JP4346781B2 - 車両用空気調和装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に搭載される車両用空気調和装置に係り、特に、補助暖房運転に用いて好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、低温低圧のガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒(ホットガス)を送出する圧縮機と、高温高圧のガス冷媒を凝縮させて高温高圧の液冷媒とする熱交換器(コンデンサ)と、高温高圧の液冷媒を減圧・膨張させて低温低圧の液冷媒(霧状)とする絞り機構と、低温低圧の液冷媒を気化させて低温低圧のガス冷媒とする熱交換器(エバポレータ)とを冷媒流路で接続して形成される冷凍サイクルを用いた車両用空気調和装置が知られている。この冷凍サイクルは、通常の車両用空調装置において、冷房及び除湿を行うための冷却装置として使用されている。
また、暖房装置としては、車両走行用エンジン(内燃機関)の廃熱を利用した熱交換器(ヒータコア)が一般的に使用されている。この場合の廃熱は、エンジンを冷却することで加熱され、温水となったエンジン冷却水の熱を利用するものであり、温水ヒータとも呼ばれている。
【0003】
このような車両用空気調和装置では、冷房及び除湿を行う冷却能力を備えたエバポレータと、暖房を行う加熱能力を備えたヒータコアとが空調空気の流路内、たとえばHVAC(Heating, Ventilation, and Air-Conditioning)ユニット内に直列に配置されており、ダンパ等により空調する空気の流路を切り換えて、冷房運転、暖房運転及び除湿暖房運転等を実施することができる。
また、内燃機関の廃熱を利用した暖房装置では、近年におけるエンジンの高効率化に伴い廃熱量が減る傾向にあるため、十分な暖房能力が得にくかったり、あるいは、運転開始直後にはエンジン冷却水の温度が低く、ある程度温度上昇するまでは暖房運転を実施できないという問題がある。
【0004】
上述した問題を解決するため、主暖房装置として温水ヒータ等を用いている従来の車両用空気調和装置においては、主暖房装置の暖房能力を補う補助暖房装置として、電気ヒータ、燃焼ヒータ及びヒートポンプ等を利用するものが公知である。
また、このような補助暖房装置の公知技術に代えて、冷凍サイクル中のホットガス、すなわち冷媒圧縮機から送出される高温高圧のガス冷媒をエバポレータに導いて利用するものがあり、たとえば図3に示すように、シンプルかつ安価な回路構成の車両用空気調和装置が提案されている。
【0005】
この回路構成では、冷媒回路10に接続されたエバポレータ3と主暖房装置の温水ヒータ21とがHVACユニット20内に直列に配置されている。そして、冷媒回路10は、冷媒圧縮機1と、冷媒圧縮機の吐出側に接続されるコンデンサ2と、冷媒圧縮機の吸入側に接続されるエバポレータ3と、四方弁5とを具備して構成されている。四方弁5の各接続口は、第1ポート5aを冷媒圧縮機1の吐出側に、第2ポート5bをコンデンサ2の冷媒入口2aに、第3ポート5cをコンデンサ2の冷媒出口5cに、第4ポート5dをエバポレータ3の冷媒入口3aにそれぞれ接続してある。
また、コンデンサ2の冷媒出口2bと四方弁5の第3ポート5cとの間には第1絞り機構6が、さらに、四方弁5の第4ポート5dとエバポレータ3の冷媒入口3aとの間には第2絞り機構7が、それぞれ設けられている。
【0006】
このような回路構成とした車両用空気調和装置では、四方弁5を操作することにより冷媒の流路を切り換えることができ、冷媒圧縮機1から送出される高温高圧のガス冷媒(ホットガス)をコンデンサ2に導く冷房運転モードと、冷媒圧縮機1から送出されるホットガスをエバポレータ3に導く補助暖房運転モードとの選択切換が可能である。
