JP4346168B2 - 電線ヒューズにおける消弧部材の製造方法 - Google Patents

電線ヒューズにおける消弧部材の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は低圧配電線路の引込み線の途中に接続して使用する電線ヒューズにおける消弧部材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、前記のような引込み線の途中に接続して使用する電線ヒューズとして、大電流遮断部と小電流溶断部とからなるヒューズエレメントを透明の絶縁ケース内に外気と隔絶した状態で密閉収納し、而も上記ヒューズエレメントの大電流遮断部に該遮断部を覆うように消孤部材を付設した電線ヒューズが既に提案されている。
【0003】
この従来の電線ヒューズにおける遮断部に付設される消弧部材は、先ず用意した成形型内に一定の粒度の無機物を充填し、これに無機接着剤を混ぜ合わせ、さらに必要により水を加えて混ぜ合わせ、加熱硬化しておこし状に固形化して筒状で且つ通気性を有する消弧部材を作成する。次で、この作成した消弧部材をヒューズエレメントの大電流遮断部に挿通して該大電流遮断部を覆うように取り付けていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の消弧部材は、その消弧部材を形成するのに成形型を用意しなければならない問題があった。また、成形型から離型する場合に消弧部材が崩れ易い事があるほか、成形型から離型した後は、その消孤部材の外面がむき出しであるため、この消孤部材が作業時に何かに当たって欠けたり、大電流遮断部への取付け後に振動や衝撃が加わると比較的簡単に破損したりする等の問題があった。
【0005】
また、前記消弧部材を付設した電線ヒューズにおいては、大電流遮断の内、比較的小さな電流値で遮断する場合はアークやガスの発生も少なく、したがって遮断状態が視認し難いと言う問題があった。
【0006】
さらに、前記消弧部材を付設したヒューズは大電流遮断時に発生するアークやガスの放出方向について何ら配慮されていないため、消弧部材が取り付けられた近傍の絶縁ケースの内周面が放出したアークやガスによって汚損され、汚損による絶縁抵抗の低下により漏洩電流が流れ、焼損事故や感電事故を招いたりする問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明の目的は上記問題に対し充分対処可能な消弧部材の製造方法を提案するもので、大電流遮断部と小電流遮断部とを有するヒューズエレメントと、前記大電流遮断部における遮断部材の遮断部を覆う消弧部材と、前記大電流遮断部と小電流遮断部と消弧部材とを密閉収納する絶縁ケースとを有し、
前記消弧部材を絶縁容器と該絶縁容器内に収納した消弧体とで構成し、前記絶縁容器を小電流遮断部側が開口する筒状に形成した電線ヒューズにおける消弧部材の製造方法であって、
前記絶縁容器内に前記ヒューズエレメントを挿通取付けし、その後に、前記絶縁容器内に無機粒状物と無機接着剤を入れ、その後に、加熱或いは常温乾燥して、前記無機粒状物と無機接着剤とからなる固形化した消弧体として消弧部材を形成することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図5に基づき本願発明の実施例について説明する。
図1は本願発明の電線ヒューズ1を示すもので、この図において、2は大電流遮断部3と小電流溶断部4を直列接続した2要素からなるヒューズエレメントである。前記大電流領域を保護する大電流遮断部3は、遮断部材5と消孤部材6とからなる。遮断部材5は、図4に示すように中央の一部を細くした遮断部5aと、その両端をそれより太くした連結部5b,5b´とからなり、これは銅線等により形成されている。該遮断部材5の周りを覆うようにして配置される消弧部材6は、図5に示すように閉鎖する一端7cに挿通孔7aを形成し、他端に開口端7bを形成したカップ状で透明の合成樹脂製からなる絶縁容器7と、その開口端7b側から絶縁容器7内に充填したケイ砂、石英砂、水酸化アルミナ等の粒状の混合物或いはこれらの単独物からなる無機粒状物8とこれら容器7内の無機粒状物8を水ガラス等の無機接着剤9により固形化した消弧体10とから構成されている。
