JP4361977B2 - ジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液、その調製方法、この溶液を使用するハロゲン化ポリマーの製造及び得られるハロゲン化ポリマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液及び性質を向上させたポリマーを得るためのハロゲン化モノマーの重合におけるそれらの使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化モノマーの水性懸濁重合を開始するために、ジアルキルパーオキシジカーボネートを使用することは公知である。ジアルキルパーオキシジカーボネートは、通常の重合温度において活性が高いために特に有用な開始剤である。しかしながら、それらは不安定であるという欠点があり、そのため純粋な状態で保存するのは非常に危険である。
この欠点を克服するために、重合リアクター (“in situ ”) におけるこれらのジアルキルパーオキシジカーボネートの製造の準備が既に行われている。しかしながら、この“in situ ”製造法によっては、重合リアクターに開始剤を自動的に供給するのが可能にはなっていない。また、この方法は、重合の際効果的に使用できる開始剤の量に関して正確さに欠けるため、再現性に欠ける。この方法はまた、開始剤の“in situ ”合成により、各重合サイクルを進ませる必要があるため、生産性に欠ける。さらに、ジアルキルパーオキシジカーボネートの合成からの副生成物及び残渣が除去されていなかった。
重合リアクターの外 (“ex situ ”) であり、重合の直前でジアルキルパーオキシジカーボネートの正確な必要量を調製するための準備も既になされている。この調製は、アルキルハロホルメートと過酸化物とを、水及び揮発性の水不混和性溶媒、好ましくは沸点100 度未満のものの存在下で反応させることにより行われている。次に、ジアルキルパーオキシジカーボネートを製造した一緒にした反応混合物(水相及び有機相)を重合リアクターに導入するが、これは、重合のために続いて充填される(ソルベー社、ベルギー特許822,913 )。揮発性溶媒は、全部又は一部、真空を施すことにより重合する前に除去されるのが好ましい。
この方法により、重合リアクターに開始剤を自動的に供給することができるが、重合の直前に製造される開始剤の正確な必要量が依然として要求されている。開始剤の導入を遅くするのは、例えば重合のキネティックスを向上させるために有利な技術であるが、結果としては実施できない。さらに、この方法では、全く安全に貯蔵でき、しかもいつでも使用することができる、有用なジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を得ることが可能ではない。さらに、ジアルキルパーオキシジカーボネートの製造後の水相に存在する水溶性不純物は、重合リアクターに導入する前に除去されない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
先行技術の方法による欠点を克服するため、本発明の目的は、水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマー、特にフッ素含有ポリマー(ビニリデンフルオライドポリマーを含む)の製造に特に適しているジアルキルパーオキシジカーボネート、特にジエチルパーオキシジカーボネートの有機溶液、及びそれを製造するための改良方法を提供することである。
本発明の別の目的は、この有機溶液を使用する水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマー、特にフッ素含有ポリマー(ビニリデンフルオライドポリマーを含む)の簡便かつ効率的な製造方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、このようにして得られるハロゲン化ポリマー、特にフッ素含有ポリマー(ビニリデンフルオライドポリマーを含む)を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、まず第一に、ハロゲン化モノマーの水性懸濁重合に使用するのに特に適しているジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の改良した調製法に関する。
この目的に対し、本発明は、ジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法であって、適当な量のアルキルハロホルメートを、水中で、無機過酸化物と反応させ、得られたジアルキルパーオキシジカーボネートを、ハロゲン化ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれる水不溶性有機溶媒を使用して、この溶媒のジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を得るために、抽出により分離することを特徴とする前記方法に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
水不溶性有機溶媒は、フッ素含有ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれるのが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライドポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれる。特に好ましくは、水不溶性有機溶媒はジエチルカーボネートである。
