JP4352741B2 - 回折格子パターンを有する画像表示体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回折格子パターンを有する画像表示体、特に、所定の構造の回折格子を有する回折格子パターンと所定の光透過特性を有するカラー画像とを組合せて配置・表示するようにし、回折格子パターンの回折格子における回折効率の向上を図って回折光の明るさと観察画像の視認性とを向上させるようにすると共に、装飾的効果をも向上させ、併せて偽造や改ざんに対する安全性の強化をも図るようにした回折格子パターンを有する画像表示体に関する。
【0002】
【従来の技術】
商品の偽造や改ざんなどを防止する目的で、さらには装飾的効果の向上を目的として、ホログラムや回折格子をその一部に設けることは周知である。
【0003】
光の干渉現象を利用したホログラムや回折格子には大別して2種類のものがある。一方は「レリーフ型(干渉縞を二次元的に微細な凹凸で記録してある)」であり、他方は「体積型(厚さ方向に、屈折率や透過率が異なるように記録してある)」である。
【0004】
レリーフ型のホログラムや回折格子は、熱可塑性樹脂からなる層やシートなどにレリーフパターンをエンボス成型することで作製されるため、安価に大量に複製することが可能であるが、回折効率が低く(照明光の20〜30%程度しか再生しない)、表示画像が暗いという問題を有する。
【0005】
一方、体積型のものはその厚さ方向に屈折率や透過率が異なるようにし、種々のホログラムパターンや回折模様が現出するようにしたものであるが、この種のホログラムや回折格子においても回折効率をさらに向上させ、偽造や改ざんなどを防止する効果を高め、さらには意匠的効果を高める目的で様々な提案がなされている。
例えば、ホログラム層の上に異なった色相の2種以上の画像を印刷することで偽造や改ざんを防止する効果や意匠的効果を高めるようにした提案などがある(たとえば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、単にホログラム層の上に半透過性の着色画像を印刷により施すと、ホログラム画像自体の輝きと印刷された画像のそれぞれが観察・判読しにくくなり、意匠性が半減してしまうことが問題となっている。
また、体積型のものは、100%に近い回折効率を持つが、波長選択性が強いため、ホログラム層の上に複数のカラー画像を施すことはホログラム画像を隠蔽してしまうことになる。
【0007】
【特許文献1】
実公平7−25810号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、回折格子パターンを有する画像表示体において、特定の構造の回折格子を有する回折格子パターンと特定の光透過特性を有する透明性着色インキよりなるカラー画像との組合せにより、回折格子パターンにおける回折効率を向上させ、回折格子から出射する回折光の明るさと所定の色相で観察される画像の視認性とを向上させ、しかも低コストで製造可能な回折格子パターンを有する画像表示体の提供を課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、請求項1に記載の発明は、回折格子パターンを有する画像表示体であって、レリーフ型の回折格子からなる回折格子パターンが2つ以上配置してあると共に、前記2つ以上の回折格子パターンは、上部に回折格子の回折効率が最大となる波長を中心とする光を選択的に透過する透明性着色インキからなるカラー画像が設けられている1つ以上の回折格子パターンと、前記カラー画像が設けられていない1つ以上の回折格子パターンとからなることを特徴とする回折格子パターンを有する画像表示体である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回折格子パターンを有する画像表示体において、前記カラー画像は、その下部に位置する回折格子パターンの回折格子での回折効率がそこで設定されている格子深さに対して最大となる波長を中心とする光が選択的に透過する透明性着色インキにて、当該回折格子パターンとは同一形状で見当を合わせて設けてなるものであることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の回折格子パターンを有する画像表示体において、前記カラー画像が設けられている回折格子パターンが複数配置してあり、前記カラー画像が設けられている回折格子パターンにおいて、1つ以上の回折格子パターンの回折格子の格子ピッチはそれ以外の回折格子パターンの回折格子の格子ピッチとは異なるが、格子方向は同一に設定されていると共に、各回折格子パターンの上部には各回折格子パターンの回折格子の回折効率が最大となる波長を中心とする光を選択的に透過する透明性着色インキでカラー画像がそれぞれ設けてあることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の回折格子パターンを有する画像表示体において、回折格子パターンの回折格子がブレーズド型回折格子であることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の回折格子パターンを有する画像表示体において、回折格子パターンの回折格子が階段状回折格子であることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1には本発明に係る回折格子パターンを有する画像表示体の一例が概略断面説明図で示してあり、図2には本発明に係る回折格子パターンを有する画像表示体の他の一例が概略断面説明図で示してある。
