JP4360540B2 - 鋳造方法及びそれを用いたシリンダヘッドの製造方法 - Google Patents

鋳造方法及びそれを用いたシリンダヘッドの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐摩耗性及び耐熱性が要求される鋳鉄品の製造に適した鋳造方法及びそれを用いたシリンダヘッドの製造方法に関する。
ディーゼルエンジンなどに用いられる鋳鉄製シリンダヘッドは、燃焼により高温にさらされるため、シリンダヘッド内部から水などで冷却する構造となっている。
シリンダヘッドのバルブシート部では、高温にさらされることに加えて、吸排気バルブが繰り返し着座することによる激しい摩耗環境におかれるため、通常、耐摩耗性及び耐熱性を有する焼結材料製または耐熱鋼に盛金をした別体のバルブシートを冷し嵌めなどの方法で嵌合することで耐摩耗性を確保している(例えば、特許文献1参照。)。
バルブシート嵌合方式の一例を図12に示す。この例では、鋳鉄製シリンダヘッド201の吸気バルブ202及び排気バルブ203の各着座部に嵌合用凹部206を機械加工する一方、バルブシート204を別工程にて製作しておき、その別体のバルブシート204を鋳鉄製シリンダヘッド201の各嵌合用凹部206に冷し嵌めにより嵌合している。なお、図12に示す鋳鉄製シリンダヘッド201には、弁間部に冷却水通路205が形成されている。
特開平7−279627号公報
ところで、ディーゼルエンジンの高出力化により、シリンダヘッド燃焼面の弁間部は従来以上の厳しい熱負荷を受けるようになってきており、このため、機関の運転停止による熱疲労で亀裂が発生し、そのまま使い続けると燃焼室内に冷却水が入りエンジンを破損させる原因となる可能性がある。
このようなシリンダヘッド燃焼面の弁間部の亀裂発生を防止するために、シリンダヘッド燃焼面の肉厚を薄くして弁間部の温度上昇を抑制しているが、バルブシートを嵌合する方式の場合、運転中におけるバルブシートの脱落を防止するために嵌合スペースを深くする必要があり、弁間部燃焼面の薄肉化を阻害する要因となっている。また、バルブシートの嵌合スペースを確保する必要があるので、吸排気ポートの設計の自由度が低くなる。
さらに、吸排気バルブ及びバルブシートが受けた熱は、シリンダヘッドを介して冷却水に逃がしているが、バルブシート嵌合方式の場合、シリンダヘッドとバルブシートとの間の嵌合面に生じる空隙によって熱伝達が阻害される。
また、バルブシート嵌合方式の場合、シリンダヘッド及びバルブシートの嵌合部(嵌合用凹部)を事前に加工しておく必要があり、しかも、冷し嵌めを行うためにバルブシートを液体窒素で冷却する等の工程が必要となるため、シリンダヘッドの製造コストが高くなる。
本発明は以上のような問題点を解決するためになされたもので、例えば鋳鉄製シリンダヘッドを製造するにあたり、エンジンの高出力化とシリンダヘッド燃焼面の弁間部における亀裂発生の防止、及び、シリンダヘッドの製造コストの低減を同時に達成できることが可能な鋳造方法と、そのような特徴を有する鋳造方法を用いたシリンダヘッドの製造方法の提供を目的とする。
本発明の鋳造方法は、鋳型内に、予め金型にて成形して成る金属粉末圧粉体を設置し、この状態で鋳型内に鋳鉄溶湯を注ぎ込み、その鋳鉄溶湯の熱を利用して前記金属粉末圧粉体を焼結及び拡散させることにより、鋳造時に鋳鉄表面に焼結層を生成するとともに、その焼結層を鋳鉄母材に接合するものである。
この場合、本発明の鋳造方法においては、前記鋳型と金属粉末圧粉体との間にセラミックス製断熱材を設置することにより、前記金属粉末圧粉体の焼結及び拡散を促進させることが好ましい。
本発明の鋳造方法において、前記金属粉末圧粉体の粉末配合比は、重量比率で黒鉛粉末:0.5〜1.5%、銅粉末:3〜10%、ニッケル粉末:10〜20%、FeCr粉末:10〜15%、CoMoCr粉末:15〜30%、残部が純鉄粉末であることが好ましい。
黒鉛粉末の配合比が0.5%未満であると焼結促進効果が少なくて、他の合金元素の未拡散部分が多く残ってしまう。また、1.5%を超えると炭化物の生成量が多くなりすぎて、靭性の低下及び被削性の低下が生じる。
