JP4355135B2 - パルスマグネトロン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルス動作によりマイクロ波を発振するパルスマグネトロンに関する。さらに詳しくは、スプリアスの発振を効果的に抑制することができる構造のパルスマグネトロンに関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネトロンは、たとえば図7に示されるように、円筒状のアノードシェル11の内周に複数個のベーン12が放射状に設けられ、隣接する2個のベーンとアノードシェル11との間の空間に空胴が形成され、ストラップ14がπモード発振を安定させるため、1枚おきのベーン12を連結することによりアノード1が形成されている。そして、アノード1の中心にカソード2が配置され、アノード1の内周端(ベーン12先端部)とカソード2の表面との間の作用空間4にカソード2の表面とほぼ平行な磁界を印加できるようにアノードシェル11の軸方向両端部にポールピース3が設けられ、カソード2からの電子が作用空間4で直交電磁界の作用により、回転運動をしてエネルギーを空胴に与え、発振する構造になっている。そして、レーダなどにも用いられるマグネトロンでは、陽極電圧をパルスで印加することにより動作させられる。
【0003】
近年、マイクロ波を放射する装置に対して、スプリアス放射の規制が厳しくなる傾向にある。その傾向の中にあって、パルスマグネトロンの基本波発振周波数近傍の周波数でのスプリアスも問題になりつつある。レーダに使用されるマグネトロンは、パルスで動作するため、その発振出力のスペクトラムは、図8に示されるように、主ローブの他に側帯に沢山のローブを有する波形となる。このスペクトラム特性は、パルスマグネトロンを動作するパルス幅で決まり、発振出力波形を基にフーリエ解析したスペクトラムより狭くなることはない。逆に通常は、様々な要因で前述した理論上のスペクトラムより広がる場合が多い。また、基本波発振周波数を中心として、線対称の波形を示さず、図8に示されるように、対称性が崩れたり、側帯のローブに突出する分布(P)をもったりする場合があり、スプリアスの原因になっている。
【0004】
以上のような、スペクトラムの崩れや側帯のローブが突出する原因の一つに、パルスマグネトロンの立上がり時の定格動作点以外の発振がある。従来のパルスマグネトロンを発振させるとき、陽極電圧を徐々に上げると、パルスマグネトロンを動作させる定格電流値の約5〜10%程度の低い電流値において、既に発振が行われる。このときの出力レベルは、定格出力の−40〜−50dBc程度のレベルであり、周波数は、定格時の基本波発振周波数より低い側で発振が行われる。このような動作特性を有する従来のマグネトロンをパルス動作で使用すると、基本波周波数の低い側で、毎回のパルスの立上りで、この電流領域を通過するため、毎回定格出力の−40〜−50dBc程度の発振が行われることになる。したがって、スペクトラムを観測したとき、対称性が崩れたり、側帯に−40〜−50dBc程度の突起を有する分布を示すことになる。
【0005】
一方、これらスプリアス輻射の原因の一つとして、マグネトロンのアノードとカソードが対向する作用空間における磁界分布が均一ではなく、磁束密度と電界との関係がばらつくことにより、発振が安定せずスプリアスが発生するという点に着目し、ベーンの軸方向両端部を軸方向の中心部よりも突出させることにより、ノイズを減少することが試みられている(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−190102号公報(図1、請求項1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、マグネトロンでは、基本波発振周波数近傍に、パルスの立上りに伴って発生する不要な発振によるスペクトラム分布もち、対称性が崩れ、スプリアス放射が発生することになる。したがって、レーダセットから放射されるスペクトラムを改善するには、レーダセット内にフィルタを装着する必要が生じる。しかしながら、レーダセットは、船舶の高い位置に取り付けられることが多く、軽量で小型な設計が要求される。また、フィルタの加工精度は、基本波以外の減衰量を確保しつつ、基本波を減衰させずに通過させる必要があるため、非常に精度の高い寸法加工が必要となり、コストが高くなるという問題がある。
【0008】