回折格子パターンを有する画像表示体10は、基材1の一方の面に熱可塑性樹脂層2が積層してあり、この熱可塑性樹脂層2の表面にはエンボス成形法によりレリーフ型のブレーズド型回折格子3A、3Bが賦型してあって、それぞれに対応して回折格子パターン13A、13Bが表示されている。そして、このブレーズド型回折格子形成側にはアルミニウム等からなる金属反射(蒸着)層6が施してある。
そして、前記基材1の熱可塑性樹脂層2を積層していない側には、熱可塑性樹脂層2の表面に表示されている回折格子パターン13A、13Bと見当を合わせてそれらと同一形状のカラー画像5A、5Bがそれらの上部に設けてある。これらのカラー画像の内、カラー画像5Aはブレーズド型の回折格子3Aにおける回折効率が最大となる波長を中心とする光を選択的に透過する透明性着色インキで、カラー画像5Bはブレーズド型の回折格子3Bにおける回折効率が最大となる波長を中心とする光を選択的に透過する透明性着色インキでそれぞれ形成してある(図1参照)。
【0015】
一方、回折格子パターンを有する画像表示体20は、前記した回折格子パターンを有する画像表示体10と略同様な構成をしているが、回折格子パターン14A、14Bがレリーフ型の階段状回折格子4A、4Bで構成され、回折格子パターン14A、13Bのそれぞれに見当を合わせて設けてある同一形状のカラー画像7A、7Bの形成個所が基材11の熱可塑性樹脂層12を積層している面にある点で異なっている(図2参照)。
【0016】
熱可塑性樹脂層2に賦型してあるブレーズド型回折格子3A、3Bは、図3に示すように、鋸刃状の断面形状を持つ回折格子であり、その斜面における入射光の反射もしくは屈折の角度が回折角度と一致した場合、非常に高い回折効率が得られるようになる。
【0017】
また、熱可塑性樹脂層12に賦型してある階段状回折格子4A、4Bは、図4に示すように、階段状の断面形状を持つ回折格子であり、この回折格子も斜面部における入射光の反射もしくは屈折の角度が回折角度と一致した場合、非常に高い回折効率を示すようになる。因みに、図4に示す階段状回折格子は4段階のレベルのものが示してあるが、本発明において適用され得る階段状回折格子はこのレベル数に限定されるものではない。
【0018】
一方、図7にはブレーズド型回折格子に入射光が照射されたときの回折の状況が示してあるが、このような状況において、ブレーズド型回折格子と入射光ならびに回折光との間には下記1式ならびに2式に示すような関係がある。
mλ=d(sinα−sinβ)・・・(1式)
L=d×tan{(α+β)/2}・・・(2式)
ここで、mは回折次数、λはm次回折光の波長、Lは回折格子の深さ、dは回折格子の間隔、αは0次回折光の射出角度、βはm次回折光の射出角度である。
【0019】
従って、一概には言えないが、標準的な例として、回折格子パターンに対して上方37度の角度から白色光を照射し、その回折格子パターンに対して垂直方向(正面)から観察する状況を想定した場合には、944本/mm、1126本/mm、1302本/mmの空間周波数をそれぞれ有する干渉縞によって生じる1次の回折光の視点方向にくる光の波長は、それぞれ637nm(赤の光)、534nm(緑の光)、462nm(青の光)となる。
【0020】
このような関係を考慮して、回折効率が最大となるように、カラー画像を構成する透明性着色インキの光透過特性と回折格子の格子間隔とを設定する。例えば、透明性着色インキとして、637nmの波長を中心とする光を選択的に透過する印刷インキを使用してカラー画像を形成し、それと対峙する回折格子パターンは、それを構成する回折格子の回折格子間隔を1.059μmと設定する。
【0021】
これを、図1と図2に示す回折格子パターンを有する画像表示体でさらに具体的に説明する。
例えば、回折格子パターンを有する画像表示体10と20のそれぞれにおいて、637nmの波長を中心とする光を選択的に透過する特性を有する透明性着色インキを使用してカラー画像5Aやカラー画像7Aを印刷し、これらと同一形状で見当を合わせて施す回折格子パターンのブレーズド回折格子3Aと階段状回折格子4Aは、その回折格子間隔を1.059μmに設定する。これにより、カラー画像5Aやカラー画像7Aを透過してきた光に対する回折光の回折効率が最大となって、各回折格子からの回折光が所望の色相でより明るく認識されるように、かつ各回折格子パターンに対応して観察される画像の色彩が鮮やかに認識されるようになり、その視認性や装飾的効果もより向上する。
【0022】
一方、カラー画像5Bやカラー画像7Bは534nmの波長を中心とする光を選択的に透過する透明性着色インキで形成し、これらと同一形状で見当を合わせて施す回折格子パターン13Bと14Bのそれぞれに対応するブレーズド型回折格子3Bと階段状回折格子4Bは、その回折格子間隔を0.888μmとすることにより、カラー画像5B、7Bを透過してきた光に対する回折光の回折効率が最大となるようになって、各回折格子からの回折光が所望の色相でより明るく認識されるように、かつ各回折格子パターンに対応して観察される画像の色彩が鮮やかに認識されるようになり、その視認性や装飾的効果もより向上する。
【0023】
