光学式入力装置は、発光素子が発光する光検出信号を、対となる受光素子が受光するように、入力操作領域を隔てて対となる発光素子と受光素子とが配置され、発光素子から所定の発光期間に光検出信号を発光させている。入力操作により、指などの操作体が入力操作領域を通過する光検出信号を遮断すると、発光期間に対となる受光素子が光検出信号を受光せず、受光素子の受光量が低下するので、この受光量の減少から入力操作を検出している。従って、光学式入力装置は、可動部品を用いないので耐久性に優れ、操作パネルに触れることなく所定の入力操作が実行できるので、種々の機器に対して所定のデータを入力する入力装置として広く用いられている。
このように光学式入力装置は、受光素子の受光量の変化から入力操作を検出するが、入力操作領域に受光素子の受光面を臨ませていることから、光検出信号以外の外乱光をも受光し、入力操作の検出には、外乱光による影響を除く必要があった。そこで、従来は、発光素子が光検出信号を発光させない消灯期間に受光素子の受光量を消灯時受光量として検出しておき、これを外乱光による受光量と推定し、発光期間中に受光した発光時受光量から消灯時受光量の差分が光検出信号による受光量を表すものとして、差分のレベルから入力操作の有無を検出していた。
しかしながら、光学式入力装置の設置場所での照度は、暗い部屋での100lux程度から直射日光を受ける野外の10万lux程度まで変化する場合があり、光学式入力装置の設置環境によって受光量が大きく異なり、外乱光の受光量が多い場合には、受光出力信号が飽和し、光検出信号による受光を検出できず入力操作の検出ができないものとなった。一方、外乱光の受光量が多い場合に合わせて、受光感度を落とすと、外乱光の受光量が少ない場合に、同様に光検出信号に対する受光感度も落ち、光検出信号の遮断による入力操作を正確に検出できない場合があった。そこで、発光時受光量と消灯時受光量の差分のレベルが、外乱光の受光量が多い場合でも所定値となるように、受光素子の負荷抵抗を減じ、受光素子の受光感度を下げる方法が知られている(特許文献1参照)。
以下、この第1の従来の光学式入力装置100を図7で説明すると、一対の発光素子101と受光素子102が入力操作領域を隔てて対向配置されている。発光素子101は、CPU103により開閉制御されるアナログスイッチ101a、101bを介して定電圧電源Vccと接地間に接続され、所定の発光期間に受光素子102に向けて光検出信号を発光するようになっている。
また、受光素子102は、定電圧電源Vccとの間にアナログスイッチ105が接続され、他側に、アナログスイッチブロック106と抵抗ブロック107が直列に接続されている。アナログスイッチブロック106の各切換端子a、b、cは、抵抗ブロック107の異なる抵抗値からなる各負荷抵抗107a、107b、107cに接続し、各負荷抵抗107a、107b、107cの他端は接地されている。アナログスイッチ105の開閉と、アナログスイッチ106の各切換端子間の切り換えは、CPU103により制御され、発光素子101が消灯している消灯期間と発光している発光期間のそれぞれで受光素子102を受光動作させ、受光量を表す光電変換電流を切り換えられた負荷抵抗107a、107b、107cのいずれかに流す。
受光素子102とアナログスイッチブロック106との接続点は、増幅器108の入力に接続し、増幅器108の出力は、A/D変換器109を介してCPU103に接続する記憶装置110に接続している。
この光学式入力装置100では、入力操作を検出する前の初期設定で、受光素子102が抵抗ブロック107のいずれかの負荷抵抗107a、107b、107c(例えば負荷抵抗107b)に接続するように、アナログスイッチブロック106を切り換えておき、発光素子101の消灯期間に受光する消灯時受光量と、発光期間に受光する発光時受光量を受光素子102で検出する。消灯時受光量と発光時受光量に応じて、負荷抵抗107bに光電変換電流が流れ、増幅器108の入力電位は、飽和電圧に達しない限り、消灯時受光量と発光時受光量のそれぞれの受光量と、負荷抵抗107bの抵抗値にほぼ比例するものとなる。
この入力電圧は、増幅器108によって増幅され、その増幅した電圧がA/D変換器109でA/D変換され、デジタル値として記憶装置110に記憶されるので、CPU103は、発光期間に記憶装置110に記憶される発光時受光レベルと消灯期間に記憶装置110に記憶される消灯時受光レベルとのレベル差を光検出信号による受光レベルとして、このレベル差から入力操作の判定しきい値を設定し、発光時受光レベルが判定しきい値以上減少した際に、入力操作と判定する。
