JP4343312B2 - ピッチ系炭素繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はピッチ系炭素繊維、特に圧縮強度、引張弾性率等の機械的強度及び熱伝導率のいずれにも優れているピッチ系黒鉛繊維に関する。本発明にかかるピッチ系黒鉛繊維は、高い寸法安定性及び耐熱衝撃性の要求される宇宙用構造材料や電子部品の放熱用材料などとして用いるのに好適である。
【0002】
【従来の技術】
高性能の炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、ピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維に大別され、それぞれ、高比強度、高比弾性率という機械的性質を生かして、航空機用材料、スポーツ用品用材料、建築土木用材料等として広く用いられている。
【0003】
また、大きな温度差の下での寸法安定性及び耐熱衝撃性の要求される宇宙用材料や電子部品の放熱用材料等の用途では、上述の機械的性質に加え高い熱伝導率が要求され、この用途には黒鉛化処理を施した炭素繊維が用いられている。そして、かかる炭素繊維の熱伝導率を向上させるために多くの検討がなされてきた。
しかしながら、市販されているPAN系炭素繊維の熱伝導率は200W/mKよりも小さく不十分である。一方、ピッチ系黒鉛繊維は、一般にPAN系黒鉛繊維に比べて高熱伝導率を達成し易いとされているが、市販されているピッチ系炭素繊維の熱伝導率は通常700W/mKよりも小さい。
【0004】
そこで、この改善方法として、ピッチの軟化点、紡糸温度、焼成温度を規定することにより、熱伝導率が1000W/mKを超える高熱伝導率の黒鉛繊維を製造する方法が提案されている(米国特許第5266295号明細書、欧州特許第481762号公開公報、日本特許9−119024公開公報等)。
しかしながら、熱伝導率が1000W/mKを超えるような炭素繊維では一般に機械的強度が不十分である。その原因は黒鉛繊維を構成する黒鉛結晶の層面方向の拡がりLaが大きいことや、繊維断面にクラックを有する繊維が主成分となっていることが影響しているものと思われる。また、その機械的強度の問題により、そのハンドリング性が劣ることとなり、その結果、生産性が低下したり、繊維の一部断裂などに伴う物性低下を招くこととなる。また、米国特許第5721308号明細書には、熱伝導率が500〜1500W/mKの範囲を規定した特定の炭素繊維が提案されているものの、 具体的に開示された実施例の炭素繊維は、その機械的強度については良好であるが、熱伝導率が700W/m未満のものばかりである。
【0005】
以上のように、現実的には、熱伝導率と機械的特性とがバランスよく共に高いと言えるような炭素繊維がいまだ報告されているとは言い難い。熱伝導率が1000W/mKを超えるようなものは一部市販されていても、その生産性は低くコスト高であり、また、それ自身では十分な機械的強度を有さないために、熱伝導率200W/mKにも満たないPAN系炭素繊維との組み合わせで放熱板に加工されているのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年においては、集積回路の高密度化により放射性能(熱伝導性能)のより高い放熱板への期待が高まっている。かかる状況では、たとえ、熱伝導率が700〜1000W/mK程度の範囲であっても、導電性の高い金属材料の代表である銅の約2倍程度の熱伝導性を有することになるのであり、かかる熱伝導率を有し、且つ、機械的強度が十分な炭素繊維が存在すれば、それ単独で放熱板に加工することが可能となり、当該技術分野での飛躍的な進歩となる。従って本発明は、機械的強度と熱伝導率とが共に優れた炭素繊維を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく、炭素繊維の構造と熱伝導率あるいは機械的特性の関係などについて鋭意検討を行った。