JP4359728B2 - マンドレルミルおよびそれを用いた圧延方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、継目無鋼管の圧延に際し穴明き欠陥の発生防止に適したマンドレルミルおよびマンドレルミルを用いた圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
継目無鋼管の熱間製管用の圧延機として、複数基(通常、6〜8基)の上下一対の圧延ロールからなるロールスタンドを、前後スタンドのロール孔型の溝底方向が90°交差するように連続設置して、これら複数のロールスタンドで形成するロール孔型の配列内にマンドレルバーを配置して、中空管材を連続して延伸圧延するマンドレルミルが多用されている。
【0003】
図1は、マンドレルミルの全体構成を説明する図である。同図に示すように、マンドレルミルは、一対の圧延ロール4から構成されるロール孔型を有するロールスタンド1が互いに90°交差するように複数基(図では、7基)が連設されている。鋼管を圧延する場合には、事前にピアサーで穿孔された中空管材2にマンドレルバー3を挿入して、各ロールスタンド1で順次圧下が加えられて、延伸圧延される。設置されたロールスタンドは、ミル入側から順に第1スタンド、第2スタンド、第3スタンド、および第4スタンドと呼ばれ、通常、第1スタンドで最初に管材の肉厚圧下が行われる。
【0004】
このマンドレルミルで中空管材を圧延する際に、管材に穴明きが発生することがあり、これらは「穴明き欠陥」と呼ばれ、品質上の重大な欠陥となる。穴明き欠陥は、同一の鋼種、同一の管材外径であれば、圧延する管材の仕上げ肉厚が薄ければ薄いほど発生し易く、管材の仕上げ寸法が同一であれば、普通鋼に比較して変形能の劣る高合金鋼において多発する傾向にある。
【0005】
従来、この穴明き欠陥の発生原因は、圧延中に圧下を受けないフランジ部において、管材が長手方向に引っ張られ変形能不足によって破断するものとされている(以下、「穴明き欠陥A」と記す)。そこで、この穴明き欠陥Aを防止するため、各種方法が提案されている。例えば、特開昭63-84720号公報では、欠陥が発生するロールスタンドの圧下率を軽減して、その負荷を他のロールスタンドに分散したり、供給される管材の肉厚を減じて各ロールスタンドにおける圧下率を軽減したりする方法が提案されている。
【0006】
さらに、穴明き欠陥A以外の発生原因も報告されている。すなわち、圧延ロールによる溝底部の圧下において、圧下率が溝底中央よりもその両側周囲で大きくなる場合に、管材が長手方向に延ばされる過程で溝底中央部分の材料が不足して、ネッキング現象を生じて肉厚が薄くなり、極端な場合には穴明きが発生する(以下、「穴明き欠陥B」と記す)。この欠陥Bの対策として、特公平7-102369号公報では、第1スタンド、第2スタンドのロール溝底中央部の曲率半径を、可能な限り0.5倍に近づけて、第3スタンド以降で、圧下率が溝底中央よりもその両側周囲で大きくならないようにして、溝底中央部でのネッキングを抑制する方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述の特開昭63-84720号公報で提案された方法では、確かに穴明き欠陥Aの発生を防止できるが、供給される素管肉厚によっては圧延に支障を生ずる場合がある。例えば、特定スタンドの圧下率を軽減させるため、圧下負荷を各スタンドに分散しても、圧延荷重が基準値を超えるスタンドが存在することがある。この場合には、マンドレルミル全体の圧下率を軽減させるため、供給される素管の肉厚を減じる必要がある。しかし、供給素管を圧延する穿孔機にも圧下スケジュールに制限があり、所定の薄肉素管が供給されない場合がある。このような場合には、提案された防止方法を採用することができない。
【0008】
本発明者らは、特公平7-102369号公報で開示された方法を確認するため、試圧延を実施したが、穴明き欠陥Bを有効に防止することができない。さらに、同公報で開示された方法を実施すると、第2スタンドにおいてロール溝底の中央部以外の圧下が大きくなるため、穴明き欠陥Aが発生する場合がある。一方、この穴明き欠陥Aの発生を回避するため、第2スタンドでの管材の圧下量を減じると、第2スタンドと同方向に交差配置される第4スタンドの圧延負荷が許容値を超え、圧延不良が生じることがある。
