JP4355460B2 - 安定化モノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステル - Google Patents
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Description
(技術分野)
本発明は、モノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステルをベースとする組成物、その製造方法、および二液型ポリウレタン系におけるポリイソシアネート用反応性成分としてのその使用に関する。
【0002】
(背景技術)
二液型(2C、two-component)ポリウレタン塗料は、従来からよく知られており、バインダーとして、ポリイソシアネート成分と、このイソシアネート基に反応性の成分、特にポリヒドロキシル成分とを組み合わせて含有している。ポリウレタン塗料は、硬質で弾性的で耐摩耗性および耐溶剤性を示すような、高品質の塗膜の形成に適しており、特に耐候性を示すように、配合することもできる。
【0003】
近年、二液型ポリウレタン塗料の分野において、特定のエステル基を含む二級ポリアミンの使用が確立されており、このポリアミンは、ラッカーポリイソシアネートと組み合わせることによって、低溶剤または無溶剤ハイソリッド型塗料用のバインダーとして特に好適であり、低温における塗料の迅速な硬化が可能である。
【0004】
二級ポリアミンは、例えばEP-A 0403921に開示されているようないわゆるポリアスパラギン酸エステルである。二級ポリアミンは、二液型PUR塗料において、単独の形態またはイソシアネート反応性の他の成分と混合した形態で、使用されており、例えば、次のような特許文献に開示されている:EP-A 0403921、EP-A 0639628、EP-A 0667362、EP-A 0689881、US-A 5214087、EP-A 0699696、EP-A 0596360、EP-A 0893458、DE-A 19701835およびUS-A 5243012。
【0005】
ポリアスパラギン酸エステルの合成は、例えば、一級アミンを、マレイン酸またはフマル酸エステル中に存在するような、ビニロギーカルボニル化合物の活性炭素二重結合に対し付加することによって実施している:関連文献(Houben Weyl, Meth. d. Org. Chemie Vol. 11/1, 272(1957);Usp. Khim. 1969, 38, 1933)、参照。
【0006】
この反応は、例えば、60℃で攪拌下、24時間の合成の間に終了しないことが見い出された。この反応の転化速度は、使用した一級ポリアミンの種類に決定的に依存する。1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンを使用した場合、1日経過後の転化率(遊離、未反応マレイン酸およびフマル酸エステルの濃度を基準に、測定)は、90〜93%である。これに対し、立体障害アミノ基を有するような脂環式ポリアミン(例えば、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン)を使用した場合、その転化率は、77%にすぎない。完全またはほぼ完全な転化は、数ヶ月後にしか得られない。
【0007】
これらの不完全にしか反応していない生成物は、未反応の一級アミノ基と、おそらくは遊離の一級ポリアミンと、対応する量の未反応マレイン酸またはフマル酸エステルとを含有する。このため、生成物の製造後、このような物質は、その保存期間の間に反応を継続し、その結果、反応混合物の粘度は、転化が完了するまで、絶えず増加する。加えて、イソシアネートに対する生成物の反応性は、一級アミノ基の濃度減少につれて減少する。したがって、再現性のあるポットライフの確立を確実にすることはできない。
【0008】
以上の問題に関し、種々の解決法が提案されているが、それらの解決法は、まだ最終的に満足のいく結果が得られていない。
【0009】
第1に、原則として、反応時間を延長するかまたは反応温度を高くすることは可能である。前者の解決法は、経済的理由から除外される。反応温度を例えば80℃またはさらには100℃に昇温させると、得られる生成物は、そのカラースケールが著しく増加する。
【0010】
EP-A 0667362およびUS-A 5243012の開示によれば、ポリイソシアネート/ポリアスパラギン酸エステル系の二液型PURのポットライフは、ゼオライトや有機スズ(IV)化合物の添加によって、延長している。しかし、この方法では、ポットライフに関して、わずかに改善しているに過ぎず、他の特性は、悪影響を受け、例えば、ラッカーの濁りを生じたり、バインダーにおいて、NCO/OH反応が加速されたりする。
【0011】
