JP4357866B2 - 半導体電界吸収型変調器およびその製造方法 - Google Patents

半導体電界吸収型変調器およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体電界吸収型変調器およびその製造方法に関し、特に、半導体電界吸収型変調器のメサストライプ構造を絶縁性材料で埋め込む方法に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の半導体電界吸収型変調器では、多重量子井戸(MQW)構造を形成し、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を利用して光変調を行うものがある。そして、例えば、非特許文献1に開示されているように、リッジ導波路の両側をポリイミドで埋め込むことにより、20GHzを超える帯域を有する半導体電界吸収型変調器が実現されている。
【0003】
図6は、従来の半導体電界吸収型変調器の構成を示す斜視図である。
図6において、n−InP基板71上には、n−InPクラッド層72、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層73、ノンドープInGaAsP光吸収層74、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層75、p−InPクラッド層76およびp−InGaAsコンタクト層77が順次積層されている。そして、これらn−InPクラッド層72、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層73、ノンドープInGaAsP光吸収層74、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層75、p−InPクラッド層76およびp−InGaAsコンタクト層77は、メサストライプ構造を構成するようにパターニングされている。なお、ノンドープInGaAsP光吸収層74としては、例えば、多重量子井戸構造またはバルク構造を用いることができる。
【0004】
そして、メサストライプ構造の両側のn−InP基板71上にはポリイミド層80が形成され、n−InPクラッド層72、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層73、ノンドープInGaAsP光吸収層74、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層75、p−InPクラッド層76およびp−InGaAsコンタクト層77からなるメサストライプ構造は、ポリイミド(例えば、東レ製:UR3800)層80により埋め込まれている。
【0005】
そして、p−InGaAsコンタクト層77上には、ボンディング領域83が設けられたp側ストライプ電極82が形成され、n−InP基板71の裏面にはn側電極84が形成されている。
そして、メサストライプ構造を有するpinダイオードに逆バイアスを印加することにより、ノンドープInGaAsP光吸収層74の吸収波長を短波長側から長波長側へシフトさせることが可能となる。このため、p側ストライプ電極82への印加電圧を制御することにより、信号光の吸収量を制御することが可能となり、光変調を実現することが可能となる。
【0006】
ここで、メサストライプ構造の両側にポリイミド層80を設けることにより、メサストライプ構造を低誘電率材料で埋め込むことが可能となる。このため、メサストライプ構造を導波する光を横方向に効率よく閉じ込めることが可能となり、変調効率を向上させることが可能となる。
【0007】
【非特許文献1】
InGaAsP/InGaAsP Multiple−Quantum−Well Modulator with Improved Saturation Intensity and Bandwidth Over 20GHz,IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,VOL.4,NO.7,JULY 1992
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、半導体電界吸収型変調器では、変調動作時に信号光が吸収されると、光吸収電流が内部に発生し、内部に熱が発生する。このため、従来の半導体電界吸収型変調器では、変調効率を向上させるために、メサストライプ構造の両側にポリイミド層80が設けると、ノンドープInGaAsP光吸収層74で発生した熱の逃げ場が失われ、半導体電界吸収型変調器の温度が上昇し易くなって、光吸収特性が変化するという問題があった。
【0009】
特に、信号光は入射端面近傍で集中的に吸収され、光吸収電流が入射端面近傍で集中的に発生するため、入射する信号光の強度が強いと、入射端面が劣化するという問題があった。
そこで、本発明の目的は、変調効率を劣化させることなく、素子内部の温度上昇を抑制することが可能な半導体電界吸収型変調器およびその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1記載の半導体電界吸収型変調器によれば、印加電圧に基づいて吸収係数が変化する光導波層と、前記光導波層を導波する光を横方向に閉じ込める作用が及ぶ領域に局所的に形成された横方向光閉じ込め層とを備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、導波光を横方向に閉じ込めるために必要な領域にのみ、横方向光閉じ込め層を形成することが可能となり、横方向光閉じ込め層が、導波光を横方向に閉じ込める作用を及ぼすことができない領域に設けられることを防止することができる。
