JP4353466B2 - 吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置 - Google Patents

吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置 Download PDF

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Description

本発明は、高磁界勾配部分と低磁界勾配分とを有する不均一磁界を利用して被処理流体から被分離物を分離する吸着体連続給排型高勾配磁気装置に関する。
磁気を利用して流体中の被分離物を回収除去することは古くから行われている。例えば、製鉄所の排水や循環水を強力な磁石に接触させて、そこに含まれる鉄粉等の被分離物を回収すること等が、これに該当する。
従来の高勾配磁気分離手法では、被分離物を付着させるための吸着体として磁性金属からなる微細網状体を包袋状に丸めたものや、円盤状の網状体を多層に積層したものを主に用いていた。また、特許文献1(特開平11−300120号公報)には被分離物を付着させるための吸着体として多孔質ボールを用いる技術も提案されている。
しかしながら、本発明者らが実験に基づき鋭意研究した結果、高勾配磁気分離には次のような問題点が残されていることが判明した。
すなわち、高勾配磁気分離においては、テスラオーダーの不均一磁界を用いる必要がある。そのため、吸着体は磁界内に強固に拘束されてしまい、消磁しないことには、吸着体を磁界内から取り出して洗浄することができない。しかも、かかるテスラオーダーの磁界を発生させる装置としては、励消磁にある程度の時間を要する超伝導磁石しかないのが現状である。
したがって、従来の高勾配磁気分離技術は、吸着体を磁界内から取り出すに際して磁界の励消磁が必要であり、実アプリケーションとして利用できるような連続的な処理は不可能なものであった。この問題点は、一見すると連続処理が可能なように見える特許文献1記載の技術においても同様である。
特開平11−300120号公報
そこで、本発明の主たる課題は、吸着体の連続給排が可能であり、連続処理に適した吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置および方法を提供することにある。
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
磁性を有する吸着体と、
高磁界勾配部分と低磁界勾配部分とを有する不均一磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記吸着体を、前記不均一磁界を弱めることなく前記不均一磁界内に供給する供給手段と、
前記不均一磁界内において吸着体と被処理流体とを接触させ、被処理流体中に含まれる被分離物を吸着体に付着させる手段と、
前記被分離物が付着した吸着体を、前記不均一磁界を弱めることなく前記不均一磁界外へ抜き出すスクリューコンベヤとを備えた、
ことを特徴とする吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
本発明によれば、不均一磁界を弱める(消磁を含む)ことなく、被分離物が付着した吸着体を不均一磁界内に供給し、また供給した吸着体を抜き出すことができる。したがって、高勾配磁気による分離効果を維持したままで、被分離物が付着した吸着体を不均一磁界内から外部へ連続的に抜き出すことおよび不均一磁界内に連続的に戻すことが可能となる。
なお、本発明にいう「被分離物」とは、本来的に磁性を有するもののほか、弱磁性体の磁性を強めたものや非磁性体に担磁したものも含む。
<請求項2記載の発明>
前記不均一磁界に対し、弱磁気力部位に前記吸着体を供給し、この供給粒子が強磁気力部位に移動する過程で前記接触を行うように構成した、請求項1記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
不均一磁界内においては、磁気力の相対的な強弱が存在する。したがって弱磁気力部位に吸着体を供給すると、その吸着体は磁気力によって強磁気力部位へと自動的に移動する。本請求項2記載の発明はこれを利用して、吸着体粒子を移動する過程で被処理流体との接触を行うものである。かかる構成を採ることによって、吸着体粒子による移動層が形成され移動層式の分離が可能となる。また、吸着体粒子を弱磁気力部位に送り込むだけで例えば磁界外への排出位置に向けて移動させたりすることも可能である。そして特筆すべきは、磁気分離に必要な不均一磁界を弱めることなく、かかる利点が得られることである。
