JP4337395B2 - プラスチック包装体及びその加飾方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック包装体及びその加飾方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックは、成形加工が容易であることから大量生産に適しており、また、透明性、耐衝撃性等、優れた物性を有しているため、ボトル容器、カップ、又はパウチ等の袋等の各種包装体に広く使用されている。
これらのプラスチック包装体には、例えば、ビールやサイダー等のように、光により劣化する内容物を保護する目的や、加飾によって美感を付与することにより、同類の商品との差別化を図る目的のため、着色が施されている。
【0003】
一般的に、プラスチック包装体の着色は、顔料や染料等の着色剤を、包装体の主材であるプラスチックに配合することによって行われている。これらの着色剤は、化学的発色機構によって発色している。
【0004】
化学的発色は、複数の波長域の光を包含している白色光が物体に入射したときに、ある特定の色を示す波長域の光を物体が吸収することにより発色する。例えば、図4(a)に示すように、物体が緑色を示す波長域の光を吸収した場合、反射光及び透過光として目に入射する光は、どちらも緑色の補色である赤色に見える。
物質が吸収する光の波長は、物質の化学構造により決定されるため、特定色の着色を施すためには、特定の化学物質を使用する必要がある。
【0005】
しかしながら、近年、環境負荷の観点から、化学物質の使用に対して多くの制限が課せられるようになり、化学物質の使用の削減が求められている。
また、埋立地の飽和や省資源化の観点から、樹脂のリサイクルが推進されているが、着色された包装体は再利用が難しく、特に、ペットボトルにおいては、再生材として処理される時点において無色であることが要求されている。
化学物質により着色されたプラスチック包装体は、その着色を消色することが困難であることから、リサイクル性に問題があり、市場において受け入れられなくなってきている。
【0006】
この対応として、例えば、包装体を着色されたラベルで覆うことによって加飾し、再生処理時においては、包装体本体とラベルを分離して処理することがなされている。
この方法では、包装体本体のリサイクル性は満たされるものの、ラベルについては、依然としてリサイクル性が悪いため問題となっている。
【0007】
ところで、自然界には、例えば、熱帯魚の鱗やモルフォ蝶のように、化学的発色機構によるものではなく、光の反射、干渉を利用した物理的発色機構によって発色するものがある。
物理的発色機構は、白色光が物体に入射したときに、ある特定の色を示す波長域の光が、物体上において回折、干渉、散乱等をすることにより発色する。例えば、図4(b)に示すように、物体が緑色を示す波長域の光を強く反射した場合、反射光として目に入射する光は、緑色に見える。逆に透過光は、緑色の補色である赤色に見える。
【0008】
この物理的発色機構による発色は、化学的発色機構と異なり、物質固有の性質によって光を発しているのではなく、光の入射面に一定の構造を形成することにより発色するものである。
【0009】
物理的発色機構を応用した発色法としては、例えば、屈折率の高い鱗片状薄膜を、容器表面の面方向に配向させるように含んだ層を、熱可塑性樹脂層の外層に設けることによって、有彩色を発する包装体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、この鱗片状薄膜として雲母チタン顔料等が多量に用いられており、依然としてリサイクル性に問題があった。
従って、リサイクル性が高く、優れた美感を付与できる加飾方法が求められている。
【0010】
【特許文献1】
特開平8−80928号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題に鑑み、物理的発色機構による加飾ができ、また、加飾を施してもリサイクルが容易であるプラスチック包装体及びその加飾方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明者らは、プラスチック包装体に、繊維状構造体を用いて、光学的特性の異なる部分を周期的に配列した構造を形成することによって、物理的発色機構による美感を有する着色が可能となること、また、この方法で加飾した包装体は、再処理工程における加熱によって、この周期配列構造を解除することができるため、容易に消色できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明の第一の態様によれば、プラスチック包装体の少なくとも一部の面に、繊維状構造体を用いて、この面と光学的特性の異なる部分が周期的に配列した構造を形成したプラスチック包装体が提供される。