このため、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、横方向光閉じ込め層の形成範囲を限定することが可能となり、横方向光閉じ込め層の熱容量が小さい場合においても、光導波層の周囲の熱容量の低下を抑制することが可能となることから、変調効率を劣化させることなく、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0012】
また、請求項2記載の半導体電界吸収型変調器によれば、光吸収層を含む半導体層が形成された半導体基板と、前記光吸収層に光を導波させる領域の両側にストライプ状に形成され、前記光吸収層を導波する光を横方向に閉じ込める横方向光閉じ込め領域とを備えることを特徴とする。
これにより、導波光を横方向に閉じ込めるために必要な領域に限定して、横方向光閉じ込め層を形成することが可能となるとともに、それ以外の領域には、光吸収層を含む半導体層を残すことが可能となる。
【0013】
このため、横方向光閉じ込め層の熱容量が小さい場合においても、光吸収層の周囲の熱容量の低下を抑制することが可能となるとともに、横方向光閉じ込め層を介し、光吸収層で発生した熱を横方向に逃すことが可能となる。
この結果、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、光吸収層で発生した熱の放散性を向上させることが可能となり、変調効率を劣化させることなく、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0014】
また、請求項3記載の半導体電界吸収型変調器によれば、光吸収層を含むメサストライプ構造が形成された半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、前記メサストライプ構造を埋め込む半絶縁性の半導体層と、前記メサストライプ構造と前記半絶縁性の半導体層との境界に沿って形成された溝とを備えることを特徴とする。
【0015】
これにより、導波光を横方向に閉じ込めるために必要な領域に限定して、横方向光閉じ込め層を形成することが可能となるとともに、それ以外の領域には、半絶縁性の半導体層を残すことが可能となる。
このため、横方向光閉じ込め層の熱容量が小さい場合においても、光吸収層の周囲の熱容量の低下を抑制することが可能となるとともに、寄生容量の増加を抑制しつつ、光吸収層で発生した熱を横方向に逃すことが可能となる。
【0016】
この結果、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、光吸収層で発生した熱の放散性を向上させることが可能となり、高速変調を可能としつつ、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
また、請求項4記載の半導体電界吸収型変調器によれば、前記溝内には、前記絶縁性の半導体層よりも比誘電率が低い低誘電率絶縁材料が埋め込まれていることを特徴とする。
【0017】
これにより、光吸収層を導波する光を横方向に効率よく閉じ込めることが可能となり、変調効率を向上させることが可能となる。
また、請求項5記載の半導体電界吸収型変調器によれば、少なくとも光入射端側において前記半導体層上に延伸され、前記光吸収層に電圧を印加する電極を備えることを特徴とする。
【0018】
これにより、横方向光閉じ込め領域に溜まった熱および半導体層に伝達された熱を、電極を介して効率よく放熱させることが可能となり、変調効率の劣化を抑制しつつ、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
また、光入射端側においてのみ半導体層上に電極を延伸させることにより、電極との間に付加される寄生容量の増加を抑制しつつ、光吸収電流が集中的に発生する光入射端近傍の熱放散性を向上させることが可能となり、強度の強い信号光が入射された場合においても、入射端面の劣化を抑制することが可能となる。
【0019】
また、請求項6記載の半導体電界吸収型変調器によれば、前記電極は、前記光入射端側において10μm以上の範囲で前記半導体層を覆うように配置されていることを特徴とする。
これにより、入射端面近傍の光が集中的に吸収される領域を、半導体層を覆うように配置された電極でほぼ完全にカバーすることが可能となり、光吸収電流が集中的に発生する光入射端近傍の熱放散性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、請求項7記載の半導体電界吸収型変調器の製造方法によれば、エピタキシャル成長により、第1クラッド層、光吸収層および第2クラッド層を半導体基板上に順次積層する工程と、前記光吸収層に光を導波させる領域の両側に溝を形成する工程と、前記光吸収層よりも比誘電率が低い低誘電率絶縁材料を前記溝内に埋め込む工程とを備えることを特徴とする。
【0021】
これにより、低誘電率絶縁材料を溝内に埋め込むことで、光を横方向に閉じ込めるために必要な領域に限定して、低誘電率絶縁材料を設けることが可能となる。このため、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、光吸収層で発生した熱を横方向に逃すことが可能となり、変調効率を劣化させることなく、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0022】
