JP4346964B2 - 多周波変形t型アンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、GHz帯域の電波を送受信するための、小型,軽量,高利得で、優れた双方向の指向性を有するアンテナに関するものであって、例えばパーソナルコンピュータに装着して無線LANを構成するに適している。
【0002】
【従来の技術】
この種のアンテナに関する技術として、例えば特開平2001−345619号公報に記載された「無指向性アンテナシステムおよびノート形パソコン」が公知である。
図11は、パーソナルコンピュータに装着するように考案された従来例のアンテナを説明するために示したもので、1個のパソコンに3種類のアンテナを設置した状態を模式的に描いてある。(実際には、3種類の内の1種類のアンテナが設置される)。
符号17を付して示したのは折畳み形アンテナである。使用時には矢印aのように引き起こし、携行時には矢印bのように収納できる構造になっている。
符号18を付して示したのはアンテナ付PCカードであって、矢印cのようにパーソナルコンピュータ14本体の中に差し込む。このPCカードは図の左端部が少し突出していて、ここにアンテナが設けられている。携行時には矢印dのように抜き取ることができる。
符号19を付して示したのはロッドアンテナであって、テレスコピックに伸縮可能な構造である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前掲の図11に示した3種類のアンテナには、それぞれ長短が有って、何れも完全なものではない。
折畳み形アンテナ17は、使用の開始,終了に際してアンテナを指先で起こしたり倒したりしなければならないので手数が掛かって煩わしい。
アンテナ付PCカード18は、使用の開始,終了に際してカードを差し込んだり抜き取ったりしなければならないので煩わしい。
ロッドアンテナ19は使用の開始,終了に際してロッドを引き伸ばしたり押し縮めたりしなければならないので煩わしい。
【0004】
その上、上記3種類のアンテナは何れも使用状態でアンテナ素子がパーソナルコンピュータ14の本体から突出しているので、気を付けないと引っかける虞れ無しとしない。
さらに、折畳み形アンテナ17やアンテナ付PCカード18は、パーソナルコンピュータ14本体の影響を受けて、図の270度方向のアンテナ利得が90度方向に比して悪い。
こうした欠点を補うには2個の同型のアンテナを設けてダイバシティー方式にしなければならず、製造コストが割高になる。
【0005】
1個のアンテナで無指向性を得るにはロッドアンテナ19を設ければ良いが、アンテナ装置部分が大形,大重量である。
しかも、意匠的価値について考察するに、上記3種類のアンテナ装置は何れも外観を繁雑ならしめている。すなわち、パーソナルコンピュータ14の輪郭が単純な形状であるのに、アンテナ装置が突出してシンプルな印象を壊し、パーソナルコンピュータ全体の商品価値を下げている。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、その目的とする処は、
きわめて小形軽量であって、装着対象機器の外観に影響を及ぼさず、
優れた双方向指向性を有してアンテナ利得が高く、
工業的大量生産に適していて製造コストが低廉であり、
装着対象機器の輪郭から突出することなく意匠的価値を損なわず、
使用の開始,終了に際して別段の手動操作を必要としない、新規なアンテナ技術を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る多周波変形T型アンテナの構成は、異なる周波数を有する複数種類の電波を送受信するアンテナにおいて
直交座標X,Yを想定し、
電気的長さL1=λ1/2の第1アンテナ素子(1)が、その長手方向をX軸と平行ならしめるとともに、その長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめて配置されており、
電気的長さL2=λ2/2の第2アンテナ素子(2)が、その長手方向をX軸と平行ならしめるとともに、その長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめて配置されており、