さらに、前述の作用空間における磁界分布の不均一化を補正するため、ベーンの軸方向両端部を突出させる構造を用いることは、結果的にはアノードとカソードとの距離が近づくことになり、前述の定格電流値よりも低い電流で発振をはじめるという問題の解決にはならず、却って低電流でのスプリアス発生を助長しやすくなり、立上り時の不要発振は改善されない。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、パルスマグネトロンでとくに問題となるパルス立上り時や立下り時における定格動作点より低い動作による発振を防止し、とくに基本発振周波数より低い周波数でのスプリアスを抑制し、対称性の優れたスペクトラムが得られるパルスマグネトロンを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によるパルスマグネトロンは、円筒状のアノードシェルの内周壁に、複数個のベーンが放射状に設けられることにより形成されるアノードと、該アノードの中心部で、前記複数個のベーンの先端部と対向するように設けられるカソードと、該カソードの表面と前記ベーンの先端部とが対向する作用空間に、前記カソードの表面とほぼ平行な磁界を印加させるように設けられる1組のポールピースとを有し、パルスで動作するパルスマグネトロンにおいて、
Va=942・(ra 2−rc 2)(104・b−10650/nλ)/nλ (1)
ここで、Vaはパルス陽極電圧(V)、raはアノード半径(ベーン先端部の内接円の半径;cm)、rcはカソード表面の半径(cm)、bは作用空間軸上の磁束密度の最小値(T)、nは分割数(ベーンの数)/2、λは発振波長(cm)
上式(1)の関係を満たすアノード半径raと前記カソード表面の半径rcを、前記カソードの軸方向のベーン高さに沿って磁束密度が最も大きい部分の、前記ベーン先端部の内接円の半径と前記カソード表面の半径とし、かつ、前記カソードの軸方向のベーン高さに沿って磁束密度が減少するに従い、(i)前記ベーン先端部の軸方向中心部の内接円の半径(r a ’)とカソード表面の半径r c の比r c /r a ’を前記式(1)により求められるr c /r a の値より9.1%〜0.3%小さくなるように、前記ベーン先端部の内接円の半径を大きくする、および(ii)前記カソード表面の軸方向中心部におけるカソード半径r c ’と前記アノード半径r a の比r c ’/r a を前記式(1)により求められるr c /r a の値より9.1%〜0.3%小さくなるように、前記カソード表面の半径を小さくする、の少なくとも1つを満足するようにアノードおよびカソードを形成することを特徴とするパルスマグネトロン。
【0011】
ここにベーンとは、アノードシェルと共に空胴を形成する部分を意味し、アノードシェルの内周壁に板状の翼片をロウ付けなどにより固着するものの他、スロットタイプやライジングサン型のように、一体のアノードにスロットなどを設けることにより空胴を形成する場合などにおけるアノード内周部に突出する部分などを含む意味である。
【0012】
この構造にすることにより、作用空間で、磁束密度の最も大きいカソード(ベーン)の軸方向両端部付近のカソード・アノード間距離を作用空間のカソードの軸方向のベーン高さに沿った磁束密度の最小値を基準として設定され、さらにカソード中心部に向って磁束密度が小さくなるところで、アノード・カソード間距離が磁束密度に応じて大きくなるようにアノード内径および/またはカソード外径が調整されているため、マグネトロンのインピーダンスは高くなり、定格陽極電圧より低い電圧での不要発振を抑制することができる。このため、パルスで陽極電圧を印加したときに、そのパルスの都度、定格に近い電圧が一度に印加され、πモードで発振が行われることになり、スペクトラムは主ローブに対し、対称性が良く、不要な突起出力分布のない理論値に近い特性を示すマグネトロンが得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、図面を参照しながら本発明のパルスマグネトロンについて説明をする。本発明によるパルスマグネトロンは、図1にその一実施形態の断面説明図が示されるような構造になっている。すなわち、円筒状のアノードシェル11の内周壁に、複数個のベーン12が放射状に設けられることによりアノード1が形成されている。そのアノード1の中心部にカソード2が設けられ、ベーン12の先端部とカソード2の表面とが対向する作用空間4にカソード2の表面とほぼ平行な磁界を印加するように、アノードシェル11の軸方向両端部に、1組のポールピース3が設けられている。
【0014】