また、請求項8記載の半導体電界吸収型変調器の製造方法によれば、エピタキシャル成長により、第1クラッド層、光吸収層および第2クラッド層を半導体基板上に順次積層する工程と、前記第1クラッド層、光吸収層および第2クラッド層をストライプ状にパターニングすることにより、前記半導体基板上にメサストライプ構造を形成する工程と、前記メサストライプ構造の両側の半導体基板上に半絶縁性半導体層を形成することにより、前記メサストライプ構造を前記半絶縁性半導体層で埋め込む工程と、前記メサストライプ構造と前記半絶縁性半導体層との境界に沿って溝を形成する工程と、前記半絶縁性半導体層よりも比誘電率が低い低誘電率絶縁材料を前記溝内に埋め込む工程とを備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、メサストライプ構造と半絶縁性半導体層との境界に沿って溝を形成することで、寄生容量の増加を抑制しつつ、光を横方向に閉じ込めるために必要な領域に限定して、低誘電率絶縁材料を設けることが可能となる。このため、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、光吸収層で発生した熱を横方向に逃すことが可能となり、高速変調を可能としつつ、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る半導体電界吸収型変調器およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体電界吸収型変調器の構成を示す斜視図である。
図1において、n−InP基板11上には、n−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17が順次積層されている。なお、n−InPクラッド層12には、SiドープまたはSnドープすることができ、p−InPクラッド層16には、Znドープすることができる。
【0025】
そして、これらn−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17は、メサストライプ構造を構成するようにパターニングされている。なお、ノンドープInGaAsP光吸収層14としては、例えば、多重量子井戸構造またはバルク構造を用いることができる。
【0026】
そして、メサストライプ構造の両側のn−InP基板11上には半絶縁性InP層18が形成され、n−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17からなるメサストライプ構造は、半絶縁性InP層18により埋め込まれている。なお、半絶縁性InP層18には、例えば、Feドープすることができる。
【0027】
そして、n−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17からなるメサストライプ構造の両側には、このメサストライプ構造と半絶縁性InP層18との境界に沿って溝19が形成されている。なお、溝19の幅は、例えば、2μm程度、溝19の深さは、例えば、3μm程度に設定することができる。
【0028】
そして、溝19内には、半絶縁性InP層18よりも比誘電率の低い埋め込み材料20が埋め込まれている。なお、埋め込み材料20としては、ポリイミドの他、例えば、SOG(spin on glass)などの酸化珪素を用いるようにしてもよい。また、例えば、「Silk(米The Dow Chemical Co.製)」などのPAE(poly aryleneether)系材料、HSQ(hydrogensilsesquioxane)系材料、MSQ(methyl ilsesquioxane)系材料などの有機lowk材料などを用いるようにしてもよい。
【0029】
そして、半絶縁性InP層18上には、酸化珪素膜などの絶縁層21が形成され、絶縁層21には、p−InGaAsコンタクト層17および埋め込み材料20の表面を露出させる開口部が形成されている。そして、絶縁層21上には、絶縁層21に設けられた開口部を介してp−InGaAsコンタクト層17および埋め込み材料20の表面に接触するp側ストライプ電極22が形成されている。ここで、p側ストライプ電極22は、半絶縁性InP層18上にかかるように延伸されるとともに、p側ストライプ電極22には、ボンディング領域23が接続されている。また、n−InP基板11の裏面にはn側電極24が形成されている。
【0030】
そして、メサストライプ構造を有するpinダイオードに逆バイアスを印加することにより、ノンドープInGaAsP光吸収層14の吸収波長を短波長側から長波長側へシフトさせることが可能となる。このため、p側ストライプ電極22への印加電圧を制御することにより、信号光の吸収量を制御することが可能となり、光変調を実現することが可能となる。
【0031】
ここで、メサストライプ構造と半絶縁性InP層18との境界に沿って埋め込み材料20を埋め込むことにより、導波光を横方向に閉じ込めるために必要な領域に限定して、埋め込み材料20を設けることが可能となるとともに、それ以外の領域には、半絶縁性InP層18を残すことが可能となる。
このため、埋め込み材料20の熱容量が小さい場合においても、光吸収層14の周囲の熱容量の低下を抑制することが可能となるとともに、寄生容量の増加を抑制しつつ、光吸収層14で発生した熱を横方向に逃すことが可能となる。
【0032】
