以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光分波器100aの構成の概要を示す図である。なお、図1では、伝搬する光の振る舞いが分かるように、導波路中を伝搬する光の導波モード(以下、単に、モードという)を模式的に示している。
図1において、実線で示す波線は、波長1.30μmのモードを示す。点線で示す波線は、波長1.55μmのモードを示す。図面上、何次のモードを示すかは、波線の形および引き出し線を用いた記載によって明確にする。なお、実線および点線が記載されている導波路上における位置は、当該位置でのモードを正確に示しているものではない。したがって、図面に記載した実線および点線が、導波路上のどの位置でのモードを示すものであるのかが分かるように、図面上では、どの位置での導波モードを示すものであるかも明記する。たとえば、図1において、マルチモード導波路102aの入射端での波長1.30μmの0次モードについては、図面上、「1.30μm光入射端0次モード」と記す。特に断らない限り、その他の実施形態においても、上記のようにして記載する。
図1において、光分波器100aは、シングルモード入力導波路101aと、マルチモード導波路102aと、第1のシングルモード出力導波路103aと、第2のシングルモード出力導波路104aと、基板106aと、基板106aに穿孔されているV溝105a,115a,125aとを備える。
なお、ここでの光路長は、光の伝搬方向における光路長のことを示し、たとえば、図1においては、マルチモード導波路102aの長手方向の長さのことをいう。この光路長の根拠については、後で詳しく説明する。
シングルモード入力導波路101aは、マルチモード導波路102aの光軸を示す中心線(以下、同様)112aから軸ズレした位置で、マルチモード導波路102aの入力側と光学的に結合している。
第1のシングルモード出力導波路103aと第2のシングルモード出力導波路104aとは、マルチモード導波路102aの中心線112aを中心として反対側の位置で、マルチモード導波路102aの出力側と光学的に結合している。第1のシングルモード出力導波路103aおよび第2のシングルモード出力導波路104aは、波長1.30μmおよび波長1.55μmの各波長が、それぞれ第2のシングルモード出力導波路104aおよび第1のシングルモード出力導波路103aと結合しない距離まで各波長の光を誘導するように、基板106a上に配置されている。
基板106aは、シングルモード入力導波路101a、マルチモード導波路102a、第1のシングルモード出力導波路103aおよび第2のシングルモード出力導波路104aを固定するための基板である。
V溝105aは、シングルモード入力光ファイバ7をシングルモード入力導波路101aの入力端に接続するために、基板106aに穿孔された位置決め用の溝である。V溝115aは、第1のシングルモード出力光ファイバ8を第1のシングルモード出力導波路3の出力端に接続するために、基板106aに穿孔された位置決め用の溝である。V溝125aは、第2のシングルモード出力光ファイバ9を第2のシングルモード出力導波路104aの出力端に接続するために、基板6に穿孔された位置決め用の溝である。
以下、マルチモードであると特に断らなかった場合、導波路および光ファイバは、シングルモードであるとする。したがって、シングルモード入力導波路101a、第1のシングルモード出力導波路103a、第2のシングルモード出力導波路104a、シングルモード入力光ファイバ7、第1のシングルモード出力光ファイバ8、および第2のシングルモード出力光ファイバ9は、単に、入力導波路101a、第1の出力導波路103a、第2の出力導波路104a、入力光ファイバ7、第1の出力光ファイバ8、および第2の出力光ファイバ9と呼ぶことにする。
図2Aおよび図2Bは、光分波器100aにおいて、1.30μmの光と1.55μmの光とが分離する様子を示すBPM(Beam Propagation Method)によるシミュレーション結果である。以下、図1,図2Aおよび図2Bを参照しながら、光分波器100aにおける光の振る舞いを簡単に説明する。
ただし、図2Aおよび図2BのBPMのシミュレーションに使用した導波路寸法は、マルチモード導波路長Lm:約6550μm、マルチモード導波路幅Wm:約19.5μm、入力導波路軸ズレ量x:約5.7μm、出力導波路間隔:約10μm、導波路クラッド屈折率:約1.500、コア屈折率:約1.505である。
図2Aは、波長1.30μmの光の振る舞いを示す図である。マルチモード導波路中心線から軸ズレした位置に接続されている入力導波路101aから入射した波長1.30μmのシングルモードは、マルチモード導波路102aにおいて、マルチモード導波路102aに固有の0次モードと1次モードとに展開される。0次モードと1次モードとのモード分散、すなわち0次モードの伝搬定数と1次モードの伝搬定数とが異なるために生じるモード干渉によって、波長1.30μmの光が、特定の伝搬定数に従い、マルチモード導波路102a中を右方向かつ上下交互に移動しながら、波長1.30μmの光が伝搬する。その後、波長1.30μmの光は、第1の出力導波路103aに入射して、第1の出力導波路103a中を伝搬していく。
図2Bは、波長1.55μmの光の振る舞いを示す図である。波長1.55μmの光についても同様に、マルチモード導波路102aにおいて0次モードと1次モードとに展開され、モード分散によって、光がマルチモード導波路2中を右方向かつ上下交互に移動しながら、波長1.55μmの光が伝搬する。その後、波長1.55μmの光は、第2の出力導波路104aに入射して、第2の出力導波路104a中を伝搬していく。
波長1.30μmおよび波長1.55μmの各モード分散の波長分散、すなわち、各波長の各モードの伝搬定数の波長特性のため、各波長の光の移動の伝搬定数も異なる。したがって、波長1.30μmの光の移動と波長1.55μmの光の移動との位相差が逆相になる光路長で、波長1.30μmおよび波長1.55μmの光が、上下に分かれて共に極大となる。マルチモード導波路102aの長さは、上記光路長と一致するので、図2に示したように、波長1.30μmの光と波長1.55μmの光とが、上下方向に分離されることとなる。
したがって、光分岐器100aのように、波長1.30μmの光と波長1.55μmの光とが分離する(マルチモード出力端上の接続位置:X1)各位置の近傍に、波長1.30μmの光を誘導する第1の出力導波路103aとおよび波長1.55μmの光を誘導する第2の出力導波路104a(マルチモード出力端上の接続位置:X2)とを設けるようにマルチモード導波路102aの光路長を決定すると、導波路のみの簡単な構成で容易に波長1.30μmの光と波長1.55μmの光とを分波できることとなる。
次に、マルチモード導波路102aの光路長の求め方について詳細に説明する。図3(a)および図3(b)は、マルチモード導波路102a中を伝搬する各波長の詳細な光の強度を示すBPMによるシミュレーション結果を示す図である。図3(a)は、波長1.30μmの光の光の強度分布を示す図である。図3(b)は、波長1.55μmの光の光の強度分布を示す図である。
ただし、図3(a)および図3(b)のBPMのシミュレーションに使用した導波路寸法は、マルチモード導波路長Lm:約10,000μm、マルチモード導波路幅Wm:約19.5μm、入力導波路軸ズレ量x:約5.7μm、p1:約4.6μm、p2:約5.1μm、導波路クラッド屈折率:約1.500、コア屈折率:約1.505である。
図4は、光の移動位相差を説明するための図である。なお、図3(a)および図3(b)では、最適な光路長を考察するために、マルチモード導波路102aの長さを最適な光路長よりも長くしてシュミレーション結果を出力している。以下、図1,図3(a)および図3(b)を参照しながら、この波長分離のメカニズムを詳細に説明し、マルチモード導波路102aの光路長の求め方について説明する。
図1のようにマルチモード導波路102aの中心線112aから軸ズレした状態で、波長1.30μmおよび波長1.55μmのシングルモードを(マルチモード入力端上の入力位置Xに)入力すると、各波長毎の0次モードと1次モードとは、相互に干渉し合う。マルチモード導波路102aを伝搬する各波長の光の強度は、図3(a)に示すように、このモード干渉によって、1.30μmの波長の光の強度は、マルチモード導波路出力端位置P1を通り、中心線112aに平行な1.30μmの第1の光の強度の変動線、および中心線112aに対するP1aの対称点であるP1bを通り、中心線112aに平行な1.30μmの第2の光の強度の変動線の二直線上において、光の強度の極大と極小とが交互に現れ、かつ二直線上の光の強度変動は相互に逆相関関係に現れる。したがって、あたかも1.30μmの波長の光の強度の極値となる位置が上記二直線上を交互に移動しながら伝搬するかのように見える。
同様に、図3(b)に示すように、1.55μmの波長の光は、マルチモード導波路出位置P2を通り、中心線112aに平行な1.55μmの第2の光の強度の変動線、および中心線112aに対するP2aの対称点であるP2bを通り、中心線112aに平行な1.55μmの第1の光の強度の変動直線の二直線上において、光の強度の極大と極小とが交互に現れ、かつ二直線上の光の強度変動は相互に逆相関関係に現れる。したがって、あたかも1.55μmの波長の光の強度の極値となる位置が上記二直線上を交互に移動しながら伝搬するかのように見える。ここで、P1a≠P2b、P2a≠P1bとなるのは、波長によって、マルチモード導波路の横方向の広がり分布が異なり、長い波長の方が広がりが大きいからである。
波長1.30μmの0次モードの伝搬定数をβi0とし、波長1.30μmの1次モードの伝搬定数をβi1とし、波長1.55μmの0次モードの伝搬定数をβj0とし、波長1.55μmの1次モードの伝搬定数をβj1とすると、第1変動線上のモード加算条件およびモード打消条件は、表1に示すように、各モードの伝搬定数差(βi0−βi1,βj0−βj1)によって各モードの位相差(θ1=(βi0−βi1)×Lim,θ2=(βj0−βj1)×Ljm)で表せる。