本発明の第二の態様によれば、プラスチック包装体の少なくとも一部の面に、繊維状構造体を用いて、この面と光学的特性の異なる部分を周期的に配列した構造を形成することにより加飾をするプラスチック包装体の加飾方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
尚、本明細書において、「加飾」とは、包装体に有彩色の着色を施すことや、特定の波長域の光が包装体内部に透過しないように遮断すること等を含めた意味である。
本発明のプラスチック包装体は、物理的発色機構を応用して加飾する。即ち、プラスチック包装体の少なくとも一部の面に、繊維状構造体を用いて、この面と光学的特性の異なる部分を周期的に配列した構造を形成することで、光を干渉・回折させて発色させる。
【0015】
プラスチック包装体は、樹脂を主材とする包装体であり、例えば、ボトル、カップ、パウチ、チューブ容器等がある。
プラスチック包装体の「少なくとも一部」とは、包装体の一部又は全部を意味する。
プラスチック包装体の「面」とは、包装体を形成する面の表面又は面内部の一断面を意味する。即ち、繊維状構造体を用いた加飾には、繊維状構造体を、包装体を形成する表面に配置し加飾する場合や、肉厚部分に繊維状構造体を配合して加飾する場合を含む。
プラスチック包装体の「主材樹脂」とは、プラスチック包装体の各部分、例えば、内外層、中間層、接着層等を形成する樹脂を意味する。即ち、プラスチック包装体の強度を支える樹脂、気体バリヤー性、水分バリヤー性、気体吸収性、光制御性等の機能を有する機能性樹脂、多層包装体の各層を接着する機能を有する接着性樹脂等を含む。
【0016】
本発明で使用する繊維状構造体は、プラスチック包装体の主材樹脂と光学的特性の異なる部分を有している。光学的特性とは、例えば、屈折率、反射率、透過率、吸収率、偏光度等である。
繊維状構造体には、例えば、極細繊維,繊維内部に空洞部を有する繊維、海島構造の非相溶樹脂で構成された複合繊維等が使用できる。
図1に、繊維状構造体の例として、その径方向断面を示す。
(a)は、分割型の繊維状構造体1aの例であり、断面が扇形状部2と、ほぼ直線状部3から構成される。これら部分の光学的特性が、プラスチック包装体の面と異なっているため、光が屈折、干渉等して発色する。
(b)は、海島型の繊維状構造体1bの例であり、その断面は繊維外径の内部(海部4)に複数の極細繊維が島部5として含まれている構造となっている。この島部5を構成する極細繊維又は海部4の光学的特性が、プラスチック包装体の面と異なっているため、光が屈折、干渉等して発色する。
【0017】
光学的特性の異なる部分を周期的に配列した構造を形成するには、例えば、プラスチック包装体の面と屈折率が異なる樹脂を、繊維状構造体に使用する。例えば、図1(b)において、海部4には、プラスチック包装体の主材樹脂と同じ樹脂を使用し、島部5には、その樹脂と屈折率の異なる樹脂を使用して構成すればよい。このような樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又は上記樹脂を形成するモノマーの共重合体、シクロヘキサンジメタノールと上記樹脂を形成するモノマーとの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、接着性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド等の各種エンジニアリングプラスチック、カーボンナノチューブ等を組み合わせたものが考えられる。
【0018】
また、島部5を空洞部とし、海部4を樹脂により形成することによって、屈折率を変化させることもできる。この場合、空洞部分の屈折率は、空気と同じ数値(約1.0)を示し、樹脂部の屈折率(約1.3〜約1.5)と異なる。
【0019】
繊維状構造体によって形成される周期的配列構造は、発色させたい色又は遮光したい光の波長により定まる。例えば、図1(b)に示す、海島断面を有する繊維状構造体の場合、紫外領域から赤外線の光を遮光するには、島部の径は、0.1μm〜5μmが適正な範囲となる。また、可視光領域である0.4μm〜0.7μmの波長域の光に作用する配列周期を形成することにより、任意の色に着色することができる。
繊維状構造体の径は、加飾効果及び製造の観点から0.1μm〜200μmが好ましい。
【0020】
