JP4338279B2 - 分離膜のリーク検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固液分離を行う分離膜のリーク検査方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、浄水処理、下排水処理、或いは産業排水の処理、発電、食品製造、薬品製造、電子部品製造等、様々な産業分野において、中空糸膜、平膜等の分離膜を配設した分離膜モジュールを用いて、固液分離を行う方法が広く行われている。
【0003】
この様な分離膜モジュールにおいては、その製造時或いはモジュールを使用に供する前に、配設された分離膜に欠陥が無いことを確認するため、リーク検査が行われる。
【0004】
この際、分離膜モジュールを液体に浸漬して分離膜を濡らした後、浸漬した液体中で分離膜のバブルポイント以下の圧力で、分離膜の二次側より空気が圧入される。
この時、分離膜が本来有する孔径よりも大きな孔があると、分離膜表面より気泡が漏洩するので、この気泡を検知することによりリークの有無を確認することができる。
なお、この様なリーク検査方法においては、前もって分離膜を液体により完全に濡らす必要があるため、浸漬させる液体には通常水溶性の有機溶剤が用いられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常、分離膜モジュールにおいては、分離膜がポッティング材により集水部に固定されており、分離膜を透過した処理液を前記集水部を介して引き抜くことで、固液分離が行われる。また、前述した分離膜モジュールは、その形態にもよるが、通常樹脂製のハウジング内に収納される。
前述したポッティング材としては、一般にウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が、また前記ハウジングや集水部には一般に、成形が容易で安価なことから、塩ビ樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂が用いられている。
【0006】
しかしながら、リーク検査を行う目的で分離膜モジュールを有機溶剤に浸漬させると、ポッティング材として用いられているウレタン樹脂、エポキシ樹脂が膨潤を起こすため、耐久性が低下するといった不都合を有する。また、ハウジング、集水部等に用いられる塩ビ樹脂、ABS樹脂等も、有機溶剤に浸漬した際に、いわゆるソルベントクラックが発生する場合がある。
【0007】
一方で、分離膜を有機溶剤に浸漬することなく水中に浸漬し、分離膜の二次側より気体を圧入すると、分離膜表面全体が完全に水に濡れないため、分離膜に欠陥がない場合でも、バブルポイントよりも低い圧力で、分離膜中の濡れていない部分から気体が漏出するため、リークの有無の判断ができない。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この様な不都合を解決するためになされたものであり、分離膜モジュールを構成する部材に影響を与えることなく、分離膜のリーク検査を行う方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨は、
分離膜モジュールをエタノール水溶液に浸漬した後、分離膜の二次側より分離膜のバブルポイント以下の圧力で気体を圧入することにより、分離膜のリークの有無を検査する方法であって、
検査対象の分離膜は、その表面と水との接触角φが135°未満である分離膜であり、
前記エタノール水溶液におけるエタノールの濃度X(vol%)が、式(1)を満足することを特徴とする分離膜のリーク検査方法にある。
60>X≧98/exp(1.2+cosφ) ・・・(1)
【0009】
分離膜モジュールをエタノール水溶液に浸漬した後、浸漬したエタノール水溶液中で分離膜の二次側より気体を圧入する構成とすると、時間効率に優れたリーク検査を行うことができる。
また、分離膜モジュールをエタノール水溶液に浸漬した後、この分離膜モジュールを取り出して水中に浸漬し、分離膜の二次側より気体を圧入する構成とすると、分離膜モジュールのエタノール水溶液中への浸漬時間が短縮され、構成部材への影響が更に低減される。
エタノール水溶液を用いると、分離膜モジュールへの影響が小さく好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。図1は、本発明のリーク検査方法の実施態様の一例を示す概略図である。
