JP4349068B2 - マトリクスコンバータシステム - Google Patents

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本発明は、一定周波数の交流電源から任意の周波数の交流出力を直接生成するマトリクスコンバータシステムに関する。
マトリクスコンバータの制御方法の第1の従来技術として、IEEE Transaction on
Power Electronics Vol.4 No1 1989 の「Analysis and Design of Optimum-Amplitude
Nine Switch Direct AC-AC Converters 」に記載された、電源電圧の値から算術的に演算し制御する方式がある。また、第2の従来技術として、特開平11−341807号公報に記載された電源電圧の瞬時値から演算し制御する方式がある。
特開平11−341807号公報 IEEE Transaction on Power Electronics Vol.4 No1 1989 の 「Analysis and Design of Optimum-Amplitude Nine Switch Direct AC-AC Converters」
上記第1の従来技術では、電源電圧が理想的な正弦波状態であれば正常に駆動できる。しかし、周辺機器の負荷変動などにより電源電圧に歪が生じた場合には、歪成分がマトリクスコンバータの出力電圧に反映されるため、モータ等の負荷の駆動が不安定になる恐れがある。
上記第2の従来技術では、瞬時値制御を行っているため電源電圧に歪が生じても安定に駆動できる。しかし、制御方式として電源電圧の最大値と最小値の差分及び電源電圧の中間値と最小値の差分を利用した方式であるため、電源電圧の最大値と中間値が近づくポイントにおいては、出力指令値の幅が極めて狭くなる狭幅パルスが発生する。狭幅パルスが発生するとスイッチ素子のON/OFFが正確に行われない上、素子に過度なストレスがかかるため素子を破損ずる恐れがある。上記第1の従来技術の場合も狭幅パルスが発生する可能性はあるが、発生時は最大負荷時のみに限られるため、電源周期毎に発生する上記第2の従来技術に対して発生頻度は極めて少ない。
本発明の目的は、電源電圧の値から算術的に演算し制御する方式を採用し、かつ、電源電圧に歪が生じた場合においても負荷を安定に駆動できるマトリクスコンバータシステムを提供することである。
上記の課題を解決する手段として、制御回路内に電源電圧の推定値を演算する機能に加えて電源電圧値を検出する機能を設け、検出値と推定値の比較する。検出値と推定値の間で差分がある場合には、その差分量に基づいて出力電圧の補正量を演算し、推定値のみから演算される出力電圧指令値に加算する。
本発明によると、マトリクスコンバータにおいて電源電圧に歪が生じた場合においても負荷を安定に駆動できる効果がある。
本発明によると、マトリクスコンバータにおいて電源電圧に歪が生じた場合においても負荷を安定に駆動できる効果がある。
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第一実施例のマトリクスコンバータシステムであり、商用電源1,マトリクスコンバータ主回路部2,制御回路部3,モータ等の負荷4,電源電圧検出器5より構成している。従来のコンバータシステムでは、整流器により商用電力を一度直流電力に変換し、インバータで任意の交流電力に再度変換する。このとき、直流部分の安定化を図るために、整流器とインバータの間に平滑コンデンサを接続する必要があった。これに対して、図1のマトリクスコンバータは、商用電源1から得られる一定周波数の交流電力を、直接、任意の周波数の交流電力に変換する。このマトリクスコンバータでは、直流電力に変換する動作が不要であるため、従来のコンバータで必須であった平滑コンデンサを削除できる。このため、装置の小型化が可能になる上、コンデンサの定期交換が不要になるため保守から見た効果は大きい。しかも、電力回生も可能であり、電源高調波も低減できる効果がある。