US-A 5821326の開示によれば、モノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステルを生成する反応方法は、5員環芳香族化合物によって触媒することができる。使用された触媒は、事実、反応成分のより迅速な転化を可能にするが、それにもかかわらず、開示の実施例のいずれにおいても、反応混合物の完全な転化は、60℃で4日間の反応時間でも達成することができない。その後、混合生成物を保存する間に、その粘度は、不完全な反応に起因して、増加する。
【0012】
US-A 5216170の開示によれば、過剰のフマル酸エステルは、留去によって反応系から回収している。しかし、この方法は、反応時間が長く、エネルギー消費も大きいため、技術的に実施可能な方法ではない。
【0013】
したがって、当該分野では、得られるバインダーおよび/または塗料の品質に対し悪影響を及ぼすことなく、粘度安定性も含め、改善された保存安定性を有するような、モノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステル系が現在も必要とされている。
【0014】
(発明の開示)
本発明によれば、保存期間の間に、不完全な反応反応混合物に対しチオール化合物を添加すると、得られる生成物は、その粘度増加が著しく小さくなりかつ最終生成物は、使用したチオール化合物による悪臭副作用を被らないことが判明した。本発明に従い、チオール化合物を添加すると、ビニロギーカルボニル化合物は、その未反応部分が、一級アミンとのさらなる反応に利用されることがない。
【0015】
したがって、本発明は、式(I):
【化9】
〔式中、
Xは、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するm価の有機基
(この有機基は、脂肪族あるいはシクロ脂肪族基またはアリール脂肪族基結合一級アミノ基を有する分子量60〜6,000の対応するモノアミンまたはポリアミンから、一級アミノ基を除去することによって得ることができ、さらに、イソシアネート基に反応性であるそして/または100℃までの温度で不活性である官能基を有することができる)、
R1およびR2は、同じまたは相互に異なる有機基、好適には、1〜18個の炭素原子を有する同じまたは相互に異なるアルキル基、特に好適には、1〜8個の炭素原子を有する同じまたは相互に異なるアルキル基、および
mは、≧1の整数(好適には、≧2の整数、特に、2の整数)である。〕
で示されるモノアスパラギン酸エステルまたはポリアスパラギン酸エステルと、付加生成物とを含んでなり、
この付加生成物は、
式(II):
【化10】
〔式中、基R1およびR2は、前記と同じ。〕
で示される化合物(成分A)と、式(III):
【化11】
〔式中、
R3は、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するn価の有機基
(この有機基は、イソシアネートに反応性または不活性である、他の官能基も有することができる。)、
nは、≧1および≦4の整数である。〕
で示されるチオール化合物(成分B)の付加生成物である、
ことを特徴とする組成物を提供する。
【0016】
本発明の組成物は、改善された粘度安定性を有する組成物である。
【0017】
また本発明は、上記の組成物(式(I)の化合物と、付加生成物とを含んでなる前記組成物)の製造法であって、
式(I):
【化12】
〔式中、
Xは、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するm価の有機基
(この有機基は、脂肪族あるいはシクロ脂肪族基またはアリール脂肪族基結合一級アミノ基を有する分子量60〜6,000の対応するモノアミンまたはポリアミンから、一級アミノ基を除去することによって得ることができ、さらに、イソシアネート基に反応性であるそして/または100℃までの温度で不活性である官能基を有することができる)、
R1およびR2は、同じまたは相互に異なる有機基、好適には、1〜18個の炭素原子を有する同じまたは相互に異なるアルキル基、特に好適には、1〜8個の炭素原子を有する同じまたは相互に異なるアルキル基、および
mは、≧1の整数(好適には、≧2の整数、特に、2の整数)である。〕
で示されるモノアスパラギン酸エステルまたはポリアスパラギン酸エステルを、
式(IV):
【化13】
〔式中、Xおよびmは前記と同じ。〕
で示されるモノアミンまたはポリアミン(成分C)と、式(II):
【化14】
〔式中、基R1およびR2は前記と同じ。〕
で示される化合物(成分A)と反応させることによって生成し、この反応に対し、二重結合の残留含有量が、この反応の開始時に存在する二重結合を基準に、2〜15%になった状態で、式(III):
【化15】
〔式中、