一方、発光素子101や受光素子102が経年変化によって性能が低下したり、受光素子102の受光面を覆うフィルターに埃などが付着し透過率が低下すると、上記初期設定において、記憶装置110に記憶される発光時受光レベルと消灯時受光レベルがともに低下すると両者のレベル差も減少し、CPU103で入力操作を判定可能な判定しきい値が得られないものとなる。このような場合には、アナログスイッチブロック106を切り換え制御し、より抵抗値の高い負荷抵抗(例えば負荷抵抗107c)を受光素子102に接続する。光電変換信号による増幅器108の入力電位は、負荷抵抗107cの抵抗値に比例するので、受光素子102による受光感度が上がり、記憶装置110に記憶される発光時受光レベルと消灯時受光レベルとのレベル差は拡大し、CPU103で判定可能な判定しきい値を設定できる。
また、外乱光による受光量が過大となると、上記初期設定において、光電変換信号による増幅器108の入力電位が電源Vccに接近して飽和し、記憶装置110に記憶される発光時受光レベルと消灯時受光レベルがともに飽和したレベルを示すこととなるので、両者のレベル差がなくなり、同様に、CPU103で入力操作を判定可能な判定しきい値が得られないものとなる。このように外乱光が増大した場合には、アナログスイッチブロック106を切り換え制御し、より抵抗値の低い負荷抵抗(例えば負荷抵抗107a)を受光素子102に接続して、光電変換信号による増幅器108の入力電位を、負荷抵抗107aの抵抗値に比例させて飽和電圧以下とする。すなわち、受光素子102による受光感度を下げ、記憶装置110に記憶される発光時受光レベルと消灯時受光レベルとのレベル差を発生させて、CPU103で判定可能な判定しきい値を得る。
従って、この光学式入力装置100によれば、外乱光が過大に増加しても、受光素子102の受光感度を下げて、入力操作を検出できる。
また、第2の従来例として、入力操作により光検出信号が遮断された際の発光時受光量と、遮断されない際の発光時受光量とが、ともに受光素子の受光量−光電流特性の線形領域に含まれるように、光電変換信号の増幅率を調整する光学式入力装置も知られている(特許文献2参照)。
この従来の光学式入力装置によれば、発光素子や受光素子の特性にばらつきがあっても、光電変換信号の増幅率を調整することにより、発光時受光量が受光素子の飽和受光量を超えることがなく、線形領域で変化するレベル差から入力操作を誤りなく検出できる。
特公平6−12512号(第3頁第5行乃至第24行、第1図)
特開平6−186350号(第3頁第3欄第42行乃至第4欄9行、第4頁第6欄第31行乃至第46行、図10)
以下、本発明の一実施の形態に係る光学式入力装置1の基本構成と動作を、光学式入力装置1の概略を示す図1を用いて説明する。同図に示すように、光学式入力装置1は、指、ペンなどの操作体2を挿入自在な入力操作領域Eの周囲に、一対の発光手段となる赤外LED3と受光手段となるフォトトランジスタ4からなる光送受信ユニットUを多数配置している。
各赤外LED3は、入力操作領域E周囲の直交するX、Y方向に沿って内向きに等間隔に配置され、対をなすフォトトランジスタ4は、入力操作領域Eを挟み、受光面をLED3に対向させて配置される。各フォトトランジスタ4の受光面は、赤外光検出信号を通過させ、可能な限り外乱光による影響を除くように、図示しない赤外透過フィルターによって覆われている。
各光送受信ユニットUの赤外LED3は、それぞれマイクロコントローラ(以下、マイコンという)5によって接続制御されるLEDマルチプレクサ6に接続し、マイコン5により制御される発光タイミングで順次赤外光検出信号を発光する。1スイッチユニットUの赤外LED3は、例えば、前後に0.05msecの消灯期間(toff)をおいて、0.05msecの発光期間(ton)に、他の赤外LED3と重複しないタイミングで赤外光検出信号を発光するもので、前後の消灯期間toffには、いずれの他の赤外LED3からも赤外光検出信号を発光しない。発光制御は、全ての赤外LED3について発光制御した後再び繰り返され、その一走査周期Tは、入力操作に要する時間に比べて短い時間に設定される。操作者が入力操作に要する時間は、個人差があるが経験的に少なくとも50msec以上と推定し、一走査周期Tは50msecより短い時間となるように設定している。