銅粉末の配合比(重量比率)が3%未満であると焼結促進効果が少なくて、他の合金元素の未拡散部分が多く残ってしまう。また、10%を超えると、液相発生量が多くなりすぎるため焼結層の変形が生じて寸法精度が悪くなる。
ニッケル粉末の配合比が10%未満であると、オーステナイト生成量が少なくて合金元素未拡散領域であるフェライト及びパーライトが多く残ってしまう。また、20%を超えると添加量に見合った効果が得られない
FeCr粉末の配合比が10%未満であると、オーステナイト生成量が少なくて合金元素未拡散領域であるフェライト及びパーライトが多く残ってしまい、15%を超えると、添加量に見合った効果が得られない。また、FeCr粉末の配合比が15%を超えると金属粉末圧粉体の成形性も悪化する。
CoMoCr粉末の配合比が15%未満であると耐摩耗性の向上効果が少なく、30%を超えると金属粉末圧粉体の成形性も悪化するため、十分な焼結が得られず耐摩耗性が悪化する。
本発明のシリンダヘッドの製造方法は、上記した特徴をもつ鋳造方法を用いて、内燃機関用シリンダヘッドのバルブシート部にバルブシートを一体形成する工程を含むことを特徴としている。
具体的には、リング形状の金属粉末圧粉体を、予め金型にて成形しておき、その金属粉末圧粉体を鋳型内のバルブシートに相当する部分に、当該金属粉末圧粉体と鋳型との間にセラミックス製断熱材を設けて設置し、この状態で、鋳型内に鋳鉄溶湯を注ぎ込み、その鋳鉄溶湯の熱を利用して前記金属粉末圧粉体を焼結及び拡散させることにより、鋳造時に鋳鉄表面に焼結層を生成するとともに、その焼結層を鋳鉄母材に接合することにより、バルブシート部にバルブシートを一体形成する。
本発明のシリンダヘッドの製造方法において、バルブシート部に設置する金属粉末圧粉体を、上記したような粉末配合比(重量比率)とすることにより、従来使用していた別体のバルブシートよりも優れた耐摩耗性を得ることができる。
本発明の鋳造方法を鋳鉄製シリンダヘッドの製造に適用することにより、バルブシートと鋳鉄母材(シリンダヘッド)とを一体構造とすることが可能となるので、鋳鉄母材と焼結層との境界部の接合強度を、従来のバルブシート嵌合方式におけるバルブシート引抜強度よりも強くことができる。これにより、運転中に弁座が剥離や脱落するという問題がなくなる結果、焼結層(バルブシート部)の厚さを1mm程度まで薄くすることが可能となる。
さらに、焼結層の薄肉化によりシリンダヘッド燃焼面の弁間部の肉厚を更に薄肉化することが可能になるとともに、バルブシートが受けた熱の放出を阻害する要因となるシリンダヘッドとバルブシートとの嵌合面の空隙がなくなるので、弁間部の温度上昇の抑制及び亀裂の発生を防止することが可能となる。従って、より厳しい熱負荷のディーゼルエンジンのシリンダヘッドにも適用することが可能になる。
また、バルブシートの嵌合スペースを確保する必要がなくなるので、吸排気ポートの設計の自由度が高くなる。さらに、バルブシートを一体構造とすることにより、嵌合部(嵌合用凹部)の加工及びバルブシートの冷し嵌め工程が不要となり、シリンダヘッド全体の製造コストの低減化をはかることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<実施形態1>
本発明の鋳造方法を鋳鉄製シリンダヘッドの製造に適用した例を、各工程ごとに説明する。
−粉末混合工程−
まず、粉末配合比を重量比率で黒鉛粉末:0.5〜1.5%、銅粉末:3〜10%、ニッケル粉末:10〜20%、FeCr粉末:10〜15%、CoMoCr粉末:15〜30%、残部が純鉄粉末として粉末を配合する。次に、V型混合器などを用いて前記配合粉末が均等となるように混合して混合粉末を作製する。このとき、混合時間は10〜30分の範囲とする。混合時間が10分未満であると、十分に均等な混合状態を得ることができず、30分以上では製造に要する時間が長くなってしまう。
−圧粉体成形工程−
上記配合・混合を行った混合粉末Pを、図3に示す圧粉体成形用金型20に充填してプレス加圧を行うことにより、内径:φ31.8mmm、外径:φ38.8mm、肉厚:3mmの薄肉リング形状の金属粉末圧粉体R(図4参照)を成形する。