電気的長さLn=λn/2の第nアンテナ素子(3)が、その長手方向をX軸と平行ならしめるとともに、その長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめて配置されており、
かつ、上記複数個のアンテナ素子(1〜3)それぞれの長手方向の中央に位置する「インピーダンス0の点」が、相互に「Y軸方向の短絡ライン(4)」によって接続導通されるとともに、
上記短絡ライン(4)の1端がグランド(5)に接地されており、
さらに、前記複数個のアンテナ素子(1〜3)それぞれについて、前記インピーダンス0の点から少し離れて2箇所に存在する「インピーダンス50Ωの点(50)」の何れか片方に、給電ライン(6)が接続導通されていて、
上記の給電ライン(6)とグランド(5)とに同軸ケーブルを接続し得るようになっていて、
複数のアンテナ素子(1,2)、短絡ライン(4)、給電ライン(6)、およびグランド板(8)が、フレキシブル基板上の導通パターンによって構成されるとともに、これらの構成部分が電気絶縁性の柔軟なフイルム(9)によってパックされており、
かつ、同軸ケーブル(7)の中心導体(7a)が上記のフイルム(9)を貫通して前記給電ライン(6)に接続されるとともに、
該同軸ケーブルの外部導体(7b)が、前記フイルムを貫通して前記グランド板(8)に接続導通されていて、
これらの構成部材が相互に結合されて1個のアンテナ装置アッセンブリを形成しており、
フレキシブル基板上の導通パターンとして形成され、フイルム(9)でパックされたグランド板(8)が、
パーソナルコンピュータの導電性の筺体(14c)と、
液晶ディスプレー(14a)の背面に設けられている導電性の当て板(14b)との間に挟みつけられて、前記グランド板(8)が、これよりも広い導電性部材に対して静電的に結合されていることを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る多周波変形T型アンテナの1実施形態を示す平面図であって、読図に便なるごとく、平面状の導電性部材に斑点を付するとともに、フィルムの輪郭を鎖線で描いてある。
符号1を付して示したのは、電気的長さL1が送受信波長λ1の1/2となるようにに設定された第1アンテナ素子1であって、その長手方向をX軸と平行ならしめるとともに、その中央の点0をY軸上に位置せしめてある。
符号2を付して示したのは、電気的長さL2が送受信波長λ2の1/2となるようにに設定された第2アンテナ素子2であって、その長手方向をX軸と平行ならしめるとともに、その中央の点をY軸上に位置せしめてある。
【0031】
以上の構成によって第1アンテナ素子1がλ1/2に共振し、第2アンテナ素子2がλ2/2に共振するのであるが、
実際問題としては、これらのアンテナ素子に対して何のようにして給電し、アンテナ素子および給電部材を何によって構成し、アンテナ素子と給電部材とを何のように配置するかが重要であって、これらの条件の如何によってアンテナ性能も、製造コストも、作動信頼性も、操作の難易も、さらには意匠的価値までも著しく変わってくる。
本発明が、これらの条件を如何に設定して優れた多周波アンテナを創作したか、その実施形態を以下に説明する。
【0032】
第1アンテナ素子1の長手方向(X軸方向)中央の点0について考察すると、このアンテナ素子に電波が乗ったとき(電波に共振して定在波を生じたとき)、
中央の点0は、電流最大・電圧最小となる。すなわち、インピーダンスがゼロである。
同様に、第2アンテナ素子2がY軸と交わる点(長手方向に関して中央の点)もインピーダンスゼロである。
そこで、Y軸に沿った短絡ライン4を設けて、これら「インピーダンス0の点」を相互に接続し、かつ該短絡ライン4の片方の端をグランド板8に接続する。
【0033】
次に、アンテナ素子の端の点∞について考察すると、電波が乗ったとき(定在波を生じたとき)電圧最大・電流最小(ゼロ)となる。すなわちインピーダンス無限大となる。
そして、アンテナ素子上の電流,電圧は前記の点0と点∞との間で正弦波を描いて変化する。従って、インピーダンスが0の点から少し離れてインピーダンス50Ωの点ができる。(この点は動かないから、実験的に容易に見つけ出すことができる)
