JP4358303B2 - 食物ホスフェート又はオキサレート吸収を低下させるための水溶性ポリマー - Google Patents
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Description
本発明は、ホスフェート又はオキサレートを複合体化できる水溶性ポリマーを含む組成物、前記ポリマーの製造方法、胃腸管からの食物ホスフェート又はオキサレートの吸収を妨げるために動物におけるその食物ホスフェート又はオキサレートの複合体化に前記ポリマーを用いるための方法、及び非浸透剤としてのそれらの使用のための配合物に関する。
発明の背景及び要約
正常な範囲以上の血清ホスフェートのレベルが有害な効果を有することは知られている。高リン酸血症、すなわち血清に過度のレベルのホスフェートを有する状態は、病理学的状態、たとえば骨ジストロフィー及び二次上皮小体機能亢進症を引き起こすことが知られている〔たとえば、M.E.Rabinら., Arch.Intern.Med. 124:663-669(1969);及びE.Slatopolskyら., Kidney Int’l. 2:147-151(1972)を参照のこと〕。高リン酸血症の危険性のある要グループは、腎不全を進行するそれらの患者である。彼らの高リン酸血症は、彼らの腎臓が食物において摂取されたホスフェートを適切に排泄できなくなった場合に進行し、そして多くの合併症をもたらす〔臨床学的経過の詳細は、たとえばD.Mizumotoら., Clin.Nephrol. 42:315-321(1994)を参照のこと〕。
慢性腎不全を有する患者の治療には、ひじょうに費用がかかり、そして多くの時間を必要とする。腎不全の患者は、食物において摂取され、そして身体に必要とされない流体、ナトリウム、カリウム、クロリド、ホスフェート、窒素、及び他のミネラルのすべてを排出することができない。それらの患者の治療は、彼らの腎状態が悪化するにつれて、最小の食事制限から重度の食事制限、腹膜透析又は血液透析に進行する。腎臓移植は多くの患者のために必要とされるが、しかし適切なドナー腎臓が不足しているため移植が可能になるまでに数年間、この患者は血液透析を受けることが必要である。医学的データに基づけば、約150,000人の患者が現在、アメリカ合衆国において血液透析を受けている。透析が必要とされる腎不全の段階によれば、多くの代謝性混乱が通常存在する。腎臓は排泄を必要とする摂取された流体及び電解質をもはや処理しないので、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホスフェート、クロリド、水及び種々の微量ミネラルの全体の身体レベルは、通常、正常よりも高い。過剰の流体保持及び異常なホルモン生成が高血圧を引き起こす。異常な代謝は、高脂質血症及び高コレステロール血症を引き起こす。従って、腎透析をうけている患者は通常、彼らの血圧、ホルモン状態、脂肪レベル及び血清化学物質を調節するために多くの投薬を受けている。彼らは通常、また、重度の食事制限、たとえば最少のタンパク質摂取、正確な流体制限、厳しいナトリウム制限、低脂肪摂取、及び高い単純炭水化物摂取に耐えなければならない。それらの食事制限は、腎透析が身体化学物質及びホルモンレベルを通常のレベルに有効に回復することができないために必要である。透析は食事制限を行っていても生成される流体、尿、クレアチン、及び電解質を除去するために、週当たり2〜4回、セッション当たり4〜8時間を要する。ホスフェートは特に、透析により制御することが困難である。なぜならばホスフェートは透析のために通常使用される膜によって十分に透析されないからである。
腎不全の他に他の疾病もまた、高リン酸血症を引き起こす。一次上皮小体機能亢進症は、高リン酸血症のまれな原因である〔たとえば、D.Mizumotoら., Clin.Nephrol. 42:315-321(1994)〕。ホスフェートによる中毒はまた、ホスフェート含有浣腸剤、経口下剤又は尿酸性化剤の投与からも生じる。甲状腺癌は時おり、高リン酸血症を引起す。化学療法の間の腫瘍の急速な溶解はまた、腫瘍溶解により生成される過剰の尿酸からの腎無防備状態によりもたらされ得る高リン酸血症をまた引き起こす〔たとえば、T.Smith, South, Med.J. 81:415-416(1988)を参照のこと〕。高リン酸血症はまた、糖尿病の母の子供においても報告されている〔たとえば、R.C.Tsangら., J.Pediatrics. 89:115-119(1976)を参照のこと〕。腎不全よりもより一般的ではないが、それらの疾病はまた、重大な健康問題をも引き起こす。高リン酸血症のそれらの原因についての治療は、吸収されるホスフェートの量を低下させるためにホスフェートの食事制限を包含する。
深刻な病的状態及び高い費用を引き起こす他の疾病状態は、腎結石の形成である。腎結石は毎年、北アメリカにおいて400,000人の入院を引き起こす。オキサレート結石はそれらの入院患者のうち234,000人の入院を引き起こす。いくつかの哺乳類代謝経路が、さらに代謝され得ず、そして腎臓を通して排泄されるべきであるオキサレートの形成をもたらす。しかしながら、それらの経路は、尿オキサレートの1/3以下であり、そして食物オキサレートが代謝的に正常な患者における尿オキサレートの67%の源である〔たとえば、R.P.Holmes, ら., Scanning Microsco. 9:1109-1120(1995)を参照のこと〕。内因性及び食物オキサレートの両者は、他の物質、たとえばカルシウム、過剰の水素、尿素、及びナトリウムと共に腎臓を通して排泄されるべきである。ショウ酸カルシウム及びシュウ酸は尿において溶解性が低く、そして腎結石を形成するために容易に沈殿するであろう。脂肪便、回腸切除、回腸バイパス、重度の回腸粘膜疾患、又は膵臓不全を有する患者は、健康な人よりも食物オキサレートの吸収性が高く、そしてオキサレート結石に関してより問題である〔J.Q.Stauffer, Am.J.Dig.Dis. 22:921-928(1977);A.F.Hofmann, など., Int.J.Obes. 5:513-518(1981);K.Dharmsathaphornら., Dig.Dis.Sci. 27:401-405(1982);Gastroenterology 84:293-300(1983);及びD.P.D’Cruz, らBr.J.Urol. 64:231-234(1989)を参照のこと〕。遺伝子的に決定された高シュウ酸尿症は、腎オキサレート結石の形成を引き起こすことができるオキサレートの高められた内因性生成を引き起こす。食物オキサレートは、それらの患者における腎結石形成を悪化させる。
高リン酸血症についての現在の治療はホスフェート量を低下させるためにホスフェートの食事制限に重点をおいているが、これはしばしば、高リン酸血症を完全に処理するには不適切であり、そして患者にとってまさしく面倒である。摂取されるホスフェートを胃腸管を通して吸収することを阻止するための治療法では食事制限を行なうことが通常必要になる〔たとえば、J.A.RamirezらKidney Int’l. 30:753-759(1986);及びM.S.SheikhらJ.Clin.Invest. 83:66-73(1989)を参照のこと〕。同様に、高シュウ酸尿症の治療は、種々の食物の排除を通してオキサレートの食物摂取を低下させること、又は胃腸管からのオキサレートの吸収を妨げることに集中して来た。食事制限は困難且つ困惑を引き起こして来た。何人かの著者は、すべての緑色野菜、ルーバーブ、茶、及びチョコレートが排除されるべきであることを示唆している。他の著者は、制限されるべき食物に砂糖大根、ナッツ、小麦ふすま、及びイチゴを加え、ところがホウレン草を除くすべての緑色野菜は可能であることを示唆する〔たとえば、L.K.Massey, ら., J.Am.Diet.Assoc. 93:901-906(1993)を参照のこと〕。いく人かの著者は、高いカルシウム摂取を示唆するが、他の著者はカルシウムに対して厳格な制限を要求している。何人かの著者は低タンパク質食事を要求するが、ところが他の著者は、タンパク質が治療に関与せず、そして食物炭水化物及び脂肪が最少に維持されるべきであることを主張する。オキサレートのための提案された小腸結合剤は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、及び繊維を包含した〔たとえば、R.P.Holmes, ら., Scanning Microsco. 9:1109-1120(1995)及びA.F.Hofmann, ら., Int.J.Obes. 5:513-5180(1981)を参照のこと〕。他の著者は、過剰のカルシウムがより一層の結石の形成を導びくであろうことを恐れている。何人かの著者は繊維を制限する。腎結石の除去の後、最初の6年以内に腎結石の50%再発生率により明らかなように、これらは特別に好結果をもたらすものではなかった。好ましい治療は、吸収抑制剤による胃腸管におけるオキサレートの結合を包含する。ホスフェート又はオキサレートのいづれかのこの結合を達成する通常の方法は、複合体化剤の使用を包含する。
“複合体化剤”は、他の化合物を引き付け、そして複合体化剤と共に一体に保持する化合物である。多くの異なった機構が、複合体化剤に標的分子又はイオンを誘引するために作用することができる。単純な複合体化剤は、物質と反応し、そして次に沈殿する不溶性化合物を形成できるイオンである。不溶性分子を形成する2種のイオン種の反応は、複合体形成の最とも単純な形の1つである。