このとき、成形圧力は400〜800MPaの範囲とする。成形圧力が400MPa未満であると、金属粉末圧粉体Rの密度が低くなり、後述する焼結・拡散が十分に促進されず、目的とする物性が得られない。また、成形圧力を高くすると、金属粉末圧粉体Rの密度は高くなるが、800MPa以上の範囲では成形圧力を上げても、金属粉末圧粉体Rの密度の向上効果は少なく、圧粉体成形用金型20の寿命が短くなるだけである。
なお、図3に示す圧粉体成形用金型20は、台座21と、その台座21に圧縮コイルばね26を介して保持されるフローティングダイ22と、フローティングダイ22の円形貫通穴22aに嵌め込まれ、下端が台座21に当接する円筒形状の下パンチ24と、フローティングダイ22の円形貫通穴22aに摺動自在に挿入される円筒形状の上パンチ23と、上パンチ23及び下パンチ24の内部に配置される芯棒25とを備えており、上パンチ23を上方に抜き取った状態で、フローティングダイ22と芯棒25との間の空間(下パンチ24の上端面の上方空間)に混合粉末Pを充填した後、上パンチ23をフローティングダイ22にセットした状態で、上パンチ23を上方から加圧することにより、薄肉リング形状の金属粉末圧粉体Rを成形する金型である。
−鋳造工程ー
図5はシリンダヘッドの鋳造に用いる鋳型30のバルブシート部の周辺部構造を模式的に示す要部断面図である。なお、図5に示す鋳型30は、台中子31、吸排気ポート用中子32、冷却水通路用中子33などによって構成されている。
この鋳造工程では、まず、図5に示すように、鋳型30内のバルブシートに相当する部分に、前記圧粉体成形工程で成形したリング形状の金属粉末圧粉体Rを設置する。このとき、吸排気ポート用中子32に設けた段付き部32aによって金属粉末圧粉体Rを固定して鋳造時に金属粉末圧粉体Rが動かないようにしておく。なお、このような段付き部32aによる固定を実施しない場合、鋳鉄溶湯を流し込む際に、鋳鉄溶湯から受ける浮力で金属粉末圧粉体Rが浮上するため、後述する焼結層12を所定の位置に生成させることができなくなる。
次に、以上の金属粉末圧粉体Rのセットが完了した後に、鋳型30内に鋳鉄溶湯を注ぎ込んでシリンダヘッドの鋳造を行う。溶湯温度はとりべ温度で1350〜1480℃であり、このときの鋳鉄溶湯の熱によって金属粉末圧粉体Rが加熱され、金属粉末圧粉体R内で焼結及び拡散が促進されることにより、バルブシート部11の表面に薄肉の焼結層12(図12参照)を有する鋳鉄製シリンダヘッドを製造することができる。
ここで、以上の鋳造工程において、本発明では、金属粉末圧粉体Rを鋳型30にセットする際に、図5に示すように、金属粉末圧粉体Rと鋳型30(台中子31)との間にセラミックス製断熱材Sを設置しておくのである。
このように、金属粉末圧粉体Rと鋳型30(台中子31)との間にセラミックス製断熱材Sを設置しておくことにより,圧粉体部の焼結及び拡散が更に促進されるので、焼結層12の基地硬さを向上させることができる。例えば、図6のグラフに示すように、セラミックス製断熱材(厚み:5mm)を使用した場合、断熱材を使用しない場合と比較して、焼結層12の基地硬さを約1.5〜2倍程度にすることができる。図6のグラフにおいて、硬さ計測位置は図7に示す位置としている。
なお、セラミックス製断熱材Sの具体的な例としては、アルミナ50%とシリカ50%からなるセラミックスを挙げることができる。
−仕上げ加工−
以上の工程で作製された鋳鉄製シリンダヘッドについて、バルブシート部11(焼結層)などの仕上げ加工を行うことにより、図1に示す構造の鋳鉄製シリンダヘッド1を得ることができる。なお、図1のZ部拡大図を図2に示す。
以上の工程で製作された鋳鉄製シリンダヘッド1によれば、バルブシートと鋳鉄母材(シリンダヘッド)とを一体構造とすることが可能となるので、鋳鉄母材10と焼結層12との境界部の接合強度を向上させることができる。その結果として、バルブシート部(焼結層)11の厚さを1mm程度まで薄くすることが可能となり、図12に示した従来のバルブシート嵌合方式の鋳鉄シリンダヘッド201と比較して、冷却水通路4の位置をシリンダヘッド燃焼面側に近づけることができ、シリンダヘッド燃焼面の弁間部の肉厚(吸気バルブ2と排気バルブ3との間の肉厚)をかなり薄くすることができる。
