JP4351757B2 - 液晶配向膜、液晶素子および液晶性分子を配向させる方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶を配向させるため基板上に設けられている液晶配向膜に関する。また、本発明は、基板、液晶配向膜および液晶性分子から形成された液晶層が、この順に積層されている液晶素子にも関する。さらに、本発明は、50乃至90度の範囲の平均傾斜角で液晶性分子を配向させる方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
STN(Super Twisted Nematic)型液晶表示装置は、STNモードの液晶セル、二枚の偏光板およびSTNモードの液晶セルと偏光板との間に設けられる一枚または二枚の光学補償シート(位相差板)からなる。
液晶セルは、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。STN型液晶セルでは、棒状液晶性分子を180乃至360度に配向させるための配向膜が、二枚の基板に設けられる。
光学補償シートがないSTN型液晶表示装置では、棒状液晶分子の複屈折性のため、表示画像がイエローグリーンまたはイエローに着色する。表示画像の着色は、白黒表示でもカラー表示でも不都合である。光学補償シートは、このような着色を解消して、明るい鮮明な画像を得るために用いられる。光学補償シートにはまた、液晶セルの視野角を拡大する機能を付与する場合もある。光学補償シートとしては、延伸複屈折フイルムが従来から使用されている。延伸複屈折フイルムを用いたSTN型液晶表示装置用の光学補償シートについては、特開平7−104284号、同7−13021号の各公報に記載がある。
【0003】
延伸複屈折フイルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上にディスコティック液晶性分子を含む光学的異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。光学的異方性層は、ディスコティック液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。ディスコティック液晶性分子は、一般に大きな複屈折率を有する。そして、ディスコティック液晶性分子には、多様な配向形態がある。ディスコティック液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折フイルムでは得ることができない光学的性質を有する光学補償シートを製造することが可能になる。ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートについては、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。ただし、これらの光学補償シートは、主な用途としてTN型液晶表示装置を想定して設計されている。
【0004】
ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートを、STN型液晶表示装置に利用することが考えられる。STN型液晶表示装置では、90゜よりも大きく超ねじれ配向させた棒状液晶性分子を複屈折モードで用いる。STN型液晶表示装置には、能動素子(薄膜トランジスターやダイオード)がない単純マトリックス電極構造でも、時分割駆動により大きな画像の鮮明な表示が可能であるとの特徴がある。
ディスコティック液晶性分子を用いてSTN型液晶セルを光学補償するためには、ディスコティック液晶性分子を垂直に配向させる(好ましくは、さらに、ねじれ配向させる)必要がある。特開平9−26572号公報には、ディスコティック液晶性分子をねじれ配向させた光学補償シートが開示されている。さらに同公報の図面には、ディスコティック液晶性分子を垂直に配向させた状態が示されている。ただし、同公報に開示されている配向膜のうち、ディスコティック液晶性分子の垂直配向膜として実質的に有効であるのは、同公報の実施例2に記載されている磁場配向膜(SiO2 スパッタリング膜に磁場を印加しながら加熱したもの)である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平9−26572号公報に開示されている磁場配向膜では、ディスコティック液晶性分子を、垂直かつ均一な方向に安定に配向させることは、製造方法として難しい。
ディスコティック液晶性分子の垂直配向膜よりも、液晶セルに使用する棒状液晶性分子の垂直配向膜の方が研究が進んでいる。例えば、棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる垂直配向(Vertical Alignment)液晶モードの液晶セルでは、棒状液晶性分子を垂直に配向させる配向膜が必要である。棒状液晶性分子を配向させるために、様々な垂直配向膜が提案されている。
棒状液晶性分子とディスコティック液晶性分子では、分子構造も光学的性質も全く異なる。垂直配向についても、ディスコティック液晶性分子では、棒状液晶性分子とは異なり、単に垂直に配向させるだけではなく、ディスコティック液晶性分子の円盤面を一定の方向にそろえる必要がある(方向性が必要)。本発明者が研究を進めたところ、棒状液晶性分子の垂直配向膜として知られている配向膜の大部分は、ディスコティック液晶性分子を垂直かつ均一な方向に配向させる機能を示さなかった。
【0006】
本発明の目的は、液晶性分子(特にディスコティック液晶性分子)を実質的に垂直に配向させる機能を有する液晶配向膜を提供することである。
また、本発明の目的は、液晶性分子が実質的に垂直かつ均一な方向に安定に配向している液晶素子を提供することでもある。
さらに、本発明の目的は、液晶性分子を垂直かつ均一な方向に安定に配向させる方法を提供することでもある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(4)の液晶配向膜、下記(5)の液晶素子および下記(6)の液晶性分子を配向させる方法により達成された。
(1)液晶を配向させるため基板上に設けられている液晶配向膜であって、液晶配向膜が変性ポリビニルアルコールを含み、変性ポリビニルアルコールが側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する下記式(I)で表される繰り返し単位を2乃至80モル%含み、そして、変性ポリビニルアルコールが架橋していることを特徴とする液晶配向膜:
【0008】
【化2】
【0009】
式中、L1 は、単結合、−CO−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−O−、−CO−NH−アルキレン基−CO−O−および−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−からなる群より選ばれる連結基であり;L2 、L3 およびL4 は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−O−アルキレン基−および−アルキレン基−O−からなる群より選ばれる連結基であり;Ar1 、Ar2 、Ar3 およびAr4 は、それぞれ独立に、芳香族環または芳香族性複素環であり;そして、mおよびnは、0または1である。
(2)L 1 が、−CO−、−CO−NH−および−アルキレン基−からなる群より選ばれる連結基である(1)に記載の液晶配向膜。
(3)変性ポリビニルアルコールの水酸基と架橋剤との反応により変性ポリビニルアルコールが架橋している(1)に記載の液晶配向膜。
(4)架橋剤が二官能アルデヒドである(3)に記載の液晶配向膜。
【0010】
(5)基板、液晶配向膜および液晶性分子から形成された液晶層が、この順に積層されている液晶素子であって、液晶配向膜が(1)に記載の液晶配向膜であることを特徴とする液晶素子。
(6)(1)に記載の液晶配向膜を用いて、50乃至90度の範囲の平均傾斜角で液晶性分子を配向させる方法。
【0011】
【発明の効果】
本発明者は研究の結果、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位を2乃至80モル%含む変性ポリビニルアルコールを液晶配向膜に用いて、液晶性分子を実質的に垂直に配向させることに成功した。
上記の変性ポリビニルアルコールを含む液晶配向膜は、従来の配向膜よりも垂直配向膜としての機能が優れており、液晶性分子を実質的に垂直かつ均一な方向に安定に配向させることができる。
従来の垂直配向膜は、垂直配向膜を有する2枚の基板の間に液晶性分子を注入することで、液晶性分子を垂直に配向させていた。しかし、垂直配向膜を有する基板が1枚の場合は、基板と反対側の界面(空気界面)近傍の液晶性分子の傾斜角が小さくなり、液晶性分子の垂直配向が不充分であった。本発明の液晶配向膜を用いると、基板が1枚でも液晶性分子の垂直配向が達成できる。また、2枚の基板を用いる場合には、従来よりも良好な垂直配向を達成できる。
さらに、本発明では、変性ポリビニルアルコールを架橋させて使用する。これにより、変性ポリビニルアルコールを含む配向膜の強度が著しく改善される。従って、本発明の液晶配向膜を用いた液晶素子は、耐久性が優れているとの特徴もある。
【0012】
【発明の実施の形態】
[変性ポリビニルアルコールおよび液晶配向膜]
本発明は、(1)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位を2乃至80モル%含む変性ポリビニルアルコールを液晶配向膜に用いる。
【0013】