このインピーダンス50Ωの点は、前記インピーダンス0の点の両側にでき、それぞれのアンテナ素子ごとに2箇所ずつできる。本実施形態においては、2箇所の50Ω点のうち片方(図の左側)を給電点とする。この点のインピーダンスが50Ωであるから、インピーダンス50Ωの同軸ケーブルを接続したとき、インピーダンス整合が好都合に行なわれる。
【0034】
第1アンテナ素子1の50Ω点と、第2アンテナ素子2の50Ω点とを結ぶ給電ライン6を設ける。
本例では、上記2つのアンテナ素子それぞれの50Ω点を結ぶ給電ライン6がY軸とほぼ平行になった。この給電ラインは必ずしもY軸と平行にならないが、通常、平行に近くなる。
上記給電ライン6に、同軸ケーブル7の中心導体を接続する。該同軸ケーブルの外部導体はグランド板8に接地されている。
【0035】
本実施形態においては、第1アンテナ素子1と、第2アンテナ素子2と、短絡ライン4と、給電ライン6と、グランド板8とを、フレキシブル基板上の導通パターンによって形成した。
上記短絡ライン4も放射機能を有しており、かつ第1アンテナ素子1に対して直角を成しているので、第1アンテナ素子1の長手方向(図において左右方向)の成分を有する偏波も、第1アンテナ素子1と垂直な方向(図において上下方向)の成分を有する偏波も送受信できる。
前記の構成部分(第1アンテナ素子1、第2アンテナ素子2、短絡ライン4、給電ライン6、およびグランド板8)を導通パターンで構成すると、迅速、容易かつ低コストで、しかも高精度で製作することができる。
その上、これらの構成部材がフレキシブルであるから衝撃や振動を受けても破損しにくい。
本例では、上述のごとくフレキシブル基板の導通パターンで形成した構成部分を、電気絶縁性のフィルム9でパックした。これらの構成部分がフレキシブルであることを利用した具体的な取付け構造や、その作用については、図3および図4を参照して後に詳しく述べる。
【0036】
図2は、本発明を適用して構成した3バンドアンテナの1例を模式的に描いた平面図である。
符号1を付して示したのは、その電気的長さL1が送受信電波の波長λ1の1/2となるように構成された第1アンテナ素子1であって、その長手方向をX軸と平行に配置し、長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめてある。
符号2を付して示したのは、その電気的長さL2が送受信電波の波長λ2の1/2となるように構成された第2アンテナ素子2であって、その長手方向をX軸と平行に配置し、長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめてある。
符号3を付して示したのは、その電気的長さLnが送受信電波の波長λnの1/2となるように構成された第nアンテナ素子3であって、その長手方向をX軸と平行に配置し、長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめてある。
【0037】
本図2に示した模式図におけるnの数は、2以上の任意の整数である。この数nが2である場合は、前掲の図1の実施形態と同様になり、デュアルバンドアンテナとして機能する。
上記の数nが3のときは、本図2に描かれている模式図と同様にアンテナ素子が3本設置され、3バンドアンテナとして機能する。
図示を省略するが、この数nが4になればアンテナ素子が4本になって4バンドアンテナとして機能するようになる。この数nが5またはそれ以上のときも同様である。
インピーダンスがゼロの点を結んでグランド5に接地される、Y軸に沿った短絡ライン4は、前掲の図1におけると同様の構成部材である。
【0038】
インピーダンス50Ωの点を結んで給電点を形成する給電ライン6も、前掲の図1におけると同様の構成部材である。符号1aは第1アンテナ素子1の給電点、符号2aは第2アンテナ素子2の給電点、符号3aは第nアンテナ素子3の給電点である。
図示を省略したが、同軸ケーブルの中心導体が前記給電ライン6に接続され、
同軸ケーブルの外部導体がグランド5に接地される。