そして、繊維を構成する黒鉛結晶の層面方向の拡がりLaと繊維軸方向の配向角Ψの関係に特に注目し、これに対応する性質を有する炭素繊維の製造条件を検討していった結果、従来の炭素繊維とは物性的に十分区別できる全く新規な炭素繊維を見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明に係る黒鉛繊維は、繊維を構成する黒鉛結晶の層面方向の拡がりLaが1000オングストローム以下、繊維軸方向の配向角Ψが10°以下であり、且つ、下記の関係式(1)、(2)を満足することを特徴とするピッチ系炭素繊維である。
0.70La−46Ψ>50 ・・・ (1)
0.55La−76Ψ<500 ・・・ (2)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を更に詳細に説明する。本発明に係るピッチ系炭素繊維は、繊維を構成する黒鉛結晶の層面方向の拡がりLaと、繊維軸方向の配向角Ψとが上記の関係式(1)、(2)を同時に満足するものであるが、好ましくは、下記式(3)及び(4)を同時に満たすものである。
【0010】
0.70La−46Ψ>120 ・・・ (3)
0.55La−76Ψ<350 ・・・ (4)
関係式(2)から外れる炭素繊維は、熱伝導率はある程度高い値が期待できるが、機械的強度に劣り利用し難い。また、関係式(1)から外れる炭素繊維は、機械的強度は良好であるが、熱伝導率700W/mK以上のような高いものにはなりえない。
【0011】
また、本発明の炭素繊維は、黒鉛結晶の層面方向の拡がりLaが1000オングストローム以下、好ましくは900オングストローム以下であり、その繊維軸方向の配向角Ψが10°以下、好ましくは6°以下である。配向角Ψの下限は特に制限はないが、現実的には2°程度である。
Laが大きくなると一般に繊維の機械的強度が低下する。その主たる原因の一つは、ラジアルクラック型、すなわち繊維を樹脂に埋め込み、繊維の横断面を研磨したのちその面を顕微鏡下で観察したときに、本来は円形であるべき断面の一部が主として扇形に欠けている繊維が生成し易くなることによる。炭素繊維は通常は数百本〜数千本の繊維を集めて一体とした繊維トウの形で用いられるが、本発明にかかるピッチ系黒鉛繊維から成る黒鉛繊維トウに占めるラジアルクラック型の繊維の本数の割合は通常20%以下、好ましくは10%以下である。また、黒鉛繊維トウは通常、製織して織物にしたり、プリプレグにするため樹脂を含浸させる工程があり、強度が低いと糸が切れる等ハンドリング性が悪くなるため、黒鉛繊維トウの強度を高くするためにも、ラジアルクラック型の割合は低い方がよい。
【0012】
一方、Laが小さくなると一般に機械的強度が大きくなるが、熱伝導度が低下するという問題がある。そこで、本発明では、炭素繊維の配向角をできるだけ小さくすることにより、高い熱伝導率を維持した炭素繊維を見出した点に大きな特徴がある。なお、本発明の炭素繊維では、黒鉛結晶の層面方向の拡がりLcが通常300〜600オングストロームである。通常、結晶が大きくなるとLaとLcの両方が大きくなることになるが、本発明の炭素繊維では、上記のように結晶を大きくしないようにしつつ、配向角を小さく維持しているため、La/Lcが通常1.5未満となる。そして、本発明の炭素繊維で十分保証しうる物性として、引張り強度が330kg/mm2以上、圧縮強度が通常33kg/mm2以上である。また、熱伝導率は、通常700〜1000W/mKである。
【0013】