<請求項3記載の発明>
不均一磁界内にある吸着体を、機械力により、弱磁気力部位へ導き弱磁気力部位を通して移動させ前記不均一磁界外へ抜き出すように構成した、請求項1または2記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
強磁気力部位にある吸着体は当該位置に強固に拘束されるためそこからの不均一磁界外への抜き出しは非常に困難となる。しかるに本請求項3記載の発明に従って、吸着体を機械力により弱磁気力部位へ導き弱磁気力部位を通して移動させ不均一磁界外(吸着体が不均一磁界の影響を実質的に受けない位置)へ抜き出すことで、より少ない機械力で不均一磁界内からの吸着体の抜き出しが可能となる。
<請求項4記載の発明>
前記移動する吸着体が前記抜き出しのための移動方向と反対の方向に逆行するのを防止するように構成した、請求項3記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
吸着体を磁場中から磁場外に抜き出す際に吸着体には磁場中に引き寄せられる力が働いている。このため、本請求項記載のように、吸着体が抜き出しのための移動方向と反対の方向に逆行するのを防止するように構成することが望ましい。
<請求項5記載の発明>
前記吸着体の機械力による抜き出しに先立ち又はその過程で、吸着体の集合体を崩すための手段を設けた、請求項3または4記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
多数の磁性を有する吸着体を強磁場中におくと、吸着体は相互に磁化し、大きな集合体(クラスター)となって振る舞うことがわかっている。この集合体化により吸着体はフレキシブルな移動が抑制されてしまい、抜き出しが困難となる。このため、抜き出しに先立って又は抜き出しの過程で、集合体化した吸着体を崩す(または解す)ような機構を併設することは、上記のような機械力による抜き出しを行う場合に非常に有効である。
<請求項6記載の発明>
前記吸着体は、平均粒径が0.3〜3.0mmの球状の非多孔質磁性体粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
吸着体として非多孔質の磁性体粒子を用いると、不均一磁界中の磁性体粒子の多くが集合体(かかる集合体は一つの場合もあるが、複数形成される場合もある)を形成し、この集合体が密充填吸着体となる結果、被処理流体との接触効率が高くなり、処理効率は非常に高くなる。
しかも、この集合体は磁場外では解離不能なものではない。よって、消磁により再び元の粒子相互が解離した状態に戻したり、機械的洗浄により集合体内部の粒子表面を洗浄したりできるため、従来の網状体や多孔質ボールとも異なり、磁化した被分離物の除去も著しく容易にできる。
磁性体粒子の大きさは分離対象の大きさや、磁性体粒子の外形との関係で定まるため一概にいえるものではないが、球状粒子の場合、平均粒径が3.0mmよりも大きいと空隙率が高くなり、粒子間隙を通過する流体の圧力損失が低くなる結果、偏流が発生しやすくなり、吸着状態が不均一になる。また、高勾配磁気分離はその特性上高速通水が可能であり、高効率での処理が可能であるが、かかる場合に空隙率が高いと粒子と被処理流体との接触効率が落ちるので、平均粒径を3.0mm以下とし、空隙率を極力低くするほうが好ましい。また粒子径が3.0mmよりも大きいと比表面積が小さくなり、吸着効率が低下する。
一方、磁性体粒子の平均粒径が0.3mmよりも小さいと粒子間隙における流体の通過圧力損失が高くなるだけでなく、磁性体粒子集合体が密になり過ぎるために流体と粒子の接触が不均一になる。
よって本発明では、平均粒径が0.3〜3.0mmの磁性体球状粒子を使用するのが好ましい。かかる範囲の磁性体粒子が集合体化すると、多孔質材料等と比べても遜色ない比表面積を有するようになり、より確実に前述の磁性体粒子の集合体化による作用効果が発揮される。
<請求項7記載の発明>
前記吸着体は、フェライト系ステレンスまたはマルテンサイト系ステンレスよりなるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
かかる材質の吸着体は、磁束線の収束による磁気勾配の発生が容易であり、機械的・化学的耐久性も高いため、本発明に好適に用いることができる。
<請求項8記載の発明>
前記磁界発生手段は1テスラ以上の磁場を作用させるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
本発明の高勾配磁気分離においては、かかる範囲の磁場を作用させるのが望ましい。
<請求項9記載の発明>
