JP4348491B2 - エレベーター装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は昇降路を高速でかご室が昇降する場合の空力騒音を低減・防止するエレベーター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8〜図10は例えば特開平4−28689号公報に示された従来のエレベーターかごの整風装置を示す図である。
【0003】
図中、1はエレベーター昇降路、2は主索3で吊持され昇降路1を昇降する高速エレベーターのかご室、4はかご室2の上端部及び下端部にそれぞれ設けられた整流カバーで、基部がかご室2の上端部及び下端部の外縁に取り付けられ、先端がかご室の中心線寄りに配置された傾斜面からなる先細状の立面4aが形成されている。
【0004】
従来のエレベーターかごの整風装置は上記のように構成され、整流カバー4はかご室2の昇降時の空気流を整流し、立面4aによって空気の渦流の発生を抑制し、かご内の騒音を低減するようになっている。また場合によっては、かご室2周りで発生する空気流の乱れによる外壁加振力を低減するため、かご室2の外壁面全体に渡って、吸音材等の緩衝材(図示しない)を貼着することもある。
【0005】
図9に示すように、空気の主層流Aは整流カバー4により整流できるが、かご室2が高速で昇降(例えば上昇)すると、整流カバー4の変曲点Bから空気流が剥離を起こし、この剥離を起こした空気流が点Cに再付着し、この再付着による衝突エネルギーが整流カバー4またはかご室2の外壁を打撃して騒音を発生させるという問題点があった。
【0006】
この問題点を解決するため、例えば図10に示すように、整流カバー4またはかご室側壁2aの外壁面に多数の半球面状凹部7を形成することにより、空気流8の再付着を抑制するという提案がなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10に示す従来のエレベーターかごの整風装置では、整流カバー4またはかご室側壁2aの外壁面に多数の半球面状凹部7を形成する必要があり、この加工に多くの時間と費用を要するという問題点があった。
【0008】
また、上記問題点を解決するために、整流カバー4の流線形状を高める方法が一般的に考えられるが、この方法は結果的に整流カバー4を長くすることになるため、必要な昇降路のピット深さやオーバーヘッド寸法も大きくなるという別の問題点があった。
【0009】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、安価な構成で、また必要以上のかご室重量の増加を回避しながら、空気流の乱れに伴うかご室内騒音を低減できるようにしたエレベーター装置を提供することを目的とする。
【0010】
また整流カバー付のエレベーター装置において、エレベーター速度が更に速くなり、整流カバーの効果が十分得られなくなった場合でも、必要以上に昇降路のピット深さやオーバーヘッド寸法を大きくすることなく、空気流の乱れに伴うかご室内騒音を低減できるようにしたエレベーター装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るエレベーター装置は、昇降路を昇降するエレベーターかご室、あるいはそのエレベーターかご室の上下部の少なくとも一方に整流カバーを有するエレベーターかご室において、かご室外壁面の上層部及び下層部の範囲内の少なくとも一方、あるいは整流カバー外壁面の傾斜部からかご室外壁面の上層部及び下層部までの範囲内の少なくとも一方であって、エレベーターかご室の高速昇降時に発生する空気流の再付着点及びその近傍に限り、該空気流の再付着による騒音を緩和する緩衝材を設けたものである。
【0012】
また、昇降路を昇降するエレベーターかご室の上下部の少なくとも一方に整流カバーを有するエレベーターかご室において、整流カバー外壁面の傾斜部からかご室外壁面の上層部及び下層部までの範囲内の少なくとも一方であって、エレベーターかご室の高速昇降時に発生する空気流の再付着点及びその近傍に限り、該空気流の再付着による騒音を緩和する緩衝材を設けたものである。