一方の冷房運転モードにおいては、図中に破線で示すように、四方弁5内の流路は第1ポート5aと第2ポート5b及び第3ポート5cと第4ポート5dとが連通し、冷媒圧縮機1から送出されたホットガスはコンデンサ2、四方弁5及びエバポレータ3の順に流れるようになっている。
他方の補助暖房モードにおいては、図中に実線で示すように、四方弁5内の流路は第1ポート5aと第4ポート5d及び第2ポート5bと第3ポート5cとが連通し、冷媒圧縮機1から送出されたホットガスはコンデンサ2をバイパスしてエバポレータ3へ流れる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術においては、補助暖房運転モードで冷媒量の調整が十分にできないため、冷媒圧縮機がガスローまたはオーバーチャージの状態で運転される可能性がある。これは、冷媒圧縮機1から送出されるホットガスをエバポレータ3へ流す冷媒回路が、四方弁5の第2ポート5b、コンデンサ2及び四方弁5の第3ポート5cを接続してなる閉回路と完全に分離されてしまうためである。従って、ガスローの状態となった時にコンデンサ2内の冷媒を補給したり、あるいは、オーバーチャージの状態となった時にコンデンサ2側へ冷媒を移動させるという冷媒容量の調整ができなかった。
このようなガスローまたはオーバーチャージの状態で冷媒圧縮機の運転を続けると、冷媒圧縮機自体にダメージを受けたり、圧縮性能の低下を招くという問題が生じることになるため、これを防止する対策が望まれる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、補助暖房運転モードにおける冷媒容量の調整を可能にした車両用空気調和装置の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
請求項1に記載の車両用空気調和装置は、冷媒系に接続されたエバポレータと主暖房装置とを空調空気の流路中に備え、前記冷媒系が、冷媒圧縮機と、該冷媒圧縮機の吐出側に接続されるコンデンサと、前記冷媒圧縮機の吸入側に接続されるエバポレータと、各接続口を前記冷媒圧縮機の吐出側、前記コンデンサの冷媒入口、前記コンデンサの冷媒出口、及び前記エバポレータの冷媒入口に接続した四方弁と、前記コンデンサの冷媒出口と前記四方弁との間に配置した第1の絞り機構と、前記四方弁と前記エバポレータの冷媒入口との間に配置した第2の絞り機構とを具備し、前記四方弁を操作して、前記冷媒圧縮機から送出される冷媒を前記コンデンサに導く冷房運転モードと、前記冷媒圧縮機から送出される冷媒を前記エバポレータに導く補助暖房運転モードとを切り換える車両用空気調和装置であって、
前記冷媒系に、前記冷媒圧縮機の吐出側から前記四方弁をバイパスして前記コンデンサの冷媒入口側に接続された第1のバイパス流路と、該第1のバイパス流路に設けられた第1の開閉弁と、前記コンデンサの冷媒出口側から前記第1の絞り機構、前記四方弁及び前記エバポレータをバイパスして前記冷媒圧縮機の吸入側に接続された第2のバイパス流路と、該第2のバイパス流路に設けられた第2の開閉弁及び逆止弁とを設けたことを特徴とするものである。
【0010】
このような車両用空気調和装置によれば、第1の開閉弁及び第2の開閉弁を開操作して第1のバイパス流路及び第2のバイパス流路を共に連通状態にすれば、コンデンサ内の冷媒をエバポレータ側へ追い出して補給することができ、また、第1の開閉弁を開操作して第1のバイパス流路を連通状態にすれば、コンデンサ内へ余分な冷媒を移動させることが可能になる。
【0011】
