JP4351682B2 - 瓦の成形装置 - Google Patents

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本発明は、従来の瓦成形方法では、成型できなかった形状を成形可能にする様にした瓦の成形装置及び成形方法に関する。
(従来技術1)
従来の瓦成形方式は、上下型(金型)が鉛直方向上下に移動して原料を加圧することによって成形していたため、上下方向の中間に空間部が存在する形状(鉤状、半円リング状等)の成形は、空間部を成形する部分形成型が、加圧成形後の金型上昇時に鉤部等における空間部の上方成形部に当接し、引っ掛かることになり、鉤部等の成形は不可能であった。
(従来技術1の例A)
従来成形不可であったものの一例は、耐風瓦や雪止め瓦があった。
耐風瓦としては、特開平8−93141号公報(特許文献1)の〔請求項3〕に記載され、本件明細書の図12乃至図15に図示された係止耐風厚平形瓦が知られている。
即ち、従来技術1の例Aの係止耐風厚平形瓦は、桟覆部aと差込受部bとの同段葺き合わせ部分がほぼ瓦1枚の厚さに納まる葺き合わせ構造をとる厚平形系瓦において、差込受部bの頭部c側端に導水帯dと水返しeによって分離されかつ瓦裏面とほぼ同じレベルの表面を有する係止受部fを形成し、尻部g側の中央付近に尻切欠部hを形成してこの上面部分に瓦表面とほぼ同じかないしはやや高い裏面部分を有する係止突起iを形成してなる瓦であって、葺き合わせたとき斜め下段側瓦の係止突起iが斜め上段側瓦の係止受部fを抑止し振れ止め係止するものであった。
上記従来技術1の例Aの係止耐風厚平形瓦では、上述の様に、金型の移動方法の関係から、尻部g係止突起iの形成に際して、尻部g側の中央付近に尻切欠部hを形成せざるを得なかったために、尻部h側縁の水返しjが、両側部で一直線上であっても中央付近では頭部c側へ変位していた。
その結果、水返しjが尻部g側縁部で異形状態と成っているため、且つ、尻部g側の水返しjと平行の内方水返しkとの間の流水部lが異形状態と成るため、更に、中央付近の水返しjは内方水返しkと接近したり、重合される上の瓦の頭部cと接近して、両者間の距離が短くなるため、上下重合個所から吹き込む逆流雨水を確実に受け止めることが出来なかったり、排水が円滑に行えない場合があり、防水性能が不十分になっていた。
特開平8−93141号公報
本発明は、一側から差込自在な差込空間を有する鉤状の係合凸部を有する瓦を、1工程で成形可能にする瓦の成形装置を提供する。
本発明は、一側から差込自在な差込空間(20)を有する鉤状の係合凸部(16)を有する瓦を成形する装置であって、
金型(30)は原料投入空間であるキャビティ(31)を形成する上型(32)及び下型(33)から成り、
前記下型(33)は瓦(1)の裏面を成形するものとし、
前記上型(32)は瓦(1)の表面を成形するものとし、
前記上型(32)に前記係合凸部(16)を形成する凸部形成部(35)を切欠形成し、
前記凸部形成部(35)の外側に側枠の一部としての外部形成部(36)を設置し、
前記外部形成部(36)の外側に配置した部分形成型(34)に、前記差込空間(20)に相当する形状の押圧成形部(37)を前記外部形成部(36)を貫通して前記凸部形成部(35)方向に進退自在に配置したことを特徴とする瓦の成形装置、により上記課題を解決する。
前記差込空間(20)が略半割り円柱状空間であり、前記押圧成形部(37)が円柱状である態様を挙げる。
一側から差込自在な差込空間を有する鉤状の係合凸部を有する瓦を、1工程で成形可能にする。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の瓦の成形方法で製造される瓦としては、図1〜7の耐風瓦を説明するが、その他の瓦にも勿論適用可能である。
先ず、本発明を適用する耐風瓦(防災瓦)を図1〜7に基づいて詳細に説明する。
本発明方法で製造され耐風機能を有する平板状の防災瓦1の基本構成にあっては、図1に示す様に、瓦本体2を平面方形状と成している。
そして、図1、2、3に示す様に、瓦本体2の短尺な端部(図1中、前後側)を頭3及び尻4と夫々成し、頭3の先端下部に垂れ5を突設し、瓦本体2の表面において、尻4の手前に一条の水返し6を瓦本体2の横手方向に設けている。
尚、垂れ5の明確な形状は図3に示し、その他の図面では簡略表示と成している。