この結果、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、光吸収層14で発生した熱の放散性を向上させることが可能となり、高速変調を可能としつつ、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
さらに、絶縁層21上にかかるようにp側ストライプ電極22を延伸することにより、埋め込み材料20に溜まった熱および半絶縁性InP層18に伝達された熱を、p側ストライプ電極22を介して効率よく放熱させることが可能となり、変調効率の劣化を抑制しつつ、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0033】
また、n−InP基板11上のメサストライプ構造および埋め込み材料20以外の領域に半絶縁性InP層18を形成することにより、メサストライプ構造の両側に半絶縁性InP層18が残された場合においても、寄生容量の増大を抑制することが可能となり、素子内部の温度上昇を抑制しつつ、高速変調を実現することが可能となる。
【0034】
なお、図1のn−InP基板11は、n側電極24を介してヒートシンクに接続し、さらにヒートシンクを介して放熱板またはベルチェ素子などの冷却装置に接続することにより、温度の安定性をさらに向上させるようにしてもよい。
図2は、図1の半導体電界吸収型変調器および図7の半導体電界吸収型変調器の局所的な熱容量の試算方法を説明する斜視図、図3は、ポリイミドおよびInPの熱的特性を比較して示す図である。
【0035】
図2において、図1の半導体電界吸収型変調器の端面近傍の局所領域R1の熱容量と、図7の半導体電界吸収型変調器の端面近傍の局所領域R2の熱容量とを比較する。なお、各局所領域R1、R2の大きさは、それぞれ8μm×8μm×8μmとした。また、図1の半導体電界吸収型変調器の溝19の幅は1μm、溝19の深さは3.5μmとした。
【0036】
ここで、図3に示すように、ポリイミドの熱容量は1.05J/K・cm3、InPの熱容量は1.541J/K・cm3であるため、単位体積当たりの熱容量は、InPの方がポリイミドに比べて50%程度大きい。
このため、図1の半導体電界吸収型変調器では、図7の半導体電界吸収型変調器に比べて、熱容量を10%程度増加させることが可能となり、同じ発熱量に対して局所領域R1の温度上昇を10%程度減少させることが可能となる。
【0037】
また、図7の半導体電界吸収型変調器では、ノンドープInGaAsP光吸収層74を含むメサストライプ構造がポリイミド層80により埋め込まれている。このため、ノンドープInGaAsP光吸収層74で発生した熱の流れはポリイミド層80により妨げられ、ノンドープInGaAsP光吸収層74で発生した熱を横方向に逃し難くなる。この結果、ノンドープInGaAsP光吸収層74で発生した熱の流れは縦方向にほぼ限定され、ノンドープInGaAsP光吸収層74で発生した熱は、n−InPクラッド層72およびノンドープInGaAsP光閉じ込め層73を介してn−InP基板71に逃げることしかできない。
【0038】
一方、図1の半導体電界吸収型変調器では、ポリイミドなどの埋め込み材料20が局所的に埋め込まれるとともに、ノンドープInGaAsP光吸収層14を含むメサストライプ構造の両側には、半絶縁性InP層18が残されている。このため、ノンドープInGaAsP光吸収層14で発生した熱は、埋め込み材料20を介して半絶縁性InP層18に流れることができ、横方向にも逃げることができる。この結果、ノンドープInGaAsP光吸収層14で発生した熱を、n−InPクラッド層12およびノンドープInGaAsP光閉じ込め層13を介してn−InP基板11に逃がすことが可能となるだけでなく、埋め込み材料20を介して半絶縁性InP層18にも逃がすことができ、図7の半導体電界吸収型変調器に比べて、素子内部の温度上昇を抑制することができる。
【0039】
また、絶縁層21上にかかるようにp側ストライプ電極22を延伸することにより、半絶縁性InP層18に流れた熱をp側ストライプ電極22に効率よく伝達することが可能となり、熱放散性を向上させることが可能となる。
図4は、図1の半導体電界吸収型変調器の製造方法を示す断面図である。
【0040】
図4(a)において、エピタキシャル成長により、n−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17をn−InP基板11上に順次積層する。なお、エピタキシャル成長法としては、例えば、MBE(molecular beam epitaxy)法、MOCVD(metal organic chemical vaper depiosition)法、あるいはALCVD(atomic layer chemical vaper depiosition)法を用いることができる。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、n−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17をパターニングすることにより、n−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17からなるメサストライプ構造をn−InP基板11上に形成する。
【0042】
次に、図4(c)に示すように、エピタキシャル成長により、n−InP基板11上に半絶縁性InP層18を形成し、n−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17からなるメサストライプ構造を半絶縁性InP層18で埋め込む。