次に、金属粉末圧粉体の粉末配合比率、耐久性の評価及び接合強度について述べる。
<金属粉末圧粉体の粉末配合比率>
従来の別体式バルブシート用の焼結材料では、耐摩耗性を確保するために焼結後に焼入れ・焼戻しなどの熱処理を施すことにより、基地組織をマルテンサイトやパーライトにしている。
しかし、本発明では、鋳鉄溶湯の熱を利用して金属粉末圧粉体を焼結・拡散するので鋳造後の冷却速度が遅い。このため、従来のバルブシート材料の成分配合では、焼結層の基地組織が粗大なパーライトとなり十分な耐摩耗性が得られない。また、バルブシートが一体構造であるため、鋳造後に熱処理を行うと、コストアップ及び鋳鉄母材側のクラック発生といった問題が生じる。このため、焼入れ・焼戻しなどの熱処理を実施して基地組織をマルテンサイトとすることもできない。
そこで、本発明では、バルブシート部の基地組織を耐熱性のあるオーステナイトとし、更にオーステナイト中に硬質粒子を分散させることにより、耐摩耗性を向上させることを目的とし、金属粉末圧粉体の粉末配合比を重量比率で、黒鉛粉末:0.5〜1.5%、銅粉末:3〜10%、ニッケル粉末:10〜20%、FeCr粉末:10〜15%、CoMoCr粉末(硬質粒子):15〜30%、残部を純鉄粉末としている。これらの各粉末の効果を以下に示す。
−純鉄粉末−
ベースの純鉄粉末は、合金成分を含まないため粉末の成形性が良く、成形密度が高くなるので焼結層生成後の空孔を少なく抑える効果がある。
−黒鉛粉末−
黒鉛粉末は、焼結促進及び基地組織のオーステナイト化を助成する効果がある。また、CrやMoと共に硬質な炭化物を生成する。黒鉛粉末の配合比(重量比率)が0.5%未満であると、焼結促進効果が少なくて、他の合金元素の未拡散部分が多く残ってしまう。また、1.5%を超えると炭化物の生成量が多くなりすぎて、靭性の低下及び被削性の低下が生じる。
−銅粉末−
銅粉末は、他の配合粉末に比べて融点が低く、先に溶融するので液相発生による焼結促進効果がある。銅粉末の配合比(重量比率)が3%未満であると焼結促進効果が少なくて、他の合金元素の未拡散部分が多く残ってしまう。また、10%を超えると、液相発生量が多くなりすぎるため焼結層の変形が生じて寸法精度が悪くなる。
−ニッケル粉末−
ニッケル粉末は、純鉄粉末に拡散して基地組織をオーステナイト化させる効果がある。
ここで、金属粉末配合比(重量比率)を、下記の表1に示すように、黒鉛粉末:1%、銅粉末:6%、FeCr粉末:0%、CoMoCr粉末:20%とし、ニッケル粉末の配合比を5%、10%、20%、25%と変化させ(成分例1〜4)、残部を純鉄粉末として金属粉末圧粉体を成形し、その金属粉末圧粉体を鋳鉄溶湯(溶湯温度:1400℃)の熱を利用して焼結及び拡散させた。その結果を下記の表1に示す。なお、表中のフェライト及びパーライト面積率は、焼結層の基地組織において各種合金元素の拡散によりオーステナイト化していない部分を示しており、顕微鏡写真の画像解析により求めた。
Figure 0004360540
この表1の結果から明らかなように、ニッケル粉末の配合比が10%未満であると、オーステナイト生成量が少なくて合金元素未拡散領域であるフェライト及びパーライトが多く残り、20%を超えると添加量に見合った効果が得られないことがわかる。
−FeCr粉末−
FeCr粉末は、Cr:62%(重量比率)、残部が実質的Feである合金粉末であり、Crの一部が基地組織へ拡散して基地組織をオーステナイト化する効果と、未拡散のFeCr粉末が硬質粒子として残るので耐摩耗性の向上効果がある。