一方、各光送受信ユニットUのフォトトランジスタ4は、マイコン5によって接続制御されるPdマルチプレクサ7に接続し、マイコン5で制御される受光タイミングで受光動作する。この受光タイミングは、対となるLED3の発光制御に同期するもので、各フォトトランジスタ4毎にその受光タイミングが設定される。ここでは、入力操作を検出する通常動作期間中に、対となる赤外LED3の消灯期間(toff)と発光期間(ton)にそれぞれで受光動作し、その期間に受光する消灯時受光量(Loff)と発光時受光量(Lon)を検出している。
Pdマルチプレクサ7の出力は、第1増幅回路8を介して発光時入力ホールド回路9と消灯時入力ホールド回路10に接続している。発光時入力ホールド回路9は、赤外LED3の発光期間(ton)に、対となるフォトトランジスタ4が出力する光電変換信号を、第1増幅回路8で増幅した発光時増幅信号を入力し、消灯時入力ホールド回路10は、赤外LED3の消灯期間(toff)に、対となるフォトトランジスタ4が出力する光電変換信号を、第1増幅回路8で増幅した消灯時増幅信号を入力する。
発光時入力ホールド回路9と消灯時入力ホールド回路10の出力は、それぞれ差分出力回路11に接続し、差分出力回路11は、発光時増幅信号のレベルと消灯時増幅信号のレベルの差分を表す差分信号を第2増幅回路12へ出力する。発光時増幅信号は、外乱光に光検出信号を加えたフォトトランジスタ4の発光時受光量(Lon)を表し、消灯時増幅信号は、外乱光のみのフォトトランジスタ4の消灯時受光量(Loff)を表すので、両者のレベルの差分である差分信号は、光検出信号のみの受光量を表すものとなる。
また、消灯時入力ホールド回路10の出力は、マイコン5の外乱光判別部13(図2参照)にも接続し、外乱光の受光量に応じて第1増幅回路8と第2増幅回路12の増幅率を調整するが、その詳細は後述する。
差分出力回路11から出力される差分信号は、第2増幅回路12によってマイコン5が判別可能なレベルに増幅され、増幅した差分信号のレベルによって、マイコン5は赤外入力操作の有無を判定する。すなわち、フォトトランジスタ4が対となる赤外LED3から発光される赤外光検出信号を受光した際の第2増幅回路12の出力レベルより低いレベルを判定しきい値として設定し、第2増幅回路12の出力レベルが判定しきい値以下となった場合に、対となる赤外LED3からの赤外光検出信号の光路が入力操作の操作体2によって遮断されたものとして、その光送受信ユニットUの取り付け位置間で入力操作があったと判定する。
光学式入力装置1の全体では、全ての光送受信ユニットUの赤外LED3を順次発光走査し、入力操作領域Eに、図1の破線で示す網目状の走査光路を形成する。この入力操作領域E内に、操作者が操作体2を挿入し入力操作を行うと、その入力操作位置を通過するX、Y方向の赤外光検出信号が遮断される。その結果、その光路上にあるフォトトランジスタ4は、それぞれ対となる赤外LED3の発光タイミングで赤外光検出信号を受光しないこととなるので、これによってマイコン5は、入力操作の有無と、その入力操作位置を検出する。
以下、この光学式入力装置1の更に具体的な構成と作用を図2乃至図4で説明する。図2は、マルチプレクサ6、7により、一対の赤外LED3とフォトトランジスタ4からなる光送受信ユニットUが接続されたものとして図示する光学式入力装置1の回路図であり、図3は、図2の光送受信ユニットUの発光及び受光制御した際の各部の動作波形を示す波形図、図4は、第1増幅回路8と第2増幅回路12の増幅作用を説明する説明図である。ここで、図2に示す開閉スイッチSW1乃至SW6、及び切換スイッチSW7、SW8は、マイコン5の制御ポート14から出力される制御信号で図3に示すタイミングで、開閉若しくは切り換え制御される。
赤外LED3は、アノードが、SW1を介して定電圧電源Vccに接続し、カソードが接地されている。SW1は、図3に示す「H」レベルの制御信号を受けて閉じ、「L」レベルの制御信号を受けて開く。従って、図3のSW1の制御信号の「H」レベルの期間が発光期間(ton)に、「L」レベルの期間が消灯期間(toff)となる。
フォトトランジスタ4のコレクタは、SW2を介して定電圧電源Vccに接続し、エミッタは、負荷抵抗R1、R2とともに第1増幅回路8を構成する切換スイッチSW8の共通端子に接続している。切換スイッチSW8の2個の切換端子は、更に、それぞれ異なる抵抗値r1、r2の負荷抵抗R1、R2に接続し、負荷抵抗R1、R2の他側は接地されている。外乱光の受光量が、光学式入力装置1の設置場所や周囲の環境によって数十倍の割合で変化することを考慮し、負荷抵抗R1の抵抗値r1と負荷抵抗R2の抵抗値r2の比率は、一方を他方の10乃至100倍とすることが望ましいが、ここでは説明の便宜上、抵抗値r1を5KΩ、抵抗値r2を2KΩとして説明する。
