JP4350313B2 - スタンパ形成用電極材料及びスタンパ形成用薄膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の光ディスクを量産する際の成形用鋳型として利用されるスタンパを形成するために使用されるスタンパ形成用薄膜、及びそのスタンパ形成用薄膜を構成するスタンパ形成用電極材料に関するものである。より詳しくは、前記スタンパを電鋳法により形成させる際に電極として利用されるスタンパ形成用薄膜、及び前記電極を構成する材料としてのスタンパ形成用電極材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばCDやDVDといった光ディスクを製造する場合には、まず、図3(a)に示すように、その表面を研磨して平滑にしたガラス製の原板101の表面にスピンコート等によりレジスト膜102を形成する。次いで、このレジスト膜102に対してパターニング処理が施される。パターニング処理は、図3(b)に示すように、レジスト膜102をレーザビームで露光し、潜像102aを形成した後、現像することにより行われる。すると、図3(c)に示すように、レジスト膜102の表面には複数の溝部よりなる凹パターン102bが形成される。
【0003】
このパターニング処理が行われた後、図3(d)に示すように、レジスト膜102上には凹パターン102bの全体を被覆するように、金属材料よりなる電極膜103がスパッタリング法、蒸着法等により形成される。この電極膜103の金属材料には、導電率が高く膜形成後に組成変化しづらい性質を有するニッケル(Ni)元素が単体で使用されており、その膜厚は均一なものとなっている。その後、図3(e)に示すように、この電極膜103を電極として用いる電鋳法により、電極膜103の表面にはNi製の金属層104が積層される。
【0004】
この後、図3(f)に示すように、電極膜103とともに金属層104をレジスト膜102の表面から剥離させると、電極膜103及び金属層104が一体となったスタンパ104aが得られる。このスタンパ104aの表面には前記凹パターン102bとは逆転した形状となるように、複数の突部よりなる凸パターン104bが転写されている。そして、スタンパ104aを成形型として使用し、凸パターン104b側に合成樹脂材料を射出することにより、その表面に前記凹パターン102bと同一の凹パターンが複写された基板が形成され、この凹パターンを覆うように基板上に反射膜、保護層等を積層することにより光ディスクが製造される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年の光ディスクには、例えばCDに対するDVDのように、サイズを大きくすることなく記憶容量を増大させるため、単位面積当たりの記録密度をさらに高度化させることが課題となっている。このため、前述したパターニング処理においては、レーザビームと比較して溝部をより幅狭とすることができ、高精細な凹パターン102bを形成可能な電子ビームが使用されるようになっている。そして、電子ビームで露光を行う際には、レジスト膜102を形成するレジスト材料中に、塩素、硫黄、フッ素等の電子吸引性の元素又は電子吸引機能を有する基等(以下、電子吸引基と記載する)が添加され、レジスト膜102の電子吸収感度が高められている。
【0006】
ところが、上記のように電子吸収感度を向上させたレジスト膜102を使用すると、電鋳法で電極膜103上に金属層104を積層する際、電極膜103は、その材料であるNi元素が電子吸引性の元素又は電子吸引基に対して反応し、変質する等して損傷するおそれがある。すると、スタンパ104aは、この電極膜103により凸パターン104bの表面部分が形成されていることから、損傷した電極膜103により凸パターン104bの表面が荒れるという不具合を生じてしまう。そして、このようなスタンパ104aを使用して形成された基板には前記凹パターン102bが正確に複写されず、データ読取り時のノイズが大きくなり、S/N比(Signal−to−Noise ratio)が低く、品質の低下した光ディスクが製造されてしまうという問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、耐腐食性を向上させることにより、スタンパ形成用薄膜の損傷を抑制し、形成されるスタンパを高品質なものとすることができるように構成されたスタンパ形成用電極材料及びスタンパ形成用薄膜を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のスタンパ形成用電極材料は、原板上のパターニング処理されたレジスト膜の表面に被覆されるスタンパ形成用薄膜を構成し、前記スタンパ形成用薄膜を電極として使用する電鋳法により、その薄膜の表面に金属層を積層させ、その金