JP4362572B2 - ロバスト最適化問題を解く問題処理方法およびその装置 - Google Patents

ロバスト最適化問題を解く問題処理方法およびその装置 Download PDF

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本発明は工学製品等を信頼性よく設計する手法の1つであるシックスシグマ手法に関するものであり、特に、従来のロバスト最適化問題で扱う目的関数の平均、標準偏差の双方を個別の目的関数で定義して多目的最適化問題とみなし、複数の設計候補を並列的に扱い、パレート最適性という概念に基づいて各設計候補の優劣の比較を行うことができる最適化手法を用いてこの問題の複数個のロバスト最適解を効率良く求めるとともに、適切なシグマレベルを自動的に評価する手法及びそれを実施する装置に関するものである。
工学的な設計を行う場合において、ある制限のもとで最も優れた性能を持つ設計を自動的に求める技術としての設計最適化技術が存在する。例えば、鋼材形状の設計において、重量が最小となる形状を求める場合を考えてみる。形状が決まると重量を求めることができるので、重量を最小化するためには鋼材の板厚を薄くする方向にすればよいことになる。しかしながら、所定の構造強度を確保する点を考慮するならば板厚や断面モーメント等には一定の制限が存在することになり、無制限に板厚を薄くすることはできない。そこで、構造強度に関する制限を考慮しつつ重量が最小となる形状を求めることが必要になってくる。
一般にこのような問題は最適化問題と呼ばれ、本例における形状を定義する板厚などのパラメーターは設計変数、重量は目的関数、構造強度に関する制限は制約条件として定義される。したがって、設計最適化問題とは、設計変数に関する目的関数及び制約条件を設け、この制約条件を満たすものの中で目的関数値を最大あるいは最小とする設計変数値を求めることと定義される。
一般的に複数の設計変数x1、x2、…、xn(nは設計変数の数を表す)が存在するため、ここでは、設計変数をベクトルξ=(x1,x2,…,xn)として表現し、目的関数をf(ξ)、不等式制約条件関数をg(ξ)、等式制約条件関数をh(ξ)とすると、設計最適化問題は次のように表される。なお、ここでは、目的関数f(ξ)の最小化問題を考えるとする。
最小化:f(ξ),
制約条件:g(ξ)≦0,
h(ξ)=0
このように最適化問題を目的関数及び制約条件によって定式化しその解を求めることは可能であるが、求まった解を実際の設計にそのまま適用するには問題がある。求まった解をそのまま適用しない方が良い1つの理由として、実際の設計では、設計又は製造の過程で生じる不確定な誤差等が不可避的に含まれてしまうからである。もしも、この誤差が一定で予想できる値であれば、最適化計算で求めた解にこの誤差分を加味して処理することは可能である。しかし、通常は誤差に不確定性があるため、一定の誤差分を加味しただけでは最適化計算解を適正に修正することができず、最適化計算によって予定していた予想性能(所定の構造強度の下での重量最小化)を実現できない恐れがある。
そこで近年、上記の最適化手法をさらに発展させたもので、設計誤差等の不確定性による影響を考慮したより現実的な最適化技術としてのロバスト最適化手法が考案された。通常の最適化手法では単に目的関数の最適性のみを評価するが、ロバスト最適化では目的関数の最適性だけでなくロバスト性も考慮することに特徴がある。ここで、ロバスト性とは、設計誤差等の不確定性に対する性能の安定性、すなわち設計変数のばらつきに対する目的関数のばらつきを意味する。
例えば、設計変数xに対する目的関数y=f(x)の分布が図1に示されるような場合を考える。図1において目的関数の最小化問題を想定すると、グラフの縦軸を表す目的関数値が最も小さい点を示す解Aが、通常の最適化によって求められるものである。しかしながら、この解Aは目的関数の最適性という観点では最も優れているが、グラフ横軸を表す設計変数がばらついたとき(即ち、解Aを中心とした所定範囲xAのばらつきがあったとき)、その影響を受けて目的関数値も大きくばらついてしまう(即ち、範囲yAでばらつく)。その結果、図1の例のように、目的関数値のばらつき範囲yAが、所定のばらつき許容領域(図中の色塗り部分)を越えて非許容領域にまで達することもありうる。一方、解Bは、目的関数値が解Aよりも大きくて最小値であることが完璧に満たされているものではないが、目的関数の最適性という観点で適度に優れているだけでなく、設計変数が解Bを中心にxAと同じ範囲を示したxBの範囲でばらついた際、このときの目的変数のばらつきyBがyAに較べてかなり小さく、許容領域内に収まっているという優位性(ロバスト性が高い)があることがわかる。
このため、解決すべき問題の特性によって、単に目的関数の最小化という最適性を追求するのか(この場合は、設計変数を与えて目的関数が最適となる解を求めることが目標となる)、或いはロバスト性も加味した最適性を追求するのか(この場合は、設計変数だけなく設計変数のばらつきを模擬する確率変数も与えた上で、目的関数が最適となり且つ目的関数のばらつきが最小となる解を求めることが目標となる)を適確に判断することが重要となる。
ところで、前述した最適性にロバスト性を加味したロバスト最適化手法の1つとして、シックスシグマ手法(例えば、非特許文献1参照)が存在する。ここで使われる「シックスシグマ」という用語は、代表的な経営改革手法(品質改善手法)を意味するものである。一般にばらつきの大きさを測る指標として統計学で周知の標準偏差σ(シグマ)を用いて、σ→2σ→3σ…となるほどばらついた性能が許容領域に収まる確率が大きいことを表すが、シックスシグマ手法は、許容領域に収まる性能のばらつきの幅がシックスシグマ(6σ)という状態、すなわち性能のばらつきが非常に小さい状態にビジネスプロセスを確立することを目的としたものである。
前述したようにばらつきの幅はσの係数を示すシグマレベルという値で定義される。このシグマレベルが異なるとき、正規分布関数の形状がどのように表されるかを示したのが図2の例である。図2から明らかなように、シグマレベル6はシグマレベル3に較べて正規分布関数の山形状が急峻であり、非許容領域に存在するデータが少ないことが分かる。つまり、シグマレベルが大きいほどばらつきが小さい、すなわちロバスト性に優れていることを意味している。
さらに、図2に示されるように、ある設計変数ξにばらつきがある状況下で、その近傍で目的関数が平均μf、分散σf 2の正規分布関数の場合、従来の最適化問題(ここでは最小化問題とする)における目的関数f(ξ)は、シックスシグマ手法においては例えば、次式のように表される。wμ、wσを平均μf、分散σf 2それぞれの重み係数とすれば、
最小化:wμμf+wσσf 2
制約条件:μf−nσf≧LSL,
μf+nσf≦USL
である。すなわち、シックスシグマ手法では目的関数の平均μfと分散σf 2を加算した値の最小化問題に置き換えられることになる。
また、シックスシグマ手法ではシグマレベルに関する制約条件も考慮しなくてはならないので、シグマレベルn及び、目的関数のばらつきの許容範囲の下限値/上限値を表すLSL/USLを用いて上記制約条件が定義される。
Engineous Software, Inc., iSIGHT Reference Guide Version 7.1, 2002, pp. 220-233.