本発明では、この作用空間4のカソード2の軸方向のベーン高さに沿って磁束密度が最も大きい部分における、ベーン先端部の内接円の半径ra(図4参照)とカソード2の表面の半径rc(図4参照)とを、前述の式(1)の関係を満たし、かつ、磁束密度が小さくなるベーン12の中心部側で磁束密度が減少するにしたがって、アノード半径raを大きくするか、カソード表面の半径rcを小さくするか、あるいはアノード半径raを大きくし、かつ、カソード表面の半径rcを小さくするようにアノードおよびカソードが形成されている。
【0015】
アノード1は、図1(a)および(b)にそれぞれ縦断面および横断面の説明図が示されるように、無酸素銅などからなるアノードシェル11の内周壁に、無酸素銅などの板材からなる複数個のベーン(陽極片)12の一端部が固着され、その他端部は、アノードシェル11の中心に向かって延び、そのベーン12間に、発振させる所望の周波数で共振する空胴13が形成されている。そして、1個おきのベーン12をストラップ14により連結して、それぞれπラジアン位相を異ならせることにより、πモード発振をしやすい構造に形成されている。なお、このアノード1は、ベーン12がアノードシェル11に固着される構造でなくても、一体のアノードにスロットなどを形成することにより空胴を形成する構造でもよい。
【0016】
ベーン12の先端部で囲まれるアノードシェル11の中心部には、同心状にカソード2が挿入され、ベーン12の先端部とカソード2の表面との間に作用空間4が形成され、カソード2から放射される電子が運動する空間になっている。この作用空間4にカソード2の表面とほぼ平行な磁界を印加することができるように、アノードシェル11の軸方向の両端部からは、鉄などの強磁性材料からなる1組のポールピース3が挿入され、アノードシェル11に固定され、図示しない永久磁石または電磁石により磁界を作用空間4に印加できるようになっており、アノード・カソード間に印加される陽極電圧と共に、作用空間4に印加される電磁界により電子がカソード2の廻りを回転運動してエネルギーを空胴13に与えることにより発振するように形成されている。レーダ装置に使用されるマグネトロンでは、陽極電圧がパルスで印加され、パルス動作される。
【0017】
図1に示される例では、カソード2の表面が、軸方向両端部における半径よりも中心部での半径が小さくなるように形成されて断面形状が凹面上に形成されている。すなわち、図4に示されるように、カソード2の軸方向両端部における半径rcは、アノード1の内周面の半径(ベーン12先端部の内接円の半径)raと、作用空間4における磁束密度bとの間に前述の式(1)の関係を満たすように形成され、カソード2の中央部における半径rc’は、両端部における半径rcより小さく形成され、ベーン12の先端部との距離が両端部における距離よりも大きく形成されている。なお、式(1)は、たとえば牧本ら著「マイクロ波工学の基礎」(廣川書店、昭和55年発行、第12版、278頁、10.28式)などに記載されているマグネトロンの動作理論において、磁束密度bを、とくに作用空間の磁束密度Bの最小値と定義して用いている。ここで式(1)から求められたアノード半径raおよびカソード表面の半径rcの値をアノード軸方向のベーン高さに沿った磁束密度のもっとも大きい部分の値としている。そのため、本来の動作理論式からカソードとアノード間の距離が大きくなる方向にオフセットすることになる。
【0018】
このカソード2の軸方向中心部の半径rc’は、rc’/raがrc/raよりも9.1%以下の割合で小さくなるように形成される(rc’/rcが90.9%以上)。その理由は以下の通りである。図1に示される構造のマグネトロンの作用空間4における磁束密度Bの分布を測定すると、図2に作用空間4における等磁束密度線が示されるように、カソード2の軸方向中心部における磁束密度は、カソード2の軸方向両端部における磁束密度1に対して88%の値を示した。したがって、従来のように、カソード2の軸方向中心部における外径を、カソード2の両端部と同じにすると、中心部では磁束密度が小さく、低い陽極電圧で動作を始めることになり、軸方向の中心部ではパルス陽極電圧の上昇時に、早くから発振が開始し、パルスの立上り部分で基本波の発振周波数より低い周波数でスプリアスを発生する。
【0019】
すなわち、前述のように、マグネトロンをパルスで動作させると、陽極電圧は、0Vから定格の陽極電圧に立ち上がり、規定のパルス幅を得た後、立ち下がるという動作を1パルスごとに毎回繰り返すことになる。そして、マグネトロンの定格電流値の約5〜10%程度である低い電流値においても、既に発振が行われ、このときの出力レベルは、定格出力の−40〜−50dBc程度のレベルとなる。それ以降、定格電流値に達するまで、基本波周波数より低い側で不要な発振が起る。したがって、スペクトラムを観測したとき、対称性が崩れ、側帯に−40〜−50dBc程度の突起や、正規の周波数と異なる突起を有する分布を示すことになる。
