JP4360743B2 - 減勢装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、急勾配傾斜面等に沿う放水路に設けられる減勢装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
道路や団地造成等の建設時に、雨水や下水、一般排水等を低地に導くべく傾斜面に沿って設置される放水路は、従来、例えば図3に示すように、傾斜面の上方に設置した流入桝31から、コンクリート等により形成された排水管路32を地盤の傾斜に沿って設置し、この排水管路32の終端に、例えば流水の流れ方向に交差するバッフル板33aなどを備える減勢装置33を設けて形成されている。このような減勢装置33により、流水エネルギを低下させて河川等に放流するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような放水路が急勾配傾斜面に設けられる場合の流末側では、急勾配の水路におきる土砂混合水等の高速射流、水路の不連続部で生じる衝撃波や空洞現象、空気の連行による水深のふくれ上がり等によって、排水管路や減勢装置の破損、さらに放流先の河川や構造物が損傷するという問題を生じている。
【0004】
本発明は、上記した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、急勾配の放水路における排水管路の磨耗や放流先の河川や構造物の損傷を低減し得る減勢装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の減勢装置は、斜面に沿う放水路に設けられる減勢装置であって、断面が滑らかに湾曲した内周面を各々有する複数の減勢槽を、上記斜面の傾斜に沿わせて設置される排水管で順次接続し、各減勢槽内で、流入した流水が内周面に沿って回流することにより減勢されるように形成していることを特徴としている。
【0006】
このような構成によれば、傾斜した放水路を通して高速射流が流れる場合でも、これは、減勢槽内において内周面に沿って回流する流れ状態となることで減勢される。したがって、このような減勢効果を有する減勢槽を複数設けることで、所望の程度まで水流エネルギを弱めて河川等に放流させることができる。しかもこの場合、各減勢槽内において、衝撃力が生じるような急激な流れ方向の変化を生じさせずに、上記のように減勢することができるので、減勢槽自体に過大な衝撃力は発生しない。また、これら減勢槽5の通過時に新たな空気の巻き込み等も極力抑えられる。この結果、排水管路や減勢装置自体の破損を防止することができ、さらに放流先の河川や構造物の損傷をも防止することができる。
【0007】
請求項2の減勢装置は、請求項1の装置において、減勢槽の内周面を断面略円形状に形成すると共に、減勢槽への流入水が内周面の接線方向から流入し、かつ接線方向に流出するように各減勢槽を排水管に接続していることを特徴としている。
【0008】
この場合には、排水管から減勢槽への流入・流出の領域においてもスムーズな流れ状態が形成され、したがって、この領域における新たな空気の巻き込みが極力抑えられる。さらに、円筒状内周面に沿って回流する流れの中から、このときの流水中に混入していた空気、さらに土砂等が、遠心力の作用で流水から分離されて、分離された水が下流側へと流下していくことにもなる。したがって、従来の空気や土砂を混入した高速射流が流れる際の排水管路等の破損がさらに確実に防止される。
【0009】
なお上記のような減勢槽は、例えば請求項3のように、10〜15m間隔で設けることで、急勾配傾斜面に沿う放水路を流れる排水に対して好適に減勢することができる。
【0010】
さらに上記減勢槽を、請求項4のように合成樹脂又は合成樹脂を主体とする複合材料で形成し、さらに請求項5のように、排水管も合成樹脂又は合成樹脂を主体とする複合材料で形成した構成とすれば、より耐久性に優れた減勢装置とすることが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る減勢装置は、図1(a)に示すように、道路や団地造成等の建設に際し、急勾配傾斜面に沿って施工される放水路1において、流末処理として設けられるものであって、この放水路1は、傾斜面の上方に設置された流入桝2に接続され、この流入桝2に集められた雨水や下水の排水、また、一般排水が上記放水路1を通して流下し、傾斜面の下方に設置されている放流桝3を介して例えば河川等に放流されるようになっている。