【0009】
本発明は、従来から行われている穴明き欠陥対策での問題点に鑑みてなされたものであり、管材寸法や材質に拘わらず、特に、薄肉の管材であっても、継目無鋼管の圧延中に、確実に穴明き欠陥の発生を防止することができるマンドレルミルおよびそれを用いた圧延方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するために、数多くのマンドレルミル圧延における穴明き欠陥の発生状況を調査した結果、前述の穴明き欠陥A、Bとは異なる、新たな穴明き欠陥(以下、「穴明き欠陥C」と記す)のメカニズムを明らかにした。
【0011】
例えば、第1スタンドに特公平7-102369号公報で開示された方法で圧延を実施すると、第2スタンドにおいて、ロールの溝底中央部のみに大きな圧下率が加わる。また、第2スタンドでロールのフランジ部が長手方向に大きく引っ張られないよう、ロールの溝底中央部以外の圧下を減少したとしても、溝底中央部のみに大きな圧下率が加わる。このとき、第2スタンドでは溝底中央部の長手方向への延びが大きくなるが、溝底中央部の両側およびフランジ部の材料の拘束を受けるため、溝底中央部の管材が圧延方向に進みにくくなる。そのため、第2スタンドの溝底中央部の管材が圧延ロール入側で波打ち、極端な場合には溝底中央部が折れ込んだ状態で圧延されて、穴明き欠陥Cが発生する。言い換えると、穴明き欠陥Cは、ロールの溝底中央部の過大な圧下に起因する欠陥である。
【0012】
この穴明き欠陥Cは、管材の肉厚外径比t/D(t:管材の肉厚、D:管材の外径)が3%以下のときに、不均一な圧下に伴って発生し易くなる。薄肉の管材では変形に対する強度が小さくなり、穴明きが発生し易い状況になるからである。特に、炭素鋼では管材の肉厚外径比t/Dが1.7%以下の場合に顕著となり、また、1%程度のクロムを含む普通鋼では肉厚外径比t/Dが2.1%以下の場合に、合金鋼では肉厚外径比t/Dが2.4%以下の場合に顕著となる。
【0013】
本発明者らは、さらに検討を進めた結果、マンドレルミルに交差・連設されたロールスタンドに配備されるロール孔型を適切に設計することによって、マンドレルミル圧延で発生する穴明き欠陥A、Bの他に、穴明き欠陥Cについても有効に防止できることを知見した。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものであり、下記の(1)、(2)のマンドレルミルおよび(3)のマンドレルミルの圧延方法を要旨としている。
【0014】
(1)複数の孔型ロールスタンドを交差して連設し、これらの孔型ロールスタンドが形成するロール孔型配列内にマンドレルバーを配置して中空管材を圧延するマンドレルミルにおいて、前記管材の肉厚を圧下するスタンドのロール孔型では、ミルセンターを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、0°(溝底)<ψ≦45°の範囲のいずれかの部位から曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以上となることを特徴とするマンドレルミルである。以下の説明において、ここで用いられるロール孔型を「第1のロール孔型」という。
【0015】
上記のマンドレルミルにおいて、圧延される管材がマンドレルミル出側で外径に対する肉厚比が0.03以下であるとき、0°(溝底)<ψ≦48°の範囲のいずれかの部位から曲率半径を溝底曲率半径の1.2倍以上とするのが望ましい。
【0016】
(2)複数の孔型ロールスタンドを交差して連設し、これらの孔型ロールスタンドが形成するロール孔型配列内にマンドレルバーを配置して中空管材を圧延するマンドレルミルにおいて、前記管材の肉厚を圧下する第2スタンド以降のロール孔型では、ミルセンターを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以下となる部位が溝底から50°<ψの領域まで存在することを特徴とするマンドレルミルである。以下の説明において、ここで用いられるロール孔型を「第2のロール孔型」という。
【0017】