“キレート化剤”は、“キレート”として知られる複合体を形成する複合体化剤の1つのタイプである。キレート化剤は、複合体化剤における少なくとも2つの部位を通して、他の化合物、イオン又は原子と複数の配位共有結合を形成する。それらの部位は時おり、3〜8個の原子を含む“アーム”上に存在し、それにより、複合体化された原子又は分子がキレート化剤の両端に共有結合する場合、4〜10又はそれ以上の原子の環の形成を可能にする。一部、この環形成により、キレートは同じ2つの分子から形成される化合物よりもより安定するが、しかしわづか1つの配位共有結合が形成される。キレートの安定性はまた、いくつかの“アーム”が反応し、いくつかの環を形成する場合、改良される。多くの環からの安定性に加え、それらの化合物は、複体化された原子又は分子を囲い、それにより、複合体からの容易な解離を妨げる、異なったアームの立体的相互作用からの安定性を高めた。
複合体化剤の他の形は、イオン性誘引を通して分子を誘引し、そして保持する形を包含する。双極−双極又は双極−イオン性誘引はまた、複合体化された化合物を誘引し、そして保持する複合体化剤の能力の源でもあり得る。複合体化剤の機能を助けることに包含される他の力は、疎水性及び親水性相互作用を包含する。
それらの上記力は、純粋に例示的な例として与えられ、そして複合体化剤が化合物を誘引し、そして保持するすべての力の包含を意図するものではない。
官能化された固体樹脂は、生物学的に重要な種々の物質の複合体化のために使用されて来た。これは、コレスチルアミン、すなわち第四塩化アミンにより官能化されたスチレンモノマーの一部と架橋されたポリスチレンにより例示される。この樹脂は、胆汁酸を誘引し、そして保持し、それにより胃腸管からのそれらの吸収を妨げる〔Bristol-Meyers Squibb, Physicians Desk Reference, 51th Edition, 1997;p774-776による“QuestranTM Powder”を参照のこと〕。しかしながら、コレスチルアミンは、砂のようで、味が不快であり、且つ結合能力が低い。これは、患者が、良好でない患者コンプライアンスを導びく、多量のまずい固形物を取ることを必要とする。さらに、コレスチルアミンは、そのクロリドを交換し、そして次に、胆汁酸イオンと結合する。開放されるクロリドの量は、時おり、患者を適切に治療するために必要とされる以下のコレスチルアミンの量で代謝性アシド−シスを引き起こすのに十分である。砂のような、まずい味、低い結合能力、及び樹脂からの所望しない量のイオンのイオン交換のそれらの問題は、今日まで研究されて来たほとんどの樹脂に共通する。
腎不全の患者における高リン酸血症のための複合体化剤による治療は、アルミニウム又はカルシウムのいづれかの塩による、胃腸管におけるホスフェートの沈殿に集中されて来た。アルミニウム塩(通常、水酸化物、たとえばWyeth-AyerstによるAmphojelTM又はCibaによるMaaloxTM)は、アルミニウムが胃腸管から吸収され、そして骨軟化症及び神経疾患を引き起こすので、不満足なものであった。カルシウムの炭酸塩(Smithkline BeechamによるTumsTM)は、酢酸塩(BraintreeによるPhosLoTM)、クエン酸塩及びアルキン酸塩もまた使用されて来たが、最とも広く臨床学的に使用されて来た剤である。それらの剤はカルシウムの過剰吸収をもたらし、そして軟組織カルシウム沈着をもたらす。最近、カルシウムβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレートがリン酸複合体化剤として提案されている〔たとえば、M.F.Sousaら., Nephron. 72:391-394(1996)を参照のこと〕。この塩はまた、リン酸カルシウム沈殿を通して作動し、他のカルシウム塩に関するすべての問題をもたらす。それは、β−ヒドロキシ−β−メチルブチレートがタンパク質代謝を改良することが報告されているので、主に腎透析患者のために提案された。アニオン交換樹脂が、アルミニウム塩とインビトロで比較されて来た。Bio-RexTM5, DowexTM XF43254, DowexTM XY40012、及びDowexTM XY40013のすべては、アルミニウム化合物の結合能力の約半分の結合能力を有した。DowexTM SBR及びDowexTM 1-8Xは、アルミニウム塩を結合するホスフェートのわずか1/3を結合できた。DowexTM XF43311及びDowexTM XY40011は、アルミニウム塩が結合するホスフェートの80%を結合できた。(すべてのDowex樹脂はDow Chemical Companyによるものであり、そして第四アミン官能価に基づく強い塩基性のアニオン交換樹脂である。)〔たとえば、H.M.Burtら., Uremia Invest. 9(1):35-44(1985-1986);及びH.M.Burtなど., J.Pharm.Sci. 76(5):379-383(1987)を参照のこと。〕それらの剤は患者に使用されていない。なぜならば、それらはアジド−シスを引き起こすクロリドを放出し、それらは低い結合能力を補なうために多量を要し、そしてそれらは、下痢が脂肪吸収不良から生じる前に、許容できる用量を制限する胆汁酸を結合するからである。ホスフェートのための他の複合体化剤が提案されている。それらは、鉄の塩、架橋された鉄デキストラン、稀土類塩、及び塩化ジルコニルを包含する〔たとえば、K.Spenglerら., Nephrol., Dial., Transphant. 11:808-812(1996);及びL.Graftなど., Res.Commun.Mol.Pathol.Pharmacol. 90:389-401(1995)を参照のこと〕。それらの剤の個々は、金属とホスフェートとの間で沈殿物を形成することによってホスフェートを複合体化するよう企画される。それらの剤のどれも、ヒト志願者又は患者に投与されていない。ホスフェート複合体化剤の研究が盛んであるのは、食事制限又は知られており且つ利用できる薬物投与のいづれかにおける現在利用できる方法よりも、高リン酸血症の治療において、より良好な方法が必要であるからである。
発明の要約
驚くべきことには、インビボホスフェート又はオキサレート低下剤として使用するための水不溶性樹脂及びポリマーと比較して、水溶性ポリエーテルグリコールポリマーを使用することが可能であることが見出された。このポリマーは、炭素原子及び酸素原子の構造主鎖を有し、ここで個々の酸素原子間に少なくとも2つの連続した炭素原子が存在する。そのようなポリマーの例は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを包含する。それらのポリマーは、水溶性でなければならず、そして生理学的pHでカチオン性であり、そしてホスフェート又はオキサレートと複合体化できる、ポリマー主鎖上の部分又はポリマー上の官能化された誘導体を有する。それらのポリマーは、約5,000〜約750,000ダルトンの平均分子量を有する。それらのポリマーは、従来の手段で配合され、そして存在するホスフェート又はオキサレートの量を低下させるために動物においてインビボで使用される。それらのポリマーを調製するためには、それらのポリマーがしばしば、誘導体により官能化されるよう所望する分子量及び溶解度を得るため注意が払われるべきである。
発明の詳細な説明
従って、本発明は、現在の及び提案されているホスフェート又はオキサレート複合体化剤に関する問題を回避できる一連の水溶性ポリエーテルグリコール(PEG)に関する。そのPEGは、ポリエピハロヒドリン(PEi)ポリマーを包含し、ここでPEiポリマーのハロ部分はクロリド、ブロミド又はヨージドのいづれかであり得る。ポリエーテルグリコール(PEG)は、炭素及び酸素原子の構造主鎖を有し、ここで連続する炭素原子の数は複数であるべきであり、そして連続した酸素原子は存在しない。それらのポリエーテルグリコールの例は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。通常誘導体である、それらのPEGポリマーの水溶性は、本発明から知られるような生物学的流体における不溶性樹脂のスラリーよりもむしろ、動物(温血動物、たとえばヒトを意味する)において処理される生物学的流体との均質混合物を導びく。この溶解性が、複合体化剤のより少ない使用量を可能にする良好な混合及び改良された複合体形成をもたらすことが発見された。さらに、前記剤の投与は動物に対してより快よいものである。なぜならば、砂のようなテキスチャーが存在せず、そしてその剤の味が弱められ、そして樹脂よりも、水性風味により一層完全に遮断されるからである。
PEG-D(ポリエーテルグリコール誘導体)ポリマー、特にPEi-Dポリマーと共に使用され得る配合物は、非浸透性使用のためである。従って、それらの配合物は動物に経口投与される。PEG-Dポリマーの用量は、除去されるべきホスフェート又はオキサレートの量によりもたらされる。
口に与えられるホスフェート結合剤は、食事におけるホスフェートに対するポリマー上の結合部位の比に従って投与される。正常なアメリカ人の食事は1日当たり48〜65ミリモルのリンを含む。1×負荷量は食物ホスフェート1モル当たり1モルのポリマー結合部位であろう。5×負荷量は、食物ホスフェート1モル当たり5モルのポリマー結合部位であろう。