このようにして、デュアルバンドアンテナ、3バンドアンテナ、4バンドアンテナなど、任意種類の波長を有する電波に共振して、これを送受信することができる。
【0039】
図3は、本発明に係る多周波アンテナの1実施形態の模式的な側面図であって、1部分を破断して描いてある。
先に図1を参照して説明した実施形態においては、アンテナ素子および給電用の構成部材ならびにグランド板がフレキシブル基板で構成されるとともに、電気絶縁性フィルムによってパックされていた。
本図3の例も、これらの部材がフレキシブルな材料で構成されているが、必ずしもフレキシブル基板を用いなくても、銅箔またはフレキシブル基板の何れか任意の材料10で構成すればよい。銅箔によってアンテナ素子その他の構成部材を製作する作業はフレキシブル基板に導電パターンを製作する作業に比して生産性は劣るが、これらの部材を銅箔で構成しても、本発明の実施に必要な程度のフレキシビリティが得られる。
【0040】
上記の銅箔またはフレキシブル基板10は2枚のフィルム9a,9bの間に挟まれ、該フィルムの周囲は溶着9cされている。
この図の縮尺では読み取れないが、前記フィルム9bの2箇所に孔が明けられている。その一つは同軸ケーブル7の中心導体7aに対向する所であり、もう一つは外部導体7bに対向する所である。
同軸ケーブル7の中心導体7aは、前記二つの孔の片方を通して前記の給電ライン(本図3には表されていない、図1における符号6の部材)にハンダ付12aされている。そして外部導体7bは、前記二つの孔の他方を通して前記のグランド板(本図3には表されていない、図1における符号8の部材)にハンダ付12bされている。
上記同軸ケーブル7の他端に同軸コネクタ7cが設けられている。このため、本実施形態に係る多周波アンテナを相手機器である高周波回路に対する接続を迅速容易に行なうことができる。
【0041】
図4は、前掲の図1および図3に示した実施形態に係る多周波アンテナをパーソナルコンピュータのダイカスト筺体に装着した状態を模式的に描いた部分破断側面図である。
図3に表されている実施形態のアンテナ装置は、フィルム9でパックされた構部分が柔軟なシート状を成し、これに同軸ケーブル7が接続されて1個のアッセンブリを形成している。このような構造であることの技術的な意義は次のとおりである。
a.このアンテナ装置が纏まった一つの商品として市場流通性を有している。これにより、アンテナ産業の分業化が促進され、無線機器産業全体の発達に寄与することができる。
b.後掲の図4を参照して以下に述べるように、装着対象機器に対する機械的取付けや電気的接続が非常に便利である。
【0042】
図4は、前掲の図1および図3に示した実施形態に係るフレキシブルな多周波アンテナをパーソナルコンピュータのダイカスト筺体に装着した状態を描いた要部断面図である。
液晶ディスプレー14aはパーソナルコンピュータのダイカスト筺体14cに取り付けられ、その背面に金属製の当て板14bが設けられている。14dは両者の間隙を覆っているプラスチック枠板である。
上記の当て板14bとダイカスト筺体14cとの間に、本発明に係る多周波アンテナ15が挟みつけられている。
【0043】
(図1と図4とを併せて参照)この多周波アンテナは、形状的にはT型アンテナを改良したものであるから、以下、多周波変形T形アンテナ15と呼ぶ。
このアンテナのグランド板8の部分が液晶ディスプレー14aとダイカスト筺体14cとの間に挟みつけられる。このグランド板8は図3について説明したように、電気絶縁性のフィルム9で包まれているので、当て板14bやダイカスト筺体14cと直接的に接触導通することなく、静電容量が形成される。
すなわち、直流的には絶縁されているが、GHz帯の高周波的には完全に接続された状態になる。これにより、パーソナルコンピュータを形成している大形の金属性(導電性)部材がグランド(アース)として利用される。符号7を付して示した同心円状の部材は同軸ケーブルである。
上述の構成,作用から容易に理解されるように、本発明において「ダイカスト」の語は、「導電性の」と読み替えることができる。
【0044】
図5は、前掲の図4に示した多周波変形T形アンテナを装着されたパーソナルコンピュータの全体的な外観斜視図に、アンテナ指向性を説明するための方位角度を付記した図である。
