以上のように、本実施形態においては、まず、巻線30が第2の端子部分44,54と第1の片部分46,56とで狭持されて各金属端子41,42,51,52に固定された後、各金属端子41,42,51,52に固定された巻線30のうち少なくとも第2の片部分47,57に対応する部分の被覆がレーザー照射により除去される。そして、巻線30における被覆が除去された部分が第2の端子部分44,54と第2の片部分47,57とで狭持されて、各金属端子41,42,51,52に固定された後に、巻線30における被覆が除去された部分と各金属端子41,42,51,52とが第2の片部分47,57へのレーザー照射により溶接される。従って、巻線30を形成した後に被覆が除去されることから、巻線30における被覆が除去された部分と各金属端子41,42,51,52との間に位置ズレが生じることはない。また、被覆が除去された状態で溶接が行われることから、巻線30における被覆が除去された部分と各金属端子41,42,51,52とが適切に溶接される。これらの結果、巻線30と各金属端子41,42,51,52とが確実に電気的に接続された状態で適切に継線されることとなる。
また、本実施形態において、被覆除去工程では、互いに異なる複数の方向D1,D2からのレーザー照射により被覆を除去している。これにより、被覆をより一層確実に除去することができる。レーザー照射方向は、互いに135°程度以上ずれていることが好ましい。
次に、上述した第2の仮固定工程として、巻線30における被覆が除去された部分が、第2の端子部分44,54と第2の片部分47,57とで狭持されるように、第2の片部分47,57を屈曲させるフォーミング装置60について、図14〜図17を用いて説明する。図14は、
フォーミング装置60は、図14及び図15に示すように、軸62と、この軸62を支持する一対の対面部64A,64Bを有するガイドホルダ66と、軸62に軸通された一対のアーム68A,68Bとを備えている。
ガイドホルダ66の対面部64A,64Bは、それぞれ矩形平板状の同一形状を呈しており、互いに対面するように一方向(図14、図15のP方向、本実施形態では鉛直下方向)に延在している。そして、対面部64A,64Bは、P方向に直交する方向(図14、図15のQ方向、本実施形態では水平方向)に対面しており、連結部64Cによって互いに連結されている。そして、対面部64A,64Bの対面方向Qに延びる軸62を支持するように、軸支部として方向Qに沿って延びる軸支孔65A,65Bが、対面部64A,64Bの中央付近に形成されている。
また、この対面部64A,64Bのそれぞれの下端部64aには、ガイド部70A,70Bが対面部64A,64Bと一体的に設けられている。これらのガイド部70A,70Bは、同一形状を有しており、それぞれ傾斜部70aと等幅部70bとで構成されている。ガイド部70A,70Bのそれぞれの傾斜部70aは、等幅部70bより対面部64A,64Bに近い側に位置しており、軸62の軸線I方向(すなわち、対面部64A,64Bの対面方向Q)に直交する面(例えば、図15の紙面)内において、軸62の軸線位置Iから対面部64A,64Bの延在方向Pに沿って遠ざかるにつれて漸次幅狭となる形状を有している。また、等幅部70bは、傾斜部70aから連続的に形成され、軸62の軸線I方向に直交する面(例えば、図15の紙面)内において、対面部64A,64Bの延在方向Pに沿って等幅である長方形状を呈している。なお、これらの傾斜部70aと等幅部70bとで構成されたガイド部70A,70Bは、軸62の軸線Iを含むPQ平面に面対称な形状となっている。
すなわち、軸62の軸線I方向に直交する面(例えば、図15の紙面)内において、70A,70Bの両側面70c,70dは、傾斜部70aにおいては、等幅部70bに向かうにつれて、軸62の軸線Iと直交し、P方向に延びる仮想線Lから漸次離間するように傾斜しており、等幅部70bにおいては、仮想線Lから等距離となっている。
対面部64A,64Bのそれぞれの下端部64aには、さらに、一対の面部72,74が設けられている。これらの面部72,74は、軸62の軸線I方向に直交する面(例えば、図15の紙面)内において、ガイド部70A,70Bを挟む位置にあり、それぞれの面部72,74は、対面部64A,64Bの延在方向Pに直交している。
一対のアーム68A,68Bは、上述した対面部64A,64Bの間に介在している。以下、図16を参照しつつ、アーム68A,68Bについて説明する。ここで、図16は、図14に示したフォーミング装置60のα−α線断面図である。
アーム68A,68Bは、互いに重なるように、ガイドホルダ66の対面部64A,64Bの延在方向Pに平行に延びている。そして、アーム68A,68Bには、その延在方向に沿って軸62が通る長穴76がそれぞれ形成されている。そのため、各アーム68A,68Bは、軸62の軸線Iを中心に揺動可能となっており、且つ、対面部64A,64Bに対する対面部64A,64Bの延在方向P(すなわち、アーム68A,68Bの延在方向)への相対移動が許容される。