塩溶液においてpH7であり、そしてポリマーの5×負荷量を有するPEi/TMA(14,000Mw)は、1g当たり0.69ミリモルのホスフェートを吸収し、これは約98%のホスフェートの結合に当たる。48〜65ミリモルのホスフェートを吸収するためには、1日当たりこのポリマー70〜94gを必要とする。塩溶液においてpH9であり、そしてポリマーの5×負荷量を有するPEi/EDA(約14,000〜20,000Mw)は、1g当たり1.38〜1.73ミリモルのホスフェートを吸収し(約98%のホスフェートに相当する)、そして食物中のホスフェートのすべてを結合するためには1日当たり28〜47gを必要とする。
ラットの試験においては、1×負荷量が1又は2週間以内に血清ホスフェートを下げることにおいてひじょうに効果的であった。2×負荷量は血清ホスフェートをより早く低下させた。5×負荷量は、数日以内で血清ホスフェートを低下させたが、しかしラットは正常には食事をせず、その結果、ホスフェートの低下のいくらかは、飢餓の結果である。そのラット試験から、通常の用量は0.5×〜1×負荷量であり、そして5×ほどの高い用量は、ホスフェートをすばやく低下させるために1又は2日間、使用され得ることが明らかである。従って、通常の用量は1日当たり約3〜約10g(又は、約1〜約3g/食事、3回の食事/日)であり、そして短期間用量は1日当たり約15〜約50g(又は約5〜15g/食事、3回の食事/日)である。従って、PEG-D又はPEi-Dの有効量は、食事からホスフェートを除去するためには、食事当たり約1〜約15gである。
通常のアメリカ人の食事は1日当たり0〜300mg(0〜3.3ミリモル)のオキサレートを含む。ホスフェート及びオキサレートの式量はほぼ等しいので、但し、食事におけるオキサレートの量は、食事におけるホスフェートの量の約5%であるが、出発用量は、1回の食事当たり約0.6〜約2g(1日当たり3回の食事)である。従って、PEG-D又はPEi-Dの有効量は、1回の食事当たり約0.6〜約2gである。
本発明のPEG-Dポリマー又はPEi-Dポリマーを投与するための配合物は、いづれか適切な経口配合物、たとえば固体投与形、たとえば錠剤、カプセル、カプレット(caplets)、ゲルキャップ(gelcaps)、乾燥粉末、乾燥粒質混合物及び他の固体配合物;及び液体、たとえば懸濁液、溶液、及び市販のジュース、朝食用飲料物及び果物飲料物との液体混合物(但し、それらだけには限定されない)である。習慣的に、医薬的に許容できるキャリヤーは、配合物中に存在できる。従って、1又は複数の次のものが存在する:賦形剤;結合剤、たとえばスターチ、ポリビニルピロリドン(PVP)及びプレゲル化されたスターチ;滑剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸;及び他の不活性成分、たとえば風味剤、保存剤、緩衝液、凝結防止剤、不透明剤、糖、たとえばスクロース及び合成甘味剤、食用油、たとえば鉱油、及び着色剤(それらはPEG-Dと共に配合物中に存在することができる)。食物、飲料水又は薬剤物質に通常使用されるいづれかの食用配合物が、従来の態様で配合物として使用され得る。最終配合物は、当業界において知られている方法により調製される。
胃腸管からのホスフェート又はオキサレートの吸収を妨げ、そして胃腸副作用を最少にするための複合体化剤としてのPEG-Dポリマー又はPEi-Dポリマーは、約5,000ダルトンよりも大きく、そして好ましくは、約10,000ダルトンよりも大きくあるべきであることがまた決定された。しかしながら、極端に高い分子量のポリマーは、水にもはや溶解できない〔Finch, C.A.“Chemical modification and some cross-linking reactions of water-soluble polymer”, Chemistry and Technology of Water-Soluble Polymers, Finch, C.A., ed., Plenum, New York, NY, 1983;pp81-111.〕。分子量範囲の変更は、考慮される特定のPEG又はPEi-Dポリマーに依存するが、しかし水溶性の損失は一般的に、約750,000ダルトン以上で生じる。水溶性の損失は、患者の口に合いにくく、且つホスフェート又はオキサレートの結合において有効性の低いPEG又はPEi-Dポリマーを製造する。本発明は、本発明のPEG又はPEi-Dポリマーの水溶解度、それらのポリマーの性質、及びホスフェート又はオキサレートを沈殿するよう区画された金属の必要性の欠失により、胃腸管からのホスフェート又はオキサレートの除去のためのすべての知られているか又は利用できる剤よりも有意な改良点を提供する。
多くの水溶性ポリマーは知られており、そして高分子量ポリマーは、通常、同じ組成物中で、低分子量ポリマーよりも水に溶解しにくい〔Thomson, R.A.M.,“Methods of polymerization for preparation of water-soluble polymers”, in Chemistry and Technology of Water-Soluble Polymers. Finch, C.A., ed., Pienum, New York, New York, 1983:pp31-70:及びFuchs, O.,“Solvents and non-solvents for polymers”, Polvmer Handbook, 3rd Edition, Brandrup, J. and Immergut, E.H., eds. Wiley, New York, New York. 1989;pp VII/379-VII/402を参照のこと〕。
本発明の水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコールのアミン誘導体(PEG-D)である。それらのポリマーは、エピハロヒドリンを重合し、続いて、ポリエピハロヒドリン誘導体(PEi-D)ポリマーを供給するために、前記得られるポリエピパロヒドリンを誘導体化することによって調製され得る。(このPEi-Dポリマーの調製のための条件は後で提供される。)ポリエピハロヒドリンを生成するための現在の産業的方法は、約3,000以下の平均分子量範囲の短鎖ポリマー又は1,000,000以上の分子量範囲の長鎖ポリマーのいづれかを生成する。〔E.J.Vandenberg, J.Polym.Sci. 47, 486-489(1960);Vandenberg, E.J.“Elastomers, Synthetic(Polyethers)”, Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology. Third Edition, Volume 8. Kroschwitz, J., ed. Wiley, New York, New York, 1979;pp568-582;及びOwens, K., Kyllingstad, V.L.“Elastomers, Synthetic(Polyethers)”, Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology. Fourth Edition, Volume 8, Kroschwitz.J., ed., Wiley, New York, NY, 1993;pp1079-1093を参照のこと〕。従って、本発明はまた、5,000〜750,000ダルトンの範囲のポリエピハロヒドリンアミン誘導体(PEi-D)ポリマーの生成方法を提供する。それらのPEi-Dポリマーは、胃腸管からの食物ホスフェート又はオキサレートの吸収の防止への使用のために特に適切である。
本発明は、ホスフェート又はオキサレートを複合体化できる水溶性PEi-Dポリマー、及び胃腸管から、それぞれ食物ホスフェート又はオキサレートの吸収を低めることへのそれらの使用に関する。そのようなPEi-Dポリマーは、ポリマーの主鎖、その主鎖に結合される置換基、水溶解性を改良する官能基、及びホスフェート又はオキサレートの複合体化を可能にする官能基に基づいて説明され得る。
本発明の水溶性複合体化PEi-Dポリマーは、水溶性及びホスフェート又はオキサレート複合体化能力を提供するか、又はホスフェート又はオキサレートの複合体化を可能にするために水溶解性及び官能化を可能にし、そして好ましくは約5,000〜約750,000ダルトン及びより好ましくは約10,000〜約80,000ダルトンの平均分子量を有する側鎖を可能にする主鎖構造を有するポリマーを含んで成る。本発明のPEi-Dポリマーの水溶解性は、有効量のポリマーと水との均質混合物を形成するポリマーの能力として定義される。好ましくは、本発明のPEi-Dポリマーの水溶解性は、少なくとも0.01gのポリマーが1000mlの水に溶解し、そしてより好ましくは、少なくとも1gのポリマーが1000mlの水に溶解することを包含する。胃腸管からのホスフェート又はオキサレート吸収の低下は、身体中への吸収による胃腸管から除去される食物ホスフェート又はオキサレートの百分率が、本発明のPEi-Dポリマーが使用される場合、前記ポリマーが使用されない場合よりも低いことを示唆する。この低下は、動物はPEi-Dポリマーを摂取する場合、動物の糞における食物ホスフェート又はオキサレートの百分率と、動物がポリマー又はいづれか他のホスフェート−又はオキサレート−複合体化剤を摂取しない場合の同じ百分率とを比較することによって決定され得る。成長の間、ホスフェート又はオキサレート吸収の変化の適切な考慮が、対照動物の組合せ研究により達成され得る。動物からの胃腸ホスフェート又はオキサレート吸収の変化についての確証となるデータは、吸収されたホスフェート又はオキサレートの量がホスフェート又はオキサレート恒常性を維持するために十分でない場合、尿ホスフェート又はオキサレート排泄が低まるので、数週間にわたって続くポリマーの経口試験の前及びその間、食物ホスフェート又はオキサレートの百分率をしての尿ホスフェート又はオキサレート排泄と、正常な尿ホスフェート又はオキサレート排泄との比較から得られる。ホスフェート又はオキサレートの胃腸吸収における低下のさらなる確証は、ポリマー投与の前及びその間、種の血清レベルを測定することによって得られる。