ジアルキルパーオキシジカーボネートはジエチルパーオキシジカーボネートであるのが好ましい。
アルキルハロホルメートは一般的に、アルキルクロロホルメートであるのが有利である。無機過酸化物は一般的に過酸化カルシウム又は過酸化ナトリウム或いは過酸化水素である。後者の場合、さらに、水酸化カルシウム又は水酸化ナトリウム等の塩基を水性反応混合物に導入するのが望ましい。好ましくは、無機過酸化物は過酸化水素であり、次に、水酸化ナトリウムを反応混合物に添加する。
過酸化水素の量は、通常、化学量論量よりも少ないかそれに等しい。一般的に、アルキルハロホルメートの量に関しては、化学量論不足に5%より多いかそれに等しい。水酸化ナトリウムの量は、一般的に化学量論量よりも少ないかそれに等しい。アルキルハロホルメートの量に関しては、化学量論不足に5%より多いかそれに等しい。化学量論不足は、過酸化水素及び水酸化ナトリウムのものと必ずしも同じである必要はない。アルキルハロホルメートの量に関して、水酸化ナトリウムについて3%及び過酸化水素について4%の化学量論不足により、一般的に良好な結果が得られる。
アルキルハロホルメート、過酸化水素及び水酸化ナトリウム間の反応は、通常、激しく攪拌せずに行われる。反応温度は一般的に−5℃〜+15℃、好ましくは0℃〜+15℃の値に維持される。ジアルキルパーオキシジカーボネートの全調製時間は、水酸化ナトリウムを、アルキルハロホルメート及び過酸化水素を含有する水性混合物に添加する時間により調節され、通常、数十分〜数時間の間で変化する。
【0006】
得られるジアルキルパーオキシジカーボネートの抽出分離は、公知及び適当な任意の方法により行われる。有利には、抽出溶媒を、激しく攪拌しながら、ジアルキルパーオキシジカーボネートの製造からの水性反応混合物に添加し、続いて、攪拌を中止した後に該相を沈降により分離し、抽出溶媒中のジアルキルパーオキシジカーボネートの純粋な溶液を捕集するために有機相を水相から分離する。
抽出溶媒は、ジアルキルパーオキシジカーボネートを製造する反応において、水性反応混合物にいつでも、すなわち、主反応物を導入する時点からジアルキルパーオキシジカーボネートの合成後までいつでも添加することができる。さらに、抽出溶媒は、一度に全部添加することもできるし、数段階に分けて添加することもできる。
抽出に使用する溶媒の量は重要ではない。特に、選んだ溶媒中でのジアルキルパーオキシジカーボネートの溶解度に依存することは明らかである。この量は、有機溶液中のジアルキルパーオキシジカーボネートの最終濃度が約15〜約40重量%、好ましくは約20〜約35重量%であるようにするのが有利である。
ジアルキルパーオキシジカーボネート製造後の最終水相の相対密度が1.05未満の場合、水性反応混合物の相対密度を増加させ、結果的に水相及び有機相の沈降及び分離を容易にするのに十分な量の水溶性無機塩を添加することにより水相の密度を高めるのが必要である。
無機塩は、水性反応混合物の相対密度を、第二相中で製造される有機溶液の相対密度よりも大きくするのに十分な量で使用する。水相の相対密度は、少なくとも1.05、特に、少なくとも1.06に等しいのが好ましい。さらに、水性反応混合物中の塩の飽和濃度を越えないように無機塩の量を調製するのが望ましい。
ジアルキルパーオキシジカーボネートの製造段階で使用する塩の性質は、特には重要ではない。主に、ジアルキルパーオキシジカーボネートを製造するための反応を妨げず、かつ反応条件下で沈殿しないあらゆる無機塩が適している。そのような塩としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属ハライド、特にクロリド、特にナトリウムクロリド、又はナトリウムスルフェート等のアルキル金属及びアルカリ土類金属スルフェート、又はカルシウムニトレート等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属ニトレートがあげられるが、これらに限定されない。
【0007】
本発明はまた、ハロゲン化モノマーの水性懸濁重合に使用するのに特に適している、水不溶性有機溶媒中のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液に関する。
この目的に対し、本発明は、水不溶性有機溶媒中のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液であって、該溶媒がハロゲン化ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれることを特徴とする前記溶液に関する。
水不溶性溶媒は、フッ素含有ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれるのが好ましく、特に好ましくはビニリデンフルオライドポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれる。水不溶性有機溶媒がジエチルカーボネートであるのが特に好ましい。
ジアルキルパーオキシジカーボネートはジエチルパーオキシジカーボネートであるのが好ましい。
また、本発明は、本発明の製造方法により得られるジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液に関する。