(1)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位 芳香族環の例には、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、トリフェニレン環およびピレン環が含まれる。芳香族性複素環は、一般に五員または六員の不飽和複素環である。複素環は最多二重結合を含むことが好ましい。芳香族性複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環およびピラジン環が含まれる。
芳香族性複素環よりも芳香族環の方が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。芳香族環および芳香族性複素環は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、カルボキシル、シアノ、アルキル基、シクロアルキル基およびアルコキシ基が含まれる。
上記アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
上記シクロアルキル基は、シクロヘキシルであることが好ましい。
上記アルコキシ基は、分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
【0014】
側鎖に含まれる芳香族環または芳香族性複素環の数は、2乃至4であり、2または3であることが好ましく、2であることが最も好ましい。
主鎖と最も主鎖側の芳香族環または芳香族性複素環との間は、直結せずに、連結基を介して連結することが好ましい。連結基の例には、−O−、−O−CO−、−O−CO−NH−、−O−CO−NH−アルキレン基−、−O−CO−NH−アルキレン基−O−、−O−CO−NH−アルキレン基−CO−O−および−O−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−が含まれる(左側が主鎖に結合し、右側が最も主鎖側の芳香族環または芳香族性複素環に結合する)。
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
少なくとも二つの芳香族環または芳香族性複素環は、単結合で直結していることが好ましい。少なくとも二つのベンゼン環が単結合で直結していることが特に好ましい。
【0015】
側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位は、下記式(I)で表されることが好ましい。
【0016】
【化3】
【0017】
式(I)において、L1 は、単結合、−CO−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−O−、−CO−NH−アルキレン基−CO−O−および−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−からなる群より選ばれる連結基である。−CO−、−CO−NH−および−アルキレン基−が好ましく、−CO−NH−が特に好ましい。
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
式(I)において、L2 、L3 およびL4 は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−O−アルキレン基−および−アルキレン基−O−からなる群より選ばれる連結基である。L2 、L3 およびL4 の少なくとも一つは、単結合であることが特に好ましい。
【0018】
式(I)において、Ar1 、Ar2 、Ar3 およびAr4 は、それぞれ独立に、芳香族環または芳香族性複素環である。芳香族環であることが好ましく、ベンゼン環であることがさらに好ましい。Ar1 、Ar2 およびAr3 は、p−フェニレンであることが特に好ましい。芳香族環および芳香族性複素環は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、前述した通りである。
式(I)において、mおよびnは、0または1である。mは0または1でnは0(芳香族環または芳香族性複素環の数が2または3)であることが好ましく、mおよびnは、それぞれ0(芳香族環または芳香族性複素環の数が2)であることが最も好ましい。
以下に、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位の例を示す。
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
【化9】
【0025】
【化10】
【0026】
【化11】
【0027】
【化12】
【0028】
【化13】
【0029】
【化14】
【0030】
【化15】
【0031】
【化16】
【0032】
【化17】
【0033】
【化18】
【0034】
【化19】
【0035】
【化20】
【0036】
【化21】
【0037】
【化22】
【0038】
【化23】
【0039】
【化24】
【0040】
【化25】
【0041】
【化26】
【0042】
【化27】
【0043】
【化28】
【0044】
【化29】
【0045】
【化30】
【0046】
【化31】
【0047】
【化32】
【0048】
【化33】
【0049】
【化34】
【0050】
【化35】
【0051】
【化36】
【0052】
【化37】
【0053】
【化38】
【0054】
【化39】
【0055】
【化40】
【0056】
【化41】
【0057】
【化42】
【0058】
【化43】
【0059】
【化44】
【0060】
【化45】
【0061】
【化46】
【0062】
【化47】
【0063】
【化48】
【0064】
【化49】
【0065】
【化50】
【0066】
【化51】
【0067】
【化52】
【0068】
【化53】
【0069】
【化54】
【0070】
【化55】
【0071】
【化56】
【0072】
変性ポリビニルアルコールは、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位を2乃至80モル%の範囲で含むことが好ましく、3乃至50モル%の範囲で含むことがさらに好ましい。
好ましい変性ポリビニルアルコールを、下記式(PV)で表す。
(PV)
−(VAl)x−(I)a−(VAc)y−
式中、VAlは、ビニルアルコールから誘導される繰り返し単位であり;Iは、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位であり;VAcは、酢酸ビニルから誘導される繰り返し単位であり;xは、20乃至95モル%(好ましくは30乃至98モル%)であり;aは、2乃至80モル%(好ましくは3乃至5モル%)であり;そして、yは0乃至30モル%(好ましくは2乃至20モル%)である。
変性ポリビニルアルコールの末端に、繰り返し単位とは異なる基が結合していてもよい。末端基の例には、アルキルチオ基が含まれる。
以下に、芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する変性ポリビニルアルコールの例を示す。繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0073】
PV1:−(VAl)80−(I−1)8 −(VAc)12−
PV2:−(VAl)53−(I−1)35−(VAc)12−
PV3:−(VAl)70−(I−1)10−(VAc)20−
PV4:−(VAl)74−(I−2)20−(VAc)6 −
PV5:−(VAl)65−(I−2)27−(VAc)12−
PV6:−(VAl)70−(I−2)10−(VAc)20−
PV7:−(VAl)78−(I−3)10−(VAc)12−S−n−C12H25
PV8:−(VAl)85−(I−3)13−(VAc)2 −S−n−C12H25
PV9:−(VAl)67−(I−3)21−(VAc)12−S−n−C12H25
【0074】
PV10:−(VAl)50−(I−4)38−(VAc)12−
PV11:−(VAl)53−(I−4)45−(VAc)2 −
PV12:−(VAl)31−(I−4)61−(VAc)8 −
PV13:−(VAl)80−(I−5)8 −(VAc)12−
PV14:−(VAl)76−(I−5)12−(VAc)12−
PV15:−(VAl)81−(I−5)15−(VAc)4 −
PV16:−(VAl)55−(I−6)44−(VAc)1 −
PV17:−(VAl)42−(I−6)56−(VAc)2 −
PV18:−(VAl)27−(I−6)61−(VAc)12−
【0075】
PV19:−(VAl)68−(I−7)20−(VAc)12−
PV20:−(VAl)65−(I−7)15−(VAc)20−
PV21:−(VAl)64−(I−7)28−(VAc)8 −
PV22:−(VAl)78−(I−8)21−(VAc)1 −S−n−C12H25
PV23:−(VAl)66−(I−8)30−(VAc)4 −S−n−C12H25
PV24:−(VAl)53−(I−8)35−(VAc)12−S−n−C12H25
PV25:−(VAl)63−(I−9)25−(VAc)12−
PV26:−(VAl)80−(I−9)18−(VAc)2 −
PV27:−(VAl)46−(I−9)34−(VAc)20−
【0076】
PV28:−(VAl)88−(I−10)10−(VAc)2 −
PV29:−(VAl)67−(I−10)21−(VAc)12−
PV30:−(VAl)62−(I−10)30−(VAc)8 −
PV31:−(VAl)81−(I−11)18−(VAc)1 −
PV32:−(VAl)73−(I−11)25−(VAc)2 −
PV33:−(VAl)58−(I−11)30−(VAc)12−
PV34:−(VAl)74−(I−12)25−(VAc)1 −
PV35:−(VAl)68−(I−12)30−(VAc)2 −
PV36:−(VAl)52−(I−12)40−(VAc)8 −