(3)複数の孔型ロールスタンドを交差して連設し、これらの孔型ロールスタンドが形成するロール孔型配列内にマンドレルバーを配置して中空管材を圧延するマンドレルミルを用いた圧延方法において、ミルセンターを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、0°(溝底)<ψ≦45°の範囲のいずれかの部位から曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以上となるロール孔型を有するロールスタンドで先行して前記管材の肉厚圧下を行い、さらに後続する1回または2回の肉厚圧下を、曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以下となる部位が溝底から50°<ψの領域まで存在するロール孔型を有するロールスタンドで行うことを特徴とするマンドレルミルの圧延方法である。
【0018】
上記マンドレルミルの圧延において、マンドレルミル出側で外径に対する肉厚比が0.03以下となる管材を圧延するに際し、0°(溝底)<ψ≦45°の範囲のいずれかの部位から曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以上となるロール孔型を有するロールスタンドで先行して前記管材の肉厚圧下を行うのが望ましい。
【0019】
通常、マンドレルミルで最初に管材の肉厚圧下を行うロールスタンドは、第1スタンドとされる。上述の「第1のロール孔型」および「第2のロール孔型」は、以下の説明において明確化を図るため、「第1のロール孔型」を第1スタンドに、「第2のロール孔型」を第2スタンドおよび第3スタンドに配置する場合について説明する。
【0020】
上述の穴明き欠陥Cを回避するには、第2スタンド以降において、管材の圧下部分を円周方向に幅を広げ、かつ円周方向の圧下分布を均一にすればよい。具体的には、第1スタンドにおいて、フランジ部側の圧下量を減らすよう溝底中央部のみ曲率半径が小さいオープンなロール孔型とし、第2スタンド以降において、フランジ部側まで曲率半径が小さいクローズドな孔型とする。言い換えると、第1スタンドに配置される圧延ロールを「第1のロール孔型」で構成し、第2スタンド以降に配置される圧延ロールを「第2のロール孔型」で構成する。
【0021】
図2は、本発明の第1のロール孔型の形状を説明する図であり、一方の圧延ロール4のみを示している。同図に示すように、第1のロール孔型の中央部は、ミルセンターOに対しオフセット量Sを持って、溝底曲率半径R1の溝底形状である。これを両側から囲む孔型部位の曲率半径R2は、溝底曲率半径R1の1.2倍以上である。そして、ミルセンターOを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、曲率半径R2の部位は、角度ψが0〜45°の範囲のいずれかの地点から存在することになる。これにより、溝底中央部の曲率半径R1のみが小さなオープンなロール孔型が構成される。
【0022】
肉厚外径比t/Dが3%以下となる薄肉の管材を圧延するときには、第1スタンドのロール孔型は、曲率半径R2が溝底曲率半径R1の1.2倍以上となる部位が存在する角度ψを、ψ<45°の関係にすることによって穴明き欠陥Cの発生を抑制することができる。一方、第2スタンドにおいて、穴明き欠陥Aおよび穴明き欠陥Bを防ぐには、第1スタンドでのフランジ側の圧下を増やして、第2スタンドの圧下を軽減する必要があるため、第1スタンドのロール孔型で、上記の曲率半径R2が存在する角度ψを、ψ<45°の関係にすることが困難になる場合がある。そこで、肉厚外径比t/Dが3%以下の管材を圧延するときは、第1スタンドのロール孔型では、曲率半径R2が溝底曲率半径R1の1.2倍以上となる部位が存在する角度ψを、0°≦ψ≦48°にするのが望ましい。
【0023】
図3は、本発明の第2のロール孔型の形状を説明する図であり、一方の圧延ロール4のみを示している。第2のロール孔型の中央部は、ミルセンターOに対しオフセット量Sを持って、溝底曲率半径R1の溝底形状で構成される。それを両側から囲む孔型部位の曲率半径R3は溝底曲率半径R1の1.2倍以下であり、ミルセンターOを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、曲率半径R3の部位は、溝底から50°を超えた範囲まで存在させる。これにより、フランジ部側まで曲率半径が小さいクローズドな孔型が構成される。このとき、曲率半径R1とR3を等しくさせても良い。