このように、シックスシグマ手法はロバスト最適化手法の1つとして既に確立されたものであるが、依然として以下のような複数の問題点が存在している。
(1)目的関数において重み係数を与える必要がある。
この重み係数は、ロバスト最適化を行う際の目的関数の平均値、分散値各々の評価の重みを意味する。最適化計算を行う際に、平均及び分散の両方の値に適切な重み係数をユーザがあらかじめ設定し、所望の結果を導くようにすることは一般的に非常に難しい。例えば、目的関数の分散の重み係数wσを小さく設定しすぎると、ロバスト性に優れた最適解が求められない可能性がある。これとは反対に、目的関数の分散の重み係数wσを大きく設定しすぎても、最適性に優れた解を求めるという最適化本来の目標が実現されない可能性がある。対象問題の特性に応じて平均値、分散値各々の評価の重みには任意性がある。そのため、ユーザは所望の結果が算出されるまでに各重み係数の値を変えながらロバスト最適化計算の試行を何度も繰り返さなければならず、その結果、ロバスト最適解を得るまでには多大な労力と時間とが必要となってしまうという問題がある。
(2)制約条件においてシグマレベルをあらかじめ与える必要がある。
各最適化問題に対して制約条件を満たすロバスト最適解が存在するシグマレベルは実際に最適化計算を行わなければ知ることができない。つまり、実際の計算により得られた最適解を基に、シグマレベルがいくつであるか後処理的に決定することになる。このため、制約条件のシグマレベルを設定して計算を開始させる段階では、各ユーザは制約条件を満たすロバスト最適解が存在するシグマレベルに関する何の情報もなく制約条件におけるシグマレベルをいわば手探りで設定しなくてはならない。このため、設定したシグマレベルが結果として厳しすぎる場合、そのシグマレベルを満たすロバスト最適解が求まらない可能性がある。これとは反対に、シグマレベルを低く設定しすぎても最適解としての信頼性が不十分になってしまう。したがって、適切なシグマレベルを設定するために何度もロバスト最適化計算を試行錯誤的に繰り返して決定する必要があり、非効率的にならざるを得ないという問題が生じている。
(3)1回の計算で1個のロバスト最適解しか求められない。
一般的に、ロバスト最適化問題においては、目的関数に係る最適性の改善とロバスト性の改善とは相反する性質を有している。つまり、最適性を向上させようとすればロバスト性は低下し、逆にロバスト性を向上させようとすれば最適性は低下してしまうのである。よって、最適性が適度に優れていながらロバスト性も良いというロバスト最適解の算出では、求まるロバスト最適解は1個だけではなくシグマレベルに応じた複数個の解が存在することになる。設計者にとってみれば、これら複数個の最適解が求まり、目的関数の最適性とロバスト性との間に存在するトレードオフ情報を得ることができるようになれば、設計変数等の意思決定を行う上で大きな助けとなる。
しかしながら、従来から一般的に行われてきた単目的最適化(1つの目的関数を最適化する問題)では、求められる最適解は1回の最適化計算で1個だけである。このため、複数個のロバスト最適解を求めるためには重み係数を変えながら同様の計算を試行錯誤的に複数回行うことが必要となるので時間がかかり非常に非効率的であるという問題がある。また、単目的最適化を複数回繰り返したとしても、設計者が真に望む前述したトレードオフ情報を適確に得ることが保証されないという問題もある。
このため、ロバスト最適化問題の特性を考慮したより高効率かつ利便性に優れたロバスト最適化手法の確立が望まれるようになってきている。
そこで、本発明は前述した問題点に鑑み、設計者の満足するロバスト最適解を得るまでの時間及び労力の効率化を図ることができる多目的シックスシグマ手法及びその装置を提供することを第1の目的としている。また、最適化問題における目的関数に関する最適性とロバスト性との間に存在するトレードオフ情報を確実に得ることができる多目的シックスシグマ手法及びその装置を提供することを第2の目的としている。
本発明の最適問題処理方法は、制約条件を満たし、かつ与えられた目的関数の最適性とロバスト性の双方が改善するように1つ以上の設計変数の値を決定するロバスト最適化問題を解くプロセッサと、データ入力手段とを有する計算処理装置ための問題処理方法であって、前記データ入力手段により、ロバスト最適化問題を定義するために目的関数及び制約条件関数を設定する関数設定工程と、複数の設計候補の設計変数に初期値を入力する初期設計候補入力工程と、前記プロセッサが、前記入力された目的関数に対して、当該目的関数の最適性に関する指標及びロバスト性に関する指標のそれぞれを新たな複数の独立した多目的関数として設定する多目的関数設定工程と、前記入力された初期値を基に複数の設計候補を生成する設計候補生成工程と、前記生成された複数の設計候補を記憶する設計候補記憶工程と、前記生成された複数の設計候補の各近傍で、設計変数値を中心としてサンプル点を複数発生させるサンプル点発生工程と、前記発生させた複数のサンプル点を記憶するサンプル点記憶工程と、前記複数のサンプル点を読出し、各サンプル点における目的関数値を算出し、当該目的関数値の平均値及び標準偏差を各設計候補ごとに算出する統計量算出工程と、前記算出された平均値及び標準偏差を基に、前記各設計候補のロバスト最適解の評価指標を表す優劣指標をパレート最適性に基づいて算出する優劣指標算出工程と、前記算出された優劣指標を前記各設計候補に対応づけて記憶する優劣指標記憶工程と、前記優劣指標を読出して、当該優劣指標の良い設計候補を選択する設計候補選択工程と、前記選択された設計候補を基に、新たな設計候補を作成する設計候補作成工程と、前記作成された新たな設計候補を、既に生成され前記設計候補記憶手段により記憶されている設計候補の一部と入れ替えて記憶する設計候補入れ替え工程と、前記入れ替えられた新たな設計候補を含む複数の設計候補を基に、前記サンプル点発生工程、前記サンプル点記憶工程、前記統計量算出工程、前記優劣指標算出工程、前記優劣指標記憶工程、前記設計候補選択工程、前記設計候補作成工程、及び前記設計候補入れ替え工程を繰り返し実行する反復処理工程と、前記反復処理工程の実行により得られる複数のロバスト最適解が収束した場合に当該反復処理を終了させる収束処理工程とを有することを特徴としている。
本発明の最適問題処理装置は、制約条件を満たし、かつ与えられた目的関数の最適性とロバスト性の双方が改善するように1つ以上の設計変数の値を決定するロバスト最適化問題を解く計算処理装置であって、ロバスト最適化問題を定義するために目的関数及び制約条件関数を設定する関数設定手段と、複数の設計候補の設計変数に初期値を入力する初期設計候補入力手段と、前記入力された目的関数に対して、当該目的関数の最適性に関する指標及びロバスト性に関する指標のそれぞれを新たな複数の独立した多目的関数として設定する多目的関数設定手段と、前記入力された初期値を基に複数の設計候補を生成する設計候補生成手段と、前記生成された複数の設計候補を記憶する設計候補記憶手段と、前記生成された複数の設計候補の各近傍で、設計変数値を中心としてサンプル点を複数発生させるサンプル点発生手段と、前記発生させた複数のサンプル点を記憶するサンプル点記憶手段と、前記複数のサンプル点を読出し、各サンプル点における目的関数値を算出し、当該目的関数値の平均値及び標準偏差を各設計候補ごとに算出する統計量算出手段と、前記算出された平均値及び標準偏差を基に、前記各設計候補のロバスト最適解の評価指標を表す優劣指標をパレート最適性に基づいて算出する優劣指標算出手段と、前記算出された優劣指標を前記各設計候補に対応づけて記憶する優劣指標記憶手段と、前記優劣指標を読出して、当該優劣指標の良い設計候補を選択する設計候補選択手段と、前記選択された設計候補を基に、新たな設計候補を作成する設計候補作成工程と、前記作成された新たな設計候補を、既に生成され前記設計候補記憶手段により記憶されている設計候補の一部と入れ替えて記憶する設計候補入れ替え手段と、前記入れ替えられた新たな設計候補を含む複数の設計候補を基に、前記サンプル点発生手段、前記サンプル点記憶手段、前記統計量算出手段、前記優劣指標算出手段、前記優劣指標記憶手段、前記設計候補選択手段、前記設計候補作成工程、及び前記設計候補入れ替え手段を繰り返し実行する反復処理手段と、前記反復処理工程の実行により得られる複数のロバスト最適解が収束した場合に当該反復処理を終了させる収束処理手段とを備えることを特徴としている。
本発明によれば、目的関数の最適性とロバスト性の双方を改善するロバスト最適化問題のための問題処理方法であって、入力された目的関数の最適性及びロバスト性に関する指標のそれぞれを新たな複数の独立した多目的関数として設定するとともに、入力された設計変数の初期値を基に複数の設計候補を生成すると、これら設計候補各々の近傍で複数発生させた各サンプル点における目的関数値を統計処理することにより算出される前記最適性及びロバスト性に関する指標を用いてロバスト最適解の評価を表す優劣指標を算出し、当該優劣指標の良い設計候補を優先しながら既に生成した設計候補と入れ替えて複数の新たな設計候補を生成することを繰り返すように構成したので、1回の最適化計算で複数個の最適性、ロバスト性の重みの異なるロバスト最適解を求めることが可能となる。
また、設定された多目的関数は目的関数の最適性に関する指標の重み係数、ロバスト性に関する指標の重み係数を含まない形で定式化されており、さらに目的関数のばらつきの許容度を示すレベル値に関する制約条件を含まないため、目的関数の最適性に関する指標の重み係数、ロバスト性に関する指標の重み係数、そして目的関数のばらつきの許容度を示すレベル値をあらかじめ設定することなくロバスト最適解計算を行うことが可能となる。このため、十分な個数のロバスト最適解を算出するまでに要していた計算時間を格段に短縮することができ、目的関数の最適性とロバスト性間のトレードオフ情報の全体像を簡易に且つ効率良く求めることができる。
ちなみに、従来のシックスシグマ手法を用いたロバスト最適化の計算1回に要する時間が、本発明の多目的シックスシグマ手法を用いたロバスト最適化の計算1回に要する時間にほぼ等しいことが検証実験から判明している。つまり、本発明によれば従来の1個のロバスト最適解のための最適化計算で、最適解として算出されるべきすべてものをまとめて求められることになり、計算時間の大幅な短縮に貢献できるようになる。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
まず始めに、本発明の多目的シックスシグマ手法による最適化問題の定式化について説明しておく。本実施形態では、目的関数の最適性に関する指標及びロバスト性に関する指標として、それぞれ典型的な平均値μfと標準偏差σfを用いることとするが、必ずしもこれに限定されない。例えば、最適性に関する指標にはメディアン(中央値)、モード(最頻値)、ミッドレンジ(分布の範囲の中間値)、目的関数自体などを、またロバスト性に関する指標には分散、歪度、尖度、範囲などを用いた場合でも本発明の根本的な概念、作用・効果は同様に奏することができることは明らかである。