【0012】
上記放水路1に、その終端側(放流桝3側)から上流方向に向かって、排水管4と減勢槽5とを交互に接続して構成された減勢装置が設けられている。各減勢槽5はそれぞれほぼ同一形状で、例えば内径φ1000〜2000mmの円筒状に作製されている。このような円筒状減勢槽5が複数、図の場合には3個、それぞれ軸心をほぼ垂直にして、例えば10〜15m間隔で設けられている。
【0013】
各減勢槽5の外壁には、それぞれ上流側、下流側に傾斜して延びる内径φ100mm程度の受口短管6、差口短管7が一体形成されている。これら短管6・7を、地盤の傾斜に沿わせて設置された各排水管4における下流端の差口、上流端の受口4aに完全気密状態で結合させて、上記減勢装置が形成されている。
【0014】
各受口短管6および差口短管7は、同図(b)に示すように、平面視で同一直線上に位置し、かつ、減勢槽5における断面円形の外周壁に対する一つの接線に沿う形状で形成されている。さらに詳細には、図2(a)に示すように、上流端に受口6aを備える受口短管6は、直線状の内部流路6bが、減勢槽5の内周面5aに対する接線方向に沿う形状で、減勢槽5の外周壁に形成されている。一方、下流端に差口7aを備える差口短管7も、これとほぼ同様に、その内部流路7bが減勢槽5の内周面5aに対する接線方向に沿うように、受口短管6と平面視で同一直線上に形成されている。
【0015】
このような形状により、図中矢印で示すように、受口短管6を通して直線状に減勢槽3内に流入した流水は、その流れ方向が、減勢槽5の断面円形の内周面5aに沿って円弧状に変化する。このとき、減勢槽5における内周面5aの接線方向から流水が流入することで、このような直線状から円弧状への流れ方向の変化領域において格別な乱れを生じることなく、スムーズな流れ方向の変化が生じる。そして減勢槽5内では、その内周面5aに沿って円形状に回流することになり、このときの流れ方向の変化に伴って流水のエネルギが次第に減勢される。
【0016】
上記受口短管6は、同図(b)に示すように、減勢槽5の上端側から、前記した地盤の傾斜角に沿う角度で上方に傾斜して延びる形状に形成され、差口短管7は、減勢槽5の底部側から、上記同様の角度で下方に傾斜して延びる形状に形成されている。したがって、受口短管6の内部流路6bが減勢槽5内に開口する流入開口6cを通して減勢槽5内の上部側に流入した流水は、実際には減勢槽5の内周面5aに沿って同図矢印で示すように螺旋状に回流しながら流下し、底部側側の流出開口7bを通して差口短管7へと流出する。この差口短管7も、減勢槽5における内周面5aの接線方向に延びる形状で形成されていることから、減勢槽5内からの差口短管7への流出領域においても大きな乱れを生じることなく、差口短管7へとスムーズに流出する。
【0017】
なお、上記減勢槽5は、例えばPE、PP等の熱可塑性樹脂、或いはFRP等の合成樹脂を主体とした複合材料によって作製されている。さらに前記した各排水管4も、上記のようなPE、PP、FRPなどの耐久性のある合成樹脂や複合材料で作製されている。
【0018】
上記のように構成された減勢装置では、急勾配の放水路1を通して高速射流が流れる場合でも、これは、各減勢槽5内において前記のように螺旋状に回流する流れ状態が生じることで段階的に減勢され、水流エネルギが弱められて、下流端の放流桝3を通して河川等に放流される。この場合、各減勢槽5内には前記のように内周面5aの接線方向から流入し、かつ、接線方向に流出していくことで、急激な流れ方向の変化はなく、したがって、各減勢槽5に対して過大な衝撃力は発生せず、また、これら減勢槽5内を通過する際も、新たな空気の巻き込み等が極力抑えられる。
【0019】
さらに、減勢槽5内では、その内周面5aに沿う螺旋状の流れ状態となることから、このときの流水中に混入していた空気、さらに土砂等が遠心力の作用で流水から分離されて、これらが分離された水が下流側へと流下していく。
【0020】
このように、本実施形態における減勢装置によれば、円筒状内周面5aを有する減勢槽5を複数設けることで、流入水の水流エネルギが段階的に効率良く低減される。また、各減勢槽5に対して過大な衝撃力が作用することもなく、しかも、空気や土砂の排除が好適に生じる。この結果、特に急勾配傾斜面等の不等水流領域に設けられる放水路においても、空気や土砂を混入した高速射流、水路の不連続部で生じる衝撃波や空洞現象、空気の連行による水深のふくれ上がり等による排水管路、減勢装置の破損が防止され、さらに放流先の河川や構造物の損傷をも防止される。