【0024】
一方、穴明き欠陥Cの発生を回避するには、第2スタンドでの圧下を円周方向に均一に軽減してもよい。このように第2スタンドの圧下を軽減すると、穴明き欠陥Aおよび穴明き欠陥Bの防止にも有効であるが、第4スタンドの圧延負荷が増大することになる。通常、第4スタンドは仕上ロールスタンドとされるので、円周方向肉厚分布を均一化するため、ロール孔型はより真円に設計されている。この第4スタンドの圧延負荷を低減するには、下記の理由から、第4スタンドの溝底中央の両側部分の圧下を減ずるのが有効である。
【0025】
第2スタンドのロール孔型は、肉厚圧下用として楕円形状であり、第2スタンド出側での管材の円周方向肉厚は、ロール溝底中央部分が最も薄く、そこから離れるに従って厚くなる。第2スタンドのロール溝底で圧延された部位は、第3スタンドの圧延ロールで殆ど圧下を受けることなく、第3スタンド通過後も第2スタンド出側の肉厚が保持される。
【0026】
前述の通り、第4スタンドのロール孔型はより真円に設計されており、また、第2スタンド出側の肉厚分布は溝底で薄くその両側は厚くなっているので、第4スタンドにおいて圧下率は溝底中央よりもその両側部分の方が大きくなる。この両側部分の圧下量を減ずることにより、第4スタンドの圧延負荷を軽減できる。このように、第4スタンドの溝底中央の両側部分の圧下を減じるには、第3スタンドでの管材の圧下部分を円周方向にを広げてやるのが有効である。具体的には、第3スタンドにおいても、図3に示す第2のロール孔型を用いることになる。
【0027】
本発明の孔型設計においては、第1のロール孔型では曲率半径R2は溝底曲率半径R1の「1.2倍」以上であることを判断基準とし、第2のロール孔型では曲率半径R3は溝底曲率半径R1の「1.2倍」以下であることを判断基準としている。これは、検討段階において、判断基準を「1.1倍」、「1.2倍」および「1.3倍」と変動させて評価試験を行い、最も本発明の特徴を適切に示す判断基準として「1.2倍」を選択したものである。また、本発明では、第1のロール孔型で曲率半径R2は溝底曲率半径R1の「1.2倍」以上とは、1.2〜3.0の範囲を想定しており、第2のロール孔型で曲率半径R3は溝底曲率半径R1の「1.2倍」以下とは、1.0〜1.2の範囲を想定している。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明のマンドレルミル圧延方法では、第1のロール孔型を有するロールスタンドで先行して前記管材の肉厚圧下を行い、さらに後続する1回または2回の肉厚圧下を、第2のロール孔型を有するロールスタンドで行うことを特徴としている。以下の説明において、煩雑さを避けるため、先行するロールスタンドを第1スタンドとし、後続するロールスタンドを第2スタンドおよび第3スタンドとして説明する。
【0029】
図4は、本発明方法で第1スタンドに第1のロール孔型を配置することによって穴明き欠陥が防止できる状況を説明する図であり、同図(a)は第1スタンドの圧延状況を、(b)は90°交差配置された第2スタンドの圧延状況を示している。いずれのスタンドにおいても、マンドレル3を挿入された中空管材2が、上下一対の圧延ロール4によって圧延されている。この第1スタンドで、第1のロール孔型、すなわち、0°(溝底)<ψ≦45°の範囲のいずれかの部位から曲率半径R2が溝底曲率半径R1の1.2倍以上となるロール孔型を採用することによって、後続する第2スタンドの圧延ロールで管材の圧下部を円周方向に広げることができ、第2スタンドで発生する穴明き欠陥Cを防止することができる。
【0030】
すなわち、図4(a)に示す第1スタンドのロール孔型において、曲率半径R2が溝底曲率半径R1の1.2倍以上となる部位が存在する角度ψが、45°を超えるようになると、圧延される管材の肉厚も45°を超えて圧下され、減肉される。このため、図4(b)に示す第2スタンドのロール孔型では、溝底中心部から45°の間の圧下量が減少するので、図4(b)に示す管材2の断面において相対的に圧下が少ない部分の比率が大きくなる。このため、第2スタンドにおいて、溝底中央部が長手方向へ延伸しようとする力より、溝底中央部の両側およびフランジ部の材料によって拘束される力の方が大きくなるため、溝底中央部の管材が圧延方向に延伸しにくくなる。そこで、第2スタンドの溝底中央部の管材が圧延ロール入側で波打ち、極端な場合には溝底中央部が折れ込んだ状態で圧延し、過大な圧下によって穴明き欠陥Cが発生し易くなる。