【0020】
それに対して、図1に示される本発明によるパルスマグネトロンの構造によれば、軸方向中心部におけるrc’/raが軸方向両端部におけるrc/raよりも9.1%以下の割合で小さくなるように、軸方向中心部におけるカソード2の外径が小さく形成されているので、ある一定の陽極電圧に達するまで発振が起らず、一定の値に達すると、ベーン2の軸方向中心部と両端部とで同時に発振が開始することになる。その結果、基本波より低い周波数での発振が抑制され、パルスマグネトロンの出力スペクトラムは改善される。
【0021】
図5に本発明のパルスマグネトロンと従来のパルスマグネトロンの陽極電流波形の比較を示す。図5は時間軸(横軸)に対して、陽極電流と陽極電圧を示している。従来のパルスマグネトロンでは、パルス陽極電圧が立ち上がると、予め動作理論で決定されたカソード軸方向の中心部付近の磁束密度が小さいため、陽極電圧が定格に達する前に陽極電流が流れ出す。このとき基本波より低い周波数で発振が起る。これに対し本発明によるパルスマグネトロンでは、アノードとカソード間の間隔が従来の間隔より大きく、陽極電圧の立上り初期の過渡インピーダンスが高く、電流は流れない。したがって陽極電圧が定格の電圧に達したところで、ベーン全体を使用して陽極電流が一気に流れるようになる。一例として、本発明によるパルスマグネトロンの陽極電流の立上りが0.15〜0.2A/nsであるのに対し、従来のパルスマグネトロンでは0.08〜0.1A/nsとなる。本発明によるパルスマグネトロンは、過渡インピーダンスがダイナミックに変化するので、陽極電流の立上り時間が短く、不要な発振を起すことがなくなる。
【0022】
この構造によるパルスマグネトロンの発振スペクトラムを図3に示す。図3から明らかなように、πモード基本周波数でのみ発振が行われ、側帯部に不要な突起状出力分布の発生は見られない。なお、図3において、基本波の発振周波数は9410MHzである。
【0023】
前述のrc’/raがrc/raよりも9.1%小さくするというのは、図2に示される磁束密度分布が軸方向中心部で両端部よりも88%になる場合に、前述の式(1)に基づいて得られるもので、磁束密度分布は、マグネトロンの構造、ポールピースの形状、ポールピース間の距離などにより異なる。しかし、前述の磁束密度分布を有する場合に、rc’/raがrc/raよりも0.3%程度小さくなるようにカソード2を凹状に加工したものでも、スペクトラムの改善が認められた。したがって、磁束密度の分布にアノード・カソード間の距離を厳密に合せる必要はない。また、一般にレーダ用に用いられるマグネトロンでは、その磁束密度分布は、最も磁束密度が大きい部分と小さい部分とは、大きい部分を1として、88%以上となるため、前述のrc’/raは、rc/raよりも9.1〜0.3%程度小さくなるようにすれば良好なスペクトラムが得られ、スプリアスの発生を抑制することができる。さらに、凹部の形状は、2次関数曲線状や山状に直線で結んだものなど種々の形状を採用することができる。また、連続的な変化ではなく、断続的な変化により半径が異なっていてもよい。
【0024】
前述の例では、カソード2の外径を軸方向の中心部で両端部の外径より小さくすることにより、定格より小さい電流で発振をし始めるのを防止したが、このようにカソードの外径を変化させれば、たとえばアノードがスロットを形成した一体もので形成されていても、その内径を変更する必要がなく簡単にアノード・カソード間の寸法を調整することができて好ましい。しかし、前述の構成は、磁束密度の分布に対するアノード・カソード間の距離に依存しているため、磁束密度が小さくなるアノードの軸方向中心部におけるアノードの内径を大きくしても、同様の効果が得られる。この例が図6に図4と同様に、作用空間4の近傍におけるアノード1とカソード2との寸法関係の図で示されている。
【0025】
すなわち、図6に示される例は、ベーン12の軸方向両端部において、ベーン12先端部における内接円の半径raとカソード2表面の半径rcとが前述の式(1)の関係を満たすように形成され、ベーン12の軸方向中心部における内接円の半径ra’は、rc/ra’が軸方向両端部におけるrc/raよりも9.1%以下の割合で小さくなるように、ベーン12の先端部形状が凹状に形成されている。換言すると、ベーン12中心部における内接円の半径ra’が両端部の半径raより9.1%程度大きくなるようにベーン12先端部の形状が形成されている。