多周波変形T形アンテナ15は液晶ディスプレー14aの裏側に収納されていて外観に現れない。従って、パーソナルコンピュータ全体の意匠を損なう虞れが無い。しかも、パーソナルコンピュータの外形輪郭から突出していないので、不用意に引っかけたり、外部障害物の衝突を受けて破損したりする虞れも無いので使い易く安全である。
【0045】
本図5を図1と対照して容易に理解されるように、多周波変形T形アンテナ15のグランド板8部分は液晶ディスプレー14aの裏側に位置し、アンテナ素子部分はプラスチック枠板14dの陰に隠れている。このように、電波を受けるべき構成部材が液晶ディスプレー14aによって電気的に遮蔽されることは無く、電気絶縁性のプラスチック枠板14dで機械的に保護された状態で、そのアンテナ性能を存分に発揮することができる。
このような構成であるから、本発明の多周波変形T形アンテナ15は、伸縮式にしたり回動式にしたりして、収納・伸長させる必要が無い。
収納・収納しなくてもよいので操作が容易であるのみならず、機械的構造が簡単,小型軽量で,製造コストが低廉である。
【0046】
図6は、前掲の図1と異なる実施形態の多周波変形T形アンテナを示す模式的な平面図である。
図1の実施形態がフレキシブルに構成されていたのに比して、本実施形態はリジッド構造である。
すなわち、この図6に表されている形状を通常の(フレキシブルでない)基板上に導通パターンで形成し、または、金属板から切り出し、もしくは金属板をプレスで打ち抜くなどして、第1アンテナ素子1と、第2アンテナ素子2と、短絡ライン4と、給電ライン6と、ベース取付板13とを、一体的に連設した状態で構成する。
本図6を図1に比較したとき、形状的に異なる所は次のとおりである。
イ.ベース取付板13はグランド板8に比して小形である。
ロ.ベース取付板13には、取付孔13a,13bが設けられている。
【0047】
本図6の部材はリジッドであるから、別段の補強手段を必要とせず、ベース取付板13を高周波回路のアース部材に取り付けることによって、機械的に支持するとともに電気的に接続することができる。
取付孔13a,13bが設けられていると上記の取り付け作業が容易である。しかし、本発明を実施する場合、取付け手段は取付孔13a,13bに限らず、これに類似の手段(例えばカシメ爪など)であっても良い。
【0048】
図7は、前掲の図1に示した実施形態に係る2周波変形T形アンテナのVSWR図である。
本例は、無線機器メーカーにおけるパソコン組込み無線LAN開発に協力するために創作したものであって、基本計画に従って、次のように目標を設定した。
VSWR: 3.0以下
使用周波数:2.45GHzおよび5.2GHz
利得: アンテナ利得−6dBi以上
(ただしケーブル損失を考慮した動作利得はー8dBi以上)
【0049】
図7(A)は、前掲の図1に示した実施形態に係る2周波変形T形アンテナを単独で測定したVSWRであって、2.45GHzと5.2GHzとにおいて、目標値3.0を充分達成している上に、それぞれの周波数付近に広い同調周波数帯が得られた。
図7(B)および図7(C)は、前掲の図1に示した実施形態に係る2周波変形T形アンテナについて、「パーソナルコンピュータに組みつけた状態」をシミュレートして計測したVSWR図である。パーソナルコンピュータに組み込むことによって、充分なアースが得られたので、単独の場合(前掲のA図)よりも優れた性能を表している。
【0050】
図8は、前掲の図1の実施形態に係る2周波変形T形アンテナの、2.45GHz、および、その近傍における指向特性図表に利得値を付記した図表であって、方位角度は前掲の図5に付記した角度に合わせてある。
図9は、前掲の図1の実施形態に係る2周波変形T形アンテナの、5.2GHz、および、その近傍における指向特性図表に利得値を付記した図表であって、方位角度は前掲の図5に付記した角度に合わせてある。
これらの図表から、図1の実施形態のアンテナが優れた双方向指向特性を有していることが分かる。
【0051】
図10は、前記いずれの実施形態とも異なる実施形態を示し、(A)は模式的な平面図、(B)はVSWR図である。