【0077】
PV37:−(VAl)63−(I−13)35−(VAc)2 −
PV38:−(VAl)55−(I−13)41−(VAc)4 −
PV39:−(VAl)63−(I−13)25−(VAc)12−
PV40:−(VAl)63−(I−14)25−(VAc)12−
PV41:−(VAl)40−(I−14)40−(VAc)20−
PV42:−(VAl)48−(I−14)48−(VAc)4 −
PV43:−(VAl)74−(I−15)25−(VAc)1 −
PV44:−(VAl)61−(I−15)31−(VAc)8 −
PV45:−(VAl)48−(I−15)40−(VAc)12−
【0078】
PV46:−(VAl)86−(I−16)12−(VAc)2 −
PV47:−(VAl)78−(I−16)18−(VAc)4 −
PV48:−(VAl)68−(I−16)24−(VAc)8 −
PV49:−(VAl)76−(I−17)22−(VAc)2 −
PV50:−(VAl)58−(I−17)30−(VAc)12−
PV51:−(VAl)50−(I−17)35−(VAc)15−
PV52:−(VAl)78−(I−18)10−(VAc)12−
PV53:−(VAl)70−(I−18)18−(VAc)12−
PV54:−(VAl)57−(I−18)31−(VAc)12−
【0079】
重合性基を変性ポリビニルアルコールに導入してもよい。重合性基を有する変性ポリビニルアルコールと重合性基を有する液晶性分子とを併用すると、変性ポリビニルアルコールと液晶性分子とを、液晶層と液晶配向膜との界面を介して化学的に結合させることができる。これにより、液晶配向膜を用いた液晶素子の耐久性を改善することができる。
重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位として変性ポリビニルアルコールに導入するか、あるいは、前記(1)の側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位に重合性基を導入する。(2)側鎖に重合性基を有する繰り返し単位、そして(3)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と重合性基とを有する繰り返し単位の順に説明する。
【0080】
(2)側鎖に重合性基を有する繰り返し単位
重合性基は、後述する液晶性分子の重合性基(Q)と重合反応させて、液晶性分子と変性ポリビニルアルコールとを、液晶層と液晶配向膜との界面を介して化学的に結合させる。従って、重合性基の種類は、後述する液晶性分子の重合性基(Q)の種類に応じて決定する。液晶性分子の重合性基(Q)は、後述するように、不飽和重合性基(後述する例示のQ1〜Q7)、エポキシ基(Q7)またはアジリジニル基(Q8)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。変性ポリビニルアルコールの重合性基も同様に、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが最も好ましい。
【0081】
主鎖と重合性基は、直結せずに、連結基を介して連結することが好ましい。連結基の例には、−O−、−O−CO−、−O−CO−NH−、−O−CO−NH−アルキレン基−、−O−CO−NH−アルキレン基−O−、−O−CO−NH−アルキレン基−CO−O−、−O−CO−NH−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−、−O−CO−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−および−O−アルキレン基−O−CO−が含まれる(左側が主鎖に結合し、右側が重合性基に結合する)。
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
上記アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の置換基の例は、(1)の芳香族環および芳香族性複素環の置換基の例と同様である。
側鎖は、二以上の重合性基を有していてもよい。
側鎖に重合性基を有する繰り返し単位は、下記式(II)で表されることが好ましい。
【0082】
【化57】
【0083】
式(II)において、L11は、単結合、−CO−、−CO−NH−、−CO−NH−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−O−、−CO−NH−アルキレン基−CO−O−、−CO−NH−アルキレン基−O−CO−、−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−、−CO−アルキレン基−O−CO−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−CO−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−および−アルキレン基−O−CO−からなる群より選ばれる連結基である。−CO−NH−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−O−、−CO−NH−アルキレン基−O−CO−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−CO−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−および−アルキレン基−O−CO−が好ましく、−CO−NH−アルキレン基−O−CO−が特に好ましい。
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
上記アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の置換基の例は、(1)の芳香族環および芳香族性複素環の置換基の例と同様である。
式(II)において、Qは、重合性基である。重合性基は、前述したように、液晶性分子の重合性基(Q)と同様の基であることが好ましい。
以下に、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位の例を示す。
【0084】
【化58】
【0085】
【化59】
【0086】
【化60】
【0087】
【化61】
【0088】
【化62】
【0089】
【化63】
【0090】
【化64】
【0091】
【化65】
【0092】
【化66】
【0093】
【化67】
【0094】
【化68】
【0095】
(3)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と重合性基とを有する繰り返し単位
前記(1)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位に、上記(2)で説明した重合性基を導入する。重合性基は、芳香族環または芳香族性複素環の置換基であることが好ましく、最も末端側の芳香族環または芳香族性複素環の置換基であることがさらに好ましい。
芳香族環または芳香族性複素環と重合性基は、直結せずに、連結基を介して連結することが好ましい。連結基の例には、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−O−アルキレン基−および−アルキレン基−O−が含まれる(左側が芳香族環または芳香族性複素環に結合し、右側が重合性基に結合する)。
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
芳香族環または芳香族性複素環は、二以上の重合性基を置換基として有していてもよい。
側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と重合性基とを有する繰り返し単位は、下記式(III)で表されることが好ましい。
【0096】
【化69】
【0097】
式(III)において、L21は、単結合、−CO−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−O−、−CO−NH−アルキレン基−CO−O−および−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−からなる群より選ばれる連結基である。−CO−、−CO−NH−および−アルキレン基−が好ましく、−CO−NH−が特に好ましい。
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
式(III)において、L22、L23、L24およびL25は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−O−アルキレン基−および−アルキレン基−O−からなる群より選ばれる連結基である。L2 、L3 およびL4 の少なくとも一つは、単結合であることが特に好ましい。
【0098】
式(III)において、Ar21、Ar22、Ar23およびAr24は、それぞれ独立に、芳香族環または芳香族性複素環である。芳香族環であることが好ましく、ベンゼン環であることがさらに好ましい。Ar21、Ar22およびAr23は、p−フェニレンであることが特に好ましい。芳香族環および芳香族性複素環は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、(1)の芳香族環および芳香族性複素環の置換基の例と同様である。
式(III)において、mおよびnは、0または1である。mは0または1でnは0(芳香族環または芳香族性複素環の数が2または3)であることが好ましく、mおよびnは、それぞれ0(芳香族環または芳香族性複素環の数が2)であることが最も好ましい。