上述の尻4に設けた水返し6は、図1〜6の第1実施例、図7の第2実施例のものでは、その形状が若干相違するが、両者共に従来技術1のものに比して、決定的に相違している。
即ち、従来技術1の例Aのものでは、係止突起iを形成するために、水返しjに尻切欠部hを形成せざるを得なかったが、本発明方法で製造される第1、2実施例のものでは、係合凸部16の形成は水返し6(その一部の平面段丘6b)上に一体形成しており、係合凸部16形成付近の水返し6の形状は、その周囲と全く同一と成し、即ち、切欠部を設けたり、寸断せず、一様な平面段丘状或いは突堤状と成しており、これらを本明細書では無垢形状の水返し6と称している。
又、瓦本体2の長尺な一端部(図1中、右側)を下方切欠の桟7と成し、他端縁部(図1中、左側)に帯板片を下方側に段差を設けて延出形成して差込部8と成している。
差込部8は、尻4から頭3の近傍に至る長さと、瓦本体2の桟7との重合幅を有しており、表面の長尺端部及び尻4側の端部に沿って鉤状の水返し9を設け、更に、表面中央に水返し突条10を差込部8の長さ方向に設けている。
尚、差込部8の先端部及び差込部8における水返し9の先端部は、垂れ5を形成している関係で明確な形状でなかったり、段差を徐々に減少し、或いは、一部を割愛している。
又、瓦本体2の表面両側端には、尻4の水返し6に連続して、流れ方向に水返し11、11a及び段丘12、12aを夫々設けているが、葺き合わせ時に漏水しない様にすれば、段丘12、12a等を割愛しても良い。
又、尻4の水返し6の両端部表面にV字状の凹部13、13aと裏面における対応位置に凸部14、14aを設け、更に水返し6及び凹部13の近傍に釘孔15、15aを設けている。
かかる基本構成を有する防災瓦1において、図1〜6に示す様に、耐風機能の構成要件としての係合凸部16と係合差込部17を、尻4の水返し6上面の中央付近と差込部8の側端部に夫々設けている。
即ち、図1、3に示す様に、尻4に設けた水返し6の中央付近(凹部13の形成個所以外)では、水返し6を平面段丘状と成している。
更に、詳細には、瓦本体2の中央部から尻4に向かって、上昇する傾斜面6a及び流れ方向に所定幅を有する平面段丘6bで水返し6を形成し、傾斜面6aが実質的に水返し6と成っている。
そして、図2、5、6に示す様に、水返し6における平面段丘6b上面の中央付近に立上部18と一側への水平部19を連続し、水平部19の下部に一側から差込自在な差込空間20を有する鉤状の係合凸部16を突出状に設けている。
尚、平面段丘6bは、流れ方向で、両端部の水返し6に比して幅広と成しているために、係合凸部16も水返し6に比して流れ方向で幅広に形成している。
他方、図1、5、6に示す様に、差込部8の側端部に設けた水返し9の先端寄りの一部を内方側に屈曲させ、当該屈曲部21の外側で流れ方向に所定長さの帯板状の係合差込部17を設けている。
水返し9の屈曲部21の形状は尻4から頭3にかけて、内方傾斜、流れ方向、外方傾斜と成し、屈曲部21は全体的に”〕”かっこ状と成し、上下の誘水傾斜部を係止部22、22aと成している。
言い換えると、係止部22、22aは流れ方向に所定長さを有する係合差込部17の長さを規制している。
図7は第2実施例の防災瓦1を示す平面図であり、図1〜6の第1実施例のものとの大きな相違は尻4側に設けた水返し6の構造である。
即ち、第2実施例の水返し6は尻4側に略同一幅で一直線状に設け、水返し6の中央付近の形状を従来技術1の例Aのものに比して無垢な突堤と成し、かかる突堤上に係合凸部16を形成した点が、第1実施例のものと相違している。
次に、上記防災瓦の作用について説明する。
図4に示す様に、多数の防災瓦1を千鳥葺きに葺設した時に、下段の防災瓦1Dの尻4上に上段の防災瓦1Uの頭3が部分的に重合すると共に、各段における隣接した防災瓦1D1、1D2は、桟7の下方切欠部に差込部8が差込まれて重合し、両者の段丘12、12aも隣接状態となる。
そして、図5、6に示す様に、横方向に半分ずれた上下段の防災瓦1U、1Dの係合凸部16と係合差込部17の係合部にあっては、下段の防災瓦1Dの係合凸部16に対して上段の防災瓦1Uの係合差込部17を横から差し込んで、両者は係合状態と成り上下位置関係が規制される。
又、係合凸部16と係合差込部17の係合にあっては、係合差込部17は所定長さを有することにより、流れ方向での係合位置は調整可能となる。