請求項2に記載の車両用空気調和装置は、冷媒系に接続されたエバポレータと主暖房装置とを空調空気の流路中に備え、前記冷媒系が、冷媒圧縮機と、該冷媒圧縮機の吐出側に接続されるコンデンサと、前記冷媒圧縮機の吸入側に接続されるエバポレータと、各接続口を前記冷媒圧縮機の吐出側、前記コンデンサの冷媒入口、前記コンデンサの冷媒出口、及び前記エバポレータの冷媒入口に接続した四方弁と、前記四方弁と前記エバポレータの冷媒入口との間に配置した電子膨張弁とを具備し、前記四方弁を操作して、前記冷媒圧縮機から送出される冷媒を前記コンデンサに導く冷房運転モードと、前記冷媒圧縮機から送出される冷媒を前記エバポレータに導く補助暖房運転モードとを切り換える車両用空気調和装置であって、
前記冷媒系に、前記冷媒圧縮機の吐出側から前記四方弁をバイパスして前記コンデンサの冷媒入口側に接続された第1のバイパス流路と、該第1のバイパス流路に設けられた第1の開閉弁と、前記コンデンサの冷媒出口側から前記四方弁及び前記エバポレータをバイパスして前記冷媒圧縮機の吸入側に接続された第2のバイパス流路と、該第2のバイパス流路に設けられた第2の開閉弁及び逆止弁とを設けたことを特徴とするものである。
【0012】
このような車両用空気調和装置によれば、第1の開閉弁及び第2の開閉弁を開操作して第1のバイパス流路及び第2のバイパス流路を共に連通状態にすれば、コンデンサ内の冷媒をエバポレータ側へ追い出して補給することができ、また、第1の開閉弁を開操作して第1のバイパス流路を連通状態にすれば、コンデンサ内へ余分な冷媒を移動させることが可能になる。
【0013】
上記請求項1及び2に記載の車両用空気調和装置においては、前記冷媒圧縮機の吸入圧力が所定値以下の低圧になった時、前記第1の開閉弁及び前記第2の開閉弁を所定時間開くように制御するのが好ましく、これにより、ガスロー時には第1のバイパス流路を通ってコンデンサへもホットガスが供給されるようになるため、コンデンサ内に溜まっていた冷媒が追い出されるようにして第2のバイパス流路を通りエバポレータ側へ補給される。従って、この補給により、ガスロー状態を解消することができる。
また、上記請求項1及び2に記載の車両用空気調和装置においては、前記冷媒圧縮機の吐出圧力が所定値以上の高圧になった時、前記第1の開閉弁を開くように制御するのが好ましく、これにより、オーバーチャージ時には第1のバイパス流路を通ってコンデンサへもホットガスが流れるようになり、しかも、コンデンサの冷媒出口側は閉じられているので、余分な冷媒をコンデンサ内に移動させ留ことができる。従って、余分な冷媒がコンデンサ内へ移動することで適正冷媒量に調整され、オーバーチャージの状態を解消することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る車両用空気調和装置の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に示す第1の実施形態において、図中の符号1は冷媒圧縮機、2はコンデンサ、3はエバポレータ、4はアキュムレータ、5は四方弁、6は第1膨張弁、7は第2膨張弁であり、これらの各機器を冷媒配管8で接続することにより、冷媒が状態変化して循環する冷凍サイクルの冷媒回路10Aを形成している。
また、この実施形態では、冷媒圧縮機1の駆動源として車両走行用のエンジンEが使用され、主暖房装置として、エンジンEの廃熱を利用した温水ヒータ(ヒータコア)21が採用されている。
【0015】
冷媒圧縮機1は、低温低圧のガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒(ホットガス)を送出するもので、エンジンEの出力軸とベルト22及び電磁クラッチ23を介して連結されている。冷媒圧縮機1の吐出側は、冷媒配管8により四方弁5の第1ポート5aと接続されている。
