さて、図1に、後記の本発明を適用する1実施形態に係るレーザシステムの構成図を示す。また、図2(a)は発振用チャンバ及びその近傍の構成図であり、図2(b)は増幅用チャンバ及びその近傍の構成図である。図1ではMOPO方式の2ステージレーザ装置を示している。
2ステージレーザ装置2においては、発振段レーザ(osc )100でシード光(種レーザ光)が生成され狭帯域化される。そして、増幅段レーザ(amp )300でそのシード光が増幅される(以後、“osc ”、“amp ”の付加された記号は、それぞれ発振段レーザ100、増幅段レーザ300に関するものであることを表す。)。すなわち、発振段レーザ100から出力されるレーザ光のスペクトル特性によってレーザシステム全体のスペクトル特性が決定され、増幅段レーザ300によってレーザシステム自体のレーザ出力(エネルギ又はパワー)が決定される。増幅段レーザ300から出力されるレーザ光は露光装置3に入力され、このレーザ光は露光対象(例えばウエハ)の露光に用いられる。
発振段レーザ100は、発振用チャンバ10と、充電器11と、発振用高電圧パルス発生器12と、ガス供給・排気ユニット14と、冷却水供給ユニット15と、LNM16と、フロントミラー17と、第1モニタモジュール19と、放電検出部20とで構成される。
増幅段レーザ300は、増幅用チャンバ30と、充電器31と、増幅用高電圧パルス発生器32と、ガス供給・排気ユニット34と、冷却水供給ユニット35と、リアミラー36と、出力ミラー37と、第2モニタモジュール39とで構成される。
ここで、発振段レーザ100と増幅段レーザ300について説明するが、その構成は同一の部分があるため、その部分に関しては発振段レーザ100を代表して説明する。
発振用チャンバ10の内部には、所定距離だけ離隔し、互いの長手方向が平行であってかつ放電面が対向する一対の電極(カソード電極及びアノード電極)10a、10bが設けられる。これらの電極10a、10bには、充電器11と発振用高電圧パルス発生器12とで構成された電源によって高電圧パルスが印加される。すると、電極10a、10b間で放電が生じ、この放電によって発振用チャンバ10内に封入されたレーザガスが励起される。この電源の1例を図3に示す。
図3は、電源及びチャンバ内部の回路構成の1例を示す図である。
図3(a)に示す発振用高電圧パルス発生器12は、可飽和リアクトルからなる3個の磁気スイッチSR1 、SR2 、SR3 を用いた2段の磁気パルス圧縮回路である。磁気スイッチSR1 は固体スイッチSWでのスイッチングロスを低減するために設けられたものであり、磁気アシストとも呼ばれる。例えば、この固体スイッチSWには、IGBT等の半導体スイッチング素子が用いられる。なお、図3(a)の回路を用いる代わりに、図3(b)の回路を用いてもよい。図3(a)は、磁気パルス圧縮回路に加え昇圧トランスTr1 を含む回路であり、図3(b)は昇圧トランスの代わりに主コンデンサC0 の充電用のリアクトルL1 を含む例である。
以下に、図3(a)に従って、回路の構成と動作を説明する。なお、図3(b)の回路は昇圧トランスにより昇圧される動作がないだけで、他の動作は図3(a)の回路と同様なので、説明を省略する。また、発振段レーザ100の電源と増幅段レーザ300の電源の構成及び動作は同じであるため、増幅段レーザ300の電源の説明を省略する。
充電器11の電圧は所定の値HVに調整され、主コンデンサC0 が充電される。このとき、固体スイッチSWはオフになっている。主コンデンサC0 の充電が完了し、固体スイッチSWがオンとなったとき、固体スイッチSWの両端にかかる電圧は主に磁気スイッチSR1 の両端にかかる。磁気スイッチSR1 の両端にかかる主コンデンサC0 の充電電圧V0 の時間積分値が磁気スイッチSR1 の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR1 が飽和して導通状態となる。すると、主コンデンサC0 、磁気スイッチSR1 、昇圧トランスTr1 の1次側、固体スイッチSWのループに電流が流れる。同時に、昇圧トランスTr1 の2次側、コンデンサC1 のループに電流が流れ、主コンデンサC0 に蓄えられた電荷がコンデンサC1 に移行し、コンデンサC1 が充電される。
コンデンサC1 における電圧V1 の時間積分値が磁気スイッチSR2 の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR2 が飽和して導通状態となる。すると、コンデンサC1 、コンデンサC2 、磁気スイッチSR3 のループに電流が流れ、コンデンサC1 に蓄えられた電荷がコンデンサC2 に移行し、コンデンサC2 が充電される。
コンデンサC2 における電圧V2 の時間積分値が磁気スイッチSR3の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR3 が飽和して導通状態となる。すると、コンデンサC2 、ピーキングコンデンサCp 、磁気スイッチSR3 のループに電流が流れ、コンデンサC2 に蓄えられた電荷がピーキングコンデンサCp に移行し、ピーキングコンデンサCp が充電される。
図3(a)に示すように、発振用チャンバ10内には、第1電極91と、誘電体チューブ92と、第2電極93とからなる予備電離手段が設けられている。予備電離のためのコロナ放電は、第1電極91が挿入されている誘電体チューブ92と第2電極93とが接触している個所を基点として誘電体チューブ92の外周面に発生する。ピーキングコンデンサCp の充電が進むにつれてその電圧Vp が上昇し、電圧Vp が所定の電圧になると誘電体チューブ92の外周面にコロナ放電が発生する。このコロナ放電によって誘電体チューブ92の外周に紫外線が発生し、一対の電極10a、10b間のレーザガスが予備電離される。
ピーキングコンデンサCp の充電がさらに進むにつれて、ピーキングコンデンサCp の電圧Vp が上昇する。この電圧Vp がある値(ブレークダウン電圧)Vb に達すると、一対の電極10a、10b間のレーザガスが絶縁破壊されて主放電が開始される。この主放電によりレーザ媒質が励起される。そして、発振段レーザ100の場合はシード光が発生し、増幅段レーザ300(若しくは増幅器)の場合は注入されたシード光が増幅される。主放電によりピーキングコンデンサCp の電圧は急速に低下し、やがて充電開始前の状態に戻る。
固体スイッチSWのスイッチング動作によってこのような放電動作が繰り返し行われることで、パルスレーザ発振が行われる。固体スイッチSWのスイッチング動作は、外部からのトリガ信号に基づき行われる。このトリガ信号を送出する外部コントローラは、例えば後述する同期コントローラ8である。
本実施形態では、磁気スイッチSR2 、SR3 及びコンデンサC1 、C2 で2段の容量移行型回路が構成されている。容量移行型回路では、後段に行くにつれて各段のインダクタンスを小さくするように設定すれば、各段を流れる電流パルスのパルス幅が順次狭くなるようなパルス圧縮動作が実現される。結果として、一対の電極10a、10b間、一対の電極30a、30b間に短パルスの強い放電が実現される。
ここで図1に戻り、他の構成の説明をする。
発振用チャンバ10の内部には、ガス供給・排気ユニット14から供給されるレーザガスが封入される。ガス供給・排気ユニット14には、発振用チャンバ10内にレーザガスを供給するガス供給系と、発振用チャンバ10内のレーザガスを排気するガス排気系とが設けられる。本レーザ装置がフッ素分子(F2 )レーザとして使用される場合は、ガス供給・排気ユニット14は、フッ素(F2 )ガスと、ヘリウム(He)やネオン(Ne)等からなるバッファガスとを発振用チャンバ10に供給する。また、本レーザ装置がKrFエキシマレーザとして使用される場合は、ガス供給・排気ユニット14は、クリプトン(Kr)ガス及びフッ素(F2 )ガスと、ヘリウム(He)やネオン(Ne)等からなるバッファガスとを発振用チャンバ10に供給する。また、本レーザ装置がArFエキシマレーザとして使用される場合は、ガス供給・排気ユニット14は、アルゴン(Ar)ガス及びフッ素(F2 )ガスと、ヘリウム(He)やネオン(Ne)等からなるバッファガスとを発振用チャンバ10に供給する。各ガスの供給及び排気は、ガス供給・排気ユニット14の各バルブの開閉で制御される。
また、発振用チャンバ10の内部には、クロスフローファン10cが設けられる。クロスフローファン10cによってレーザガスがチャンバ内で循環され、電極10a、10b間に送り込まれる。
また、発振用チャンバ10の内部には、熱交換器10dが設けられる。熱交換器10dは冷却水によって発振用チャンバ10内の排熱を行う。冷却水は冷却水供給ユニット15から供給される。冷却水の供給は、冷却水供給ユニット15のバルブの開閉で制御される。
発振用チャンバ10において、レーザ光の光軸上であってレーザ光出力部分には、ウィンドウ10e、10fが設けられる。ウィンドウ10e、10fは、レーザ光に対して透過性がある材料、例えばCaF2 等で形成される。両ウィンドウ10e、10fは、外側の面が互いに平行に配置され、また、レーザ光に対して反射損失を低減すべくブリュースタ角で設置され、さらにレーザ光の直線偏光方向がp偏光になるに設置される。
圧力センサPl は、発振用チャンバ10内のガス圧力をモニタしており、ガス圧力を示す信号をユーティリティコントローラ5に出力する。ユーティリティコントローラ5は、後述する処理に基づいて、ガス供給・排気ユニット14に各バルブの開閉及びその開度(又は、ガス流量)を指示する信号を生成し出力する。すると、ガス供給・排気ユニット14が各バルブの開閉を制御するため、発振用チャンバ10内のガス組成やガス圧力が制御される。
レーザ出力はガス温度によって変化する。そこで、温度センサTl は、発振用チャンバ10内の温度をモニタしており、温度を示す信号をユーティリティコントローラ5に出力する。ユーティリティコントローラ5は発振用チャンバ10内の所望温度にすべく、冷却水供給ユニット15にバルブの開閉及びその開度(又は、冷却水流量)を指示する信号を生成し出力する。すると、冷却水供給ユニット15がバルブの開閉を制御するため、発振用チャンバ10内の熱交換器10dに供給される冷却水の流量、すなわち排熱量が制御される。
発振用チャンバ10の外部であり、ウィンドウ10e側のレーザ光の光軸上にはLNM16が設けられ、ウィンドウ10f側のレーザ光の光軸上にはフロントミラー17が設けられる。LNM16は、例えば拡大プリズムと波長選択素子であるグレーティング(回折格子)等の光学素子で構成される。また、LNM16は波長選択素子であるエタロンと全反射ミラー等の光学素子で構成される場合もある。このLNM16内の光学素子とフロントミラー17とでレーザ共振器が構成される。
第1モニタモジュール19は、フロントミラー17を透過したレーザ光のエネルギや出力線幅や中心波長等のレーザビーム特性をモニタする。第1モニタモジュール19はレーザ光の中心波長を示す信号を生成し、この信号を波長コントローラ6に出力する。また、第1モニタモジュール19はレーザ光のエネルギを測定し、このエネルギを示す信号をエネルギコントローラ7に出力する。