R3は、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するn価の有機基(この有機基は、イソシアネートに反応性または不活性である、他の官能基も有することができる)、
nは、≧1および≦4の整数である。〕
で示される少なくとも1つのチオール化合物(成分B)を、添加する
ことを特徴とする方法を提供する。
【0018】
式(I)で示される、モノアスパラギン酸エステルおよび/またはポリアスパラギン酸エステルの本発明の製造方法は、好適には二段階で行われる。第一段階では、成分AおよびC は、0℃〜100℃、好適には20℃〜80℃、特に好適には20℃〜60℃の温度にて、(成分Cの一級アミノ基の当量)/(成分AのC=C二重結合の当量)の比率1:1.2〜1.2:1、好適には1:1.05〜1.05:1で、反応の開始時に存在する二重結合に対して測定される二重結合の残留含有量が2〜15%、好適には5〜10%になるまで、反応させる。第二段階において、未反応二重結合当量の成分Aと、成分Bのチオール基とは、0℃〜100℃、好適には20℃〜80℃、特に好適には20℃〜60℃の温度にて、モル比1.5:1〜1:1、好適には1.2:1〜1:1、特に好適には1.05:1で反応させる。
【0019】
本発明の方法のさらに好適な実施態様によれば、モノアスパラギン酸および/またはポリアスパラギン酸エステルの製造法は、三段階の製造である。この方法によれば、式(IV)の2種類のアミンを成分C1およびC2として使用する。第一段階において、成分AおよびC1は、0℃〜100℃、好適には20℃〜80℃、特に好適には20℃〜60℃の温度で、(成分C1の一級アミノ基の当量)/(成分AのC=C二重結合の当量)の比率1:1.3〜1:2、好適には1:1.5〜1:1.7で、一級アミノ基の残留含有量が0〜15%、好適には0〜10%になるまで反応させる。次に、第二段階において、得られた混合物と、成分C2とは、0℃〜100℃、好適には20℃〜80℃、特に好適には20℃〜60℃の温度にて、成分C1およびC2のアミノ基の合計当量)/(成分Aの二重結合の当量)の比率が1:1.2〜1.2:1、好適には1:1.05〜1.05:1になるまで、反応させる。この反応は、2〜15%、好適には5〜10%の二重結合が残留するまで行わう。第三段階において、未反応二重結合当量の成分Aと、成分Bのチオール基とは、モル比1.5:1〜1:1、好適には1.2:1〜1:1、特に好適には1.05:1にて、0℃〜100℃、好適には20℃〜80℃、特に好適には20℃〜60℃の温度で反応させる。
【0020】
本発明の方法によれば、一般に、前記成分Cとして、少なくとも1個の一級アミノ基を有する式(IV)で示される既知のモノアミンおよびポリアミンを、全て、使用することができる。
【0021】
式(IV)(m=1)の一級モノアミンとして、例えば、イソシアネート基に反応性または不活性である、1個またはそれ以上の他の官能基を有機基Xにおいて有するモノアミンが特に好適である。その例は、アミノ官能性シラン、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、またはアミノアルコール、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミンまたはイソプロパノールアミンである。
【0022】
本発明の方法によれば、好適には、mが2またはそれ以上の整数である式(IV)のポリアミンを成分Cとして使用する。かかる化合物の例は、好適には、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(Dytek(登録商標)A、DuPont)、1,6-ジアミノヘキサン、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンまたはトリアミノノナンである。
【0023】
脂肪族基結合一級アミノ基を有する高分子量ポリエーテルポリアミンも好適である(例えば、Huntsman、Jeffamin(登録商標))。
【0024】
本発明によれば、特に好適には、mが2であって、Xが少なくとも1つの炭素環を有する環状炭化水素基である式(IV)のポリアミンを使用することができる。特に好適なジアミンの例は、次のとおりである:1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチル-シクロヘキサン(IPDA)、2,4-および/または2,6-ヘキサヒドロトルイレンジアミン(H6TDA)、イソプロピル-2,4-ジアミノシクロヘキサンおよび/またはイソプロピル-2,6-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、2,4'-および/または4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin(登録商標)C 260、BASF AG)、メチル基をコア置換基として有する異性ジアミノジシクロヘキシルメタン(=C-モノメチルジアミノジシクロヘキシルメタン)、3(4)-アミノメチル-1-メチルシクロヘキシルアミン(AMCA)および芳香脂肪族ジアミン、例えば1,3-ビス-(アミノメチル)ベンゼンである。