【0011】
なお、前記、消弧体10が収納される絶縁容器7は耐熱性を有する例えばポリカボネート樹脂等の透明の合成樹脂によりカップ状に形成されており、閉鎖する一端7cにはヒューズエレメント2に挿通取付けするための挿通孔7aが設けられ、また反対側の開口端7bは、容器内に収納された消弧体10の開口側端面10aよりさらにヒューズエレメント2に沿ってその軸線方向(小電流溶断部側の低融点合金が隠れない程度)に延長形成されている。
【0012】
また、前記小電流領域を保護する小電流遮断部4は、低融点合金11と導体棒12とからなり、低融点合金11はロウ付けにより、一端11aが導体棒12にまた他端11bが連結部5bに接合されている。13,14はヒューズエレメント2の両端、つまり導体棒12と遮断部の連結部5b´にそれぞれ圧着接続されたパイプ状の電線接続端子であり、接続後はその接続部の断面は六角形等の多角形となっている。
【0013】
15は前記電線接続端子13,14の先部を除いてヒューズエレメント2を気密的に被覆した筒状の絶縁ケースであり、内部のヒューズエレメント2の溶断、不溶断状態がケース外より視認できるように透明の熱可塑性樹脂、例えばポリカボネート樹脂により成形されている。
【0014】
絶縁ケース15はブロー成形により成形されるもので、その中空部15aの内周面15bが前記絶縁容器7の外周面7dに対し間隙gが形成されるよう該内周面の直径は絶縁容器7の外周面の直径より若干大きく形成されており、また、中空部15aに続く両端の接合部15cは成形時に内方に絞られて前記接続端子13,14の接続部の外周面13a,14aに密着固定される。該成形により絶縁ケース15とヒューズエレメント2とが一体化し、両者間の気密の確保と機械的強度の確保が同時に行われる。
【0015】
16は小電流溶断部4の低融点合金11の外周面に塗布した松脂等のフラックス、17は端子部分において電線接続端子13,14と絶縁ケース15間に充填したシリコーン等のシール剤、18は接続端子13,14に取脱自在に装着したゴム又または合成樹脂製の端子カバーを示す。
【0016】
前記の消弧部材6は次のようにして組立られる。
先ず、前記の接続端子13,14を接続していない前の状態の図2に示すようなヒューズエレメント2´を用意し、次で、図3に示すように、絶縁容器7を、その開口端7b側からヒューズエレメント2′に嵌め、その挿通孔7aに連結部5b′を挿入し絶縁容器7を挿通取り付けする。この場合、絶縁容器7の挿通孔7aの孔径と連結部5b´の直径は合致した径からなるため挿通取り付けした絶縁容器7は挿通後ヒューズエレメント2′に対してガタ付いたりしない。
【0017】
次いで絶縁容器7を取付けた状態でその開口端7bが上向きになるように連結部5b´を図示しない組立治具の支持穴に差込みヒューズエレメント2´を直立状態に保持する。この直立状態でフルイ等により粒度一定に調節した無機粒状物8、例えば、ケイ砂を絶縁容器7の開口端7a側から所定量充填する。この所定量とは、図3に示すように、無機粒状物8(消孤体10)の上面から絶縁容器7の開口端7b側が所定長延出する量に設定する。この延出した部分を延長部分7eとする。
【0018】
次で、前記の充填後、数十秒間加振する。加振後、容器内の無機粒状物8に対し無機接着剤9、例えば水ガラスを所定量注入し、加熱乾燥機に入れ百数十度の温度で30分間程度加熱して水分を飛ばす。なお、時間は長くなるが約1昼夜常温乾燥(硬化)してもよい。
【0019】
水分を飛ばして固形化した前記無機粒状物8と無機接着剤9からなる消弧体10は水ガラスの侵入度合(注入量)により開口側端面から閉鎖側に向かって徐々に硬化した状態になっており、硬化度合いは水ガラスの注入量により適宜変更できる。なお、絶縁容器内の消弧体10はその開口側端面10aが遮断部5aの最細径部5a´の少なくとも一部が露出する状態、つまり、絶縁容器に対し3分の1程度が未充填となるように形成(充填)されるもので、かかる最細径部5a´は小電流領域の電流値では溶断せず、また、変圧器等の突入電流でも溶断せず大電流領域における比較的小さな電流値で溶断するようになっている。