本発明に包含されるポリマーの例は、水溶解性及びホスフェート又はオキサレート複合体化能力を改良する官能基(PEG-D)により誘導体化されたポリエチレングリコールの主鎖を有する水溶性ポリマーである。これらのポリマーの幾つかは水溶性又はホスフェートもしくはオキサレート複合体化を可能にする官能基を含む側鎖を必要とするであろう。本発明は、それらの組の誘導体化された両ポリマー(PEG-D)を包含する。水溶解性、ホスフェート又はオキサレート複合体化能力を改良し、又はポリマー主鎖に、直接的に又はC2−C6アルキレン又は(C2−C2アルキル)アリール基を通して結合することを包含する側鎖の例は、たとえばヒドロキシル基、スルホネート、ホスホネート、ニトロ基、アミン基、ホスフィン基、カルボニル基、チオール基、ハライド、及びそれらの基の組合せのような官能基である。ポリマー側鎖のそれらの例は、単に例として与えられ、そして本発明のポリマー上の主鎖又は官能基を制限するものではない。一般的に、本発明のポリマーは、動物のための用量を低めるために、ポリマーのモノマー単位のためのできるだけ小さな式量を有することが好ましい。
ポリエチレングリコール(PEG)主鎖を調製するための1つの技法は、連鎖停止剤として作用しないであろう溶媒における適度な強度のルュイス酸の存在下でのエピハロヒドリン、たとえばエピクロロヒドリンの重合である。ジクロロメタンがそのような溶媒の例であり、ところがアルコール又は水を含む溶媒は好ましくない。それらの技法は一般的に、当業界に知られており、たとえばアメリカ特許第2,871,219号;又はE.J.Vandenberg, J.Polymer Sci. 47:486-489(1960)を参照のこと。この特定の技法は、下記に記載のように、他の官能基の容易な置換を可能にする主鎖からの官能化された側鎖(すなわちCH2Cl)を有するポリエチレングリコール主鎖を調製することに利点を有する。官能化された側鎖を有するポリエチレングリコール主鎖を創造するために類似する反応に使用され得るもう1つのモノマーは、3,4−ジクロロ−1,2−ブタンオキシランである。ポリマーのさらなる官能化を可能にするために主鎖からの側鎖を有するポリエチレングリコール主鎖を調製するための他の方法もまた、本発明に包含される。それらの方法は、炭素−炭素結合を脱水素化し、そして次に、二重結合を通して官能基を導入するために、前もって形成されたポリエチレングリコールに対する反応を包含する。ポリエチレングリコール主鎖のための好ましい出発材料は、エピハロヒドリン、たとえばエピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリンである。
前で説明されたように、所望には、本発明のポリマーは、水溶性である。いくつかのポリマー主鎖が水における溶解性に寄与する。種々のポリエチレングリコールの主鎖における酸素原子が水溶解性を改良する。いくつかのポリマーは、水溶解性を促進するための側鎖の官能化から利益を得る。水溶解性を改良するためへのポリマー主鎖の官能化が、水への水素結合又は水におけるイオン解離を可能にする基の配置によりなされ得る。そのような基は、ヒドロキシル基、アミン基、スルホネート基、ホスホネート基、カルボニル基、カルバメート基、ニトロ基、及びカルボン酸基を包含する。それらの例は、水溶解性を改良する官能基の例としてのみ意図され、そして本発明の官能基を制限するものではない。ポリマーの官能基としてのそれらの基の包含は、ポリマーが調製されるときにモノマー中に基をすでに有することによって、又はポリマーに基を導入するために別々の反応により行なわれ得る。前者の技法は、ポリビニルスルホン酸及びポリアクリル酸の調製により示される。この技法は、重合の業界においては良く知られている。
第2の技法は、ポリマーの先存する官能基の転化に基づいて所望する官能基のポリマー上への導入を包含する。官能基のそのような転化は、有機化学の業界において知られている。たとえば、Richard C.LarockによるComprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparationは、種々の官能基の導入のための多くの準備経路を示す。この参考文献は、所望する官能基、存在する官能基及び転化を達成することが報告されている反応順序を列挙する表を包含する。準備技法の他の源は、次の文献を包含する:Adranced Organic Chemistry:Reactions, Mechanisms, and Structure, Fourth Edition, by Jerry March;Nitration:Methods and Mechanisms by George A.Olah, Ripudaman Malhotra, and Sabhash C.Narang;及びAdvanced Organic Chemistry by Francis A.Carey and Richard J.Sundberg, Plenum Press, NY, 1990。
さらに、本発明のポリマーは、上記で説明されたように、ホスフェート又はオキサレートと複合体化する能力を有する。これを行なうためには、ポリマー主鎖は、ホスフェート又はオキサレートとの複合体を可能にする部分を含み、又はその部分により官能化されることが好ましい。暴露される生理学的pH(約6.5〜7.5のpH)でカチオン性であろういづれかの部分は、一般的に、ホスフェート又はオキサレートとの複合体化を促進するであろう。アミン及びホスフィンが、生理学的pHでカチオン性であり得るそのような成分の例である。ホスフェート又はオキサレートと複合体化するためには、アミンは、第四アミンであるべきであるか、又は生理学的条件下で第四アミンに転化されるべきである。同様に、ホスフィンは、第四ホスフィンであるべきであるか、又はカチオン性であるために、生理学的条件下で第四ホスフィンに容易に転化できるべきである。従って、アミンは、第一、第二、第三、及び第四アミン又はポリアミンであり得る。より好ましい官能基は、アンモニア、エチレンアミン、アルカノールアミン及び(C1−C10アルキル)アミンから成る群から選択されるものを包含する。それらの基を導入するための準備反応は、水溶解性を改良することが企画された官能基について上記で言及された同じ文献に見出され得る。
従って、本発明のポリマー(PEG-D)は、1又は2段階で調製され得る。
一段階:水溶性ホスフェート−複合体化ポリマー、又はオキサレート−複合体化ポリマーは;モノマーが、適切な主鎖を生成し、そしてホスフェート又はオキサレートと複合体化できる官能価を有する側鎖を同時に生成する重合を可能にするために適切な官能基を含む場合、一段階で調製され得る。主鎖又は側鎖のいづれか、又は両者は、水における溶解性をもたらすであろう。
二段階:2段階工程においては、第1段階は適切な脱離基を有する主鎖の調製を包含する。それらの脱離基は、第2段階において、水溶解性を改良するために、又は複合体化能力を改良するために、又は両者のために必要とされる所望する官能基を導入するために置換される。
本発明のもう1つの観点は、胃腸管における食物ホスフェート又はオキサレートの吸収の阻止への、非全身性剤としてのそれらのPEG-D又はPEi-Dポリマーの使用である。この用途のためには、水溶解性及びサイズが両者とも、主要な役割を演じることが発見された。上記のように、水溶解性は、複合体化剤と、より効果的な複合体化を導びく標的化合物との混合性を改良する。さらに、水溶解性は、前記剤をより飲みやすくし、それにより、患者に受け入れやすくする。このタイプの適用における分子のサイズは重要である。なぜならば約1,500ダルトン以下の分子は、胃腸管が、本発明のために所望されない血流中に吸収され得る。1,500〜約5,000ダルトンの分子は、胃腸管から吸収されないが、しかし、水を小腸中に吸収し、そして下痢及び可能な脱水を引き起こす浸透効果を引き起こすことができる。水溶解性は一般的に、ポリマーのサイズの上昇と共に低下する。このために、上記分子量に対する下限の他に、本発明のポリマーについて約750,000ダルトンの分子量上限が存在する。