四方弁5の第2ポート5b及び第3ポート5cは、冷媒配管8によりそれぞれコンデンサ2の冷媒入口2a及び冷媒出口2bと接続されている。このコンデンサ2は、冷媒圧縮機1より供給される高温高圧のガス冷媒を空気との熱交換により凝縮させ、高温高圧の液冷媒として送出する機能を有している。なお、図中の符号9はコンデンサファンを示している。
【0016】
また、四方弁5の第4ポート5dは、冷媒配管8によりエバポレータ3の冷媒入口3aと接続されている。このエバポレータ3は、通常の冷房運転時においてコンデンサ2、絞り機構として設けた第1膨張弁6及び第2膨張弁7を通過した低温低圧の液冷媒の供給を受け、この液冷媒を空調空気との熱交換により気化させ、低温低圧のガス冷媒として送出する機能を有している。この結果、エバポレータ3を通過する空調空気は気化熱を奪われて冷却されるため、空調空気の冷房・除湿効果がえられる。
なお、エバポレータ3の冷媒出口3bは、冷媒配管8により冷媒圧縮機1の吸入側に接続され、同冷媒配管8の途中にはアキュムレータ4を設置して冷媒量の調整及び気液の分離を行っている。
【0017】
このように構成された冷媒回路10Aは、四方弁5を切換操作することにより、通常の冷房運転モード(破線表示)と補助暖房運転モード(実線表示)との切り換えが可能である。
冷房運転モードでは、四方弁5を通過する冷媒の流路は、破線で表示したように、第1ポート5aと第2ポート5bとの間及び第3ポート5cと第4ポート5dとの間がそれぞれ接続されているため、冷媒圧縮機1から送出された高温高圧のガス冷媒はコンデンサ2へ導かれる。
これに対して、補助暖房運転モードでは、四方弁5を通過する冷媒の流路は、実線で表示したように、第1ポート5aと第4ポート5dとの間及び第2ポート5b及び第3ポート5cとの間がそれぞれ接続された状態へと変化する。このため、冷媒圧縮機1から送出された高温高圧のガス冷媒は、コンデンサ2を通過することなくエバポレータ3へ向けて導かれる。エバポレータ3へ導入された高温高圧のガス冷媒(ホットガス)は、空調空気と熱交換して加熱するので、この場合のエバポレータ3は補助暖房装置として機能する。
【0018】
ところで、図示の実施形態においては、コンデンサ2の冷媒出口2bと四方弁5の第3ポート5cとの間を接続する冷媒配管8に第1の絞り機構として第1膨張弁6が設けられ、さらに、四方弁5の第4ポート5dとエバポレータ3の冷媒入口3aとの間を接続する冷媒配管8に第2の絞り機構として第2膨張弁7が設けられている。これら第1膨張弁6及び第2膨張弁7には固定絞りが使用されているが、可変絞りの使用も可能である。
一方の第1膨張弁6は、冷房運転モードにおいてコンデンサ2より送出された高温高圧の液冷媒が通過するものである。従って、この第1膨張弁6には、高温高圧の液冷媒を減圧膨張させ、低温低圧の液冷媒(霧状)として送出するよう設定された絞り開度のものが使用される。なお、冷房運転モードにおける第1膨張弁6は、後述する第2膨張弁7と直列に配置された状態にあるため、両者が協働して所望の機能を発揮するように設定すればよい。
また、第2膨張弁7は、主として補助暖房運転モードにおいて冷媒圧縮機1より送出された高温高圧のガス冷媒(ホットガス)を減圧する目的で設けられたものである。従って、この第2膨張弁7には、ホットガスを所定の圧力まで減圧するよう設定された絞り開度のものが用いられる。すなわち、通常の冷房運転では低温低圧の液冷媒が供給されるため、高い耐圧設計がなされていないエバポレータ3に作用する冷媒圧力を制限して保護する機能を有している。
【0019】
そして、冷媒圧縮機1の吐出側から四方弁5をバイパスしてコンデンサ2の冷媒入口2a側に接続された第1のバイパス流路11を設け、該第1のバイパス流路11には第1の開閉弁として第1電磁弁12を設置してある。また、コンデンサ2の冷媒出口2b側から四方弁5、第1膨張弁6、第2膨張弁7及びエバポレータ3をバイパスして冷媒圧縮機1の吸入側に接続された第2のバイパス流路13を設け、該第2のバイパス流路13には第2の開閉弁として第2電磁弁14及び逆止弁15を設けてある。なお、逆止弁15は、補助暖房運転モード時において、エバポレータ3を出たホットガスが第2電磁弁14及びコンデンサ2へ逆流するのを防止する目的で設置したものである。