図1ならびに図2に示す回折格子パターンは、上述の諸効果が顕著に現れるブレーズド型あるいは階段状の回折格子から構成された例で示してあるが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、その一部を構成する回折格子パターンの回折格子が図5や図6に示すような正弦波状の回折格子や矩形波状の回折格子であってもよい。
【0024】
また、本発明の回折格子パターンを有する画像表示体は、図8に示すように、その上部にカラー画像が位置していない回折格子パターン9を配置し、表示してあってもよい。カラー画像がある部分とない部分があることにより、表現が多様性に富むようになると共に、より複雑な構成とすることでセキュリティー性も高くなる。
【0025】
上述した以外に、本発明においては、回折格子パターンを2種類以上とし、さらにこれらの回折格子パターンを構成する回折格子の格子ピッチ、格子の傾き、格子深さ、格子方向などの少なくとも何れか一つを異なるものとすることにより、入射光を照射した時にそれぞれの回折格子パターンに対する光り方や明るさなどが各所において様々に異なって観察されるようにし、その意匠的効果をより向上するようにしてもよい。
【0026】
以上のような構成になる回折格子パターンを有する画像表示体におけるブレーズド型回折格子や階段状回折格子などよりなる回折格子パターンの形成方法としては、種々の方法が適用し得る。例えば、電子ビーム描画装置を用い、各回折格子パターン毎にエネルギー量を変化させ、格子の深さを制御させながら回折格子を描画していく方法や、複数枚のマスクパターンを用いて、イオンビームにより選択的に回折格子形成層をエッチングすることにより、格子の深さを所定の深さに制御しながら回折格子を形成していく方法が採用し得る。
【0027】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の回折格子パターンを有する画像表示体は、ブレーズド型や階段状の回折格子などで構成した回折格子パターンと所定の光透過特性を有するカラー画像を組み合わせることで、回折格子パターンに対応した画像が予め設計した色相で、極めて明るく、かつ安定した状態で視認性良好に観察できるようになる。また、回折格子パターンを複数個とし、それに対応するカラー画像も複数個として配置・表示することにより、装飾性やセキュリティー性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回折格子パターンを有する画像表示体の概略断面説明図である。
【図2】本発明の他の回折格子パターンを有する画像表示体の概略断面説明図である。
【図3】鋸刃状の断面形状を持つブレーズド型回折格子の概略構成説明図である。
【図4】4段階レベルの階段状回折格子の概略構成説明図である。
【図5】正弦波状の回折格子の概略構成説明図である。
【図6】矩形波状の回折格子の概略構成説明図である。
【図7】ブレーズド型回折格子における回折状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係る回折格子パターンを有する画像表示体の概略平面説明図である。
【符号の説明】
1、11・・・基材、2、12・・・熱可塑性樹脂層
3A、3B・・・ブレーズド型回折格子
4A、4B・・・階段状回折格子
5A、5B、7A、7B、17、18・・・カラー画像
6・・・金属反射層
9・・・回折格子パターン
10、20・・・回折格子パターンを有する画像表示体
13A、13B、14A、14B・・・回折格子パターン

Claims (5)

  1. 回折格子パターンを有する画像表示体であって、レリーフ型の回折格子からなる回折格子パターンが2つ以上配置してあると共に、前記2つ以上の回折格子パターンは、上部に回折格子の回折効率が最大となる波長を中心とする光を選択的に透過する透明性着色インキからなるカラー画像が設けられている1つ以上の回折格子パターンと、前記カラー画像が設けられていない1つ以上の回折格子パターンとからなることを特徴とする回折格子パターンを有する画像表示体。
  2. 前記カラー画像は、その下部に位置する回折格子パターンの回折格子での回折効率がそこで設定されている格子深さに対して最大となる波長を中心とする光を選択的に透過する透明性着色インキにて、当該回折格子パターンとは同一形状で見当を合わせて設けてなるものであることを特徴とする請求項1記載の回折格子パターンを有する画像表示体。
  3. 前記カラー画像が設けられている回折格子パターンが複数配置してあり、前記カラー画像が設けられている回折格子パターンにおいて、1つ以上の回折格子パターンの回折格子の格子ピッチはそれ以外の回折格子パターンの回折格子の格子ピッチとは異なるが、格子方向は同一に設定されていると共に、各回折格子パターンの上部には各回折格子パターンの回折格子の回折効率が最大となる波長を中心とする光を選択的に透過する透明性着色インキでカラー画像がそれぞれ設けてあることを特徴とする請求項1記載の回折格子パターンを有する画像表示体。
  4. 回折格子パターンの回折格子が、ブレーズド型回折格子であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回折格子パターンを有する画像表示体。
  5. 回折格子パターンの回折格子が、階段状回折格子であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回折格子パターンを有する画像表示体。
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