JP4360540B2 - 鋳造方法及びそれを用いたシリンダヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
FeCr粉末の配合比が10%未満であると、オーステナイト生成量が少なくて合金元素未拡散領域であるフェライト及びパーライトが多く残ってしまい、15%を超えると、添加量に見合った効果が得られない。また、FeCr粉末の配合比が15%を超えると金属粉末圧粉体の成形性も悪化する。
本発明の鋳造方法を鋳鉄製シリンダヘッドの製造に適用した例を、各工程ごとに説明する。
まず、粉末配合比を重量比率で黒鉛粉末:0.5〜1.5%、銅粉末:3〜10%、ニッケル粉末:10〜20%、FeCr粉末:10〜15%、CoMoCr粉末:15〜30%、残部が純鉄粉末として粉末を配合する。次に、V型混合器などを用いて前記配合粉末が均等となるように混合して混合粉末を作製する。このとき、混合時間は10〜30分の範囲とする。混合時間が10分未満であると、十分に均等な混合状態を得ることができず、30分以上では製造に要する時間が長くなってしまう。
上記配合・混合を行った混合粉末Pを、図3に示す圧粉体成形用金型20に充填してプレス加圧を行うことにより、内径:φ31.8mmm、外径:φ38.8mm、肉厚:3mmの薄肉リング形状の金属粉末圧粉体R(図4参照)を成形する。
図5はシリンダヘッドの鋳造に用いる鋳型30のバルブシート部の周辺部構造を模式的に示す要部断面図である。なお、図5に示す鋳型30は、台中子31、吸排気ポート用中子32、冷却水通路用中子33などによって構成されている。
このように、金属粉末圧粉体Rと鋳型30(台中子31)との間にセラミックス製断熱材Sを設置しておくことにより,圧粉体部の焼結及び拡散が更に促進されるので、焼結層12の基地硬さを向上させることができる。例えば、図6のグラフに示すように、セラミックス製断熱材(厚み:5mm)を使用した場合、断熱材を使用しない場合と比較して、焼結層12の基地硬さを約1.5〜2倍程度にすることができる。図6のグラフにおいて、硬さ計測位置は図7に示す位置としている。
以上の工程で作製された鋳鉄製シリンダヘッドについて、バルブシート部11(焼結層)などの仕上げ加工を行うことにより、図1に示す構造の鋳鉄製シリンダヘッド1を得ることができる。なお、図1のZ部拡大図を図2に示す。
<金属粉末圧粉体の粉末配合比率>
従来の別体式バルブシート用の焼結材料では、耐摩耗性を確保するために焼結後に焼入れ・焼戻しなどの熱処理を施すことにより、基地組織をマルテンサイトやパーライトにしている。
ベースの純鉄粉末は、合金成分を含まないため粉末の成形性が良く、成形密度が高くなるので焼結層生成後の空孔を少なく抑える効果がある。
黒鉛粉末は、焼結促進及び基地組織のオーステナイト化を助成する効果がある。また、CrやMoと共に硬質な炭化物を生成する。黒鉛粉末の配合比(重量比率)が0.5%未満であると、焼結促進効果が少なくて、他の合金元素の未拡散部分が多く残ってしまう。また、1.5%を超えると炭化物の生成量が多くなりすぎて、靭性の低下及び被削性の低下が生じる。
銅粉末は、他の配合粉末に比べて融点が低く、先に溶融するので液相発生による焼結促進効果がある。銅粉末の配合比(重量比率)が3%未満であると焼結促進効果が少なくて、他の合金元素の未拡散部分が多く残ってしまう。また、10%を超えると、液相発生量が多くなりすぎるため焼結層の変形が生じて寸法精度が悪くなる。
ニッケル粉末は、純鉄粉末に拡散して基地組織をオーステナイト化させる効果がある。
FeCr粉末は、Cr:62%(重量比率)、残部が実質的Feである合金粉末であり、Crの一部が基地組織へ拡散して基地組織をオーステナイト化する効果と、未拡散のFeCr粉末が硬質粒子として残るので耐摩耗性の向上効果がある。
−CoMoCr粉末−
CoMoCr粉末は、重量比率でMo:28%、Cr:8.5%、Si:2.6%、残部が実質的Coである高硬度な硬質粒子であり、これを基地組織に分散させることにより耐摩耗性を向上させる効果がある。また、CoMoCr粉末中のCoやCrの一部が基地組織へ拡散することにより、硬質粒子と基地組織との密着性が向上し、摺動による硬質粒子の脱落を防止することができるとともに、基地組織をオーステナイト化させる効果が得られる。CoMoCr粉末の配合比が15%未満であると耐摩耗性の向上効果が少なく、30%を超えると金属粉末圧粉体の成形性も悪化するため、十分な焼結が得られず耐摩耗性が悪化する(下記の耐摩耗性の評価参照)。