【0013】
また、かご室と整流カバーが一体構造となった一体カプセル型かご室を用いたものである。
【0014】
また、緩衝材は、高さ寸法hが300〜500mmの範囲となるように設けたものである。
【0015】
また、緩衝材が設けられるかご室外壁面あるいは整流カバー外壁面に緩衝材受け部を形成し、この緩衝材受け部に緩衝材を収容したものである。
【0016】
また、緩衝材外表面と、この緩衝材の周囲のかご室外壁面あるいは整流カバー外壁面とを面一にしたものである。
【0017】
また、昇降路を昇降するエレベーターかご室外壁面の上層部及び下層部の範囲内の少なくとも一方であって、エレベーターかご室の高速昇降時に発生する空気流の再付着点及びその近傍に限り、該空気流の再付着による騒音を緩和する緩衝材を設けたものである。
【0018】
緩衝材は、かご室の高さをHとすると、天井面から0.2Hの範囲及び床面から0.2Hの範囲の少なくとも一方に設けたものである。
【0019】
また、緩衝材が設けられるかご室外壁面に緩衝材受け部を形成し、この緩衝材受け部に緩衝材を収容したものである。
【0020】
また、緩衝材外表面と、この緩衝材の周囲のかご室外壁面とを面一にしたものである。
【0021】
さらにまた、緩衝材として、グラスウールを用いたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1であるエレベーター装置の風洞実験の概略構成図とその実験結果をグラフで示したものであり、エレベーターかごの縮小モデルを作成し、そのモデルを昇降路に見立てた風洞に設置し、モデル側面の圧力変動を測定したものである。
図において、1はエレベーター昇降路を模擬した風洞、2はこの風洞1内に設けた模擬のエレベーターかご室、4はこのかご室2の上端部及び下端部(図では左右端部)にそれぞれ設けられた模擬の整流カバーで、基部がかご室2の上端部及び下端部の外縁に取り付けられ、先端がかご室2の中心寄りに配置された傾斜面からなる先細状の立面4aが形成されている。
【0023】
上記風洞実験により、風洞1内の空気流の速度を300〜500m/毎分と変化させて測定した結果、次の特徴が判明した。
図1のグラフに示すとおり、縦軸の圧力変動Pa(Kg/m2 )が大きくなる個所K点がある。なお、横軸はかご室2及び整流カバー4の位置を示す。このK点は、整流カバー4のかご室2寄りの限られた個所であって、この個所では、圧力変動Paが他の個所よりも約2倍に大きくなる。
なお、ここに示した圧力変動Paとは、極めて短い時間(単位時間)あたりの圧力の変動値であって、かごの表面部に設けた多数の圧力センサー(図示せず)により測定したものである。
同じ形状の整流カバーにおいては、空気流の速度を300〜500m/毎分の範囲で変化させてもK点は、ほとんど移動しなかった。
【0024】
次に、圧力変動Paが大きいK点及びその近傍において、どのような現象が起きているかを解析した。その結果を図2に示す。なお、図中、1は昇降路、2はかご室、3は主索、4は整流カバー、4aは整流カバーの立面である。
かごを高速で昇降(上昇)させると、図2に示すように異なる空気流イ、ロ、ハのほとんどがK点付近に集まって再付着すること、また、この空気流の再付着による衝突エネルギーが、集中的に整流カバー4の表面を打撃し、騒音を発生させていることが判明した。
このK点付近の位置を図2に示す。
すなわち、整流カバー4の立面4aの形状により多少は異なるものの、概ね傾斜湾曲部Rの下端から下方のフラット部の範囲に位置しその高さ寸法hが300〜500mmの範囲である。
【0025】
図3はこの発明の実施の形態1であるエレベーター装置の構成図である。図中、5は空気流の再付着するK点及びその近傍に着目し、整流カバー4の側壁部分に限定して貼着した帯状の緩衝材(または制振材)である。この緩衝材5としては吸音特性が良く、更にダンピング効果(制振効果)が大きいグラスウール等が好ましい。また、緩衝材5として合成ゴムを用いてもよい。
なお、かご室2の下部の整流カバー4の側壁部分には、かご下降時に対応した同様の帯状緩衝材5が設けてある。
【0026】