分離槽を備え、この分離槽内で前記吸着体と被処理流体とを接触させた後、前記被分離物が付着した吸着体を前記分離槽外に抜き出して洗浄を行い、前記吸着体から被分離物を除去した後にこれを再び前記分離槽に戻すように構成した、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
本発明は、前述のとおり処理効率が高くかつ吸着体からの被分離物の分離性が良いので、吸着体を洗浄処理を介して循環利用する場合に好適であり、またこの場合実質的に連続的な高勾配磁気分離も可能である。なお、「実質的に連続的な高勾配磁気分離」とは、吸着体と被処理流体との接触処理が洗浄処理の遅延により中断することがないことを意味し、洗浄処理等の一部の処理が断続的な場合を含む。なお、効率の面から一連の処理の全てを連続的又はこれに準ずるペースで行うほうが好ましいことはいうまでもない。
<請求項10記載の発明>
前記吸着体と被処理流体との接触を、向流接触により行うように構成した、請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
(作用効果)
本発明では、吸着体と被処理流体との接触形態としては、いわゆる向流接触方式が好適である。ただし、被分離物は吸着体表面に吸着するため、並流接触でも十分に使用可能である。
以上のとおり、本発明によれば連続処理に適した高勾配磁気分離装置および方法が提供される。
以下、本発明の実施形態について、吸着体として磁性体粒子を用いた場合を例にとり詳説する。
<概要>
図1は本発明に好適な実施形態の基本フローを示している。同図の例では、先ず被処理流体中の微量非磁性または弱磁性成分を前処理し、後の高勾配磁気分離において分離可能なレベルまで磁性を付与し、被分離物とする。この前処理は本発明では必須ではない(詳細については後述する)。分離対象が十分な磁性を有している場合には、被処理流体を前処理を施さずに高勾配磁気分離装置1に供給することができる。
吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置(以下、単に高勾配磁気分離装置という)1は高勾配磁気分離部1Aと洗浄装置1Bとから構成されている。高勾配磁気分離部1Aにおいては、高磁界勾配部分および低磁界勾配部分を有する不均一磁界が形成されており、この磁界内に磁性体粒子(吸着体に相当)が供給され、供給した磁性体粒子に対して被処理流体が接触され、その過程で磁性体粒子に分離対象の被分離物が付着する。磁性体粒子は、被分離物の付着量がある程度まで増加すると不均一磁界内から抜き出されて洗浄装置1Bに供給される。一方、被処理流体は磁性体粒子との接触時間に応じて分離対象被分離物が次第に除去され、ある程度まで除去された後に処理済流体として系外に取り出される。
洗浄装置1Bに供給された磁性体粒子は超音波洗浄等の適宜の洗浄処理を受けて付着した被分離物が洗い落とされる。被分離物の付着力にもよるが、通常の場合、洗浄に先立って又は洗浄中において適宜の消磁処理を施すのが望ましい。洗浄が終了した磁性体粒子は再び高勾配磁気分離部1Aに対して戻される。一方、洗い落とされた被分離物は洗浄装置1Bから系外へ排出される。
そして、本発明において特徴的には、このような不均一磁界内に対する磁性体粒子の給排が、不均一磁界を弱めずに行われるように構成される。そのため、かかる磁性体粒子のリサイクルと相まって、連続的な高勾配磁気分離を達成することができるようになる。
<磁気分離部の第1の実施形態>
図2は、上記基本フローにおける磁気分離部1Aに相当する分離部装置例10を示している。この分離部装置10は、円筒形磁石12と、その上方の適宜の位置から内空の長手方向中央部まで同軸的に延在するように配置された略円筒形の分離槽11を備えている。
磁界発生手段としての円筒磁石12は、永久磁石、電磁石、超伝導磁石等、種類を問わず使用できるが、前述のとおり、1テスラ以上の磁場を作用させうるものが好適に使用される。
分離槽11は、下端部に漏斗状の粒子集合部11bを有するとともに、この上側の適宜位置から上端までの径方向中央部分を占有する円柱状軸部11cを有している。分離槽11の上端開口は、軸部の外面と分離槽11の内壁面との間に連通する給排口11aとされており、この給排口11aは、粒子供給ポンプp1を介して図示しない前述の洗浄装置の粒子出側に対して連通されるとともに、処理済み流体の排出経路r1に連通される。一方、粒子集合部11bの側面に図示しない流体供給部が設けられるとともに、粒子集合部11bの下端開口は粒子排出口とされており、この粒子排出口に対してスクリューコンベヤ13の導入口が連通接続されている。このスクリューコンベヤ13は、円筒磁石12の内空の長手方向中央部からその下方の適宜位置まで、円筒磁石12の中心軸に沿って同軸的に延在されており、その下端部排出口は、排出ポンプp2を介して前述の洗浄装置の粒子入側に連通接続される。