そして、この長穴76よりも下方に位置するそれぞれの下端部68aには、軸線I方向に対して平行に延びるフォーミングピン78A,78Bが設けられている。フォーミングピン78A,78Bは、同一寸法の円形断面を有しており、水平面(すなわち、対面部64A,64Bの延在方向Pに直交する面)内において互いに軸線I方向に並列するように設けられている。そして、フォーミングピン78A,78Bは、対面部64A,64Bのガイド部70A,70Bの等幅部70bを挟む位置まで延びている。
また、フォーミングピン78A,78Bには、互いに対面する側とは反対側に切欠き部(凹部)79が形成されている。この切欠き部79は、各フォーミングピン78A,78Bに、互いに対応する位置に一対ずつ設けられている。この切欠き部79は、フォーミングピン78A,78Bの延在方向から傾いた2つの傾斜面79a,79bを有しており、それぞれの傾斜面79a,79bは斜め下方向を向いている。一方の傾斜面79aは、フォーミングピン78A,78Bの端部側を向くように形成されており、他方の傾斜面79bは、フォーミングピン78A,78Bの中央側を向くように形成されている。そして、切欠き部79は、その傾斜面79aが、コモンモードフィルタ1の金属端子40のX方向に並ぶ第2の片部分47,57の位置に対応するように設けられている。
一方、長穴76よりも上方に位置するそれぞれの上端部68bには、PQ面に直交するように延びるコイルばね(付勢手段)80の各端部が取り付けられている。このコイルばね80は、アーム68A,68Bの上端部68bが互いに離れる方向に両上端部68aを付勢している。そのため、軸62の軸線Iを支点にして、アーム68A,68Bの下端部64aにモーメントが働き、コイルばね80によって、アーム68A,68Bの下端部64aに設けられたフォーミングピン78A,78Bには互いに近接する方向の付勢力が働いている。
上述したように、各アーム68A,68Bは、長穴76内を軸62が摺動することにより、軸62を軸支する対面部64A,64Bに対して相対移動ができるようになっている。このような相対移動により、アーム68A,68Bが対面部64A,64Bに対して下向きに移動した場合には、図17に示すように、対面部64A,64Bのガイド部70A,70Bがフォーミングピン78A,78Bの間に進行していく。それにより、フォーミングピン78A,78Bそれぞれが、ガイド部70A,70Bの両側面70c,70dに沿って上昇していく。フォーミングピン78A,78Bは、ガイド部70A,70Bの傾斜部70aにおいては、互いの離間距離が次第に拡大するように水平方向に変位するように案内される。そして、フォーミングピン78A,78Bは、ガイド部70A,70Bの傾斜部70aの上端まで達し、フォーミングピン78A,78Bと面部72,74とが接すると、アーム68A,68Bは対面部64A,64Bと一体的に移動するようになり、フォーミングピン78A,78Bの離間距離の拡大が止まる。なお、以上の相対移動の際、フォーミングピン78A,78Bは、コイルばね80の付勢力により、常にガイド部70A,70Bの側面70c,70dに接した状態となっており、相対移動に作用する力がなくなると基準位置(等幅部70bを挟む位置)に復帰する。
フォーミング装置60は、上述した軸62、ガイドホルダ66及びアーム68A,68Bの他に、ガイドホルダ66をその延在方向Pに駆動する駆動手段82と、上述したコモンモードフィルタ1を軸62の軸線Iに沿うように軸62の真下に保持する固定治具84と可動治具86を備えている。
次に、このフォーミング装置60を用いて、上述した金属端子40の第2の片部分47,57を屈曲させる手順について、図18〜図27を参照しつつ説明する。なお、フォーミング装置60は、実際には、4つの第2の片部分47,57全てを同時に屈曲させるが、その屈曲状態は両側とも同じであるため、適宜、片側の第2の片部分47,57のみで説明を進める。
まず、図11に示したように、金属端子40の第1の片部分46,56が曲げられ、且つ、金属端子40の第2の片部分47,57に対応する部分の導体線31の被膜が除去された状態のコモンモードフィルタ1を、フォーミング装置60の固定治具84にセットし、可動治具86によって確実に固定する。このとき、図18及び図19に示すように、図1等に示したX方向が軸62の軸線I方向に平行になり、図1等に示したZ方向が対面部64A,64Bの延在方向Pと平行になるようにセットする。さらに、金属端子40の第2の端子部分44,54から互いに対向するように略90℃に起き上がった二対の第2の片部分47と第2の片部分57とが、フォーミングピン78A,78Bをその対向方向から挟む位置にセットする。そのため、対面部64A,64Bの延在方向Pに沿って立つ第2の片部分47と第2の片部分57との間には、ガイド部70A,70Bの等幅部70bを挟んだ状態のフォーミングピン78A,78Bが介在している。