【0011】
まず容器1にエタノールの水溶液2を入れる。次いで、分離膜が配設された分離膜モジュール3が完全に水溶液2に浸漬するように、分離膜モジュールを容器1内に挿入する。
エタノール水溶液への浸漬時間は、1分〜1時間とすることが好ましい。浸漬時間が1分未満であると、分離膜の濡れが不十分となることがあり、1時間を超えると、構成部材への影響が発生する可能性が生じる。
更に好ましくは、浸漬時間を5〜30分とすると、リーク検査効率の観点からも好適である。
【0012】
ここで、エタノール水溶液におけるエタノール濃度X(vol%)は、下記式(1)を満たす濃度とする。
60>X≧98/exp(1.2+cosφ) ・・・(1)
ここでφは、分離膜表面と水との接触角(°)をいう。
なお、本発明の検査方法は、φが135°未満である分離膜に適用される。
【0013】
ここで、分離膜表面と水との接触角は、図2に示すように、水中に、中空糸膜、平膜等分離膜モジュールに配設する分離膜を概ね垂直に浸漬させた際に、膜表面と水との接触部分を写真撮影行うことにより測定することができる。
なお、測定に使用する水の温度は20℃±5℃とし、水に浸漬させてから5分後に膜表面と水との接触部分を観察するものとする。観察の際は膜及び水面が揺らぐことのないよう、静止状態にて観察を行うものとする。
【0014】
エタノールの濃度が、98/exp(1.2+cosφ)の値未満となると、分離膜を短時間の浸漬時間内で完全に濡らすことが困難となる。そして、分離膜が完全に濡れていないと、分離膜の二次側より気体を圧入した際に、分離膜に欠陥がない場合でも、完全に濡れていない部分より気体が漏出するためリークの有無を判断することができない。
【0015】
また、エタノールの濃度が60vol%以上となると、前述したごとく、分離膜膜モジュールを構成する部材のダメージが懸念される。
なお、分離膜表面と水との接触角が135°以上である分離膜は、疎水性が高く、エタノール濃度が60vol%以上であるエタノール水溶液への浸漬が必要となるため、本発明のリーク検査方法を適用できない。
【0016】
本発明で使用するエタノール水溶液は、安価であるとともに、分離膜モジュールの構成部材への影響が少なく、安全性が高く好ましい。
【0017】
また、本発明においては、分離膜をエタノール水溶液に浸漬させた後、分離膜の二次側より分離膜のバブルポイント以下の圧力で気体を圧入する。
なお、分離膜のバブルポイントとは日本工業規格JIS K 3832にて定められた方法で測定された圧力を指す。
【0018】
この際、エタノール水溶液に浸漬させた後、そのままの状態で、分離膜の二次側より加圧して、気泡の発生の有無を確認する構成とすると、時間効率に優れたリーク検査を行うことができる。但し、エタノール水溶液中に浸漬される時間が長くなるため、耐溶剤性の低いポッティング材やハウジングを用いた分離膜モジュールに配設された分離膜のリーク検査を行う場合にはこの方法は好ましくない。
【0019】
この様な場合、分離膜をエタノール水溶液に浸漬して分離膜を濡らした後、エタノール水溶液より取り出してこれを水中に浸漬して、分離膜の二次側より気体を圧入する構成とすると、エタノール水溶液中への浸漬時間を短くすることができる。
【0020】
分離膜の二次側に圧入する気体は、空気、酸素、窒素、炭酸ガス等任意の気体を用いることができる。また、気体の圧入は、コンプレッサー、ブロワー、ガスボンベ等の加圧源を用いて行うことができるが、加圧に際してはレギュレーター等の圧力調整可能な器具を用いて行うことが好ましい。
【0021】
気体の圧入は、分離膜のバブルポイント以下の圧力であれば、リークの有無を評価できるが、分離膜モジュールに負荷がかかることから、バブルポイントの60%以下の圧力で導入するのが好ましい。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
<実施例1>
エバール樹脂で親水化されたポリエチレン中空糸膜をスクリーン状に展開固定した中空糸膜モジュール(商品名:ステラポアL、三菱レイヨン(株)製;平均孔径0.1μm、バブルポイント180kPa、中空糸膜表面の水との接触角50°、ハウジング部材はABS樹脂、ポッテイング部材にはウレタン樹脂からなる)を用いて、以下の手順でリーク検査を行った。
(1)20vol%のエタノール水溶液中に中空糸膜モジュールを10分間浸漬する。
(2)前記エタノール水溶液中にて、コンプレッサーを用いて加圧した空気を、50kPaの圧力にて中空糸膜の二次側より圧入する。
