JP4345316B2 - ガラス繊維シートおよびこれを用いた複合体組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ガラス繊維シート、これを用いた有機無機複合体組成物、および複合体組成物を用いた表示素子用基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、樹脂基板は軽量であることと可撓性や割れ難い性能であることから、回路用基板の分野だけでなく、液晶用表示素子や有機EL表示素子用の表示素子基板、カラーフィルター基板、太陽電池用基板などの分野にも検討されている。しかし、樹脂基板は線膨張係数が大きく、それが基板の反りなどの問題を引き起こすため線膨張係数の小さな樹脂基板が求められている。
樹脂基板の線膨張係数を低減するため、従来から樹脂とガラス繊維を織り込んだガラスクロスとの複合化が種々行われている。(例えば、特許文献1参照)しかし、ガラスクロスを使用した樹脂との複合体組成物は表面の凹凸が大きく、特に液晶用表示素子や有機EL表示素子用の表示素子基板、カラーフィルター基板、太陽電池用基板などの分野においては、表面平滑性が良好な複合体組成物が求められている。
【0003】
複合体組成物の表面の平滑性を向上させるためにはガラス繊維を織り込まない状態で樹脂と複合体組成物を形成することが重要である。ガラス繊維を織り込まないガラス繊維シートは表面の凹凸が少ないため、これと樹脂との複合体組成物もまた表面の平滑性が優れている。しかし、ガラス繊維を織り込まないガラス繊維シートは取り扱いが非常に困難であるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平05−064857号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、取り扱いが容易な中央部を織り込まないガラス繊維シートを提供すること、更にそのガラス繊維シートを用い、線膨張係数が小さく、表示素子用基板に応用が可能な表面平滑性が良好な複合体組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
(1)同一方向に並ぶガラス繊維の縦糸が近接又は隣接して敷き整えられたシート状の縦糸層と前記縦糸層の繊維軸方向と直交する方向にガラス繊維の横糸が近接又は隣接して敷き整えられたシート状の横糸層とが積層されている長尺ガラス繊維シートであって、両端部だけをクロス状に織りこみ、中央部は織り込まない長尺ガラス繊維シートと、樹脂とを複合した複合体組成物を形成し、前記ガラス繊維シートの中央部に相当する部分を切り出すことを特徴とする複合体組成物の製造方法、
である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は取り扱いが容易で中央部を織り込まないガラス繊維シートとそのガラス繊維シートを用いた複合体組成物に関するものである。本発明は例えば、液晶表示素子用基板、有機EL表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池基板などの光学シート、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路、LED封止材、回路用基板などの表示素子用基板に好適に用いることができる。
本発明に用いられるガラス繊維は、通常7〜13μmの単繊維を単繊維総本数200〜24000本程度束ねたガラスヤーンまたはガラスロービングを主に用いるが、これに限定されない。なおガラスヤーンとは単繊維を斜め方向に撚ったガラス繊維のことであり、ガラスロービングとは単繊維の束が全て直進方向のガラス繊維のことである。
ガラスクロスはガラス繊維を縦方向、横方向に織り込んでいるため、縦方向のガラス繊維と横方向のガラス繊維が交差する部分が表面の凹凸差として現れる。このガラスクロスと樹脂を複合して複合体組成物を製造した場合、ガラスクロス表面の凹凸差のある部分が、複合体組成物の表面に凹凸差として現れるため表面の平滑性は損なわれてしまう。この凹凸差は、例えば表面にさらに樹脂層を設けることで軽減されるが、一般に樹脂は硬化収縮があるため、樹脂層が厚い部分はへこみ、凹凸差が十分に解消されない。また、透明樹脂を用い、複合体組成物を表示素子用の透明基板として用いた時、ガラス繊維近傍での樹脂の配向や熱応力等によって繊維軸方向にリタデーションが発生し、ガラスクロスの繊維軸が打ち消されるようにガラス繊維が配列されていない部分では、表示素子としたときに、クロスニコルでの光漏れが生じてしまう。
【0008】
そこでガラス繊維を織り込まず、同一方向に並ぶガラス繊維の縦糸が近接又は隣接して敷き整えられたシート状の縦糸層と縦糸層の繊維軸方向と直交する方向にガラス繊維の横糸が近接又は隣接して敷き整えられたシート状の横糸層とが積層されているガラス繊維シートを用い、樹脂と複合させることにより、これらの問題を解決した複合体組成物を得ることができる。しかしながら、ガラス繊維を織り込まないものは、取り扱いが非常に困難であり、縦糸と横糸を直交させた状態を維持することができない。そのため、縦横の糸を中央部は織り込まず、左右の両端部だけをクロス状に織り込むことによって、縦糸と横糸を直交させた状態を維持した長尺のガラス繊維シートを得ることができる。複合体組成物を得るためには、続いて、樹脂を含浸・塗布、乾燥・硬化させればよく、こうする事によって、縦糸層と横糸層は樹脂により一体化され、縦糸と横糸を直交させた状態を維持した複合体組成物を製造することができる。
また、連続的に複合体組成物を製造しなくても、ガラス繊維シートの上下の部分も幅方向に樹脂で固定するか、クロス状に織り込むことで、枚葉のガラス繊維シートとして取り出すことができ、この場合には一般に行われるプレス成形によっても複合体組成物を製造することが可能である。
【0009】
上記の様にして得られるガラス繊維シートと複合させる樹脂については特に限定しないが、具体的にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シアネートエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で用いても複数を混合して用いても良い。また、必要に応じて、目的とする複合体組成物の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、フィラー等の充填剤等を含んでいても良い。