【0025】
本発明の前記成分Aとして、R1およびR2が1〜18個の炭素原子を有する同じまたは異なる有機基である、式(II)のマレイン酸またはフマル酸エステルを使用することができる。好適には、R1およびR2は、相互に独立して、1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基である。
【0026】
成分Aとして好適である化合物の例は、マレイン酸ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ-n-プロピルまたはイソプロピルエステル、ジ-n-ブチルエステル、ジ-2-エチルヘキシルエステルまたは対応するフマル酸エステルである。
【0027】
式(III)のメルカプト化合物は、本発明の成分Bとして使用することができる。好適なメルカプト化合物は、例えば、次のとおりである:トリメチロールプロパン-トリ-(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトール-テトラ-(3-メルカプトプロピオネート)、グリコール-ジ-(3-メルカプトプロピオネート)、グリコール-ジメルカプトアセテート、トリメチロールプロパン-トリチオグリコレート、2-エチルヘキシルチオグリコレート、n-プロピルチオグリコレートおよび/またはイソプロピルチオグリコレート、n-、イソ-および/またはtert.-ブチルチオグリコレート、メルカプトジエチルエーテル、シクロヘキシルメルカプタン、エタンジチオール、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、ドデカンジチオール、ジドデカンジチオール、ジメルカプトベンゾチアゾール、アリルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、2,3-ジメルカプトプロパノール、α,α'-ジメルカプト-p-キシレン、チオサリチル酸、チオ乳酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、メルカプトピリジン、ジチオエリトリトール、6-エトキシ-2-メルカプトベンゾチアゾール、d-リモネン-ジメルカプタン、およびMarton Int. GmbHによって商品名LPで市販されている液体ポリ硫化物、またはそれらの混合物。
【0028】
成分Bとして、チオグリコール酸と、少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールとのエステルを、特に好適に使用することができる。イソシアネートに反応性の基をさらに有するチオールも好適である。その例は、次のとおりである:2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、エチレングリコールモノチオグリコレート、2-ヒドロキシエチル-3-メルカプトプロピオネート、6-メルカプト-1-ヘキサノール、グリセロールモノチオグリコレート、4-メルカプトブタノール、11-メルカプト-1-ウンデカノール、システイノールおよびグリセリル-3-メルカプトプロピオネート。146g/モルよりも大きい分子量を有する脂肪族一官能価チオール、例えば、1-オクタンチオール、ドデカンチオールおよびジドデカンチオールも好適である。前記チオール化合物の混合物はあまり適していない。
【0029】
本発明によれば、式(I)のモノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステルの製造は、溶液中でも無溶剤法でも行うことができる。しかし、溶剤の添加は、例えば粘度を減少させるために、合成の終了後にだけ行うこともできる。原則として、全ての有機溶剤を溶剤として使用できるが、塗料技術に使用される溶剤を使用するのが当然好適な。かかる溶剤の例を以下に記載するが、それらに限定されるわけではない:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n-ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、トルエン、キシレン、および高級芳香族溶剤(Exxon-Chemie、Solvesso(登録商標))。
【0030】
本発明の好適な一具体例によれば、本発明の組成物は、
a)98〜55重量%の、式(I)のモノアスパラギン酸エステルまたはポリアスパラギン酸エステル、
b)45〜1重量%の、式(II)の成分Aと式(III)の成分Bの付加生成物、