本発明者らの検討によれば、炭素繊維の熱伝導率は、繊維を構成する黒鉛結晶子の大きさ、及び黒鉛結晶子の繊維軸方向の配向度により支配され、これらが大きいほど熱伝導率は高くなる。黒鉛結晶子が大きいと熱伝導率が高くなるのは、黒鉛結晶子が大きいと、格子欠陥による電気及び熱のキャリアーの散乱が小さくなるので、その結果熱伝導率は高くなるものと考えられる。しかし、黒鉛結晶子が大きくなり過ぎると繊維の強度は低下する。また、黒鉛結晶子の繊維軸方向の配向度は、紡糸により得られたピッチ繊維におけるメソフェーズ領域の配向度により左右され、この配向度が高いほど最終的に得られる炭素繊維の黒鉛結晶子の繊維軸方向の配向度は高くなると解される。
【0014】
以上のような本発明の炭素繊維は、基本的にはピッチ系炭素繊維を製造する公知の方法に従って製造することができるが、製造の各段階において最終的に得られる黒鉛繊維の結晶が小さく、且つ、その繊維軸方向の配向度が高くなるように、その条件を選択することが必要となる。紡糸ピッチを調製するための炭素質原料としては、石炭系のコールタール、コールタールピッチ、石炭液化物、石油系の重質油、タール、ピッチ、または、ナフタレンやアントラセンの触媒反応による重合反応生成物等が用いられる。これらの炭素質原料には、フリーカーボン、未溶解石炭、灰分、触媒等の不純物が含まれているが、これらの不純物は、濾過、遠心分離、あるいは溶剤を使用する静置沈降分離等の周知の方法であらかじめ除去しておくべきである。これらの炭素質原料は、そのままで紡糸ピッチの調製に用いることもできるが、予め予備処理を施して物性を調整してから紡糸ピッチの調製に用いるのが好ましい。予備処理としては、加熱した後で溶剤抽出して可溶分を除去する方法、水素供与性溶剤の存在下に加熱する方法、水素ガスを用いて水添する方法などが挙げられる。
【0015】
これらの炭素質原料を、通常350〜500℃、好ましくは380〜450℃で熱処理すると紡糸ピッチが得られる。熱処理時間は数分〜数十時間であるが、5分〜5時間程度で所望の物性に到達させるのが好ましい。また、熱処理は窒素、アルゴン、水蒸気などの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましく、これらの不活性ガスを吹込みながら行ってもよい。
【0016】
熱処理により得られる紡糸ピッチは、光学的異方性組織の含有率が高いものがが好ましく、通常70%以上、好ましくは90%以上である。なお、ピッチの光学的異方性組織の割合は、常温下、偏光顕微鏡下でのピッチ中の光学的異方性を示す部分の面積割合として求めた値である。通常はピッチを数mm角に粉砕したものを、常法に従って2cm直径の樹脂の表面のほぼ全面に埋め込み、表面を研磨後、表面全体をくまなく偏光顕微鏡(100倍率)下で観察し、試料の全表面積に占める光学的異方性部分の面積の割合を測定することによって求める。
【0017】
紡糸は得られるピッチ繊維におけるメソフェーズ領域の配向度が高くなるように、ピッチのメトラー軟化点より40℃以上55℃以下の範囲で高い温度、特に45℃以上50℃以下の範囲で高い温度で行うのが望ましい。また、ピッチ繊維の繊維径を大きくすることによってもメソフェーズ領域の配向度を高くすることができる。ピッチ繊維の繊維径は通常10〜20μmであるが、好ましくは13〜18μmである。紡糸温度に到達したピッチは、例えば、孔径0.1mmのノズルの吐出孔から押し出され、その後、延伸されることによりピッチ繊維となる。メソフェーズは延伸により繊維軸方向に配向し、ピッチが固化するまで繊維軸方向に配向しようとするため、紡糸温度が低い、又は繊維径が細いとノズル孔から押し出されたピッチはすぐに固化してしまい、繊維軸方向に配向するための時間が短くなる。つまり、紡糸されたピッチ繊維の繊維軸方向の配向度は低い。また、繊維径が太すぎると延伸が不充分なピッチ繊維となり、繊維軸方向の配向度は低くなる。通常のピッチ繊維は、メトラー軟化点より40℃以下で高い温度のピッチを紡糸し、繊維径は直径12.5μm程度(黒鉛繊維の段階で9μm)であるが、本発明ではメトラー軟化点より40℃以上高い温度でピッチを紡糸し、ピッチ繊維の直径を通常より20%大きい15μm(黒鉛繊維の段階で11μm)にしているため、繊維軸方向の配向度の高いピッチ繊維を得ることができる。
