JP4363113B2 - ポリテトラフルオロエチレンの製造方法 - Google Patents

ポリテトラフルオロエチレンの製造方法 Download PDF

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本発明は、特定の圧力、および温度下の重合媒体中でテトラフルオロエチレンをラジカル重合してポリテトラフルオロエチレンを製造する方法に関する。
従来、フルオロポリマーは、水性媒体または重合反応に影響を与え難い不活性媒体中で水溶性ラジカル重合開始剤または油溶性ラジカル重合開始剤を用いて、フルオロモノマーを乳化重合または懸濁重合して製造されている。
水性媒体を用いる乳化重合法の場合、重合反応後、水性媒体中に分散したポリマーを凝集させ、続いて脱水乾燥して目的とする固体ポリマーを得る。しかし該方法は、工程が長く効率的な製造方法ではない。懸濁重合の場合、生成したポリマーが析出し反応槽内壁へ付着するため、ポリマー収率が悪化し生産コストが上昇する。
そこで、超臨界流体をフルオロモノマーの重合媒体に用いる研究が行われている。超臨界流体とは、臨界温度および臨界圧力を共に超えた領域にある流体で、熱伝導性が良く、拡散が速く、粘性が小さいため、反応媒体に適している。二酸化炭素は臨界温度が31.1℃、臨界圧力が7.31MPaで、取扱性のよい温度および圧力に臨界点がある点、安価である点が注目され、超臨界状態の二酸化炭素を含有する重合媒体中でフルオロモノマーを重合する方法が研究されている。
該方法として、次の方法が知られている。
(1)ラジカル重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用い、1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルアクリレートを、反応温度を60℃、反応圧力を3000psi(20.7MPa)で重合する方法(特許文献1参照。)。しかし、該方法は反応温度が高いため、高分子量のフルオロポリマーが得られない。
(2)パーフルオロアルキルヨーダイトの存在下、1,1−ジフルオロエチレンを、反応温度を36℃、反応圧力を3000psi(20.7MPa)で重合する方法(特許文献1参照。)。しかし、該方法で得られる化合物は、低分子量体ポリマーまたはオリゴマーである。
(3)ラジカル重合開始剤に特定の開始剤、すなわちジメチル(2,2’−アゾビスイソブチレート)を用い、フッ化ビニリデンを、反応温度を69.5℃、反応圧力を34.6MPaで重合する方法(特許文献2参照。)。しかし、該方法は反応温度が高いので、高分子量のフルオロポリマーが得られない。
(4)ラジカル重合開始剤にヘキサフルオロプロピレンダイマーペルオキシドを用い、テトラフルオロエチレンを、反応温度を室温で重合する方法(特許文献3参照。)。しかし該温度では、二酸化炭素が超臨界状態とならず、本発明の目的とする高分子量のフルオロポリマーを得られない。
(5)ラジカル重合開始剤にヘキサフルオロプロピレンダイマーペルオキシドを用い、テトラフルオロエチレンを、反応温度を35℃、二酸化炭素を封入した反応器中で重合する方法(特許文献4参照。)。しかし、該方法に記載される反応器の容積、封入した二酸化炭素およびテトラフルオロエチレンの量より、反応圧力は60MPa程度と推定され、高分子量のフルオロポリマーが得られない。
すなわち、上記の方法では本発明が目的とする分子量より低い分子量のフルオロポリマーしか得られない問題がある。
特表平07−505429号公報 特開2000−026509号公報 特表2003−518170号公報 米国特許第5618894号明細書
本発明の目的は、テトラフルオロエチレンのラジカル重合を特定の重合媒体中で、特定の温度および圧力で行い、高分子量ポリテトラフルオロエチレンを得ることである。
本発明は、ラジカル重合開始剤の存在下に、二酸化炭素および炭素数1〜2のハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上を含む重合媒体中で、テトラフルオロエチレンを重合し、ポリテトラフルオロエチレンを製造する方法であって、反応系の温度が該重合媒体の臨界温度〜該重合媒体の臨界温度+20℃で、かつ、31.1〜40.0℃であると共に、反応系の圧力が該重合媒体の臨界圧力〜該重合媒体の臨界圧力+30MPaで、かつ、7.3〜35.0MPaであることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供する。