粒子排出ポンプp2は分離槽11内の磁性体粒子を抜き出して洗浄装置に送給するためのものであり、供給ポンプp1は洗浄装置から送出される洗浄済み粒子を分離槽11に返送するためのものである。これらのポンプとしてはスネーク式ポンプを好適に使用でき、条件によってはダイアフラム式ポンプも用いることができる。
他方、本発明では、分離槽11や軸部11c、スクリューコンベヤ13、粒子や流体搬送用の各種管路等は、磁性体金属からなるものであっても良いが、ガラスや合成樹脂等の磁化率の低いもののほうが望ましい。
また、磁性体粒子としては、限り粒径・材質等に関係なく使用することができるが、前述のように平均粒径が0.3〜3.0mmの非多孔質球状粒子が好適である。また材質としては強磁性体であって磨耗・変形等の機械的耐久性、ならびに腐食性等の化学耐性の高い材質、具体的にはSUS430に代表されるフェライト系ステンレスや、マルテンサイト系ステレンスが好適である。
かくして構成された分離部装置10においては、円筒磁石12により分離槽11内に不均一磁界が形成される。この不均一磁界は、円筒磁石12の長手方向においては、中央部が相対的に磁気力が強く、両端部はこれに比べて磁気力が弱くなる。また、径方向においては、中心に近いほど磁気力が弱い。
したがって、粒子供給ポンプp1により分離槽11の上端部に送り込まれた粒子は、円筒磁石12の長手方向においては弱磁気力部位にあたるので、強磁気力部位にあたる分離槽11の下端部に向って磁気力により移動される。よって、本実施形態では分離槽11内に供給された磁性体粒子は、分離槽11の上端から下端へ向う移動層を構成する。この移動層は、本実施形態では、多くの磁性体粒子が集合塊状化した集合体により構成される。
分離槽11の下端部においては、分離槽11の内壁面側が強磁気力部位となる。このため、本実施形態では分離槽11の下端部を漏斗状となすことで、径方向において相対的に弱磁気力となる中心部位に粒子を集合させることができる。粒子集合部11bに到達した粒子は、当該弱磁気力部位(径方向中心部位)のみを通じてスクリューコンベヤ13により円筒磁石12の影響を実質的に受けない位置まで抜き出される。
この一方で、分離槽11の下端部には非処理流体が供給され、これが移動層の移動方向と反対向きに流通され、この過程で移動層中の磁性体粒子と向流接触される。この結果、被処理流体に含まれる被分離物は磁性体粒子表面に順次付着される。すなわち移動層を構成する磁性体粒子は下端側のものほど被分離物の付着量が多くなり、被処理流体は下端側のものほど被分離物含有量が多くなる。これにより、被処理流体は汚染度の高い磁性体粒子からなる層から汚染度の低い磁性体粒子からなる層へ順次通過接触されるようになり、効率的な分離が可能となる。移動層を通過し終えた被処理流体は分離槽11上端部の給排口11aからオーバーフロー等により供給粒子から分離され、処理済流体として系外に取り出される。
他方、スクリューコンベヤ13によって分離槽11外に抜き出された磁性体粒子は排出ポンプp2によって、図示しない洗浄装置に供給される。洗浄処理に際しては、消磁処理を行うことにより、粒子集合体が崩れて個々の粒子に離れた状態に戻すことができ、全粒子表面の洗浄を容易に行うことができる。また消磁処理を行わなくても、粒子集合体は磁気力により粒子相互が集まり凝集しているものであり、流動物ともいえるものであるので、適宜の洗浄ブラシ等により掻き回すように洗浄することで、粒子全表面の洗浄が可能である。洗浄処理が終了した粒子は断続的または連続的に分離槽11上部の給排口11aに対して循環供給される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の装置10では、不均一磁界の特性を有効に活用し、すなわち磁気力の強弱を利用した磁性体粒子の分離槽11内での移動、および弱磁気力部位通じての排出を行うため、円筒磁石12を弱めることなく磁性体粒子の給排を行うことができる。そして、この磁界を弱めない磁性体粒子の給排と、洗浄装置を介した磁性体粒子のリサイクルとを組み合わせることによって、連続的な磁気分離が達成される。
<磁気分離部の第2の実施形態>
図3は、磁気分離部装置の第2の実施形態を示している。本第2の実施形態の装置20では、分離槽21の下端部は逆さ円錐状の粒子集合底部21bとされており、この底部21bに対して若干間隔をおいた位置から分離槽21上方の適宜位置まで、径方向中央部分を占有するように同軸的にスクリューコンベ23が延在されている。したがって、このスクリューコンベヤ23は、粒子の抜き出し機能のみならず、第1の実施形態における円柱状軸部11cの機能を兼ね備えたものとなる。