【0043】
次に、図4(d)に示すように、メタン系のガスを用いたRIE(reactive ion etching)などの異方性エッチングを選択的に行うことにより、n−InPクラッド層12、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層13、ノンドープInGaAsP光吸収層14、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層15、p−InPクラッド層16およびp−InGaAsコンタクト層17からなるメサストライプ構造の両側の半絶縁性InP層18をストライプ状に除去し、メサストライプ構造と半絶縁性InP層18との境界に沿って溝19を形成する。
【0044】
次に、図4(e)に示すように、埋め込み材料20を溝19内に埋め込んだ後、CVDなどの方法により、酸化珪素膜などの絶縁層21を成膜する。そして、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて絶縁層21をパターニングすることにより、p−InGaAsコンタクト層17を露出させる開口部を絶縁層21に形成する。
【0045】
そして、スパッタまたは蒸着などの方法により、開口部が形成された絶縁層21上に金属膜を成膜する。そして、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて金属膜をパターニングすることにより、半絶縁性InP層18上にかかるように延伸されたp側ストライプ電極22を形成するとともに、p側ストライプ電極22に接続されたボンディング領域23を形成する。また、n−InP基板11の裏面に金属膜を成膜することにより、n−InP基板11の裏面にn側電極24を形成する。
【0046】
これにより、光を横方向に閉じ込めるために必要な領域に限定して、埋め込み材料20を埋め込むことが可能となるとともに、メサストライプ構造の両側に半絶縁性InP層18を残すことが可能となる。このため、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、光吸収層14の周囲の熱容量の低下を抑制することが可能となるとともに、光吸収層14で発生した熱を横方向に逃すことが可能となり、高速変調を可能としつつ、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態に係る半導体電界吸収型変調器の構成を示す斜視図である。
図5において、n−InP基板31上には、n−InPクラッド層32、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層33、ノンドープInGaAsP光吸収層34、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層35、p−InPクラッド層36およびp−InGaAsコンタクト層37が順次積層されている。なお、n−InPクラッド層32には、SiドープまたはSnドープすることができ、p−InPクラッド層36には、Znドープすることができる。
【0048】
そして、これらn−InPクラッド層32、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層33、ノンドープInGaAsP光吸収層34、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層35、p−InPクラッド層36およびp−InGaAsコンタクト層37は、メサストライプ構造を構成するようにパターニングされている。なお、ノンドープInGaAsP光吸収層34としては、例えば、多重量子井戸構造またはバルク構造を用いることができる。
【0049】
そして、メサストライプ構造の両側のn−InP基板31上には半絶縁性InP層38が形成され、n−InPクラッド層32、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層33、ノンドープInGaAsP光吸収層34、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層35、p−InPクラッド層36およびp−InGaAsコンタクト層37からなるメサストライプ構造は、半絶縁性InP層38により埋め込まれている。なお、半絶縁性InP層38には、例えば、Feドープすることができる。
【0050】
そして、n−InPクラッド層32、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層33、ノンドープInGaAsP光吸収層34、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層35、p−InPクラッド層36およびp−InGaAsコンタクト層37からなるメサストライプ構造の両側には、このメサストライプ構造と半絶縁性InP層38との境界に沿って溝39が形成されている。なお、溝39の幅は、例えば、2μm程度、溝39の深さは、例えば、3μm程度に設定することができる。
そして、溝39内には、半絶縁性InP層38よりも比誘電率の低い埋め込み材料40が埋め込まれている。なお、埋め込み材料40としては、ポリイミドの他、例えば、SOG(spin on glass)などの酸化珪素を用いるようにしてもよい。
【0051】