本発明の製造方法は、特定の重合媒体中で、かつ特定の温度下および圧力下でテトラフルオロエチレンをラジカル重合すること特徴とするポリテトラフルオロエチレンの製造方法である。該条件下では、フルオロモノマーであるテトラフルオロエチレンの重合媒体に対する溶解性が高く、しかも重合媒体の熱拡散係数が最大になる。したがって、テトラフルオロエチレンが高い頻度でラジカル反応するため、高分子量のフルオロポリマーであるポリテトラフルオロエチレンを製造できる。さらに本発明の方法は、反応における温度および圧力が低いので装置コスト、運転コストを低減できる。
本発明における重合媒体の臨界温度とは、二酸化炭素および炭素数1〜2のハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上の物質が、1種の場合はその物質の臨界温度を意味し、2種以上で構成される組成物の場合は、該組成物を構成する物質それぞれの臨界温度の内、最も高い臨界温度を意味する。また重合媒体の臨界圧力とは、二酸化炭素および炭素数1〜2のハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上の物質が、1種の場合はその物質の臨界圧力を意味し、2種以上で構成される組成物の場合は、該組成物を構成する物質それぞれの臨界圧力の内、最も高い臨界圧力を意味する。
本発明における反応系の温度とは重合反応時における系全体の温度を意味し、反応系の圧力とは重合反応時における系全体の圧力を意味する。
本発明における超臨界流体は、温度と圧力がそれぞれ臨界温度、臨界圧力を超えた化合物を意味する。
本発明における重合反応は、ラジカル重合開始剤の存在下に、二酸化炭素および炭素数1〜2のハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上を含む重合媒体中でモノマーを重合させて行う。
本発明における重合媒体は、実質的に二酸化炭素のみからなるか、実質的に1種のハロゲン化炭化水素のみからなるのが好ましく、二酸化炭素のみからなるのが特に好ましい。炭素数1〜2のハロゲン化炭化水素の具体例としては、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、フルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロメタン、ペンタフルオロエタン、トリクロロエタン等のフッ素化炭化水素や塩素含有炭化水素が挙げられる。
本発明における重合反応において、反応系の温度は重合媒体の臨界温度〜重合媒体の臨界温度+20℃、および反応系の圧力は重合媒体の臨界圧力〜重合媒体の臨界圧力+30MPaである。反応系の温度は重合媒体の臨界温度〜重合媒体の臨界温度+15℃、および反応系の圧力は重合媒体の臨界圧力〜重合媒体の臨界圧力+25MPaであるのが特に好ましく、反応系の温度および反応系の圧力は前記好ましい温度範囲内および圧力範囲内で重合媒体が超臨界流体となる温度および圧力であることがとりわけ好ましい。
反応系の温度が重合媒体の臨界温度〜重合媒体の臨界温度+20℃、および反応系の圧力が重合媒体の臨界圧力〜重合媒体の臨界圧力+30MPaである重合媒体は、熱拡散係数が最大になり重合反応熱の拡散速度が大きくなる。熱による副反応が促進されず重合反応が停止しにくいため、分子量の高いフルオロポリマーを生成できる。
反応系の温度が臨界温度未満、および反応系の圧力が臨界圧力未満であると、ラジカル重合開始剤の重合媒体への溶解性が低く、フルオロモノマーの重合反応が進行しにくい。また、反応系の温度が臨界温度+20℃超、および反応系の圧力が臨界圧力+30MPa超であると、重合媒体がフルオロモノマーに溶媒和し、かご効果によってモノマーの衝突確率が減少しフルオロポリマーの分子量が低くなる。さらに、該温度および該圧力では装置コスト、運転コストが高くなる。