c)0〜3重量%の、式(II)の遊離成分A、
d)0〜1重量%の、式(IV)の遊離成分C、
を含有し、但し、a)〜d)の合計は100重量%であり、
所望により式(III)の遊離成分B、および所望により一般的な助剤および添加剤を含有する。
【0031】
本発明の特に好適な一具体例によれば、本発明の組成物は、
a)97〜71重量%の、式(I)のモノアスパラギン酸エステルまたはポリアスパラギン酸エステル、
b)29〜3重量%の、式(II)の成分Aと、式(III)の成分Bの付加生成物、
c)0〜0.5重量%の、式(II)の遊離成分A、
d)0〜0.5重量%の、式(IV)の遊離成分C、
を含有し、但し、a)〜d)の合計は100重量%であり、
所望により式(III)の遊離成分B、および所望により一般的な助剤および添加剤を含有する。
【0032】
本発明の組成物は、合成プロセスの完了後、直接、使用することができ、反応性については、数ヶ月間にわたって安定であり、著しく改善された粘度安定性を示す。本発明の組成物は、その固有粘度が、従来法によって製造されるモノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステルと比較して、低いため、低溶剤型および無溶剤型の二液型ポリウレタンラッカーおよび塗料において、ポリイソシアネートに対する有用な反応体である。
【0033】
本発明は、本発明の組成物についての、二液型ポリウレタン系における反応成分としての使用を提供する。
【0034】
本発明の組成物を含有する二液型ポリウレタン系は、塗膜形成用の塗料として使用することができる。
本明細書の当初の開示は、少なくとも下記の態様を包含する。
〔1〕 式(I):
【化1】
〔式中、
Xは、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するm価の有機基
(この有機基は、(シクロ)脂肪族基またはアリール脂肪族基結合一級アミノ基を有する分子量60〜6,000の対応するモノアミンまたはポリアミンから、一級アミノ基を除去することによって得ることができ、さらに、イソシアネート基に反応性であるそして/または100℃までの温度で不活性である官能基を有することができる)、
R 1 およびR 2 は、同じまたは相互に異なる有機基、好適には、1〜18個の炭素原子を有する同じまたは相互に異なるアルキル基、特に好適には、1〜8個の炭素原子を有する同じまたは相互に異なるアルキル基、および
mは、≧1の整数である。〕
で示されるモノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステルと、付加生成物とを含んでなり、
この付加生成物は、
式(II):
【化2】
〔式中、基R 1 およびR 2 は、前記と同じ。〕
で示される化合物(成分A)と、式(III):
【化3】
〔式中、
R 3 は、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するn価の有機基
(この有機基は、イソシアネートに反応性または不活性である、他の官能基も有することができる。)、
nは、≧1および≦4の整数である。〕
で示されるチオール化合物(成分B)とを含んでなる、
ことを特徴とする組成物。
〔2〕 〔1〕に記載の組成物を製造する方法であって、式(I):
【化4】
〔式中、
Xは、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するm価の有機基
(この有機基は、(シクロ)脂肪族基またはアリール脂肪族基結合一級アミノ基を有する分子量60〜6,000の対応するモノアミンまたはポリアミンから、一級アミノ基を除去することによって得ることができ、さらに、イソシアネート基に反応性であるそして/または100℃までの温度で不活性である官能基を有することができる)、
R 1 およびR 2 は、同じまたは相互に異なる有機基、好適には、1〜18個の炭素原子を有する同じまたは相互に異なるアルキル基、特に好適には、1〜8個の炭素原子を有する同じまたは相互に異なるアルキル基、および
mは、≧1の整数である。〕
で示されるモノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステルを、
式(IV):
【化5】
〔式中、Xおよびmは前記と同じ。〕
で示されるモノアミンまたはポリアミン(成分C)と、式(II):
【化6】
〔式中、基R 1 およびR 2 は前記と同じ。〕
で示される化合物(成分A)とを反応させることにより調製する際、この反応に対し、二重結合の残留含有量が、この反応の開始時に存在する二重結合を基準に、2〜15%になった状態で、式(III):
【化7】
〔式中、