なお、増幅用チャンバ30の電極30a、30b、クロスフローファン30c、熱交換器30d、ウィンドウ30e、30fの構成及び機能は、上述した発振用チャンバ10の各部の構成及び機能と同じである。また、増幅段レーザ300に設けられた充電器31、増幅用高電圧パルス発生器32、ガス供給・排気ユニット34、冷却水供給ユニット35、第2モニタモジュール39、圧力センサP2 、温度センサT2 の構成及び機能は、上述した発振段レーザ100側に設けられた同一要素の構成及び機能と同じである。
一方、増幅段レーザ300には、発振段レーザ100で設けられたLNM等からなる共振器に代わり、次に述べる不安定共振器が設けられる。
増幅用チャンバ30の外部であり、ウィンドウ30e側のレーザ光の光軸上にはリアミラー36が設けられ、ウィンドウ30f側のレーザ光の光軸上には出力ミラー37が設けられる。リアミラー36と出力ミラー37とで不安定型共振器が構成される。リアミラー36の反射面は凹面であって、その中央部にはミラー後方側から反射面側へレーザ光を通過させる孔が設けられる。リアミラー36の反射面はHR(High Reflection )コートが施される。出力ミラー37の反射面は凸面であって、その中央部にはHR(High Reflection )コートが施され、中央部周囲にはAR(Anti Reflection )コートが施される。なお、リアミラー36としては、中央に孔が開いたものを使用するのではなく、孔に相当する部分のみARコートが施されたミラー基板を使用してもよい。
発振段レーザ100のフロントミラー17と増幅段レーザ300のリアミラー36との間には、反射ミラーを含むビーム伝搬部42が設けられる。
フロントミラー17を透過したレーザ光は、ビーム伝搬部42によってリアミラー36まで案内される。さらに、このレーザ光はリアミラー36の孔を通過し、増幅用チャンバ30内を通過し、出力ミラー37の中央部で反射される。出力ミラー37で反射されたレーザ光は、増幅用チャンバ30内を通過し、リアミラー36の孔周囲で反射される。さらに、リアミラー36で反射されたレーザ光は、増幅用チャンバ30内を通過し、出力ミラー37の中央部周囲を透過し出力される。レーザ光が増幅用チャンバ30の放電部、すなわち電極30a、30b間を通過する際に放電が発生すると、レーザ光のパワーは増幅される。
また ここにおいて、図4に示すように、増幅段レーザ300として、発振段レーザ100で設けられたLNM等からなる共振器に代わり、次に述べる安定共振器を設けてもよい。
すなわち、増幅用チャンバ30の外部であり、ウィンドウ30e側のレーザ光の光軸上にはリアミラー36が設けられ、ウィンドウ30f側のレーザ光の光軸上には出力ミラー37が設けられる。リアミラー36と出力ミラー37とは、共にその反射面が平面から構成された安定型共振器である。リアミラー36の反射面には、反射率が50%〜95%程度の部分反射膜が蒸着されており、出力ミラー37の反射面は反射率が10%〜50%の部分反射膜が蒸着されている。なお、ミラー内部での多重反射を防ぐために、それぞれのミラーの裏面にはARコートが蒸着されており、さらには、多少(10′〜1°) のエッジ角を持っていることが望ましい。
発振段レーザ100のフロントミラー17と増幅段レーザ300のリアミラー36との間には、反射ミラーを含むビーム伝搬部42が設けられる。
フロントミラー17を透過したレーザ光は、ビーム伝搬部42によってリアミラー36まで案内される。さらに、このレーザ光はリアミラー36の部分反射膜を一部が透過して増幅用チャンバ30内を通過し、出力ミラー37の部分反射膜にて一部が反射される。出力ミラー37で反射された一部のレーザ光は、増幅用チャンバ30内を通過し、リアミラー36の部分反射膜で一部が反射される。さらに、リアミラー36で反射された一部のレーザ光は、増幅用チャンバ30内を通過し、出力ミラー37の部分反射膜を一部が透過して出力される。レーザ光が増幅用チャンバ30の放電部、すなわち電極30a、30b間を通過する際に放電が発生すると、レーザ光のパワーは増幅される。
図1に戻って、波長コントローラ6には、モニタモジュール19、39にて検出された波長に関しての信号が入力される。波長コントローラ6は、レーザ光の中心波長を所望の波長にすべく、LNM16内の波長選択素子(グレーティング、エタロン等)の選択波長を変化させる信号を生成し、この信号をドライバ21に出力する。波長選択素子の選択波長は、例えば、波長選択素子へ入射するレーザ光の入射角を変化させることにより変化する。ドライバ21は、受信した上記信号に基づき、波長選択素子へ入射するレーザ光の入射角が変化するように、LNM16内の光学素子(例えば、拡大プリズム、全反射ミラー、グレーティング等)の姿勢角等を制御する。
なお、波長選択素子の波長選択制御はこれに限られるものではない。例えば、波長選択素子がエアギャップエタロンの場合、LNM16内のエアギャップ内の気圧(窒素等)を制御してもよいし、ギャップ間隔を制御してもよい。
エネルギコントローラ7には、モニタモジュール19、39にて検出された出力に関しての出力信号が入力される。また、図1に示すように、露光装置3に出力モニタ51を設け、その出力信号がエネルギコントローラ7に直接入力されるようにしてもよい。また、露光装置3の出力モニタ51の出力信号を露光装置3のコントローラ52に入力し、このコントローラ52がレーザ内部に搭載されたエネルギコントローラ7に信号を送出するようにしてもよい。エネルギコントローラ7は、後述する処理に基づいて、パルスエネルギを所望の値にすべく、次回充電電圧Vosc 、Vamp を示す信号を生成し、この信号を同期コントローラ8に出力する。
同期コントローラ8には、エネルギコントローラ7からの信号と、放電検出器20、40から出力される各チャンバ10、30における放電開始を知らせる信号とが入力される。同期コントローラ8は、エネルギコントローラ7からの信号に基づいて、充電器11の充電電圧を制御する。ところで、発振用チャンバ10の放電と増幅用チャンバ30の放電のタイミングがずれると、発振用チャンバ10から出力されたレーザ光は増幅用チャンバ30で効率良く増幅されない。そこで、発振用チャンバ10から出力されたレーザ光(シード光)が増幅用チャンバ30内の一対の電極30a、30b間の放電領域(励起領域)に満たされたタイミングで、増幅用チャンバ30において放電する必要がある。
ここで、発振段レーザ100と増幅段レーザ300の放電タイミングについて説明する。
先に述べたように、発振用チャンバ10内の電極10a、10b間、及び、増幅用チャンバ30内の電極30a、30b間に、立上り時間の速い高電圧パルスを印加するために、それぞれ磁気パルス圧縮回路を有する発振用高電圧パルス発生器12と、増幅用高電圧パルス発生器32が用いられる。一般的に、各高電圧パルス発生器12、32の磁気パルス圧縮回路で用いられる磁気スイッチSR2 、SR3 は可飽和リアクトルである。主コンデンサC0 からエネルギ(電圧パルス)が転送される場合、この磁気スイッチSR2 、SR3 にかかる電圧(V:すなわち主コンデンサC0 の充電電圧)と磁気スイッチSR2 、SR3 によってパルス圧縮されて転送される電圧パルスの転送時間(t)との積(Vt積)の値は一定と言う関係がある。例えば、主コンデンサC0 の充電電圧が高くなると、電圧パルスの転送時間(すなわち、磁気スイッチがオン状態である時間)が短くなる。
図5に、モニタモジュール19及びモニタモジュール39の内部を詳細に示す。なお、その中の波長検出器及びスペクトル線幅検出器は、必要に応じて発振側モニタモジュール19若しくは増幅側モニタモジュール39の何れか1つにすることが可能である。
以下、図5において、代表的に発振側モニタモジュール19について説明する。フロントミラー17を透過したレーザ光(シード光)がモニタモジュール19に入射する。ビームスプリッタ61によりそのレーザ光の一部を取り出してレーザ特性の計測に用いられる。残りの大部分のレーザビームはビームスプリッタ61を透過して増幅段レーザ300に入力される。
ビームスプリッタ61で反射されたレーザ光において、さらにビームスプリッタ62を反射した分岐ビームが拡散板63を経由してエネルギ検出器64において検知される。拡散板63はすりガラス等でなり、これはエネルギ検出器64へ向かうレーザ光を拡散してその空間分布を均一化する作用を持ち、エネルギ検出器64の感度分布等の影響による検出精度低下を防止する役目を持つ。
また ビームスプリッタ62を透過したビームの一部はエタロン65、レンズ66、センサ67によって絶対波長及びスペクトル線幅を検出する。
このような2ステージレーザシステムにおける高精度エネルギ制御に関しては、特願2003−291463号にて提案されている。
そのような2ステージレーザシステムの高精度エネルギ制御の1例を図6、図7を参照にして説明する。
発振段レーザ100の制御のフローを図6に、増幅段レーザ300の制御のフローを図7に示す。
図7に示す制御では、増幅段レーザ300において、1バーストの中の1パルス目からNパルス目までは、増幅段レーザ300によるスパイク制御処理(Ampスパイク制御サブルーチン)が行われ、N+1パルス目からMパルス目までは、増幅段レーザ300による毎パルス制御処理(Amp毎パルス制御サブルーチン)が行われる。
発振段レーザ100と増幅段レーザ300は同期運転されており、発振段レーザ100と増幅段レーザ300の発振タイミングは同期コントローラ8によって制御されている。シード光の増幅を効率的に行うために、同期コントローラ8は、発振用高電圧パルス発生器12の固体スイッチSWに出力するトリガ信号と増幅用高電圧パルス発生器32の固体スイッチSWに出力するトリガ信号との間に遅延時間を設ける。
まず、図6を用いて、発振段レーザ100の制御について説明する。
ステップS1で、エネルギコントローラ7では、発振段レーザ100の印加電圧Vosc に予め定められた初期値が設定される。
次に、ステップS2で、設定された印加電圧Vosc にてレーザ発振が行われる。
次に、ステップS3で、第1モニタモジュール19でパルスエネルギPosc が測定され、このパルスエネルギPosc を示す信号がエネルギコントローラ7に出力される。
次に、ステップS4で、パルスエネルギPosc が増幅飽和領域の下限エネルギEs0以上であると判断された場合は、上述したステップS2以降の処理が行われ、前パルスと同一の印加電圧Vosc にてレーザ発振は継続される。しかし、レーザ発振の継続に伴いレーザガスは劣化していき、印加電圧Vosc が一定の値に維持され、かつ、後述するようなレーザガスの制御が行われない場合、パルスエネルギPosc は低下していく。そこで、パルスエネルギPosc が下限エネルギEs0を下回ったと判断された場合は、ステップS5で、パルスエネルギPosc を下限エネルギEs0以上にすべく、印加電圧Vosc に予め定められた補正値ΔVが加算される。補正値ΔVだけ印加電圧Vosc が増加されるため、パルスエネルギPosc は上昇し、下限エネルギEs0以上の状態に復帰する。