本発明における重合媒体が二酸化炭素を含む場合、特に二酸化炭素のみからなる場合、反応系の温度は31.1〜50.0℃、および反応系の圧力は7.3〜35.0MPaである。反応系の温度は31.1〜45.0℃、および反応系の圧力は7.3〜30.0MPaであるのが特に好ましく、反応系の温度は31.1〜40.0℃、および反応系の圧力は7.3〜15.0MPaであるのがとりわけ好ましい。
本発明におけるモノマーは、少なくとも一部はフルオロモノマーである。モノマーはフルオロモノマーの少なくとも1種からなるか、フルオロモノマーの少なくとも1種およびフッ素原子を含まない共重合性コモノマーの少なくとも1種とからなるのが好ましく、実質的に1種のフルオロモノマーのみからなるか、または2種以上のフルオロモノマーからなるのが特に好ましい。
フルオロモノマーは、ラジカル重合できる炭素−炭素二重結合とフッ素原子を含む化合物である。フルオロモノマーは特に限定されず、たとえばパーフルオロオレフィン、フルオロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、パーフルオロ不飽和エーテル、パーフルオロ不飽和環状エーテル、フルオロ不飽和カルボン酸エステル、フルオロスチレンモノマーなどが挙げられ、具体例を次に列挙する。
パーフルオロオレフィン;テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等。フルオロオレフィン;ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、3,3,3−トリフルオロプロペン、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)等。クロロフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等。
パーフルオロ不飽和エーテル;パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)[パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等]、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)(BVE)等。パーフルオロ不飽和環状エーテル;パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)(MMD)等。
フルオロ不飽和カルボン酸エステル;1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルアクリレート(FOA)、1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルメタクリレート(FOMA)等。フルオロスチレンモノマー;α−フルオロスチレン、β−フルオロスチレン、α,β−ジフルオロスチレン、β,β−ジフルオロスチレン、α,β,β−トリフルオロスチレン、α−トリフルオロメチルスチレン、2,4,6−トリ(トリフルオロメチル)スチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−α−メチルスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−β−メチルスチレン等。
また、下式1で表される官能基含有フルオロモノマーも使用できる。
CX =CX−R−Y・・・式1
およびXは、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を示す。
は、炭素数1〜40で炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子を含んでもよい2価含フッ素アルキレン基を示す。
Yは、CHOH、COOH、SOF、CHOCNまたはCHOPOHを示す。
フルオロモノマーは、炭素数2〜3のパーフルオロオレフィン、炭素数2〜8のフルオロオレフィン、炭素数3〜8のパーフルオロ不飽和エーテル、および炭素数3〜8のパーフルオロ不飽和環状エーテルからなる群より選ばれる1種以上からなることが好ましく、TFE、HFP、VdF、PMVE、PEVE、PPVE、BVE、およびPDDからなる群より選ばれる少なくとも1種からなることが特に好ましい。