波長1.30μmの光と波長1.55μmの光との分波には、「マルチモード導波路102aの出力端において、各波長の光の強度の極値が反転している」といった光の強度の極値反転条件をほぼ満足しなければならない。
次に、具体的に、マルチモード導波路102aの光路長を求める。「光の強度の極値反転条件」を満足する光路長Lは、(式1)の連立方程式および(式2)から求められる。
したがって、光の強度の極値反転条件を満足するマルチモード導波路長Lは(式3)のようになる。
図3(a)および図3(b)は、m=3の場合の例である。1.30μmと1.55μmの光の強度の極値の位相差が反転する光路長L(図3上のL1 )は、(式4)となる。
このとき、1.30μmの第1の光の強度の変動線上のP1において、1.30μmの光の強度は極大となり、1.55μmの第1の光の強度の変動線上において、1.55μmの光の強度は極小となる。一方、第2の光の強度の変動線上のP2において、1.30μmの光の強度は極小となり、1.55μmの光の強度は極大となる。
上記で説明したように、光の強度の極値反転条件を満足する光路長Lにおいて、各波長は、それぞれ、1.30μmの第1の光路の強度の変動線および1.55μmの第2の光の強度の変動線の上にあるので、マルチモード導波路の光路長をLとし、X1≒P1a、X2≒P2bとすれば、波長の分離ができることとなる。
このように、第1の実施形態では、マルチモード導波路102aを設け、マルチモード導波路102aの中心線112aから軸ズレした位置に入力導波路を結合し、中心線112aに対して相対する方向に第1の出力導波路103aと第2の出力導波路104aとを設けることによって、波長1.30μmの光と波長1.55μmの光とを分波することが可能となる。第1の実施形態に係る光分波器は、マルチモード光導波路を用いた単純な構成であるので、低価格に提供されることが可能となる。
また、分波性能も従来のものと比べ劣るものではない。
また、第1の実施形態では、光の強度の極値反転条件を完全に満足させることによって消光比を高めることができるので、より高性能な光分波を行うことが可能となる。
なお、各波長のモード伝搬定数βは、マルチモード導波路の形状や材料屈折率などで決まるので、マルチモード導波路の形状や材料屈折率を最適化すれば、光の強度の極値反転条件を満足する光路長Lが得られることとなる。
マルチモード導波路の形状最適化方法としては、「光軸に沿った直方体の3辺の3変数を最適化する」や、「L1 までの直方体での光波が分離する方向に対向する側面間隔を光軸に沿って変化させる」などが挙げられる。
また、材料屈折率の最適化方法としては、「屈折率の波長分散が最適な材料を使用する」や、「マルチモード導波路内に屈折率分布をつける」などが挙げられる。
当然、材料屈折率の波長分散が大きい方が、各波長間で伝搬定数の差が大きくなるので、より短い光路長Lを可能にする。
なお、光の強度の極値反転条件を満足しなくても、図3に示すL2 やL3 を光路長としてもよい。すなわち、長さL2 は、長さL1 の近傍における光路長である。図4に示すように、長さL1 の近傍範囲である長さL2 は、光の強度が極大値の半分(3dBダウン)となる範囲である。また、長さL3 の近傍の範囲は、光の強度が極大値の半分(3dBダウン)となる範囲である。
なお、光の強度の極値反転条件を完全に満足していなくても、各波長のそれぞれの出力端で、少なくともいずれか一方の波長の光の強度が極値となるような光路長をマルチモード導波路が有していれば、ある程度の消光比を得ることが可能となる。
なお、上記では説明を簡単にするために最大モード次数を1次までとしたが、実際には2次や3次などの高次モードが少なからず存在し、詳細なモード変化は複雑である。しかし、基本的には、各波長のモード分散には波長分散が存在するため、マルチモード導波路形状を決めることで、異なる位置で各波長の光の強度を最大にすることができる。したがって、高次モードが存在したとしても、波長分離が可能である。
(第2の実施形態)
第2の実施形態における光分波器の構成は、第1の実施形態における光分波器と同様であるので、図1を援用する。上記第1の実施形態では、マルチモード導波路102aの光路長の設定の仕方を中心に説明した。第2の実施形態では、マルチモード導波路102aが第1の実施形態に基づいて設定された光路長を有する場合に、不要な波長を遮断して、所望の波長のみを得ることができる光分波器を提案する。そのため、第2の実施形態では、マルチモード導波路102aの出力端面における第1および第2の出力導波路103a,104aの接続位置について説明する。
図5は、マルチモード導波路102aにおける出力位置での光の強度分布を示す図である。図5において、図3(a)および図3(b)に示した出力位置と同一の符号を用いている出力位置は、同一の出力位置であるとする。また、図5における出力位置は、マルチモード導波路の出力端面における位置を示す。図5に示すように、波長の長い1.55μmの方が波長の短い1.30μmに比べて、極値が中心線から遠い位置にくることとなる。透過ロスだけを考えるのであれば、上記のように第1の出力導波路をP1aに、第2の出力導波路をP2aに接続すればよいが、P1aやP2aでは、除去したい波長が極小とならないために、取り出したい波長以外の波長が出力されることとなってしまう。この場合、消光比は30dB以下となり、十分な消光比であるとは言えない。
そこで、第2の実施形態に係る光分波器では、第1の出力導波路を1.55μmの光の強度が極小となるQ2aに、第2の出力導波路を1.30μmの光の強度が極小となるQ1aに、それぞれ接続する。これにより、第1の出力導波路の接続端において、1.30μmの光の強度の減少比以上に1.55μmの光の強度の減少比が大きくなるので、1dB以下の透過ロスを維持しながら、30dB以上の十分な消光比を得ることができる。同様に、第2の出力導波路の接続端において、1.55μmの光の強度の減少比以上に1.55μmの光の強度の減少比が大きくなるので、1dB以下の透過ロスを維持しながら、最大の消光比を得ることができる。ここで、消光比は、(式5)のように、取り出したい波長の光の強度を遮断したい波長の光の強度で割ったときの商に対する自然対数を10倍した値で決められている。(式5)のように消光比を定義した場合、最大の消光比を得ることができるマルチモード導波路102aにおける出力端面の位置では、消光比は、30dB以上となっている。
このように、第2の実施形態では、遮断したい波長の極小位置に各波長を取り出したい出力導波路を接続する、すなわち、消光比が最大となる位置に出力導波路を接続することで、取り出したい波長のみを分波する光分波器が提供されることとなる。
たとえば、表2における(1)に示すように、除去したい波長の極小位置に取り出したい波長の出力導波路を設けた場合、消光比は、50dB以上となる。一方、取り出したい波長の極大位置に出力導波路を設けた(2)の場合、消光比は、25dB程度となる。このように、除去したい波長の極小位置に取り出したい波長の出力導波路を設けることによって、大幅に消光比が向上し、取り出したい波長のみを分波する光分波器が提供されることとなる。
表2において、小文字のxは、入力導波路がマルチモード導波路の中心軸からどの程度ずれているかの距離を示す。小文字のx1は、入力導波路がマルチモード導波路の中心軸からどの程度ずれているかの距離を示す。小文字のx2は、第2の出力導波路がマルチモード導波路の中心軸からどの程度ずれているかの距離を示す。その他の記号の説明は、表中に記してある。透過ロスとは、取り出したい波長のロスのことをいう。遮断ロスとは、遮断したい波長のロスのことをいう。
なお、入出力導波路を、上記のようにマルチモード導波路出力端上の各波長の極値点に配置する以外に、マルチモード導波路の中心線にミラー対称に配置して、各入出力導波路の中心線からの軸ズレ距離を等しくする方法もある。しかし、単にミラー対称に配置する方法では、表2における(3)〜(6)に示すように、出力端での各波長の光の強度の分布を把握して、極値を選ばないと十分な消光比が得られないことがわかる。
表2から、透過ロスの変動は微小であることが分かるので、上記第2の実施形態のように、消光比を律則する遮断ロスを最大にする各波長の極小点に出力導波路を接続する構成がベストであることが理解できる。
上記のように、消光比が最大となる位置に出力導波路を設けることは、特に、屈折率が2.0以下、あるいは、幅が15μm以上のマルチモード導波路を用いる場合に有効である。屈折率が2.0よりも大きい半導体材料で構成されたマルチモード導波路を用いる場合、デバイス自体が超小型化されて幅が5〜12.6μm程度となり、波長の基本モード幅も小さくなる。したがって、屈折率が2.0よりも大きい場合の光の強度の分布は、各出力位置において取り出したい波長の光の強度の最大位置と遮断したい波長の光の強度の最小位置とが接近した分布となり、所望の波長の光の強度の最大位置で十分な消光比が得られる。一方、屈折率が2.0以下のマルチモード導波路を用いると、デバイス自体が比較的大きくなり、幅が15μm以上となり、各出力位置において取り出したい波長の光の強度の最大位置と遮断したい波長の光の強度の最小位置とが離れた分布となり、遮断したい波長の光の強度の最小位置を選択することで、十分な消光比を得られる所から、光を出射させることができる。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る光分波器100bの構成の概要を示す図である。図6において、図1に示した第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図6において、光分波器100bは、入力導波路101aと、異光路長マルチモード導波路102bと、第1の出力導波路103aと、第2の出力導波路104aと、これらを固定する基板106bと、V溝105a,115a,125aとを備える。
異光路長マルチモード導波路102bは、直方体型の第1の光路長部112bと、直方体型の第2の光路長部122bとを含む。第1の光路長部112bの光路長は、第2の光路長部122bの光路長よりも長い。