【0026】
このようにカソード2の外径は軸方向に同じで、アノード1の内径が軸方向中心部において大きくなるように形成されていても、アノード・カソード間の距離の関係は、前述のカソードの形状を変化させる例と同じになり、同様の効果が得られる。すなわち、同じ陽極電圧V0で、ベーン2の軸方向中心部と両端部とで同時に発振が開始することになる。また、ベーン先端部の形状を2次関数曲線状や直線で結んだ山状など種々の形状にし得ることや、磁束密度が88%と異なる場合などのおいても、前述の例同様で、r c /r a ’は、rc/raより9.1〜0.3%程度小さくなるようにすれば良好なスペクトラムが得られ、スプリアスの発生を抑制することができる。
【0027】
さらに、アノードおよびカソードの一方だけの形状を凹状などに変形させるのではなく、アノードおよびカソードの両方を同様に変形させることもできる。両方の変形を行えば、変形量をそれほど大きくする必要がなくなる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、パルスの立上り時や立下り時における不要な発振を抑制することができる。すなわち、本発明によるパルスマグネトロンは、パルス動作の立上りの最初からπモードで安定に発振し、陽極電圧が立ち下がり始めると直ちに発振が停止する。その結果、スプリアスを発生しないパルスマグネトロンが得られる。したがって、スペース効率を阻害したり、重量増を余儀なくさせたフィルタをなくすることができ、レーダ装置のコストダウンを図ることができると共に、レーダ装置を小型軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるマグネトロンの一実施形態の縦断面および横断面を示す説明図である。
【図2】図1に示されるマグネトロンの作用空間近傍における等磁束密度線図である。
【図3】図1に示される構造のマグネトロンの発振出力スペクトラムを示す図である。
【図4】図1に示されるカソードとアノードの寸法関係を示す説明図である。
【図5】本発明のパルスマグネトロンと従来のパルスマグネトロンの陽極電流波形を比較した図である。
【図6】本発明のマグネトロンの他の実施形態を示す作用空間近傍の説明図である。
【図7】従来のマグネトロンの構成例を示す断面説明図である。
【図8】従来のマグネトロンの発振出力スペクトラムを示す図である。
【符号の説明】
1 アノード
2 カソード
3 ポールピース
4 作用空間
11 アノードシェル
12 ベーン
13 空胴
Claims (1)
- 円筒状のアノードシェルの内周壁に、複数個のベーンが放射状に設けられることにより形成されるアノードと、該アノードの中心部で、前記複数個のベーンの先端部と対向するように設けられるカソードと、該カソードの表面と前記ベーンの先端部とが対向する作用空間に、前記カソードの表面とほぼ平行な磁界を印加させるように設けられる1組のポールピースとを有し、パルスで動作するパルスマグネトロンにおいて、
Va=942・(ra 2−rc 2)(104・b−10650/nλ)/nλ (1)
ここで、Vaはパルス陽極電圧(V)、raはアノード半径(ベーン先端部の内接円の半径;cm)、rcはカソード表面の半径(cm)、bは作用空間軸上の磁束密度の最小値(T)、nは分割数(ベーンの数)/2、λは発振波長(cm)
上式(1)の関係を満たすアノード半径raと前記カソード表面の半径rcを、前記カソードの軸方向のベーン高さに沿って磁束密度が最も大きい部分の、前記ベーン先端部の内接円の半径と前記カソード表面の半径とし、かつ、前記カソードの軸方向のベーン高さに沿って磁束密度が減少するに従い、(i)前記ベーン先端部の軸方向中心部の内接円の半径(r a ’)とカソード表面の半径r c の比r c /r a ’を前記式(1)により求められるr c /r a の値より9.1%〜0.3%小さくなるように、前記ベーン先端部の内接円の半径を大きくする、および(ii)前記カソード表面の軸方向中心部におけるカソード半径r c ’と前記アノードr a の比r c ’/r a を前記式(1)により求められるr c /r a の値より9.1%〜0.3%小さくなるように、前記カソード表面の半径を小さくする、の少なくとも1つを満足するようにアノードおよびカソードを形成することを特徴とするパルスマグネトロン。
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