図5はマトリクスコンバータ主回路部2を構成する双方向スイッチ部21を示す図である。マトリクスコンバータは9個の双方向スイッチ部21により構成されており、これらをON・OFFさせることによって、任意の周波数の交流電力を出力する。図5(a)は一般的なIGBT211とダイオード212を組み合わせて双方向スイッチを構成している例である。図5(b)はデバイスに逆耐圧特性を持たせた逆阻止デバイス213により構成した例である。図示していない制御回路で演算した結果を基に図5(a),図5(b)の双方向スイッチをON/OFFさせることにより、商用電源から得られる一定周波数の交流電力を、直接、任意の周波数の交流電力に変換することができる。また、図1では、マトリクスコンバータ部分の9個の双方向スイッチを独立に記載しているが、9個の双方向スイッチが1個のモジュールの中に全て含まれた形のオールインワンデバイスを使用しても良い。
電源電圧検出器5は、電源電圧を検出し制御回路部3に伝達する装置である。この電源電圧検出器5は抵抗等を分圧したり、或いは、トランス等の電圧検出手段を用いることによって実現できる。また、図1では各相の電圧を検出しているが、線間電圧を検出する方式であっても良いことは言うまでもない。
制御回路部3は、双方向スイッチ部21をON/OFFさせるための指令値を演算する回路であり、ゼロクロス点検出部31,電源電圧推定値演算部32,出力電圧演算部33,電源電圧差分演算部34,出力電圧補正量演算部35,スイッチ指令演算部36から構成している。第一実施例では、電源電圧差分演算部34,出力電圧補正量演算部35を加え出力電圧の指令値を補正していることが特徴である。制御演算処理の流れについて図2を用いて詳しく説明する。
図2は第一実施例の制御の流れ図である。まず、電源電圧検出器5で検出した電圧情報を基に電源電圧ゼロクロス点検出(6)を図1のゼロクロス点検出部31で行う。これは、電源の各相の電圧が正から負、或いは、負から正になる点を検出するものである。ゼロクロス点はオペアンプ等を用いたコンパレータを使用して検出する。次に、電源電圧推定値の演算(7)を図1の電源電圧推定値演算部32で行う。これは、マイコン38等を用いており、電源電圧ゼロクロス点検出(6)において検出したゼロクロス点を起点として、タイマ等を用いで電源電圧の電圧値や位相を演算する。次に、双方向スイッチ部21の指令値生成等の割込み等に応じて電源電圧の取込み(8)を行う。電圧検出は電源電圧検出器5で行い、A/D変換等を施してマイコン38に取込む。マイコン38内にA/D変換機能を備えている場合には、検出値そのものをマイコンに入力しても良い。
次に、条件分岐9によって、取込んだ電圧値とゼロクロス点から演算した電圧の推定値を比較する。これは、図1の電源電圧差分演算部34で行い、取込んだ電圧値と推定値の差分を取る。ここで、差分がない場合は電源電圧は正常であることを意味しているため、電圧補正は行わない。つまり、出力電圧演算部33で電源電圧推定値演算部32及び出力電流値及びモータ等の負荷の位置信号を基に演算した出力電圧指令値を、そのままスイッチ指令演算部36に入力する。
条件分岐9で、取込んだ電圧値と推定値を比較して差分が生じている場合には、出力電圧補正量の演算(10)を図1の出力電圧補正量演算部35で演算する。補正方法の例については後に詳しく説明する。次に出力電圧演算部33で推定電圧値を基に演算した出力電圧指令値に出力電圧補正量演算部35で演算した補正量を加算する処理(11)を行う。補正後の出力電圧指令値をスイッチ指令演算部36に入力する。
図1のスイッチ指令演算部36では、三角波比較等の処理を行うことによって、各スイッチも出力指令値37を生成する。この演算によって、例えば周辺機器の負荷変動によって電源電圧に歪が生じた場合においても、出力電圧値にその影響を及ぼすことなく、安定な駆動が可能になる。
次に、出力電圧補正量演算部35の補正方法について図3,図4を用いて説明する。図3は電源電圧検出値が推定値よりも大きい場合の出力指令値の模式図であり、図3(a)の点線部分で示されるR相の電圧が他の相の電圧よりも大きくなる部分を例にとった図である。この場合は、電圧推定値よりも検出値の方が大きいため、推定値のみで演算した場合には想定よりも大きい電圧が出力されることになる。それに対して、電圧補正を加えることにより図3(b)のように、出力指令値37のパルス幅を狭めることにより、出力値を下げ、適正な電圧を出力できる。