透明度の高いエポキシ樹脂及び硬化剤を用いることにより、回路用基板だけでなく、液晶表示素子用基板、有機EL表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池基板などの光学シート、透明板に使用することができる。
【0010】
ガラス繊維シートと樹脂の複合化方法についても特に限定しない。含浸しても、塗布しても良く、溶融させた状態の樹脂をスプレーで吹き付けても良く、樹脂をガラス繊維シートにラミネートしても構わない。また、樹脂は粉体の状態で取り扱っても良く、溶融させても、ワニス状にして取り扱っても構わない。
【0011】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すように、縦方向のガラス繊維(1)を、ガラスクロスを織る時と同様に一列に並べた。この時ガラス繊維シートの左右両端2cmの箇所は縦方向のガラス繊維(1)を、ガラスクロスを織る時と同様に、図4に示すヘルド(5)に通した。ガラス繊維シートの中央部のガラス繊維はヘルド(5)の位置より高い、もしくは低い位置の棒またはロール(7)に掛けておき、この棒またはロールの位置は固定しておいた。縦方向のガラス繊維(1)は全て櫛形状をしたドロッパ(8)に通し、縦方向のガラス繊維同志が重ならない様に調整した。図2に示す横方向のガラス繊維(3)は、図示しないが、ガラスクロスを織る時と同様にシャトルにより、(2)の空間部分に通した。この後、筏(6)で横糸と縦糸を矢印の方向に抑え、筏(6)を元の位置に戻した後、ヘルド(5)の位置を図5のように上下反転させ、図5(2)の空間部分にシャトルを戻した。以上のような操作を繰り返して、左右両端の箇所だけを織り込んだ本発明の長尺ガラス繊維シートを作製した。図2に、本発明の長尺ガラス繊維シートを横糸側から見た平面図を示す。また、図3は、本発明のガラス繊維シートの断面を示す図である。ガラス繊維はEガラス系ガラスヤーン(単繊維径:7μm、単繊維の総本数200本、ユニチカ社製)を使用した。
このガラス繊維シートにトリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業製TEPIC)90重量部、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製エピクロンEXA1514)10重量部、メチル水添無水ナジック酸(新日本理科製リカシッドHNA−100)170重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)2重量部を110℃にて溶融混合した樹脂を押し出し機にて樹脂温110℃にて押し出し、ダイス(4)から出てくる樹脂を連続的にガラス繊維シートに含浸させ、140℃と200℃の乾燥炉を通過させて、樹脂を硬化させた後、ロール状に巻き取った。こうしてできた複合体組成物から、ガラス繊維をクロス状に織り込んでいない部分を切り出して評価を行った。
【0012】
(実施例2)
実施例1と同様にして製造したガラス繊維シートの上下の部分を横方向に約幅2cm、アクリル樹脂にて固定した後、枚葉に切り出し、実施例1で使用した樹脂に浸漬してガラス繊維シートに含浸させ、脱泡した。さらに、これを離型処理したガラス板に挟み込んで、オーブン中、100℃にて2時間加熱後、さらに120℃にて2時間、150℃にて2時間、175℃にて2時間、複合体組成物を得た。こうしてできた複合体組成物から、ガラス繊維をクロス状に織り込んでいない部分を切り出して評価を行った。
【0013】
(比較例)
実施例と同じガラスヤーンを用い、通常の方法でガラスクロスを作成した。このガラスクロスは全ての面をクロス状に織り込んである。このガラスクロスを用いて、実施例2と同様にして、複合体組成物のサンプルを作製した。
【0014】
<評価>
(表面粗さ)
表面粗さ計〔(株)小坂研究所製SE−A4〕により、縦糸、横糸から45°方向のRzを測定して表面粗さとした。
(線膨張係数)
セイコー電子(株)製TMA/SS120C型熱応力歪測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から150℃まで上昇させた後、一旦0℃まで冷却し、再び1分間に5℃の割合で温度を上昇させて30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った。
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】
本発明の方法に従うと取り扱いが容易で中央部を織り込まないガラス繊維シートを得る事ができ、このガラス繊維シートを用いる事によって、線膨張係数が小さく、表面平滑性の良好な複合体組成物が得られる。このようにして得られた複合体組成物はガラス繊維の織り込んだ部分を含まないため、表面平滑性が優れ、線膨張係数が小さいため、表示素子用基板に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガラス繊維シートを縦糸側から見た平面図
【図2】本発明のガラス繊維シートを横糸側から見た平面図
【図3】本発明のガラス繊維シートの断面図
【図4】本発明のガラス繊維シートを製造するための織機における、糸の配置を示す図(手前側のヘルドが隣のヘルドよりも低い時を示す。)
【図5】本発明のガラス繊維シートを製造するための織機における、糸の配置を示す図(手前側のヘルドが隣のヘルドよりも高い時を示す。)
【符号の説明】
1 縦方向のガラス繊維
2 横糸を通す空間
3 横方向のガラス繊維
4 ダイス
5 ヘルド
6 筏
7 ロール
8 ドロッパ
Claims (1)
- 同一方向に並ぶガラス繊維の縦糸が近接又は隣接して敷き整えられたシート状の縦糸層と前記縦糸層の繊維軸方向と直交する方向にガラス繊維の横糸が近接又は隣接して敷き整えられたシート状の横糸層とが積層されている長尺ガラス繊維シートであって、両端部だけをクロス状に織りこみ、中央部は織り込まない長尺ガラス繊維シートと、樹脂とを複合した複合体組成物を形成し、前記ガラス繊維シートの中央部に相当する部分を切り出すことを特徴とする複合体組成物の製造方法。
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