SW2は、図3に示す「L」レベルと「H」レベルとの制御信号を受けて開閉し、フォトトランジスタ4は、SW2の制御信号が「H」レベルの期間、受光動作を行い、「L」レベルの期間、休止する。フォトトランジスタ4の受光動作期間中は、フォトトランジスタ4の受光量に応じた光電変換電流がフォトトランジスタ4を流れ、切換スイッチSW8を切り換えてフォトトランジスタ4に直列に接続させたいずれかの負荷抵抗R1、R2に流れる。このとき、切換スイッチSW8の共通端子の電位は、光電変換電流に共通端子に接続する負荷抵抗の抵抗値を乗じた値となり、切換スイッチSW8の共通端子の電位で表される電圧信号は、光電変換信号を負荷抵抗の抵抗値で増幅した増幅信号V1となる。本実施の形態では、切換スイッチSW8を切り換えて、5KΩの抵抗値r1と2KΩの抵抗値r2のいずれかを選択可能なので、第1増幅回路8の負荷抵抗による第1増幅率は、5倍と2倍のいずれかから選択される。
切換スイッチSW8の共通端子は、「L」レベルと「H」レベルとの制御信号を受けて開閉するSW3とSW4の一側接点に接続し、SW3の他側接点と、SW4の他側接点は、それぞれ発光時入力ホールド回路9と消灯時入力ホールド回路10の入力に接続している。図3に示すように、SW3は、発光期間(ton)であってフォトトランジスタ4が受光動作を行っている期間に「H」レベルの制御信号を受けて閉じ、発光期間tonにフォトトランジスタ4が受光した発光時受光量(Lon)を表す発光時増幅信号V1を発光時入力ホールド回路9へ出力する。また、SW4は、消灯期間(toff)であってフォトトランジスタ4が受光動作を行っている期間に「H」レベルの制御信号を受けて閉じ、消灯期間(toff)にフォトトランジスタ4が受光した消灯時受光量(Loff)を表す消灯時増幅信号V1を消灯時入力ホールド回路10へ出力する。
発光時入力ホールド回路9と消灯時入力ホールド回路10は、上述の通り異なるタイミングで入力される発光時増幅信号V1と消灯時増幅信号V1の電圧レベルを、後段のオペアンプ11で両者の差分をとり、差分信号として出力するまで保持するもので、フォトトランジスタ4が受光動作を終える毎にリセットされる。この為、発光時入力ホールド回路9は、SW3の他側接点と接地間に抵抗R3とコンデンサCとを直列に接続した積分回路と、コンデンサCに並列に接続されたSW5と、非反転入力端子を抵抗R3とコンデンサCの接続点に、反転入力端子を出力に接続することにより増幅率を1としたオペアンプ15とで構成している。RC回路からなる積分回路の時定数は、SW3の閉じ期間(入力期間)の少なくとも1/5以下の充分短い時定数とし、SW3が閉じた後に、速やかにコンデンサCの充電電圧が、発光時増幅信号V1の電圧に達するようになっている。
入力インピーダンスが高いオペアンプ15を積分回路の出力側に接続することによって、抵抗R3に流れるコンデンサCへの充電電流が出力側へ流れず、また、SW5が閉じ制御されるまで、コンデンサCから出力側に放電電流が流れず、コンデンサCの充電電圧が保たれる。従って、増幅率を1としたオペアンプ15から、SW5が閉じるまで、発光時増幅信号V1の電圧である出力V2が出力される。図3に示すように、SW5は、フォトトランジスタ4が受光動作を終えたときに「H」レベルの制御信号を受けて閉じ、コンデンサCに蓄積された電荷が全て放電し充電電圧が0Vとなった後、「L」レベルの制御信号を受けて開制御される。
消灯時入力ホールド回路10の各回路は、上述の発光時入力ホールド回路9と全て同一であり、構成する各回路素子の回路定数も同一としているので、同一の符号を付してその説明を省略する。消灯時入力ホールド回路10のオペアンプ15からは、SW5と同時に開閉するSW6が閉じるまで、消灯時増幅信号V1の電圧である出力V3が出力されるが、発光時入力ホールド回路9と消灯時入力ホールド回路10を同一構成とすることによって、異なるタイミングで入力される発光時増幅信号V1及び消灯時増幅信号V1は、同一増幅率(ここでは、1)で、出力V2及び出力V3として出力される。尚、フォトトランジスタ4が受光動作を終えたとき(SW2が開制御)に、SW3、SW4を閉じれば、負荷抵抗R1、R2を通してコンデンサCの電荷が放電されるので、SW3、SW4をそのように開閉制御する場合には、SW5、SW6を必ずしも設ける必要はない。