本発明の有機溶液中のジアルキルパーオキシジカーボネートの濃度は、一般的に約15〜約40重量%である。有機溶液中のジアルキルパーオキシジカーボネートの濃度は約20〜約35重量%であるのが好ましい。
本発明はまた、ジアルキルパーオキシジカーボネートを含有するハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法であって、ジアルキルパーオキシジカーボネートを、ハロゲン化ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれる水不溶性有機溶媒中の有機溶液の形態で重合に使用することを特徴とする前記方法に関する。
ハロゲン化ポリマーの製造方法は、フッ素含有ポリマー、特にビニリデンフルオライドポリマーの製造に適用するのが好ましい。
水不溶性有機溶媒は、フッ素含有ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれるのが好ましい。ビニリデンフルオライドポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれるのがより好ましい。特に好ましくは、水不溶性有機溶媒はジエチルカーボネートである。
【0008】
ジアルキルパーオキシジカーボネートはジエチルパーオキシジカーボネートであるのが好ましい。
本発明のハロゲン化ポリマーの製造方法において使用される溶液中のジアルキルパーオキシジカーボネートの濃度は、一般的に、約15〜約40重量%である。ジアルキルパーオキシジカーボネートの濃度が約20〜約35重量%である溶液の場合に良好な結果が得られる。
本発明のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液は、ジアルキルパーオキシジカーボネートが、通常量で重合混合物中に存在するような量で使用される。ジアルキルパーオキシジカーボネートの通常の量は、使用するモノマーについて約0.05〜3重量%、好ましくは約0.05〜2重量%である。重合に使用する連鎖調節試薬の量は、使用するモノマーについて約0.5 〜5重量%であるのが一般的である。移動試薬におけるジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の導入により使用されるものに加えて、さらに多くの量の連鎖調節試薬を使用するのが必要であるかもしれない。
有機溶液中のジアルキルパーオキシジカーボネートは、通常、重合の最初に導入される。しかしながら、有機溶液中のジアルキルパーオキシジカーボネートを、重合の最初よりも後で(遅れて)全部又は一部を導入することができることは理解されよう。ジアルキルパーオキシジカーボネートの一部を遅れて使用すると、重合のキネティックスを向上させるのに有利であり得る。
本発明の水不溶性有機溶媒中の有機溶液の形態でのジアルキルパーオキシジカーボネートを使用する特徴とは別に、本発明の方法による重合の一般条件は、ハロゲン化ポリマー、特にフッ素含有ポリマー、さらに特にビニリデンフルオライドポリマーを、ハロゲン化モノマーの水性懸濁重合により製造するのに慣用的に使用される条件とは異ならない。
水性懸濁重合は、分散剤存在下における、油溶性開始剤、この場合特にジアルキルパーオキシジカーボネートを含有する重合を意味するものと理解される。
ビニリデンフルオライドポリマーの製造の特別の場合、分散剤は、通常、アルキル−及びアルキルヒドロキシアルキルセルロース等の水溶性セルロース誘導体である。使用する分散剤の量は、一般的に、使用するモノマーについて0.01〜0.5 重量%の範囲で変化する。0.02〜0.2 重量%で使用した場合に最良の結果が得られる。
【0009】
重合温度は、ビニリデンフルオライドの臨界温度(30.1℃)より低いか高いかの区別なく設定することができる。重合温度が30.1℃未満の場合、重合は、ビニリデンフルオライドの飽和蒸気圧と等しい圧力下で従来の液体ビニリデンフルオライドの水性懸濁中で行われる。重合温度が30.1℃を越える場合、高圧下で有利であるガス状ビニリデンフルオライドの水性懸濁液中で行われる。このようにして、室温から約110 ℃にわたる温度で本発明の方法を行うことが可能である。それにも関わらず、重合は30.1℃より高い温度で行うのが好ましい。本発明の方法の好ましい態様により、ビニリデンフルオライドの重合は35〜100 ℃で、初期圧力約55〜200barで行う。もちろん、重合中にモノマー又は水をさらに注入することにより、又は重合中に重合温度を上げることによりリアクターの生産性を上げることができる。
重合は、一般的に、バッチ条件下で行われる。ブレード、曲がりブレード又はタービン攪拌機を備えた容器リアクター中で行われる。
重合の終わりに、本発明の方法により得られるビニリデンフルオライドポリマーを、重合混合物から常法により、排出操作をしその後乾燥することにより単離する。
本発明はまた、少なくとも、a)熱安定性又はb)純度の一方の性質を向上させたことを特徴とするハロゲン化ポリマーに関する。
熱安定性を向上させることは、Boy テストにより測定される黄色度指数YI及び/又はBoy テスト(10分)により測定される黄色度指数YI(10分)が向上していることを意味するものと理解される。
純度を向上させることは、ハロゲン化ポリマーの金属イオンの含有量が減少していることを特徴とすることを意味するものと理解される。
ハロゲン化ポリマーは、フッ素含有ポリマー、より好ましくはビニリデンフルオライドポリマーである。