レーザ発振の継続によってレーザガスの劣化が進行すると、上述したような印加電圧Vosc の制御だけでは、パルスエネルギPosc を下限エネルギEs0以上の状態に維持することができなくなる。そこで、ステップS6で、ステップS5で補正値ΔVの加算によって補正された印加電圧Vosc と上限印加電圧Vmax との比較判断がなされる。上限印加電圧Vmax とは、発振用高電圧パルス発生器12に設けられた主コンデンサC0 の印加電圧設定範囲(すなわち、充電器11の電圧設定範囲)内での最大印加電圧のことを言う。
ステップS6での判断で、補正値ΔVの加算によって補正された印加電圧Vosc が上限印加電圧Vmax 未満の場合は、補正された印加電圧Vosc にて上述したステップS2以降の処理が行われ、レーザ発振は継続される。一方、補正値ΔVの加算によって補正された印加電圧Vosc が上限印加電圧Vmax 以上となった場合は、ガス制御サブルーチンS7に入り、ガス圧、ガス組成等を制御し、ガス制御処理が終了すると、さらに上述したステップS1以降の処理が行われ、レーザ印加電圧HVの制御範囲で、下限エネルギEs0以上、又は、より高いレーザ出力が得られるようにする。
その後、さらにレーザ発振が継続されると、このようなサブルーチンS7のようなガス制御を行っても、レーザ光のパルスエネルギPosc を維持できなくなり、チャンバ内のレーザガス全てを交換することが必要となる。このようなレーザガスの全交換を繰り返すうちに、チャンバ内の電極の摩耗等により、レーザガスの全交換を行ってもレーザ光のパルスエネルギが所望値に回復しなくなり、結果としてレーザの制御を行うことが不可能となる。その後で、所要のモジュール交換等を行って、再度下限エネルギEs0以上の状態でレーザ発振ができるようにする。
次に、図7を用いて、増幅段レーザ300の制御について説明する。
図7に示すように、増幅段レーザ300では、レーザ発振開始からNパルス目までの間はAmpスパイク制御処理が行われ、N+1パルス目からMパルス目までの間はAmp毎パルス制御処理が行われる。
レーザ発振開始前に以下の前処理が行われる。ステップS11において、メインコントローラ4又はエネルギコントローラ7では、バースト間のレーザ休止時間が図示しない休止時間カウンタで計時され、休止時間Tがモニタされている。
ステップS12において、露光装置3から発振指令が出力されると、休止時間の計時は停止され、休止時間Tのモニタは停止される。
本レーザシステムには、図示しないデータベースが設けられており、増幅段レーザ300の目標出力Ptarget及び増幅段レーザ300の休止時間と、Vtamp−Ptampデータテーブルとが対応付けられて記憶されている。Vtamp−Ptampデータテーブルとは、Ampスパイク制御処理における各パルス毎のデータ実績であり、増幅段レーザ300の印加電圧Vamp のデータVtampと増幅後のレーザパルスエネルギPamp のデータPtampとで構成されている。
ステップS13において、休止時間カウンタによって休止時間Tが特定され、この休止時間T及び目標出力Ptargetに対応するVtamp−Ptampデータテーブルが検索され、エネルギコントローラ7に取り入れられる。
そして、ステップS14で、休止時間カウンタはリセット(T=0)される。
上記前処理が終了すると、ステップS15で、レーザ発振パルスカウンタKに初期値1が設定され、ステップS16で、パルスカウンタKがNを超えるまで、以下の処理が繰り返し行われる。
ステップS17で、Vtamp−Ptampデータテーブルの中のkパルス目の出力Ptamp(k)と目標出力Ptargetとの差[ΔPtamp(k)=Ptamp(k)−Ptarget]が算出され、この算出結果ΔPtamp(k)を用いて、kパルス目の増幅段レーザ300の印加電圧の補正値ΔVamp (k)[ΔVamp (k)=C・ΔPtamp(k)、ただし、Cは定数]が算出される。次に、この補正印加電圧で実際の印加電圧Vamp (k)を決定する[Vtamp(k)=ΔVamp (k)+Vtamp(k)]。
そして、ステップS18で、印加電圧Vamp (k)にてkパルス目のレーザ発振が行われ、ステップS19そのパルス出力Pamp (k)が測定される。
次のステップS20で、レーザ発振及びパルス出力測定に伴い、先の休止時間T及び目標出力Ptargetに対応するVtamp−Ptampデータテーブルのデータの中、kパルス目の印加電圧Vtamp(k)と出力Ptamp(k)が、算出された実際の印加電圧データVtamp(k)と測定されたパルス出力データPtamp(k)で更新され、ステップS21で、レーザ発振パルスカウンタKに1がインクリメントされる。
ステップS16〜ステップS21の処理は繰り返し行われ、レーザ発振パルスカウンタKがNを超えた場合、Ampスパイク制御処理からAmp毎パルス制御処理に移行する(ステップS16の判断No)。
Amp毎パルス制御処理で使用されるレーザ発振パルスカウンタKは、Ampスパイク制御処理で使用されたパルスカウンタKと同一である。よって、Ampスパイク制御でカウントされたパルス数はAmp毎パルス制御処理に引き継がれる。
ステップS22において、1パルス前の増幅後のパルスエネルギPamp (k−1)と目標出力Ptargetとの差ΔPamp (k)[=Pamp (k−1)−Ptarget]が算出され、この算出結果ΔPamp (k)を用いて、kパルス目の増幅段レーザ300の印加電圧の補正値ΔVamp (k)[a* ΔPamp (k)、ただし、a* は定数]が算出される。
次のステップS23で、この補正値ΔVamp (k)及び1パルス前の印加電圧Vamp (k−1)を用いて、kパルス目の印加電圧Vamp (k)[=ΔVamp (k)+Vamp (k−1)]が算出される。
そして、ステップS24で、増幅段レーザ300のレーザ印加電圧HVを算出された印加電圧Vamp (k)に設定し、ステップS25で、その印加電圧Vamp (k)にてkパルス目のレーザ発振が行われる。
そして、ステップS26で、増幅後のパルスエネルギPamp (k)が測定される。
そして、ステップS25でのレーサ発振及びステップS26でのエネルギ測定に伴い、ステップS27で、パルスカウンタKに1がインクリメントされる。
そして、ステップS28において、この段階で、パルスカウンタKがMを超えていないと判断した場合は、次のステップS29で、増幅段レーザ300の印加電圧のチェックが行われる。増幅段レーザ300の印加電圧、すなわち増幅用高電圧パルス発生器32に設けられた主コンデンサC0 の印加電圧の上限値Vmax は予め設定されており、最新の印加電圧Vamp (k−1)が上限印加電圧Vmax 未満の場合は、再び上述したステップS22以降の処理が行われる。なお、増幅段レーザ300のレーザガスが劣化すると、レーザのパルスエネルギが低下する。パルスエネルギの低下を防ぐために、印加電圧Vamp は徐々に高くされる。ステップS29で、最新の充電電圧Vamp (k−1)が上限印加電圧Vmax 以上である場合は、ガス制御サブルーチンS30に入り、ガス圧、ガス組成等を制御し、ガス制御処理が終了すると、さらに上述したステップS22以降の処理が行われ、レーザ印加電圧HVの制御範囲で、目標出力Ptarget以上、又は、より高いレーザ出力が得られるようにする。
ステップS28において、パルスカウンタKが目標パルス数Mを超えたと判断した場合は、レーザ発振は停止され、レーザ発振が終了する。
ここで、以上に例示したようなエネルギ制御をする場合の、パルスエネルギ検出に関しての問題点を、図8を用いて説明する。図8は、図1、図4のような2ステージレーザシステムの主要部と信号を示す図である。
図6の発振段レーザ100の制御のフローのステップS3のパルスエネルギPosc の検出においては、第1モニタモジュール19の内部のエネルギ検出器64での検出信号を適切な較正係数η1 をもってエネルギに換算する。同様に、図7の増幅段レーザ300の制御のフローのステップS19、ステップS26のパルス出力Pamp (k)の検出においては、第2モニタモジュール39の内部のエネルギ検出器64’での検出信号を適切な較正係数η2 をもってエネルギに換算する。
図9に、発振段レーザ注入エネルギと増幅段レーザ出力の関係を示す。2ステージレーザシステムにおいては、同期出力を変化させる方法が主に2つある。1つ目は、発振段レーザ100のエネルギを変化させることである(横軸)。これは、発振段レーザ100のガス圧、発振段レーザ100の設定印加電圧を変えること等で実現できる。もう1つは、増幅段レーザ300のゲインを変更することであり、これは増幅段レーザ300のガス圧、増幅段レーザの設定印加電圧を変えること等で実現できる。
したがって、所定のエネルギを得るにも、発振段レーザ100のエネルギと増幅段レーザ300のゲインとの間には無数の組み合わせがある。
ところが、露光機用光源として適したレーザ品位を保つためにいくつか制約がある。以下にそれを説明する。
○ブロードバンド比率
発振段レーザのエネルギが低い領域においては、増幅段レーザのチャンバ内での自然放出光の増幅により、ブロードなスペクトルが発生してしまう(参考:特願2003−130447号)。したがって、所定のブロードバンド比率を満たすために、発振段レーザのエネルギの下限値(E1 )が存在する。
○エネルギばらつき
発振段レーザからの注入エネルギが低い領域での使用においては、図9からも分かるように、わずかな発振段レーザ注入エネルギの差が同期後のエネルギのばらつきとなってしまう。したがって、所定のエネルギばらつき以下に保つために、発振段レーザのエネルギの下限値(E2 )が存在する。
さらに、余りにも発振段レーザ注入エネルギが大きいと、光学的な負荷が高くなってしまい、劣化速度が急速に速くなり、レーザ寿命が極端に短くなってしまう。したがって、発振段レーザのエネルギの上限値(E3 )も存在する。
これらの条件を満たす領域の発振段レーザ出力にて、所定の同期出力が得られるように増幅段レーザ側のゲインを調整しながらレーザ運転を行っている。
ところが、実際に長期的に同期運転を行ってみたところ、発振段レーザのエネルギ検出器64での検出信号換算値Posc を見る限り、エネルギは下限閾値E1 を確実に上回っているにもかかわらず、増幅段レーザ300からの出力レーザ光におけるブロードバンド比率が仕様を満たさない場合や、同様に閾値E2 を上回っているにもかかわらず、エネルギばらつきが仕様から外れる場合が多々発生してしまった。
懸命な調査によって、この原因として、
(a)発振段レーザ100からの入射光が増幅段レーザ300のリアミラー36で一部反射し、それが再度発振段レーザ100のフロントミラー17で反射して検出器64に入射してしまう(図10)。
(b)増幅段レーザ300発振光の中、増幅段レーザ300のリアミラー36を透過する成分(後方への出力成分)が発振段レーザ100のフロントミラー17で反射して検出器64に入射してしまう(図11)。