発光時入力ホールド回路9と消灯時入力ホールド回路10の出力は、それぞれ差分出力回路を構成するオペアンプ11の非反転入力端子と反転入力端子に入力される。従って、オペアンプ11の出力は、発光時増幅信号V1の電圧である出力V2と消灯時増幅信号V1の電圧である出力V3とのレベルの差分を表す差分信号V4が出力される。発光時増幅信号V1の電圧は、赤外光検出信号を受光した際の外乱光を加えた受光量を表し、消灯時増幅信号V1の電圧は、外乱光のみの受光量を表すので、差分信号V4のレベルは、フォトトランジスタ4が赤外光検出信号を受光した受光量を表す。
オペアンプ11の出力は、切換スイッチSW7とともに第2増幅回路12を構成する非反転増幅回路16の非反転入力端子に接続している。非反転増幅回路16の出力は、マイコン5に内蔵のA/Dコンバータ17のアナログ入力端子と、切換スイッチSW7の共通端子に接続し、それぞれ異なる抵抗値rf1、rf2の帰還抵抗Rf1、Rf2が切換スイッチSW7の2個の切換端子に接続することによって、帰還抵抗Rf1、Rf2が選択的に接続されるようになっている。更に、帰還抵抗Rf1、Rf2の他側は、抵抗値r4の分圧抵抗R4を介して接地され、帰還抵抗Rf1、Rf2と分圧抵抗R4の接続点が、非反転増幅回路16の反転入力端子に接続している。
このように構成される非反転増幅回路16の電圧利得(第2増幅率)は、帰還抵抗Rf1を接続した場合に、1+rf1/r4に、帰還抵抗Rf2を接続した場合に、1+rf2/r4となる。本発明では、第1増幅回路8による第1増幅率に第2増幅回路12による第2増幅率を乗じた増幅率を一定値とするので、帰還抵抗Rf1、Rf2の抵抗値rf1、rf2の一方をr4と、他方をr4の4倍の抵抗値として、第2増幅率を2倍と5倍から選択自在とするが、ここでは、帰還抵抗Rf1の抵抗値rf1をr4と同抵抗値に、帰還抵抗Rf2の抵抗値rf2を、r4の4倍の抵抗値とする。従って、非反転増幅回路16による第2増幅率、すなわち、オペアンプ11の出力レベルV4に対する非反転増幅回路16の出力レベルV5の電圧利得(V5/V4)は、切換スイッチSW7により帰還抵抗Rf1が接続された場合に、2倍に、帰還抵抗Rf2が接続された場合に、5倍となる。
マイコン5には、更に一走査周期T毎にA/Dコンバータ17から出力される出力値、その出力値と比較する判定しきい値などを記憶する記憶部18を備えている。判定しきい値VTHは、入力操作を検出する前の初期設定において、発光期間(ton)にA/Dコンバータ17から出力される出力値より低い値であって、好ましくは1/2程度の値が光送受信ユニットU毎に設定される。初期設定においては入力操作を行わないので、非反転増幅回路16の出力レベルV5をA/D変換したA/Dコンバータ17の出力値は、赤外光検出信号を受光したレベルを表し、一方、入力操作によって赤外光検出信号が遮断されれば、A/Dコンバータ17の出力値は、0に近似した値となるので、その変動幅の間に判定しきい値VTHを設定する。
また、消灯時入力ホールド回路10の出力は、マイコン5の外乱光判別部13にも接続し、外乱光のみの受光量を表す出力V3を外乱光判別部13へ出力している。外乱光判別部13は、外乱光のみの受光量に応じて、切換スイッチSW7と切換スイッチSW8を切り換える制御信号を制御ポート14から出力し、第1増幅回路8の第1増幅率と第2増幅回路12の第2増幅率を選択する。すなわち、外乱光による受光量が大きい場合には、フォトトランジスタ4やオペアンプ15が飽和しないように、第1増幅率を下げて受光感度を下げ、第2増幅率は、第1増幅率と乗じて一定の増幅率となるように調整する。これにより、第1増幅率の変動にかかわらず、非反転増幅回路16の出力レベルV5は、赤外光検出信号の受光の有無による一定範囲で変動し、A/Dコンバータ17の入力電圧範囲内で、高い分解能で出力レベルV5をA/D変換できる。
以下、入力操作を検出する通常動作期間中の光学式入力装置1の動作を、図3に沿って説明する。尚、同図において、一走査周期T内の他の光送受信ユニットUに関する走査時間は、一点鎖線で省略している。
本実施の形態では、室内照明のみなど比較的外乱光の受光量が少ない環境(A)に光学式入力装置1が置かれている場合を、通常の使用状態と仮定してデフォルト値が設定され、初期状態でSW7、SW8はそれぞれRF1、R1側に切り換え接続するように制御されている。外乱光の判別を、通常動作期間中の一走査周期T毎に行うものとすると、赤外LED3を点灯制御する前に、SW2とSW4を閉じて、消灯時の光電変換電流を負荷抵抗R1に流す。