【0031】
前述の通り、肉厚外径比t/Dが3%以下である薄肉の管材を第1スタンドで圧延する場合には、第2スタンドでの穴明き欠陥Cの発生を防止するとともに、他の穴明き欠陥の発生を抑制する観点から、第1スタンドのロール孔型では、曲率半径R2が溝底曲率半径R1の1.2倍以上となる部位が存在する角度ψを、0°≦ψ≦48°にするのが望ましい。
【0032】
後続する第2スタンド以降では、第2のロール孔型、すなわち、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が溝底から50°<ψの領域まで存在するロール孔型を配置することを特徴とする。これにより、第2スタンド以降の圧延ロールで圧下される管材の幅を広げることができ、穴明き欠陥Cの発生を防止できる。
【0033】
例えば、第2スタンドのロール孔型において、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が、角度ψで50°よりも狭くなる場合には、第2スタンドでのロール孔型の溝底から50°までの部分の圧下が減少することになる。そうであれば、前記図4(b)で説明したように、溝底中央部の管材が圧延方向に延伸しにくくなり、圧延ロール入側で波打ち、極端な場合には溝底中央部が折れ込んだ状態で圧延され、穴明き欠陥Cが発生し易くなる。
【0034】
管材の肉厚外径比t/Dが3%以下になると、穴明き欠陥Cが発生し易くなるが、第2スタンドの圧延ロールでは、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が存在する角度ψを、50°<ψにすることにより、薄肉管材の圧延であっても、穴明き欠陥Cの発生を有効に防止することができる。
【0035】
後続する第3スタンドでは、第2スタンドと同様に、第2のロール孔型を配置することを特徴とする。これにより、第4スタンドの圧延ロールでの圧下分布のうち最大部を軽減でき、第2スタンドでの圧下軽減と組み合わせることで、穴明き欠陥A、穴明き欠陥Bおよび穴明き欠陥Cを防止できる。
【0036】
第3スタンドの圧延ロールでも、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が、角度ψで50°よりも狭くなる場合には、第4スタンドでのロール孔型の溝底から40°以上の部位での圧下はそれ程軽減されない。前記図4のうち、(a)に示す第1スタンドを第3スタンドに、また、(b)に示す第2スタンドを第4スタンドに置き換えれば容易に想定できる。
【0037】
第4スタンドの圧延ロールで最大圧下が生じる部分は、経験的に溝底から40°〜45°辺りに位置し、この部分の圧下量を減じなければ第4スタンドの圧延負荷は軽減することができない。第4スタンドの圧延負荷が軽減できないと、第2スタンドの圧下も軽減できないことになり、穴明き欠陥A、穴明き欠陥Bおよび穴明き欠陥Cの発生を防止するには不利な要因となる。したがって、第3スタンドには、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が存在する角度ψが、50°<ψであるロール孔型を配置する必要がある。
【0038】
管材の肉厚外径比t/Dが3%以下になると、穴明き欠陥Cが発生し易くなるが、第3スタンドの圧延ロールにおいても、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が存在する角度ψを、50°<ψにすることにより、穴明き欠陥Cの発生を有効に防止することができる。
【0039】
第3スタンドの圧延ロールでは、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位を、さらにフランジ部側に広げれば、より穴明き欠陥A、穴明き欠陥Bおよび穴明き欠陥Cの発生を防止することができる。換言すると、第3スタンドの圧延ロールでは、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位を、角度ψで52°以上に、さらに望ましくは55°以上にすることによって、一層第4スタンドの圧延負荷を軽減でき、それに応じて第2スタンドの圧延負荷も軽減でき、穴明き欠陥A、穴明き欠陥Bおよび穴明き欠陥Cの防止効果が高くなる。