第1の光路長部112bの出射端からは、波長1.30μmの光が出力される。
第2の光路長部122bの出射端からは、波長1.55μmの光が出力される。
第1の実施形態で説明したように、異光路長マルチモード導波路102bの中心線132bから軸ズレしている入力導波路101aからの波長1.30μmの光および波長1.55μmの光は、異なる伝搬定数で移動しながら、異光路長マルチモード導波路102b内を伝搬する。
第1の実施形態に係る光分波器100aでは、波長1.30μmの光の出射端と波長1.55μmの出射端とを、マルチモード導波路102aの出射同一面上に形成したため、光路長が5,000μm以上と大きくなる。
ところが、第2の実施形態に係る光分波器100bでは、波長1.30μmの光の出射端と波長1.55μmの出射端とを、同一面上に形成せず、波長1.30μmの光と波長1.55μmの光との光の移動の位相差が逆相となる光路長、すなわち波長1.30μmの出射端を光の強度がマルチモード導波路の上半分側で最大となる光路長位置に設け、波長1.55μmの出射端をマルチモード導波路の下半分側で最大となる任意の光路長位置に設ける。このようにして、異光路長マルチモード導波路102bを形成する。
これにより、第1の実施形態のように各波長の出射面が同一である必要がなくなるので、異光路長マルチモード導波路102bの光路長を5,000μm以下にすることが可能となる。したがって、光分波器の小型化が可能となる。
なお、第3の実施形態では、波長1.30μmの光の強度がマルチモード導波路の上半分側で最大となるようにし、波長1.55μmの光の強度がマルチモード導波路の下半分側で最大となるようにしたが、別に、この上下関係が逆であっても、何ら問題ない。
また、第3の実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様、遮断したい波長のロスが最大となる位置に、すなわち、消光比が最大となる位置に、出力導波路を設けるようにしてもよい。
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態に係る光分波器100cの構成の概要を示す図である。図7において、図1に示した第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図7において、光分波器100cは、入力導波路101aと、多段型マルチモード導波路102cと、第1の出力導波路103aと、第2の出力導波路104aと、これらを固定する基板106cと、V溝105a,115a,125aとを備える。
多段型マルチモード導波路102cは、第1のマルチモード領域部112cと、第2のマルチモード領域部122cとを含む。第1のマルチモード領域部112cの中心線132cと、第2のマルチモード領域部122cの中心線142cとは、一致していない。
第1のマルチモード領域部112cは、波長1.30μmの光について、0次モードおよび1次モードを固有モードとして存在させることができ、波長1.55μmの光について、0次モードのみを固有モードとして存在させることができる。第2のマルチモード領域部122cは、波長1.30μmおよび波長1.55μmの光について、それぞれ0次モードおよび1次モードを固有モードとして存在させることができる。
また、波長が長い方が高次モードの発生にはより大きな導波路幅を要し、逆に波長が短い方がより小さな導波路幅でよいので、第1のマルチモード領域部112cの幅は、第2のマルチモード領域部122cの幅よりも小さい。本発明のようにモード干渉で波長分離する場合、出力側では、全ての波長でマルチモードが必要なので、各波長でマルチモードを発生する位置を変えるには多段型マルチモード導波路102cの幅を光伝搬方向に広げるのが有効である。
次に、第4の実施形態に係る光分波器100cでの光の振舞いについて説明する。幅が小さい方の第1のマルチモード領域部112cの中心線132cから軸ズレした位置の入力導波路101aから入射した波長1.30μmのシングルモードは、第1のマルチモード領域部112cにおいて、第1のマルチモード領域部112cに固有の0次モードと1次モードとに展開される。光伝搬に連れて、0次モードと1次モードとのモード分散により、波長1.30μmの光は、横方向に光の移動を伴いながら伝搬する。
一方、波長1.55μmの光は、第1のマルチモード領域部112cにおいて、0次モードのみしか存在できないので、モード分散することなく、すなわち、横方向に光が移動することなく、第1のマルチモード領域部112c中を伝搬する。すなわち、第1のマルチモード領域部112cの出射端においては、波長1.30μmの光と波長1.55μmの光との間で光の移動の位相差φが生じる。
続いて、幅が大きい方の第2のマルチモード領域部122cの中心線142cから軸ズレした位置から入射した波長1.30μmの0次モードおよび1次モードは、第2のマルチモード領域部122cにおいて、第2のマルチモード領域部122cに固有の0次モードと1次モードとに展開される。光伝搬に連れて、0次モードと1次モードとのモード分散により、波長1.30μmの光は、横方向に新たな伝搬定数で光の移動を伴いながら伝搬する。
一方、第2のマルチモード領域部122cの中心線142cから軸ズレした位置から入射した波長1.55μmの0次モードは、第2のマルチモード領域部122cにおいて、第2のマルチモード領域部122cに固有の0次モードと1次モードとに展開される。光伝搬に連れて、0次モードと1次モードとのモード分散により、波長1.55μmの光は、横方向に光の移動を伴いながら伝搬する。第1のマルチモード領域部112cにおいて、各波長の光の移動の位相差がすでにφだけ生じているので、第2のマルチモード領域部122cでの光の移動の位相差は、π−φだけで良い。
このように、各波長の光の移動の位相差は、第1のマルチモード領域部112cでは波長1.30μmのモード分散のみで決まり、第2のマルチモード領域部122cでは波長1.30μmと波長1.55μmとのモード分散の波長分散(モード分散の差)で決まる。したがって、当然、第1のマルチモード領域部112cでの光の移動の位相差の方が、第2のマルチモード領域部122cでの光の移動の位相差に比べて大きい。それゆえ、第4の実施形態に係る光分波器100cでは、第1のマルチモード領域部112cで大きな位相差を稼ぐことができるので、多段型マルチモード導波路102cの全長を短くすることが可能となる。その結果、第1の実施形態に係る光分波器100aよりも小型な光分波器を提供することが可能となる。
また、第1のマルチモード領域部112cの幅を第2のマルチモード領域部122cの幅より狭くすることによって、第1のマルチモード領域部112cでより大きな位相差を稼ぐことが可能となる。
なお、図7に示したように、第1のマルチモード領域部112cおよび第2のマルチモード領域部122cの幅を変えることによって、伝搬特性を変える他、徐々に入力側から出力側に向かって幅を大きくしていって、伝搬特性を変え、短い波長の方の光の変動位相差を稼ぐようにしてもよい。
なお、第4の実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様、遮断したい波長のロスが最大となる位置に、すなわち、消光比が最大となる位置に、出力導波路を設けるようにしてもよい。
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態に係る光分波器100dの構成の概要を示す図である。図8において、図1に示した第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
光分波器100dは、シングルモード導波路でマルチモード伝搬部を形成した光分波器であって、第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の効果を有する。光分波器100dは、入力導波路101aと、マルチモード伝搬部102dと、第1の出力導波路103aと、第2の出力導波路104aと、これらを固定する基板106dと、V溝105a,115a,125aとを備える。
マルチモード伝搬部102dは、第1のシングルモード導波路112dと、第2のシングルモード導波路122dとを含む。
第1のシングルモード導波路112dと第2のシングルモード導波路122dとは、マルチモード伝搬部102dの中心線132dを中心にして、20μm以下の間隔で並行に配列している。このように配列されることによって、マルチモード伝搬部102dでは、波長1.30μmの0次モードおよび1次モード、ならびに波長1.55μmの0次モードおよび1次モードが存在可能となる。
第1のシングルモード導波路112dの入力端は、入力導波路101aの出力端と光学的に結合する。第1のシングルモード導波路112dの出力端は、第1の出力導波路103aの入力端と光学的に結合する。第2のシングルモード導波路122dの入力端は、開放端となっている。第2のシングルモード導波路122dの出力端は、第2の出力導波路104aの入力端と光学的に結合する。
このように、第5の実施形態では、モード結合が可能な距離にシングルモード導波路を2本並行に並べてマルチモード伝搬部102dを形成する。シングルモード導波路を2本並行に並べることによって、マルチモード伝搬部102dでは、モード干渉が発生し、モード分散により各波長の光が第1のシングルモード導波路112dと第2のシングルモード導波路122dとを交互に移動しながら伝搬する。この光の移動の波長分散を利用して、波長1.30μmの光の光の強度の最大位置と波長1.55μmの光の強度の最大位置とが、第1のシングルモード導波路112dと第2のシングルモード導波路122dとに分かれる光路長をマルチモード伝搬部102dの長さとし、第1の出力導波路103aと第2の出力導波路104aとで、モードが結合しない距離まで各波長の光を誘導すれば、波長1.30μmの光と波長1.55μmの光とを分離することがで可能となる。