R 3 は、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するn価の有機基(この有機基は、イソシアネートに反応性または不活性である、他の官能基も有することができる)、
nは、≧1および≦4の整数である。〕
で示される少なくとも1つのチオール化合物(成分B)を、添加する
ことを特徴とする方法。
〔3〕 前記反応に対し、二重結合の残留含有量が、この反応の開始時に存在する二重結合を基準に、5〜10%になった状態で、式(III):
【化8】
〔式中、
R 3 は、所望により1個またはそれ以上のヘテロ原子を有するn価の有機基(この有機基は、イソシアネートに反応性または不活性である、他の官能基も有することができる)、
nは、≧1および≦4の整数である。〕
で示される少なくとも1つのチオール化合物(成分B)を、添加する〔2〕記載の方法。
〔4〕 第一段階で、成分Aと成分Cは、(成分Cの一級アミノ基当量)/(成分AのC=C二重結合当量)の比率=1:1.2〜1.2:1で、反応させ、
第二段階で、未反応二重結合当量の成分Aと、成分Bのチオール基とは、モル比1.5:1〜1:1で反応させる〔2〕記載の方法。
〔5〕 当該組成物は、
a)98〜55重量%の、式(I)のモノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステル、
b)45〜1重量%の、式(II)の成分Aと式(III)の成分Bとからなる付加生成物、
c)0〜3重量%の、式(II)の遊離成分A、および
d)0〜1重量%の、式(IV)の遊離成分C
を含有し、但し、a)〜d)の合計は100重量%であり、
当該組成物は、所望により式(III)の遊離成分Bおよび既知の助剤および添加剤を含有する〔1〕記載の組成物。
〔6〕 〔1〕記載の組成物についての、二液型ポリウレタン系における反応成分としての使用。
〔7〕 〔1〕記載の組成物についての、ポリウレタン製造のための使用。
〔8〕 〔1〕記載の組成物を含んでなる二液型ポリウレタン系。
【0035】
(実施例)
パーセントは、全て、特に断らない限り、重量パーセントである。
【0036】
A )ポリアスパラギン酸エステルの分析
転化率は、1H-NMR分光分析法(400MHz)によって、フマル酸エステル(このエステルは、塩基性触媒条件下、マレイン酸エステルの転位によって形成)およびアスパラギン酸エステルについてのメチレンプロトンからの信号に基づき、決定することができる。サンプルは、CDCl3に溶解して、スペクトルを記録した。
【0037】
粘度は、円錐平板型の粘度計(Physika)によって測定した。剪断勾配は40秒-1であった。
【0038】
B )ポリアスパラギン酸エステルの製造
I )ポリアスパラギン酸エステルについての一般的製造法(比較例)
窒素雰囲気下、1モル(2g当量)のジアミン(成分C)を、攪拌機、滴下漏斗、環流冷却器および内部温度計を備えた1L容の四口フラスコ内に入れ、次いで、2モルのマレイン酸ジエチルエステル(344.36g、成分A)を、撹拌下、反応混合物の温度を50℃に維持しながら(ただし、50℃を大きく越えないように調節)添加した。次に、反応混合物を、60℃でさらに60〜180時間攪拌した。反応時間全体にわたり、窒素を緩やな流れで反応混合物全体にわたって通す。
【0039】
I.1 )比較例 1
前記方法I)と同様な方法で製造した。
保存期間: 4 週間
50℃で4週間保存した後、生成物は、97%の転化率および1,400 mPas/23℃の粘度を有する。
【0040】
I.2 )比較例 2
保存期間: 3 週間
50℃で3週間保存した後、生成物は、95%の転化率および1,630 mPas/23℃の粘度を有する。
【0041】
II )チオグリコール化合物の添加条件下、ポリアスパラギン酸エステルの一般 的製造法(本発明の実施例)
前記I)と同様な方法で行った。反応の終了後、生成物を室温に冷却し、チオール化合物を、残留フマル酸ジエチルエステル(90モル%)に、反応温度が60℃を越えないように調節しながら、添加した。得られた混合物を室温でさらに4時間攪拌し、デカンテーションした。
【0042】
II.1 )実施例 3 (本発明の実施例)
以下の本発明の実施例3、4、5および6では、90時間の反応期間後にチオール化合物を添加する。
保存期間:
室温で3ヶ月: 転化率=99%;粘度:1,200 mPas/23℃
50℃で4週間: 転化率=99%;粘度:1,200 mPas/23℃
【0043】
II.2 )実施例 4 (本発明の実施例)
保存期間:
室温で3ヶ月: 転化率=99%;粘度:1000 mPas/23℃
50℃で4週間: 転化率=99%;粘度:1080 mPas/23℃
【0044】
II.3 )実施例 5 (本発明の実施例)
保存期間:
50℃で3週間: 転化率=99%;粘度:1,000 mPas/23℃
【0045】
II.4 )実施例 6 (本発明の実施例)
保存期間:
室温で3ヶ月: 転化率=99%;粘度:980 mPas/23℃
【0046】
C )被覆組成物のゲル化時間
以下の実施例では、比較例1および2並びに実施例3〜5に記載のポリアスパラギン酸エステルと、ポリイソシアネートとを組み合わせて、塗料を製造した。1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートから製造されるポリイソシアネート(Bayer AgからのDesmodur(登録商標)N 3600、粘度:1,200 mPas/23℃、NCO含有量:23.4%、当量重量:180g)と、ポリアスパラギン酸エステルとを、NCO:NHの比率1.05:1で反応させて、塗料を製造し、ゲル化時間を測定した。ゲル化時間は、混合物を攪拌することができなくなるまで2つの成分を混合する時間である。
【0047】
【表1】
塗料組成物のゲル化時間
* 保存時間は、各場合において、室温で3ヶ月である。
【0048】
表1に示した混合物のゲル化時間に関し、塗料7、8、9および10(比較例)と、塗料11〜14、15および16(本発明のアスパラギン酸エステル用いて製造)とを比較すると、本発明のアスパラギン酸エステルは、高い生成物安定性を示すことが判明した。
【0049】
D )ショアー硬度の測定
DIN 53505に従い、測定した。
Claims (6)
- 式(I):
Xは、1個またはそれ以上のヘテロ原子を有してよいm価の有機基
(この有機基は、脂肪族あるいはシクロ脂肪族基またはアリール脂肪族基結合一級アミノ基を有する分子量60〜6,000の対応するモノアミンまたはポリアミンから、一級アミノ基を除去することによって得ることができ、さらに、イソシアネート基に反応性であるそして/または100℃までの温度で不活性である官能基を有することができる)、
R1およびR2は、同じまたは相互に異なる有機基、および
mは、≧1の整数である。〕
で示されるモノアスパラギン酸エステルまたはポリアスパラギン酸エステルと、付加生成物とを含んでなる二液型ポリウレタン系組成物におけるポリイソシアネート反応性成分として使用する組成物であって、
この付加生成物は、
式(II):
で示される化合物(成分A)と、式(III):
R3は、1個またはそれ以上のヘテロ原子を有してよいn価の有機基
(この有機基は、イソシアネートに反応性または不活性である、他の官能基も有することができる。)、
nは、≧1および≦4の整数である。〕
で示されるチオール化合物(成分B)の付加生成物である、
ことを特徴とする組成物。 - 請求項1に記載の組成物を製造する方法であって、式(I):
Xは、1個またはそれ以上のヘテロ原子を有してよいm価の有機基
(この有機基は、脂肪族あるいはシクロ脂肪族基またはアリール脂肪族基結合一級アミノ基を有する分子量60〜6,000の対応するモノアミンまたはポリアミンから、一級アミノ基を除去することによって得ることができ、さらに、イソシアネート基に反応性であるそして/または100℃までの温度で不活性である官能基を有することができる)、
R1およびR2は、同じまたは相互に異なる有機基、および
mは、≧1の整数である。〕
で示されるモノアスパラギン酸エステルおよびポリアスパラギン酸エステルを、
式(IV):
で示されるモノアミンまたはポリアミン(成分C)と、式(II):
で示される化合物(成分A)とを反応させることにより調製する際、この反応に対し、二重結合の残留含有量が、この反応の開始時に存在する二重結合を基準に、2〜15%になった状態で、式(III):
R3は、1個またはそれ以上のヘテロ原子を有してよいn価の有機基(この有機基は、イソシアネートに反応性または不活性である、他の官能基も有することができる)、
nは、≧1および≦4の整数である。〕
で示される少なくとも1つのチオール化合物(成分B)を、添加する
ことを特徴とする方法。 - 第一段階で、成分Aと成分Cは、(成分Cの一級アミノ基当量)/(成分AのC=C二重結合当量)の比率=1:1.2〜1.2:1で、反応させ、
第二段階で、未反応二重結合当量の成分Aと、成分Bのチオール基とは、モル比1.5:1〜1:1で反応させる請求項2記載の方法。 - 当該組成物は、
a)98〜55重量%の、式(I)のモノアスパラギン酸エステルまたはポリアスパラギン酸エステル、
b)45〜1重量%の、式(II)の成分Aと式(III)の成分Bとの付加生成物、
c)0〜3重量%の、式(II)の遊離成分A、および
d)0〜1重量%の、式(IV)の遊離成分C
を含有し、但し、a)〜d)の合計は100重量%であり、
当該組成物は、さらに式(III)の遊離成分Bおよび/または既知の助剤および添加剤を含有していてよい請求項1記載の組成物。 - 請求項1記載の組成物を含んでなる二液型ポリウレタン系組成物。
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