いくつかのポリマーに関して、適切な長さの主鎖は、当業界において知られている手段を用いて達成され得る。たとえば、適切な分子量のポリビニルピロリドンは、ビニルピロリドンを重合し、続いて、サイズ排除膜又は調製用サイズ排除クロマトグラフィーのいづれかを通してのその得られる分子量の混合物の分離により得られる。他のポリマーは、出発反応混合物における触媒のモル数に対するモノマーのモル数の比の賢明な選択により、正しい分子量範囲で調製され得る。しかしながら、いくつかのポリマーは、好ましい分子量範囲で調製することが困難である。それらのポリマーは通常、副反応が重合を停止する前に、ひじょうに短いポリマーのみが製造される重合を開始するためにそのような活発な触媒を必要とする。それらの重合のための触媒が重合の程度の良好な調節を可能にする試みにおいて一部、不活性化される場合、反応は、重合の程度を調節する能力を伴わないで、極端に大きな分子量に進行する。それらの問題は、当業界に良く知られており、そして次の文献に論じられる:Allcock, H.R. and Lampe, F.W., Contemporary Polymer Chemistry, Second Edition, Prentice Hall, Englowood Cliffs, New Jersey, 1990, p21-333;及びYoung, R.J. and Lovell, P.A.Introduction to Polymers, Second Edition, Chapman and Hall, New York, 1991, p15-133。分離技法、たとえばポリビニルピロリドンについて記載される分離技法は、高い重合度を有するポリマーを処理し、そして低分子量を有するそれらのポリマーを単離することにおいて好都合である。
本発明の1つの態様は、5,000ダルトン、より好ましくは、少なくとも12,000ダルトン、さらにより好ましくは、少なくとも15,000ダルトンの分子量を有するポリエピクロロヒドリンポリマー(PEi-Dポリマー)の態様である。本発明のポリマーはそれらの最小以上のいづれかの分子量のものであり得るが、しかし好ましくは750,000ダルトン以下、より好ましくは500,000ダルトン以下、最とも好ましくは300,000ダルトン以下、及び最とも特に好ましくは80,000ダルトン以下である。一般的に、ポリエピクロロヒドリンポリマーは、好ましい分子量範囲で調製されていない。従来技術に報告される多くのポリエピクロロヒドリンポリマーは、分子量が低過ぎ、通常、3,000ダルトン以下である〔T.Aidaなど., Macromolecules 21:1195-1202(1988);A.Le Borgeなど., Makromol.Chem., Macromol.Symp. 73:37-46(1993);及びR.Nomuraなど., J.Polym.Chem. 26:627-636(1988)を参照のこと〕。それらのポリマーは通常、ひじょうに強い触媒、たとえばアルキルアルミニウム又は硼素化合物により製造された。酸素含有化合物がそれらを部分的に不活性化するためにアルミニウム触媒に添加される場合、1,000,000ダルトン以上の分子量を有するポリエピクロロヒドリンが得られる〔アメリカ特許第2,871,219号;E.J.Vandenberg, J.Polymer Sci. 47:486-489(1960);及びJ.Wuなど., Polym.J. 22:326-330(1990)を参照のこと〕。
適切な分子量範囲のポリエピクロロヒドリンが、トリエチルオキシオニウムヘキサフルオロホスフェト又は1,2−エチルジ(トリフルオロメタンスルホネート)−すなわち“1,2−エチルジトリフレート”による触媒を用いて製造され得た。トリエチルオキシオニウムヘキサフルオロホスフェートは、900〜1000ダルトンの分子量を製造するために中心のエチレングリコールの個々の端にエピクロロヒドリン基を付加することによって、エピクロロヒドリンを重合できる触媒として報告されている〔Okamoto, Y.,“Cationic ring-opening polymerization of epichlorohydrin in the presence of ethylene glycol”, Ring-opening Polymerization:Kinetics, Mechanisms, and Synthesis, McGrath, J.E., ed., ACS, Washington, D.C.(1985), 286:361-372を参照のこと〕。本発明は、エチレングリコールの不在下でのポリエピクロロヒドリンの調製に関する。本発明は、重合停止反応の調節を通して適切な分子量のポリエピクロロヒドリンを生成した。この調節は、水を排除するためにすべての反応体及び溶媒の注意した蒸留、発熱反応の間の温度の注意した調節、及び反応の開始でのエピクロロヒドリン分子に対する触媒分子の比の賢明な調節により得られた。規定数の生長ポリマーが開始された後の反応混合物へのエピクロロヒドリンの連続した添加が、ポリマーの分子量に対しての最適な調節を可能にした。所望する分子量のポリエピクロロヒドリンの調製のためのもう1つの方法は、触媒とて1,2−エチルジトリフレートの使用である。適切な分子量範囲を有するポリエピクロロヒドリンを生成せしめる第三の方法は、温度及び添加速度の適切な調節を伴って、触媒としてフルオ硼酸を使用することである。
ポリマーの水溶解性、複合体化能力、又は両者を改良することが必要とされる場合、種々の官能基、たとえばアミン、アミノカルボキシレート、クラウンエーテル、アサ大環式基又はカルボキシレートの主鎖上での置換が、第2段階で達成され得る。官能基の選択は、得られる水溶性複合体化ポリマーの所望する活性に依存して行なわれる。好ましくは、所望する官能基は、1モルのモノマー複合体化部位に対して1モルのホスフェート又はオキサレートの割合でホスフェート又はオキサレートを複合体化せしめ、そして少量、たとえば1〜8オンスの水への、個々の用量のために必要とされる量、たとえば1〜10gのポリマーの溶解を可能にするであろう。理想的には、1つの官能基はそれらの両タスクを行なうが、しかしポリマー主鎖上への複数の異なった官能基の配置が必要とされることもある。ポリエチレングリコール主鎖上への所望する複合体化基の配置は、所望する複合体化剤の合成及び同定の後、ポリマー上に存在する官能基に依存して、適切な反応により実施される。ポリマー主鎖がエピクロロヒドリンから調製される本発明の好ましい態様においては、ポリエピクロロヒドリンの官能化は、水溶性キレートポリマーの所望する使用のために必要とされる反応性を提供するために、ポリエピクロロヒドリンと適切なアミンとを求核性条件下で反応せしめることによって実施される。たとえば、その情況が酸性環境下でホスフェートの結合を単に必要とする場合、前記酸は、アミンをプロトン化してアンモニウムとし、陽イオンに荷電しているアンモニウムはホスフェート又はオキサレートのようなアニオンに結合するであろう。従って、第一又は第二アミン(たとえば、遊離材料又は第二窒素での置換を強要するためにブロックされた第一アミンのいづれかのようなエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、又はエチレンアミンのより高次、類似体)の使用が十分であり、そして1つの窒素は塩素を置換し、他の窒素はプロトン付加されるために、そしてアニオンを結合するために遊離したままである。塩素原子に対するアンモニア置換でさえ、プロトン付加され得るアミンを提供することができるであろう。他方では、アルカリ条件(たとえば、胃酸が存在しないようTagametTM処置下にある患者の胃腸管におけるホスフェートを結合する場合)下でさえホスフェートを結合することが必要である場合、第三アミン、たとえばトリメチルアミンが塩素原子を置換することができる。これは、pHにかかわらず、正に荷電される第四アンモニウム化合物をもたらす。従って、たとえば、下記:
〔式中、個々のRは、独立して、水素;枝分れしていない、枝分れした、又は環状であり得る置換されていないC1−C6アルキル基;枝分かれしていない、枝分れした、又は環状であり得る置換されたC1−C6アルキル基;置換されていないC6−C14アリール基、置換されたC6−C14アリール基を表わし;又は1又は2個のR基は、示される窒素が4個の置換基よりもむしろ3個の置換基(ポリマー主鎖への結合を包含する)のみを有する場合におけるように、不在であることができる(たとえば、ここでR基の1つのみが不在であり得る)〕で表わされるポリマーが、本発明のポリマーの1つの例である。たとえば、エチレンジアミンがポリエピクロロヒドリン上に置換される場合、前記式は、1つのR基を水素として、1つのR基をアミノエチル基として有し、そして1つのR基は不在である。もう1つの例においては、トリメチルアミンがポリエピクロロヒドリン上に置換され、3個のR基の個々がメチル基である上記式をもたらされる。さらなる例においては、ヘキサデシルアミンがポリエピクロロヒドリン上に置換され、その結果、1つのR基がヘキサデシル基であり、1つのR基が水素であり、そして1つのR基が不在である上記式がもたらされる。
複合体のための高い選択性又は高い安定性定数が必要とされる場合、ポリエピクロロヒドリン又は他の水溶性ポリマーは、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、チオクラウンエーテル、シクロデキストリン又はポルフィリンのように大環式化合物中のヘテロ原子として、酸素、窒素、硫黄又はそれらの組合せを有する大環式化合物により置換され得る〔たとえば、R.M.Izattなど., Chem.Rev. 91:1721-2085(1991);及びS.Tamagakiなど., Supramol.Chem. 4:159-164(1994)を参照のこと〕。大環式複合体化基がポリマー上に置換される場合、他の官能基がまた、水における溶解性を保証するために必要とされ得る。