この状態から、駆動手段82を作動させて、ガイドホルダ66を対面部64A,64Bの延在方向Pに沿って変位させると、図20及び図21に示すように、ガイド部70A,70Bがフォーミングピン78A,78Bの間に進行していく。それにより、フォーミングピン78A,78Bは、ガイド部70A,70Bの側面70c,70dに押されるようにして水平方向にスライドし、次第にその離間距離を拡大する。その結果、フォーミングピン78A,78Bを挟む位置に配置された第2の片部分47,57がフォーミングピン78A,78Bによって水平方向に押圧される。
ガイドホルダ66を対面部64A,64Bの延在方向Pに沿ってさらに変位させると、図22及び図23に示すように、ガイド部70A,70Bがフォーミングピン78A,78Bの間にさらに進行していき、第2の片部分47,57がフォーミングピン78A,78Bによって水平に屈曲される。
ガイドホルダ66を対面部64A,64Bの延在方向Pに沿ってさらに変位させると、図24及び図25に示すように、ガイド部70A,70Bの両端の面部72,74に達する。すると、フォーミングピン78A,78Bは、対面部64A,64Bと一体となって対面部64A,64Bの延在方向Pに移動するようになる。すなわち、水平に屈曲している第2の片部分47,57が、フォーミングピン78A,78Bによって下方向にしっかりと押圧される。その結果、図26及び図27に示すように、第2の片部分47,57が、さらに屈曲して、導体線31を巻き込むようにして第2の端子部分44,54に接触する。
ここで、第2の片部分47,57は、図13から明らかなように、第1の片部分46,56に近い側の一部でのみ、第2の端子部分44,44と繋がっている。そのため、第2の片部分47,57の全体を水平方向に均等に押圧した場合には、図28に示すように、第2の片部分47,57が第1の片部分46,56に近づくように屈曲してしまう不具合があった。このような不具合がある場合には、第2の片部分47,57をレーザー溶接する際における位置合わせを正確に行うことができない懼れがあった。そこで、第2の片部分47,57に対応するフォーミングピン78A,78Bの位置には、上述したように、切欠き部79の傾斜面79aが設けられている。そのため、第2の片部分47,57は、フォーミングピン78A,78Bによって、フォーミングピン78A,78Bの対向方向ではなく、その対向方向からフォーミングピン78A,78Bの端部側(すなわち、第1の片部分46,56から離れる側)に傾いた方向に押圧されることとなる。そのため、上述した第2の片部分47,57が第1の片部分46,56に近づくように屈曲する事態が抑制される。
フォーミング装置60は、以上で詳細に説明したように、ガイドホルダ66の対面部64A,64Bとアーム68A,68Bとを、対面部64A,64Bの延在方向(第1の方向)Pに相対移動させて、対面部64A,64Bのガイド部70A,70Bがフォーミングピン78A,78Bの間に進行していくと、フォーミングピン78A,78Bは、ガイド部70A,70Bによって互いの離間距離が拡大されるように案内される。そのため、一対のフォーミングピン78A,78Bの対向方向から挟む位置に配置され、対面部64A,64Bの延在方向Pに沿って延びる第2の片部分47,57を配置すると、フォーミングピン78A,78Bによってその第2の片部分47,57を屈曲させることができる。すなわち、このフォーミング装置60によれば、略90度に起立している第2の片部分47,57を有する金属端子40の曲げ加工を実現することが可能である。従って、上記第2の片部分47,57を、被膜除去のためのレーザー照射を妨げにならないように、金属端子40から略90度に起立させておくことができるため、レーザー照射の際の作業性が飛躍的に向上する。
本実施形態において、各第1の片部分46,56は、曲げられる前の状態では第2の端子部分44,54との成す角度が略45°に設定されているが、これに限られるものではなく、例えば、図18に示されるように略90°に設定されていてもよい。また、各第2の片部分47,57の形状は、図4等に示された形状に限られることなく、図19に示されるように、第1の片部分46,56と同様な形状であってもよい。その際は、第2の片部分47,57がフォーミングピンの対向方向から傾いて屈曲しないように、適宜、切欠き部79の形状、傾斜面の傾斜角等を調整することが好ましい。
本実施形態では、コア10としてドラムコアを採用しているが、これに限られるものではない。例えば、一対の巻芯部と、当該一対の巻芯部の軸方向の両端に形成された一対の鍔部とを有する形状であってもよい。
本実施形態では、フォーミング装置60をコモンモードフィルタ1に適用しているが、これに限られることなく、コモンモードフィルタ以外の電子部品(例えば、巻線30が1本あるいは3本以上有するインダクタ部品等)に本発明を適用してもよい。
1…コモンモードフィルタ、60…フォーミング装置、62…軸、64A,64B…対面部、65A,65B…軸支孔、66…ガイドホルダ、68A,68B…アーム、70A,70B…ガイド部、72,74…面部、78A,78B…フォーミングピン、79…切欠き部、79a,79b…傾斜面、80…コイルばね、I…軸線。