本発明におけるフッ素原子を含まない共重合性コモノマーとしては、炭素数2〜8のオレフィンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
実質的に1種のフルオロモノマーを重合して得られるホモポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。ホモポリマーには、非溶融二次加工しやすい特性を付与するため、他のフルオロモノマーを少量含ませて共重合させてもよい。含ませる他のフルオロモノマーの量は、フルオロモノマー全量に対して0.05〜10.0モル%が好ましく、0.1〜5.0モル%が特に好ましい。
本発明におけるコポリマーは特に限定されず、具体例としてはTFE/エチレン系共重合体、TFE/HFP系共重合体、TFE/PEVE系共重合体、TFE/PPVE系共重合体、TFE/PMVE系共重合体、TFE/HFP/PPVE系共重合体、TFE/HFP/PEVE系共重合体、CTFE/エチレン系共重合体、VdF/HFP系共重合体、VdF/HFP/TFE系共重合体等が挙げられる。
本発明により製造されるフルオロポリマーが、実質的にTFEからなるPTFEホモポリマーである場合、得られるフルオロポリマーの数平均分子量は、1.0×10〜5.0×10であるのが好ましく、2.5×10〜5.0×10が特に好ましく、5.0×10〜1.5×10であるのがとりわけ好ましい。
本発明におけるラジカル重合開始剤としては、使用する重合媒体と相溶性があれば特に限定されず、たとえばハロゲン化ラジカル重合開始剤や炭化水素系ラジカル重合開始剤を使用できる。
ハロゲン化ラジカル重合開始剤は特に制限されず、次に列挙する化合物を使用できる。
クロロカーボンをベースにしたクロロラジカル重合開始剤やクロロフルオロラジカル重合開始剤。たとえば、クロロ有機過酸化物;(CClCOO)、(ClCF(CFCOO)(ただし、nは0〜8の整数を示す。)等。
フルオロカーボンをベースとしたパーフルオロラジカル重合開始剤。具体的には、以下の開始剤がある。パーフルオロ有機過酸化物;(CFCFCFOCF(CF)COO)、(CFCFCFCOO)、(CFCFCOO)、(CFCFCF(CF(CF)CFO))CF(CF)COO)(ただし、nは0〜8の整数を示す。)、パーフルオロシクロヘキシルカルボニルパーオキサイド;(CyCOO)(ただし、Cyはパーフルオロシクロヘキシル基を示す。)、(PhCOO)(ただし、Phはパーフルオロフェニル基を示す。)等。
パーフルオロ有機アゾ化合物;パーフルオロアゾイソプロパン;(CFCFN=NCF(CF、RN=NR(ただし、Rは炭素原子数が1〜8であり、直鎖構造または分岐構造を含んでいてもよく、エーテル性酸素原子を含有してもよいパーフルオロアルキル基を示す。)等。
また、炭化水素系のラジカル重合開始剤は特に限定されず、炭化水素過酸化物、炭化水素アゾ化合物を使用できる。
前記開始剤の内、安定なポリマー末端を形成するパーフルオロラジカル重合開始剤を使用するのが好ましい。ラジカル開始剤の量は、フルオロモノマーの重合反応に通常使用する量を用いるのが好ましく、フルオロモノマー100重量部に対して10−6〜10重量部用いるのが特に好ましく、10−5〜2重量部用いるのがとりわけ好ましい。
また本発明における反応に関与しない他の添加剤を反応系に加えてもよい。他の添加剤としては、たとえばパーフルオロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等のラジカル開始剤の溶剤などが挙げられる。
さらに、本発明において得られるポリマーの物理的または化学的性質を制御する試薬、たとえば連鎖移動剤などを反応系に加えてもよい。連鎖移動剤の具体例としては、メタノール等のアルコール類、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン等のメルカプタン類、ブチル硫化物等の有機硫化物類、ヨウ化アルキル、ヨウ化パーフルオロアルキル、臭化アルキル、臭化パーフルオロアルキル、四塩化炭素、クロロホルム、塩化スルフリル等のペルハロゲノ炭化水素類、エタン、メチルシクロヘキサン等のアルカン類が挙げられる。
本発明における重合反応は、高圧反応容器または管型反応容器中で、バッチ式または連続式で行える。加温や冷却をするためにジャケット付きの高圧反応容器が好ましい。