【0018】
また、炭素繊維の組織構造、すなわちドメインが大きくなり過ぎると、黒鉛繊維の強度が低下するので、紡糸に際しては大きなドメインを有するピッチ繊維が生成しないようにすることが重要である。ピッチ繊維のドメインを小さくする一つの方法は、紡糸ノズル内に充てん物を設置して、ピッチの流れを乱すことである。この充てん物としては、例えば40〜2000メッシュ、好ましくは100〜1000メッシュのフィルターを用いることができる。また、金属やセラミックガラス等のビーズや、剪断濾過材として用いられるメタルパウダーなどを用いることもできる。
【0019】
紡糸により得られたピッチ繊維は、次いで常法に従って不融化及び炭化する。不融化は、ピッチ繊維を集束して得たピッチ繊維トウを、酸化性ガス雰囲気中で通常300〜380℃に加熱することにより行われる。炭化は得られた不融化繊維トウを、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、通常800℃以上に加熱することにより行われる。好ましくは得られる炭素繊維の炭素含有量が97%以上、特に99%以上となる温度に加熱する。これにより次の黒鉛化処理に際しての炭素繊維の炭素化収縮による寸法変化を極力抑制して小さくし、糸傷みによる繊維の強度低下を防止することができる。
【0020】
得られた炭素繊維トウには、常法により表面処理を施し、かつ、サイジング剤を添着する。添着量は繊維に対して通常0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%である。サイジング剤としてはエポキシ化合物、水溶性ポリアミド化合物、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど常用のものを、単独で又は混合して用いることができる。これらは通常は水、アルコール、グリコールなどの適宜の溶媒に溶解して用いられる。
【0021】
この炭素繊維トウを黒鉛ルツボに収容して焼成炉で加熱し、黒鉛化処理することにより本発明に係る炭素繊維が得られる。黒鉛ルツボとしては、焼成炉内の酸化性ガスなどがルツボ内に侵入して繊維と反応しないように、蓋付きの気密性の高いものを用いるのが好ましい。また、最終的に得られた黒鉛繊維を織物などとして用いる場合には、加工の容易な上述の炭素繊維の段階で織物などに加工しておくのが好ましい。黒鉛化処理は通常2500〜3500℃、好ましくは2800〜3300℃、最も好ましくは2900〜3100℃でである。黒鉛化処理に要する時間は、上記の温度で通常1時間以上、好ましくは4時間ないし30日である。黒鉛化処理に用いる加熱炉としては、生産効率の良いアチソン抵抗加熱炉が好ましい。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、黒鉛結晶子の積層厚みLc、黒鉛結晶の層面方向の拡がりLaは、日本学術振興会第117委員会で定められた「人造黒鉛の格子定数及び結晶子の大きさの測定法」(大谷杉郎等、「炭素繊維」(株)近代編集社発行(1986))P733〜740により、黒鉛の(002)回折線と(110)回折線から求めた。
【0023】
繊維軸方向の配向角Ψは、黒鉛繊維トウを繊維試料台に取り付け、回折角2θを(002)回折線の得られる角度に固定し、繊維軸方向−90°〜+90°で繊維試料台を回転させて得られる回折線から求めた。
熱伝導率は、黒鉛繊維とエポキシ樹脂とで一方向炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の円板(直径10mm、厚さ3〜6mm)を作成し、真空理工(株)製レーザーフラッシュ法熱定数測定装置TC−3000によって、このCFRPの比熱と熱拡散率を測定し、次式によって算出した。