なお、マルチモード伝搬部102dに対して、入力導波路101aのモードと結合しない距離にダミーシングルモード導波路をつないでも良い。図9は、ダミーシングルモード導波路をつないだ光分波器101dの構成の概要を示す図である。図9に示すように、ダミーシングルモード導波路111dは、入力導波路101aのモードと結合できない距離に配置されている。
なお、第5の実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様、遮断したい波長のロスが最大となる位置に、すなわち、消光比が最大となる位置に、出力導波路を設けるようにしてもよい。
(第6の実施形態)
図10は、本発明の第6の実施形態に係る光分波器100eの構成の概要を示す図である。図10において、図1に示した第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図10において、光分波器100eは、入力導波路101aと、多段型マルチモード伝搬部102eと、第1の出力導波路103aと、第2の出力導波路104aと、これらを固定する基板106eと、V溝105a,115a,125aとを備える。多段型マルチモード伝搬部102eは、第1のマルチモード領域部152eと、第2のマルチモード領域部162eとを含む。第1のマルチモード領域部152eは、第1のシングルモード導波路112eと、第2のシングルモード導波路122eと有する。第2のマルチモード領域部162eは、第3のシングルモード導波路132eと、第4のシングルモード導波路142eとを含む。
第1のシングルモード導波路112eと第2のシングルモード導波路122eとは、入力側から20μm以下の間隔で並行配列しており、第1のマルチモード領域部152eを構成する。なお、厳密には、第2のシングルモード導波路122eの出力側で第4のシングルモード導波路142eへの接続のため湾曲しているので、その部分では、並行配列となっていない。
第3のシングルモード導波路132eと第4のシングルモード導波路142eとは、20μm以下の間隔であり、かつ第1のシングルモード導波路112eと第2のシングルモード導波路122eとの間隔よりも大きい間隔で並行配列しており、第2のマルチモード領域部162eを構成する。なお、厳密には、第4のシングルモード導波路142eの入力側で第2のシングルモード導波路122eとの接続のため湾曲しているので、その部分では、並行配列となっていない。
第1のシングルモード導波路112eと第3のシングルモード導波路132eとは、一端同士で直線に光学的結合している。第2のシングルモード導波路122eと第4のシングルモード導波路142eとは、一端同士で滑らかに光学的結合している。第2のシングルモード導波路122eの他端は、開口端となっている。
第1のシングルモード導波路112eの入力端は、入力導波路101aの出力端と光学的に結合する。第3のシングルモード導波路132eの出力端は、第1の出力導波路103aの入力端と光学的に結合する。第4のシングルモード導波路142eの出力端は、第2の出力導波路104aの入力端と光学的に結合する。
2本の並行シングルモード導波路で構成される多段型マルチモード伝搬部102eでの各波長のモード分散は、並行シングルモード導波路における間隔の大きさできまる。第5の実施形態では、第1のマルチモード領域部152eで波長1.30μmの光の位相差を大きく稼ぐこととなるので、第2のマルチモード領域部162eの光路長を短くすることができる。したがって、多段型マルチモード伝搬部102e全体の長さを短くすることができ、小型の光分波器を提供することが可能となる。
なお、第6の実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様、遮断したい波長のロスが最大となる位置に、すなわち、消光比が最大となる位置に、出力導波路を設けるようにしてもよい。
(第7の実施形態)
図11は、本発明の第7の実施形態に係る光分波器100fの構成の概要を示す図である。図11において、図1に示した第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図11において、光分波器100fは、入力導波路101aと、マルチモード導波路102fと、第1〜第nの出力導波路103f(#1)〜103f(#n)と、これらを固定する基板106fと、基板106fに穿孔されているV溝105a,105f(#1)〜105f(#n)とを備える。なお、図11において、第1〜第nの出力導波路103f(#1)〜103f(#n)、およびV溝105f(#1)〜105f(#n)の参照符号については、一部省略している。
マルチモード導波路102fは、波長λ1 ,…,λn (nは自然数、以下同様)について、n種類のマルチモード(0次モードからn−1次モード)が伝搬可能である。
入力導波路101aは、マルチモード導波路102fの中心線112fから軸ズレして、マルチモード導波路102fの入力側に光学的に結合している。各出力導波路103f(#1)〜103f(#n)は、マルチモード導波路102fの出力側において、異なる位置に光学的に結合している。
次に、光分波器100fにおける光の振る舞いについて説明する。入力導波路101aから入射した各第k波長λk のシングルモードは、マルチモード導波路102fにおいて、当該マルチモード導波路102fに固有の0次モード〜n−1次モードそれぞれに展開される。光伝搬するに従って、0次モード〜n−1次モードのモード分散により、当該第k波長λk の光は、特定の伝搬定数でn個の並行直線上を順番に移動しながら伝搬する。
同様に、第k+1波長λk+1 も、マルチモード導波路102fにおいて、当該マルチモード導波路102fに固有の0次モード〜n−1次モードそれぞれに展開される。光伝搬するに従って、0次モード〜n−1次モードのモード分散により、当該第k+1波長λk+1 の光は、特定の伝搬定数でn個の並行直線上を順番に移動しながら伝搬する。なお、上記各直線は、第kの出力導波路103f(#k)とマルチモード導波路102fとの結合位置を通る直線である。
第k波長λk と第k+1波長λk+1 との各モード分散の波長分散、すなわち、各波長の各モードの伝搬定数の波長特性のため、各波長の光の移動の伝搬定数も異なる。第k波長λkの光の移動と第k+1波長λk+1 の光の移動との位相差が逆相になる光路長で、第k波長λk と第k+1波長λk+1 との光の強度の極大位置は、上記n個の並行直線上の異なる直線上に分離する。
このように、第7の実施形態では、上記光路長をマルチモード導波路102fの長さとし、第k波長λk と第k+1波長λk+1 とが分離した各位置近傍に、第k波長λk を誘導する出力導波路103f(#k)と、第k+1波長λk+1 を誘導する出力導波路103f(#k+1)とを設けることによって、導波路のみの簡単な構成で容易にn種類の波長λ1 ,…,λn を分波することができる。
なお、第1の実施形態における光分波器100aのマルチモード導波路102aを、第5の実施形態で示した2本の並行なシングルモード導波路112d,122dに置換えたのと同様にして、上記マルチモード導波路102fをn本の並行なシングルモード導波路に置き換えても良い。図12は、第7の実施形態に係る光分波器100fのマルチモード導波路102fをn本のシングルモード導波路122f(#1)〜(#n)に置き換えた光分波器101fの構成の概要を示す図である。図12において、高次マルチモード伝搬部112fを構成するシングルモード導波路122f(#1)〜(#n)以外の構成部分については、図11に示した光分波器100fと同様である。
なお、第7の実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様、遮断したい波長のロスが最大となる位置に、すなわち、消光比が最大となる位置に、出力導波路を設けるようにしてもよい。
(第8の実施形態)
図13は、本発明の第8の実施形態に係る光分波器100gの構成の概要を示す図である。図13において、図1に示した第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図13において、光分波器100gは、入力導波路101aと、第1のマルチモード導波路102gと、第1の中継導波路103gと、第2の中継導波路104gと、第2のマルチモード導波路105gと、第3のマルチモード導波路107gと、第1の出力導波路108gと、第2の出力導波路109gと、これらを固定するための基板106gと、V溝105a,115a,125aとを備える。
第1のマルチモード導波路102g、第2のマルチモード導波路105gおよび第3のマルチモード導波路107gの機能および光路長は、第1の実施形態におけるマルチモード導波路102aと同様である。
第1の中継導波路103gは、第1のマルチモード導波路102gと第2のマルチモード導波路105gとの間を中継する導波路である。第1の中継導波路103gの入力端は、第1のマルチモード導波路102gにおける波長1.30μmの出力端に光学的に結合している。この出力端の位置については、第1の実施形態におけるマルチモード導波路102aと同様である。一方、第1の中継導波路103gの出力端は、第2のマルチモード導波路105gの中心線115gから軸ズレした位置に光学的に結合している。
第2の中継導波路104gは、第1のマルチモード導波路102gと第3のマルチモード導波路107gとの間を中継する導波路である。第2の中継導波路104gの入力端は、第1のマルチモード導波路102gにおける波長1.55μmの出力端に光学的に結合している。この出力端の位置については、第1の実施形態におけるマルチモード導波路102aと同様である。一方、第2の中継導波路104gの出力端は、第3のマルチモード導波路107gの中心線117gから軸ズレした位置に光学的に結合している。
第1の出力導波路108gは、第2のマルチモード導波路105gからの波長1.30μm波長光を第1の出力光ファイバ8に中継するための導波路である。第1の出力導波路108gの入力端は、第2のマルチモード導波路105gにおける波長1.30μmの出力端に光学的に結合している。この出力端の位置については、第1の実施形態におけるマルチモード導波路102aと同様である。