本発明はまた、本発明の方法により得られるハロゲン化ポリマーに関する。
【0010】
本明細書中で使用した用語は以下のように定義される。
水不溶性有機溶媒中のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液は、本発明については、有機溶液は、ジアルキルパーオキシジカーボネート及び水不溶性有機溶媒から本質的になるものを示すものと理解される。その結果、ジアルキルパーオキシジカーボネートを製造した反応混合物から生じる水相が全くない。
ジアルキルパーオキシジカーボネートは、本発明については、アルキル基が少なくとも2個の炭素原子を含有し、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert- ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、4−tert−ブチルシクロヘキシル、ミリスチル又はセチル基を表すパーオキシジカーボネート類を示すものと理解される。これらのうち好ましいのは、ジエチル及びジイソプロピルパーオキシジカーボネートである。特に好ましいジアルキルパーオキシジカーボネートはジエチルパーオキシジカーボネートである。
連鎖調節試薬から選ばれる水不溶性有機溶媒は、本発明については、標準条件下、すなわち室温及び大気圧下では液体であり水に不溶性である連鎖調節試薬を示すものと理解される。
水不溶性は、特に、室温における水への溶解度が15重量%未満であることを意味するものと理解される。本発明の方法においてジアルキルパーオキシジカーボネートの溶媒として作用する連鎖調節試薬の水への溶解度は5重量%、好ましくは3重量%を越えない。
とりわけ、本発明について使用することができる連鎖調節試薬のなかでも、クロロホルム及びトリクロロフルオロメタン、アルキルアセテート等のアルキルが炭素原子を2〜6個含有するハロゲン化誘導体、及びジアルキルカーボネートをあげることができる。
【0011】
本発明に使用することができる連鎖調節試薬のなかで、ジアルキルカーボネートが好ましい。
結果的には好ましいものである、最も効果的なジアルキルカーボネートは、アルキル基が多くても5個の炭素原子を有するものである。そのようなジアルキルカーボネートの例としては、ジメチル、ジエチル、ジ(n−プロピル)、ジ(n−ブチル)、ジ(sec-ブチル) 、ジイソブチル、ジ(tert-ブチル) 、ジ (n−ペンチル) 、ジイソアミル及びジネオペンチルカーボネートをあげることができる。
本発明の特に好ましいジアルキルカーボネートはジエチルカーボネートである(室温における水への溶解度:1.9 重量%、相対密度0.975 )。
ハロゲン化ポリマーは、本発明について、ハロゲン化モノマーのホモポリマー及びコポリマーの両方、特に、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニルクロライド又はビニリデンクロライド等のハロゲン化モノマーのホモポリマー並びにこれらのハロゲン化モノマーのコポリマー及びこれらのハロゲン化モノマーとエチレン、アクリル性又はメタクリル性モノマー又はビニルアセテート等のエチレン性不飽和を含有する他のモノマーとのコポリマーを示すものと理解される。
フッ素含有ポリマーは、本発明について、フッ素を含有するモノマーのホモポリマー及びコポリマーの両方、特に、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はヘキサフルオロプロピレンのホモポリマー並びにフッ素を含有するこれらのモノマーのコポリマー、例えば、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ビニリデンフルオライドと上述した他のフッ素化モノマーとのコポリマー、及びビニルフルオライドと上述した他のフッ素化モノマーとのコポリマーを示すものと理解される。上述したフッ素を含有するモノマーの1種とエチレン性不飽和を含有する他のモノマーとのコポリマーもまたあげられる。テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー及びトリフルオロエチレンとエチレンとのコポリマーがそれらの例としてあげられる。
【0012】
ビニリデンフルオライドポリマーは、本発明について、ビニリデンフルオライドのホモポリマー及び有利にはフッ素化されているエチレン性不飽和を含有する他のモノマーとのコポリマーの両方を示すものと理解される。使用できるフッ素化コモノマーの例として、ビニルフルオライド、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンをあげることができる。得られるコポリマーとしては、ビニリデンフルオライドから誘導されるモノマーユニットを少なくとも約75重量%含有しているのが好ましい。前記熱可塑性コポリマーは、少なくとも130 ℃、好ましくは少なくとも150 ℃、より好ましくは165 ℃に等しい融点を示すのが有利である。