図4は電源電圧検出値が推定値よりも小さい場合の出力指令値の模式図であり、図4
(a)の点線部分で示されるR相の電圧が他の相の電圧よりも大きくなる部分を例にとった図である。この場合は、電圧推定値よりも検出値の方が小さいため、推定値のみで演算した場合には想定よりも小さい電圧が出力されることになる。それに対して、電圧補正を加えることにより図3(b)のように、出力指令値37のパルス幅を広げることにより、出力値を上げ、適正な電圧を出力できる。
出力電圧補正量演算部35では、電源電圧差分演算部34で計算した差分量に応じで演算処理の内容を変化させても良い。例えば、差分量が負荷の駆動に影響を与える大きさよりも十分に小さい場合には、演算処理をする必要はない。つまり、差分量が予め定めた規定値を超えた場合のみ演算処理を行うことにより、マイコンのタスク量を軽減できる効果がある。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で様々変形して実施できることは言うまでもない。
本発明の第一の実施例を示す構成図である。 第一実施例の制御の流れ図である。 電源電圧検出値が推定値よりも大きい場合の出力指令値の模式図である。 電源電圧検出値が推定値よりも小さい場合の出力指令値の模式図である。 双方向スイッチを示す図である。
符号の説明
1…商用電源、2…マトリクスコンバータ主回路部、3…制御回路部、4…負荷、5…電源電圧検出器、21…双方向スイッチ部、31…ゼロクロス点検出部、32…電源電圧推定値演算部、33…出力電圧演算部、34…電源電圧差分演算部、35…出力電圧補正量演算部、36…スイッチ指令演算部。

Claims (4)

  1. 少なくとも、複数の双方向スイッチ或いは前記双方向スイッチより構成される双方向スイッチモジュールを備えた主回路部と、前記主回路部によって駆動される負荷と、入力電源の電圧値を検出する手段と、前記検出した電圧値が制御信号のうちの一つであり前記双方向スイッチの駆動信号を演算する制御回路によって構成され、前記主回路部では、電源から得られる一定周波数の電力を可変周波数の電力に変換する機能を有したマトリクスコンバータシステムにおいて、
    前記制御回路は、マイコンを有し、
    前記マイコンは、前記入力電源の電圧値を検出する手段の出力に基づいて電源電圧値を推定、前記検出した電圧値と前記推定した電圧値との差分を演算し、前記電圧値の差分量が予め定めた規定値を超えた場合のみこの演算された差分量に応じて出力電圧の指令値の補正量を演算して出力電圧の指令値を補正することを特徴とするマトリクスコンバータシステム。
  2. 少なくとも、複数の双方向スイッチ或いは前記双方向スイッチより構成される双方向スイッチモジュールを備えた主回路部と、前記主回路部によって駆動される負荷と、入力電源の電圧値を検出する手段と、前記検出した電圧値が制御信号のうちの一つであり前記双方向スイッチの駆動信号を演算する制御回路によって構成され、前記主回路部では、電源から得られる一定周波数の電力を可変周波数の電力に変換する機能を有したマトリクスコンバータシステムにおいて、
    前記制御回路は、マイコンを有し、
    前記マイコンは、前記入力電源の電圧値を検出する手段の出力に基づいて電源電圧値を推定、前記検出した電圧値と前記推定した電圧値との差分を演算し、前記電圧値の差分量が予め定めた規定値を超えた場合のみこの差分量に応じて双方向スイッチに与えるパルスの幅を補正するための演算をし、前記パルス幅を補正することを特徴とするマトリクスコンバータシステム。
  3. 請求項1又は2において、
    前記入力電源の電圧値を検出する手段の出力に基づいて前記電圧値が零となる点を検出する検出手段を有し、
    前記マイコンは、前記検出手段で検出された情報に基づいて電源電圧値を推定することを特徴とするマトリクスコンバータシステム。
  4. 請求項1から3の何れかにおいて、
    前記予め定めた規定値とは前記差分量が前記負荷の駆動に影響を与える大きさよりも小さい値であることを特徴とするマトリクスコンバータシステム。
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