【0040】
以上の説明では、穴明き欠陥が第2スタンドで発生する場合について詳述したが、他のスタンドで発生する場合についても、同様に、本発明のロール孔型を適用することができる。例えば、穴明き欠陥が第3スタンドで発生する場合には、第2スタンドに第1のロール孔型を配置し、第3スタンドおよび第4スタンドに第2のロール孔型を配置するようにすればよい。このように、穴明き欠陥の発生状況に応じて、本発明のロール孔型を適用することができる。
【0041】
【実施例】
本発明のマンドレルミル圧延法の効果を具体的な実施例1〜3に基づいて説明する。
【0042】
(実施例1)
本発明による普通鋼の管材のマンドレルミルの圧延条件(▲1▼〜▲3▼)、および従来技術による圧延条件をを表1に示す。圧延条件のうち、角度ψは、第1スタンドでは曲率半径R2が溝底曲率半径R1の1.2倍以上となる部位が存在する角度を、第2スタンド〜第3スタンドでは曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が存在する角度を示している。さらに、第4スタンド〜第5スタンドで示す角度ψは、曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が存在する角度を示している。
【0043】
そして、表1中で、本発明が規定する範囲内のものは、下線を付している。
【0044】
圧延結果として、30本の管材圧延に伴う穴明き欠陥(主に、穴明き欠陥C)の発生状況を調査し、表2に示す。結果から明らかなように、従来技術による圧延条件では、ほぼ全数穴明き欠陥が発生したのに対し、本発明による圧延条件では、その発生率は33%以下に留まっている。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
(実施例2)
本発明によるステンレス鋼の管材のマンドレルミルの圧延条件、および従来技術による圧延条件をを表3に示す。実施例1と同様に、圧延条件のうち角度ψは、各スタンド毎に曲率半径R2が溝底曲率半径R1の1.2倍以上となる部位が存在する角度、または曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が存在する角度で示している。さらに、表3中で、本発明が規定する範囲内のものは、下線を付している。
【0048】
圧延結果として、16本の管材圧延に伴う穴明き欠陥(主に、穴明き欠陥C)の発生状況を調査し、表4に示す。表4から、従来技術による圧延条件では、全数穴明き欠陥が発生したのに対し、本発明による圧延条件では、全く穴明き欠陥の発生がないことが分かる。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
(実施例3)
マンドレルミル出側の管材外径379mmを一定にして、肉厚を変動させ、管材の肉厚外径比t/Dと穴明き欠陥の発生状況を調査した。そのために、普通鋼管材の肉厚外径比t/Dを変更したときの圧延条件と、穴明き欠陥の発生状況を表5に、ステンレス鋼管材の肉厚外径比t/Dを変更したときの圧延条件と、穴明き欠陥発生状況を表6に示す。
【0052】
圧延条件のうち角度ψは、実施例1、2と同様に、各スタンド毎に曲率半径R2が溝底曲率半径R1の1.2倍以上となる部位が存在する角度、または曲率半径R3が溝底曲率半径R1の1.2倍以下となる部位が存在する角度で示している。さらに、表5、表6中のCase1およびCase2は圧延条件の区分を示すものであり、角度ψのうち本発明が規定する範囲内のものは、下線を付している。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
表5、表6の結果から、穴明き欠陥は、普通鋼の場合にはt/Dが2.7%以下で発生し易く、ステンレス鋼の場合にはt/Dが3%以下で発生し易いことが認められる。また、普通鋼とステンレス鋼のどちらの管材を圧延する場合であっても、本発明の圧延方法によって、穴明き欠陥の発生を抑制できて、全ての条件で穴明き欠陥なしで製造できることが分かる。