属層をスタンパ形成用薄膜とともにレジスト膜から剥離させてスタンパを形成するためのスタンパ形成用電極材料であって、銅(Cu)元素を主成分として含有するとともに、少なくとも1種の他の元素を含有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明のスタンパ形成用電極材料は、請求項1に記載の発明において、前記他の元素は、銀(Ag)及びチタン(Ti)の少なくともいずれか1種であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明のスタンパ形成用電極材料は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、10.0重量パーセント以下の銀(Ag)元素を含有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明のスタンパ形成用電極材料は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、5.0重量パーセント以下のチタン(Ti)元素を含有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載の発明のスタンパ形成用薄膜は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のスタンパ形成用電極材料からなることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図2(b)に示すように、光ディスク20を構成する基板21は、合成樹脂である透明なポリカーボネートにより円板状に形成され、その上面には複数の微細な溝部よりなる凹パターン21aを有している。基板21の上部には、この凹パターン21aの各溝部を被覆するようにアルミニウム製の薄膜よりなる反射膜22が積層されている。さらに、反射膜22の上部には、紫外線硬化樹脂よりなる保護層23が凹パターン21aの各溝部を埋めつつ、さらに基板21をその全面に渡って被覆するように積層されており、この保護層23により凹パターン21a及び反射膜22の損傷が防止されている。
【0014】
図2(a)に示すように、前記基板21は、後述する製造方法により成形された金属製のスタンパ15を用いて形成される。このスタンパ15は、ニッケル(Ni)製の金属層14と、その金属層14の下面に積層された金属材料(スタンパ形成用電極材料)よりなるスタンパ形成用薄膜としての電極膜13とにより一体的に形成されている。このスタンパ15の下面は、基板21の凹パターン21aとは逆転した形状をなし、複数の突部よりなる凸パターン16を有している。そして、前記基板21を成形する工程は、スタンパ15を成形用鋳型として用い、凸パターン16を有する下面側にポリカーボネート材料を射出して、ポリカーボネート材料が硬化した後、スタンパ15から離型させることにより行われる。
【0015】
また、光ディスク20を製造する工程は、まず、射出成形された基板21にスパッタリング法、蒸着法等の方法により反射膜22を形成した後、その反射膜22上に保護層23を形成させる。
【0016】
次に、上記スタンパ15を成形するための製造方法について説明する。
さて、スタンパ15を成形するための製造方法として、まず、図1(a)に示すように、原板11上にレジスト膜12を形成する工程について説明する。この工程は、その表面が研磨、洗浄されて平滑面とされたガラス板又はシリコンウェハからなる原板11上に、スピンコート法等により液状のレジスト材料を均一な厚さとなるように塗布した後、プリベークすることにより行われる。その結果、前記レジスト材料が加熱乾燥されてレジスト膜12が形成される。このレジスト材料中には、塩素、硫黄、フッ素等のような電子吸引性の元素又は電子吸引基が含有されているため、形成されたレジスト膜12の電子吸収感度は向上されている。
【0017】
次いで、前記レジスト膜12に対し、パターニング処理を施す工程について説明する。この工程では、まず、図1(b)に示すように、前記レジスト膜12の上面側から電子ビームを照射することによりレジスト膜12を露光し、そのレジスト膜12の表面に潜像12aが形成されてデータ信号の記録が行われる。この後、図1(c)に示すように、前記レジスト膜12を現像することにより潜像12a部分が除去されて、レジスト膜12の上面に複数の溝部よりなる凹パターン12bが形成される。続いて、このレジスト膜12をポストベークすることにより、レジスト膜12に対するパターニング処理が完了する。
【0018】
続いて、図1(d)に示すように、スタンパ形成用薄膜としての電極膜13を形成する工程について説明する。この工程は、スパッタリング法、蒸着法、無電界メッキ法等の方法により、レジスト膜12の上面にスタンパ形成用電極材料(金属材料)よりなる電極膜13が均一な膜厚となるように形成されることにより行われる。この状態で電極膜13には凹パターン12bの形状が正確に転写されている。