式(III)において、pは、1、2または3である。pは、1または2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
以下に、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と重合性基とを有する繰り返し単位の例を示す。
【0099】
【化70】
【0100】
【化71】
【0101】
【化72】
【0102】
【化73】
【0103】
【化74】
【0104】
【化75】
【0105】
【化76】
【0106】
【化77】
【0107】
【化78】
【0108】
【化79】
【0109】
【化80】
【0110】
(2)側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を変性ポリビニルアルコールに導入する場合、変性ポリビニルアルコールは側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を0.1乃至10モル%含むことが好ましく、3乃至50モル%の範囲で含むことがさらに好ましい。
(3)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と重合性基とを有する繰り返し単位を用いる場合、変性ポリビニルアルコールは側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と重合性基とを有する繰り返し単位を2乃至80モル%含むことが好ましく、3乃至50モル%の範囲で含むことがさらに好ましい。
【0111】
(1)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位と(2)側鎖に重合性基を有する繰り返し単位とを含む変性ポリビニルアルコールを下記式(PVII)で表す。
(PVII)
−(VAl)x−(I)a−(II)b−(VAc)y−
式中、VAlは、ビニルアルコールから誘導される繰り返し単位であり;Iは、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位であり;IIは、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位であり;VAcは、酢酸ビニルから誘導される繰り返し単位であり;xは、20乃至95モル%(好ましくは30乃至95モル%)であり;aは、2乃至80モル%(好ましくは3乃至50モル%)であり;bは、0.1乃至10モル%(好ましくは0.2乃至5モル%)であり;そして、yは0乃至30モル%(好ましくは1乃至20モル%)である。
【0112】
(3)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と重合性基とを有する繰り返し単位を含む変性ポリビニルアルコールを下記式(PVIII)で表す。
(PVIII)
−(VAl)x−(III)c−(VAc)y−
式中、VAlは、ビニルアルコールから誘導される繰り返し単位であり;III は、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と重合性基とを有する繰り返し単位であり;xは、20乃至95モル%(好ましくは30乃至95モル%)であり;cは、2乃至80モル%(好ましくは3乃至50モル%)であり;そして、yは0乃至30モル%(好ましくは1乃至20モル%)である。
【0113】
以上の繰り返し単位を組み合わせた変性ポリビニルアルコールを用いてもよい。すなわち、(1)と(3)の繰り返し単位を有する変性ポリビニルアルコール、(2)と(3)の繰り返し単位を有する変性ポリビニルアルコール、あるいは(1)、(2)および(3)の繰り返し単位を有する変性ポリビニルアルコールを用いることもできる。
重合性基を有する変性ポリビニルアルコールの末端に、繰り返し単位とは異なる基が結合していてもよい。末端基の例には、アルキルチオ基が含まれる。
以下に、重合性基を有する変性ポリビニルアルコールの例を示す。繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0114】
PV101:−(VAl)61−(I−13)25−(II−1)2 −(VAc)12−
PV102:−(VAl)56−(I−13)30−(II−1)2 −(VAc)12−
PV103:−(VAl)51−(I−13)30−(II−1)5 −(VAc)12−
PV104:−(VAl)68−(I−13)25−(II−1)2 −(VAc)5 −
PV105:−(VAl)64−(I−13)30−(II−1)5 −(VAc)1 −
PV106:−(VAl)61−(I−13)30−(II−2)2 −(VAc)12−
PV107:−(VAl)61−(I−13)30−(II−4)2 −(VAc)12−
PV108:−(VAl)61−(I−13)30−(II−5)2 −(VAc)12−
PV109:−(VAl)61−(I−14)30−(II−1)2 −(VAc)12−
PV110:−(VAl)61−(I−20)30−(II−1)2 −(VAc)12−
【0115】
PV111:−(VAl)63−(III-9)25−(VAc)12−
PV112:−(VAl)56−(III-9)30−(VAc)12−
PV113:−(VAl)67−(III-9)30−(VAc)1 −
PV114:−(VAl)65−(III-9)30−(VAc)5 −
PV115:−(VAl)48−(III-9)40−(VAc)12−
PV116:−(VAl)63−(III-10)25−(VAc)12−
PV117:−(VAl)56−(III-10)30−(VAc)12−
PV118:−(VAl)67−(III-10)30−(VAc)1 −
PV119:−(VAl)65−(III-10)30−(VAc)5 −
PV120:−(VAl)48−(III-10)40−(VAc)12−
【0116】
PV121:−(VAl)61−(I−13)25−(III-9)2 −(VAc)12−
PV122:−(VAl)56−(I−13)30−(III-9)2 −(VAc)12−
PV123:−(VAl)46−(I−13)40−(III-9)2 −(VAc)12−
PV124:−(VAl)56−(I−16)30−(III-1)2 −(VAc)12−
PV125:−(VAl)48−(I−16)35−(III-2)5 −(VAc)12−
PV126:−(VAl)56−(I−20)25−(III-9)7 −(VAc)12−
PV127:−(VAl)49−(I−20)40−(III-10)10−(VAc)1 −
PV128:−(VAl)78−(I−38)15−(III-9)2 −(VAc)5 −
PV129:−(VAl)58−(I−38)25−(III-10)5 −(VAc)12−
PV130:−(VAl)48−(I−52)30−(III-11)10−(VAc)12−
【0117】
PV131:−(VAl)61−(II−1)2 −(III-9)25−(VAc)12−
PV132:−(VAl)53−(II−1)5 −(III-9)30−(VAc)12−
PV133:−(VAl)50−(II−1)10−(III-9)35−(VAc)5 −
PV134:−(VAl)53−(II−1)2 −(III-9)40−(VAc)5 −
PV135:−(VAl)61−(II−1)2 −(III-10)25−(VAc)12−
PV136:−(VAl)53−(II−2)5 −(III-10)30−(VAc)12−
PV137:−(VAl)50−(II−4)10−(III-10)35−(VAc)5 −
PV138:−(VAl)53−(II−1)5 −(III-10)30−(VAc)12−
PV139:−(VAl)61−(II−1)2 −(III-11)25−(VAc)12−
PV140:−(VAl)56−(II−4)2 −(III-11)30−(VAc)12−
【0118】
PV141:-(VAl)61-(I−13)23-(II−1)2 -(III-9)2 -(VAc)12-
PV142:-(VAl)61-(I−13)25-(II−1)1 -(III-9)1 -(VAc)12-
PV143:-(VAl)56-(I−13)30-(II−1)1 -(III-9)1 -(VAc)12-
PV144:-(VAl)51-(I−13)35-(II−1)1 -(III-9)1 -(VAc)12-
PV145:-(VAl)57-(I−13)40-(II−1)0.5-(III-9)0.5-(VAc)12-
PV146:-(VAl)56-(I−13)30-(II−2)1 -(III-10)1 -(VAc)12-
PV147:-(VAl)51-(I−13)30-(II−4)1 -(III-10)5 -(VAc)12-
PV148:-(VAl)56-(I−14)30-(II−1)1 -(III-9)1 -(VAc)12-
PV149:-(VAl)56-(I−16)30-(II−1)1 -(III-9)1 -(VAc)12-
PV150:-(VAl)56-(I−38)30-(II−1)1 -(III-9)1 -(VAc)12-
【0119】
親水性基を変性ポリビニルアルコールに導入してもよい。親水性基を変性ポリビニルアルコールに導入することで、水性溶媒を用いて配向膜を形成することができる。ポリビニルアルコールは多少変性しても、かなり強い親水性を示す水酸基を多数含むポリマーであるため、親水性が不充分になる(水不溶性になる)ことは全く予想外であった。
親水性基は、側鎖に親水性基を有する繰り返し単位として変性ポリビニルアルコールに導入するか、あるいは、前記(1)の側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位に親水性基を導入する。(4)側鎖に親水性基を有する繰り返し単位、そして(5)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と親水性基とを有する繰り返し単位の順に説明する。