また、図4は図3のIV−IV断面図を示すものである。整流カバー4側壁の緩衝材5を設ける部分を水平方向に帯状に切り欠き、この切り欠き部分に背面側より断面皿状の緩衝材受け部材4bを取り付け、この緩衝材受け部材4bの外側面に帯状の緩衝材5を収容したものである。この緩衝材5の外表面と緩衝材周囲の整流カバー4側壁の外表面は面一となるように構成されている。
【0027】
このように構成されたエレベーター装置においては、帯状の緩衝材を空気流の再付着点及びその近傍に限り設けたので簡単な構成で騒音効果を得られる。例えば、かごの昇降速度が350m/毎分以上、緩衝材の厚みtが25mmのものにおいて、3db程度の騒音を低減することができる。この3dbの騒音低減は高速エレベーターの静粛性を高めるにあたり十分効果がある数値である。すなわち騒音を乗客にとって気にならない程度にまで低下させることができる。
【0028】
なお、この実施の形態1に示すエレベーターかご室は、かご室2に整流カバーを組み付けた構成のものであるが、これに限られるものではなく、例えば、かご室2と整流カバー4が一体構造となった一体カプセル型かご室であっても良い。また、かご室2の上下端部に設けられる整流カバー4は同じ形状でないものもある。また、ダブルデッキエレベーターにおいては、かご室2の上下端部の一方のみに整流カバーが設けられるものもある。
【0029】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2であるエレベーター装置を示すものであり、図1に相当する図である。
図において、1はエレベーター昇降路を模擬した風洞、2は模擬のエレベーターかご室である。
【0030】
この実施の形態は、整風カバーのないかご、すなわち箱型の標準形状のかごにおいて実施の形態1と同様の風洞実験を行った結果を示すものであり、図5のグラフに示すとおり、縦軸の圧力変動Pa(Kg/m2 )が大きくなる個所K点がある。なお、横軸はかご室2の位置(高さ)を示す。このK点は、かご室2の限られた個所であって、この個所では、圧力変動Paが他の個所よりも約2倍に大きくなる。
【0031】
次に、圧力変動Paが大きいK点及びその近傍において、どのような現象が起きているかを解析した結果が図6である。図6に示すように異なる空気流A、B、CのほとんどがK点付近に集まって再付着すること、またこの空気流の再付着による衝突エネルギーが、集中的にかご室側壁2aの表面を打撃し、騒音を発生させていることが実施の形態1と同様に判明した。このK点付近の位置を図5に示す。
すなわち、かご室2の底面から天井面までの高さをHとすると、概ねK点付近の位置は、天井面から0.2Hの範囲である。
【0032】
図7はこの発明の実施の形態2であるエレベーター装置の構成図である。図中、5は空気流の再付着するK点及びその近傍に着目し、かご室側壁2aの上下部分の上から0.2Hの範囲と、下から0.2Hの範囲に限定して貼着した帯状の緩衝材(または制振材)である。この緩衝材5としては吸音特性が良く、更にダンピング効果(制振効果)が大きいグラスウール等が好ましい。また、緩衝材5として合成ゴムを用いても良い。
また、図4は図7のIV−IV断面図を示すものである。かご室側壁2aの緩衝材5を設ける部分を水平方向に帯状に切り欠き、この切り欠き部分に背面側より断面皿状の緩衝材受け部材2bを取り付け、この緩衝材受け部材2bの外側面に帯状の緩衝材5を収容したものである。この緩衝材5の外表面と緩衝材周囲のかご室側壁2aの外表面は面一となるように構成されている。
【0033】
なお、かご室2の強度上の問題を考慮して、かご室側壁2aの上下部分を内側に凹ませて緩衝材受け部2bを形成し、この緩衝材受け部2bに緩衝材5を収容しても同等の効果を奏することはもちろんである。
【0034】
なお、この実施の形態2に示すエレベーターかご室は、箱型(いわゆる直方体)であるが、かご室2の上部または下部の一方が方形でないものもある。例えば、かご室2の上端部に空調機及びそのカバー(図示せず)が設けられるものがあり、この場合には再付着点が図7に示す位置から変化することもある。
【0035】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0036】