従って、光電変換信号が負荷抵抗R1の抵抗値r1で5倍に増幅された消灯時増幅信号V1が、消灯時入力ホールド回路10から、出力V3としてマイコン5の外乱光判別部13と差分出力回路11の反転入力端子に出力される。外乱光判別部13は、出力V3のレベルに応じてSW8を切り換え、赤外光検出信号の受光量を加えた出力V2が、フォトトランジスタ4やオペアンプ15を飽和しない範囲内(図4のVR1以下)で、第1増幅率を最適な増幅率に選択するもので、ここでは、出力V3のレベルが充分に小さいことから、環境(A)であると判定し(図3の(イ))、SW7、SW8をRF1、R1側へ接続した状態で維持し、SW4を開き、消灯時入力ホールド回路10の接続を遮断する。
続いて、フォトトランジスタ4の受光動作を継続したまま、SW1を閉じ、赤外LED3を発光させるとともに、SW3を閉じ、発光時入力ホールド回路9を接続する。この発光期間(ton)にフォトトランジスタ4に流れる光電変換電流は、図4に示すように、光検出信号の受光量を表す光電変換電流ISに外乱光の受光量を表す光電変換電流INの和となる。この発光時の光電変換信号は、消灯時の光電変換電流と同様に第1増幅率を5倍とする負荷抵抗R1に流れ、発光時増幅信号V1として発光時入力ホールド回路9へ入力されるので、発光時入力ホールド回路9の出力V2は、受光量を表す光電変換電流ISと外乱光の受光量を表す光電変換電流INを5倍に増幅した5VSと5VNの和となる。
差分出力回路11において、出力V2のレベルと比較する出力V3のレベルに共通して含まれる外乱光を表すレベルは、同一の第1増幅率で増幅した5VNであるので、差分出力回路11から出力される差分信号V4は、図4に示すように、外乱光による影響が除かれ、光検出信号の受光レベルを表す5VSとなる。
5VSの差分信号V4は、第2増幅率が2倍に設定された第2増幅回路12で10VSに増幅され、更にその第2増幅回路12の出力V5は、A/Dコンバータ17でA/D変換され、マイコン5によって、記憶部18に記憶された判定しきい値VTHと比較される。判定しきい値VTHは、赤外光検出信号をのみを受光した際の第2増幅回路12の出力レベルの例えば1/2の5VSに設定され、出力V5のレベル10VSが判定しきい値VTH以上であることから、赤外光検出信号が遮断されずに受光されたものとして(図3の(ロ))、光送受信ユニットUの光路を遮断する入力操作は行われていないと判定する。
入力操作の有無を判定すると、SW5、SW6が閉じ制御され、コンデンサCに蓄積された電荷が放電し、発光時入力ホールド回路9の出力V2と消灯時入力ホールド回路1の出力V3は、0Vとなり、リセットされる。
外乱光の受光量が少ない環境(A)が変化しない限り、一走査周期Tで同様の処理を繰り返す。光送受信ユニットUの赤外光検出信号の光路が入力操作によって遮断されると、図3に示すように、赤外発光素子3が発光(SW1の制御信号が「L」から「H」に移行)しても、発光時増幅信号V1は消灯時増幅信号V1から変化しないので、出力V2と出力V3のレベルはほぼ等しく、差分信号V4のレベルは、ほぼ0Vとなる。従って、A/Dコンバータ17でA/D変換される出力V5のレベルもほぼ0であり、判定しきい値VTH以下となるので、赤外光検出信号が遮断されたものとして(図3の(ハ))、光送受信ユニットUの光路を遮断する入力操作が行われたと判定する。
一方、野外や直射日光を受け、外乱光の受光量が多い環境(B)に光学式入力装置1が置かれいている場合には、初期状態でSW8はR1側に切り換え接続されているので、SW2とSW4を閉じた消灯時の光電変換電流は、負荷抵抗R1を流れる。
負荷抵抗R1の抵抗値r1で5倍に増幅された消灯時増幅信号V1は、消灯時入力ホールド回路10から出力V3としてマイコン5の外乱光判別部13に出力され、外乱光の受光レベルが判別される。環境(B)での出力V3のレベルは、赤外光検出信号の受光量を加えたときの出力V2が、フォトトランジスタ4やオペアンプ15の飽和電圧(図4のVR1)を越えるものとなるので、環境(B)であると判定し(図3の(ニ))、SW7、SW8をRF2、R2側へ切り換え接続し、消灯時の光電変換電流を負荷抵抗R2へ流す。
消灯時増幅信号V1は、光電変換電流を負荷抵抗R2の抵抗値r2で2倍に増幅したもので、増幅率が低下することによって、消灯時入力ホールド回路10の出力V3もレベルが低下してマイコン5の外乱光判別部13と差分出力回路11の反転入力端子に出力される。外乱光判別部13は、再びこの出力V3のレベルから最適な第1増幅率を選択するが、既にSW7、SW8を切り換え接続しているので、そのRF2、R2側へ接続した状態で、SW4を開き、消灯時入力ホールド回路10の接続を遮断する。