(wμμf+wσσf 2)を目的関数として単目的最適化手法を用いてその平均および分散を最小化する従来のシックスシグマ手法によるロバスト最適化問題を、本発明の多目的シックスシグマ手法によるロバスト最適化問題で置き換えると次のようになる。
最小化:μf
σf ……式(1)
前述したように、本発明では、平均値μf及び標準偏差σfの値をそれぞれ別個独立の2つの目的関数として定義して多目的最適化計算を行うようにしていることに特徴がある。
従来のシックスシグマ手法ではシグマレベルに関する制約条件を考慮していたが、本発明の多目的シックスシグマ手法ではこれを考慮せずに計算を行えるため、制約条件として事前にシグマレベルを用いた式が存在しない。また、本発明では、目的関数の平均値、分散値に対する重み係数についても事前に設定する必要がないので、前述したように非常にシンプルな目的関数となっている。なお、本本実施形態における「シグマレベル」は、特許請求の範囲における「目的関数のばらつきの幅を示すレベル値」に相当する。
また、上記式(1)では、ロバスト最適化を図るにあたり、目的関数としてばらつき最小化を意味する“最小化:σf”の他に平均値についても“最小化:μf”を定義している。これは、単に“最小化:σf”しか定義しなかった場合、例えば目的関数値のばらつきの幅が小さくても、目的関数値のばらつく場所はあまり良くない(目的関数値の大きなところでばらつく)という状況が充分に生じ得るが、平均値の最小化を定義することによって目的関数値のばらつく場所も良くなる(目的関数値の小さなところでばらつく)ということが期待できるからである。
簡単な例を用いて本発明の多目的シックスシグマ手法の有効性を説明する。
いま、多目的最適化問題の一例として、図3に示されるように、東京から福岡まで移動するにあたり、飛行機、新幹線、普通列車、及びバスの4つの交通手段の中から何れを選ぶのが最適であるかという問題を考えるとする。ここでは、各交通手段を「運賃」及び「移動時間」という観点で比較することとする。
図3から分かることは、飛行機で移動した場合、移動時間は最も短いものの運賃は最も高くついてしまう。また、新幹線で移動した場合、飛行機に比べて運賃は安く済むが移動時間は長くかかってしまう。また、バスで移動した場合、新幹線に比べて更に運賃は安く済むが移動時間は長くかかってしまう。このような状況では、飛行機、新幹線、及びバスの3つの交通手段は、他の交通手段と比較した場合に運賃と移動時間のいずれかは有利であって両方ともに不利益になってはいないことから、これら3つは最適交通手段の選択肢として残るべきものといえる。実際には、各利用者が運賃と移動時間とのどちらをどれだけ優先するかに応じて、3つの交通手段の中から選ばれることになろう。
一方、普通列車で移動した場合には、バスに比べて運賃が高く付きかつ移動時間も長くかかることが分かる。すなわち、普通列車はバスに比べて運賃及び移動時間の両観点で不利であるため、普通列車は最適交通手段の選択肢から外れるべき対象であるといえる。
以上の例を踏まえると、多目的最適化問題は一般的に次のように説明することができる。図4に示すように、多目的最適化問題は、一方の目的関数1を改善するためにはもう一方の目的関数2を妥協しなければならない(その逆もある)というトレードオフ関係に支配される。そのため、単目的最適化問題では最適解が1個だけ存在するのに対し、多目的最適化問題では複数個のパレート最適解(他のどの解よりも劣ってない解)と呼ばれるものが存在する。このパレート最適解集合こそが設計者が所望する計算結果であり、多目的最適化問題ではこれらを求めることが目標となる。しかも、このパレート最適解集合を複数回の計算ではなくわずか1回の計算ですべて求まることが望まれる。
そこで、複数の設計候補を取り扱いながら多点同時探索を行う進化的アルゴリズムを多目的最適化問題へ拡張した多目的進化的アルゴリズムの採用が有効となる。進化的アルゴリズムとは、環境に最も適した遺伝子だけが後世に生き残るという自然界における生物進化の過程を真似て作られたアルゴリズムで、確率的探索、学習、最適化の一手法である。この進化的アルゴリズムの基本を構成している重要な処理プロセスは、「選択(selection)」、「交叉(crossover)」、「突然変異(mutation)」の3つであり、これらを繰り返し行うことで人工的な進化を行い、最適解を発見することを特徴とする。
この進化的アルゴリズムによる計算手順を簡単に説明する。一般的に用いられる進化的アルゴリズムでは、解を染色体(遺伝子の組)という形にして表現する。つまり、解の持つ特徴を一定のルールに従って、例えば、0,1,1,1,0,…というように遺伝子を0又は1の組み合わせでコーディングする。この0と1の組み合わせが何を表しているかは対象問題によって自由に決められる。そこで、最初に、任意の遺伝子をデータ配列に設定して個体(設計候補)を定義し、これを複数個集めて親集団を構成する。
次に、この親集団の中で、選択、交叉、及び突然変異という遺伝的操作を模擬することで新たな個体を作り出し新たな個体からなる子集団を形成する。つまり、先の「選択」操作であれば複数の親個体の中から所定の評価関数に基づいて評価値(適応度)の高い個体を選んで子個体とする、「交叉」操作であれば選ばれた親個体の何番目かの遺伝子を交叉点としてその前と後で遺伝子を入れ替えることによって子個体とする、「突然変異」操作であれば遺伝子を一定の突然変異率で他の対立遺伝子に置き換えることにより、交叉だけでは生成できない子個体を生成して個体群の多様性を維持する働きを行う。
そして、最後に、親集団と形成された子集団の中から環境に適した(本実施形態では、目的関数値が小さく且つ制約条件をなるべく満たす)個体を順に選び出すことによって、次世代の親集団を形成していくようにする。以上の遺伝操作を繰り返すことによって、環境に最も適した個体(最適解)だけが最終的に生き残るようにしたものである。
なお、進化的アルゴリズムは、前述したような遺伝子を0と1のビット列の2進数に変換することを要する手法のみならず、扱う変数が実数値であれば実数値のまま各遺伝子的操作を施す手法も含んでいる。この場合、実数をビット列に変換する際に生じる丸め誤差の発生を防ぐことができるので高精度な処理計算を行う場合に有益である。
ここで、制約条件を考慮しながら最終的に制約条件を満たす設計候補を得る方法として、進化的アルゴリズムで用いる適応度F(ξ)について説明をする。
一般的に、制約条件を強制的に満たす設計候補空間のみを探索しようとすると効率的ではなく、解が収束しなかったり或いは収束したとしてもその設計候補が制約条件を満たしていなかったりすることもある。そこで最適化計算における設計候補の更新過程で設計候補が制約条件を厳密に満たすことを要求するのではなく、最終的に設計候補が収束した時点で制約条件が満たされていることを要求する最適化手法の考え方も存在する。進化的アルゴリズムでこれを実現する場合、各設計候補の優劣指標として、目的関数と制約条件関数の違反度(どれだけ制約条件を満たさないか)に対する適応度F(ξ)を定義してこの適合度に基づいた進化を行うようにする。特に本発明の多目的最適化問題の場合にはパレート最適解集合を得ることが目標となるため、パレート最適性に基づいた適応度F(ξ)の定義が必要となる。
<多目的進化的アルゴリズムについて>
今、最小化:f1(ξ),
2(ξ)
で表される制約条件を有しない2目的最適化問題を考えるとする。ある世代において、各個体(設計候補)が図19に示されるように目的関数空間に分布し、そのうち、●で示される個体はパレート最適解(他のどの解よりも劣っていない解)を表す。最初に、これらの各個体に対して、パレート最適性に基づいてランク(rank(ξ))を割り当てる。例えば、パレート最適解に対してはランクを1と設定し、それ以外の個体に対しては(自分よりも優れた個体数+1)をランクとして設定する。なお、図19中には各個体のランクの数値をあわせて記した。
次に、割り当てられたrank(ξ)をもとに各個体の適応度F(ξ)を、例えば次式のように定義する。
Figure 0004362572
明らかに、目的関数値f1(ξ),f2(ξ)の双方が他の設計候補よりも小さいほど割り当てられたrank(ξ)が小さくなり、結果として適応度F(ξ)が大きくなる。したがって、適応度F(ξ)が大きい設計候補ほど次世代に残りやすくなるようにした多目的進化的アルゴリズム計算を行うことにより、目的関数値f1(ξ),f2(ξ)の双方が他の設計候補よりも小さくなる(パレート最適性に優れる)方向に設計候補が更新されていくことになる。このようにして、上式のような適応度F(ξ)を定義することにより、パレート最適性に基づいた多目的最適化計算が可能となる。なお、前述した適応度F(ξ)の定義、rankの定義、制約条件を厳密に満たす個体を要求するか否か、並びに遺伝子の選択・交叉・突然変異の操作方法やその操作順序は一例であってこれに限定されるものではなく、ユーザによって任意に定義してもよいことは言うまでもない。
本発明の多目的シックスシグマ手法では目的関数の最適性に関する指標と目的関数のロバスト性に関する指標の双方をあたかも個別の目的関数として扱うため、上記のようなやり方を用いることで目的関数の最適性に関する指標と目的関数のロバスト性に関する指標の双方を改善するロバスト最適化計算を行うことができる。
このような多目的進化的アルゴリズムを、本発明の多目的シックスシグマ手法における最適性とロバスト性を兼ね備えた複数の最適解の算出のために適用しているのである。
以上説明した最適化計算処理の内容をフローチャートの形式で表したのが、図6に示す多目的シックスシグマ手法を用いたロバスト最適化の実行手順である。また、従来の最適化実行手順と比較するため、これまでのシックスシグマ手法を用いたロバスト最適化の実行手順を図5に示す。図5に示すように、従来のロバスト最適化の実行手順は、まず、ステップS500で目的関数f(ξ)を定式化(通常の最適化問題の定式化に相当)すると同時に、ステップS501で重み係数wμ、wσ、シグマレベルn、及び解の許容範囲に関する下限値/上限値を表すLSL/USLのそれぞれをユーザが設定する。これにより、通常の最適化問題(f(ξ)の最小化)をロバスト最適化問題(wμμf+wσσf 2の最小化)へ拡張する。なお、f(ξ)からwμμf+wσσf 2への変換は自動的に行うこともできる。
次に、ステップS502で、単目的最適化による初期設計候補の作成を行う。つまり、以降のステップS503〜ステップS507において目的関数を最小に収束させるための反復計算を実行するが、計算開始時における設計候補の設計変数の初期値をユーザが設定する。これが反復計算前の設計候補ξ0となる。ここで、上付き添字は反復計算回数を表す。
ステップS503で、初期値が設定された設計候補の設計変数値を中心とした複数のサンプル点をモンテカルロシミュレーション等によって発生させ、ステップS504で、発生させた各サンプル点における目的関数値f(ξ)を算出する。ステップS505では、これら複数の目的関数値f(ξ)の平均値μf、及び標準偏差σfを算出する。