そして、半絶縁性InP層38上には、酸化珪素膜などの絶縁層41が形成され、絶縁層41には、p−InGaAsコンタクト層37および埋め込み材料40の表面を露出させる開口部が形成されている。そして、絶縁層41上には、絶縁層41に設けられた開口部を介してp−InGaAsコンタクト層37の表面に接触するp側ストライプ電極42が形成されている。ここで、p側ストライプ電極42には、光入射端側において半絶縁性InP層38上にかかるように延伸された幅広部44が設けられるとともに、ボンディング領域43が接続されている。また、n−InP基板31の裏面にはn側電極45が形成されている。なお、幅広部44の形状は、光入射端に向かって裾を引くようにすることができ、例えば、幅広部44の形状をラッパ状とすることができる。
【0052】
そして、メサストライプ構造を有するpinダイオードに逆バイアスを印加することにより、ノンドープInGaAsP光吸収層34の吸収波長を短波長側から長波長側へシフトさせることが可能となる。このため、p側ストライプ電極42への印加電圧を制御することにより、信号光の吸収量を制御することが可能となり、光変調を実現することが可能となる。
【0053】
ここで、メサストライプ構造と半絶縁性InP層38との境界に沿って埋め込み材料40を埋め込むことにより、導波光を横方向に閉じ込めるために必要な領域に限定して、埋め込み材料40を設けることが可能となるとともに、それ以外の領域には、半絶縁性InP層38を残すことが可能となる。
このため、埋め込み材料40の熱容量が小さい場合においても、光吸収層34の周囲の熱容量の低下を抑制することが可能となるとともに、寄生容量の増加を抑制しつつ、光吸収層34で発生した熱を横方向に逃すことが可能となる。
【0054】
この結果、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、光吸収層34で発生した熱の放散性を向上させることが可能となり、高速変調を可能としつつ、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
また、p側ストライプ電極42を光入射端側においてのみ半絶縁性InP層38上に延伸させることにより、p側ストライプ電極42との間に付加される寄生容量の増加を抑制しつつ、光吸収電流が集中的に発生する光入射端近傍の熱放散性を向上させることが可能となり、強度の強い信号光が入射された場合においても、入射端面の劣化を抑制することが可能となる。
【0055】
なお、p側ストライプ電極42は、光入射端側において10μm以上の範囲で半絶縁性InP層38を覆うように配置することが好ましい。
これにより、入射端面近傍の光が集中的に吸収される領域を、半絶縁性InP層38を覆うように配置されたp側ストライプ電極42でほぼ完全にカバーすることが可能となり、光吸収電流が集中的に発生する光入射端近傍の熱放散性を向上させることが可能となる。
【0056】
さらに、n−InP基板31上のメサストライプ構造および埋め込み材料40以外の領域に半絶縁性InP層38を形成することにより、寄生容量を低減することが可能となり、高速変調を実現することが可能となる。
図6は、本発明の第3実施形態に係る半導体電界吸収型変調器の製造方法を示す断面図である。
【0057】
図6(a)において、エピタキシャル成長により、n−InPクラッド層52、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層53、ノンドープInGaAsP光吸収層54、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層55、p−InPクラッド層56およびp−InGaAsコンタクト層57をn−InP基板51上に順次積層する
【0058】
次に、図6(b)に示すように、メタン系のガスを用いたRIEなどの異方性エッチングを選択的に行うことにより、n−InPクラッド層52、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層53、ノンドープInGaAsP光吸収層54、ノンドープInGaAsP光閉じ込め層55、p−InPクラッド層56およびp−InGaAsコンタクト層57をストライプ状に除去し、溝59で挟み込まれたメサストライプ構造58をn−InP基板51上に形成する。
【0059】
次に、図6(c)に示すように、埋め込み材料60を溝59内に埋め込む。
次に、図6(d)に示すように、CVDなどの方法により、酸化珪素膜などの絶縁層61を成膜する。そして、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて絶縁層61をパターニングすることにより、メサストライプ構造58のp−InGaAsコンタクト層57を露出させる開口部を絶縁層61に形成する。
【0060】
そして、スパッタまたは蒸着などの方法により、開口部が形成された絶縁層61上に金属膜を成膜する。そして、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて金属膜をパターニングすることにより、メサストライプ構造58の両側に残されたp−InGaAsコンタクト層57上にかかるように延伸されたp側ストライプ電極62を形成するとともに、p側ストライプ電極62に接続されたボンディング領域63を形成する。また、n−InP基板51の裏面に金属膜を成膜することにより、n−InP基板51の裏面にn側電極64を形成する。
【0061】