上述した第1電磁弁12及び第2電磁弁14は、いずれも制御部16と接続されて開閉制御されるが、通常は閉状態となっている。この制御部16には、冷媒圧縮機1の吸入圧力を検出する吸入圧力センサ17と、冷媒圧縮機1の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ18とが接続され、冷媒圧縮機1の運転状況を監視している。
【0020】
上述したエバポレータ3は、HVACユニット20内において、空調空気の流れ方向上流側に温水ヒータ21と直列に配置されている。このHVACユニット20は、エバポレータ3、温水ヒータ21及び送風装置24の他にも、図示省略の内外気切換ダンパ、エアミックスダンパ、各種の吹出モードに応じて空調空気の吹出口を選択切換するダンパ類などを備えている。
温水ヒータ21は、エンジンEのエンジン冷却水系と温水配管25をもって接続され、該温水配管25の適所には開閉弁26が設けられている。この開閉弁26は、暖房運転等加熱を必要とする場合に開とされ、エンジンEを冷却することで高温となったエンジン冷却水を分流させて温水ヒータ21に導入するようになっている。こうして温水ヒータ21に導かれたエンジン冷却水は、温水ヒータ21を通過する空調空気と熱交換して加熱した後、再度エンジン冷却水系に戻される。
【0021】
上述した構成の車両用空気調和装置によれば、ホットガスをコンデンサ2に導く通常の冷房運転モードと、ホットガスをエバポレータに導いて補助暖房用の加熱装置として利用する補助暖房モードとの運転切換が四方弁5の操作のみで実施できる。
そして、補助暖房運転モードにおいて、吸入圧力センサ17が所定値以下の低圧を検出した時、すなわちガスロー状態と判断された場合には、制御部16は第1電磁弁12及び第2電磁弁14を開とする。この結果、冷媒圧縮機1から送出されたホットガスは第1のバイパス11を通ってコンデンサ2側へも流れるようになるため、同コンデンサ2内の冷媒は加熱されて気化し、第2のバイパス流路13を通って冷媒圧縮機1の吸入側へ合流する。従って、このような運転を所定時間続けることで冷媒量が補充され、ガスロー状態は解消して適正冷媒量での補助暖房運転を実施できるようになる。
【0022】
また、補助暖房運転モードにおいて、吐出圧力センサ18が所定値以上の高圧を検出した時、すなわちオーバーチャージ状態と判断された場合には、制御部16は第1電磁弁12のみを開とする。この結果、冷媒圧縮機1から送出されたホットガスは第1のバイパス11を通ってコンデンサ2側へも流れるようになるものの、第2のバイパス流路13が第2電磁弁14により閉じられているため、コンデンサ2内には冷媒が溜まることになる。従って、このような運転を続けることで冷媒圧縮機1で圧縮される冷媒量が低減され、オーバーチャージの状態は解消して適正冷媒量での補助暖房運転を実施できるようになる。
【0023】
続いて、本発明の第2の実施形態を図2に示して説明する。この実施形態が上述した第1の実施形態と異なるのは、電動機Mを駆動源とする電動の冷媒圧縮機1Aを採用したこと、そして、絞り機構として電子膨張弁7Aを採用したことである。なお、他の基本構成については実質的に同じであるため、ここでは図1と同じ符号を付して示し、その詳細な説明は省略する。
図示の例では、冷媒圧縮機1Aとして、車両走行用のエンジンEを駆動源とするものではなく、ケーシング内に電動機Mを内蔵した密閉型と呼ばれるものを採用している。この電動機Mは、制御部16及びインバータ制御部19によりインバータ制御されて回転速度が可変であり、従って、これを駆動源とする冷媒圧縮機1Aの運転(回転)速度及びこれに関連する圧縮機容量も可変である。