次に、ステップS506で、ステップS505で算出した平均値μf、標準偏差σfによる新たな目的関数値(wμμf+wσσf 2)、シグマレベルに関する制約条件関数値を算出する。そして、前記設計候補ξ0に比べて目的関数値がより小さく、かつシグマレベルに関する制約条件の違反度がより改善される方向を探索し、その方向に沿ってξ0を変化させることで、反復計算における次の設計候補ξ1を作成する(ステップS507)。そして、ステップS508の判断で、計算結果が収束するまでステップS503の処理に戻って前述した一連の処理を続ける。すなわち、初期値から始まって目的関数値が小さくなる方向に沿って設計候補をξ0→ξ1→ξ2→…と更新させていき、目的関数値が実質上これ以上小さくならないという収束値に到達したとき、そのときの設計変数値ξmaxが目的関数(wμμf+wσσf 2)を最小とする最適解となって1個のロバスト最適解となる。図5に示すフローチャートにおける点線で囲んだステップS502〜S508がいわゆる従来のシックスシグマ手法による設計変数の作成処理の核となっている部分である。
なお、設計候補を最適解に収束させる方向の決定は最適化手法によって様々である。典型的な手法では、ξiにおける目的関数の勾配(傾き:δf(ξ)/δξ)を求めてこの勾配に沿ってξiを変化させ、目的関数値がほとんど変化しなくなった時に最適化計算を終了させるという処理を用いている。
前述した設計候補の作成手順によってある値に収束したが、前もって設定したシグマレベルに関する制約条件を充足する設計変数値が得られなかった場合は、ステップS501で設定した制約条件ではそのロバスト最適解を求めることができなかったとステップS509において判定されるが、この場合制約条件を見直すために、必要に応じてステップS501に戻り、重み係数wμ、wσ、シグマレベルn、及び下限値/上限値のLSL/USLを再設定し、前述した最適化手順を繰り返す。これに対して、ステップS509で制約条件を充足する設計変数値が得られた場合はロバスト最適解が求まったと判定し、1個のロバスト最適解として決定する(ステップS510)。但し、ステップS511で、所望の最適解の個数でなければ、再度重み係数wμ、wσを変えてステップS501から前述した処理を反復して算出しなければならない。
一方、本発明の多目的シックスシグマ手法によるロバスト最適化の実行手順は、図6に示すように、ステップS600で目的関数f(ξ)の定式化を行うと、ステップS601で、複数の設計候補1〜Nの設計変数に初期値をそれぞれ設定する。
次に、ステップS602で設定された複数の設計候補の各近傍で、設計変数値を中心としてサンプル点を発生させる。図17は、縦軸及び横軸の2次元の場合の設計変数値を中心に発生させたサンプル点の分布例を示したものである。図17に示されるように、設定された設計変数値(●印)を中心にしたその周囲にサンプル点(○印)を発生させているので、縦軸及び横軸におけるサンプル点の確率密度分布は、●印を分布中心とした正規分布になる。
なお、図17では正規分布の例を示したが、サンプル点の確率密度関数は必ずしも正規分布であるとは限らず、ユーザが任意に設定することができる。また、この統計量算出のためのサンプル点の発生には、これに限定するものではなく、従来のシックスシグマ手法と同様にモンテカルロシミュレーションをはじめとする各種アルゴリズムに基づく手法(例えば、差分を利用したテーラ展開近似など)が用いられる。また、サンプル点の発生は、設計変数間の依存関係を考慮した各設計候補ごとに行う他、各設計変数ごとに独立して行うようにしてもよい。
次に、ステップS603で各サンプル点での目的関数値f(ξ)を算出する。そして、これらすべてのサンプル点における目的関数値f(ξ)を統計処理することによって目的関数値の平均μf及び標準偏差σfの値を算出する(ステップS604)。本実施例では多目的進化的アルゴリズムを用いるため、N個の設計候補のすべてについてのステップS602〜ステップS604の処理が独立に行われ、並列的に処理することが可能である。次に、ステップS605で、次の世代の複数の設計候補を生成させる。具体的には、まず最初に、ステップS604で算出された目的関数値の平均μf及び標準偏差σfの値を基に、N個の各設計候補のパレート最適性に基づいた優劣指標(多目的進化的アルゴリズムを用いた場合には、パレート最適性に基づいた適応度)を算出し、優劣指標の良い設計候補を選択する。次に、選択された設計候補を基に(進化的アルゴリズムを用いた場合には、選択された設計候補に交叉、突然変異を施すことにより)、新たな設計候補を作成する。最後に、作成された新たな設計候補と既に生成されているN個の設計候補の一部を入れ替えることにより、次の世代のN個の設計候補を作成する。
前述したように多目的進化的アルゴリズムでは、遺伝子操作及び選択による世代交代が充分に繰り返されると収束状態になり、パレート最適解集合で構成される曲線(曲面)が動かなくなる。この場合は、ステップS606でアルゴリズム計算の終了と判断して、収束までの全世代の遺伝子より得られる情報からロバスト最適解集合を求める(ステップS607)。なお、パレート最適解集合は、最終世代の個体分布だけから求めることもあるが、収束までの全世代の個体分布を統括的に見てそこから求める方が一般的である。
一方、まだ収束状態でない場合にはステップS602に戻って、前述した遺伝操作を反復させながら収束状態に達するまで次の世代の複数の設計候補を生成することを繰り返す。
ここで注目すべき点は、従来のシックスシグマ手法が1つの設計候補に対して1つのロバスト最適解(図5のステップS507)を算出するよう構成されていたのだが、本発明の多目的シックスシグマ手法では、多目的進化的アルゴリズムを用いて複数の設計候補を同時に扱ういわゆる多点同時探索を行うように処理していることから、複数のロバスト最適解を一括して同時に算出できることである。また、従来のシックスシグマ手法では重み係数wμ、wσ、シグマレベルn、及び解の許容範囲に関する下限値/上限値を表すLSL/USLを与え、シグマレベルに関する制約条件を考慮しながら目的関数の平均値μf、標準偏差σfによる新たな目的関数値(wμμf+wσσf 2)を最小化するのに対し、本発明の多目的シックスシグマ手法では重み係数wμ、wσ、シグマレベルn、及び解の許容範囲に関する下限値/上限値を表すLSL/USLを与えることなく、目的関数の平均値μf、標準偏差σfの値をそれぞれ別個独立の2つの目的関数として定義し、シグマレベルに関する制約条件を考慮せずにμf、σfそれぞれの値を最小化できることも注目すべき点である。
なお、前述したように一般的には設計変数は複数存在するため、実際の計算で扱われる設計候補は複数の設計変数を要素とするベクトル形式で表される。すなわち、各設計変数をx1、x2、…、xn(nは設計変数数)で表すと、設計候補ξは、
ξ=(x1,x2,…,xn)である。
多目的進化的アルゴリズムでは、複数の設計変数x1、x2、…、xnに対して異なる設計変数値を持つ複数の設計候補ξ1,ξ2,…,ξNを有して構成される集団を遺伝的操作によって次々に世代交代させて前集団よりも目的関数値が小さく、かつ制約条件関数の違反度が小さいという意味で優れた次集団が作り出される。これは以下のように表わせる。
(ξ1 0,ξ2 0,…,ξN 0)→(ξ1 1,ξ2 1,…,ξN 1)→(ξ1 2,ξ2 2,…,ξN 2)→…
ここで、上付き添字0、1、2、…は反復計算回数(世代数)であり、下付き添字1、2、…、Nは集団を構成する設計候補の個体番号(Nは設計候補数(個体数))である。ステップS607で、収束までの全世代の個体分布を統括的に見ることで複数のロバスト最適解が求められる。
このようにして求めた複数のロバスト最適解をプロットした一例を図7に示す。前述したように、また図6のフローチャートからも明らかなように、本発明の多目的シックスシグマ手法では最適化計算のために事前にシグマレベルを設定する必要が無い。得られた複数のロバスト最適解から後処理的にシグマレベルが判明することを図7を用いて説明する。図7は、最適化計算によって4個のロバスト最適解(解A〜解D)が求まっている場合を示している。また、図中における点線で表した2つの直線(1)及び直線(2)は、シグマレベルに関する制約条件を設定した時にその制約条件関数値=0となる境界線である。ここでシグマレベルn値に応じて直線の傾きが変動するがいずれにしても2つの制約条件式を満たすのは図中に示した矢印側領域の共通部分(図中の色塗り部分)であり、当該領域に含まれる最適解Cがそのシグマレベルnを満たしていることがわかる。例えば、シグマレベルnが緩やかになれば前記共通部分にさらに解B及び解Dも含んだり、逆にシグマレベルnが厳しくなれば解Cさえも含まれなくなることになることは明らかである。したがって、パレート最適解の分布状態と、制約条件式の直線の傾きから、適切なシグマレベルnの値が容易に判明することができる(図6のステップS608)。
なお、本実施例では複数の設計変数で構成される設計候補の更新を行うために多目的進化的アルゴリズムを用いたが、必ずしもこれに限定されない。本発明が一実施例として多目的進化的アルゴリズムを用いたのは、複数の設計候補を並列的に扱い、パレート最適性という概念に基づいて各設計候補の優劣の比較を行うことにより、一度の計算で複数の最適解が得られる利点があることを理由としたものであり、したがって本発明がこの利点を充足する別のアルゴリズムに基づいて設計変数の設定を行う場合も含んでいることは言うまでもない。
また、図6のフローチャートに示した本発明の処理手順では、説明を簡単にするために各手順を一連のブロックとして示して説明しており、幾つかのブロックは図示され説明されるものとは異なる順序及び/又は他のブロックと同時に起こり得ることから、本方法はブロックの順序によって厳密に限定されるものではないことを理解されたい。更に、図示された全てのブロックより少ないブロックが実施例の方法を実施するのに必要とされる場合もある。更に、付加的な方法及び/又は別の方法では、図示されていない追加のブロックを用いてもよい。この場合、矩形ブロックは、例えばソフトウェアで実施することができる「処理ブロック」を意味する。また同様に、ダイヤモンド形ブロックは、例えばソフトウェアで実施することができる「決定ブロック」又は「フロー制御ブロック」を意味する。或いは、及び/又は更に、この処理ブロック及び決定ブロックは、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ASIC、及びこれらに類するもののような機能的等価回路で実施することができる。