第2の出力導波路109gは、第3のマルチモード導波路107gからの1.55μ波長光を第2の出力光ファイバ9に中継するための導波路である。第2の出力導波路109gの入力端は、第3のマルチモード導波路107gにおける波長1.55μmの出力端に光学的に結合している。この出力端の位置については、第1の実施形態におけるマルチモード導波路102aと同様である。
このように、第7の実施形態では、第1のマルチモード導波路102gの出力をさらに第2および第3のマルチモード導波路105g、107gに入力する多段型分波器構成となっている。これにより、第2および第3のマルチモード導波路105g、107gで、さらに消光比を高めることができる。したがって、第1の実施形態に係る光分波器100aよりも、波長1.30μmおよび波長1.55μmの消光比をより高めることができる光分波器を提供することが可能となる。
なお、マルチモード導波路を2段よりも3段にした方がより高い消光比が得られるが、全体の光路長が長くなり、ロス増加となるので、ロスと消光比とのどちらを重視するかの用途に応じて、マルチモード導波路の段数を決めると良い。
なお、第2のマルチモード導波路105gからの波長1.55μmの出力光、および第3のマルチモード導波路107gからの波長1.30μmの出力光は必要ないので、図13における光分波器100gのように、これらの光の出力導波路を省略している。
なお、消光比を高める目的であるならば、第2のマルチモード導波路105gに代えて、第1の中継導波路103gに1.30μm近傍の光のみを通すフィルタを接続し、第1の出力光ファイバ8と結合させ、第3のマルチモード導波路107gに代えて、1.55μm近傍の光のみを通すフィルタを接続し、第2の出力光ファイバと結合させてもよい。
なお、上記第1〜第8の実施形態における光分岐器では、マルチモード伝搬部でのモード分散および波長分散を固定している。すなわち、マルチモード伝搬部の屈折率が一定であるとしている。しかし、屈折率を変化することができるようなマルチモード伝搬部を用いても良い。
図14は、電気光学効果を利用してマルチモード伝搬部の屈折率を変化させる光分波器100hの構成の概要を示す図である。図14に示す光分波器100hでは、マルチモード導波路102hのコア材料として電気光学効果を有する材料を使用し、マルチモード導波路102hの上側の表裏面に二つの電極111(図14では、表側の電極111のみ図示)を設けて、外部の電圧制御部112から電極111に印加する電圧を制御する。これにより、マルチモード導波路102hの屈折率をリアルタイムで任意に変化させることができるので、波長1.30μmおよび波長1.55μmの消光比を動的に制御することが可能となる。なお、マルチモード導波路102h上の電極形状や設置位置を変化させることでマルチモード導波路102hの屈折率分布も動的に変化する。電極111の取り付け位置としては、図14のように、マルチモード導波路102hの上側の表裏面に一対設けるのに限定されるわけではなく、下側の表裏面に一対設けたり、表面の上下に一対設けるなどしてもよく、マルチモード導波路102hの屈折率を変化させることができる位置であれば、どのような位置であってもよい。
図15は、熱光学効果を利用してマルチモード伝搬部の屈折率を変化させる光分波器100iの構成の概要を示す図である。図15に示す光分波器100iでは、マルチモード導波路122aのコア材料として熱光学効果を有する材料を使用し、マルチモード導波路122aの上側表面に一つの熱伝導部121を設けて、外部の温度制御部122から熱を伝えて、熱伝導部121がマルチモード導波路122aに伝える熱の温度を制御する。これにより、マルチモード導波路122aの屈折率をリアルタイムで任意に変化させることができるので、波長1.30μmおよび波長1.55μmの消光比を動的に制御することが可能となる。なお、熱制御の仕方として、マルチモード導波路122aにペルチェ素子を設け、ペルチェ素子へ流す電流によりマルチモード導波路122aの温度を制御することも可能である。なお、マルチモード導波路122a上の熱伝導部121の形状やペルチェ素子の形状、設置位置を変化させることでマルチモード導波路122aの屈折率分布も動的に変化する。この位置は、図15に示すように、マルチモード導波路122aの上側表面のみに限定されるものではなく、上側裏面や、下側表面または裏面や、上下を含む全面など、マルチモード導波路122aの屈折率を変化させることができる位置であれば、どのような位置であってもよい。
なお、マルチモード導波路を複数の並行シングルモード導波路に置き換える場合も、シングルモード導波路のコア材を電気光学効果や熱光学効果を有する材料にすれば、図14や図15を用いて説明したのと同様のことが言える。
なお、第8の実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様、遮断したい波長のロスが最大となる位置に、すなわち、消光比が最大となる位置に、出力導波路を設けるようにしてもよい。
なお、第3〜第6および第8の実施形態で示した光分波器の原理をn種類の波長の分波に用いることで、小型化を図ることも可能である。
次に、本発明の光合波器の実施形態について説明する。なお、光合波器の構成は、光分波器の入出力関係を逆にした構成となる。光合波器における光の振る舞いも、光の可逆性から、光分波器における光の振る舞いの逆になる。したがって、以下の第8〜第12の実施形態では、光合波器の構成の概要を示す図を示し、説明を簡単にする。
(第9の実施形態)
図16は、本発明の第9の実施形態に係る光合波器200aの構成の概要を示す図である。光合波器200aは、第1の実施形態に係る光分波器100aの構成を逆にした光合波器である。
図16において、光合波器200aは、第1の入力導波路201aと、第2の入力導波路202aと、マルチモード導波路203aと、出力導波路204aと、これらを固定する基板206aと、第1の入力光ファイバ28を固定するためのV溝205aと、第2の入力光ファイバ29を固定するためのV溝215aと、出力光ファイバ27を固定するためのV溝225aとを備える。
第1の入力導波路201aと第2の入力導波路202aとは、マルチモード導波路203aの中心線213aを中心に対称な位置に配置されている。出力導波路204aは、マルチモード導波路203aの中心線213aから軸ズレした位置に配置されている。これらの配置関係は、光分波器100aの入出力導波路の配置位置が逆になっているだけである。
第1の入力光ファイバ28から第1の入力導波路201aに入力される波長1.30μmの光は、マルチモード導波路203aで0次モードと1次モードとに展開される。第2の入力光ファイバ29から第2の入力導波路202aに入力される波長1.55μmの光は、マルチモード導波路203aで0次モードと1次モードとに展開される。マルチモード導波路203aにおけるモード干渉によって、波長1.30μmの光の強度と波長1.55μmの光の強度とがマルチモード導波路203aの出力端(出力導波路204aの入力端)で共に極大となり、合波された光が出力導波路204aを介して、出力光ファイバ207cに入力される。
このように、第9の実施形態に係る光合波器では、マルチモード導波路203aを設け、マルチモード導波路203aの中心線213aから軸ズレした位置に出力導波路204aを結合し、中心線213aを中心に入力導波路201aおよび202aを設けることによって、波長1.30μmの光と波長1.55μmの光とを合波することが可能となる。第1の実施形態に係る光分波器は、マルチモード光導波路を用いた単純な構成であるので、低価格に提供することが可能となる。
また、上記のことより、第1の実施形態で示した光分波器100aは、光合波器としても機能することが分かるので、本発明に係る光分波器は、複数の波長の合波および/または合波を行うことができる光合分波器としても用いることができる。このことは、以下の実施形態においても同様である。
なお、合波器の場合、消光比というスペックが無いので、透過ロスで性能が決まる。したがって、2個の入力導波路の接続位置は、光の強度の極値反転条件を完全に満たすように、各波長の極大点とするのがベストである。
(第10の実施形態)
図17は、本発明の第10の実施形態に係る光合波器200bの構成の概要を示す図である。図17において、第9の実施形態に係る光合波器200aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。光合波器200bは、第3の実施形態に係る光分波器100bの構成を逆にした光合波器である。
図17において、光合波器200bは、第1の入力導波路201aと、第2の入力導波路202aと、異光路長マルチモード導波路203bと、出力導波路204aと、これらを固定する基板206bと、V溝205a,215a,225aとを備える。
異光路長マルチモード導波路203bは、第1の光路長部213bと、第2の光路長部223bとを含む。第1の光路長部213bは、第3の実施形態の光分波器100bにおける第1の光路長部112bと同様の特性を有し、第1の入力導波路201aからの波長1.30μmの光をモード干渉させて、異光路長マルチモード導波路203bの出力端(中心線233bから軸ズレした位置)で当該光の光の強度を極大とさせる。
第2の光路長部223bは、第3の実施形態の光分波器100bにおける第2の光路長部122bと同様の特性を有し、第2の入力導波路202aからの波長1.55μmの光をモード干渉させて、異光路長マルチモード導波路203bの出力端(中心線233bから軸ズレした位置)で当該光の強度を極大とさせる。
このように、第10の実施形態では、異光路長マルチモード導波路203bを用いるので、第3の実施形態で説明したように、異光路長マルチモード導波路203bの光路長を5,000μm以下にすることが可能となる。これにより、光合波器の小型化が可能となる。
なお、第10の実施形態においても、第3の実施形態の場合と同様(図8および図9参照)、異光路長マルチモード導波路203bを並行に配置された二個のシングルモード導波路によって構成するようにしてもよい。