また本発明における重合反応は回分式、連続式いずれの方法でも行える。反応操作としては特に限定されず、具体的には次の方法が挙げられる。
[回分式]
高圧反応器中に固体状のラジカル開始剤を入れた後、該反応器を密封し、反応器を重合媒体の凝固点以下に冷却する。つぎにモノマーおよび重合媒体を、それぞれ独立に、気体または液体の状態で反応器に供給する。供給が終了後、加温して反応系の温度を重合温度にして行う方法(反応系の圧力は、加温によって調整されるばかりでなく、重合媒体を高圧プランジャーポンプ等で必要に応じて追加して調整されてもよい。)。
[連続式]
重合媒体、モノマー、およびラジカル開始剤を、たとえば高圧プランジャーポンプ等を用いて高圧反応器へ連続的に供給する。すなわち、重合媒体やモノマーの供給量を調整して反応系の圧力を所望の圧力に保ちつつ、加温して反応系の温度を所望の温度に保って反応を行い、連続的に内容物の抜き出しを行う方法。
重合が終了後、重合媒体およびモノマーを大気中に発散させて反応混合物からポリマーを物理的に分離する。すなわち、回分式で反応を行った場合には、重合媒体を発散させた後、反応器内に析出するポリマーをそのまま回収すればよい。連続式で反応を行った場合には、抜き出した液体をバグフィルター付きの容器に導き、重合媒体を発散させて析出するポリマーを回収すればよい。発散させた重合媒体は、再び反応器に還流させてもよい。
次に本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、FTIRはフーリエ変換赤外分光光度計、DSCは示差走査熱量測定法をそれぞれ意味する。数平均分子量MはT.Suwaらのジャーナル・オブ・アプライド・ポリマーサイエンス17:3253(1973)に記載の方法を用いて求めた。
[例1(実施例)]
オートクレーブ(内容積50mlのハステロイ製。)中にラジカル重合開始剤であるジイソプロピルパーオキシジカーボネート(0.0081g)を加えた。オートクレーブを密閉して−150℃に冷却後、その中を窒素ガスで置換してから0.5kPaまで減圧した。つぎに液状のTFE(3.7g)および液状の二酸化炭素(37.9g)を高圧プランジャーポンプでオートクレーブに導入してから、反応系の温度を徐々に40℃に上げると反応系の圧力が32.7MPaとなった。そのまま14分間、温度を40℃に保つと反応系の圧力が30.8MPaまで低下した。該温度下、および該圧力下で、二酸化炭素は本発明でいう超臨界流体であると考えられる。
つぎにオートクレーブを開放し、オートクレーブ内の圧力を大気圧として残存モノマーおよび二酸化炭素を放出した。オートクレーブ中に生成した固形生成物を回収し、100℃で10時間乾燥して白色固形物(0.79g、収率21.1%)を得た。該白色固形物をFTIRで分析し、PTFEであることを確認した。該白色固形物のDSC分析の結果は、DSC融点335.3℃、DSC結晶点314.7℃、結晶化熱−34.3J/gであった。数平均分子量Mは、4.1×10であった。
[例2(実施例)]
オートクレーブ(内容積50mlのハステロイ製。)中にラジカル重合開始剤であるパーフルオロシクロヘキシルカルボニルパーオキサイド(0.0046g)を加えた。オートクレーブを密閉して−150℃に冷却後、その中を窒素ガスで置換してから0.5kPaまで減圧した。つぎに液状のTFE(3.3g)および液状の二酸化炭素(10.1g)を高圧プランジャーポンプでオートクレーブに投入してから、反応系の温度を徐々に35℃に上げると反応系の圧力が10.1MPaとなった。そのまま120分間、温度を保つと反応系の圧力が9.75MPaまで低下した。つぎにオートクレーブを開放し、オートクレーブ内の圧力を大気圧として残存モノマーおよび二酸化炭素を放出した。オートクレーブ中に生成した固形生成物を回収し、100℃で10時間乾燥して白色固形物(2.13g、収率64.6%)を得た。該白色固形物をFTIRで分析し、PTFEであることを確認した。該白色固形物のDSC分析の結果は、DSC融点335.8℃、DSC結晶点314.9℃、結晶化熱−28.5J/gであった。数平均分子量Mは、1.1×10であった。
[例3(実施例)]