その他の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。すなわち、粒子供給ポンプp1により分離槽21上端部に送り込まれた粒子は、強磁気力部位にあたる分離槽21下側の粒子集合底部21bに向って磁気力により移動される。一方、分離槽11下端部には非処理流体が供給され、これが移動層の移動方向と反対向きに流通され、この過程で移動層中の磁性体粒子と向流接触される。この結果、被処理流体に含まれる被分離物は磁性体粒子表面に順次付着される。
移動層を通過し終えた被処理流体は分離槽21上端部の給排口11aから処理済流体として系外に取り出される。粒子集合底部21bに到達した粒子は、スクリューコンベヤ23に取り込まれ、スクリューコンベヤ23により分離槽21の径方向中心部位のみを通じて、すなわち弱磁気力部位のみを通じて円筒磁石12の影響を実質的に受けない分離槽21の上方位置に抜き出され、排出ポンプp2によって図示しない洗浄装置に供給され洗浄される。洗浄処理が終了した粒子は、断続的または連続的に分離槽21上部の給排口11aに対して循環供給される。
この第2の実施形態では、第1実施形態と比べて、分離槽11およびスクリューコンベヤ23からなる部分をコンパクト化・簡略化できる利点がある。
<磁気分離部の第3の実施形態>
上記第1および第2の実施形態では、円筒磁石12のうち高勾配磁気分離に実質的に寄与するのは、長手方向の上側半分のみであり、下側半分を有効に使っていない。
そこで、第2の実施形態の利点を生かして、一つの円筒磁石12の長手方向中央に対して一方側および他方側に、図4に示すように分離槽2121およびスクリューコンベヤ23,23をそれぞれ設けることを提案する。図示例では、分離槽2121およびスクリューコンベヤ23,23が円筒磁石12の長手方向中央に対して上下対称配置となっているが、完全対称とする必要はない。また、この場合被処理流体の給排系統、粒子の洗浄循環系統を各分離槽21毎に設けても良いし、図示のように共通にしても良い。かくして、円筒磁石12の長手方向全体を有効利用できるとともに、処理能力を2倍に増加させることができる。
<第4の実施形態>
現在では、上記高勾配磁気分離装置1によって非磁性体や弱磁性体をそのままの状態で分離することは不可能である。そこで本発明では、かかる非磁性体や弱磁性体の磁気分離を可能とするための、前処理を組み合わせた設備についても提案する。この前処理は、具体的には被処理流体中に所定のイオンまたは凝集材を加え、分離対象成分を錯体化、コロイド化または凝集化することによって達成できる。
図5に、排水等の被処理液体の処理における前処理の一例を示す。被処理流体は、複数対の鉄電極101が内部に配置された電解100に導入される。この第1電解槽100では、鉄電極101に対して所定の電圧が印加され、これによって生じた電解反応を通じて、槽100内の排水中に水酸化鉄が供給され、被処理流体中の非磁性分離対象物(排水にあっては有機物やリンなど)が水酸化鉄と物理的に吸着する。かくして、分離対象物が非磁性体や弱磁性体であっても、強磁性体である水酸化鉄と一体をなすことにより後の磁気分離装置による磁気分離可能なレベルの被分離物とすることができる。
<その他>
(イ)本発明の対象となる被処理流体は液体に限られず、気体または流動体であっても良い。また分離対象としては、強磁性体のみならず、弱磁性体や非磁性体であっても前述のような前処理によって本発明により分離可能なレベルの被分離物とできるものであれば良く、被分離物の大小や被処理流体中の含有量等には基本的に左右されない。
ただし、本発明の磁気分離装置は、液体中に含まれる微量成分のように従来分解が困難とされてきたものを分離するのに特に適している。
(ロ)すなわち本発明は、従来から磁気分離の対象とされてきた発電所等の工業排水中に含まれる鉄粉等の磁性体の分離のみならず、前述したような前処理を行う場合には、液体中に含まれる有機物質・植物・重金属等の分離にも適用できる。さらに具体的には、排水や河川・湖沼等における環境ホルモン・重金属・藻類の分離、埋め立て地の地価進出水の処理、蔗糖液の精製といった食品製造における微量成分の分離等に好適に応用できる。
(ハ)上記実施形態のように磁性体粒子をリサイクルする場合、粒子のリサイクルを連続的に行う、すなわち分離槽内に対する磁性体粒子の供給およびその排出ならびにその洗浄を常時連続的に行うこともできるし、必要に応じてまたは所定間隔で断続的に粒子をリサイクルすることもできる。