本発明のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法により、種々の利点を示す溶液が得られる。これは、製造中に現れる不純物が水溶性であり、かつ水相により除去され、高収率で得られる溶液が非常に純粋であることを示している。本発明の方法により得られるジアルキルパーオキシジカーボネートの溶液は、有意に活性を失うことなく、比較的長期間(数カ月)、不都合なく貯蔵することができる。貯蔵は、一般的に低温で、好ましくは−10℃未満で、好ましくは−20℃の範囲で行われる。重合サイクルが多い場合にも十分な、比較的多量のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液は、このようにして、必要なときに使用することができるように調製し貯蔵することができる。これらの溶液は、直ぐに使用できるように調製されており、前もって溶媒を除去する必要がなく、重合の間役割を果たす。同じ溶液を使用して、多くの重合リアクターに供給することができる。最終的には、得られる溶液を輸送することができ、パイプ中で沈殿するという問題がない。
本発明のハロゲン化ポリマーの製造方法は多くの利点を有している。特に、リアクターに自動的に供給することができる。それにより、重合サイクルの再現性を向上させることになる。それにより、生産性をも向上することができる。本発明の重合方法はまた、重合においてそれ自身が関係する溶媒中のジアルキルパーオキシジカーボネートの溶液を含むという利点を示す。さらに、本発明の有機溶液の形態でジアルキルパーオキシジカーボネートを使用することにより、“in situ ”でジアルキルパーオキシジカーボネートを製造することにより得られる樹脂について、熱安定性がさらに良くなるか又は純度が増加し、あるいはその両方を示す樹脂を得ることが可能になる。
【0013】
【実施例】
実施例1−ジアルキルパーオキシジカーボネート溶液の調製
1300gの脱イオン水を、予め真空にした4Lのオートクレーブに導入した。オートクレーブの温度を+3℃に調節した後、続いて、予め1〜5℃に冷却した111.7 gの70%過酸化水素水溶液及び600 gのエチルクロロホルメートを連続的に該水溶液に導入し、オートクレーブは真空状態にしたまま、曲がりブレード攪拌機(速度400rpm)により攪拌した。次に、エチルクロロホルメートを運搬するパイプを500 gの脱イオン水でリンスし、攪拌速度を750rpmまで高くした。続いて、オートクレーブを大気圧にし、780 mLの6N水酸化ナトリウム溶液を1時間にわたってゆっくりと導入した。水酸化ナトリウムを導入している間、温度を+3℃±2℃に調節した。水酸化ナトリウムを導入し終えた後、反応混合物を10分間攪拌し続けた。続いて、攪拌速度を200rpmに下げたところ、オートクレーブの温度は+1℃を示し、予め0〜5℃に冷却した1300gのジエチルカーボネートを導入した。反応混合物を750rpmで10分間攪拌し続けた後、攪拌を中止し、沈降分離を30分間行った。続いて、オートクレーブを大気圧に戻し、有機相及び水相を回収した。このようにして1631gの有機溶液を捕集したところ、245 g/Kg のジエチルパーオキシジカーボネート定量、すなわち、過酸化水素について85%の収率の溶液を得た。このようにして調製したジエチルパーオキシジカーボネート溶液を、次に使用するために冷条件下(約−20℃)で保存した。
【0014】
実施例2−ハロゲン化ポリマーの製造
19kgの脱イオン水と270 gの15g/Kg エチルヒドロキシプロピルセルロース水溶液を、ジャケットを備えた激しく攪拌する30.8Lのリアクターに連続的に導入した。リアクター中に存在する酸素の大部分を、40mbar(15 ℃) の真空下で、3回、この操作の最初の2回を終えた後に、1bar の窒素で再度圧力を加えることにより除去した。次に、24.5重量%のジエチルパーオキシジカーボネートのジエチルカーボネート溶液82gを真空下で導入した。さらに131 gの純粋なジエチルカーボネートを添加した。続いて、1回の添加量8kgのビニリデンフルオライドを導入し、次に、最初の定常温度相である42℃に到達するまで、時間約1時間30分でリアクターを徐々に加熱した。続いて、温度を61℃まで上昇させ、その温度で1時間45分維持した。重合の最後において水性懸濁液を脱気した(圧力は大気圧より低くした)。捕集したポリマーを洗浄し、恒量まで乾燥した。全重合時間は3時間50分であった。転化率は94%であった。
実施例3−実施例2で得られたハロゲン化ポリマーの性質
温度230 ℃、重量2.16kgにおいてISO標準1133により測定した、得られたポリマーのMFI(メルトフローインデックス)は12g/10 分であった。Boy テストにより測定した黄色度指数YI及びBoy テストにより測定した黄色度指数YI(10 分) は、それぞれ11及び20であった。Boy テスト及び黄色度指数YIを決定するための測定方法は以下に記載したとおりである。金属イオン、特にナトリウムイオンの含有量はポリ(ビニリデンフルオライド)の1mg/kgよりも小さかった。金属イオンの含有量の定量法は以下に記載したとおりである。
【0015】
熱安定性試験の説明( Boy テスト)
ポリ(ビニリデンフルオライド)を、射出成形機により試験片を射出している間、熱及び機械的ストレスにさらした。大きさ60×40×4mmの射出される製品を、シェル(31.5×0.8 mm) を介して射出した。金型は、熱調節系に接続した。金型の温度は60±2℃に調節した。使用した射出成形機は、型締圧力22トン、直径22mmのシリンダー、射出ノーズとしての直径2.1mm の開放式ノズル、3V型チャンネルからなる逆止めバルブ、L/D比20を特徴とするスクリュー、3ゾーン(12D/4D/4D)及び圧縮比1.9 を特徴とするBoy 15 S射出成形機である。2つの独立した発熱抵抗素子をバレル(ゾーン1及び2)に設置し、2つの抵抗素子を逆止めバルブ及び射出ノーズゾーン(ゾーン3)に接続した。これら3つの加熱領域の温度は、順番に、190℃、220℃及び265℃である。バレルの滞留時間は、5分のオーダーであった。熱効果は、装置のバレル中で熱溶融ポリマーを維持することにより増加させることができ、射出サイクルは10分間中断させた(Boy テスト、10分) 。