以上の原因により、発振段レーザエネルギ検出器64での検出値が実際の発振段レーザエネルギに対して過剰に測定されていることが判明した。
図12(a)〜(c)は、何れも縦軸に第1モニタモジュール19での検出信号量をプロットしたものであり、上記(a)、(b)及び真の発振段レーザ出力をそれぞれ分離したものを示す。分離する方法は、後述されているように、発振段レーザ100単体のみで発振を行ったり、途中にシャッタを配置することで可能となるが、その方法は何れの方法を用いてもよい。
図12(a)は、第1モニタモジュール信号量が同じでも、同期出力が異なる場合で、上記(a)(図10)で示した再反射が発振段レーザ出力に比例して入射してしまうことによる過剰検出(反射成分)と、上記(b)(図11)で示した増幅段レーザからのリアミラー透過エネルギが同期出力(MOPO出力)に略比例して入射してしまうことによる過剰検出(リア出力)とがある。
ここで、目標エネルギが変化した場合、検出値における過剰検出の割合も変化してしまう。
上述したような過剰検出がある場合、図12(b)に示すように、発振段レーザエネルギ検出値での検出をエネルギに換算した値Eでは、E1 <E,E2 <Eを満たしていても、真の発振段レーザ出力(MO出力)E0 は、E0 <E1 となることが有り得る。
また、図12(a)を用いて説明したように、過剰に測定される信号量は同期出力に依存する。上記の過剰検出を考慮して、図12(c)に示すように、単に閾値をE1'>E1 ,E2'>E2 と高めに設定した場合においても、考慮したMOPOエネルギよりも出力が大きくなると、やはり閾値E1 ,E2 を下回る場合が出てくる。また、余りに過剰に閾値を高くすると、不必要に発振段レーザ出力を上げることにつながり、上述したように、寿命低下を招いてしまう。
可視域においては、このような増幅段レーザからの反射成分や、増幅段レーザの後方への出力成分による発振段レーザ出力の過剰検出の問題の解決のために、特許文献3に示されているように、発振段レーザと増幅段レーザの間に光アイソレータがよく用いられる。これはファラデーローテータ等からなり、一方からの入射に対しては高透過率であるのだが、他方からの入射に対しては極めて低い透過率を持つものである。これにより、増幅段レーザの後方への出力成分や増幅段レーザからの反射成分(以下、これらを含めて余剰光と呼ぶ。)の検出器への入射を防ぐことができ、正確に発振段レーザエネルギの検出が可能となる。ところが、エキシマレーザのような紫外域のレーザ光においては、このような効果を持つ素子はなく、また、あったとしても透過率が低く、寿命も短く、実用にならなかった。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、発振段レーザと増幅段レーザからなる2ステージレーザにおいて、余剰光による検出器のオフセットを補正することによりレーザ特性をより安定化するようにすることである。
上記目的を達成する本発明の2ステージレーザのエネルギ制御装置は、発振段レーザと、発振段レーザで発振されたレーザ光をシード光として入力してそのシード光を増幅して出力する増幅段レーザとからなり、発振段レーザ、増幅段レーザ共にレーザガスが充填されたチャンバーを備えており、増幅段レーザが共振器を備えている2ステージレーザにおいて、
前記発振段レーザと前記増幅段レーザの間に前記シード光の一部を分岐して前記シード光のエネルギを検出する第1モニタモジュールと、前記増幅段レーザのレーザ光発振側に配置され前記2ステージレーザから出力される出力レーザ光の一部を分岐して出力レーザ光のエネルギを検出する第2モニタモジュールとを備え、
前記第1モニタモジュールで検出されたエネルギ検出値から、前記増幅段レーザから後方へ出力される成分に基づく過剰検出成分と、前記シード光が前記増幅段レーザの前記共振器で反射されて戻る成分に基づく過剰検出成分の少なくとも一方を補正してシード光エネルギ値とする補正手段を備えており、
前記補正手段で補正されたシード光エネルギ値に基づいてシード光のエネルギ制御を行うことを特徴とするものである。
この場合に、前記補正手段には、前記増幅段レーザから後方へ出力される成分に基づく過剰検出成分を補正する補正係数βと、前記シード光が前記増幅段レーザの前記共振器で反射されて戻る成分に基づく過剰検出成分を補正する補正係数αの少なくとも一方を算出する補正係数算出手段を備えており、前記補正手段では、前記補正係数βとαの少なくとも一方を用いて前記増幅段レーザから後方へ出力される成分に基づく過剰検出成分と、前記シード光が前記増幅段レーザの前記共振器で反射されて戻る成分に基づく過剰検出成分の少なくとも一方を補正してシード光エネルギ値とすることが望ましい。
この際、前記増幅段レーザと前記第1モニタモジュールの光分岐手段の間に光路を閉鎖するシャッタ手段が配置され、前記補正係数算出手段では、前記シャッタ手段を閉じて前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記シャッタ手段を開いて前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値との比から前記補正係数αを算出し、また、前記発振段レーザと前記増幅段レーザとを同期して前記2ステージレーザを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記第2モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記シャッタ手段を開いて前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値とから、前記補正係数βを算出するようにすることができる。
あるいは、前記増幅段レーザと前記第1モニタモジュールの光分岐手段の間に光路を閉鎖するシャッタ手段が配置され、前記補正係数算出手段では、前記シャッタ手段を閉じて前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値と、前記シャッタ手段を開いて前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値との比から前記補正係数αを算出し、また、前記発振段レーザと前記増幅段レーザとを同期して前記2ステージレーザを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値と、前記シャッタ手段を開いて前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値と、前記2ステージレーザの発振条件によって一定に制御される出力レーザ光のエネルギ指令値とから、前記補正係数βを算出するようにすることもできる。
また、前記補正係数算出手段では、前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記発振段レーザと前記増幅段レーザとを同期して前記2ステージレーザを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記第2モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値とから、前記補正係数βを算出し、予め見込んだ補正係数α”を前記補正係数αとすることもできる。
本発明のもう1の2ステージレーザのエネルギ制御装置は、発振段レーザと、発振段レーザで発振されたレーザ光をシード光として入力してそのシード光を増幅して出力する増幅段レーザとからなり、発振段レーザ、増幅段レーザ共にレーザガスが充填されたチャンバーを備えており、増幅段レーザが共振器を備えている2ステージレーザにおいて、
前記発振段レーザと前記増幅段レーザの間に前記シード光の一部を分岐して前記シード光のエネルギを検出する第1モニタモジュールと、前記増幅段レーザから後方へ出力される成分の一部を分岐して前記増幅段レーザから後方へ出力される成分のエネルギを検出する第3モニタモジュールとを備え、
前記第1モニタモジュールで検出されたエネルギ検出値と、前記第3モニタモジュールで検出されたエネルギ検出値とから、少なくとも前記増幅段レーザから後方へ出力される成分に基づく過剰検出成分を補正してシード光エネルギ値とする補正手段を備えており、
前記補正手段で補正されたシード光エネルギ値に基づいてシード光のエネルギ制御を行うことを特徴とするものである。
この場合に、前記補正手段には、前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記3モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値との比から補正係数γを算出し、また、、前記発振段レーザと前記増幅段レーザとを同期して前記2ステージレーザを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記第3モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記発振段レーザのみを発振させた場合に前記第1モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値と、前記3モニタモジュールで検出されるエネルギ値又はエネルギ対応値とから、補正係数βを算出する補正係数算出手段を備えており、前記補正手段では、算出された前記補正係数βとγを用いて前記増幅段レーザから後方へ出力される成分に基づく過剰検出成分を補正してシード光エネルギ値とすることもできる。
本発明は、以上の2ステージレーザのエネルギ制御装置を備えた2ステージレーザと、前記2ステージレーザから出力される出力レーザ光を用いて露光対象を露光する露光装置とを備えている2ステージレーザシステムも含まれるものである。
この場合に、前記2ステージレーザは、KrFレーザ、ArFレーザ、フッ素分子レーザの何れかであることが望ましい。
本発明によると、発振段レーザと増幅段レーザとからなり、増幅段レーザが共振器を有する2ステージレーザのエネルギ制御に欠かせない発振段レーザエネルギ検出において、増幅段レーザから後方へ出力される成分に基づく過剰検出成分と、発振段レーザからのシード光が増幅段レーザの共振器で反射されて戻る成分に基づく過剰検出成分の少なくとも一方を補正して、発振段レーザエネルギの正確な検出を行うことができるため、2ステージレーザからの出力レーザ光が、露光用レーザ装置に必要とされるブロードバンド比率やエネルギばらつきに関しての仕様から外れることがなくなり、また、寿命低下を起こすことがなくなる。
以下、本発明の2ステージレーザのエネルギ制御装置を実施例に基づいて説明する。
図13に、本発明の2ステージレーザのエネルギ制御装置の第1の実施形態の主要部の構成を示す。
この実施形態においては、第1モニタモジュール19内のエネルギ検出器64へビームを分岐するビームスプリッタ61と増幅段レーザ300のシード光が注入されるリアミラー36との間に、シャッタ68を設ける。このシャッタ68を閉じたときにシャッタ68での反射光の検出を防ぐために、図示のように、シャッタ面の法線が光軸に対して少し角度をなすようにシャッタ68を配置することが望ましい。また、このシャッタ68は指令により自動的に開閉可能なように構成されている。なお、第2モニタモジュール39内には、増幅段レーザ300からの出力レーザ光をエネルギ検出器64’へ分岐するビームスプリッタ61’が配置されている。