【0019】
最後に、スタンパ15を形成する工程について説明する。この工程では、まず、図1(e)に示すように、前記電極膜13を電極として使用し、電鋳法を施すことにより、電極膜13の上面にNi元素が堆積され、金属層14が積層される。そして、金属層14を電極膜13とともに、原板11及びレジスト膜12の表面から剥離させることにより、図1(f)に示すように、金属層14及び電極膜13が一体となったスタンパ15が得られる。
【0020】
このスタンパ15の下面には、凹パターン12bの形状が正確に転写された電極膜13により、前記凹パターン12bとは逆転した形状をなす複数の突部より構成された凸パターン16が形成されている。そして、このスタンパ15を利用することにより、上述したように光ディスク20を構成する基板21が射出成形される。
【0021】
なお、スタンパ15を形成した以降の工程としては、上記の工程で得られるスタンパ15をマスタスタンパとし、凸パターン16が形成された面上に電鋳法を施すことにより、凹パターンを有するサブマスタスタンパの形成を行うことができる。さらにこの後、サブマスタスタンパを利用してマスタスタンパと同一形状の複数のベビースタンパを形成し、これらベビースタンパを使用して光ディスク20の基板21を射出成形することもできる。
【0022】
一方、上記電極膜13を構成するスタンパ形成用電極材料(金属材料)には、導電率が高く、レジスト材料中の電子吸引性の元素又は電子吸引基に対して化学反応を起こしにくいことから、銅(Cu)を主成分として含有するとともに、少なくとも1種の他の元素を含有するものが使用される。なお、この明細書中で主成分とは、スタンパ形成用電極材料の中で含有量の最も多いものを指すものとする。前記他の元素としては、スタンパ形成用薄膜としての電極膜13の耐腐食性を容易に向上させることができることから、銀(Ag)及びチタン(Ti)の少なくともいずれか1種を選択するのが好ましい。また、銀(Ag)及びチタン(Ti)以外にも、パラジウム(Pd)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、白金(Pt)及び金(Au)の少なくともいずれか1種を選択してもよい。
【0023】
この実施形態のスタンパ形成用電極材料には、Cuを主成分とし、前に挙げた金属元素のうち、Ag及びTiが添加されたものが使用されている。このようにスタンパ形成用電極材料中にAg及びTiを添加した場合には、電極膜13の導電性を維持しつつ、塩素、硫黄、フッ素等の電子吸引性の元素又はそれらを電子吸引基として有する物質に対する耐腐食性の向上を図ることができる。
【0024】
さらに、Agを添加させる場合、スタンパ形成用電極材料中におけるAgの含有率は、10.0重量パーセント以下とすることが好ましく、より好ましくは5.0重量パーセント以下である。Agを10.0重量パーセントより多く含有すると、その組成によってはCu及びTiのそれぞれと固溶体を形成しづらくなったり、生成される金属材料の性質が安定しなかったり、所望の耐腐食性を有していなかったりするおそれがある。また、スタンパ形成用電極材料中におけるTiの含有率は、5.0重量パーセント以下とすることが好ましく、より好ましくは2.0重量パーセント以下であり、さらに好ましくは1.0重量パーセント以下である。Tiを5.0重量パーセントより多く含有すると、その組成によってはCu及びAgと固溶体を形成しづらくなったり、生成される金属材料の性質が安定しなかったり、所望の耐腐食性を有していなかったりするおそれがある。
【0025】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態のスタンパ形成用薄膜としての電極膜13には、Cu、Ag及びTiからなるスタンパ形成用電極材料(金属材料)が用いられている。このCu、Ag及びTiからなるスタンパ形成用電極材料は、塩素、硫黄、フッ素等の電子吸引性の元素又はそれらを電子吸引基として有する物質に対する耐腐食性が高いことから、電鋳法によりNi製の金属層14を形成させる際の電極膜13の変質等といった損傷を防止することができる。
【0026】
この電極膜13により凸パターン16の表面が形成されたスタンパ15は、レジスト膜12の凹パターン12bが正確に転写されたままの状態で、その表面を平滑面として維持することができる。従って、このようなスタンパ15を使用して形成された光ディスク20の基板21は、レジスト膜12の凹パターン12bが正確に複写された凹パターン21aを有するとともに、凹パターン21aを構成する各溝部の内面が平滑面となる。そして、光ディスク20に記録されたデータを読み取るための光学ピックアップから照射されるレーザの乱反射が抑制されることから、S/N比(Signal−to−Noise ratio)が向上し、光ディスク20の品質を高度に維持することができる。