オートクレーブ(内容積50mlのハステロイ製。)中にラジカル重合開始剤であるパーフルオロシクロヘキシルカルボニルパーオキサイド(0.0046g)を加えた。オートクレーブを密閉して−150℃に冷却後、その中を窒素ガスで置換してから0.5kPaまで減圧した。つぎに液状のTFE(5.0g)および二酸化炭素(20.5g)を高圧プランジャーポンプでオートクレーブに投入してから、反応系の温度を除々に35℃に上げると反応系の圧力が25.0MPaとなった。そのまま120分間、温度を35℃に保つと反応系の圧力が21.1MPaまで低下した。つぎにオートクレーブを開放し、オートクレーブ内の圧力を大気圧として残存モノマーおよび二酸化炭素を放出した。オートクレーブ中に生成した固形生成物を回収し、100℃で10時間乾燥して白色固形物(3.98g、収率79.6%)を得た。該白色固形物をFTIRで分析し、PTFEであることを確認した。該白色固形物のDSC分析は、DSC融点335.0℃、DSC結晶点314.5℃、結晶化熱−35.8J/gであった。数平均分子量Mは、3.2×10であった。
[例4(実施例)]
オートクレーブ(内容積50mlハステロイ製。)中にラジカル重合開始剤であるパーフルオロシクロヘキシルカルボニルパーオキサイド(0.0020g)を加えた。オートクレーブを密閉して−150℃に冷却後、その中を窒素ガスで置換してから0.5kPaまで減圧した。つぎに液状のTFE(3.8g)および液状の二酸化炭素(9.5g)を高圧プランジャーポンプでオートクレーブに投入してから、反応系の温度を徐々に35℃に上げると反応系の圧力が9.8MPaとなった。そのまま120分間、温度を35℃に保つと反応系の圧力が9.35MPaまで低下した。つぎにオートクレーブを開放してオートクレーブ内の圧力を大気圧として残存モノマーおよび二酸化炭素を放出した。オートクレーブ中に生成した固形生成物を回収し、100℃で10時間乾燥して白色固形物(2.05g、収率53.9%)を得た。該白色固形物をFTIRで分析し、PTFEであることを確認した。該白色固形物のDSC分析は、DSC融点335.9℃、DSC結晶点314.9℃、結晶化熱−28.0J/gであった。数平均分子量Mは、1.2×10であった。
[例5(実施例)]
オートクレーブ(内容積50mlのハステロイ製。)中にラジカル重合開始剤であるパーフルオロシクロヘキシルカルボニルパーオキサイド(0.0046g)を加えた。オートクレーブを密閉して−150℃に冷却後、その中を窒素ガスで置換してから0.5kPaまで減圧した。つぎに液状のTFE(2.8g)および液状の二酸化炭素(33.2g)を高圧プランジャーポンプでオートクレーブに投入してから、反応系の温度を徐々に35℃に上げると、反応系の圧力が24.2MPaとなった。そのまま120分間、温度を35℃に保つと反応系の圧力が20.7MPaまで低下した。つぎにオートクレーブを開放し、オートクレーブ内の圧力を大気圧として残存モノマーおよび二酸化炭素を放出した。オートクレーブ中に生成した固形生成物を回収し、100℃で10時間乾燥して白色固形物(1.84g、収率65.7%)を得た。該白色固形物をFTIRで分析し、PTFEであることを確認した。該白色固形物のDSC分析の結果は、DSC融点335.7℃、DSC結晶点314.9℃、結晶化熱−32.4J/gであった。数平均分子量Mは、5.4×10であった。
[例6(比較例)]
オートクレーブ(内容積50mlのハステロイ製。)中にラジカル重合開始剤であるパーフルオロシクロヘキシルカルボニルパーオキサイド(0.0041g)を加えた。オートクレーブを密閉して−150℃に冷却後、その中を窒素ガスで置換してから0.5kPaまで減圧した。つぎに液状のTFE(3.2g)および液状の二酸化炭素(35.0g)を高圧プランジャーポンプでオートクレーブに投入してから、反応系の温度を徐々に75℃に上げると、反応系の圧力が19.7MPaとなった。そのまま30分間、温度を75℃に保つと反応系の圧力が18.3MPaまで低下した。つぎにオートクレーブを開放して、オートクレーブ内の圧力を大気圧として残存モノマーおよび二酸化炭素を放出した。オートクレーブ中に生成した固形生成物を回収し、100℃で10時間乾燥して白色固形物(1.58g、収率49.3%)を得た。該白色固形物をFTIRで分析し、PTFEであることを確認した。該白色固形物のDSC分析の結果は、DSC融点333.3℃、DSC結晶点314.0℃、結晶化熱−47.3J/gであった。数平均分子量Mは、7.7×10であった。