本発明の特徴である「高精度な発振段レーザ出力検出」に主眼を置いた制御のフローチャートを図14に示す。以下に、このフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS1001で、露光用光源としてのエキシマレーザの初期調整が行われる。又は、「高精度な発振段レーザ出力検出」に影響を与え得るモジュールのメンテナンスが実施される。ここで、本発明ににおける「高精度な発振段レーザ出力検出」に影響を与え得るモジュールとしては、図1、図4における、発振用チャンバ10、LNM16,フロントミラー17、第1モニタモジュール19、ビーム伝搬部42、増幅用チャンバ30、リアミラー36、出力ミラー37、第2モニタモジュール39等である。
次に、ステップS1002で、後で詳細に説明する「補正係数α,β算出」サブルーチンを実行する。
次に、ステップS1003で、本発明による2ステージレーザの発振動作をさせて露光装置3での「露光動作」を行う。その詳細は特に説明しない。この工程において良好な露光を保つために、「エネルギ制御」を行う必要があるのである。
2ステージレーザシステムにおける高精度エネルギ制御に関しては、前記した特願2003−291463号にて提案されているので、ここでは詳細は記述しないが、図6、図7で例示したようなものである。この「エネルギ制御」の工程においては、「パルスエネルギPosc の検出」(図6のステップS3)がある。この検出ステップにおいて、本発明で提案するように、補正係数α,βを用いて高精度に発振段レーザ出力を検出することが可能となる。この「パルスエネルギPosc の検出」サブルーチンに関しては、後で詳細に説明する。
次いで、ステップS1004で、一連の「露光動作」が終了した後に、直前の「補正係数α,βの算出」から一定時間T0 が過ぎたかを確認する(Tcal >T0 )。T0 を超えていた場合は、再度ステップS1002の「補正係数α,βの算出」を実施する。
ここで、一定時間T0 は、典型的には1週間程度である。なぜなら、余りにT0 を小さく設定すると、「露光動作」の妨げになってしまう。また、余りにT0 を大きく設定すると、各種ミラーの反射率変化等の経時変化のために、検出誤差が大きくなってしまう恐れがある。
その後、ステップS1005で、直前の「補正係数α,βの算出」からの発振パルス数が所定数S0 を過ぎたかを確認する(Scal >S0 )。この所定数S0 も、上記と同様の理由で、S0 は100Mpls程度に設定するのが望ましい。S0 を超えていた場合は、再度ステップS1002の「補正係数α,βの算出」を実施する。S0 を超えていない場合は、再度ステップS1003の「露光動作」を継続する。
上記図14のフローチャートでは、ステップS1002の「補正係数α,βの算出」を実施するための条件として、時間Tcal と発振パルス数Scal との両方を参照したが、時間のみを観察するようなの形態であっても構わないし、発振パルス数のみを観察する形態であっても構わない。
また、ステップS1003の「露光動作」は、装置スループット確保のためにむやみに止めることはできない。したがって、実際の「補正係数α,βの算出」のタイミングとしては、露光装置3がそれを許容したときのみに限定され、例えば定期的に行われる「ガス交換」の後等に実行される。
この「補正係数α,β算出」サブルーチンを図15に示す。
まず、ステップS1101で、補正間隔確認のために設けられたタイマをリセットする(時間時間Tcal 及び発振パルス数Scal )。
次に、ステップS1102で、補正が新規である場合(図14のステップS1001を経由した場合)は、次のステップS1103の工程をスキップする。そうでない場合(図14のステップS1004、S1005を経由した場合)は、次のステップS1103の工程に進む。
ステップS1103では、これまでに用いていた補正係数α,βをそれぞれα’,β’として記憶する。これは以下に示すように、補正前後での係数の差を比較するためである。
次いで、ステップS1104において、第1モニタモジュール19内のシャッタ68(シャッタ1)を閉める。
次に、ステップS1105で、シャッタ68を閉じた状態で、発振段レーザ100(MO)のみ発振を行う。
そして、ステップS1106で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Va を取得、記憶する。
次に、ステップS1107で、別途算出されるエネルギ補正係数η1 によってVa から発振段レーザ出力エネルギ(MO出力エネルギ)Ea が算出される。すなわち、
MO出力エネルギEa =η1 ・Va
ここで、η1 は、エネルギ検出器64での検出信号をエネルギに変換するための係数であり、カロリメータ等によって換算が行われる。このエネルギ補正係数η1 の算出の詳細は省く。
次に、ステップS1108で、シャッタ68(シャッタ1)を開ける。
そして、ステップS1109で、ステップS1105と同じ条件(ただし、シャッタ68を開けた状態)において、発振段レーザ100(MO)のみ発振を行う。
ここで、同じ条件とは、ガス条件、印加電圧等、レーザ出力に影響を与える可能性があるものに関して同一条件とすることを意味する。
その状態で、ステップS1110で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Vb を取得、記憶する。
次いで、ステップS1111で、エネルギ補正係数η1 によってVb から発振段レーザ出力エネルギ(MO出力エネルギ)Eb が算出される。すなわち、
MO出力エネルギEb =η1 ・Vb
次に、ステップS1112で、上記のEa 及びEb を用いて、補正係数αを算出する。すなわち、
α=Eb /Ea
次に、ステップS1113で、発振段レーザ100(MO)に関しては、ステップS1105と同じ条件において2ステージレーザ(MOPO)の発振を行う。
次いで、ステップS1114で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で信号Vc を読みこむ。また、第2モニタモジュール39(モニタモジュール2)のエネルギ検出器64’(エネルギ検出器2)で信号Vd を読みこむ。
そして、ステップS1115で、エネルギ補正係数η1 によってVc から発振段レーザ出力エネルギ(MO出力エネルギ)Ec が算出される。すなわち、
MO出力エネルギEc =η1 ・Vc
また、エネルギ補正係数η2 によって、Vd から2ステージレーザ(MOPO)出力エネルギEd が算出される。すなわち、
MOPO出力エネルギEd =η2 ・Vd
ここで、η2 は、エネルギ検出器64’での検出信号をエネルギに変換するための係数であり、カロリメータ等によって換算が行われる。このエネルギ補正係数η2 の算出の詳細は省く。
そして、ステップS1116で、算出されたEb 、Ec 、Ed により、補正係数βを算出する。すなわち、
β=Ed /(Ec −Eb )
次に、ステップS1117で、補正が新規である場合(図14のステップS1001を経由した場合)は、この「補正係数α,β算出」サブルーチンを終え(「リターン」)、そうでない場合(図14のステップS1004、S1005を経由した場合)は、次のステップS1118の工程に進む。
ステップS1118では、補正前の係数α’,β’(ステップS1103)と補正後の係数α,βを比較する。差異が大きい場合は、各種ミラー透過率の経時変化の可能性があり、そのまま露光を続けた場合、エネルギ検出誤差が大きくなって良好にレーザ特性を維持できない恐れがある。したがって、診断員に状況を確認してもらうべく、エラー信号を出す。すなわち、
|α’/α−1|<E
|β’/β−1|<E
を判断する。許容エラーとしては、5%程度とするのが望ましい。
上記では、発振段レーザ100(MO)の発振条件を固定して1点での係数決定を行ったが、当然電圧等を変えて複数のデータを取得し、最小二乗法等をもって係数決定を行ってもよい。
また、ここでは、シャッタ68(シャッタ1)は第1モニタモジュール64の内部に配置したが、第1モニタモジュール64内のビームスプリッタ61と増幅段レーザ300のリアミラー36との間であれば、どこに配置されようとも構わない。
以上のようにして得た補正係数α,βを用いて正確に発振段レーザエネルギの検出を行う「パルスエネルギPosc の検出」(例えば、図6のステップS3)サブルーチンを、図16に示す。前記したように、このサブルーチンは、MOPOにおける「エネルギ制御」における1つの工程となっている。
図16において、ステップS1301において、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で信号V1 を読みこむ。また、第2モニタモジュール39(モニタモジュール2)のエネルギ検出器64’(エネルギ検出器2)で信号V2 を読みこむ。
次いで、ステップS1302で、エネルギ補正係数η1 ,η2 によって、発振段レーザ出力(MOエネルギ)E1 、2ステージレーザ出力(MOPOエネルギ)E2 に変換する。すなわち、
E1 =η1 ・V1
E2 =η2 ・V2
次いで、ステップS1303で、補正係数α,β及び検出した信号V1 ,V2 から変換されたMO出力E1 、MOPO出力E2 を用いて、余剰光の影響を除去した真のMO出力Posc を算出する。すなわち、
Posc =(E1 −E2 /β)/α
この式中、(E1 −E2 /β)は、エネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で検出された発振段レーザ出力(MOエネルギ)E1 から、増幅段レーザの後方への出力成分による過剰検出成分E2 /βを除いた部分に相当し、1/αは、さらにその補正された出力から増幅段レーザからの反射成分を取り除いて補正することに相当する。
なお、上記の真のMO出力Posc を求める計算式では、ステップS1101〜ステップS1118までの手順を逆に辿ってステップS1107のEa を求めていることに相当することになる。
フロントミラー反射率の経時変化等があった場合、「補正係数α,β算出」したときと、「露光動作」の「パルスエネルギPosc の検出」のときとでは、α,βの正しい数値がずれることが考えられる。そのため、図14に示したように、定期的にα,βを確認/補正することが必要である。
次に、第1の実施形態の変形例を説明する。以下に説明するように、この実施形態では、αとβを計算する際のレーザ発振の出力光エネルギを略一定に維持する制御を行う。これにより、第1実施形態に比べてαとβの計算精度が向上する。
まず、図15に代わる「補正係数α,β算出」サブルーチンを図17に示す。図15との相違点のみを説明する。