【0027】
・ さらに、スタンパ形成用電極材料中におけるAgの含有率を10.0重量パーセント以下に、Tiの含有率を5.0重量パーセント以下に設定することにより、電極膜13の耐腐食性のさらなる向上を相乗効果的に図ることが可能である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、この発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
石英基板上に、RFスパッタ装置を使用してCu及びAgの2種からなる電極膜13を形成した。すなわち、Cu及びAgの2種のスパッタリングターゲットを用意してRFスパッタ装置に装着し、各金属を同時に基板上に堆積させてスパッタリングを行い、電極膜13を形成した。このとき、各金属の含有率は、各金属原子の放出量を制御することにより調整し、この金属原子の放出量の制御は、各スパッタリングターゲットへのRF投入電力により行った。なお、スパッタリングターゲットのサイズは、直径7.62cm(3inch)、厚み5mmであり、このスパッタリングターゲットから基板までの距離を約90cmとした。また、成膜条件は、到達真空度を3×10-5Pa、成膜時のガス圧を0.7〜1.0Paとした。また、RF投入電力は100〜500Wとした。
【0030】
(実施例2)
Cu及びTiの2種のスパッタリングターゲットを用意し、実施例1と同様に各金属原子の放出量を制御しながらスパッタリングを行い、電極膜13を形成した。
【0031】
(実施例3)
Cu、Ag及びTiの3種のスパッタリングターゲットを用意し、実施例1と同様に各金属原子の放出量を制御しながらスパッタリングを行い、電極膜13を形成した。
【0032】
(比較例1)
石英基板上に、RFスパッタ装置を使用してCuのみからなる電極膜13を形成した。すなわち、Cuのスパッタリングターゲットを用意し、RFスパッタ装置に装着し、スパッタリングを行って電極膜13を形成した。スパッタリングターゲットのサイズは、直径7.62cm(3inch)、厚み5mmであり、このスパッタリングターゲットから基板までの距離を約90cmとした。成膜条件は、到達真空度を3×10-5Pa、成膜時のガス圧を0.7〜1.0Paとした。また、RF投入電力は100〜500Wとした。
【0033】
(耐腐食性の評価)
実施例1〜3及び比較例1で得られた電極膜13を石英基板とともに、その濃度が5体積パーセント(これ以降、vol%と記載する)の塩化ナトリウム水溶液中に常温で浸し、所定時間放置した後、経時変化の有無を評価した。測定結果を表1に示した。なお、金属材料中における各金属元素の組成、つまり含有率は、重量パーセント(これ以降、wt%と記載する)で示した。経時変化の有無の評価は測定者の目視により行い、測定時に電極膜13の表面が全く変質しなかったものを○、表面が若干変質したものを△、表面が変質したものを×として評価した。また、塩化ナトリウム水溶液を使用した理由は、任意で選択したレジスト材に塩素およびナトリウム含有による腐食作用が懸念されたためである。
【0034】
【表1】
表1の結果より、実施例1及び実施例2においては、30分(これ以降、minと記載する)の浸漬で電極膜13の表面の一部が若干白く濁るように変質した。比較例1においては、30minの浸漬で電極膜13の表面全体が白く濁るように変質した。実施例3においては、30minの浸漬では表面が変質せず、60minの浸漬で電極膜13の表面が白く濁るように変質した。
【0035】
実施例2と実施例3とを比較すると、Tiの含有率が同じく5wt%であるにも係わらず、Agの有無により、実施例2よりも実施例3の耐腐食性が高いことが示された。このため、Cuを主成分とする金属材料にAg及びTiの2種類を添加することにより、耐腐食性が向上するとともに、Tiの含有率は5.0wt%以下に設定することが好ましいことが示された。
【0036】
実施例3において、Ag及びTiの含有率がそれぞれ10wt%及び5wt%では、60minの浸漬で表面が変質するというように若干の不具合が生ずることが示された。そこで、以下に示す実施例では、電極膜13を作製するための最適な条件を求めた。
【0037】
(実施例4〜10)
実施例1と同様に各金属原子の放出量を制御しながらスパッタリングを行い、Tiの含有率を実施例4〜6では0.1wt%、実施例7〜10では0.5wt%とし、これに対してAgの含有率を変えながら実施例4〜10の電極膜13を形成した。そして、各実施例で得られた電極膜13を上記の耐腐食性の評価と同様に評価した。測定結果を表2に示した。