【0020】
なお、当然の事ながら最細径部5a´も遮断部5aの一部であり、短絡電流等の大電流遮断の際はかかる部分を含めて遮断部5aの全体(全長)が一挙に溶断気化(発弧)する。
図3は前記のようにして消弧部材6をエレメント2´に組付けた状態を示し、これを図1に示すように組み付ける。
【0021】
次に、前記ヒューズの溶断並びに遮断動作について説明する。
過負荷電流のような比較的小さな電流では小電流領域が動作する。つまり、過負荷電流がヒューズエレメント2に流れると低融点合金11が溶融離脱し、電路が開放する。この溶断状態は透明の絶縁ケース15を介して視認できる。
【0022】
また、短絡電流のような過大電流がヒューズエレメント2に流れると大電流遮断部の遮断部5aがその全長にわたって一挙に溶融気化しアークが発生する。このアークは遮断部5aを覆うように取付けた消弧体10の表面や内部に侵入しながら吸着や冷却されながらそのエネルギーは該絶縁容器7を含む消弧体10に奪われ消弧される。これにより電路が開放する。
【0023】
なお、前記大電流遮断の場合、消弧体10からは高温のガスやアークの一部が放出されるが、絶縁容器7の開口端7bが消孤体10の開口側端面10aよりもヒューズエレメント2の軸線方向に延長形成されているため、この延長部分7eがアークガイドとなり、ガスやアークを前方(小電流領域側)へ向かって放出する。このため消弧部材6の取付け付近の絶縁ケース15の内周面15b並びに後方の内周面15bが焼損したり汚損されたりせず、かかる部分において高い絶縁が確保されるため、遮断後に漏洩電流が流れることもなく安全性を高めることが可能となる。
【0024】
前記、大電流遮断は勿論のこと大電流遮断でも比較的小さな電流値の場合は遮断部5aの最細径部5a´にて溶断(遮断)するが、かかる場合には透明の絶縁ケース15及び透明の絶縁容器7を介して溶断或いは遮断状態が視認できるようになっている。
【0025】
【発明の効果】
本願発明の電線ヒューズは前記構成からなるもので、消弧体を作る場合、絶縁容器が成形型を兼用しているため、消弧体の材料を絶縁容器内に充填或いは注入するだけで成形型を必要とせず簡単に作れる。
【0026】
また、組立や運搬時等で取り扱う時にも絶縁容器が保護容器の役目をするため消弧体をうっかりぶっけても破損したり壊したりしない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施例示す電線ヒューズの断面図。
【図2】図1におけるヒューズエレメントを示す図。
【図3】図2のヒューズエレメントに消孤部材を取付けた状態を示す図。
【図4】図2におけるヒューズエレメントの遮断部の拡大図。
【図5】図1に示す絶縁容器の拡大断面図。
【符号の説明】
1 電線ヒューズ
2,2´ ヒューズエレメント
3 大電流遮断部
4 小電流溶断部
5 遮断部材
5a 遮断部
5a´ 最細径部
6 消弧部材
7 絶縁容器
7a 挿通孔
7b 開口端
7c 閉鎖側
8 無機粒状物
9 無機接着剤
10 消弧体
10a 開口側端面
15 絶縁ケース
15b 内周面

Claims (1)

  1. 大電流遮断部と小電流遮断部とを有するヒューズエレメントと、前記大電流遮断部における遮断部材の遮断部を覆う消弧部材と、前記大電流遮断部と小電流遮断部と消弧部材とを密閉収納する絶縁ケースとを有し、
    前記消弧部材を絶縁容器と該絶縁容器内に収納した消弧体とで構成し、前記絶縁容器を小電流遮断部側が開口する筒状に形成した電線ヒューズにおける消弧部材の製造方法であって、
    前記絶縁容器内に前記ヒューズエレメントを挿通取付けし、その後に、前記絶縁容器内に無機粒状物と無機接着剤を入れ、その後に、加熱或いは常温乾燥して、前記無機粒状物と無機接着剤とからなる固形化した消弧体として消弧部材を形成することを特徴とする電線ヒューズにおける消弧部材の製造方法。
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