ステップS1101〜S1104までは、図15の場合と同じである。
ステップS1104に続くステップS1105’で、シャッタ68(シャッタ1)を閉じた状態で、発振段レーザ100(MO)の出力光エネルギを一定値(Eosc )(例えば1mJ)に維持する制御を行って、MOのみの発振を行う。このような制御については、例えば特許文献4参照。
次のステップS1106’で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Va 、及び、ステップS1105’の制御で用いた電源電圧値HVosc の平均値を取得、記憶する。
次いでステップS1107’で、別途算出されるエネルギ補正係数η1 によってVa から発振段レーザ出力エネルギ(MO出力エネルギ)Ea が算出される。すなわち、
MO出力エネルギEa =η1 ・Va
ここで、η1 は、エネルギ検出器64での検出信号をエネルギに変換するための係数であり、カロリメータ等によって換算が行われる。このエネルギ補正係数η1 の算出の詳細は省く。
次に、ステップS1108’で、シャッタ68(シャッタ1)を開ける。
次に、ステップS1109’で、前記記憶したHVosc を電源電圧指令値にして、発振段レーザ100(MO)のみ発振を行う。
その状態で、ステップS1110’で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Vb を取得、記憶する。
次いで、ステップS1111’で、エネルギ補正係数η1 によってVb から発振段レーザ出力エネルギ(MO出力エネルギ)Eb が算出される。すなわち、
MO出力エネルギEb =η1 ・Vb
次に、ステップS1112’で、上記のEa 及びEb を用いて、補正係数αを算出する。すなわち、
α=Eb /Ea
次に、ステップS1113’で、2ステージレーザ(MOPO)の発振を行う。発振段レーザ100(MO)では、前記記憶したHVosc を電源電圧指令値にする。MOPO出力は、所定の一定の光エネルギ値Eamp を出力するように電源電圧を制御する。
次いで、ステップS1114’で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で信号Vc を読みこむ。
そして、ステップS1115’で、エネルギ補正係数η1 によってVc から発振段レーザ出力エネルギ(MO出力エネルギ)Ec が算出される。すなわち、
MO出力エネルギEc =η1 ・Vc
そして、ステップS1116’で、算出されたEb 、Ec 、及び、所定の一定の光エネルギ値Eamp により、補正係数βを算出する。すなわち、
β=Eamp /(Ec −Eb )
以下、ステップS1117〜S1118、図15の場合と同じである。
ここで、ステップS1106’において、電源電圧値HVosc の平均値を取得、記憶するように記載したが、レーザのスパイク特性(詳細は特願2003−291463号)に配慮して、測定に関わる全パルスの電源設定値を記憶し、ステップS1109’、ステップS1113’においてその記憶値に基づいた指令を出すようにしてもよい。
さらには、ステップS1115’においては、MO出力として、検出エネルギでなく、指定エネルギEamp を補正係数βの算出に用いたが、ステップS1116(図15)にあるように、検出エネルギを用いても構わない。
さらには、ステップS1112’において、計測されたEa の代わりに、ターゲット出力Eosc を用いても構わない。
その場合は、図17のステップS1112’では、上記のEb 及びEosc を用いて、補正係数αを次のように算出する。
α=Eb /Eosc
さらには、ここまでの説明においては、エネルギ補正係数η1 ,η2 を用いて検出値をエネルギに変換するという手順を踏んでいたが、これから説明するように、そのいくつかは省略することができる。これにより、処理時間の短縮が可能になる場合もある。そのような変形例での「補正係数α,β算出」サブルーチンを図18に示す。
図15との比較では、ステップS1101〜S1106がステップS2101〜S2106に対応し、ステップS1107に対応するステップがなく、ステップS1108〜S1110がステップS2108〜S2110に対応し、ステップS1111に対応するステップがなく、ステップS1112〜S1114がステップS2112〜S2114に対応し、ステップS1115に対応するステップがなく、ステップS1116〜S1118がステップS2116〜S2118に対応する。
すなわち、ステップS2101で、補正間隔確認のために設けられたタイマをリセットする(時間時間Tcal 及び発振パルス数Scal )。
次に、ステップS2102で、補正が新規である場合(図14のステップS1001を経由した場合)は、次のステップS2103の工程をスキップする。そうでない場合(図14のステップS1004、S1005を経由した場合)は、次のステップS2103の工程に進む。
ステップS2103では、これまでに用いていた補正係数α,βをそれぞれα’,β’として記憶する。これは以下に示すように、補正前後での係数の差を比較するためである。
次いで、ステップS2104において、第1モニタモジュール19内のシャッタ68(シャッタ1)を閉める。
次に、ステップS2105で、シャッタ68を閉じた状態で、発振段レーザ100(MO)のみ発振を行う。
そして、ステップS2106で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Va を取得、記憶する。
次に、ステップS2108で、シャッタ68(シャッタ1)を開ける。
そして、ステップS2109で、ステップS2105と同じ条件(ただし、シャッタ68を開けた状態)において、発振段レーザ100(MO)のみ発振を行う。
ここで、同じ条件とは、ガス条件、印加電圧等、レーザ出力に影響を与える可能性があるものに関して同一条件とすることを意味する。
その状態で、ステップS2110で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Vb を取得、記憶する。
次に、ステップS2112で、上記のVa 及びVb を用いて、補正係数αを算出する。すなわち、Ea=η1 ・Va ,Eb=η1 ・Vb であるから、
α=Vb /Va
次に、ステップS2113で、発振段レーザ100(MO)に関しては、ステップS2105と同じ条件において2ステージレーザ(MOPO)の発振を行う。
次いで、ステップS2114で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で信号Vc を読みこむ。また、第2モニタモジュール39(モニタモジュール2)のエネルギ検出器64’(エネルギ検出器2)で信号Vd を読みこむ。
そして、ステップS2116で、求められたVb 、Vc 、Vd により、補正係数βを算出する。すなわち、
β=Vd /(Vc −Vb )
次に、ステップS2117で、補正が新規である場合(図14のステップS1001を経由した場合)は、この「補正係数α,β算出」サブルーチンを終え(「リターン」)、そうでない場合(図14のステップS1004、S1005を経由した場合)は、次のステップS2118の工程に進む。
ステップS2118では、補正前の係数α’,β’(ステップS2103)と補正後の係数α,βを比較する。差異が大きい場合は、各種ミラー透過率の経時変化の可能性があり、そのまま露光を続けた場合、エネルギ検出誤差が大きくなって良好にレーザ特性を維持できない恐れがある。したがって、診断員に状況を確認してもらうべく、エラー信号を出す。すなわち、
|α’/α−1|<E
|β’/β−1|<E
を判断する。許容エラーとしては、5%程度とするのが望ましい。
この図18の変形例の「補正係数α,β算出」サブルーチンを用いる場合の「パルスエネルギPosc の検出」サブルーチンは図19のようになる。
上述したように、このサブルーチンは、MOPOにおける「エネルギ制御」における1つの工程となっている。
図19において、ステップS2301で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で信号V1 を読みこむ。また、第2モニタモジュール39(モニタモジュール2)のエネルギ検出器64’(エネルギ検出器2)で信号V2 を読みこむ。
次のステップS2303で、補正係数α,β 及び検出した信号V1 ,V2 を用いて、余剰光の影響を除去した真のMO出力Posc を算出する。すなわち、
Posc =η1 ・(V1 −V2 /β)/α
ここで、η1 は、エネルギ検出器64での検出信号をエネルギに変換するための係数であり、カロリメータ等によって換算が行われる。このエネルギ補正係数η1 の算出の詳細は省く。
この真のMO出力Posc の式中、(V1 −V2 /β)は、エネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で検出された発振段レーザ出力信号V1 から、増幅段レーザの後方への出力成分による過剰検出成分信号V2 /βを除いた部分に相当し、1/αは、さらにその補正された信号から増幅段レーザからの反射成分を取り除いて補正することに相当する。
なお、上記の真のMO出力Posc を求める計算式では、ステップS1101〜ステップS1118までの手順を逆に辿ってステップS1107のEa を求めていることに相当することになる。
ここで、図18、図19のフローが問題ないことを確認する。
ステップS2112、S2116の
α=Vb /Va
β=Vd /(Vc −Vb )
において、Vd =V2 、Vc =V1 とした場合に、ステップS2303で、
Posc =η1 ・(V1 −V2 /β)/α
=η1 ・Va
が得られ、真の真のMO出力が導出されていることが確認される。
なお、容易に分かるように、以上の図18、図19の変形例のステップS2116における補正係数βと、図15〜図17の例のステップS1116における補正係数βとでは、意味が異なる。
次に、本発明の2ステージレーザのエネルギ制御装置の第2の実施形態の主要部の構成を図20に示す。
この第2実施形態においては、αの導出を省いたことを主な特徴とする。これにより、シャッタ68が不要になり、装置のスリム化と、較正をより簡易に実施にすることができるようになる。
補正係数αは、典型的な発振段レーザ100のフロントミラー17の反射率と、増幅段レーザ300のリアミラー36の反射率においては、1〜1.3である。したがって、予めこの影響度を見込んで、発振段レーザ100の出力のターゲット領域を設定しておけば、ステップS1111(図15)で説明したMO出力エネルギEb をもってEa を代表すると考えても大きな問題にはならない。なぜなら、露光処理に使われるのは、MOPO出力であるから、光エネルギレベルを高精度に制御する必要があるのは増幅段レーザ出力(PO出力)である。よって、発振段レーザのMO出力は、MOPO出力と異なり、極めて高精度では出力を制御する必要はないからである。