(第11の実施形態)
図18は、本発明の第11の実施形態に係る光合波器200cの構成の概要を示す図である。図18において、第8の実施形態に係る光合波器200aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。光合波器200cは、第3の実施形態に係る光分波器100cの構成を逆にした光合波器である。
光合波器200cは、第1の入力導波路201aと、第2の入力導波路202aと、多段型マルチモード導波路203cと、出力導波路204aと、これらを固定する基板206cと、V溝205a,215a,225aとを備える。
多段型マルチモード導波路203cは、第1のマルチモード領域部213cと、第2のマルチモード領域部223cとを含む。第1のマルチモード領域部213cは、第3の実施形態の光分波器100cにおける多段型マルチモード導波路102cの第2のマルチモード領域部122cと同様の特性を有する。すなわち、第1のマルチモード領域部213cは、第2の入力導波路202aからの波長1.55μmの光をモード干渉させ、第2のマルチモード領域部223cとの境界面で光の強度が極大となるようにする。
第2のマルチモード領域部223cは、第3の実施形態の光分波器100cにおける多段型マルチモード導波路102cの第1のマルチモード領域部112cと同様の特性を有する。すなわち、第2のマルチモード領域部223cは、波長1.30μmの光のみをモード干渉させ、出力端面(出力導波路204aの入力端)で光の強度が極大となるようにする。
このように、第11の実施形態では、多段型マルチモード導波路203cを用いることによって、第4の実施形態の場合と同様、光合波器の小型化を図ることが可能となる。
なお、第11の実施形態においても、第4の実施形態の場合と同様(図10参照)、多段型マルチモード導波路203cを並行に配置された二個のシングルモード導波路によって構成するようにしてもよい。
(第12の実施形態)
図19は、本発明の第12の実施形態に係る光合波器200fの構成の概要を示す図である。図19において、第8の実施形態に係る光合波器200aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。光合波器200fは、第7の実施形態に係る光分波器100fの構成を逆にした光合波器である。
光合波器200fは、n個の入力導波路201fと、高次マルチモード導波路203fと、出力導波路204aと、これらを固定する基板206fと、n個のV溝205fと、V溝225aとを備える。なお、入力導波路201f、V溝205fの参照符号については、図面を見やすくするため、全てに付していない。
高次マルチモード導波路203fは、第7の実施形態の光分波器100fにおけるマルチモード導波路102fと同様の特性を有する。
このように、第12の実施形態では、第1〜第n入力光ファイバから入力されるn種類の波長λ1 ,…,λn を合波できる光合波器を提供することが可能となる。
なお、高次マルチモード伝搬部は、シングルモード導波路で構成されたカプラーであってもよい。図20は、高次マルチモード伝搬部213fをn個のシングルモード導波路223fで構成した光分波器200gの構成の概要を示す図である。動作原理は、図12に示した光分波器101fにおける光の振る舞いを逆にすれば説明できる。
なお、図19および図20で示した光合波器の他、光分波器の場合と同様、図16〜図18に示した光合波器の原理をn波長用に用いてもよい。その場合、マルチモード導波路は、シングルモード導波路で構成されたカプラーであってもよいことは、いうまでもない。
なお、上記に示したn波長用の光分波器は、光合分波器としても機能することはいうまでもない。
また、図13に示した光分波器を光合波器に応用してもよい。この場合、マルチモード導波路の一つの入力端に第1の前段マルチモード導波路を設け、他方の入力端に第2の前段マルチモード導波路を設けるようにすればよい。
なお、図21に示すように、光合波器210aのマルチモード導波路213gを電気光学効果を有する材料にして、電圧制御部112および電極111によって、マルチモード導波路213gの屈折率を変化させ、動的に合波比を制御するようにしてもよい。電圧制御部112および電極111については、図14を用いて説明したものと同様である。
また、図22に示すように、光合波器220aのマルチモード導波路223aを熱光学効果を有する材料にして、温度制御部122および熱伝導部121によって、マルチモード導波路223aの屈折率を変化させ、動的に合波比を制御するようにしてもよい。温度制御部122および熱伝導部121については、図15を用いて説明したものと同様である。
次に、上記実施形態で説明した光分波器および光合波器を用いた光デバイスの実施形態について説明する。
(第13の実施形態)
図23は、本発明の第13の実施形態に係るWDMゲイン調整器300aの構成の概要を示す図である。図23において、WDMゲイン調整器300aは、図11に示す光分波器100fと同構成の分波部301aと図19に示す光合波器200fと同構成の合波部302aと、n個のゲイン調整部303aと、これらを固定する基板306aと、V溝105a,206fとを備える。図23には、主要部における各波長の光の強度を示す。図23において、光分波器100f、および光合波器200fと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。
分波部301aは、入力導波路101aと、マルチモード導波路102fと、n個の入力側中継導波路311aとを含む。合波部302aは、n個の出力側中継導波路312aと、高次マルチモード導波路203fと、出力導波路204aとを含む。
各ゲイン調整部303aは、分波部301aの入力側中継導波路311aからの各波長の光の強度が一定となるようにゲイン調整して、出力側中継導波路312aに供給する。
このように、WDM伝送しているn種類の波長を全て分波し、各波長毎にゲイン調整した後合波して、再びWDM伝送に戻すことにより、伝送中にばらついた各波長のゲインを調整して光信号を整えることが可能となる。
なお、外部制御部を設けて、ゲイン調整器を制御して、動的な調整を行うようにしてもよい。
なお、波長毎のゲインのばらつきは光信号の伝送条件で異なるので、分波部301aにおいて各波長のゲインをモニターし、各波長毎に所望のゲインとなるように各ゲイン調整部303aを動的に制御することにより、常に安定した光信号に補正することが可能となる。
なお、各波長のゲインをモニターする場所は、合波部302aでも良く、この場合は、合波部302aの出力が所望のゲインとなるまで補正値をゲイン調整部303aにフィードバックするような構成となる。この場合、外部制御部とモニター部とを設けて、外部制御部がゲイン調整部303aを制御するようにすればよい。
なお、ゲイン調整器の他、ゲイン、各波長の位相または偏光状態の内、少なくとも一つを調整するような調整器を設けても良い。
なお、分波部301aのマルチモード導波路102f、および合波部302aの高次マルチモード導波路203fをn個の並行シングルモード導波路で形成しても良い。
(第14の実施形態)
図24は、本発明の第14の実施形態に係るWDM用アド・ドロップ300bの構成の概要を示す図である。図24において、図1に示した光分波器100aおよび図15に示した光合波器200aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。
図24において、WDM用アド・ドロップ300bは、第1の入力導波路101aと、分波側マルチモード導波路301bと、中継導波路302bと、合波側マルチモード導波路303bと、ドロップ導波路304bと、アド導波路305bと、出力導波路204aと、これらを固定する基板306bと、V溝105a,225acと、ドロップ光ファイバ37を固定するためのV溝307bと、アド光ファイバ38を固定するためのV溝308bとを備える。
分波側マルチモード導波路301bは、第1の実施形態の光分波器100aにおけるマルチモード導波路102aと同一の特性を有する。合波側マルチモード導波路303bは、第8の実施形態の光合波器200aにおけるマルチモード導波路203aと同一の特性を有する。また、第2の実施形態に係る光分波器を用いれば、所望の波長以外の波長を最大限遮断して、分波することができるので、出力先の装置に悪影響を与えることが防止される。
中継導波路302bは、分波側マルチモード導波路301bから出力される波長1.30μmの光を合波側マルチモード導波路303bに中継するための導波路である。ドロップ導波路304bは、分波側マルチモード導波路301bから出力される波長1.55μmの光をドロップ光ファイバ37に入力するための導波路である。ドロップ光ファイバ37は、波長1.55μmの光を外部に導くための光ファイバである。アド光ファイバ38は、外部からの光をWDM用アド・ドロップ300b内部に導くための光ファイバである。アド導波路305bは、アド光ファイバ38から出力される波長1.55μmの光を合波側マルチモード導波路303bに中継するための導波路である。
WDM用アド・ドロップ300bでは、WDM伝送している波長1.30μmおよび波長1.55μmの内、波長1.55μmのみドロップ導波路304bを介して外部に誘導し、外部にて波長1.55μmを受光したり、変調したりした後、アド導波路305bおよび合波側マルチモード導波路303bを介して再度波長1.30μmに合波してWDM伝送に戻すことで、必要な場所で必要な信号を授受することが可能となる。
なお、ここでは、ドロップする光の波長を1.55μmとしたが、1.30μmでもよい。
なお、入力光ファイバ7と出力光ファイバ27は、ループ状につながった構成でも良い。
なお、分波側マルチモード導波路301b、および合波側マルチモード導波路303bを2個の並行シングルモード導波路で形成しても良い。
(第15の実施形態)