【0120】
(2)側鎖に親水性基を有する繰り返し単位
親水性基は、ポリビニルアルコールの水酸基よりも強い親水性を示す必要がある。ポリビニルアルコールの水酸基よりも強い親水性を示す基を有する繰り返し単位とは、その繰り返し単位に代えてビニルアルコールから誘導される繰り返し単位を用いた変性ポリビニルアルコールよりも、その繰り返し単位を用いた変性ポリビニルアルコールの方が水に対する溶解度が高くなる繰り返し単位を意味する。
そのような親水性基として、アニオン性基、カチオン性基またはノニオン性基を用いることができる。アニオン性基の例には、カルボン酸基およびスルホン酸基が含まれる。アルコラートやフェノラートもアニオン性基として機能できる。カチオン性基の例には、アンモニウム基が含まれる。アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、ヒドラジノ基、ヒドラジド基、カルバモイル基やスルファモイル基もカチオン性基として機能できる。アニオン性基やカチオン性基は、塩の状態であることが好ましい。アニオン性基の対イオンとしては、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンが好ましい。カチオン性基の対イオンとしては、ハロゲンイオンが好ましい。ノニオン性基(水酸基よりも強い親水性を示すノニオン性基)の例には、ポリエチレングリコールからなる基が含まれる。
以下に親水性基の例を示す。
【0121】
【化81】
【0122】
【化82】
【0123】
【化83】
【0124】
【化84】
【0125】
【化85】
【0126】
主鎖と親水性基は、直結せずに、連結基を介して連結することが好ましい。連結基の例には、−O−、−O−CO−、−O−CO−NH−、−O−CO−NH−アルキレン基−、−O−CO−NH−アルキレン基−O−、−O−CO−NH−アルキレン基−CO−O−、−O−CO−NH−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−、−O−CO−NH−アリーレン基−、−O−CO−アルキレン基−、−O−CO−アルケニレン基−、−O−CO−アリーレン基−、−O−CO−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−、−O−アルキレン基−および−O−アルキレン基−O−CO−が含まれる(左側が主鎖に結合し、右側が親水性基に結合する)。
【0127】
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
上記アルケニレン基は、分岐を有していてもよい。アルケニレン基の炭素原子数は、2乃至30であることが好ましく、2乃至20であることがより好ましく、2乃至15であることがさらに好ましく、2乃至12であることが最も好ましい。
上記アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の置換基の例は、(1)の芳香族環および芳香族性複素環の置換基の例と同様である。
側鎖は、二以上の親水性基を有していてもよい。二種類以上の親水性基を併用(すなわち両性基を使用)することもできる。
側鎖に親水性基を有する繰り返し単位は、下記式(IV)で表されることが好ましい。
【0128】
【化86】
【0129】
式(IV)において、L31は、単結合、−CO−、−CO−NH−、−CO−NH−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−O−、−CO−NH−アルキレン基−CO−O−、−CO−NH−アルキレン基−O−CO−、−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−、−CO−NH−アリーレン基−、−CO−アルキレン基−、−CO−アルケニレン基−、−CO−アリーレン基−、−CO−アルキレン基−O−CO−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−CO−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−、−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−、−アルキレン基−および−アルキレン基−O−CO−からなる群より選ばれる連結基である。
【0130】
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
上記アルケニレン基は、分岐を有していてもよい。アルケニレン基の炭素原子数は、2乃至30であることが好ましく、2乃至20であることがより好ましく、2乃至15であることがさらに好ましく、2乃至12であることが最も好ましい。
上記アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の置換基の例は、(1)の芳香族環および芳香族性複素環の置換基の例と同様である。
式(IV)において、Hyは、ポリビニルアルコールの水酸基よりも強い親水性を示す基である。親水性基の例(Hy)は、前述した通りである。
以下に、側鎖に親水性基を有する繰り返し単位の例を示す。
【0131】
【化87】
【0132】
【化88】
【0133】
【化89】
【0134】
【化90】
【0135】
【化91】
【0136】
【化92】
【0137】
【化93】
【0138】
【化94】
【0139】
【化95】
【0140】
【化96】
【0141】
【化97】
【0142】
【化98】
【0143】
【化99】
【0144】
【化100】
【0145】
【化101】
【0146】
【化102】
【0147】
【化103】
【0148】
【化104】
【0149】
【化105】
【0150】
【化106】
【0151】
【化107】
【0152】
【化108】
【0153】
【化109】
【0154】
(5)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と親水性基とを有する繰り返し単位
前記(1)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位に、親水性基を導入する。親水性基は、(4)で説明したポリビニルアルコールの水酸基よりも強い親水性を示す基(Hy)であることが好ましい。親水性基は、芳香族環または芳香族性複素環の置換基であることが好ましく、最も主鎖側の芳香族環または芳香族性複素環の置換基であることがさらに好ましい。
芳香族環または芳香族性複素環と親水性基は、連結基を介して連結してもよい。連結基の例には、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−O−アルキレン基−および−アルキレン基−O−が含まれる(左側が芳香族環または芳香族性複素環に結合し、右側が親水性基に結合する)。
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
芳香族環または芳香族性複素環は、二以上の親水性基を置換基として有していてもよい。
側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と親水性基とを有する繰り返し単位は、下記式(V)で表されることが好ましい。
【0155】
【化110】
【0156】
式(V)において、L41は、単結合、−CO−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−、−CO−NH−アルキレン基−O−、−CO−NH−アルキレン基−CO−O−および−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−からなる群より選ばれる連結基である。−CO−、−CO−NH−および−アルキレン基−が好ましく、−CO−NH−が特に好ましい。
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
式(V)において、L42、L43、L44およびL45は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−アルキレン基−、−O−アルキレン基−および−アルキレン基−O−からなる群より選ばれる連結基である。L42、L43およびL44の少なくとも一つは、単結合であることが特に好ましい。
【0157】
式(V)において、Ar41、Ar42、Ar43およびAr44は、それぞれ独立に、芳香族環または芳香族性複素環である。芳香族環であることが好ましく、ベンゼン環であることがさらに好ましい。Ar41、Ar42およびAr43は、p−フェニレン(Ar41については、L41とL42、L43またはL44との関係がパラ位)であることが特に好ましい。芳香族環および芳香族性複素環は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、(1)の芳香族環および芳香族性複素環の置換基の例と同様である。
式(V)において、Hyは、親水性基である。親水性基(Hy)の定義および例は、(2)の側鎖に親水性基を有する繰り返し単位と同様である。
式(V)において、mおよびnは、0または1である。mは0または1でnは0(芳香族環または芳香族性複素環の数が2または3)であることが好ましく、mおよびnは、それぞれ0(芳香族環または芳香族性複素環の数が2)であることが最も好ましい。
式(V)において、pは、1、2または3である。pは、1または2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