これにより、メサストライプ構造58の両側に溝59を形成することで、メサストライプ構造58の両側に半導体層を残すことを可能としつつ、埋め込み材料60を埋め込むことが可能となる。このため、製造工程の煩雑化を抑制しつつ、光吸収層54の周囲の熱容量の低下を抑制することが可能となるとともに、光吸収層54で発生した熱を横方向に逃すことが可能となり、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
なお、上述した実施形態では、メサストライプ構造を例にとって説明したが、メサストライプ構造以外にも、リブ導波路構造、リッジ導波路構造またはストリップ装荷導波路構造などに適用するようにしてもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、InGaAsP系材料を用いた構成を例にとって説明したが、本発明は必ずしもInGaAsP系に限定されることなく、例えば、GaAs/AlGaAs系、InGaAs/InAlGaAs系、あるいはGaSb/AlGaSb系、GaInNAs系などに適用するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、半導体電界吸収型変調器を単体で構成する方法について説明したが、半導体電界吸収型変調器を他の半導体デバイスとモノリシック集積化するようにしてもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、横方向光閉じ込め効果を維持しつつ、横方向光閉じ込め層の形成範囲を限定することが可能となる。このため、光吸収層の周囲の熱容量の低下を抑制することが可能となるとともに、光吸収層で発生した熱を横方向に効率よく逃がすことが可能となり、変調効率を劣化させることなく、素子内部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る半導体電界吸収型変調器の構成を示す斜視図である。
【図2】 図1の半導体電界吸収型変調器および図7の半導体電界吸収型変調器の局所的な熱容量の試算方法を説明する斜視図である。
【図3】 ポリイミドおよびInPの熱的特性を比較して示す図である。
【図4】 図1の半導体電界吸収型変調器の製造方法を示す断面図である。
【図5】 本発明の第2実施形態に係る半導体電界吸収型変調器の構成を示す斜視図である。
【図6】 本発明の第3実施形態に係る半導体電界吸収型変調器の製造方法を示す断面図である。
【図7】 従来の半導体電界吸収型変調器の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
11、31、51 n−InP基板
12、32、52 n−InPクラッド層
13、15、33、35、53、55 InGaAsP光閉じ込め層
14、34、54 InGaAsP光吸収層
16、36、56 p−InPクラッド層
17、37、57 p−InGaAsコンタクト層
18、38 半絶縁性InP層
19、39、59 溝
20、40、60 埋め込み材料
21、41、61 絶縁層
22、42、62 p側ストライプ電極
23、43 ボンディング領域
24、45、64 n側電極
R1 温度上昇領域
44 幅広領域
58 メサストライプ構造

Claims (3)

  1. 印加電圧に基づいて吸収係数が変化する光吸収層を含むメサストライプ構造が形成された半導体基板と、
    前記半導体基板上に形成され、前記メサストライプ構造を埋め込む半絶縁性の半導体層と、
    前記メサストライプ構造と前記半絶縁性の半導体層との境界に沿って形成された溝内に、前記半絶縁性の半導体層よりも比誘電率が低い低誘電率絶縁材料が埋め込まれ、前記光吸収層を導波する光を横方向に閉じ込めるとともに、前記光吸収層で発せられる熱を前記半絶縁性の半導体層に熱伝導させる領域と、
    光入射端側において前記光吸収層上から前記低誘電率絶縁材料が埋め込まれた領域上を通って前記半絶縁性の半導体層上に至るように延伸され、さらに前記溝に沿って前記半絶縁性の半導体層上の一部を覆うように形成され、前記光吸収層に電圧を印加するとともに、前記光吸収層で発せられる熱を前記メサストライプ構造の上部から前記半絶縁性の半導体層へ熱伝導させる電極と、
    を備えることを特徴とする半導体電界吸収型変調器。
  2. 前記電極は、前記光入射端側において10μm以上の範囲で前記半絶縁性の半導体層を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1記載の半導体電界吸収型変調器。
  3. エピタキシャル成長により、第1クラッド層、光吸収層および第2クラッド層を半導体基板上に順次積層する工程と、
    前記第1クラッド層、光吸収層および第2クラッド層をストライプ状にパターニングすることにより、前記半導体基板上にメサストライプ構造を形成する工程と、
    前記メサストライプ構造の両側の半導体基板上に半絶縁性の半導体層を形成することにより、前記メサストライプ構造を前記半絶縁性の半導体層で埋め込む工程と、
    前記メサストライプ構造と前記半絶縁性の半導体層との境界に沿って溝を形成する工程と、
    前記半絶縁性の半導体層よりも比誘電率が低い低誘電率絶縁材料を前記溝内に埋め込む工程と、
    光入射端側において前記光吸収層上から前記低誘電率絶縁材料が埋め込まれた領域上を通って前記半絶縁性の半導体層上に至るように延伸され、さらに前記溝に沿って前記半絶縁性の半導体層上の一部を覆うように電極を形成する工程と、
    を備えることを特徴とする半導体電界吸収型変調器の製造方法
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