ここで、金属粉末配合比(重量比率)を、下記の表2に示すように、黒鉛粉末:1%、銅粉末:6%、ニッケル粉末:15%、CoMoCr粉末:20%とし、FeCr粉末の配合比を5%、10%、15%、20%と変化させ(成分例5〜8)、残部を純鉄粉末として金属粉末圧粉体を成形し、その金属粉末圧粉体を鋳鉄溶湯(溶湯温度:1400℃)の熱を利用して焼結及び拡散させた。その結果を下記の表2に示す。なお、表中のフェライト及びパーライト面積率は、焼結層の基地組織において各種合金元素の拡散によりオーステナイト化していない部分を示しており、顕微鏡写真の画像解析により求めた。
Figure 0004360540
この表2の結果から明らかなように、FeCr粉末の配合比が10%未満であると、オーステナイト生成量が少なくて合金元素未拡散領域であるフェライト及びパーライトが多く残り、15%を超えると、添加量に見合った効果が得られないことがわかる。また、FeCr粉末の配合比が15%を超えると金属粉末圧粉体の成形性も悪化する。
−CoMoCr粉末−
CoMoCr粉末は、重量比率でMo:28%、Cr:8.5%、Si:2.6%、残部が実質的Coである高硬度な硬質粒子であり、これを基地組織に分散させることにより耐摩耗性を向上させる効果がある。また、CoMoCr粉末中のCoやCrの一部が基地組織へ拡散することにより、硬質粒子と基地組織との密着性が向上し、摺動による硬質粒子の脱落を防止することができるとともに、基地組織をオーステナイト化させる効果が得られる。CoMoCr粉末の配合比が15%未満であると耐摩耗性の向上効果が少なく、30%を超えると金属粉末圧粉体の成形性も悪化するため、十分な焼結が得られず耐摩耗性が悪化する(下記の耐摩耗性の評価参照)。
<耐摩耗性の評価>
−実施例1−
金属粉末配合比(重量比率)を、下記の表3に示すように、黒鉛粉末:1%、銅粉末:6%、ニッケル粉末:15%、FeCr粉末:13%、CoMoCr粉末:15%、残部を純鉄粉末として、薄肉リング形状の金属粉末圧粉体を成形し、その金属粉末圧粉体を鋳型内に配置して鋳造を行って、鋳鉄母材にバルブシート部(焼結層)を一体形成したサンプルを作製した。なお、金属粉末圧粉体の成形条件・形状寸法、溶湯温度などの各条件は、前記した<実施形態1>と同じとした。作製したサンプルについてバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。
耐摩耗性の評価は実物単体摩耗試験によって実施した。具体的には、モータ駆動のカムを介して吸排気バルブをバルブシートに繰り返して着座させる装置を使用し、バーナ加熱により弁座温度を実機の吸気・排気の各弁座に相当する温度(吸気弁座:200℃、排気弁座:380℃)として評価した。その結果を図8に示す。なお、カム回転速度は2000rpm、評価時間は5時間とした。また、吸排気バルブについては、材質をSUH3とし、バルブフェース部にSTL#12を盛金したものを使用した。
Figure 0004360540
−実施例2−
上記の表3に示すように、CoMoCr粉末の配合比を30%としたこと以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作製した。得られたサンプルについて実施例1と同じ条件でバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。その結果を図8に示す。
−比較例1−
上記の表3に示すように、CoMoCr粉末の配合比を10%としたこと以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作製した。得られたサンプルについて実施例1と同じ条件でバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。その結果を図8に示す。
−比較例2−
上記の表3に示すように、CoMoCr粉末の配合比を35%としたこと以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作製した。得られたサンプルについて実施例1と同じ条件でバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。その結果を図8に示す。
−比較例3−