図25は、本発明の第15の実施形態に係るWDM用送受信モジュール300cの構成の概要を示す図である。図25において、第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。
図25において、WDM用送受信モジュール300cは、第1の導波路301cと、図1に示した光分波器100aにおけるマルチモード導波路102aと同様の特性を有するマルチモード導波路302cと、第2の導波路303cと、第3の導波路304cと、第2の導波路303cの出力端に結合された波長1.30μm用フォトダイオード305cと、第3の導波路304cの出力端に結合された波長1.55μm用レーザダイオード307cと、1.55μm用フォトダイオード308cと、これらを固定する基板306cと、入出力光ファイバ47を固定するためのV溝105aとを備える。
波長1.30μmの光を受信専用とし、波長1.55μmの光を送受信用として使用すると、入出力光ファイバ47から入射した波長1.30μmの光と波長1.55μmの光とは、それぞれ分波される。波長1.30μmの光は、第2の導波路303cを介して、1.30μm用フォトダイオード305cに受光される。波長1.55μmの光は、第3の導波路304cを介して、1.55μm用フォトダイオード308cに受光される。一方、波長1.55μm用レーザーダイオード307cから第3の導波路304cに入射した波長1.55μmの光は、マルチモード導波路302cが合波器(正確には、当該実施形態の場合、電気回路部側から第2の導波路へ入射する波長が無いので第3の導波路304cから第1の導波路301cへスルーする偏向器)として機能して、入出力光ファイバ47へ入力される。
このように、第15の実施形態では、波長1.30μmおよび波長1.55μmの光を受信し、かつ波長1.55μmの光を送信する光デバイスを提供することが可能となる。
なお、第2の実施形態に係る光分波器を用いれば、所望の波長以外の波長を最大限遮断して、分波することができるので、出力先の装置に悪影響を与えることが防止される。この場合、マルチモード導波路302cは、波長1.30μmの光を遮断して波長1.55μmの光を第3の導波路304cに入力するので、レーザーダイオード307cには、波長1.30μmの光は入力されない。よって、レーザーダイオード307cが誤動作することが防止できる。
なお、波長1.30μmを送受信用に使用する場合は、波長1.30μm用レーザーダイオードを第2の導波路303cに結合すればよい。
なお、ここでは、波長1.30μm用フォトダイオード305cと波長1.55μm用レーザーダイオード307cおよびフォトダイオード308cなどの全ての電気部品がマルチモード導波路302cや光ファイバなどの全ての光部品から完全に分離した構成なので、WDM用送受信モジュールは、電気信号処理回路を電気部品として一体化した電気回路部と、光部品を一体化した光回路部とを集約することとなる。
(第16の実施形態)
図26は、本発明の第16の実施形態に係るWDM用インターリーバ300dの構成の概要を示す図である。図26において、第1の実施形態の光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。図26において、WDM用インターリーバ300dは、入力導波路101aと、マルチモード導波路301dと、第1の出力導波路103aと、第2の出力導波路104aと、これらを固定する基板106aと、V溝105a,115a,125aとを備える。
マルチモード導波路301dは、2n(n=1,2,…)種類の等間隔の波長λ1 , … λ2nのマルチモードが伝搬可能で、第2k−1(k=1,2,…)波長λ2k-1(以下、奇数番多重波長光という)、および第2k波長λ2k(以下、偶数番多重波長光という)について、使用波長領域において波長と線形関係にある屈折率材料で構成されている。
入力導波路101a、第1の出力導波路103aおよび第2の出力導波路104aのマルチモード導波路301dへの結合位置については、第1の実施形態の場合と同様である。
次に、WDM用インターリーバ300dにおける光の振舞いについて説明する。マルチモード導波路の中心線112aから軸ズレした入力導波路101aから入射した2n種類の波長λ1 , … λ2nの奇数番波長のシングルモードは、マルチモード導波路301dにおいて、マルチモード導波路301dに固有の0次モードと1次モードとに展開される。そして、モード分散により、奇数番多重波長光の強度は、ある伝搬定数で2本の並行直線上を順番に移動しながら伝搬する。
同様に、偶数番波長のシングルモードも、マルチモード導波路301dにおいて、マルチモード導波路301dに固有の0次モードと1次モードとに展開される。そして、モード分散により、偶数番多重波長光の強度は、ある伝搬定数で上記2本の並行直線上を順番に移動しながら伝搬する。
奇数番多重波長光と偶数番多重波長光の各波長のモード分散の波長分散により、奇数番多重波長光と偶数番多重波長光の移動の伝搬定数が異なるため、奇数番多重波長光の移動と偶数番多重波長光の移動との位相差が逆相になる光路長で奇数番多重波長光と偶数番多重波長光との強度の極大位置は、上記2本の並行直線上の異なる直線上に分離する。
このように、奇数番多重波長光と偶数番多重波長光との強度の極大位置が分離する光路長をマルチモード導波路301dの光路長とし、奇数番多重波長光と奇数番多重波長光とが分離した各位置近傍にそれぞれ第1の出力導波路103aおよび第2の出力導波路104aを設けると、導波路のみの簡単な構成で容易に奇数番多重波長光と偶数番多重波長光とを分波することが可能となる。
なお、光分波器100dのように(図8参照)、マルチモード導波路を2本の並行シングルモード導波路で形成しても良い。
また、マルチモード導波路301dの長さを短くするために、第1の実施形態に対しての第3の実施形態または第4の実施形態のように、奇数番多重波長光と偶数番多重波長光との出射端に差をつけて、マルチモード導波路301dを入射側から幅の異なる第1のマルチモード領域と第2のマルチモード領域とで構成することも可能である。
(第17の実施形態)
図27は、本発明の第17の実施形態に係るWDM用インターリーバ300eの構成の概要を示す図である。図27において、第1の実施形態に係る光分波器100aと同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。
図27において、WDM用インターリーバ300eは、入力導波路101aと、第1段マルチモード導波路301eと、第1の中継導波路302eと、第2の中継導波路303eと、第1の第2段マルチモード導波路304eと、第2の第2段マルチモード導波路307eと、第1の出力導波路308eと、第2の出力導波路309eと、第3の出力導波路310eと、第4の出力導波路311eと、これらを固定する基板306eと、V溝105aと、第1の出力光ファイバ56を固定するV溝305eと、第2の出力光ファイバ57を固定するV溝315eと、第3の出力光ファイバ58を固定するV溝325eと、第4の出力光ファイバ59を固定するV溝335eとを備える。
第1段マルチモード導波路301eは、図26に示したWDM用インターリーバ300dのマルチモード導波路301dと同一の特性を有し、第2k−1(k=1,2,…)波長λ2k-1(以下、奇数番多重波長光という)と第2k波長λ2k(以下、偶数番多重波長光という)との光の光路を有する第1のインターリーバである。
第1の第2段マルチモード導波路304eは、第4k−3波長λ4k-3(以下、第4k−3番多重波長光という)と第4k−1波長λ4k-1(以下、第4k−1多重波長光という)との光の光路を有する第2のインターリーバである。
第2の第2段マルチモード導波路307eは、第4k−2波長λ4k-2(以下、第4k−3番多重波長光という)と第4k波長λ4k(以下、第4k番多重波長光という)との光の光路を有する第3のインターリーバである。
ただし、第1のインターリーバ、第2のインターリーバおよび第3のインターリーバを構成するそれぞれのマルチモード導波路301e,304e,307eの屈折率は、波長使用波長領域において波長にほぼ線形である。
第1の中継導波路302eは、第1段マルチモード導波路301eからの奇数番多重波長光を第1の第2段マルチモード導波路304eに中継するための導波路である。第2の中継導波路303eは、第1段マルチモード導波路301eからの偶数番多重波長光を第2の第2段マルチモード導波路307eに中継するための導波路である。
第1の出力導波路308eは、第4k−3番多重波長光を第1の出力光ファイバ56に供給するための導波路である。第2の出力導波路309eは、第4k−1番多重波長光を第2の出力光ファイバ57に供給するための導波路である。第3の出力導波路310eは、第4k−2番多重波長光を第3の出力光ファイバ58に供給するための導波路である。第4の出力導波路311eは、第4k番波長光を第4の出力光ファイバ59に供給するための導波路である。
上記第16の実施形態で説明したように、4n(n=1,2,…)種類の等波長間隔の波長(λ1 , … λ4n)は、第1段マルチモード導波路301eにおいて奇数番多重波長光と偶数番多重波長光とに分波される。それぞれの波長の光は、第1の第2段マルチモード導波路304eと第2の第2段マルチモード導波路307eとへ入力する。
第1の第2段マルチモード導波路304eへ入力された奇数番多重波長光は、第4k−3番多重波長光と第4k−1番多重波長光とに分波される。第2の第2段マルチモード導波路307eへ入力された偶数番多重波長光は、第4k−2番多重波長光と第4k番多重波長光とに分波される。
このように、WDM用インターリーバ300eは、最終的に4n(n=1,2,…)種類の等間隔の波長λ1 , … λ4nを、それぞれ波長が等間隔に存在する4種類の波長群に分割する。
なお、各マルチモード導波路301e,304e,307eの屈折率は、波長使用波長領域において波長にほぼ線形なので、第1の第2段マルチモード導波路304eの光路長と第2の第2段マルチモード導波路307eの光路長とは等しい。
なお、各マルチモード導波路301e,304e,307eは、それぞれ2個の並行シングルモード導波路で形成しても良い。