その結果、中空糸膜の一次側より空気の漏洩は無く、リークが無いことが確認できた。
【0023】
また、リーク検査後の膜モジュールについて、下記の手順にて圧力耐久性試験を実施した。
(1)中空糸膜部分をポッテイング材にて封止した近傍より切り取り、さらに中空部分をウレタン樹脂にて封止した。
(2)ハウジングの濾過液取り出し口から、水を圧送して加圧した後、加圧を停止し、ハウジング或いはポッテイング部材が破壊されるまで加圧/停止を繰り返した。この際、加圧時の圧力は300kPa、加圧保持時間は5秒間、停止時間は5秒間とした。
その結果、表1に示すように、リーク検査を実施していない新品の中空糸膜モジュールとほぼ同等の耐久性を示した。
なお、本実施例において使用される中空糸膜に関して、式(1)の右項により算出される値は15.5である。
【0024】
【表1】
【0025】
<実施例2>
実施例1と同様の中空糸膜モジュールを用いて、以下の方法によりリーク検査を行った。
(1)20vol%のエタノール水溶液に中空糸膜モジュールを10分間浸漬する。
(2)エタノール水溶液より中空糸膜モジュールを取り出し、これを水中に浸漬させて、コンプレッサーを用いて加圧した空気を、50kPaの圧力にて中空糸膜の二次側より圧入した。
その結果、中空糸膜の一次側より空気の漏洩は無く、リークが無いことが確認できた。
また、リーク検査後の膜モジュールについて、実施例1と同様の方法にて圧力耐久性試験を実施したところ、表1に示すように、リーク検査を実施していない新品の中空糸膜モジュールとほぼ同等の耐久性を示した。
【0026】
<比較例1>
実施例1と同様の中空糸膜モジュールを用いて以下の方法でリーク検査を行った。
(1)10vol%エタノール水溶液中に中空糸膜モジュールを10分間浸漬した。
(2)前記エタノール水溶液中にて、コンプレッサーを用いて加圧した空気を、50kPaの圧力にて中空糸膜モジュールの二次側より圧入した。
その結果中空糸膜表面で気泡が漏洩したが、この中空糸モジュールについて実施例1記載の方法でリーク検査を行うと、気泡の漏洩は起こらず、リークが無いことが確認できた。
【0027】
<比較例2>
実施例1と同様の中空糸膜モジュールを用いて以下の方法でリーク検査を行った。
(1)100%エタノールに中空糸膜モジュールを10分間浸漬した。
(2)前記エタノール水溶液中にて、コンプレッサーを用いて加圧した空気を、50kPaの圧力にて中空糸膜モジュールの二次側より圧入した。
その結果気泡の漏洩は起こらず、リークが無いことが確認できたものの、リーク検査後の膜モジュールについて、実施例1と同様の方法にて圧力耐久性試験を実施したところ、表1に示すように、リーク検査を実施していない新品の中空糸膜モジュールと比較して耐久性が低下していた。
【0028】
【発明の効果】
本発明の分離膜のリーク検査方法によれば、分離膜モジュールが濃度の薄いエタノール水溶液中に浸漬されるので、分離膜モジュールを構成する部材にダメージを与えることなく、分離膜のリーク検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の分離膜のリーク検査方法の実施形態を示す概略図である。
【図2】 分離膜と水との接触角を測定する方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1:容器
2:エタノール水溶液
3:分離膜モジュール
Claims (3)
- 分離膜モジュールをエタノール水溶液に浸漬した後、この分離膜モジュールを取り出して水中に浸漬し、分離膜の二次側より分離膜のバブルポイント以下の圧力で気体を圧入することにより、分離膜のリークの有無を検査する方法であって、
検査対象の分離膜は、その表面と水との接触角φが135°未満である分離膜であり、前記エタノール水溶液におけるエタノールの濃度X(vol%)が、式(1)を満足することを特徴とする分離膜のリーク検査方法。
60>X≧98/exp(1.2+cosφ) ・・・(1) - 分離膜が親水化されたポリエチレン中空糸膜であることを特徴とする請求項1記載の分離膜のリーク検査方法。
- 分離膜と、ABS樹脂からなるハウジング部材と、ウレタン樹脂からなるポッティング部材とから構成される分離膜モジュールに適用することを特徴とする請求項1又は2記載の分離膜のリーク検査方法。
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