【0021】
しかも上記では、各減勢槽5や排水管4が錆びにくく、また、耐磨耗性や延性靱性に優れたFRPやPE・PP等の合成樹脂製でもあるので、さらに耐久性に優れた放水路1として構成することが可能になっている。また上記では、減勢槽5自体が円筒状のシンプルな構造であるので、全体的な製作費もより安価なものとすることができる。
【0022】
以上にこの発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更することが可能である。例えば上記形態では、3個の減勢槽5を設け、また、急勾配傾斜面に沿う放水路を流れる排水に対してより好適な減勢効果を与えるために、減勢槽を10〜15m間隔で設けた例を挙げて説明したが、これら具体的数値例に本発明は限定されるものではなく、これらは、地盤の傾斜角や、見込まれる排水量等に応じて適宜設定して構成することが可能である。
【0023】
また上記実施形態では、受口短管6と差口短管7とを減勢槽5の内周面5aに対する接線方向に延びる形状で形成した例を示したが、請求項1の範囲においては、これら各短管6・7を、接線上の位置から幾分中心側にずれた形状として形成することも可能である。この場合でも、少なくとも減勢槽5の中心を通る直線上の位置からずれていれば、受口短管6を通して直線状に減勢槽5内に流入した流水が、減勢槽5の内周面に当たった後にこの内周面に沿って回流するような構成とすることができる。
【0024】
また上記では、減勢槽5を断面円形の内周面を有する円筒状に形成した例を示したが、この内周面の形状も円形状に限定されるものではなく、例えば楕円形などの滑らかに湾曲した内周面を有し、これによって、流入水が内周面に沿って回流する形状であれば、その他の形状とすることが可能である。
【0025】
さらに上記では、受口短管6と差口短管7とが平面視で同一直線上に位置するように形成した例を示したが、例えば減勢槽5の上流側と下流側とで、この減勢槽5を挟んで流路方向を屈曲させるような場合には、上記受口短管6と差口短管7とが互いに異なる直線上に位置するように設けた構成等とすることも可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明の減勢装置においては、流入水が回流するような内周面形状を有する減勢槽を複数設けることで、流入水の水流エネルギが段階的に効率良く低下され、これによって、管路や減勢装置自体の磨耗や破損、さらに放流先の構造物、河川の損傷等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における減勢装置を設けて構成された急勾配傾斜面に沿う放水路を示すもので、同図(a)は側面図、同図(b)は平面図である。
【図2】上記減勢装置における減勢槽を示すもので、同図(a)は平断面図、同図(b)は縦断面図である。
【図3】従来の急勾配傾斜面に沿う放水路の側面図である。
【符号の説明】
1 放水路
2 流入桝
3 放流桝
4 排水管
4a 受口
5 減勢槽
5a 内周面
6 受口短管
7 差口短管
Claims (4)
- 斜面に沿う放水路に設けられる、断面が滑らかに湾曲した内周面を各々有する複数の減勢槽を、前記斜面の傾斜に沿わせて設置される排水管で順次接続し、前記複数の減勢槽内で、流入した流水が前記内周面に沿って回流することにより減勢されるように形成している減勢装置であって、前記複数の減勢槽の前記内周面を断面が略円形状に形成すると共に、前記複数の減勢槽への流入水が前記内周面の接線方向から流入し、接線方向に流出するように、かつ前記接線方向はいずれも前記複数の減勢槽の底面に対して傾斜するように前記複数の減勢槽を前記排水管に接続することを特徴とする減勢装置。
- 前記複数の減勢槽を10〜15m間隔で設けていることを特徴とする請求項1の減勢装置。
- 前記減勢槽を合成樹脂又は合成樹脂を主体とする複合材料で形成していることを特徴とする請求項1、又は2の減勢装置。
- 前記排水管も合成樹脂又は合成樹脂を主体とする複合材料で形成していることを特徴とする請求項3の減勢装置。
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