続いて、フォトトランジスタ4の受光動作を継続したまま、SW1とSW3を閉じ、発光時の光電変換信号を2倍に増幅する負荷抵抗R2へ流す。環境(B)で、発光期間(ton)にフォトトランジスタ4に流れる光電変換電流は、図4に示すように、光検出信号の受光量を表す光電変換電流ISに外乱光の多大な受光量を表す光電変換電流INの和となる。この発光時の光電変換信号は、第1増幅率を2倍とする負荷抵抗R2に流れるので、発光時入力ホールド回路9の出力V2は、受光量を表す光電変換電流ISと外乱光の受光量を表す光電変換電流INを2倍に増幅した2VSと2VNの和となるが、増幅率を2倍として受光感度を落とすことにより、飽和電圧VR1以下となる。
差分出力回路11において、出力V2のレベルと比較する出力V3のレベルに共通して含まれる外乱光を表すレベルは、同一の第1増幅率で増幅した2VNであるので、差分出力回路11から出力される差分信号V4は、図4に示すように、外乱光による影響が除かれ、光検出信号の受光レベルを表す2VSとなる。
2VSの差分信号V4は、第2増幅率が5倍に設定された第2増幅回路12で10VSに増幅され、更にその第2増幅回路12の出力V5は、A/Dコンバータ17でA/D変換され、マイコン5によって、記憶部18に記憶された判定しきい値VTHと比較される。この出力V5のレベル10VSは、判定しきい値VTH以上であることから、赤外光検出信号が遮断されずに受光されたものとして(図3の(ホ))、光送受信ユニットUの光路を遮断する入力操作は行われていないと判定する。
このように、赤外光検出信号の受光量と、第1増幅率に第2増幅率を乗じた増幅率が一定であるので、A/Dコンバータ17に入力される出力V5は、外乱光の受光量にかかわらず、0と10VSの一定範囲で変動するので、第1増幅率に第2増幅率を乗じた増幅率を調整し、A/Dコンバータ17のリファレンス電圧R2に合わせて最適な入力電圧範囲とすることにより、高い分解能で出力レベルV5を判定しきい値VTHと比較できる。
また、受光感度を調整するために、第1増幅率を変更しても、A/Dコンバータ17に入力される出力V5のレベルは、変化しないので、判定しきい値VTHを変更することなく入力操作の判定ができる。
入力操作の有無を判定すると、環境(A)での設定と同様に、SW5、SW6が閉じ制御され、コンデンサCに蓄積された電荷が放電し、発光時入力ホールド回路9の出力V2と消灯時入力ホールド回路1の出力V3は、0Vとなり、リセットされる。
外乱光の受光量が多い環境(B)が変化しない限り、一走査周期Tで同様の処理を繰り返す。光送受信ユニットUの赤外光検出信号の光路が入力操作によって遮断されると、図3に示すように、赤外発光素子3が発光しても、発光時増幅信号V1は消灯時増幅信号V1から変化しないので、A/Dコンバータ17でA/D変換される出力V5のレベルもほぼ0であり、判定しきい値VTH以下となるこから、赤外光検出信号が遮断されたものとして(図3の(ヘ))、光送受信ユニットUの光路を遮断する入力操作が行われたと判定する。
上述の実施の形態では、外乱光の影響を除去する差分出力回路11と、第2増幅回路12とを、別の回路で構成したが、一つの差動増幅回路で両者を兼ねることもできる。図5は、この差動増幅回路20を用いた他の実施の形態を示すもので、差動増幅回路20の非反転入力端子は、SW9の共通端子と抵抗R8Aの一端に接続し、抵抗R8Aの他端が接地されている。SW9の2個の切換端子は、それぞれ抵抗R6Aと抵抗R7Aに接続し、各他端は、発光時入力ホールド回路9の出力に接続し、発光時増幅信号V1の電圧である出力V2が入力される。
また、差動増幅回路20の反転入力端子は、SW10の共通端子と、抵抗R8Bの一端にそれぞれ接続し、抵抗R8Bの他端は、A/Dコンバータ17の入力と共に差動増幅回路20の出力に接続している。SW10の2個の切換端子は、それぞれ抵抗R6Bと抵抗R7Bに接続し、各他端は、消灯時入力ホールド回路10の出力に接続し、消灯時増幅信号V1の電圧である出力V3が入力される。
抵抗R6Aと抵抗R6Bを同一の抵抗値r6、抵抗R7Aと抵抗R7Bを同一の抵抗値r7、抵抗R8Aと抵抗R8Bを同一の抵抗値r8とした各抵抗素子を用いて、SW9とSW10を抵抗R6A、抵抗R6B側に接続すると、差動増幅回路20の出力のレベルV5は、V5=(r8/r6)x(V2−V3)となる。