なお、上記第16の実施形態および第17の実施形態に記載のインターリーバは、全てマルチモード導波路でのモード分散と波長分散とを固定、すなわち、屈折率が一定であるとしたが、インターリーバのマルチモード導波路の材料を電気光学効果を有する材料にしたり、熱光学効果を有する材料にしたりして、動的に分波比(インターリーバの場合、奇数番波長と偶数番波長の光の強度比)を制御するようにしてもよい。この場合の制御構成は、図14,15で示した光分波器と100h,100iと同様である。上記電気光学効果を有する材料や熱光学効果を有する材料は、屈折率変化時においても屈折率は使用波長領域において波長に線形である必要がある。
なお、上記第13〜第17の実施形態で用いたマルチモード導波路を小型化するために、第3、第4、および第6の実施形態で用いたマルチモード導波路102b,102cや、マルチモード伝搬部102eを用いてもよいことは、いうまでもない。
(第18の実施形態)
本発明の第18の実施形態に係る光分波器の構成は、第8の実施形態と同様であるので、第18の実施形態においても図13を援用することとする。つまり、第17の実施形態に係る光分波器は、入力導波路101aと、第1のマルチモード導波路102gと、第1の中継導波路103gと、第2の中継導波路104gと、第2のマルチモード導波路105gと、第3のマルチモード導波路107gと、第1の出力導波路108gと、第2の出力導波路109gと、これらを固定するための基板106gと、V溝105a,115a,125aとを備える。
第18の実施形態に係る光分波器は、分波する第1の中心波長を1.30μmとし、分波する第2の中心波長を1.55μmとし、各中心波長を中心に100nmの広い波長帯域幅に渡って25dB以上の消光比を実現することができる。以下、第1のマルチモード導波路102gを第1段分波部と呼び、第2および第3のマルチモード導波路105gおよび107gをそれぞれ第2段分波部と呼ぶ。以下、このような消光比の広帯域化を実現するためのメカニズムについて説明する。
図28は、第1段分波部における透過ロスおよび遮断ロスの波長特性を示す図である。図28において、縦軸は、ロスの大きさを示している。縦軸の上方向ほど、ロスが小さい。縦軸の下方向ほど、ロスが大きいとする。なお、透過ロスとは、取り出したい波長のロスのことをいう。遮断ロスとは、透過させたくない波長のロスのことをいう。図28において、実線は、第1段分波部における第1の出力端(1.30μmの波長を出力するための出力端であって、取り出したい波長の出力最大位置ではなく、遮断したい波長の出力最小位置)での透過・遮断ロスの波長特性を示す。波線は、第1段分波部における第2の出力端(1.55μmの波長を出力するための出力端であって、取り出したい波長の出力最大位置ではなく、遮断したい波長の出力最小位置)での透過・遮断ロスの波長特性を示す。
図28に示すように、第1の出力端では、中心波長1.55μmよりも少しマイナス側にずれた波長1.51μm付近のロスが58dB程度と最も大きい(すなわち、波長1.51μm付近の遮断ロスが最小である)。さらに、第1の出力端では、中心波長1.30μm付近のロスが0.7dB程度と十分に小さい(すなわち、波長1.30μm付近の透過ロスが十分に小さい)。したがって、第1の出力端では、中心波長が十分に透過され、中心波長から少しずれた波長1.51μmが最も遮断されることとなる。なお、透過ロスと遮断ロスとの差が、消光比ということになる。
一方、図28に示すように、第2の出力端では、中心波長1.30μmよりも少しマイナス側にずれた波長1.26μm付近のロスが56dB程度と最も大きい(すなわち、波長1.26μm付近の遮断ロスが最小である)。さらに、第1の出力端では、中心波長1.55μm付近のロスが0.3dB程度と十分に小さい(すなわち、波長1.55μm付近の透過ロスが十分に小さい)。したがって、第2の出力端では、中心波長が十分に透過され、中心波長から少しずれた波長1.26μmが最も遮断されることとなる。
図29は、第2段分波部における透過ロスおよび遮断ロスの波長特性を示す図である。図29において、縦軸は、ロスの大きさを示している。縦軸の上方向ほど、ロスが小さい。縦軸の下方向ほど、ロスが大きいとする。図29において、実線は、第2段分波部における第1の出力端(1.30μmの波長を出力するための出力端であって、取り出したい波長の出力最大位置ではなく、遮断したい波長の出力最小位置)での透過・遮断ロスの波長特性を示す。波線は、第2段分波部における第2の出力端(1.55μmの波長を出力するための出力端であって、取り出したい波長の出力最大位置ではなく、遮断したい波長の出力最小位置)での透過・遮断ロスの波長特性を示す。なお、第2段分波部は、マルチモード導波路105g,107gによって構成されるが、各マルチモード導波路は、図29に示すような同一の波長特性を有しているものとする。
図29に示すように、第1の出力端では、中心波長1.55μmよりも少しプラス側にずれた波長1.59μm付近のロスが58dB程度と最も大きい(すなわち、波長1.59μm付近の遮断ロスが最大である)。さらに、第1の出力端では、中心波長1.30μm付近のロスが0.7dB程度と十分に小さい(すなわち、波長1.30μm付近の透過ロスが十分に小さい)。したがって、第1の出力端では、中心波長が十分に透過され、中心波長から少しずれた波長1.59μmが最も遮断されることとなる。
一方、図29に示すように、第2の出力端では、中心波長1.30μmよりも少しプラス側にずれた波長1.34μm付近のロスが56dB程度と最も大きい(すなわち、波長1.34μm付近の遮断ロスが最大である)。さらに、第1の出力端では、中心波長1.55μm付近のロスが0.3dB程度と十分に小さい(すなわち、波長1.55μm付近の透過ロスが十分に小さい)。したがって、第2の出力端では、中心波長が十分に透過され、中心波長から少しずれた波長1.34μmが最も遮断されることとなる。
図30は、第18の実施形態に係る光分波器全体における透過ロスおよび遮断ロスの波長特性を示す図である。図30において、縦軸は、ロスの大きさを示している。縦軸の上方向ほど、ロスが小さい。縦軸の下方向ほど、ロスが大きいとする。図30において、実線は、第1の出力導波路108gの出力端での透過・遮断ロスの波長特性を示す。波線は、第2の出力導波路109gの出力端での透過・遮断ロスの波長特性を示す。
図30に示すように、第1の出力導波路108gの出力端では、波長1.55μmを中心として、1.50μmから1.60μmまでの間、ロスが十分大きくなっている。すなわち、波長1.50μmから1.60μmまでの光の遮断ロスが、十分に大きくなっている。さらに、第1の出力導波路108gの出力端では、波長1.30μmを中心として、1.25μmから1.35μmまでの間、ロスが十分に小さくなっている。すなわち、波長1.25μmから1.35μmまでの光の透過ロスが、十分に小さくなっている。
一方、図30に示すように、第2の出力導波路109gの出力端では、波長1.30μmを中心として、1.25μmから1.35μmまでの間、ロスが十分大きくなっている。すなわち、波長1.25μmから1.35μmまでの光の遮断ロスが、十分に大きくなっている。さらに、第2の出力導波路108gの出力端では、波長1.55μmを中心として、1.50μmから1.60μmまでの間、ロスが十分に小さくなっている。すなわち、波長1.50μmから1.60μmまでの光の透過ロスが、十分に小さくなっている。
このように、分波したい波長の前後に中心周波数を対称にずらして、多段に光分波器を接続すれば、広い波長帯域に渡って、25dB以上の消光比を得ることができる。一段の分波器だけの場合、中心波長については、50dB以上の消光比を得ることができるが、消光比が高い範囲は、20nmの狭い波長帯域となる。したがって、消光比が高い範囲を広くするためには、本実施形態は有効である。
なお、中心波長の異なるマルチモード導波路を2段よりも3段にした方がより広帯域で高い消光比を得ることができる。しかし、この場合、全体の光路長が長くなくなるので、透過ロス増加につながる。したがって、マルチモード導波路の段数は、透過ロス増加と消光比の向上とのどちらを重視すべきか、用途に応じて決めるとよい。たとえば、消光比の向上を重視する場合、第2のマルチモード導波路105gと第3のマルチモード導波路107gとに、それぞれ、中心波長が1.30μmと1.55μmとのマルチモード導波路で構成される分波部を更に接続すれば、2段では最大消光比とならなかった分波したい第1の波長と第2の波長とに対して、消光比を最大にすることができる。
なお、第8の実施形態に係る光分波器は、第1のマルチモード導波路102gの出力をさらに第2および第3のマルチモード導波路105g,107gに入力する多段型分波器構成となっている。第8の実施形態に係る光分波器は、第17の実施形態に係る光分波器と異なり、第1段分波部と第2段分波部とが同一の透過ロスおよび遮断ロスを有していることとした。そのため、分波したい第1の波長1.30μmおよび第2の波長1.55μmを中心にした狭帯域波長の消光比をより高める目的には有用である。
なお、第2のマルチモード導波路105gからの波長1.55μmの出力光、および第3のマルチモード導波路107gからの波長1.30μmの出力光は必要ないので、第8の実施形態と同様、第18の実施形態でも、これらの光の出力導波路が省略されている。
なお、第18の実施形態における光分波器では、マルチモード伝搬部でのモード分散および波長分散が固定されている。すなわち、マルチモード伝搬部の屈折率は一定であるとしている。しかし、屈折率を変化することができるようなマルチモード伝搬部が用いられてもよい。
以上述べたことから明らかなように、本発明は、従来と同性能を維持しつつ、誘電体多層膜フィルターを必要とせず、導波路のみの簡単な構成で分波器・合波器を実現することができるという効果を有するものである。
なお、上記全ての実施形態では、シングルモード光ファイバを用いて、光を入出射することとしたが、マルチモード光ファイバを用いて、光を入出射するようにしてもよい。