更に、係合凸部16と係合差込部17の流れ方向位置関係が調整可能であるとしても、係合差込部17の流れ方向上下位置に係止部22、22aが存在し、係合凸部16が当接自在であるために、その調整量は制限されるが、離脱せずに流れ方向での係合状態は確保される。
又、横方向に隣接した防災瓦1D1、1D2の接合部にあっては、両者の水返し11、11a、段丘12、12aの接合個所の隙間から流入した雨水は、差込部8上に流水する。
雨水が多量で流水速度が速くても、差込部8中央に突出形成した水返し突条10で減速されると共に、側端縁の水返し9で制止され、頭3側に流水する。
そして、差込部8上の流水の一部は、係合差込部17の形成個所において、水返し9に連続した屈曲部21の上方の係止部22で誘導され円滑に下方へ流水する。
尚、水返し11、11a、段丘12、12aの形成個所に対応して、防災瓦1の裏面には葺き合わせ対応位置に切欠凹部23を設けて治まりを向上させている。
上記の様な構成の防災瓦1においては、強風等に対する耐風機能を発現し、防災瓦1の浮き、ズレを防止する係合凸部16が設けられる瓦本体2の尻4側水返し6を本発明の瓦の成形方法によれば無垢形状で製造することが出来るため、水返し6は瓦本体2の尻4側に異形状態でないために、侵入雨水の遮断、防水性能を充分に発揮する防災瓦を製造することが出来る。
次に、格別なる効果を有する鉤状の係合凸部16の成形方法、即ち、本発明の瓦の成形方法について説明する。
図8は防災瓦1を加圧成形する金型の断面図、図9は係合凸部16の形成個所の要部を示す金型の拡大断面図で、(a)は上下型32、33による押圧成型状態を示し、(b)は差込空間20の原料を排除し鉤状の係合凸部16を成形する状態を示し、図10は上型における係合凸部16形成個所の凹設状態を示す側面図であり、図11は2段階の成形状態を示す模式図であり、(a)は金型30のキャビティ31に投入される原料を示し、(b)は上下型32、33による押圧成形体を示し、(c)は押圧成形部37が進行途中状態で係合凸部16に差込空間20を形成している中間状態を示し、(d)は差込空間20を側部に有する鉤状の係合凸部16の形成完了状態を示している。
金型30は原料投入空間であるキャビティ31を形成する上下型32、33(側枠を含む)から成り、図示のものでは下型33は防災瓦1の裏面を成形し、上型32は防災瓦1の表面及び係合凸部16の差込空間20を含む全体を成形し、係合凸部16の形成個所において、差込空間20を成形する部分形成型34を配置している。
即ち、上型32の所定個所に差込空間20を含む係合凸部16を形成する略台形状の凸部形成部35を切欠形成し、該凸部形成部35の外側に上型32から延出した外部形成部36(側枠の一部)を設置している。
又、凸部形成部35の外部形成部36の外側に配置した部分形成型34に、差込空間20に相当する形状の押圧成形部37をシリンダー37aで、凸部形成部35方向に進退自在に配置している。
更に、上型32における凸部形成部35の形成面の一部であって、凸部形成部35に臨んだ差込空間20対応位置の奥方に凹部38を凹設し、該凹部38の下側をキャビティ31に臨む様に開口している。
即ち、部分形成型34の押圧成形部37が凸部形成部35内に進行した位置の前方に凹部38が形成されている。
尚、従って、金型30の成型面は、上下型32、33の上下成型面、側枠の内面、凸部形成部35及び凹部38の内面、外部形成部36の内面が相当すると共に、部分形成型34における押圧成形部37の先端も、金型30の成型面の一部を構成することになる。
次に、かかる構成の金型30による成形方法を説明する。
先ず、図11(b)、図9(a)に示す様に、キャビティ31に投入された原料を上下型32、33の上下押圧成形により、キャビティ31と凸部形成部35(凹部38を含む)の原料で、瓦本体2と差込空間20を含んだ係合凸部16を一体成形する。
次に、図11(c)、(d)、図9(b)に示す様に、上下型32、33による押圧成型状態を維持したまま、シリンダー37aの作動により、成型面の一部である部分形成型34の押圧成形部37を凸部形成部35に進行させ、該凸部形成部35における差込空間20の位置の原料を押圧排除して、差込空間20が存在する立上部18と水平部19から成る鉤状の係合凸部16を成形する。
尚、かかる鉤状の係合凸部16の成形時に、差込空間20相当位置に存在した原料は、成形品における立上部18、水平部19、金型30内におけるキャビティ31及び凹部38側に移動する。