【0038】
【表2】
表2の結果より、実施例4〜8においては、30minの浸漬で電極膜13の表面が白く濁るように変質した。実施例9及び実施例10は、60minの浸漬で電極膜13の表面が白く濁るように変質した。Agの含有率が10wt%より高く設定された実施例5〜実施例8においては、30minの浸漬で表面が変質したことから、Agの含有率は10wt%以下に設定することが好ましいことが示された。
【0039】
一方、実施例4及び実施例9を比較すると、Agの含有率が同じく10wt%であるにも係わらず、実施例4よりも実施例9の耐腐食性が高いことが示された。このため、Cuの含有率が90wt%程度の場合、Agの含有率をTiの含有率と比較して20倍前後となるように設定することが好ましいことが示された。
【0040】
この結果を基にして、以下に示す実施例では、電極膜13を作製するためのさらに最適な条件を求めた。
(実施例11〜17)
実施例1と同様に各金属原子の放出量を制御しながらスパッタリングを行い、Agの含有率が10wt%以下となるようにAg及びTiの含有率をそれぞれ変えながら実施例11〜17の電極膜13を形成した。そして、各実施例で得られた電極膜13を上記の耐腐食性の評価と同じく、濃度が5vol%の塩化ナトリウム水溶液中に常温で浸し、電極膜13の表面が変質するまで放置し、変質するまでの時間を耐塩水時間として測定してこれを評価した。なお、耐塩水時間の評価においては、前に挙げた各実施例のうち、概ね良好な耐腐食性を有することが示された実施例3、実施例9及び実施例10についても併せて評価した。測定結果を表3に示した。
【0041】
【表3】
表3の結果より、実施例3及び実施例9においては、40minの浸漬で電極膜13の表面が変質することが示された。実施例10及び実施例11においては、50minの浸漬で電極膜13の表面が変質し、実施例3及び実施例9よりも良好な耐腐食性を有することが示された。実施例12〜17においては、全ての実施例で耐塩水時間が90min以上となり、さらに良好な耐腐食性を有することが示された。なかでも、実施例13、実施例14及び実施例16においては、耐塩水時間が180minであり、最も良好な耐腐食性を有することが示された。
【0042】
上記の結果のうち、実施例9及び実施例10を比較すると、Tiの含有率が同じく0.5wt%であるにも係わらず、実施例9よりも実施例10の耐腐食性が高いことが示された。このため、Agの含有率は、5.0wt%以下に設定することがより好ましいことが示された。また、Agの含有率が5.0wt%以下である実施例11〜13をそれぞれ比較すると、3つの実施例の全てで耐塩水時間が50min以上であることから、Tiの含有率は、2.0wt%以下に設定することがより好ましいと考えられる。
【0043】
一方、実施例10及び実施例13を比較すると、両実施例ともにTiの含有率が0.5wt%であるにも係わらず、実施例10よりも実施例13の耐腐食性が非常に高いことが示された。実施例10ではAgの含有率がTiの含有率と比較して10倍、実施例13では2倍に設定されている。このため、Agの含有率をTiの含有率と比較して2倍前後となるように設定することがより好ましいことが示された。
【0044】
Agの含有率がTiの含有率の2倍前後が好ましいという結果より、実施例11〜13を比較すると、各実施例でそれぞれAgの含有率がTiの含有率と比較して2倍であるにも係わらず、実施例12及び実施例13は耐塩水時間が100minを越えている。これより、Tiの含有率は、1.0wt%以下に設定することがさらに好ましいと考えられる。この考察を基にTiの含有率が1.0wt%以下である実施例14〜16を検討すると、実施例14〜16の全てが耐塩水時間が100minを越え、良好な耐腐食性を示すことから、Tiの含有率は、1.0wt%以下に設定することがさらに好ましいことが示された。
【0045】
加えて、実施例17において、Agの含有率がTiの含有率と比較して2倍であるにも係わらず、耐塩水時間が90minであるという結果が得られ、実施例12〜16と比較して耐腐食性が低くなることが示された。この結果と、実施例13、実施例14及び実施例16の結果とを併せると、主成分であるCuの含有率を97〜99.5wt%に設定するとともに、Agの含有率がTiの含有率と比較して1.5〜4.5倍の範囲内となるようにそれぞれの含有率を設定することでさらに良好な耐食性を付与することができることが示された。
【0046】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 上記実施形態の光ディスク20は、基板21、反射膜22及び保護層23をそれぞれ1層ずつ有するものであったが、これに限定されず、例えば基板21、反射膜22及び保護層23をそれぞれ2層ずつ有する光ディスク20としてもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態又は実施例より把握できる技術的思想について記載する