また、図6のフローチャートは、ある特定のプログラミング言語、方法、或いはスタイル(例えば手続き型、オブジェクト指向)に対する構文を表していない。逆に、当該フローチャートは、当業者がソフトウェアのプログラム、回路設計などに用いることができる機能的情報を示している。幾つかの実施例において、ループ及び変数の初期化、一時変数の使用、ルーチンループなどのプログラム要素は示されていないことを理解されたい。
<多目的シックスシグマ手法によって最適化計算を実行するハードウェア構成>
ここでは、前述した多目的シックスシグマ手法による最適化計算を行うハードウェア構成(以下、演算装置700と略す)の一例について説明する。図18は、演算装置700の構成を示したものである。
演算装置700は、上記図18に示すように、バス708によって作動的に接続されたプロセッサ702、メモリ704、ディスク706、入出力ポート710、及びネットワークインタフェース712を含むいわゆるコンピュータ700である。本明細書で説明されたコンピュータ実行可能な方法は、コンピュータ700のようなコンピュータ上で実施することができる。なお、コンピュータ700の構成に限定されるものではなく、他のコンピュータもまた本明細書で説明される方法に用いることができる点を理解されたい。
プロセッサ702は、デュアルマイクロプロセッサ及び他のマルチプロセッサアーキテクチャを含む種々のプロセッサの種類とすることができる。プロセッサ702が備える構成手段を表したブロック図を図20に示す。なお、図20において、入出力デバイス718(モニタ画面)に対するデータ出力手段など本発明に直接関係のない構成手段については省略している。
メモリ704は、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを含むことができる。不揮発性メモリは、限定するものではないが、読出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読出し専用メモリ(PROM)、電気的プログラム可能読出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読出し専用メモリ(EEPROM)、及びこれらに類するものを含むことができる。揮発性メモリは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、シンクロナスRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)、ダブルデータレートSDRAM(DDR SDRAM)、及びダイレクトRAMバスRAM(DRRAM)を含むことができる。ディスク706は、限定ではないが、磁気ディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、テープドライブ、Zipドライブ、フラッシュメモリカード、及び/又はメモリスティックのようなデバイスを含むことができる。更に、ディスク706は、コンパクトディスクROM(CD−ROM)、CD書き込み可能ドライブ(CD−Rドライブ)、CD書き換え可能ドライブ(CD−RWドライブ)、及び/又はデジタル多機能ROMドライブ(DVD ROM)のような光ドライブを含むことができる。また、メモリ704は、例えばプロセス714及び/又はデータ716を記憶することができる。
データ716は、例えば設計候補の初期値及び/又は更新された設計候補を含むことができる。ディスク706及び/又はメモリ704は、コンピュータ700のリソースを制御し且つ割り当てるオペレーティングシステムを記憶することができる。
バス708は、単一の内部バス相互接続アーキテクチャ及び/又は他のバスアーキテクチャとすることができる。バス708は、限定するものではないが、メモリバス又はメモリコントローラ、周辺バス又は外部バス、及び/又はローカルバスを含む種々の形式のものとすることができる。ローカルバスは、限定するものではないが、業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MSA)バス、拡張ISA(EISA)バス、ペリフェラルコンポーネントインターコネクト(PCI)バス、ユニバーサルシリアル(USB)バス、及び小型コンピュータシステムインターフェース(SCSI)バスを含む種々のものとすることができる。
コンピュータ700は、入出力ポート710を介して入出力デバイス718と対話する。入出力デバイス718は、限定するものではないが、カテーテルのような挿入可能なデバイスに取り付けられたハンドル、キーボード、マイクロフォン、ポインティング及び選択デバイス、カメラ、ビデオカード、ディスプレイ、及びこれらに類するものを含むことができる。入出力ポート710は、限定するものではないが、シリアルポート、パラレルポート、及びUSBポートを含むことができる。入出力デバイス718は、入力デバイスと出力デバイスの2つに分離して構成してもよい。
コンピュータ700はネットワーク環境で動作することができ、従って、ネットワークインターフェース712によってネットワーク720に接続される。ネットワーク720によって、コンピュータ700は遠隔のコンピュータ722に論理的に接続することができる。従って、本明細書に説明される方法は、2つ又はそれ以上の通信し協働するコンピュータ間に分散することができる。ネットワーク720は、限定するものではないが、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、及び他のネットワークを含むことができる。ネットワークインターフェース712は、限定するものではないが、光ファイバ分散データインターフェース(FDDI)、銅線配線データインターフェース(CDDI)、イーサネット(登録商標)/IEEE802.3、トークンリング/IEEE802.5、及びこれらに類するものを含むローカルエリアネットワーク技術に接続することができる。同様に、ネットワークインターフェース712は、限定するものではないが、ポイントツーポイントリンクと、統合サービスデジタル通信網(ISDN)、パケット交換ネットワーク、及びデジタル加入者回線(DSL)のような回線交換ネットワークとを含むワイドエリアネットワーク技術に接続することができる。
このような意味で、本発明の多目的シックスシグマ手法を実行するハードウェア装置が図18に示す構成に限定されないことも言うまでもない。つまり、演算装置700が、ネットワーク720を介して複数の機器が相互に必要なデータを送受信する演算装置又はシステムを構築するようにしてもよい。例えば、複数のハードウェア装置を通信ネットワーク(例えば、インターネット等)によって互いに通信可能なように接続してデータ等をやり取りした構成のシステムである、サーバー/クライアントシステム又はグリッドコンピュータシステムなどにおいても本発明を実現することは可能である。
次に、上記演算装置700によって最適化計算を行った多目的シックスシグマ手法の4つの適用例を以下に示す。
(適用例1)
テスト関数問題へ適用した例である。いま、テスト関数として次式で表されるものを考えるとする。
Figure 0004362572
上記テスト関数の分布は図8に示すとおりである(本テスト関数は、x=0を中心として左右対称の値をとるが、図8では特にxが正の場合を示している)。このテスト関数のロバスト最適化問題、即ち、
最小化:μf
σfを考える。
通常のf(x)に関する最小化問題であれば、目的関数f(x)の値が最小を示す中心x=0が最適解となるが、本発明の多目的シックスシグマ手法では最適解とならない。x=0の谷部は最適性という観点では最も優れているが、ほんの僅かでもx=0からずれたことに対するf(x)値への影響は大きくロバスト性という観点では優れていない。一方、x値が1→2→3→4…となるに従って、最適性という観点では次第に劣っていくが、谷部の急峻さが緩く(大きな谷部)なってロバスト性という観点では次第に優れていく傾向がある。よって、上記図8に示すロバスト最適化問題では、計5箇所の各谷部がロバスト最適解となりうる。
なお、本発明の有効性を明確に実証するために、図8に示すテスト関数によるロバスト最適化問題を、従来のシックスシグマ手法と、本発明の多目的シックスシグマ手法との各々で解いて比較してみた。その結果を、各々の手法を用いて求めたロバスト最適解における目的関数の平均及び標準偏差の分布として図9に示すとともに、具体的な数値データを図10に示した。
図9において「×」で示した箇所が従来のシックスシグマ手法によって求まった最適値である。これは表1に示す値で平均及び標準偏差の各重み係数(wμ、wσ)を変えた7回の計算結果から得られた2個の値をプロットしたものである。なお、シグマレベルをさまざまに変えて試行を繰り返すことにより、ロバスト最適解の存在するシグマレベルが3σであることが判明した。
これに対して、本発明の多目的シックスシグマ手法によって求まった最適値は図中の「○」で示した箇所である。この場合、シグマレベルを事前に設定することは不要で、僅か1回の計算によって5個のロバスト最適解すべて求まって、これをプロットした結果である。従来のシックスシグマ手法を用いた場合には、シグマレベルを3σとあらかじめ設定した計算を行ったことから、多目的シックスシグマ手法によって求まった5個のロバスト最適解のうちでシグマレベル3σを満たす2個のロバスト最適解(図中「×」の箇所)しか得ることができなかったことになる。
さらに言えることは、このテスト関数ではシグマレベル3σを満たすロバスト最適解は3個存在しているのにもかかわらず(μf=−0.73、−0.69、−0.56の箇所)、従来のシックスシグマ手法はそれらのうちの2個しか見つけ出せなかったことから、従来のシックスシグマ手法はロバスト最適解の探索能力を十分に有しているとは言えないと評価できる。
なお、今回の計算では事前に設定したシグマレベル3σが最適解を導くのに適切だったため運良く2個のロバスト最適解を見つけ出すことができたとも言える。従来のシックスシグマ手法では、シグマレベルの設定はユーザによって試行錯誤的に行うしかなく、常に設定したシグマレベルを満たすロバスト最適解を見つけ出せる保証はない。つまり、シグマレベルを不適切に設定してしまえば、ロバスト最適解がまったく存在しないという結論を導いてしまいかねない。
一方、本発明の多目的シックスシグマ手法を用いた場合には、前述したように5個すべてのロバスト最適解を一度の計算で手間無く効率よく得ることができている。また、図9で示されるシグマレベル4σの場合はロバスト最適解が見つけられなくなるのに対してシグマレベル3σの場合は見つけ出せていることから、計算結果から満足し得る最高シグマレベルはおよそ3σであることがわかる。