【0024】
また、電子膨張弁7Aは、四方弁5の第4ポート5dとエバポレータ3の冷媒入口3aとを接続する冷媒配管8に設置される。この電子膨張弁7Aは、制御部16から入力されるパルス信号に応じて絞り開度を可変制御でき、高温高圧の液冷媒から高温高圧のガス冷媒まで広範囲にわたる冷媒に使用可能な絞り機構である。このため、冷房運転モード及び補助暖房運転モードのいずれにおいてもひとつの電子膨張弁7Aで対応できるようになり、従って、第1の実施形態でコンデンサ2の冷媒出口2aと四方弁5の第3ポート5cとの間に設置した第1膨張弁6を廃止してなくすことができる。
【0025】
このように、インバータ制御の電動機Mを駆動源とする冷媒圧縮機1Aや電子膨張弁7Aを採用しても、シンプルで部品点数の少ない冷媒回路10Bの構成となり、ホットガスをコンデンサ2に導く通常の冷房運転モードと、ホットガスをエバポレータに導いて補助暖房用の加熱装置として利用する補助暖房モードとの運転切換が四方弁5の操作のみで実施できる。
また、インバータ制御の冷媒圧縮機1Aを使用したことで、同圧縮機より吐出される冷媒容量そのものをきめ細かく制御でき、また、電子膨張弁7Aを四方弁5の第4ポート5dとエバポレータ3の冷媒入口3aとの間に配置したので、補助暖房運転時においてホットガスを減圧してからエバポレータ3に供給できるようになり、従って、エバポレータ3の耐圧設計を従来通りの低い値に設定することができる。
【0026】
そして、このような構成の車両用空気調和装置10Bにおいても、第1のバイパス流路11、第1電磁弁12、第2のバイパス流路13、第2電磁弁14及び逆止弁15を設けたので、上述した第1の実施形態と同様にして、ガスロー状態やオーバーチャージ状態の冷媒量を適正量に戻して補助暖房運転を実施できるようになる。
【0027】
ところで、上記の電子膨張弁7Aについては、第1の実施形態に適用してエンジンEを駆動源とする冷媒圧縮機1と組み合わせる構成も可能であり、また、第2の実施形態においても、電子膨張弁7Aに代えて、固定絞りの第1膨張弁6及び第2膨張弁7を適用することも可能である。そして、第2の実施形態の電動機Mは必ずしもインバータ制御される必要はなく、さらに、冷媒圧縮機1Aは電動機Mをケーシング内に内蔵した密閉型に限定されず、たとえば横型の圧縮機を別体の電動機で駆動するようにしてもよい。
【0028】
なお、以上の実施形態では主暖房装置が温水ヒータ21であったが、上述した本発明は、電気ヒータや燃焼ヒータなど、他の暖房装置を主暖房装置として用いた車両用空気調和装置への適用が可能であり、また、主暖房装置とエバポレータ3とが水平方向に並ぶ構成のHVACユニット20だけでなく、上下方向に配置された構成のものにも適用可能なことはいうまでもない。
【0029】
【発明の効果】
上述した本発明の車両用空気調和装置によれば、四方弁による冷媒流路の切換操作で通常の冷房運転モードと補助暖房運転モードとを選択的に切り換えることができるシンプルな回路構成として、冷媒回路のホットガスを補助暖房に有効に利用して暖房能力を向上させることができ、しかも、補助暖房時におけるガスロー状態やオーバーチャージ状態を開閉弁を操作することで容易に解消することができる。このため、補助暖房運転時の冷媒量を適正に保つことで、冷媒圧縮機自体にダメージを受けるのを防止でき、また、圧縮性能の低下を防止することができるので、冷媒圧縮機及びこれを備えた車両用空気調和装置の耐久性や信頼性を向上させるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る車両用空気調和装置の一実施形態を示す図で、第1の実施形態を示す系統図である。