また、SW9とSW10を抵抗R7A、抵抗R7B側に接続すると、差動増幅回路20の出力のレベルV5は、V5=(r8/r7)x(V2−V3)となるので、抵抗値r6とr7を任意に選択して、SW9とSW10で接続を切り換えることにより、V2−V3の差分を2種類の増幅率で増幅する出力V5が得られる。尚、上式から明らかなように、抵抗R8Aと抵抗R8Bで共通とする抵抗値を、2種類の抵抗値から選択しても、V2−V3の差分値を2種類の増幅率で増幅する出力V5が得られる。
また、上述第1実施の形態では、非反転増幅回路16の増幅率を変化させ、第2増幅回路12で増幅する2種類の第2増幅率を得ているが、差分出力V4を積分回路へ入力し、積分回路の時定数を変化させて、2種類の第2増幅率を得てもよい。図6は、この時定数を変化させる他の実施の形態を示す要部回路図であり、差分出力回路11の出力と接地間に抵抗R9とコンデンサC1、C2のいずれかを直列に接続した積分回路を用いる。図に示すように、抵抗R9は、入力端を差分出力回路11の出力に接続し、出力端を増幅率を1としたオペアンプ21の非反転入力端子と、切換スイッチSW11のコモン端子、及び開閉スイッチSW12の一側接点に接続させる。切換スイッチSW11の2個の切換端子と接地間には、それぞれ異なる容量値c1、c2のコンデンサC1、C2が接続されている。
差分信号V4を増幅して、A/Dコンバータ17へ出力する場合には、開閉スイッチSW12を開き、切換スイッチSW11を切り換えていずれかのコンデンサC1、C2を接続する。差分信号V4を入力した一定時間後のオペアンプ21の非反転入力端子に入力される電圧、すなわちA/Dコンバータ17に出力される出力V5の電圧は、抵抗R9の抵抗値r9とSW11により接続されたコンデンサC1、C2のいずれか容量値c1、c2の積である時定数によって増加率が異なる。従って、この積分回路に差分信号V4を入力してから定常状態に移行する充分前の一定時間後に、オペアンプ21から出力される出力V5のレベルが、差分信号V4の第2増幅率として設定する異なる増幅率で変化するように、SW11で切り換えられるコンデンサC1、C2の容量値c1、c2を設定することが可能であり、そのように容量値c1、c2を設定したいずれかのコンデンサC1、C2にSW11で切り換え接続することにより、第2増幅率を2種類のいずれかの増幅率から選択できる。一定時間後にオペアンプ21から出力V5を出力した後、開閉スイッチSW12を閉じ、接続しているコンデンサC1、C2の電荷を放電してリセットする。
また、同様の理由で、2種類の異なる抵抗値の抵抗のいずれかを抵抗R9として選択的に接続し、積分回路の時定数を変え、第2増幅率の異なる増幅率を選択するようにしてもよい。更に、異なる時定数に選択可能な上述の積分回路を用いて、積分回路に差分信号V4を入力してからオペアンプ21から出力される出力レベルが所定値に達するまでの経過時間を検出し、経過時間を出力V5のレベルに換算して、第2増幅率の異なる増幅率を選択することもできる。
また、上述の実施の形態では、消灯時受光量(Loff)の受光量、すなわち外乱光による受光量を光送受信ユニットUの一走査周期T毎に検出しているが、入力操作を検出する前の初期設定の段階で一度検出してもよく、その検出タイミング及び回数は、任意である。
また、受光素子としてフォトトランジスタ4を用いているが、フォトダイオードを用いても良く、また、フォトダイオードを用いる場合には、フォトダイオードに流れる微弱な光電変換電流を増幅する電流−電圧変換回路を第1増幅回路として、電流−電圧変換回路の異なる増幅率から第1増幅率を選択するようにしてもよい。
また、上述の実施の形態では、第2増幅回路12の出力V5を、直接A/Dコンバータ17に入力しているが、多数の光送受信ユニットUについて、図2に示す回路を共通して用いる場合には、各赤外LED3から発光される赤外光検出信号の発光量が異なることがあり、第2増幅回路12とA/Dコンバータ17の間に、光送受信ユニットU毎に第2増幅回路12から出力される出力V5を同一レベルに調整する増幅回路を介在させてもよい。
また、上述の実施の形態では、第1増幅率と第2増幅率を2種類の増幅率から選択可能としたが、両者を乗じた増幅率が一定であれば、3種類以上の増幅率から選択してもよく、また、いずれかの増幅率は、必ずしも1以上の数値である必要はない。
更に、発光時入力ホールド回路9と消灯時入力ホールド回路10の増幅率を同一の第2増幅率として、異なる増幅率から選択自在としていもよい。