【0024】
K=Cp・α・ρ/Vf
ここで、Kは黒鉛繊維の熱伝導率、CpはCFRPの比熱、αはCFRPの熱拡散率、ρはCFRPの密度、VfはCFRPに含まれる黒鉛繊維の体積分率を表す。円板の厚さは、繊維の熱伝導率に応じて変え、熱伝導率の大きい試料は厚く、小さい試料は薄くした。具体的には、レーザー照射後、試料背面の温度が上昇し、最高温度に到達するには数十msecを要するが、その際の温度上昇幅ΔTmの1/2だけ温度が上昇するまでの時間が10msec以上(最高15msec)となるように円板の厚さを調節した。比熱は、上記の円板を試料として用い、その全面に受光板としてグラッシーカーボンを貼付け、レーザー照射後の温度上昇を試料背面中央に接着したR熱電対によって測定することにより求めた。また、測定値は、サファイアを標準試料として校正した。熱拡散率は、試料の両面にカーボンスプレーによってちょうど表面が見えなくなるまで皮膜を付け、赤外線検出器によって、レーザー照射後の試料背面の温度変化を測定して求めた。
【0025】
圧縮強度はASTM D3410により測定した。この測定値は、炭素繊維の体積分率60%に換算した値である。
ストランド引張強度はJIS R 7601により測定して求めた値である。
ラジアルクラック型の黒鉛繊維の比率は、約4000本の繊維を樹脂に埋め込み、繊維の横断面を研磨したのち、顕微鏡(400倍)下で、繊維の断面形状を観察し、断面形状が実質的に円形である繊維を非ラジアルクラック型として算出した。
実施例1
コールタールピッチから、偏光顕微鏡下で観察した光学異方性組織の割合が100%で、メトラー法で求めた。軟化点が301℃のメソフェーズピッチを調製した。このメソフェーズピッチを、ノズルの吐出孔の孔径0.1mmで、ノズルの最細径部に500メッシュのフィルターを設置した孔数500の紡糸口金を4ケ用い、紡糸ノズルの吐出孔における紡糸温度349℃で紡糸して、糸径15μm、2000フィラメントのピッチ繊維のトウを得た。
【0026】
このピッチ繊維を不融化処理したのち、不活性ガス雰囲気中で最高温度2500℃まで昇温し、炭化(予備黒鉛化)した。このものの炭素含有量は99%以上であった。次いで表面処理した後、エポキシ系のサイジング剤を2%添加し炭素繊維トウを得た。この炭素繊維は、ストランド引張強度335kg/mm2であった。
【0027】
この炭素繊維を更に黒鉛製のボビンに巻き取り、これを黒鉛ルツボ中に入れ、アチソン抵抗加熱炉で3000℃で黒鉛化処理した。次いで、表面処理した後、エポキシ系のサイジング剤を2%添加し黒鉛繊維トウを得た。この黒鉛化処理された炭素繊維のLcは490オングストローム、Laは670オングストロームであり、Ψは5.1°であった。また、この黒鉛繊維の糸径は11μm、ストランド引張強度375kg/mm2、圧縮強度は35kg/mm2、ラジアルクラック型の炭素繊維の割合は7%、熱伝導率は830W/mKという高い値であった。
実施例2
メトラー法で求めた軟化点が302℃であるメソフェーズピッチを用い、紡糸ノズルの吐出孔における紡糸温度350℃で紡糸し、予備黒鉛化温度の最高温度を2240℃としたこと以外は実施例1と同様の製法により黒鉛繊維を得た。この黒鉛繊維の繊維径は11.2μm、ストランド強度378kg/mm2、熱伝導率810W/mKであった。この黒鉛繊維のLcは570オングストローム、Laは750オングストローム、Ψは5.1°であり請求項1の関係式を満たしていた。
実施例3
予備黒鉛化温度の最高温度を2200℃としたこと以外は実施例1と同様の製法により、ストランド強度は375kg/mm2、熱伝導率780W/mKである黒鉛繊維を得た。この黒鉛繊維のLcは430オングストローム、Laは640オングストローム、Ψは4.5°であり請求項1の関係式を満たしていた。