従来のバルブシート嵌合方式にてサンプルを作製した。別体のバルブシートとしては、材質がSUH3でシート部にSTL#6を盛金したものを用いた。得られたサンプルについて実施例1と同じ条件でバルブシート部の耐摩耗性の評価を行った。その結果を図8に示す。
図8の結果から明らかなように、実施例1及び実施例2においては、吸排気のいずれの弁座温度においても、従来のバルブシート嵌合方式のもの(比較例3)よりも優れた耐摩耗性を示すことわかる。また、実施例1及び実施例2と比較例1との比較から、CoMoCr粉末の配合比が15%未満であると、耐摩耗性の向上効果が少ないことがわかる。さらに、実施例1及び実施例2と比較例2との比較から、CoMoCr粉末の配合比が30%を超えると、弁座の摩耗量が多くなることがわかる。
<接合強度>
前記した実施例2で作製したサンプルについて、エネルギ分散型X線分析装置(EDX)を用いて焼結層と鋳鉄母材との界面の成分濃度を分析したところ、図9に示すような結果が得られた。この図9に示す結果から、金属粉末圧粉体に含まれるNi及びCrの濃度が傾斜的に分布していることを確認できた。これは、焼結層の表面が溶融・拡散していることを示している。
また、同じサンプルについて、図10に示す試験法にて接合界面の強度を評価した。その結果を図11に示す。図11の結果から明らかなように、金属粉末圧粉体を溶湯の熱にて焼結・拡散してバルブシート部を一体構造とすることにより、従来のバルブシート嵌合方式の約11倍の強度を得られることがわかる。
ここで、本発明の鋳造方法は、鋳鉄製シリンダヘッドのほか、例えばシリンダヘッド弁ガイドなど、鋳鉄表面で局部的に耐熱性・耐摩耗性が要求される他の各種鋳鉄品に適用することができる。
本発明は、ディーゼルエンジン等の鋳鉄製シリンダヘッドなどの耐摩耗性及び耐熱性が要求される鋳鉄品を製造するのに有効に利用できる。
本発明方法で製造された鋳鉄製シリンダヘッドの一例を模式的に示す要部断面図である。 図1のZ部拡大図である。 本発明に用いる圧粉体成形用金型の構造を模式的に示す断面図である。 金属粉末圧粉体の断面図である。 本発明に用いる鋳鉄製シリンダヘッド鋳造用の鋳型の構造を模式的に示す部分断面図である。 焼結層の基地硬さの計測結果を示すグラフである。 基地硬さの計測位置を示す図である。 本発明の実施例及び比較例の耐摩耗性の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例で得られたサンプルの焼結層と鋳鉄母材との界面の成分濃度の分析結果を示す図である。 バルブシート部の引抜試験の試験法を示す図である。 バルブシート部の引抜試験の結果を示すグラフである。 バルブシート嵌合方式のシリンダヘッドの従来例の構造を模式的に示す要部断面図である。
符号の説明
1 鋳鉄製シリンダヘッド
2 吸気バルブ
3 排気バルブ
4 冷却水通路
10 鋳鉄母材
11 バルブシート部
12 焼結層
20 圧粉体成形金型
30 鋳型
P 混合粉末
R 金属粉末圧粉体
M 鋳鉄溶湯
S セラミックス製断熱材

Claims (3)

  1. 鋳型内に、予め金型にて成形して成る金属粉末圧粉体を設置し、この状態で鋳型内に鋳鉄溶湯を注ぎ込み、その鋳鉄溶湯の熱を利用して前記金属粉末圧粉体を焼結及び拡散させることにより、鋳造時に鋳鉄表面に焼結層を生成するとともに、その焼結層を鋳鉄母材に接合するにおいて,
    前記鋳型と金属粉末圧粉体との間にセラミックス製断熱材を設置して、前記金属粉末圧粉体の焼結及び拡散を促進させることを特徴とする鋳造方法。
  2. 前記金属粉末圧粉体の粉末配合比が重量比率で、黒鉛粉末:0.5〜1.5%、銅粉末:3〜10%、ニッケル粉末:10〜20%、FeCr粉末:10〜15%、CoMoCr粉末:15〜30%、残部が純鉄粉末であることを特徴とする請求項1記載の鋳造方法。
  3. 請求項1又は2記載の鋳造方法を用いて、内燃機関用シリンダヘッドのバルブシート部にバルブシートを一体形成する工程を含むことを特徴とするシリンダヘッドの製造方法。
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