以下に、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と親水性基とを有する繰り返し単位の例を示す。
【0158】
【化111】
【0159】
【化112】
【0160】
【化113】
【0161】
【化114】
【0162】
【化115】
【0163】
【化116】
【0164】
【化117】
【0165】
【化118】
【0166】
【化119】
【0167】
【化120】
【0168】
【化121】
【0169】
【化122】
【0170】
【化123】
【0171】
【化124】
【0172】
【化125】
【0173】
【化126】
【0174】
【化127】
【0175】
【化128】
【0176】
【化129】
【0177】
【化130】
【0178】
【化131】
【0179】
【化132】
【0180】
【化133】
【0181】
【化134】
【0182】
【化135】
【0183】
【化136】
【0184】
【化137】
【0185】
【化138】
【0186】
【化139】
【0187】
(4)側鎖に親水性基を有する繰り返し単位を変性ポリビニルアルコールに導入する場合、変性ポリビニルアルコールは側鎖に親水性基を有する繰り返し単位を3乃至90モル%含むことが好ましく、4乃至70モル%の範囲で含むことがさらに好ましい。
(5)側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と親水性基とを有する繰り返し単位を用いる場合、変性ポリビニルアルコールは側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と親水性基とを有する繰り返し単位を2乃至80モル%含むことが好ましく、3乃至50モル%の範囲で含むことがさらに好ましい。
【0188】
(4)側鎖に親水性基を有する繰り返し単位を含む変性ポリビニルアルコールを下記式(PVIV)で表す。
(PVIV)
−(VAl)x−(I)a−(IV)d−(VAc)y−
式中、VAlは、ビニルアルコールから誘導される繰り返し単位であり;Iは、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する繰り返し単位であり;IVは、側鎖に親水性基を有する繰り返し単位であり;VAcは、酢酸ビニルから誘導される繰り返し単位であり;xは、20乃至95モル%(好ましくは30乃至95モル%)であり;aは、2乃至80モル%(好ましくは3乃至50モル%)であり;dは、3乃至90モル%(好ましくは4乃至70モル%)であり;そして、yは0乃至30モル%(好ましくは1乃至20モル%)である。
【0189】
側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と親水性基とを有する繰り返し単位を含む変性ポリビニルアルコールを下記式(PVV)で表す。
(PVV)
−(VAl)x−(V)e−(VAc)y−
式中、VAlは、ビニルアルコールから誘導される繰り返し単位であり;Vは、側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個と親水性基とを有する繰り返し単位であり;xは、20乃至95モル%(好ましくは30乃至95モル%)であり;eは、2乃至80モル%(好ましくは3乃至50モル%)であり;そして、yは0乃至30モル%(好ましくは1乃至20モル%)である。
【0190】
以上の繰り返し単位をを組み合わせた変性ポリビニルアルコールを用いてもよい。すなわち、(1)と(5)の繰り返し単位を有する変性ポリビニルアルコール、(4)と(5)の繰り返し単位を有する変性ポリビニルアルコール、あるいは(1)、(4)および(5)の繰り返し単位を有する変性ポリビニルアルコールを用いることもできる。
親水性基を有する変性ポリビニルアルコールの末端に、繰り返し単位とは異なる基が結合していてもよい。末端基の例には、アルキルチオ基が含まれる。
以下に、親水性基を有する変性ポリビニルアルコールの例を示す。繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0191】
PV201:−(VAl)23−(I−13)25−(IV−5)40−(VAc)12−
PV202:−(VAl)23−(I−14)25−(IV−5)40−(VAc)12−
PV203:−(VAl)23−(I−13)25−(IV−14)40−(VAc)12−
PV204:−(VAl)23−(I−13)30−(IV−5)35−(VAc)12−
PV205:−(VAl)3 −(I−13)40−(IV−14)45−(VAc)12−
PV206:−(VAl)23−(I−13)30−(IV−19)35−(VAc)12−
PV207:−(VAl)23−(I−13)30−(IV−22)35−(VAc)12−
PV208:−(VAl)23−(I−13)30−(IV−26)35−(VAc)12−
PV209:−(VAl)23−(I−20)30−(IV−3)35−(VAc)12−
PV210:−(VAl)23−(I−27)30−(IV−11)35−(VAc)12−
【0192】
PV211:−(VAl)63−(V−1)25−(VAc)12−
PV212:−(VAl)58−(V−1)30−(VAc)12−
PV213:−(VAl)63−(V−5)25−(VAc)12−
PV214:−(VAl)58−(V−5)30−(VAc)12−
PV215:−(VAl)63−(V−7)25−(VAc)12−
PV216:−(VAl)58−(V−7)30−(VAc)12−
PV217:−(VAl)63−(V−9)25−(VAc)12−
PV218:−(VAl)58−(V−9)30−(VAc)12−
PV219:−(VAl)63−(V−11)25−(VAc)12−
PV220:−(VAl)58−(V−11)30−(VAc)12−
【0193】
PV221:−(VAl)22−(I−13)30−(V−1)30−(VAc)12−
PV222:−(VAl)12−(I−13)30−(V−1)40−(VAc)12−
PV223:−(VAl)22−(I−13)30−(V−5)30−(VAc)12−
PV224:−(VAl)12−(I−13)30−(V−5)40−(VAc)12−
PV225:−(VAl)22−(I−13)30−(V−7)30−(VAc)12−
PV226:−(VAl)12−(I−13)30−(V−7)40−(VAc)12−
PV227:−(VAl)22−(I−13)30−(V−9)30−(VAc)12−
PV228:−(VAl)12−(I−13)30−(V−9)40−(VAc)12−
PV229:−(VAl)22−(I−13)30−(V−11)30−(VAc)12−
PV230:−(VAl)12−(I−13)30−(V−11)40−(VAc)12−
【0194】
PV231:−(VAl)66−(IV−3)2 −(V−2)30−(VAc)2 −
PV232:−(VAl)63−(IV−3)2 −(V−3)30−(VAc)5 −
PV233:−(VAl)58−(IV−3)2 −(V−4)30−(VAc)10−
PV234:−(VAl)63−(IV−3)2 −(V−8)30−(VAc)5 −
PV235:−(VAl)63−(IV−4)2 −(V−12)30−(VAc)5 −
PV236:−(VAl)63−(IV−4)2 −(V−19)30−(VAc)5 −
PV237:−(VAl)66−(IV−4)2 −(V−21)30−(VAc)2 −
PV238:−(VAl)66−(IV−4)2 −(V−23)30−(VAc)2 −
PV239:−(VAl)63−(IV−19)5 −(V−26)30−(VAc)2 −
PV240:−(VAl)63−(IV−19)5 −(V−29)30−(VAc)2 −
【0195】
PV241:-(VAl)23-(I−13)30-(IV−5)30-(V-1)5 -(VAc)12-
PV242:-(VAl)18-(I−13)35-(IV−5)30-(V-1)10-(VAc)12-
PV243:-(VAl)23-(I−13)30-(IV−14)30-(V-5)5 -(VAc)12-
PV244:-(VAl)13-(I−13)35-(IV−14)30-(V-5)10-(VAc)12-
PV245:-(VAl)23-(I−13)30-(IV−19)30-(V-7)5 -(VAc)12-
PV246:-(VAl)13-(I−13)35-(IV−19)30-(V-7)10-(VAc)12-
PV247:-(VAl)30-(I−13)30-(IV−22)30-(V-9)5 -(VAc)5 -
PV248:-(VAl)23-(I−14)35-(IV−3)30-(V-9)10-(VAc)2 -
PV249:-(VAl)33-(I−20)30-(IV−11)30-(V-11)5 -(VAc)2 -
PV250:-(VAl)23-(I−27)35-(IV−26)30-(V-11)10-(VAc)2 -
【0196】
変性ポリビニルアルコールの重合度は、200乃至5000であることが好ましく、300乃至3000であることが好ましい。変性ポリビニルアルコールの分子量は、9000乃至200000であることが好ましく、13000乃至130000であることがさらに好ましい。
二種類以上の変性ポリビニルアルコールを併用してもよい。
【0197】
本発明では、変性ポリビニルアルコールを架橋させて使用する。架橋反応は、配向膜の塗布液の塗布と同時または塗布後に実施することが好ましい。