[例7(比較例)]
オートクレーブ(内容積50mlのハステロイ製。)中にラジカル重合開始剤であるアゾイソブチロニトリル(0.0027g)を加えた。オートクレーブを密閉して−150℃に冷却後、その中を窒素ガスで置換してから0.5kPaまで減圧した。つぎに液状のTFE(3.3g)および液状の二酸化炭素(38.1g)を高圧プランジャーポンプでオートクレーブに投入してから、反応系の温度を徐々に75℃にあげると反応系の圧力が37.5MPaとなった。そのまま230分間、温度を75℃に保つと反応系の圧力が34.9MPaまで低下した。つぎにオートクレーブを開放し、オートクレーブ内の圧力を大気圧として残存モノマーおよび二酸化炭素を放出した。オートクレーブ中に生成した固形生成物を回収し、100℃で10時間乾燥して白色固形物(0.96g、収率29.4%)を得た。該白色固形物をFTIRで分析し、PTFEであることが確認した。該白色固形物のDSC分析の結果は、DSC融点331.2℃、DSC結晶点313.1℃、結晶化熱−53.7J/gであった。数平均分子量Mは、4.0×10であった。
[例8(比較例)]
オートクレーブ(内容積50mlのハステロイ製。)中にラジカル重合開始剤であるアゾイソブチロニトリル(0.0027g)を加えた。オートクレーブを密閉して−150℃に冷却後、その中を窒素ガスで置換してから0.5kPaまで減圧した。つぎに液状のTFE(17.0g)および液状の二酸化炭素(14.0g)を高圧プランジャーポンプでオートクレーブに投入してから、反応系の温度を徐々に60℃に上げると反応系の圧力が68.0MPaとなった。そのまま10分間、温度を60℃に保つと反応系の圧力が66.8MPaまで低下した。つぎにオートクレーブを開放して、オートクレーブ内の圧力を大気圧として残存モノマーおよび二酸化炭素を放出した。オートクレーブ中に生成した固形生成物を回収し、100℃で10時間乾燥して白色固形物(8.54g、収率50.0%)を得た。該白色固形物をFTIRで分析すると、PTFEであることを確認した。該白色固形物のDSC分析の結果は、DSC融点320.2℃、DSC結晶点311.5℃、結晶化熱−61.9J/gであった。数平均分子量Mは、1.4×10であった。
本発明の方法を用いて、製造される高分子量のフルオロポリマーは、卓越した耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性、低表面エネルギー性などを有するため、過酷な条件下で使用されるシール剤、離型剤などの原料として、半導体工業、自動車工業、化学工業など広い産業分野において使用できる。

Claims (4)

  1. ラジカル重合開始剤の存在下に、二酸化炭素および炭素数1〜2のハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上を含む重合媒体中で、テトラフルオロエチレンを重合し、ポリテトラフルオロエチレンを製造する方法であって、反応系の温度が該重合媒体の臨界温度〜該重合媒体の臨界温度+20℃で、かつ、31.1〜40.0℃であると共に、反応系の圧力が該重合媒体の臨界圧力〜該重合媒体の臨界圧力+30MPaで、かつ、7.3〜35.0MPaであることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
  2. 重合媒体が、実質的に二酸化炭素のみからなることを特徴とする請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
  3. ラジカル重合開始剤が、パーフルオロラジカル重合開始剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
  4. 得られるポリテトラフルオロエチレンの数平均分子量が、1.0×10〜5×10である請求1〜3の何れか一項に記載のポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
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