【0056】
【発明の効果】
本発明をマンドレルミルおよびこれを用いた圧延方法によれば、管材の肉厚を圧下するスタンドのロール孔型を適切に設計することにより、現有のマンドレルミルに、新たな装置を付与することなく、穴明き欠陥Cのみでなく、穴明き欠陥Aおよび穴明き欠陥Bの発生を防止することができる。しかも、特に穴明き欠陥の発生し易い肉厚の薄い管材や変形能の劣る高合金鋼、ステンレス鋼の圧延に際しても有効に防止することができ、歩留まりの改善を図るとともに、従来にない高強度、薄肉鋼管の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マンドレルミルの全体構成を説明する図である。
【図2】本発明の第1のロール孔型の形状を説明する図である。
【図3】本発明の第2のロール孔型の形状を説明する図である。
【図4】本発明方法で第1スタンドに第1のロール孔型を配置することによって穴明き欠陥が防止できる状況を説明する図である。
【符号の簡単な説明】
1:ロールスタンド、 2:中空管材
3:マンドレルバー、 4:圧延ロール
Claims (5)
- 複数の孔型ロールスタンドを交差して連設し、これらの孔型ロールスタンドが形成するロール孔型配列内にマンドレルバーを配置して中空管材を圧延するマンドレルミルにおいて、
前記管材の肉厚を圧下するスタンドのロール孔型では、ミルセンターを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、0°(溝底)<ψ≦45°の範囲のいずれかの部位から曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以上となることを特徴とするマンドレルミル。 - 上記管材がマンドレルミル出側で外径に対する肉厚比が0.03以下であるとき、管材の肉厚を圧下するスタンドのロール孔型では、ミルセンターを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、0°(溝底)<ψ≦48°の範囲のいずれかの部位から曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以上となることを特徴とする請求項1記載のマンドレルミル。
- 複数の孔型ロールスタンドを交差して連設し、これらの孔型ロールスタンドが形成するロール孔型配列内にマンドレルバーを配置して中空管材を圧延するマンドレルミルにおいて、
前記管材の肉厚を圧下する第2スタンド以降のロール孔型では、ミルセンターを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以下となる部位が溝底から50°<ψの領域まで存在することを特徴とするマンドレルミル。 - 複数の孔型ロールスタンドを交差して連設し、これらの孔型ロールスタンドが形成するロール孔型配列内にマンドレルバーを配置して中空管材を圧延するマンドレルミルを用いた圧延方法において、
ミルセンターを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、0°(溝底)<ψ≦45°の範囲のいずれかの部位から曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以上となるロール孔型を有するロールスタンドで先行して前記管材の肉厚圧下を行い、
さらに後続する1回または2回の肉厚圧下を、曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以下となる部位が溝底から50°<ψの領域まで存在するロール孔型を有するロールスタンドで行うことを特徴とするマンドレルミルの圧延方法。 - マンドレルミル出側で外径に対する肉厚比が0.03以下となる上記管材を圧延するに際し、ミルセンターを中心とした溝底からの角度ψとした場合に、0°(溝底)<ψ≦45°の範囲のいずれかの部位から曲率半径が溝底曲率半径の1.2倍以上となるロール孔型を有するロールスタンドで先行して前記管材の肉厚圧下を行うことを特徴とする請求項4記載のマンドレルミルの圧延方法。
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