架橋剤を用いて、変性ポリビニルアルコールの水酸基と架橋剤との反応により、変性ポリビニルアルコールを架橋させることができる。架橋剤の例には、アルデヒド、N−メチロール化合物(例、ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントイン)、ジオキサン(例、2,3−ジヒドロキシジオキサン)、カルベニウム、2−ナフタレートスルホナート、1,1−ビスピロリジノ−1−クロロピリジニウム、1−モルホリノカルボニル−3−(スルホナトアミノメチル)、活性ビニル化合物(例、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホン)メタン、N,N’−メチレンビス−[β−(ビニスルホニル)プロピオンアミド)、活性ハロゲン化合物(例、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン)およびイソオキサゾール類が含まれる。アルデヒド(例、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、マロンアルデヒド、フタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、イソフタルアルデヒド、ジアルデヒド澱粉)が好ましく、二官能以上のアルデヒドがさらに好ましく、二官能のアルデヒドが最も好ましい。
アルデヒドは、変性ポリビニルアルコールの水酸基とアセタール化反応して、変性ポリビニルアルコールを架橋する。二官能アルデヒドを用いて得られる架橋している繰り返し単位を、下記式(VI)に示す。
【0198】
【化140】
【0199】
式中、L51は、二官能アルデヒドの二つのアルデヒドを連結していた連結基である。
変性ポリビニルアルコールの水酸基とアルデヒドとのアセタール化反応は、酸性の条件下で進行する。反応条件を酸性にするために、無機酸(例、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸)あるいは有機酸(例、ジクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロル酢酸)を、配向膜の塗布液に添加することが好ましい。
架橋剤の使用量は、配向膜の塗布量の0.1乃至20重量%であることが好ましく、0.5乃至15重量%であることがさらに好ましい。なお、未反応のまま配向膜中に残存する架橋剤の量は、配向膜の塗布量の1.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0200】
液晶配向膜の厚さは、0.1乃至10μmであることが好ましい。
液晶配向膜の形成において、ラビング処理を実施することが好ましい。ラビング処理は、上記の変性ポリビニルアルコールを含む膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。
液晶配向膜を用いて液晶性分子を配向させてから、その配向状態のまま液晶性分子を固定して液晶層を形成し、液晶層を基板上に転写してもよい。配向状態で固定された液晶性分子は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。本発明の液晶配向膜は、ディスコティック液晶性分子の垂直配向に用いると特に効果がある。
【0201】
[基板]
基板の種類は、液晶素子(基板、液晶配向膜および液晶性分子の積層体)の用途に応じて決定する。
液晶素子を、液晶セルとして用いる場合、透明電極層(例、ITO)が設けられたガラス基板が普通に用いられる。透明電極層の上に上記の液晶配向膜を形成した基板を二枚準備し、液晶配向膜が対面するように配置し、その間隙に(後述する)棒状液晶性分子を封入して、液晶セルを形成する。間隙は、スペーサーにより形成する。
液晶素子を、光学補償シートとして用いる場合、基板として透明ポリマーフイルムが普通に用いられる。ポリマーフイルムは、光学的異方性が小さいことが好ましい。透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。光学的異方性が小さいとは、具体的には、面内レターデーション(Re)が10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向のレターデーション(Rth)は、40nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)は、それぞれ下記式で定義される。
Re=(nx−ny)×d
Rth=[{(nx+ny)/2}−nz]×d
式中、nxおよびnyは、透明支持体の面内屈折率であり、nzは透明支持体の厚み方向の屈折率であり、そしてdは透明支持体の厚さである。
【0202】
液晶セルの表示モードの種類によっては、光学補償シートの基板として光学的異方性のポリマーフイルムが用いられる場合もある。すなわち、液晶層の光学的異方性にポリマーフイルムの光学的異方性も加えて、液晶セルの光学的異方性に対応する(光学的に補償する)場合もある。そのような目的で光学的異方性ポリマーフイルムを使用する場合、ポリマーフイルムの面内レターデーション(Re)は、20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。また、厚み方向のレターデーション(Rth)は、80nm以上であることが好ましく、120nm以上であることがさらに好ましい。
ポリマーフイルムを形成するポリマーは、光学的等方性とするか、光学的異方性とするかに応じて決定する。光学的等方性が要求される場合は、一般にガラスまたはセルロースエステルが用いられる。光学的異方性が要求される場合は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。合成ポリマーフイルムを延伸することによって、光学的異方性を得る。セルロースエステルまたは合成ポリマーのフイルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
光学補償シートの基板の厚さは、20乃至500μmであることが好ましく、50乃至200μmであることがさらに好ましい。
光学補償シートの基板とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは光学的異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
【0203】
[液晶層]
液晶層は、液晶性分子から形成する。上記の液晶配向膜は、50乃至90度の範囲の平均傾斜角で液晶性分子を実質的に垂直に配向させる機能を有する。
液晶性分子としては、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子が好ましい。前述したように、液棒状液晶性分子の傾斜角は棒状液晶性分子の長軸方向と基板平面との角度を意味し、ディスコティック液晶性分子の傾斜角は、ディスコティック液晶性分子の円盤面と基板平面との角度を意味する。
液晶素子を、液晶セルとして用いる場合、棒状液晶性分子を用いることが特に好ましい。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。棒状液晶性分子を実質的に垂直に配向させた液晶セルとしては、VA(Vertically Aligned)モードの液晶セルが代表的である。VAモードの液晶セルを用いた液晶表示装置については、日経マイクロデバイスNo.136、147頁(1996)、特開平2−176625号公報および特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0204】
液晶素子を、光学補償シートとして用いる場合、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子を好ましく用いることができる。ディスコティック液晶性分子を用いることが特に好ましい。
光学補償シートに用いる液晶性分子は、実質的に配向させた状態で固定することが好ましく、重合により固定することがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性分子は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、ディスコティック液晶性分子は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
【0205】
D(−L−Q)n
式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Qは重合性基であり;そして、nは4乃至12の整数である。
上記式の円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
【0206】
【化141】
【0207】
【化142】
【0208】
【化143】
【0209】
【化144】
【0210】
【化145】
【0211】
【化146】
【0212】
【化147】
【0213】
【化148】
【0214】
【化149】
【0215】
前記式において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2乃至12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6乃至10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基)を有していてもよい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基を意味し、ARはアリーレン基を意味する。
【0216】
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
【0217】
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L21:−S−AL−
L22:−S−AL−O−