以上説明したように本実施の形態の演算装置700による多目的シックスシグマ手法では、図8に示すテスト関数のロバスト最適値を確実且つ効率良く見つけ出せることができる。また、最適解を導出するにあたり、シグマレベルを事前に設定することが不要であり、得られた複数のロバスト最適解を基に後からシグマレベルの値を決定することが可能であるため、本来見つけ出せるはずのロバスト最適解が不適切なシグマレベル値を設定したことによって見つけ出せないという不合理さを解消することができる。さらに、本発明では、目的関数の平均及び標準偏差の両方を個別の目的関数として扱うように構成していることから、ユーザの経験や勘によってシグマレベル値(重み係数を含む)が事前に決定されてしまうことが排除され、シグマレベル値から導出されるロバスト最適値が対象問題に対して妥当であるかを客観的且つ正確に評価することができるようになる。
(適用例2)
片持ち梁の材料コスト最小化問題へ適用した例である。つまり、工学製品設計問題へ適用する一例として、片持ち梁の材料コスト最小化問題を考えることとする。図11に示すような片持ち梁を製造する際に、その材料コストが最小となる梁の寸法を求める問題を想定する(目的関数は材料コストである)。ここで、設計変数は、図11に示される各寸法のうち、h,l,t,bの計4個である。いま、設計変数をξ=(x1,x2,x3,x4)=(h,l,t,b)と表すとすれば、目的関数である材料コストf(ξ)は次式のように表される。
f(ξ)=(1+c1)x1 22+c234(L+x2),
但しc1=0.10471,c2=0.0411である。
この問題では、次式で表される6個の制約条件が存在することが明らかである。即ち、
τ(ξ)−τmax≦0,
σ(ξ)−σmax≦0,
1−x4≦0,
11 2+c234(L+x2)−5≦0,
δ(ξ)−δmax≦0,
P−Pc(ξ)≦0
ここで、τ(ξ)は溶接材のせん断応力、σ(ξ)は梁の最大曲げ応力、δ(ξ)は梁端のたわみ、Pc(ξ)は梁の座屈荷重を表す。以上の制約条件の下、材料コストの平均を最小化し、標準偏差値を最小化するロバスト最適化問題を想定する。
上述した(適用例1)のテスト関数問題と同様に、従来のシックスシグマ手法と、本発明の多目的シックスシグマ手法との各々で解いて比較した。図12は、各々の手法によって求めたロバスト最適解における、材料コストの平均値/標準偏差値をそれぞれグラフの横軸/縦軸にとってプロットした図を示している。(適用例1)と同様、図中の「×」箇所は従来のシックスシグマ手法によって得られたロバスト最適解、「○」箇所は本発明の多目的シックスシグマ手法によって得られたロバスト最適解である。
図12のグラフ上、「×」箇所が重なって示されているが、これは従来のシックスシグマ手法において目的関数の重み係数を7回変えたことによって得られた7回分の計算結果である。なお、シグマレベルについては、試行錯誤的に行った結果6σに決定して制約条件で設定した。一方、グラフ上で多数の「○」箇所が示されているが、これは本発明の多目的シックスシグマ手法によって得られた計算結果である。なお、前述したように、シグマレベルの設定をせずに計算した。
これから分かるように、本発明の多目的シックスシグマ手法を用いた場合には、図12で示されるような複数個のロバスト最適解をわずか1回の計算で効率良く得ることができ、しかもグラフ上のロバスト最適解の分布状態から、材料コストの平均値と標準偏差値間のトレードオフの関係を容易に把握することができる。
図12に示された「○」箇所を数えると、得られた複数個のロバスト最適解のうち、シグマレベル6σを満たすものは計21個存在し、満たされる最高シグマレベルは6σ以上であると直ちに評価できる。一方、従来のシックスシグマ手法による7回の計算では、事前に設定したシグマレベル6σが最適値を算出する上で適切であったので、7個のロバスト最適解を得ることができた。しかし、従来のシックスシグマ手法ではシグマレベルの設定は試行錯誤的に行うしかなく、今回のように適切なシグマレベルを運良く見つけ出して設定できる保証はまったくない。
また、本発明の多目的シックスシグマ手法では、「○」箇所がグラフ全体的に存在していることから明らかなように、複数のロバスト最適解が特定の材料コスト平均に偏ったりすることなく、グラフ横軸に示した全範囲にわたって一様に分布することが確認できる(グラフ縦軸の材料コストの標準偏差についても同様のことが言える)。これに対して従来のシックスシグマ手法では、目的関数の重み係数を変化させた複数回の計算を実行したのにも関わらず、図12に示されているように、得られたロバスト最適解は局所的に偏った分布になってしまった。したがってこのような場合、ユーザにより事前に設定された重み係数値が妥当であったのかを評価することとなり、妥当でないと判断できれば重み係数を再度さまざまに変化させて同様の最適化計算を反復実行させなければならないことになる。
以上説明したように、本実施の形態の演算装置700による多目的シックスシグマ手法では、材料コストの平均値及び標準偏差値をともに最小化する目的関数に対する複数のロバスト最適値を、局所的に集中して算出するのではなく各値としてとり得る全範囲にわたり算出することが可能であるため、材料コストの平均値及び標準偏差値間のトレードオフ関係を把握することが容易である。また、得られた複数のロバスト最適値を基にシグマレベルを後から決定することができるので、シグマレベル値の妥当性、客観性、及び正確性を従来のシックスシグマ手法に較べて格段に向上させることができる。
さらに、重み係数値をその都度設定し且つシグマレベルも事前に設定した上で、1回の計算で1個しか得られない従来のシックスシグマ手法とは異なり、本発明の多目的シックスシグマ手法は、重み係数もシグマレベルもともに事前に設定する必要もなく1度の最適化計算で複数個のロバスト最適解を得ることが可能であるため、特にロバスト最適解が多数存在するときには、最適計算する際のユーザの手間及び計算時間を大幅に縮小することができる非常に効率的な手法である。
(適用例3)
航空機の翼断面形状の空力最適化問題へ適用した例である。つまり、空力最適化問題への適用として、ここでは火星飛行機の翼断面形状を例に説明する。
火星飛行機の巡航状態である翼弦長基準のレイノルズ数1×105(層流と仮定)、マッハ数0.4735、迎角2度の飛行条件下で、揚抗比(揚力/抗力)が最大となる翼断面形状を求める。ここで目的関数は揚抗比である。図13は、Bスプライン曲線によって定義した翼断面形状を表しているが、その曲線上の制御点(計6点)のグラフ縦軸で示されるy座標(翼厚方向)を設計変数としている。そこで、この空力最適化問題において揚抗比の平均を最大化し、且つ標準偏差値を最小化するロバスト最適化問題を想定する。なお、ここでは翼厚に関する制限は考慮していない。
上記(適用例1)及び(適用例2)と同様に、従来のシックスシグマ手法と、本発明の多目的シックスシグマ手法との各々で解いて比較した。図14は、各々の手法によって求めたロバスト最適解における、揚抗比の平均値/標準偏差値をそれぞれグラフの横軸/縦軸にとってプロットした図を示している。また、図中の「×」箇所は従来のシックスシグマ手法によって得られたロバスト最適解、「○」箇所は本発明の多目的シックスシグマ手法によって得られたロバスト最適解、さらに「●」は、通常の最適化(つまり、単純に揚抗比の最大化を目的とした最適化計算を意味する)によって得られた最適解である。
図14における、従来のシックスシグマ手法による計算結果(「×」箇所)は重み係数を3回変化させた計算結果であり、シグマレベルを試行錯誤的に3σとして設定した。一方、本発明の多目的シックスシグマ手法による計算結果(「○」箇所)は、前述したように、シグマレベルを事前に設定することなく、わずか1回の計算による結果で得られたロバスト最適解をプロットしたものである。
これから分かるように、従来のシックスシグマ手法、または本発明の多目的シックスシグマ手法を用いて求めた場合には、通常の最適化計算によって得られた最適解(「●」箇所)に比べて、揚抗比の標準偏差値が小さい、即ちロバスト性に優れたロバスト最適解を得ることに成功していることが分かる。さらに、本発明の多目的シックスシグマ手法を用いた場合には、図14で示されるような複数個のロバスト最適解をわずか1回の計算で効率良く且つ局所的に偏在することなく得ることができ、しかもグラフ上のロバスト最適解の分布状態から揚抗比の平均値と標準偏差値間のトレードオフの関係を容易に把握することができる。
また、図14に示すように、本発明の多目的シックスシグマ手法によって得られた複数個のロバスト最適解は、少なくともシグマレベル3σを満たすものが計3個(3σ〜6σ間の解が1個、6σ以上の解が2個)存在し、満たされる最高シグマレベルは6σ以上であることも容易に把握することができる。一方、従来のシックスシグマ手法によって得られた複数のロバスト最適解は、制約条件において事前に設定したシグマレベル3σが最適値を算出する上で適切であったので、3個のロバスト最適解を得ることができた。しかし、従来のシックスシグマ手法ではシグマレベルの設定は試行錯誤的に行うしかなく、今回のように適切なシグマレベルを運良く見つけ出して設定できる保証はまったくない。
また、本発明の多目的シックスシグマ手法では、「○」箇所がグラフ全体的に存在していることから明らかなように、複数のロバスト最適解が特定の揚抗比平均に偏ったりすることなく、グラフ横軸に示した全範囲にわたって一様に分布することが確認できる(グラフ縦軸の揚抗比の標準偏差についても同様のことが言える)。これに対して、従来のシックスシグマ手法では、目的関数の重み係数を変化させた複数回の計算を実行したのにも関わらず、図14に示されているように、得られたロバスト最適解は局所的に偏った分布になってしまった。したがってこのような場合、ユーザにより事前に設定された重み係数値が妥当であったのかを評価することとなり、妥当でないと判断できれば重み係数を再度さまざまに変化させて同様の最適化計算を反復実行させなければならないことになる。
以上説明したように、本実施の形態の演算装置700による多目的シックスシグマ手法では、揚抗比の平均値を最大化し且つ標準偏差値を最小化する目的関数に対する複数のロバスト最適値を、局所的に集中して算出するのではなく各値としてとり得る全範囲にわたり算出することが可能であるため、揚抗比の最適性及びロバスト性間のトレードオフ関係を把握することが容易である。また、得られた複数のロバスト最適値を基にシグマレベルを後から決定することができるので、シグマレベル値の妥当性、客観性、及び正確性を従来のシックスシグマ手法に較べて格段に向上させることができる。
さらに、重み係数値をその都度設定し且つシグマレベルも事前に設定した上で、1回の計算で1個しか得られない従来のシックスシグマ手法とは異なり、本発明の多目的シックスシグマ手法は、重み係数もシグマレベルもともに事前に設定する必要もなく1度の最適化計算で複数個のロバスト最適解を得ることが可能であるため、最適計算する際のユーザの手間及び計算時間を大幅に縮小することができる非常に効率的な手法である。
(適用例4)