この第2の実施形態の「高精度な発振段レーザ出力検出」に主眼を置いた制御のフローチャートを図21に示す。以下に、このフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS3001で、露光用光源としてのエキシマレーザの初期調整行われる。又は、「高精度な発振段レーザ出力検出」に影響を与え得るモジュールのメンテナンスが実施される。ここで、本発明ににおける「高精度な発振段レーザ出力検出」に影響を与え得るモジュールとしては、図1、図4における、発振用チャンバ10、LNM16,フロントミラー17、第1モニタモジュール19、ビーム伝搬部42、増幅用チャンバ30、リアミラー36、出力ミラー37、第2モニタモジュール39等である。
次に、ステップS3002で、後で詳細に説明する「補正係数β算出」サブルーチンを実行する。
次に、ステップS3003で、本発明による2ステージレーザの発振動作をさせて露光装置3での「露光動作」を行う。その詳細は特に説明しない。この工程において良好な露光を保つために、「エネルギ制御」を行う必要があるのである。
2ステージレーザシステムにおける高精度エネルギ制御に関しては、前記した特願2003−291463号にて提案されているので、ここでは詳細は記述しないが、図6、図7で例示したようなものである。この「エネルギ制御」の工程においては、「パルスエネルギPosc の検出」(図6のステップS3)がある。この検出ステップにおいて、この実施形態で提案するように、補正係数βを用いて高精度に発振段レーザ出力を検出することが可能となる。この「パルスエネルギPosc の検出」サブルーチンに関しては、後で詳細に説明する。
次いで、ステップS3004で、一連の「露光動作」が終了した後に、直前の「補正係数βの算出」から一定時間T0 が過ぎたかを確認する(Tcal >T0 )。T0 を超えていた場合は、再度ステップS3002の「補正係数βの算出」を実施する。
ここで、一定時間T0 は、典型的には1週間程度である。なぜなら、余りにT0 を小さく設定すると、「露光動作」の妨げになってしまう。また、余りにT0 を大きく設定すると、各種ミラーの反射率変化等の経時変化のために、検出誤差が大きくなってしまう恐れがある。
その後、ステップS3005で、直前の「補正係数βの算出」からの発振パルス数が所定数S0 を過ぎたかを確認する(Scal >S0 )。この所定数S0 も、上記と同様の理由で、S0 は100Mpls程度に設定するのが望ましい。S0 を超えていた場合は、再度ステップS3002の「補正係数βの算出」を実施する。S0 を超えていない場合は、再度ステップS3003の「露光動作」を継続する。
上記図21のフローチャートでは、ステップS3002の「補正係数βの算出」を実施するための条件として、時間Tcal と発振パルス数Scal との両方を参照したが、時間のみを観察するようなの形態であっても構わないし、発振パルス数のみを観察する形態であっても構わない。
また、ステップS3003の「露光動作」は、装置スループット確保のためにむやみに止めることはできない。したがって、実際の「補正係数βの算出」のタイミングとしては、露光装置3がそれを許容したときのみに限定され、例えば定期的に行われる「ガス交換」の後等に実行される。
この「補正係数β算出」サブルーチンを図22に示す。
まず、ステップS3101で、補正間隔確認のために設けられたタイマをリセットする(時間時間Tcal 及び発振パルス数Scal )。
次に、ステップS3102で、補正が新規である場合(図21のステップS3001を経由した場合)は、次のステップS3103の工程をスキップする。そうでない場合(図21のステップS3004、S3005を経由した場合)は、次のステップS3103の工程に進む。
ステップS3103では、これまでに用いていた補正係数βをβ’として記憶する。これは以下に示すように、補正前後での係数の差を比較するためである。
そして、ステップS3109で、発振段レーザ100(MO)のみ発振を行う。
その状態で、ステップS3110で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Vb を取得、記憶する。
次いで、ステップS3111で、エネルギ補正係数η1 によってVb から発振段レーザ出力エネルギ(MO出力エネルギ)Eb が算出される。すなわち、
MO出力エネルギEb =η1 ・Vb
次に、ステップS3113で、発振段レーザ100(MO)に関しては、ステップS3109と同じ条件において2ステージレーザ(MOPO)の発振を行う。
次いで、ステップS3114で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で信号Vc を読みこむ。また、第2モニタモジュール39(モニタモジュール2)のエネルギ検出器64’(エネルギ検出器2)で信号Vd を読みこむ。
そして、ステップS3115で、エネルギ補正係数η1 によってVc から発振段レーザ出力エネルギ(MO出力エネルギ)Ec が算出される。すなわち、
MO出力エネルギEc =η1 ・Vc
また、エネルギ補正係数η2 によって、Vd から2ステージレーザ(MOPO)出力エネルギEd が算出される。すなわち、
MOPO出力エネルギEd =η2 ・Vd
ここで、η2 は、エネルギ検出器64’での検出信号をエネルギに変換するための係数であり、カロリメータ等によって換算が行われる。
そして、ステップS3116で、算出されたEb 、Ec 、Ed により、補正係数βを算出する。すなわち、
β=Ed /(Ec −Eb )
次に、ステップS3117で、補正が新規である場合(図21のステップS3001を経由した場合)は、この「補正係数β算出」サブルーチンを終え(「リターン」)、そうでない場合(図21のステップS3004、S3005を経由した場合)は、次のステップS3118の工程に進む。
ステップS3118では、補正前の係数β’(ステップS3103)と補正後の係数βを比較する。差異が大きい場合は、各種ミラー透過率の経時変化の可能性があり、そのまま露光を続けた場合、エネルギ検出誤差が大きくなって良好にレーザ特性を維持できない恐れがある。したがって、診断員に状況を確認してもらうべく、エラー信号を出す。すなわち、
|β’/β−1|<E
を判断する。許容エラーとしては、5%程度とするのが望ましい。
上記では、発振段レーザ100(MO)の発振条件を固定して1点での係数決定を行ったが、当然電圧等を変えて複数のデータを取得し、最小二乗法等をもって係数決定を行ってもよい。
以上のようにして得た補正係数βを用いて正確に発振段レーザエネルギの検出を行う「パルスエネルギPosc の検出」(例えば、図6のステップS3)サブルーチンを、図23に示す。前記したように、このサブルーチンは、MOPOにおける「エネルギ制御」における1つの工程となっている。
図23において、ステップS3301において、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で信号V1 を読みこむ。また、第2モニタモジュール39(モニタモジュール2)のエネルギ検出器64’(エネルギ検出器2)で信号V2 を読みこむ。
次いで、ステップS3302で、エネルギ補正係数η1 ,η2 によって、発振段レーザ出力(MOエネルギ)E1 、2ステージレーザ出力(MOPOエネルギ)E2 に変換する。すなわち、
E1 =η1 ・V1
E2 =η2 ・V2
次いで、ステップS3303で、補正係数β及び検出した信号V1 ,V2 から変換されたMO出力E1 、MOPO出力E2 を用いて、余剰光の影響を除去した真のMO出力Posc を算出する。すなわち、
Posc =(E1 −E2 /β)/α”
この式中、(E1 −E2 /β)は、エネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で検出された発振段レーザ出力(MOエネルギ)E1 から、増幅段レーザの後方への出力成分による過剰検出成分E2 /βを除いた部分に相当し、1/α”は、さらにその補正された出力から増幅段レーザからの予め見込んだ補正係数α”の反射成分を取り除いて補正することに相当し、前記のように、α”は1〜1.3の間で予め設定される。
なお、上記の真のMO出力Posc を求める計算式では、ステップS3101〜ステップS3118までの手順を逆に辿ってステップS3111のEb を求めていることに相当することになる。
なお、この実施形態においても、第1実施形態において示したように、エネルギの代わりに、検出値そのものを用いるようにしてもよい(図18、図19)。
次に、以上の第2の実施形態の変形例を説明する。
この変形例では、「パルスエネルギPosc の検出」においては、実測されたMOPOエネルギE2 でなく、ターゲットとしているエネルギ指令値Pamp(target) そのものを用いる。
MOPOエネルギ(2ステージレーザ出力)は高度にエネルギ制御されており、ターゲットからのずれは大きくても5%程度である。この程度のずれであれば、MOエネルギ制御に影響は与えない。そして、実測値の代わりに指令値を用いることで、MOPOエネルギ検出値をコントローラに通信する手間がなくなるため、計算時間が大幅に短縮される利点がある。
「補正係数β算出」サブルーチンは図22と同じである。
「パルスエネルギPosc の検出」サブルーチンが図23と異なるので、そのサブルーチンを図24に示す。前記したように、このサブルーチンは、MOPOにおける「エネルギ制御」における1つの工程となっている。
図24において、ステップS4301において、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)で信号V1 を読みこむ。
次いで、ステップS4302で、エネルギ補正係数η1 によって、発振段レーザ出力(MOエネルギ)E1 に変換する。すなわち、
E1 =η1 ・V1
次いで、ステップS4303で、補正係数β及び検出した信号V1 から変換されたMO出力E1 を用いて、余剰光の影響を除去した真のMO出力Posc を算出する。すなわち、
Posc ={E1 −Pamp(target) /β}/α”
この変形例においても第1実施形態の変形例に示したように、エネルギの代わりに、検出値そのものを用いるようにしてもよい(図18、図19)。
また、「補正係数β算出」においても、MOPO出力E2 の代わりに、ターゲット値Pamp(target) を用いるようにしてもよい。
次に、本発明の2ステージレーザのエネルギ制御装置の第3の実施形態の主要部の構成を図25に示す。この実施形態においては、MOエネルギ検出において、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内に配置されたエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)とエネルギ検出器64”(エネルギ検出器3)の信号を用いる。エネルギ検出器64は、ビームスプリッタ61により反射された発振段レーザ100(MO)からの出力光が主に入射するように配置され、エネルギ検出器64”はビームスプリッタ61により反射された増幅段300(PO)からの後方への出力成分が主に入射するように配置されている。