【図2】 本発明に係る車両用空気調和装置の一実施形態を示す図で、第2の実施形態を示す系統図である。
【図3】 従来の車両用空気調和装置の構成例を示す系統図である。
【符号の説明】
1,1A 冷媒圧縮機
2 コンデンサ
3 エバポレータ
4 アキュムレータ
5 四方弁
6 第1膨張弁(第1の絞り機構)
7 第2膨張弁(第2の絞り機構)
7A 電子膨張弁
8 冷媒配管
10A,10B 冷媒回路
11 第1のバイパス流路
12 第1電磁弁(第1の開閉弁)
13 第2のバイパス流路
14 第2電磁弁(第2の開閉弁)
15 逆止弁
16 制御部
17 吸入圧力センサ
18 吐出圧力センサ
19 インバータ制御部
20 HVACユニット
21 温水ヒータ(主暖房装置)
E エンジン
M 電動機
Claims (4)
- 冷媒系に接続されたエバポレータと主暖房装置とを空調空気の流路中に備え、前記冷媒系が、冷媒圧縮機と、該冷媒圧縮機の吐出側に接続されるコンデンサと、前記冷媒圧縮機の吸入側に接続されるエバポレータと、各接続口を前記冷媒圧縮機の吐出側、前記コンデンサの冷媒入口、前記コンデンサの冷媒出口、及び前記エバポレータの冷媒入口に接続した四方弁と、前記コンデンサの冷媒出口と前記四方弁との間に配置した第1の絞り機構と、前記四方弁と前記エバポレータの冷媒入口との間に配置した第2の絞り機構とを具備し、前記四方弁を操作して、前記冷媒圧縮機から送出される冷媒を前記コンデンサに導く冷房運転モードと、前記冷媒圧縮機から送出される冷媒を前記エバポレータに導く補助暖房運転モードとを切り換える車両用空気調和装置であって、
前記冷媒系に、前記冷媒圧縮機の吐出側から前記四方弁をバイパスして前記コンデンサの冷媒入口側に接続された第1のバイパス流路と、該第1のバイパス流路に設けられた第1の開閉弁と、前記コンデンサの冷媒出口側から前記第1の絞り機構、前記四方弁及び前記エバポレータをバイパスして前記冷媒圧縮機の吸入側に接続された第2のバイパス流路と、該第2のバイパス流路に設けられた第2の開閉弁及び逆止弁とを設けたことを特徴とする車両用空気調和装置。 - 冷媒系に接続されたエバポレータと主暖房装置とを空調空気の流路中に備え、前記冷媒系が、冷媒圧縮機と、該冷媒圧縮機の吐出側に接続されるコンデンサと、前記冷媒圧縮機の吸入側に接続されるエバポレータと、各接続口を前記冷媒圧縮機の吐出側、前記コンデンサの冷媒入口、前記コンデンサの冷媒出口、及び前記エバポレータの冷媒入口に接続した四方弁と、前記四方弁と前記エバポレータの冷媒入口との間に配置した電子膨張弁とを具備し、前記四方弁を操作して、前記冷媒圧縮機から送出される冷媒を前記コンデンサに導く冷房運転モードと、前記冷媒圧縮機から送出される冷媒を前記エバポレータに導く補助暖房運転モードとを切り換える車両用空気調和装置であって、
前記冷媒系に、前記冷媒圧縮機の吐出側から前記四方弁をバイパスして前記コンデンサの冷媒入口側に接続された第1のバイパス流路と、該第1のバイパス流路に設けられた第1の開閉弁と、前記コンデンサの冷媒出口側から前記四方弁及び前記エバポレータをバイパスして前記冷媒圧縮機の吸入側に接続された第2のバイパス流路と、該第2のバイパス流路に設けられた第2の開閉弁及び逆止弁とを設けたことを特徴とする車両用空気調和装置。 - 前記冷媒圧縮機の吸入圧力が所定値以下の低圧になった時、前記第1の開閉弁及び前記第2の開閉弁を所定時間開くように制御することを特徴とする請求項1または2記載の車両用空気調和装置。
- 前記冷媒圧縮機の吐出圧力が所定値以上の高圧になった時、前記第1の開閉弁を開くように制御することを特徴とする請求項1または2記載の車両用空気調和装置。
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