二段式スペースプレーン統合最適設計問題へ適用した例である。つまり、最適概念設計問題へ適用する一例として、我が国における将来宇宙輸送システムの1つとして考えられている二段式スペースプレーンの統合最適設計問題をとり挙げる。そこで、図15に示されるように、高度400kmの赤道面円軌道に10tのペイロードを投入するミッションを想定し、そのミッションを実現できる機体コンセプトのうち、初期離陸重量が最小となるものを求める。つまり、ここでの目的関数は初期離陸重量である。また、設計変数は、エンジンサイズ、最大飛行動圧、機体サイズ等の各パラメーターである。そこで、この統合最適設計問題において、初期離陸重量の平均及び標準偏差の各々の値を最小化するロバスト最適化問題を考える。
前述した(適用例1)〜(適用例3)と同様に、従来のシックスシグマ手法と、本発明の多目的シックスシグマ手法との各々で解いて比較した。図16は、各々の手法によって求めたロバスト最適解における、初期離陸重量の平均値/標準偏差値をそれぞれグラフの横軸/縦軸にとってプロットした図を示している。また、図中の「×」箇所は従来のシックスシグマ手法によって得られたロバスト最適解、「○」箇所は本発明の多目的シックスシグマ手法によって得られたロバスト最適解である。
図16における、従来のシックスシグマ手法による計算結果(「×」箇所)は重み係数を3回変化させた計算結果であり、シグマレベルを試行錯誤的に3σとして設定した。一方、本発明の多目的シックスシグマ手法による計算結果(「○」箇所)は、前述したように、シグマレベルを事前に設定することなく、わずか1回の計算による結果で得られたロバスト最適解をプロットしたものである。
これより、従来のシックスシグマ手法を用いて求めた場合には、事前に設定する必要のあるシグマレベルを結果的に緩い条件となった3σとして最適化計算を実行したため、4σの解を得ることができてないことが分かる。一方、本発明の多目的シックスシグマ手法によって得られた複数個のロバスト最適解は、3σの解1個と、4σの解4個の計5個のロバスト最適解をわずか1回の計算で効率良く得ることができている。そして、これら複数のロバスト最適値を基に、初期離陸重量の平均値と標準偏差値間のトレードオフ関係を把握することが容易であるとともに、満たされる最高シグマレベルはおよそ4σであることもすぐに判断できる。
以上説明したように、本適用例にあっても前述した他の適用例と同様、初期離陸重量に関する目的関数に対する複数のロバスト最適値を、容易且つ効率的に算出することができるとともに、最適性及びロバスト性間のトレードオフ関係を容易に把握することができる。また、得られた複数のロバスト最適値を基にシグマレベルを後から決定することができるので、シグマレベル値の妥当性、客観性、及び正確性を従来のシックスシグマ手法に較べて格段に向上させることができる。
(その他の適用例)
また、本発明は、(適用例1)〜(適用例4)の以外の多目的最適化問題にも適用できる。本明細書では、通常の最適化問題として単目的最適化の
最小化:f(ξ),
を採用し、それを拡張した、
最小化:μf
σf
を例として本発明を説明していた。しかし、これはベースとなる通常の最適化問題が単目的の場合に限定されることを意図しておらず、多目的最適化問題の場合であっても、本発明は適用できる。例えば、通常の最適化問題が2目的最適化問題の
最小化:f1(ξ),
f2(ξ),
である場合、これに本発明を適用させると、
最小化:μf1
σf1
μf2
σf2
という定式化になる。ここで、μf1は目的関数f1(ξ)の平均、σf1は目的関数f1(ξ)の標準偏差、μf2は目的関数f2(ξ)の平均、σf2は目的関数f2(ξ)の標準偏差を表す。すなわち、ベースとなる通常の最適化問題が2目的最適化問題である場合、それを4目的最適化問題に拡張させることで本発明を適用することが可能である。
また、設計変数のばらつきに関していえば、設計変数の平均、標準偏差を与えることでばらつきの程度を設定できる。すなわち、これは図17のモンテカルロシミュレーションを例にとると、サンプリングを行う際に用いられる各設計変数の確率密度分布(図中の各軸に沿って描かれている分布)を定義することに相当する。ここで、設計変数の平均は各設計候補が持つ設計変数値とし(すなわち計算中に値が更新される)、設計変数の標準偏差は最初に設定された値のまま固定されるのが通常のやり方である。もちろん、設計変数のばらつかせ方は設計変数の平均、標準偏差を与えるやり方に限定されることはない。
また、本発明は設計変数だけでなく、環境変数のばらつきも考慮できる。
基本的に、最適化問題は、設計変数、そして設計変数の関数である目的関数、及び制約条件によって定義されるものである。しかし場合によっては、目的関数、制約条件は設計変数だけでなく環境変数の関数になることもある。ここで、環境変数とは最適化されない(最適化計算によって値が更新されない)目的関数の変数を表す。本明細書で説明した翼形状の空力最適化を例にとると、目的関数である翼の揚抗比を求めるためには、設計変数である翼断面形状だけでなく、飛行条件(レイノルズ数、マッハ数、迎角)も与えないと求めることができないが、この飛行条件こそが環境変数に相当する。実際には、翼断面形状などの設計変数だけにばらつきが存在するのではなく、飛行条件などの環境変数にもばらつきが存在するのが普通である。よって、設計変数のばらつきだけでなく環境変数のばらつきも考慮したロバスト最適化が必要となる場合もある。
本明細書では設計変数のばらつきだけが存在する場合に限定した記載になっているが、本発明は設計変数のばらつきだけでなく、環境変数のばらつきを考慮することも可能である。具体的には、図6のステップS602で設計変数だけでなく環境変数もばらつかせてサンプル点を発生させることにより、ステップS604で設計変数のばらつきだけでなく環境変数のばらつきに対する目的関数のばらつきが評価できる。
また、本発明の定式化は、前記式(1)に限定されない。
前述したように、本明細書では、本発明の定式化は前記式(1)の
最小化:μf
σf
で記載されているが、定式化はこれに限らないことに留意すべきである。定式化に関して重要な点は、目的関数の最適性に関する指標と、目的関数のロバスト性に関する指標とを別個独立の目的関数とすること、及び目的関数のばらつきの許容度を示すレベル値に関する制約条件を含まないことの2点である。よって、例えば、最適解の探査領域を狭めて収束性を向上させるために、極端に目的関数値が大きくなる設計候補は避けるといった制約条件を定式化の中に付加する場合など、前記式(1)に対してさらに他の制約条件が付加されることを含むものである。
また、本発明は、得られた複数のロバスト最適解から後処理的に評価できるばらつきの許容度を示すレベル値は、目的関数に関するレベル値だけでなく、制約条件関数に関するレベル値も含む。
本明細書では、通常の最適化問題として制約条件を有しない場合、
最小化:f(ξ)、
を採用し、それを拡張したロバスト最適化問題、
最小化:μf
σf
を例として本発明を説明していた。そして図7では、得られたロバスト最適解の情報である目的関数f(ξ)の平均μfと標準偏差σfの分布状態と、目的関数f(ξ)のばらつきの許容度を示すレベル値nに関する制約条件関数値=0(すなわち、μf−nσf=LSL、μf+nσf=USL)となる境界線の相対位置関係から、得られた各ロバスト最適解に対して満たされる目的関数f(ξ)に関するレベル値nが後処理的に判明することを説明していた。ここではさらに、通常の最適化問題として制約条件を有する場合、
最小化:f(ξ)、
制約条件:g(ξ)≦0
について説明する。これをロバスト最適化問題に拡張すると、
最小化:μf
σf
制約条件:g(ξ)≦0
という定式化になる。設計変数ξがばらつくことによって、目的関数f(ξ)がばらつくだけでなく、制約条件関数g(ξ)もばらつく。このような定式化の下でロバスト最適化計算を行うと、目的関数f(ξ)の平均μfと標準偏差σf双方の値が小さく、かつ設計変数ξがばらつかない(設計変数ξが平均値をとる)時に制約条件g(ξ)≦0が満たされる設計候補がロバスト最適解として求められる。つまり、このような定式化の下では、得られるロバスト最適解はあくまでも設計変数ξが平均値をとる場合に制約条件g(ξ)≦0を満たすことを保証しているに過ぎず、制約条件関数g(ξ)のばらつき方によっては制約条件g(ξ)≦0が満たされない確率が無視できないくらい大きくなることも起こりうる。よって、目的関数のみならず、制約条件関数に関してもばらつきの許容度を示すレベル値を評価することも重要である。本発明は、制約条件関数のばらつきの許容度を示すレベル値を評価することも可能である。
具体的には、図6のステップS603で目的関数値f(ξ)だけでなく制約条件関数値g(ξ)も各サンプル点において算出し、ステップS604で目的関数f(ξ)の平均μfと標準偏差σfだけでなく制約条件関数g(ξ)の平均μgと標準偏差σgも統計処理によって算出する。ステップS608では、得られたロバスト最適解からばらつきの許容度を示すレベル値(シグマレベル)nを評価するが、その際に用いられるロバスト最適解の情報として、目的関数f(ξ)の平均μfと標準偏差σfの分布状態だけではなく、制約条件関数g(ξ)の平均μgと標準偏差σgの分布状態も考える。図7で説明した目的関数f(ξ)のばらつきの許容度を示すレベル値の評価と同様に、制約条件関数g(ξ)に関しても、その平均μgと標準偏差σgの分布状態と、制約条件関数g(ξ)のばらつきの許容度を示すレベル値nに関する制約条件関数値=0(すなわち、μg+nσg=0)となる境界線の相対位置関係から、得られた各ロバスト最適解に対して満たされる制約条件関数g(ξ)に関するレベル値nも後処理的に評価できる。
以上4つの適用例、及びその他の適用例を通して説明してきたように、本発明の多目的シックスシグマ手法は、従来のシックスシグマ手法が抱える計算効率や利便性に関する問題を解決することができる。なお、本発明の技術思想は、前述した複数の適用例に限定されるものではなく、その他のより複雑で実用的な設計問題に対しても簡単に適用でき、本発明における目的及び効果が同様に達成されることは言うまでもない。
また、本発明の目的は、本実施の形態の多目的シックスシグマ手法を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読みだして実行することによっても達成されることは言うまでもない。すなわち、本発明による方法は、コンピュータ実行可能命令及び/又は演算として実施される。
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本実施の形態の機能を実現することとなり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体及び当該プログラムコードは本発明を構成することとなる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、これに限定するものではないが、特定用途向け集積回路(ASIC)、コンパクトディスク(CD)、デジタル多機能ディスク(DVD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読出し専用メモリ(PROM)、電気的消去可能・プログラム可能読出し専用メモリ(EEPROM)、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、搬送波、不揮発性のメモリカード、及びメモリスティック等を用いることができる。