黄色度指数YIの定量の測定方法の説明
サンプルの黄色度指数YIを、3つのハンターラボ色彩較正標準(白、黒、灰色)により適当に較正したハンターラボ“ウルトラスキャン”スペクトロ色彩計を使用してASTM標準D-1925により測定した。測定対照系は、CIELAB 1976 であり、光源はCIE からのD65 であり、測定したスペクトルバンドは400 〜700nm であり、スペクトル測定間隔は5nmであり、試験した範囲の直径は0.95cmであり、標準観測装置は10°であり、観測は8°の角度で行った。
金属イオン含有量の測定方法の説明
ポリ(ビニリデンフルオライド)単位kg当たりのmgとして表される金属イオン、特にナトリウムイオンの含有量を、空気−アセチレンフレーム(F-AAS)中で、波長589.0 nmで原子吸光分光計で測定した。分析前、サンプルをまず、白金皿における硫酸による無機化に供し、その後580 ℃で焼成し、灰を5モル/Lの塩酸中に溶解させ、セシウムの存在下で体積に近づけた(スペクトルゲージ)。
【0016】
比較例1−“ in situ ”で製造したジアルキルパーオキシジカーボネートを含有するハロゲン化ポリマーの性質
比較のため、ビニリデンフルオライドの重合を、適当な量のジエチルパーオキシジカーボネートを最初に重合リアクター中で“in situ ”合成したことを除いて実施例2と同じ条件下で繰り返した。19kgの脱イオン水、9gの水酸化ナトリウム、38.3gの10%過酸化水素水溶液及び270 gの15g/kg エチルヒドロキシプロピルセルロース水溶液を、ジャケットを付けた激しく攪拌する30.8Lのリアクターに連続的に導入した。真空下で設置及び窒素で再度圧力をかけることによりオートクレーブを脱気した後、24.5gのエチルクロロホルメート及び190 gのジエチルカーボネートを連鎖調節試薬として添加した。続いて、1回の添加量8kgのビニリデンフルオライドを導入し、最初の定常温度相である42℃に達するまで約2時間リアクターを徐々に加熱した。続いて、温度を61℃まで上げて、約2時間その温度を維持した。重合の最後に、水性懸濁液を脱気した(圧力は大気圧よりも低い)。捕集したポリマーを洗浄して、恒量まで乾燥した。全重合時間は4時間40分である。転化率を測定したところ94%であった。
ISO標準1133により、温度230 ℃、重量2.16kgで測定した、比較例1で得られたポリマーのMFI(メルトフローインデックス)は、10g/10分であった。Boy テストにより測定した黄色度指数YI及びBoy テスト(10分)により測定した黄色度指数YI(10分)は、それぞれ13及び29であった。金属イオン、特にナトリウムイオンの含有量はポリ(ビニリデンフルオライド)単位kg当たり2mgであった。
結果を比較すると、ビニリデンフルオライドの重合において(本発明の)ジエチルカーボネート中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液を使用することにより、熱的にさらに安定であり、かつ“in situ ”で製造したジエチルパーオキシジカーボネートを含有する生成物(比較例1)よりもイオン純度の高い(実施例2及び3)ビニリデンフルオライドポリマーを製造できることが明らかである。
Claims (23)
- ジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法であって、
適当な量のアルキルハロホルメートを、水中で、無機過酸化物と反応させ、
得られたジアルキルパーオキシジカーボネートを、ハロゲン化ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれる水不溶性有機溶媒を使用して、この溶媒のジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を得るために、抽出により分離する工程を含み、
前記連鎖調節試薬が、ジアルキルカーボネート又は炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルアセテートである前記方法。 - 水不溶性有機溶媒が、フッ素含有ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれることを特徴とする請求項1記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法。
- 水不溶性有機溶媒が、ビニリデンフルオライドポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれることを特徴とする請求項1記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法。
- 前記連鎖調節試薬が、ジアルキルカーボネートである請求項1記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法。
- 前記ジアルキルカーボネートが、炭素数が多くても5であるアルキル基を有するジアルキルカーボネートである請求項4記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法。