PEiポリマーは、上記態様で、それらの対応するPEi-Dポリマーを形成するために誘導体化される。アミン基がその誘導体において官能化された基とを所望される場合、PEiは純粋なアミン溶媒において反応せしめられ得る。通常、PEiにおけるクロロメチル基に対して最少4モル過剰、好ましくは12〜16モル過剰のアミンが使用される。このモル必要性に対する例外はトリメチルアミンであり、この場合、PEi 1モルに対して0.5モルほどのアミシが20%水溶液に必要とされる。水はこの段階の間、反応システムから除かれる。なぜならば水はPEiにおけるクロロメチル基の加水分解に寄与するからである。反応のための温度範囲は、約25〜約120℃である。反応の残りは上記及び例のようにして行なわれた。ポリエピクロロヒドリンにおけるクロロメチル基の塩素のアミン誘導体への転化率は、約10〜約80%である。
本発明は、本発明を純粋に例示する次の例によりさらに明確にされるであろう。
一般的実験方法
A.ポリエピクロロヒドリン(PEi)に添加されるアミンの量を決定するための方法。
ポリエピクロロヒドリンポリマー上のエチレンジアミン(EDA)の官能化の量を、銅滴定方法により決定した。PEi/EDA溶液を、MurexideTMインジケーターの存在下で塩化銅溶液により滴定した。銅は、飽和までEDAによりキレート化され、この点で過剰の銅がインジケーターを複合体化し、そしてこのエンドポイントを比色検出器を用いて観察した。
METTLER▲R▼ DL40GP Memo Titratorのために必要とされる溶液:
1.1lのメスフラスコに1.705g(0.01モル)の塩化第II銅{CuCl2・2H2O}〔Fisherからの〕(FW170.48)を添加し、そして脱イオン水により印まで希釈することによって調製された0.01Mの塩化銅溶液。
2.1lのメスフラスコに0.272g(0.002モル)の酢酸ナトリウム・3H2O{CH3COONa・3H2O}〔Fisherからの〕(FW136.08)を添加し、そして水により印まで希釈することによって調製された0.002Mの酢酸ナトリウム緩衝溶液。
3.500mlのメスフラスコに5.0g(0.0176モル)のプルプル酸アンモニウム〔Fisherからの〕(FW284.19)を添加し、そして水により印まで希釈することによって調製された0.1% MurexideTMインジケーター溶液。
特殊化された125mlの使い捨てポリエチレンサンプルビーカー(METTLER▲R▼ ST20サンプルチェンジャーを固定するよう製造されている)を、METTLER▲R▼ AE163バランス上で計測し、そしてPEi/EDAの水溶液(約8mgのPEi/EDAを供給するよう測定された量)を入れた。このサンプルの重量を、METTLER▲R▼ DL 40GP Memo Titratorの方法365により自動的に記録した。このPEi/EDA溶液に、80mlの脱イオン水、酢酸ナトリウムの2mモル水溶液4.0ml及びプルプル酸アンモニウム(MurexideTMインジケーター)の0.1%水溶液0.5mlを添加した。このサンプル溶液をサンプルチェンジャーに配置し、そして0.01Mの塩化銅溶液により滴定した。エンドポイントを、METTLER▲R▼ DP550 Phototrode比色検出器を用いて観察し、そしてMemo Titrator中に入れた。次に、ポリエピポリマー上の官能化の量を、EDAによりキレート化された銅のモル数に基づいて計算した。この滴定方法の例は、下記表1に見られる:
上記表1におけるデータから、ポリエピポリマー(PEi)と共に反応体として使用されるエチレンジアミン(EDA)が多いほど及び反応温度が高いほど、ポリマー主鎖に付加されるEDAの量が多いことが明確である。ポリエピポリマーが種々のアミンにより官能化される多くの実験に基づく観察に基づけば、EPiポリマーに結合されるアミンの数が多いほど、水溶解性は高い。50重量%以上のPEi/EDAの溶液が周囲温度で得られた。
B.分子量の決定のための方法はゲル透過クロマトグラフィーを用いる。いづれかの誘導体化が行なわれる前に、ポリエピクロロヒドリンの測定のために、サンプルの溶媒として及び溶離剤として使用されるテトラヒドロフランと共にPL-gel Mixed Eカラムを使用する。Polymer Laboratoriesからの市販のポリエチレングリコール標準との比較により、検定を行なった。流速を、40℃のカラム温度で1ml/分に調節する。サンプルを0.25重量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解し、そしていづれかの粒状物(いくらかのひじょうに高い分子量のポリマーを含むかも知れない)を除去するために濾過する。ループインジェクターを使用し、カラム上に150μlの溶液を注入する。得られるクロマトグラムを用いて、コンピューターコントローラー上のソフトウェアーによる数学的計算によりMR,MW,MZ及びMZ+1を測定する。報告されるすべての分子量は、MW測定値を示すであろう。
誘導体化されたポリエピクロロヒドリンポリマーの分子量の測定を、0.1MのNaCl、0.1MのEDA(メタノール/水;1:1)を用いて、1ml/分及び40℃のカラム温度で、TSK gel 2000PW+3000PW+5000PWカラムにより実施した。注入体積は100μlであった。サンプルを1%濃度で水に溶解し、そして注入の前に濾過した。MW値を報告する。
本発明は、本発明の純粋な例である次の例によりさらに明確にされるであろう。
例
出発材料
例A:トリエチルオキシオニウムヘキサフルオロホスフェートを用いてのポリエピクロロヒドリン(PEi)の調製。
乾燥雰囲気下で、0.1257gのトリエチルオキシオニウムヘキサフルオロホスフェートを、9.4438gの無水塩化メチレンに溶解した。蒸留されたエピクロロヒドリン(78.4g)を、無水窒素によりフラッシュされた容器に入れ、そして40℃で一定温度の浴に含浸した。前記トリエチルオキシオニウムヘキサフルオロホスフェート溶液を、撹拌しながらエピクロロヒドリンに添加し、そして24時間、反応せしめた。温度を70℃に上げ、この時点で、反応混合物はより粘性になった。得られる材料をエタノールにより3回、すすいだ、48gの材料を得た。ゲル透過クロマトグラフィーは、3,000〜400,000ダルトンの分子量範囲、100,000のメジアン分子量(MW)、及び90%のポリマーが5,000〜100,000ダルトンの分子量を有することを示した。
例B:フルオ硼酸を用いてのポリエピクロロヒドリン(PEi)の調製。
乾燥雰囲気下で、450mlの塩化メチレン、48%水性フルオ硼酸1.0ml及びジエチルエーテル中、54%のフルオ硼酸溶液10mlを、40℃に加熱した。この組成物に、エピクロロヒドリン850mlをゆっくりと添加し、そして反応が完結するまで、還流した。前記反応を、さらなる溶媒が除されなくなるまで、減圧下で及び100℃までの温度で、回転蒸発器により蒸発せしめた。ゲル透過クロマトグラフィーによるポリマーの分子量は、3500ダルトン(MW)であり、そして材料の40%以上が14,000ダルトン以上であった。
最終生成物
例1:ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミン(PEi/TMA)の調製。
2lのステンレス鋼製のPARR圧力反応器に、5,000ダルトン以上の分子量のポリエピクロロヒドリンポリマー185g(2モル)(反復モノマー単位当たりFW92.53)を入れた。このポリエピクロロヒドリンポリマーにトリメチルアミン(FW59.11)の24重量%溶液246.5g(1モル)を添加した。反応器を密封し、そしてPARRヒーター/撹拌機に配置し、そして窒素により75psi(Pa)に加圧した。反応容器を定速の撹拌下で115℃に加熱した。反応器を115℃及び75psi(Pa)に16時間、維持した。反応器を冷却し、大気圧にガス抜きし、そして開放した。反応溶液を、真空下で9.0cm Buchnerフィルター上のNo.1フィルター紙に通して濾過し、次に500mlの丸底フラスコに移した。この溶液を70℃及び8インチ(20.32cm)の水真空圧で回転蒸留し、80mlの体積にした。この反応生成物を、Spectra/PorTM膜バッグ〔分子量カットオフ14,000〕に移し、そして10インチ(25.4cm)の脱イオン水において16時間透析し、未反応の低分子量化学種を除去した。分子量は約18,000ダルトン(MW)であった。
例2:ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミン/水酸化アンモニウム(PEi/TMA/NH4OH)の調製。
2lのステンレス鋼製PARR圧力反応器に、23.6g(0.25モル)のポリエピクロロヒドリンポリマー(反復モノマー単位当たりFW92.53)を入れた。このポリエピクロロヒドリンポリマーに、250mlの水、及びトリメチルアミン(FW59.11)の24重量%溶液30.8g(0.125モル)を添加した。反応器を密封し、そしてPARRヒーター/撹拌機ユニットに配置し、そして定速撹拌下で105℃に加熱した。反応器を105℃及び50psi(Pa)で16時間維持した。反応器を冷却し、大気圧にガス抜きし、そして水酸化アンモニウム溶液(FW17)の29重量%溶液450g(7.7モル)を入れた。反応器を再び密封し、そしてヒーター/撹拌機ユニットに配置し、そして105℃に再加熱した。反応器を105℃及び80psi(Pa)で16時間維持した。次に、反応器を冷却し、ガス抜きし、そして開放した。反応溶液を真空下で、9.0cm Buchnerフィルター上のNo.1フィルター紙に通して濾過し、そして次に500mlの丸底フラスコに移した。この溶液を、70℃及び23インチ(58.42cm)の水真空圧で回転蒸留し、80mlの体積にした。この反応生成物をSpectra/PorTM膜バッグ〔3,500の分子量カットオフ〕に移し、そして10インチ(25.4cm)の脱イオン水において18時間透析した。次に、この溶液を凍結乾燥すると、淡褐色の吸湿性の固形物が生じた。