−実施例1−
金属粉末配合比(重量比率)を、下記の表3に示すように、黒鉛粉末:1%、銅粉末:6%、ニッケル粉末:15%、FeCr粉末:13%、CoMoCr粉末:15%、残部を純鉄粉末として、薄肉リング形状の金属粉末圧粉体を成形し、その金属粉末圧粉体を鋳型内に配置して鋳造を行って、鋳鉄母材にバルブシート部(焼結層)を一体形成したサンプルを作製した。なお、金属粉末圧粉体の成形条件・形状寸法、溶湯温度などの各条件は、前記した<実施形態1>と同じとした。作製したサンプルについてバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。
上記の表3に示すように、CoMoCr粉末の配合比を30%としたこと以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作製した。得られたサンプルについて実施例1と同じ条件でバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。その結果を図8に示す。
上記の表3に示すように、CoMoCr粉末の配合比を10%としたこと以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作製した。得られたサンプルについて実施例1と同じ条件でバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。その結果を図8に示す。
上記の表3に示すように、CoMoCr粉末の配合比を35%としたこと以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作製した。得られたサンプルについて実施例1と同じ条件でバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。その結果を図8に示す。
従来のバルブシート嵌合方式にてサンプルを作製した。別体のバルブシートとしては、材質がSUH3でシート部にSTL#6を盛金したものを用いた。得られたサンプルについて実施例1と同じ条件でバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。その結果を図8に示す。
前記した実施例2で作製したサンプルについて、エネルギ分散型X線分析装置(EDX)を用いて焼結層と鋳鉄母材との界面の成分濃度を分析したところ、図9に示すような結果が得られた。この図9に示す結果から、金属粉末圧粉体に含まれるNi及びCrの濃度が傾斜的に分布していることを確認できた。これは、焼結層の表面が溶融・拡散していることを示している。
2 吸気バルブ
3 排気バルブ
4 冷却水通路
10 鋳鉄母材
11 バルブシート部
12 焼結層
20 圧粉体成形金型
30 鋳型
P 混合粉末
R 金属粉末圧粉体
M 鋳鉄溶湯
S セラミックス製断熱材
Claims (3)
- 鋳型内に、予め金型にて成形して成る金属粉末圧粉体を設置し、この状態で鋳型内に鋳鉄溶湯を注ぎ込み、その鋳鉄溶湯の熱を利用して前記金属粉末圧粉体を焼結及び拡散させることにより、鋳造時に鋳鉄表面に焼結層を生成するとともに、その焼結層を鋳鉄母材に接合するにおいて,
前記鋳型と金属粉末圧粉体との間にセラミックス製断熱材を設置して、前記金属粉末圧粉体の焼結及び拡散を促進させることを特徴とする鋳造方法。 - 前記金属粉末圧粉体の粉末配合比が重量比率で、黒鉛粉末:0.5〜1.5%、銅粉末:3〜10%、ニッケル粉末:10〜20%、FeCr粉末:10〜15%、CoMoCr粉末:15〜30%、残部が純鉄粉末であることを特徴とする請求項1記載の鋳造方法。
- 請求項1又は2記載の鋳造方法を用いて、内燃機関用シリンダヘッドのバルブシート部にバルブシートを一体形成する工程を含むことを特徴とするシリンダヘッドの製造方法。
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