比較例1
メトラー法で求めた軟化点が302℃であるメソフェーズピッチを用い、紡糸ノズルの吐出孔における紡糸温度340℃で紡糸したこと以外は実施例1と同様にして、糸径12.5μm、2000フィラメントのピッチ繊維のトウを得た。
【0028】
このピッチ繊維を実施例1と同様に処理して炭素繊維トウを得た。この炭素繊維は、ストランド引張強度360kg/mm2であった。
この炭素繊維を、実施例1と同様にして黒鉛化処理し、表面処理及びサイジング剤添着を行ない炭素繊維トウを得た。この炭素繊維の糸径は9μm、ストランド引張強度390kg/mm2 、圧縮強度49kg/mm2、ラジアルクラックの型の炭素繊維の割合は3%であったが、Lcは320オングストローム、Laは510オングストローム、Ψは6.7°であって、0.7La−46Ψ=48であって、本発明で規定する条件を満たしておらず、熱伝導率は620W/mKにとどまった。
比較例2
メトラー法で求めた軟化点が302℃であるメソフェーズピッチを用い、紡糸口金(但し、ノズル孔の最細径部に設置した500メッシュのフィルターは除去した)を用い、紡糸温度を340℃としたこと以外は実施例1と同様にして糸径12.5μm、2000フィラメントのピッチ繊維トウを得た。
【0029】
このピッチ繊維を実施例1と同様にして不融化処理したのち、不活性ガス雰囲気中で最高温度2670℃まで昇温し、予備黒鉛化した。次いで実施例1と同様に処理し炭素繊維トウを得た。この炭素繊維は、ストランド引張強度260kg/mm2であった。
この炭素繊維を、実施例1と同様にして黒鉛化処理、表面処理、及びサイジング剤の添着を行ない、黒鉛繊維トウを得た。熱伝導率は900W/mKという高い値であったが、ラジアルクラック型黒鉛繊維の割合が95%を越えており、ストランド引張強度は300kg/mm2と低い値であった。Lcは940オングストローム、Laは940オングストローム、は維軸方向の配向角Ψは5.2°であり、この炭素繊維の糸径は10.8μmであった。
【0030】
【発明の効果】
本発明の炭素繊維は、熱伝導率が高く、且つ、強度や弾性率などの機械的特性にも優れている。該炭素繊維は、繊維トウ又は繊維織物の形で熱硬化性樹脂を含浸してプリプレグとし、耐熱性に優れた軽量かつ高強度の材料として各種の用途に供することができる。例えば熱伝導率が高いという特性を生かして、温度上昇が素子の破壊や効率の低下に直結するIC用基板や、太陽電池用基盤として好適に用いることができる。また、軽量、高強度及び高熱伝導性のいずれもが要求される宇宙機の太陽電池基盤としても好適に用いることができる。
Claims (6)
- 繊維を構成する黒鉛結晶の層面方向の拡がりLaが1000オングストローム以下、繊維軸方向の配向角Ψが10°以下であり、且つ、下記の関係式(1)、(2)を満足することを特徴とする熱伝導率が700〜1000W/mKであるピッチ系炭素繊維。
0.70La−46Ψ>50 ・・・ (1)
0.55La−76Ψ<500 ・・・ (2) - Laが900オングストローム以下、Ψが6°以下である請求項1のピッチ系炭素繊維。
- ピッチ系炭素繊維でトウを構成する際、繊維断面にクラックを有する繊維の割合が20%以下である請求項1又は2のピッチ系炭素繊維。
- 黒鉛結晶の層面方向の拡がりLcが300〜600オングストロームであり、La/Lcが1.5未満である請求項1〜3のいずれかのピッチ系炭素繊維。
- 下記の関係式(3)、(4)を満足する請求項1〜4のいずれかのピッチ系炭素繊維。
0.70La−46Ψ>120 ・・・ (3)
0.55La−76Ψ<350 ・・・ (4) - 引張り強度が330kg/mm2以上、圧縮強度が33kg/mm2以上である請求項1〜5のいずれかのピッチ系炭素繊維。
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