L23:−S−AL−O−CO−
L24:−S−AL−S−AL−
L25:−S−AR−AL−
【0218】
なお、STNモードのような棒状液晶性分子がねじれ配向している液晶セルを、光学的に補償するためには、ディスコティック液晶性分子もねじれ配向させることが好ましい。上記AL(アルキレン基またはアルケニレン基)に、不斉炭素原子を導入すると、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。また、不斉炭素原子を含む光学活性を示す化合物(カイラル剤)を光学的異方性層に添加しても、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。
【0219】
前記式の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)の例を以下に示す。
【0220】
【化150】
【0221】
【化151】
【0222】
【化152】
【0223】
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1〜Q7)、エポキシ基(Q7)またはアジリジニル基(Q8)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。
前記式において、nは4乃至12の整数である。具体的な数字は、ディスコティックコア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0224】
二種類以上のディスコティック液晶性分子を併用してもよい。例えば、以上述べたような重合性ディスコティック液晶性分子と非重合性ディスコティック液晶性分子とを併用することができる。
非重合性ディスコティック液晶性分子は、前述した重合性ディスコティック液晶性分子の重合性基(Q)を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性分子は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−L−R)n
式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Rは水素原子またはアルキル基であり;そして、nは4乃至12の整数である。
上記式の円盤状コア(D)の例は、LQ(またはQL)をLR(またはRL)に変更する以外は、前記の重合性ディスコティック液晶分子の例と同様である。また、二価の連結基(L)の例も、前記の重合性ディスコティック液晶分子の例と同様である。
Rのアルキル基は、炭素原子数が1乃至40であることが好ましく、1乃至30であることがさらに好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも直鎖状アルキル基の方が好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数が1乃至30の直鎖状アルキル基であることが特に好ましい。
【0225】
光学補償シートに用いる液晶層は、液晶性分子、あるいは下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む塗布液を、液晶配向膜の上に塗布することで形成する。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0226】
液晶性分子の重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20重量%であることが好ましく、0.5乃至5重量%であることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 乃至50J/cm2 であることが好ましく、100乃至800mJ/cm2 であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
光学補償シートに用いる液晶層の厚さは、0.1乃至20μmであることが好ましく、0.5乃至15μmであることがさらに好ましく、1乃至10μmであることが最も好ましい。
【0227】
[液晶表示装置]
液晶素子は、実質的に垂直に配向させる液晶性分子の種類に応じて、液晶セルまたは光学補償シートとして液晶表示装置に使用できる。
棒状液晶性分子を実質的に垂直に配向させた液晶セルとしては、前述したように、VA(Vertically Aligned)モードの液晶セルが代表的である。
ディスコティック液晶性分子を実質的に垂直に配向させた光学補償シートは、STN(Super Twisted Nematic)モードの液晶セルを用いるSTN型液晶表示装置において特に有効である。
液晶表示装置は、液晶セル、液晶セルの両側に配置された一対の偏光素子、液晶セルと一方または双方の偏光素子との間に配置された一枚または二枚の光学補償シートからなる。
【0228】
【実施例】
[実施例1]
厚さ100μm、サイズ270mm×100mmのトリアセチルセルロースフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を透明基板として用いた。
透明基板の上に、以下の組成の塗布液を、バーコーターを用いて塗布した。塗布層を、80℃の温風で10分間乾燥し、表面をラビング処理して、垂直配向膜を形成した。
【0229】
────────────────────────────────────
垂直配向膜塗布液
────────────────────────────────────
変性ポリビニルアルコール(PV39) 1重量部
N−メチルピロリドン 4.8重量部
メチルエチルケトン 19.2重量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.05重量部
硫酸 0.01重量部
────────────────────────────────────
【0230】
【化153】
【0231】
垂直配向膜の上に、以下の組成の塗布液をエクストルージョン法により塗布した。
【0232】
【0233】
【化154】
【0234】
塗布層を130℃に加熱して、ディスコティック液晶性化合物を垂直に配向させた。塗布層を130℃に加熱した状態で、4秒間紫外線を照射し、ディスコティック液晶性化合物の末端ビニル基を重合させ、配向状態を固定した。このようにして、光学補償シートを作製した。
エリプソメーターを用いて光学補償シートの面内レターデーションを測定し、その角度依存性から平均傾斜角を求めたところ、80゜であった。
光学補償シートを90℃、相対湿度95%の条件下で300時間放置したが、液晶性化合物は均一な配向状態を保っていた。
【0235】
[実施例2]
グルタルアルデヒド(架橋剤)に代えて、グリオキサール(架橋剤)を同量用いた以外は、実施例1と同様に光学補償シートを作製して評価した。ディスコティック液晶性分子の平均傾斜角は、75゜であった。
光学補償シートを90℃、相対湿度95%の条件下で300時間放置したが、液晶性化合物は均一な配向状態を保っていた。
【0236】
[実施例3]
グルタルアルデヒド(架橋剤)に代えて、マロンアルデヒド(架橋剤)を同量用いた以外は、実施例1と同様に光学補償シートを作製して評価した。ディスコティック液晶性分子の平均傾斜角は、85゜であった。
光学補償シートを90℃、相対湿度95%の条件下で300時間放置したが、液晶性化合物は均一な配向状態を保っていた。
【0237】
[比較例1]
無機垂直配向膜形成材料(EXP−OA004、日産化学工業(株)製)をメタノールで希釈し、固形分を2重量%とした。これをガラス板上に0.4μmとなるようにバーコーターで塗布し、140゜で10分間乾燥して、配向膜を形成した。
配向膜をラビングした後、アンチパラセルを二つ作成した。一方のセルには、棒状液晶性分子(MBBA)を挿入した。他方のセルには、実施例1で用いた光学的異方性層塗布液からメチルエチルケトンを蒸発させて固めたもの(ディスコティック液晶性分子)を挿入した。
それぞれのセルについて、液晶性分子の配向状態を調べた。棒状液晶性分子を挿入したセルでは、棒状液晶性分子がガラス板に垂直な方向にネマチック配向していた。これに対して、ディスコティック液晶性分子を挿入したセルでは、平均傾斜角が30゜であり、垂直配向(50〜90゜)にはならなかった。
使用した無機垂直配向膜形成材料は、棒状液晶性分子用の垂直配向膜として市販されており、最も普通に使用されている。他の市販の棒状液晶性分子用垂直配向膜を用いた実験結果から、市販の棒状液晶性分子用垂直配向膜は、ディスコティック液晶性分子を垂直に配向させる機能が不充分であることが判明した。
Claims (6)
- 液晶を配向させるため基板上に設けられている液晶配向膜であって、液晶配向膜が変性ポリビニルアルコールを含み、そして、変性ポリビニルアルコールが側鎖に芳香族環または芳香族性複素環を二個、三個または四個有する下記式(I)で表される繰り返し単位を2乃至80モル%含み、そして、変性ポリビニルアルコールが架橋していることを特徴とする液晶配向膜:
- L 1 が、−CO−、−CO−NH−および−アルキレン基−からなる群より選ばれる連結基である請求項1に記載の液晶配向膜。
- 変性ポリビニルアルコールの水酸基と架橋剤との反応により変性ポリビニルアルコールが架橋している請求項1に記載の液晶配向膜。
- 架橋剤が二官能アルデヒドである請求項3に記載の液晶配向膜。
- 基板、液晶配向膜および液晶性分子から形成された液晶層が、この順に積層されている液晶素子であって、液晶配向膜が請求項1に記載の液晶配向膜であることを特徴とする液晶素子。
- 請求項1に記載の液晶配向膜を用いて、50乃至90度の範囲の平均傾斜角で液晶性分子を配向させる方法。
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