そして、差込空間20を有した係合凸部16の部分成形後に、押圧成形部37を後退させた後、上下型32、33を上下分離して成形を完了することにより、係合凸部16を損壊させず、且つ、従来に比して水返し6に悪影響を与えず無垢形状で形成する。
尚、図9(b)に示す様に、部分形成型34の押圧成形部37の最進行位置を、凹部38の前面側と略面一位置と成せば、係合凸部16の周囲に若干のバリが発生するとしても、成形後の乾燥時にバリは自然的に分離される。
本実施例は、上下型32、33の押圧成型で成形する瓦の成形方法であって、押圧成型中に、上下型32、33の成型面の一部が成形体側に移動して、成形体における空間部(防災瓦1における差込空間20相当個所)の原料を、その他の成型空間に移動排除又は加圧する様にしたので、密度不均一度合が大きくても、原料移動で密度均一化を図ったり、形状的に強度が低い個所の原料密度上昇で強度向上を図ることが出来たり、鉤状等の特殊形状の成形も、密度均一化、部分密度上昇を伴って、効率、効果的に行うことが出来る。
又、本実施例の瓦は、側方部に空間部(防災瓦1における差込空間20)を有した突出部(係合凸部16)を有する瓦であるが、突出部に形成する空間部に対して、成型面の一部を構成する押圧成型部37を進行させて、原料を移動排除して成形する様にしたので、上下型32、33の上下移動だけでは成形不可能な形状のものでも、成形が可能になる。
又、本実施例の瓦は防災瓦1であるが、差込空間20を含む係合凸部16を瓦本体2と一体成形し、押圧成型中に差込空間20に押圧成形部37を進行させて差込空間20の原料を排除し、鉤状の係合凸部16を形成する様にしたので、係合凸部16と瓦本体2は一体であるために強度性が損なわれず、又特殊形状(鉤状)の一体成形も簡易に行うことが出来る。
又、突出部の全体を成型する金型30の凸部形成部35に対して、空間部を成型する押圧成形部37を出没自在と成し、凸部形成部35の奥方に押圧成形部37と略同形の凹部38を凹設し、押圧成形部37の進行時に、原料の一部を凹部38に移動排除する様にしたので、押圧成形部37の進行で移動排除される原料は、その周囲に移動すると共に、押圧成形部37の進行方向前方の凹部38にも移動するために、原料移動が分散して移動効率が上昇し、且つ、特に進行最終段階における空間部の原料が凹部38に移動することにより、押圧成形部37が所定位置まで進行して未移動の原料が存在せず、空間部周囲の成形体を所望の形状に成形することが出来る等その実用的効果甚だ大である。
本発明適用例である防災瓦の平面図である。 図1の正面図である。 図1の側面図である。 防災瓦の千鳥葺きを示す平面図である。 千鳥葺き時の耐風係合部を示す拡大平面図である。 図5の要部断面図である。 第2実施例の防災瓦の平面図である。 係合凸部形成金型の断面図である。 係合凸部形成個所の金型要部の拡大断面図である。 上型における係合凸部形成個所の要部拡大側面図である。 係合凸部の成形状態を示す模式図である。 従来技術の係止耐風厚平形瓦の斜視図である。 図12の瓦の葺き合わせ平面図である。 図13の葺き合わせ要部斜視図である。 図13の葺き合わせ要部A−A断面図である。
符号の説明
2 瓦本体
16 係合凸部
20 差込空間
30 金型
32 上型
33 下型
35 凸部形成部
37 押圧成形部
38 凹部

Claims (2)

  1. 一側から差込自在な差込空間(20)を有する鉤状の係合凸部(16)を有する瓦を成形する装置であって、
    金型(30)は原料投入空間であるキャビティ(31)を形成する上型(32)及び下型(33)から成り、
    前記下型(33)は瓦(1)の裏面を成形するものとし、
    前記上型(32)は瓦(1)の表面を成形するものとし、
    前記上型(32)に前記係合凸部(16)を形成する凸部形成部(35)を切欠形成し、
    前記凸部形成部(35)の外側に側枠の一部としての外部形成部(36)を設置し、
    前記外部形成部(36)の外側に配置した部分形成型(34)に、前記差込空間(20)に相当する形状の押圧成形部(37)を前記外部形成部(36)を貫通して前記凸部形成部(35)方向に進退自在に配置したことを特徴とする瓦の成形装置。
  2. 前記差込空間(20)が略半割り円柱状空間であり、前記押圧成形部(37)が円柱状である請求項1記載の瓦の成形装置。
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