- 前記ジアルキルカーボネートが、ジエチルカーボネートであることを特徴とする請求項5記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法。
- ジアルキルパーオキシジカーボネートがジエチルパーオキシジカーボネートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液の調製方法。
- 水不溶性有機溶媒中のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液であって、該溶媒がハロゲン化ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれ、前記連鎖調節試薬が、ジアルキルカーボネート又は炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルアセテートであることを特徴とする前記溶液。
- 水不溶性有機溶媒が、フッ素含有ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれることを特徴とする請求項8記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液。
- 水不溶性有機溶媒が、ビニリデンフルオライドポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれることを特徴とする請求項8記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液。
- 前記連鎖調節試薬が、ジアルキルカーボネートである請求項8記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液。
- 前記ジアルキルカーボネートが、炭素数が多くても5であるアルキル基を有するジアルキルカーボネートである請求項11記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液。
- 前記ジアルキルカーボネートが、ジエチルカーボネートであることを特徴とする請求項12記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液。
- ジアルキルパーオキシジカーボネートがジエチルパーオキシジカーボネートであることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項記載のジアルキルパーオキシジカーボネートの有機溶液。
- ジアルキルパーオキシジカーボネートを使用するハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法であって、ジアルキルパーオキシジカーボネートを、ハロゲン化ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれ、前記連鎖調節試薬が、ジアルキルカーボネート又は炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルアセテートである水不溶性有機溶媒中の有機溶液の形態で重合に使用することを特徴とする前記方法。
- ハロゲン化ポリマーがフッ素含有ポリマーであることを特徴とする請求項15記載のハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法。
- ハロゲン化ポリマーがビニリデンフルオライドポリマーであることを特徴とする請求項15記載のハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法。
- 水不溶性有機溶媒が、フッ素含有ポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれることを特徴とする請求項15記載のハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法。
- 水不溶性有機溶媒が、ビニリデンフルオライドポリマー用の従来の連鎖調節試薬から選ばれることを特徴とする請求項15記載のハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法。
- 前記連鎖調節試薬が、ジアルキルカーボネートである請求項15記載のハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法。
- 前記ジアルキルカーボネートが、炭素数が多くても5であるアルキル基を有するジアルキルカーボネートである、請求項20記載のハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法。
- 前記ジアルキルカーボネートが、ジエチルカーボネートであることを特徴とする請求項21記載のハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法。
- ジアルキルパーオキシジカーボネートがジエチルパーオキシジカーボネートであることを特徴とする請求項15〜22いずれか1項記載のハロゲン化モノマーの水性懸濁重合によるハロゲン化ポリマーの製造方法。
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