また、コンピュータが読みだしたプログラムコードを実行することにより、上記本実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって本実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
通常の最適解とロバスト最適解の比較を示すための図である。 シグマレベル(レベル3及びレベル6)によって正規分布関数の形状が相違することを表した図である。 東京から福岡まで移動するための交通手段の比較を示す図である。 パレート最適解を示した図である。 従来のシックスシグマ手法を用いたロバスト最適化の実行手順を示したフローチャート図である。 本発明の多目的シックスシグマ手法によるロバスト最適化の実行手順を示したフローチャート図である。 本発明の多目的シックスシグマ手法を用いた場合のシグマレベルnの評価を導く図である。 本発明の一適用例におけるテスト関数の分布状態を表す図である。 図8に示すテスト関数によるロバスト最適解を、目的関数の平均値及び標準偏差値との関係で表した図である。 図9に示す目的関数の平均及び標準偏差の具体的な数値データを示した図である。 本発明を片持ち梁の材料コスト最小化問題に適用するときの片持ち梁の各形状寸法を示す図である。 図11に示す片持ち梁の材料コスト最小化問題におけるロバスト最適解を、材料コストの平均値及び標準偏差値との関係で表した図である。 本発明の一適用例におけるBスプライン曲線によって定義した翼断面形状を表した図である。 図13に示す翼断面形状の空力最適化問題におけるロバスト最適解を、揚抗比の平均値及び標準偏差値との関係で表した図である。 二段式スペースプレーンの想定ミッションを示す図である。 図15に示す二段式スペースプレーン統合最適化問題におけるロバスト最適解を、初期離陸重量の平均値及び標準偏差値との関係で表した図である。 設計変数値を中心に発生させたサンプル点の分布の一例を示す図である。 本発明の多目的シックスシグマ手法による最適化計算を行うハードウェア構成の一例を示す図である。 パレート最適性に基づいて割当てたランク値を示す一例である。 プロセッサが備える構成手段を示したブロック図である。
符号の説明
700 コンピュータ
702 プロセッサ
704 メモリ
706 ディスク
708 バス
710 入出力ポート
712 ネットワークインタフェース
714 プロセス
716 データ
718 入出力デバイス
720 ネットワーク
722 遠隔コンピュータ

Claims (8)

  1. 制約条件を満たし、かつ与えられた目的関数の最適性とロバスト性の双方が改善するように1つ以上の設計変数の値を決定するロバスト最適化問題を解くプロセッサと、データ入力手段とを有する計算処理装置のための問題処理方法であって、
    前記データ入力手段により、
    ロバスト最適化問題を定義するために目的関数及びシグマレベルを含む制約条件関数を設定する関数設定工程と、
    複数の設計候補の設計変数に初期値を入力する初期設計候補入力工程と、
    前記プロセッサが、
    前記入力された目的関数に基づき、最適性とロバスト性の指標をトレードオフ関係にある複数の目的関数にそれぞれ別個に設定して、前記複数の目的関数からのみ設計候補をパレート最適解に収束させるため、パレート最適解のための目的関数を生成する工程と、
    前記入力された初期値を基に複数の設計候補を生成する設計候補生成工程と、
    前記生成された複数の設計候補を記憶する設計候補記憶工程と、
    前記生成された複数の設計候補の各近傍で、設計変数値を中心としてサンプル点を複数発生させるサンプル点発生工程と、
    前記発生させた複数のサンプル点を記憶するサンプル点記憶工程と、
    前記複数のサンプル点を読出し、各サンプル点における前記パレート最適解のための目的関数値を算出し、当該目的関数値の平均値及び標準偏差を各設計候補ごとに算出する統計量算出工程と、
    前記算出された平均値及び標準偏差を基に、前記各設計候補のロバスト最適解の評価指標を表す優劣指標をパレート最適性に基づいて算出する優劣指標算出工程と、
    前記算出された優劣指標を前記各設計候補に対応づけて記憶する優劣指標記憶工程と、
    前記優劣指標を読出して、当該優劣指標の良い設計候補を選択する設計候補選択工程と、
    前記選択された設計候補を基に、新たな設計候補を作成する設計候補作成工程と、
    前記作成された新たな設計候補を、既に生成され前記設計候補記憶手段により記憶されている設計候補の一部と入れ替えて記憶する設計候補入れ替え工程と、
    前記入れ替えられた新たな設計候補を含む複数の設計候補を基に、前記サンプル点発生工程、前記サンプル点記憶工程、前記統計量算出工程、前記優劣指標算出工程、前記優劣指標記憶工程、前記設計候補選択工程、前記設計候補作成工程、及び前記設計候補入れ替え工程を繰り返し実行する反復処理工程と、
    前記反復処理工程の実行により得られる複数のパレート最適解が収束した場合に当該反復処理を終了させる収束処理工程と、
    前記収束処理工程で得られたパレート最適解のうち前記制約条件関数を充足するパレート最適解を抽出したり、又は目的関数値のばらつきをあらわすシグマレベルが変化したときのパレート最適解を各シグマレベル毎に演算することなく前記制約条件関数及び前記得られたパレート最適解から推測して、各シグマレベルとパレート最適解との関係を決定するシグマレベル評価工程と、
    を有することを特徴とするロバスト最適化問題を解くための問題処理方法。
  2. 前記パレート最適解のための目的関数は、前記関数設定工程で入力された目的関数の最適性に関する指標の重み係数及びロバスト性に関する指標の重み係数を含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記設計候補選択工程は、複数の設計候補を並列的に扱い、パレート最適性という概念に基づいて各設計候補の優劣の比較を行うことにより、優れた設計候補を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記パレート最適解のための目的関数を生成する工程で設定される最適性に関する指標は、前記目的関数の平均値、メディアン(中央値)、モード(最頻値)、ミッドレンジ(分布の範囲の中間値)、前記目的関数値自体である分布の代表値を示す統計量の少なくとも何れかを含み、前記ロバスト性に関する指標は、標準偏差、分散、歪度、尖度、又は範囲である分布の散布度を示す統計量を少なくても1つ含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
  5. 制約条件を満たし、かつ与えられた目的関数の最適性とロバスト性の双方が改善するように1つ以上の設計変数の値を決定するロバスト最適化問題を解く問題処理装置であって、
    ロバスト最適化問題を定義するために目的関数及びシグマレベルを含む制約条件関数を設定する関数設定手段と、
    複数の設計候補の設計変数に初期値を入力する初期設計候補入力手段と、
    前記入力された目的関数に基づき、最適性とロバスト性の指標をトレードオフ関係にある複数の目的関数にそれぞれ別個に設定して、前記複数の目的関数からのみ設計候補をパレート最適解に収束させるため、パレート最適解のための目的関数を生成する手段と、
    前記入力された初期値を基に複数の設計候補を生成する設計候補生成手段と、
    前記生成された複数の設計候補を記憶する設計候補記憶手段と、
    前記生成された複数の設計候補の各近傍で、設計変数値を中心としてサンプル点を複数発生させるサンプル点発生手段と、
    前記発生させた複数のサンプル点を記憶するサンプル点記憶手段と、
    前記複数のサンプル点を読出し、各サンプル点における前記パレート最適解のための目的関数値を算出し、当該目的関数値の平均値及び標準偏差を各設計候補ごとに算出する統計量算出手段と、
    前記算出された平均値及び標準偏差を基に、前記各設計候補のロバスト最適解の評価指標を表す優劣指標をパレート最適性に基づいて算出する優劣指標算出手段と、
    前記算出された優劣指標を前記各設計候補に対応づけて記憶する優劣指標記憶手段と、
    前記優劣指標を読出して、当該優劣指標の良い設計候補を選択する設計候補選択手段と、
    前記選択された設計候補を基に、新たな設計候補を作成する設計候補作成工程と、
    前記作成された新たな設計候補を、既に生成され前記設計候補記憶手段により記憶されている設計候補の一部と入れ替えて記憶する設計候補入れ替え手段と、
    前記入れ替えられた新たな設計候補を含む複数の設計候補を基に、前記サンプル点発生手段、前記サンプル点記憶手段、前記統計量算出手段、前記優劣指標算出手段、前記優劣指標記憶手段、前記設計候補選択手段、前記設計候補作成工程、及び前記設計候補入れ替え手段を繰り返し実行する反復処理手段と、
    前記反復処理工程の実行により得られる複数のパレート最適解が収束した場合に当該反復処理を終了させる収束処理手段と、
    前記収束処理手段で得られたパレート最適解のうち前記制約条件関数を充足するパレート最適解を抽出したり、又は目的関数値のばらつきをあらわすシグマレベルが変化したときのパレート最適解を各シグマレベル毎に演算することなく前記制約条件関数及び前記得られたパレート最適解から推測して、各シグマレベルとパレート最適解との関係を決定するシグマレベル評価手段と、
    を備えることを特徴とするロバスト最適化問題を解く問題処理装置。
  6. 前記パレート最適解のための目的関数は、前記関数設定手段で入力された目的関数の最適性に関する指標の重み係数及びロバスト性に関する指標の重み係数を含まないことを特徴とする請求項に記載の問題処理装置。
  7. 前記設計候補選択手段は、複数の設計候補を並列的に扱い、パレート最適性という概念に基づいて各設計候補の優劣の比較を行うことにより、優れた設計候補を選択することを特徴とする請求項又はに記載の問題処理装置。
  8. 前記パレート最適解のための目的関数を生成する手段で設定される最適性に関する指標は、前記目的関数の平均値、メディアン(中央値)、モード(最頻値)、ミッドレンジ(分布の範囲の中間値)、前記目的関数値自体である分布の代表値を示す統計量の少なくとも何れかを含み、前記ロバスト性に関する指標は、標準偏差、分散、歪度、尖度、又は範囲である分布の散布度を示す統計量を少なくても1つ含むことを特徴とする請求項の何れか1項に記載の問題処理装置。
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