この図10のアンテナは、前掲の図1の実施形態に係るアンテナの応用例である。図1の実施形態において図7に示したような周波数帯域特性が得られることは既に述べた。この図7の例でも実用上充分に広い同調周波数帯域を有しているが、さらに研究を重ねた結果、グランドを広くすると同調周波数帯域が一層広くなることが確認された。
本図10の実施形態は、こうした傾向を利用して図1の実施形態を係改良したものである。
すなわち、7バンドの多周波変形T形アンテナを構成するとともに充分なグランド面積を取って、7つのバンドの同調周波数帯域を重ね合わせて極端に広い同調周波数帯域を得た。
【0052】
符号16aは電気的長さLaがλa/2の第1アンテナ素子、同じく16bは電気的長さLbがλb/2の第2アンテナ素子、同じく16cは電気的長さLcがλc/2の第3アンテナ素子、同じく16dは電気的長さLdがλd/2の第4アンテナ素子、同じく16eは電気的長さLeがλe/2の第5アンテナ素子、同じく16fは電気的長さLfがλf/2の第6アンテナ素子、同じく16gは電気的長さLgがλg/2の第7アンテナ素子である。
符号16hは短絡ライン、符号16iは給電ライン、符号16jはグランド板(アース)である。
本図10(B)に見られるごとく、アンテナ素子16aに対応する波長λaから、アンテナ素子16gに対応する波長λgまでの間に、7個のアンテナ素子の同調周波数帯が互いに重なって、極端に広い同調周波数帯が形成されている。
【0055】
【発明の効果】
以上に本発明の実施形態を挙げてその構成,作用を明らかならしめたように、請求項1の発明方法によると、
きわめて広い周波数帯域の中で、任意の周波数(波長)に共振することができる。すなわち、任意の周波数の電波を送受信することができる。
その上、アンテナ装置全部が小形,軽量であって材料コストが低廉であり、小形(特に薄型)であるから、装着対象機器の外観に現れず、その意匠的価値を損なう虞れが無い。
しかも、装着対象機器の無線回路に対する電気的な接続が容易で組付け作業性が良い。
さらに、X軸方向に関して優れた双方向性を有していて、例えば無線LANを構成するに適している。
この請求項1に係るアンテナ装置は、公知の基板の導通パターン形成技術を適用して、総べての構成部材(多数のアンテナ素子・短絡ライン・給電ライン・グランド)を一挙に製作することができる。このため、製造時の加工コストが低廉であるのみならず、大量生産した場合に製品の品質が均一である。
特記すべき効果は、フレキシブルな多周波変形T形アンテナ装置をパーソナルコンピュータに対して迅速かつ容易に設置することができることである。すなわち、格別に高度な知識や熟練を必要とせずに、機械的な装着と電気的な接続とを単一の工程で遂行できる。
しかも、パーソナルコンピュータに多周波変形T形アンテナを設置した状態で該アンテナ装置が外観に現れず、意匠的価値を損なう虞れが無い。
また、装着されたアンテナ装置がパーソナルコンピュータの外形輪郭から突出していないので、過って引っかけたり、外部障害物の衝突を受けて破損したりする虞れが無く、安全性が高い。
その上、収納のために伸縮させたり回動させたりする構造ではないので、使用開始や終了に際して手動操作を必要としない。このため、使用者が煩わしさを感じないだけでなく、時間的なロスを生じない。かつ、同様の理由により、誤操作によってアンテナ性能が低下したり、収納機構部分を破損させたりする危険性が皆無である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多周波変形T型アンテナの1実施形態を示す平面図であって、読図に便なるごとく、平面状の導電性部材に斑点を付するとともに、フィルムの輪郭を鎖線で描いてある。
【図2】本発明を適用して構成した3バンドアンテナの1例を模式的に描いた平面図である。
【図3】本発明に係る多周波アンテナの1実施形態の模式的な側面図であって、1部分を破断して描いてある。
【図4】前掲の図1および図3に示した実施形態に係る多周波アンテナをパーソナルコンピュータのダイカスト筺体に装着した状態を模式的に描いた部分破断側面図である。
【図5】前掲の図4に示した多周波変形T形アンテナを装着されたパーソナルコンピュータの全体的な外観斜視図に、アンテナ指向性を説明するための方位角度を付記した図である。