例3:ポリエピクロロヒドリン/ジエチレントリアミン(PEi/DETA)の調製。
500mlの三ツ首丸底フラスコに、還流冷却器、THERMOWATCH I2R温度調節器を備えた温度計、及び滴下漏斗を備え付けた。フラスコに、412.7g(4モル)のジエチレントリアミン(FW103.2)を入れ、そして次に120℃に加熱した。滴下漏斗に、5,000以上の分子量(モノマー重量92.53g)を有するポリエピクロロヒドリン37.7g(0.41モル)を入れた。ポリエピクロロヒドリンをジエチレントリアミンに約0.25ml/分の速度で添加し、続いてさらに60分間、反応混合物の加熱を続け、そして45℃に冷却した。水酸化ナトリウムの50%溶液(32.8g、0.41モル)及び150mlの水を、前記反応混合物と混合し、そして45分間撹拌し、フィルター紙により濾過し、白色沈殿物を除去し、そして3,500ダルトンの分子量カットオフを有するSpectra/PorTM膜により透析した。次に、溶液を凍結乾燥すると、約18,000ダルトン平均分子量(MW)を有する白色の粉末状物質が生成した。
例4:ポリエピクロロヒドリン/エチレンジアミン(PEi/EDA)の調製。
2000mlの三ツ首丸底フラスコに、撹拌棒、還流冷却器、10mlの滴下漏斗、及びTHERMOWATCH I2R温度調節器を備えた温度計を備え付けた。フラスコに、360g(6モル)のエチレンジアミン(EDA)(FW60.1)を入れた。滴下漏斗に、約5,000ダルトン以上の分子量及び12,000ダルトン以上の分子量(約40%)を有する231g(2.5モル)のポリエピクロロヒドリンポリマー(反復単位当たりFW92.53)を入れた。EDAを含む反応フラスコを定速撹拌下で加熱還流し(100℃)、この時点で、ポリエピクロロヒドリンポリマーをエチレンジアミンに約4.5ml/分の速度で添加した。すべてのポリエピクロロヒドリンポリマーの添加の後、反応を16時間続けた。次に、その反応混合物を丸底フラスコに移し、そして75℃及び23インチ(58.42cm)の水真空圧下で回転蒸留し、未反応エチレンジアミンを除去した。ポリエピクロロヒドリン/EDA溶液を、Spectra/PorTM膜バッグ〔14,000の分子量のカットオフ〕に移し、そして10インチの脱イオン水において18時間透析した。次に、溶液を凍結乾燥させると、淡褐色の吸湿性固形物が生じた。ゲル透過クロマトグラフィーは、17,000ダルトン以上の平均分子量(MW)を示した。
比較例D:ポリアリルアミンビグアニド(PAAG)の調製。
乾燥ビーカーにおいて、9.36gのポリアリルアミン塩酸塩(0.1モル;Aldrichから入手;50,000〜65,000ダルトンの分子量を有する)を、10MのNaOH 20ml及び撹拌を可能にするのに十分な水と混合した。液体をデカントし、そして樹脂を水により洗浄し、そして乾燥させた。樹脂を丸底フラスコ中のメタノール300mlに懸濁させ、そして20.12g(0.1モル)の3,5−ジメチルピラゾール−1−カルボキサミジンニトレートと混合した。その反応混合物を96時間還流した。次に、樹脂を濾過し、そしてメタノールによりすすぎ、そして乾燥させた。生成物は、約75,000ダルトン以上の分子量を有する。
比較例E:ポリ(アリルアミン−N−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンテニウムプロピル)クロリド)の調製。
52,000〜83,000ダルトンの分子量を有するポリアリルアミン(1.88g、0.02モル)を反応容器に入れ、そして3MのNaOH 40.4548g(0.121モル)と混合した。N,N,N−トリメチル−オキシランメタンアミニウムクロリド(65.2%溶液20.0150g(0.086モル))を添加した。反応混合物を一晩還流し、そして3,500の分子量をカットオフする透析用バッグにおいて、脱イオン水に対して透析した。得られた溶液を凍結乾燥させると、1.8gの淡褐色固形物が生じた。その固形物は、下記式:
であり、そして75,000ダルトン以上の分子量を有する。
比較例F:ポリ(アリル−N,N−ジメチルアミノ−N−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロピル)クロリド)の調製。
52,000〜83,000ダルトンの分子量を有するポリアリルアミン(0.9356g、0.01モル)を5gのアセトニトリルに溶解し、そして3MのNaOH 3.6ml(0.0108モル)と反応させるとpHは7.4となった。ヨウ化メチル(2.84g、0.02モル)を添加し、そしてその反応混合物を還流した。還流の間、さらに3MのNaOH 0.8ml(0.0024モル)を添加すると、pHは7.9に上昇した。N,N,N−トリメチル−オキシランメタンアミニウムクロリド(65.2%溶液5.77g(0.025モル))を添加し、そして還流を続けた。24時間後、反応混合物を3,500ダルトンの分子量カットオフ透析用バッグに入れ、そして脱イオン水において一晩透析した。得られた溶液を凍結乾燥させると、淡褐色粉末1.56g(58%の収率)が生じた。化合物は、下記式:
であり、そして約75,000ダルトンの分子量を有する。
生物学的例
例1:ポリエピクロロヒドリン/エチレンジアミンの使用による胃腸管ホスフェート吸収の阻止。
混合された穀物からの0.65g%のリンを含むラット用飼料を、例4の方法により調製されたポリエピクロロヒドリン/エチレンジアミンと混合した。飼料中のホスフェート1モル当たり結合部位が3モル、飼料中のホスフェート1モル当たり結合部位が1モル、飼料中のホスフェート1モル当たり結合部位が0.5モル、及び飼料中のホスフェート1モル当たり結合部位が0モル(対照)となるように、ラット用飼料と十分なポリエピクロロヒドリン/エチレンジアミンとを混合することによって餌を調製した。6匹のラットに、1週間の間、それぞれの餌を供給した。それらの実験の間、週の最後での尿ホスフェートは対照に関して、平均18.2mg/日であり、0.5×グループにおいては8.7mg/日、1×グループにおいては8.6mg/日、及び3×グループにおいては1.9mg/日であった。低い尿ホスフェートレベルは、ラットが制限腎排泄を通してホスフェートを保持することによって十分な食物ホスフェートを得ないように反応したことを示唆する。週の最後での全体のホスフェートバランス(食物摂取−尿出力−糞出力)は、対照に関して、47.8mg/日、0.5×グループに関して、50.9mg/kg、1×グループに関して、34.3mg/日、及び3×グループに関して、39.5mg/日であった。
比較例A:ポリアリルアミン(Rena StatTM)の使用によるホスフェートの胃腸管吸収の阻止。
50,000〜65,000の分子量を有するポリアリルアミン塩酸塩を、Aldrichから得、そしてさらに精製しないで使用した。混合された穀物からの0.65g%のリンを含むラット用飼料を、餌中に存在する各ホスフェートに対してアミン結合部位が1である比となるように、1.96gのポリマーに対して粉末化されたラット用飼料が98.04gとなる割合で、ポリアリルアミン塩酸塩と混合した。2匹の125gのラットに、この餌を任意に与え、そして変更を加えなかった粉末化されたラット用飼料を任意に与えた2匹のラットと比較した。特別な食餌を開始する前及び2週間の安定化の期間の後、糞及び尿の24時間の別々の収集物を、それぞれの組のラットから得、そして誘導結合プラズマ分光分析法によりリンについて分析した。対照ラットはそれらの成長速度を2週間にわたって遅くされたので、糞に見出される食餌に由来するリンの百分率は65%から72%(7%の上昇率)に上昇し、一方、ポリアリルアミン塩酸塩を与えられたラットにおいては、吸収不良の食餌に由来するリンが58%から75%(17%の上昇率)への上昇を示した。これは対照ラットに見出される高められたホスフェート損失の2.6倍である。同じ時間の間、対照ラットは、食餌摂取の6%から16%への尿リンの上昇を示し、ところがポリアリルアミン塩酸塩を与えられたラットにおいては、研究の最後で、ホスフェートの食餌摂取の6%から2%にそれらの尿ホスフェート出力が低下した。これは、ポリアリルアミンを与えられたラットが対照ラットに比較して尿リンを保持していることを示唆し、そしてそれらは、それらの食餌から適切なホスフェートを吸収できなかったことを示す。
例II及び比較例A:ポリアリルアミンビグアニドによる胃腸管ホスフェート吸収の阻止。
2匹の125gのSprague DawleyにNulytelyTMを経口投与し、それらの胃腸管からすべての物質を除いた。この準備の後、1匹のラットに、0.324mモルのホスフェートを供給するよう調整されたミルクの胃管栄養飼料を与えた。他のラットに例5において調製された0.0322gのポリアリルアミンビグアニジンと混合された同じ量のミルクを含む胃管栄養飼料を与えた。1時間後、両ラットに再びNulytelyTMを与え、胃腸管からすべての未吸収食餌を除去し、そして集めた。誘導結合プラズマ分光分析法により集められた糞中のホスフェートを測定した。ポリアリルアミンビグアニドを受けたラットによる吸収不良のホスフェートは、対照ラットによる吸収不良のホスフェートの66%であった。
例III及び比較例B:ポリ(アリルアミン−N−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロピル)クロリド)によるホスフェートの複合体化。