緩衝材を空気流の再付着点及びその近傍に限定して設けたので、簡単な構成で騒音を低減できる効果がある。
【0037】
また、空気流に伴うかご室内騒音を必要以上の重量増加を招くことなく実現できる。
【0038】
また、エレベーター速度が更に速くなり、整流カバーの効果が十分得られなくなった場合でも、必要以上に昇降路のピット深さやオーバーヘッド寸法も大きくすることなく、上下整流カバー及びかご室の外壁を加振しているエネルギーを緩和させ、エレベーターかご内の騒音を低減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示すエレベーター装置の風洞実験の概略構成図とその実験結果を示すグラフである。
【図2】 エレベーターかご室が昇降路を高速で昇降した時の空気流の説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態1であるエレベーター装置の構成図である。
【図4】 図3及び図7のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態2を示すエレベーター装置の風洞実験の概略構成図とその実験結果を示すグラフである。
【図6】 実施の形態2における、エレベーターかご室が昇降路を高速で昇降した時の空気流の説明図である。
【図7】 この発明の実施の形態2であるエレベーター装置の構成図である。
【図8】 従来のエレベーターかごの整風装置を示す図である。
【図9】 従来のエレベーター装置の空気流の説明図である。
【図10】 従来のエレベーターかごの整風装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 エレベーター昇降路(風洞)、2 エレベーターかご室、2a エレベーターかご室側壁、2b 緩衝材受け部材、3 主索、4 整流カバー、4a 立面、4b 緩衝材受け部材、5 緩衝材(制振材)、7 半球面状凹部、8 空気流。

Claims (8)

  1. 昇降路を300〜500m/毎分の範囲の速度に昇降するエレベーターかご室の上下部に整流カバーを有するエレベーターかご室において、前記整流カバー外壁面の傾斜部からかご室外壁面の上層部及び下層部までの範囲内であって、エレベーターかご室の高速昇降時に発生する空気流の再付着点及びその近傍に限り、高さ寸法hが300〜500mmの範囲となるように設けられて該空気流の再付着による騒音を緩和する緩衝材を備えることを特徴とするエレベーター装置。
  2. かご室と整流カバーが一体構造となった一体カプセル型かご室であることを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
  3. 緩衝材が設けられるかご室外壁面あるいは整流カバー外壁面に緩衝材受け部を形成し、この緩衝材受け部に緩衝材を収容したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のエレベーター装置。
  4. 緩衝材外表面と、この緩衝材の周囲のかご室外壁面あるいは整流カバー外壁面とを面一にしたことを特徴とする請求項3記載のエレベーター装置。
  5. 昇降路を300〜500m/毎分の範囲の速度に昇降するエレベーターかご室外壁面の上層部及び下層部の範囲内であって、エレベーターかご室の高速昇降時に発生する空気流の再付着点及びその近傍に限り、該空気流の再付着による騒音を緩和する緩衝材を設け、
    前記緩衝材は、かご室の高さをHとすると、天井面から0.2Hの範囲及び床面から0.2Hの範囲に設けたことを特徴とするエレベーター装置。
  6. 緩衝材が設けられるかご室外壁面に緩衝材受け部を形成し、この緩衝材受け部に緩衝材を収容したことを特徴とする請求項5記載のエレベーター装置。
  7. 緩衝材外表面と、この緩衝材の周囲のかご室外壁面とを面一にしたことを特徴とする請求項6記載のエレベーター装置。
  8. 緩衝材として、グラスウールを用いた請求項1〜請求項7のいずれかに記載のエレベーター装置。
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