(1) 5.0重量パーセント以下の銀(Ag)元素と、2.0重量パーセント以下のチタン(Ti)元素とを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスタンパ形成用電極材料。このように構成した場合、スタンパを形成するスタンパ形成用薄膜により一層良好な耐腐食性を付与することができる。
【0048】
(2) 前記チタン(Ti)元素を1.0重量パーセント以下含有することを特徴とする前記(1)に記載のスタンパ形成用電極材料。このように構成した場合、スタンパを形成するスタンパ形成用薄膜にさらに良好な耐腐食性を付与することができる。
【0049】
(3) 97〜99.5重量パーセントの銅(Cu)元素と、重量基準での含有率の比がチタン(Ti)元素1に対して銀(Ag)元素1.5〜4.5となるように設定したことを特徴とする前記(1)又は前記(2)に記載のスタンパ形成用電極材料。このように構成した場合、スタンパを形成するスタンパ形成用薄膜にさらに良好な耐腐食性を付与することができる。
【0050】
(4) 前記(1)から前記(3)のいずれかに記載のスタンパ形成用電極材料からなることを特徴とするスタンパ形成用薄膜。このように構成した場合、スタンパを形成するスタンパ形成用薄膜により一層良好な耐腐食性を付与することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明のスタンパ形成用電極材料によれば、耐腐食性を向上させることにより、スタンパ形成用薄膜の損傷を抑制し、形成されるスタンパを高品質なものとすることができる。
【0052】
請求項2に記載の発明のスタンパ形成用電極材料によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、スタンパ形成用薄膜に良好な耐腐食性を付与することができる。
【0053】
請求項3に記載の発明のスタンパ形成用電極材料によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、スタンパ形成用薄膜により一層良好な耐腐食性を付与することができる。
【0054】
請求項4に記載の発明のスタンパ形成用電極材料によれば、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、スタンパ形成用薄膜にさらに良好な耐腐食性を付与することができる。
【0055】
請求項5に記載の発明のスタンパ形成用薄膜によれば、耐腐食性を向上させることにより、スタンパ形成用薄膜の損傷を抑制し、形成されるスタンパを高品質なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(f)はいずれも、実施形態のスタンパの製造工程を模式的に示す部分拡大端面図。
【図2】 (a)は実施形態のスタンパを用いた基板形成工程を模式的に示す部分拡大端面図、(b)は光ディスクを模式的に示す部分拡大端面図。
【図3】 (a)〜(f)はいずれも、従来のスタンパの製造工程を模式的に示す部分拡大端面図。
【符号の説明】
11…原板、12…レジスト膜、13…スタンパ形成用薄膜としての電極膜、14…金属層、15…スタンパ。
Claims (5)
- 原板上のパターニング処理されたレジスト膜の表面に被覆されるスタンパ形成用薄膜を構成し、
前記スタンパ形成用薄膜を電極として使用する電鋳法により、その薄膜の表面に金属層を積層させ、その金属層をスタンパ形成用薄膜とともにレジスト膜から剥離させてスタンパを形成するためのスタンパ形成用電極材料であって、
銅(Cu)元素を主成分として含有するとともに、少なくとも1種の他の元素を含有することを特徴とするスタンパ形成用電極材料。 - 前記他の元素は、銀(Ag)及びチタン(Ti)の少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のスタンパ形成用電極材料。
- 10.0重量パーセント以下の銀(Ag)元素を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスタンパ形成用電極材料。
- 5.0重量パーセント以下のチタン(Ti)元素を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のスタンパ形成用電極材料。
- 請求項1から請求項4のいずれかに記載のスタンパ形成用電極材料からなることを特徴とするスタンパ形成用薄膜。
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