例6からの方法により調製されたポリ(アリルアミン−N−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロピル)クロリド)0.72gを水10mlに溶解し、0.345Mの溶液を調製した。4本の管の個々において、前記溶液0.54ml(0.19mモルのモノマー単位)を、0.0207MのNaH2PO4(10ml)及び適切な量のHCl及びNaOHと混合し、pH3,pH4.5,pH6及びpH7.5の溶液を調製した。同じpHを有する管をまた、0.0207MのNaH2PO4(10ml)及び1.5MのCaCO3(0.50ml;0.749mモル)により調製した。対照管を、リン酸ナトリウム溶液及びpH調節物により調製した。すべての管を水12mlにより希釈した。管を1時間撹拌した。次に、溶液を別々のCentriconTM 30分子量カットオフ管に入れ、そして30分間、遠心分離した。集められた濾液を、誘導結合プラズマ分光分析法によりリンについて分析した。ポリマーは、pH3で58%のリンを、pH4.5で59%のリンを、pH6で56%のリンを、及びpH7.5で44%のリンを除去した。炭酸カルシウムは、pH3で16%のリンを、pH4.5で13%のリンを、pH6で9%のリンを、及びpH7.5で7%のリンを除去した。対照管は、pH3で0.7%のリンが除去され、pH4.5で1.1%のリンが除去され、pH6で0.4%のリンが除去され、そしてpH7.5で0.6%のリンが除去されることを示した。従って、ポリ(アリルアミン−N−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロピル)クロリド)は、ホスフェートを複合体化することにおいて効果的であった。
例IV及び比較例C:ポリ(アリル−N,N−ジメチルアミノ−N−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロピル)クロリド)によるホスフェートの複合体化。
例7からの方法により調製されたポリ(アリル−N,N−ジメチルアミノ−N−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロピル)クロリド)0.72gを水10mlに溶解し、0.263Mの溶液を調製した。4本の管の個々において、前記溶液0.67ml(0.18mモルのモノマー単位)を、0.0207MのNaH2PO4(10ml)及び適切な量のHCl及びNaOHと混合し、pH3,pH4.5,pH6及びpH7.5の溶液を調製した。また、同じpHを有する管を、0.0207MのNaH2PO4(10ml)及び1.5MのCaCO3(0.50ml;0.749mモル)により調製した。対照管を、リン酸ナトリウム溶液及びpH調節物により調製した。すべての管を水12mlにより希釈した。管を1時間撹拌した。次に、溶液を別々のCentriconTM 30分子量カットオフ管に入れ、そして30分間、遠心分離した。集められた濾液を、誘導結合プラズマ分光分析法によりリンについて分析した。ポリマーは、pH3で49%のリンを、pH4.5で53%のリンを、pH6で48%のリンを、及びpH7.5で39%のリンを除去した。炭酸カルシウムは、pH3で16%のリンを、pH4.5で13%のリンを、pH6で9%のリンを、及びpH7.5で7%のリンを除去した。対照管は、pH3で0.7%のリンが除去され、pH4.5で1.1%のリンが除去され、pH6で0.4%のリンが除去され、そしてpH7.5で0.6%のリンが除去されることを示した。従って、ポリ(アリル−N,N−ジメチルアミノ−N−(2−ヒドロキシ−3−トリメチル−アンモニウムプロピル)クロリド)はホスフェートを複合体化することにおいて効果的であった。
例V:ポリエピクロロヒドリン/EDA及びポリエピクロロヒドリン/DETAによるオキサレートの複合体化。
シュウ酸アンモニウムの0.025M溶液を調製した。約45,000ダルトンの分子量を有するポリエピクロロヒドリンを、例Aからの方法を用いて調製した。EDA(上記例4)及びDETA(上記例3)誘導体を調製した。それらの2種の誘導体の溶液を用いて、別々の分子量カットオフフィルター(CentriconTM濃縮機)中に0.001モルの結合部位を配置し、次に0.001モルのオキサレートを個々の濃縮機及び水のみを含む対照に添加した。その溶液を、一時間混合し、そして次に遠心分離した。濾液を、GC-MSによりオキサレートについて分析し、そしてオキサレートのみを有する濃縮機と比較した。EDA及びDETA誘導体ポリマーの両者は、約30%のオキサレートを吸収した。
例VI:ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミン/アンモニアの使用による胃腸管ホスフェート吸収の阻止。
混合された穀物からの0.65g%のリンを含むラット用飼料を、例2において調製されたポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミン/アンモニアと、ポリマー2.36gに対して粉末状のラット用飼料97.64gの割合で混合し、飼料中に存在する各ホスフェートに対してアミン結合部位が1である比となるようにした。2匹の125gのラットに、この飼料を任意に与え、そして変更を加えなかった粉末化されたラット用飼料を任意に与えた2匹のラットと比較した。特別な食餌を開始する前及び2週間の安定化の期間の後、糞及び尿の24時間の別々の収集物を、それぞれの組のラットから得、そして誘導結合プラズマ分光分析法によりリンについて分析した。対照ラットは、それらの成長速度を2週間にわたって遅くされたので、糞に見出される食餌に由来するリンの百分率は65%から72%(7%の上昇率)に上昇し、一方、ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミン/アンモニアを与えられたラットは吸収不良の食餌に由来するリンが65%から76%(11%の上昇率)への上昇を示した。これは対照ラットに見出される高められたホスフェート損失の1.6倍である。同じ時間の間、対照ラットは、食餌摂取の6%から16%への尿リンの上昇を示し、ところが、ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミン/アンモニアを与えられたラットは、正常な食餌に基づいてのそれらの尿に7%の食餌に由来するリン、及び研究の最後で、尿に10%の食餌に由来するリンを有した。従って、ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミン/アンモニアを与えられたラットは、対照ラットに比較して、リンを保持し、これはそれらがそれらの食物から適切な量のホスフェートを吸収できなかったことを示唆する。
例VII:ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミンの使用による胃腸管ホスフェート吸収の阻止。
混合された穀物からの0.65g%のリンを含むラット用飼料を、例1において調製されたポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミンと、ポリマー3.18gに対して粉末状のラット用飼料が96.82gとなる割合で混合し、飼料中に存在する各ホスフェートに対してアミン結合部位が1である比となるようにした。2匹の125gのラットに、この飼料を任意に与え、そして変更を加えなかった粉末状のラット用飼料を任意に与えた2匹のラットと比較した。特別な食餌を開始する前及び2週間の安定化の期間の後、糞及び尿の24時間の別々の収集物を、それぞれの組のラットから得、そして誘導結合プラズマ分光分析法によりリンについて分析した。対照ラットは、それらの成長速度を2週間にわたって遅くされたので、糞中に見出される食餌に由来するリンの百分率は65%から72%(7%の上昇率)に上昇し、一方、ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミンを与えられたラットは吸収不良の食餌に由来するリンが62%から59%(3%の低下率)への低下を示した。同じ時間の間、対照ラットは、食餌摂取の6%から16%への尿リンの上昇を示し、ところが、ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミンを与えられたラットは、正常な食事に基づいてのそれらの尿に6%の食餌に由来するリン、及び研究の最後で、尿に9%の食餌に由来するリンを有した(3%の上昇)。この適度な上昇は、ポリエピクロロヒドリン/トリメチルアミンを与えられたラットが対照ラットに比較して、リンを保持したことを示唆する。
本発明の他の態様は、ここに開示されるこの明細書又は実施を考慮して当業者に明らかであろう。前記明細書及び例は、単に例示的であって、本発明の範囲を制限するものではない。
Claims (2)
- 生理的pHでカチオン性であり、ホスフェートもしくはオキサレートとの複合体化が可能であり、平均分子量が5,000〜80,000ダルトンであり、溶解度が水1,000mLあたり少なくとも0.01gであるアミン置換されたポリエピクロロヒドリン及び医薬的に許容されるキャリヤーを含む、経口投与のための配合物。
- 動物におけるホスフェート又はオキサレートをインビボで低下させるための請求項1記載の配合物。
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