以下の説明では、途中にシャッタを配置しない場合で、αの導出を省き、予め見込んだ補正係数α”とする例について説明を行うが、これまでに説明してきたように、シャッタを配置して補正係数αを導いて補正する場合においても同様に適用できる。
本方式においては、MOPOの増幅段レーザ300の後方への出力をモニタしているので、後で導く補正係数β(以上で用いた補正係数βとは意味が異なる。)の変動が以上の実施例と比べて格段に小さいことがある。したがって、初期調整の段階で一旦係数を決めれば、その後は較正の必要がない。
本発明の特徴である「高精度な発振段レーザ出力検出」に主眼を置いた制御のフローチャートを図26に示す。以下に、このフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップS5001で、露光用光源としてのエキシマレーザの初期調整行われる。又は、「高精度な発振段レーザ出力検出」に影響を与え得るモジュールのメンテナンスが実施される。ここで、本発明ににおける「高精度な発振段レーザ出力検出」に影響を与え得るモジュールとしては、図1、図4における、発振用チャンバ10、LNM16,フロントミラー17、第1モニタモジュール19、ビーム伝搬部42、増幅用チャンバ30、リアミラー36、出力ミラー37、第2モニタモジュール39等である。
次に、ステップS5002で、後で詳細に説明する「補正係数β,γ算出」サブルーチンを実行する。
次に、ステップS5003で、本発明による2ステージレーザの発振動作をさせて露光装置3での「露光動作」を行う。その詳細は特に説明しない。この工程において良好な露光を保つために、「エネルギ制御」を行う必要があるのである。
2ステージレーザシステムにおける高精度エネルギ制御に関しては、前記した特願2003−291463号にて提案されているので、ここでは詳細は記述しないが、図6、図7で例示したようなものである。この「エネルギ制御」の工程においては、「パルスエネルギPosc の検出」(図6のステップS3)がある。この検出ステップにおいて、本実施例で提案するように、補正係数β,γを用いて高精度に発振段レーザ出力を検出することが可能となる。この「パルスエネルギPosc の検出」サブルーチンに関しては、後で詳細に説明する。
なお、この実施形態においては、図14のステップS1004、ステップS1005に対応する補正係数β,γの再算出工程はない。その理由は、増幅段レーザの後方への出力成分を見積もるのに、MOPO出力を用いて間接的に行うのではなく、その後方への出力を直接モニタしているので、補正係数βの変動が格段に小さいためである。したがって、上記のように、初期調整の段階で一旦係数を決めれば、その後は較正の必要がない。
次に、この「補正係数β,γ算出」サブルーチンを図27に示す。
まず、ステップS5101で、発振段レーザ100(MO)のみ発振を行う。
次に、ステップS5102で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Va をを読みこむ。また、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)のエネルギ検出器64”(エネルギ検出器3)で信号Vb を読みこむ。
次に、ステップS5103において、η1 ,η3 によって、Va ,Vb から対応する出力エネルギEa ,Eb が算出される。すなわち、
Ea =η1 ・Va
Eb =η3 ・Vb
ここで、η1 ,η3 は、それぞれエネルギ検出器64、64”での検出信号をエネルギに変換するための係数であり、カロリメータ等によって換算が行われる。このエネルギ補正係数η1 ,η3 の算出の詳細は省く。
次いで、上記のEa 及びEb を用いて補正係数γを以下のように算出する。
γ=Ea /Eb
次に、ステップS5105において、発振段レーザ100(MO)に関しては、ステップS5101と同じ条件において2ステージレーザ(MOPO)の発振を行う。
ここで、同じ条件とは、ガス条件、印加電圧等、レーザ出力に影響を与える可能性があるものに関して同一条件とすることを意味する。
その状態で、ステップS5106で、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号Vc を読みこむ。また、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64”(エネルギ検出器3)において信号Vd を読みこむ。
次に、ステップS5107において、η1 ,η3 によって、Vc ,Vd から対応する出力エネルギEc ,Ed が算出される。すなわち、
Ec =η1 ・Vc
Ed =η3 ・Vd
次に、ステップS5108において、算出されたEa 、Eb 、Ec 、Ed により、補正係数βを算出する。すなわち、
β=(Ed −Eb )/(Ec −Ea )
なお、ここで算出される補正係数βは、以上の実施形態での補正係数βとでは、意味が異なる。
上記では、発振段レーザ100(MO)の発振条件を固定して1点での係数決定を行ったが、当然電圧等を変えて複数のデータを取得し、最小二乗法等をもって係数決定を行ってもよい。
以上のようにして得た補正係数β,γを用いて正確に発振段レーザエネルギの検出を行う「パルスエネルギPosc の検出」(例えば、図6のステップS3)サブルーチンを、図28に示す。前記したように、このサブルーチンは、MOPOにおける「エネルギ制御」における1つの工程となっている。
ステップS5301において、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64(エネルギ検出器1)において信号V1 を読みこむ。また、第1モニタモジュール19(モニタモジュール1)内のエネルギ検出器64”(エネルギ検出器3)において信号V3 を読みこむ。
次に、ステップS5302において、η1 ,η3 によって、発振段レーザ出力(MOエネルギ)E1 、2ステージレーザ後方出力E3 に変換する。すなわち、
E1 =η1 ・V1
E3 =η3 ・V3
次に、ステップS5303において、補正係数β,γ及び信号V1 、V3 から変換されたE1 、E3 を用いて、余剰光の影響を除去した真のMO出力Posc を算出する。すなわち、
Posc ={(E1 −E3 /β)/(1−γ/β)}/α”
なお、上記の真のMO出力Posc を求める計算式では、ステップS5101〜ステップS5108までの手順を逆に辿っている。
ここで、補足的に図27、図28の真のMO出力Posc を求める工程の意味を説明しておく。
ここでは、増幅段レーザからの反射成分を取り除く補正係数αの導出を省き、予め見込んだ補正係数α”としている。
まず、MO(発振段レーザ)100単体での発振があるときの、エネルギ検出器64(エネルギ検出器1)での検出エネルギEa とエネルギ検出器64”(エネルギ検出器3)での検出エネルギEb とは比例する。
そこで、係数γを、
γ=Eb /Ea
=〈検出器3で検出されるMO単体エネルギ〉
/〈検出器1で検出されるMO単体エネルギ〉 ・・・(1)
と関係付ける。
次に、PO(増幅段レーザ)300後方への出力を見積もると、エネルギ検出器64(エネルギ検出器1)での検出エネルギEc とエネルギ検出器64”(エネルギ検出器3)での検出エネルギEd との中に上記MO(発振段レーザ)100単体発振での影響があるので、これを分離する。すなわち、
Ec =Ea +〈検出器1で検出される後方出力エネルギ〉
Ed =Eb +〈検出器3で検出される後方出力エネルギ〉
であり、さらに、エネルギ検出器64(エネルギ検出器1)、エネルギ検出器64”(エネルギ検出器3)で検出される後方出力エネルギは比例することより、
β=〈検出器3で検出される後方出力エネルギ〉
/〈検出器1で検出される後方出力エネルギ〉
=(Ed −Eb )/(Ec −Ea ) ・・・(2)
との関係が得らる。
実際の運転において、エネルギ検出器64(エネルギ検出器1)でE1 、エネルギ検出器64”(エネルギ検出器3)でE3 が検出された場合、以下の手順で真のエネルギE0 が算出される。
E0 =E1 −〈検出器1で検出される後方出力エネルギ〉
=E1 −〈検出器3で検出される後方出力エネルギ〉/β ・・・(3)
また、
E3 =〈検出器3で検出される後方出力エネルギ〉
+〈検出器3で検出されるMO単体エネルギ〉
=〈検出器3で検出される後方出力エネルギ〉
+〈検出器1で検出されるMO単体エネルギ〉・γ ・・・(4)
となる。
ここで、〈検出器1で検出されるMO単体エネルギ〉とは、求めたい真のエネルギE0 そのものだから、(4)式より、
〈検出器3で検出される後方出力エネルギ〉=E3 −E0 ・γ ・・・(5)
が得られる。
(5)式と(3)式から、
E0 =E1 −(E3 −E0 ・γ)/β
となり、これを整理して、
E0 =(E1 −E3 /β)/(1−γ/β)
となる。
これに、増幅段レーザ300からの反射成分を取り除く補正係数α”を組み入れて、図28のステップS5303に示している計算式になる。
なお、上記全ての実施例(実施形態)においては、第2モニタモジュール39と増幅段レーザ300の出力ミラー37とが隣接されている構造に関して説明を行ったが、図29(図20の変形例)に示すように、第2モニタモジュール39と増幅段レーザ300の出力ミラー37との間に、例えば光整形モジュール71が挿入されていても構わない。光整形モジュール71としては、例えばビームの形状やパルス形状を整えるモジュール等がある。
また、増幅段レーザ300の共振器の形態としては、ここでは図1及び図4に限定した説明を行ったが、特願2003−298286号やPCT/JP2004/005490に示されている任意の形態の共振器を持つものに本発明は適用可能である。その1例を図30に示す。図30の(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は増幅段レーザ300のリアミラー36をその増幅用チャンバ30側から見た図である。図1と同一の構成部分は同じ符号を用いて示してある。この例では、増幅段レーザ300のリアミラー36を1枚の高反射率(全反射)で孔のない平面ミラーで構成する例であり、その1枚のリアミラー36は発振段レーザ100からのシード光に対して水平方向に偏心して配置されて、リアミラー36のエッジが増幅段レーザ300の放電電極30a,30bによって形成される放電領域72内又は放電領域72近傍に位置するように配置されている。そのエッジに接するようにその外側からシード光73を導入する。なお、リアミラー36と出力ミラー37の光軸に対してシード光73の光軸をわずかに傾けてシード光が放電領域72を満たすようにしてもよい。
以上、本発明の2ステージレーザのエネルギ制御装置及びそれを用いた2ステージレーザシステムを実施例(実施形態)に基づいて説明したが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。