【図6】前掲の図1と異なる実施形態の多周波変形T形アンテナを示す模式的な平面図である。
【図7】前掲の図1に示した実施形態に係る2周波変形T形アンテナのVSWR図である。
【図8】前掲の図1の実施形態に係る2周波変形T形アンテナの、2.45GHz、および、その近傍における指向特性図表に利得値を付記した図表であって、方位角度は前掲の図5に付記した角度に合わせてある。
【図9】前掲の図1の実施形態に係る2周波変形T形アンテナの、5.2GHz、および、その近傍における指向特性図表に利得値を付記した図表であって、方位角度は前掲の図5に付記した角度に合わせてある。
【図10】前記いずれの実施形態とも異なる実施形態を示し、(A)は模式的な平面図、(B)はVSWR図である。
【図11】パーソナルコンピュータに装着するアンテナの公知例3個を描いた概要的な斜視図である。
【符号の説明】
0…ゼロオーム点、1…第1アンテナ素子、2…第2アンテナ素子、3…第nアンテナ素子、4…短絡ライン、5…グランド、6…給電ライン、7…同軸ケーブル、7a…中心導体、7b…外部導体、7c…同軸コネクタ、8…グランド板、9…フィルム、10…銅箔またはフレキシブル基板、12a,12b…ハンダ付、13…ベース取付板、14…パーソナルコンピュータ、14a…液晶ディスプレー,14b…当て板,14c…ダイカスト筺体、14d…プラスチック枠板、15…多周波変形T形アンテナ、16…広帯域変形T形アンテナ、17…折畳み形アンテナ、18…アンテナ付PCカード、19…テレスコピックなロッドアンテナ。
Claims (1)
- 異なる周波数を有する複数種類の電波を送受信するアンテナにおいて、
直交座標X,Yを想定し、
電気的長さL1=λ1/2の第1アンテナ素子(1)が、その長手方向をX軸と平行ならしめるとともに、その長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめて配置されており、
電気的長さL2=λ2/2の第2アンテナ素子(2)が、その長手方向をX軸と平行ならしめるとともに、その長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめて配置されており、
電気的長さLn=λn/2の第nアンテナ素子(3)が、その長手方向をX軸と平行ならしめるとともに、その長手方向の中央の点をY軸上に位置せしめて配置されており、
かつ、上記複数個のアンテナ素子(1〜3)それぞれの長手方向の中央に位置する「インピーダンス0の点」が、相互に「Y軸方向の短絡ライン(4)」によって接続導通されるとともに、
上記短絡ライン(4)の1端がグランド(5)に接地されており、
さらに、前記複数個のアンテナ素子(1〜3)それぞれについて、前記インピーダンス0の点から少し離れて2箇所に存在する「インピーダンス50Ωの点(50)」の何れか片方に、給電ライン(6)が接続導通されていて、
上記給電ライン(6)とグランド(5)とに同軸ケーブルを接続し得るようになっていて、
複数のアンテナ素子(1,2)、短絡ライン(4)、給電ライン(6)、およびグランド板(8)が、フレキシブル基板上の導通パターンによって構成されるとともに、これらの構成部分が電気絶縁性の柔軟なフイルム(9)によってパックされており、
かつ、同軸ケーブル(7)の中心導体(7a)が上記のフイルム(9)を貫通して前記給電ライン(6)に接続されるとともに、
該同軸ケーブルの外部導体(7b)が、前記フイルムを貫通して前記グランド板(8)に接続導通されていて、
これらの構成部材が相互に結合されて1個のアンテナ装置アッセンブリを形成しており、
フレキシブル基板上の導通パターンとして形成され、フイルム(9)でパックされたグランド板(8)が、
パーソナルコンピュータの導電性の筺体(14c)と、
液晶ディスプレー(14a)の背面に設けられている導電性の当て板(14b)との間に挟みつけられて、前記グランド板(8)が、これよりも広い導電性部材に対して静電的に結合されていることを特徴とする、多周波変形T型アンテナ。
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