(ニ)各内部装置または外部装置(バルブ・ポンプ・管路・電動機)は、磁石の磁場により悪影響を受けないように、離間配置したり、非磁性体材料を採用したり、磁気遮蔽手段を設けたり、磁性体粒子等の付着を掻き取るための機構を設けたりすることができる。
(ホ)本発明は磁気分離をポイントとするものであるが、本発明の磁気分離の前処理または後処理として他の分離手法を適宜組み合わせ、磁気分離の妨げとなるようなものや磁気分離不可能なものを分離することができる。例えば前述の磁気分離設備において、必要に応じて前処理後の被処理液体を沈降分離処理を行ってから磁気分離装置に供給したり、磁気分離装置による処理済液を酸化還元処理したりすることができる。
(ヘ)本発明における吸着体は、不均一磁界内への給排が可能なものであって、かつ磁気分離による磁気吸着が可能なものであれば、特にサイズ、材質等が限定されるものではない。よって、例えば非磁性材粒子に磁性材粒子を含有(埋め込む等)させる等、非磁性材料と磁性材料とを組み合わせた吸着体も本願発明に含まれる。
排水の浄化等、広範な用途に適用できる。
本発明の実施形態の概要フロー図である。 第1実施形態の概要縦断面図である。 第2実施形態の概要縦断面図である。 第3実施形態の概要縦断面図である。 第4実施形態の概要縦断面図である。
符号の説明
1…高勾配磁気分離装置、1A,10…高勾配磁気分離部、1B…洗浄装置、12…磁石。

Claims (10)

  1. 磁性を有する吸着体と、
    高磁界勾配部分と低磁界勾配部分とを有する不均一磁界を発生させる磁界発生手段と、
    前記吸着体を、前記不均一磁界を弱めることなく前記不均一磁界内に供給する供給手段と、
    前記不均一磁界内において吸着体と被処理流体とを接触させ、被処理流体中に含まれる被分離物を吸着体に付着させる手段と、
    前記被分離物が付着した吸着体を、前記不均一磁界を弱めることなく前記不均一磁界外へ抜き出すスクリューコンベヤとを備えた、
    ことを特徴とする吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  2. 前記不均一磁界に対し、弱磁気力部位に前記吸着体を供給し、この供給粒子が強磁気力部位に移動する過程で前記接触を行うように構成した、請求項1記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  3. 不均一磁界内にある吸着体を、機械力により、弱磁気力部位へ導き弱磁気力部位を通して移動させ前記不均一磁界外へ抜き出すように構成した、請求項1または2記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  4. 前記移動する吸着体が前記抜き出しのための移動方向と反対の方向に逆行するのを防止するように構成した、請求項3記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  5. 前記吸着体の機械力による抜き出しに先立ち又はその過程で、吸着体の集合体を崩すための手段を設けた、請求項3または4記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  6. 前記吸着体は、平均粒径が0.3〜3.0mmの球状の非多孔質磁性体粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  7. 前記吸着体は、フェライト系ステレンスまたはマルテンサイト系ステンレスよりなるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  8. 前記磁界発生手段は1テスラ以上の磁場を作用させるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  9. 分離槽を備え、この分離槽内で前記吸着体と被処理流体とを接触させた後、前記被分離物が付着した吸着体を前記分離槽外に抜き出して洗浄を行い、前記吸着体から被分離物を除去した後にこれを再び前記分離槽に戻すように構成した、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
  10. 前記吸着体と被処理流体との接触を、向流接触により行うように構成した、請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸着体連続給排型高勾配磁気分離装置。
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