繊維状構造体によって形成される周期的配列構造の周期性は、必ずしも完全である必要はなく、一部に周期性の消失やバラツキ、周期的構造が不連続である等の欠陥があってもよく、全体として周期性が維持されていればよい。
【0021】
繊維状構造体を作製するためには、例えば、極細繊維の製造方法が適用できる。極細繊維の製造工程は、通常、海部の樹脂と島部の樹脂を別々に多層ダイから押し出す工程を含み、島部の形状、繊維径、配置状態は、島部の押し出しダイのノズル形状によって制御する。このノズル形状を適宜決めることにより、周期的に配列した構造を持つ極細繊維を製造することができる。
【0022】
続いて、上記の繊維状構造体を利用したプラスチック包装体の加飾方法について、プラスチックボトル容器に適用した例を説明する。
プラスチックボトル容器は、通常のボトル容器の成形手段により成形することができる。例えば、プリフォームを延伸ブロー成形することにより得ることができる。
【0023】
プラスチックボトル容器を形成するプラスチック材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又は上記樹脂を形成するモノマーの共重合体、シクロヘキサンジメタノールと上記樹脂を形成するモノマーとの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、接着性樹脂、又は、これらの樹脂あるいは他の樹脂とのブレンド物が好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート等のエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが好ましい。
【0024】
[第一の実施形態]
図2は、繊維状構造体を使用した加飾方法の第一の実施形態を説明するための図である。
本実施形態では、繊維状構造体をプラスチックボトル容器に繊維状構造体を巻きつけることにより加飾している。
図2では、プラスチックボトル容器10の胴部11に、繊維状構造体12を巻きつけてある。繊維状構造体12を巻きつけた部位では、繊維状構造体によって形成された光学的周期構造によって、光が干渉・反射等の現象をおこすため加飾が行える。
例えば、繊維状構造体として、図1(b)に示す海島構造の極細繊維を使用した場合、島部である極細繊維が胴部11周方向に、一定の間隔で巻き付いている構成となるため、海部と島部の周期的配列構造が形成される。
このとき、海部をプラスチックボトル容器10の主材樹脂と同じものとし、加熱によって、ボトル容器1に繊維状構造体12を融着させることにより、胴部11と繊維状構造体12を一体化することができる。
【0025】
[第二の実施形態]
本実施形態では、繊維状構造体又は繊維状構造体を面状体に加工したものを、プラスチックボトル容器の主材樹脂に配合し、容器の面に、繊維状構造体に含まれる光学的特性の異なる部分を、周期的に配列することにより加飾を行う。
繊維状構造体を面状体に加工したものには、例えば、不織布、織物等がある。
繊維状構造体又は繊維状構造体を面状体に加工したものは、プラスチックボトル容器の主材樹脂に配合され、一般的な方法、例えば、射出成形等によりプリフォームに加工される。
繊維状構造体の長さ及び面状体の大きさは、容器の製造工程に合わせて適宜調整する。
この繊維状構造体又は繊維状構造体を面状体に加工したものを含むプリフォームを、例えば、延伸ブロー成形することにより、加飾されたプラスチックボトル容器を得ることができる。
【0026】
本実施形態では、繊維状構造体に含まれているプラスチックボトル容器の面と光学特性の異なる部分が、プラスチック包装体の成形加工時における熱等によって溶融又は破壊されないようにする。
このためには、例えば、図1(b)に示す海島構造を有する極細繊維を使用し、ボトル容器の主材樹脂にポリエチレンテレフタレートを使用した場合、海部には主材と同じポリエチレンテレフタレートを使用し、島部を形成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートより融点の高い樹脂、例えば、ポリエチレンナフタレート、カーボンナノチューブ、ポリイミド等の各種エンジニアリングプラスリック等を使用する。
【0027】
このような繊維状構造体を使用すると、主材樹脂であるPETとの混合時において、海部であるPETは溶融し主材と一体化するものの、島部の極細繊維は溶融しない。従って、容器の面に、主材樹脂からなる部分と極細繊維(島部)からなる部分が、周期的に配列した構造を形成することができる。
【0028】
[第三の実施形態]
本実施形態では、島部が空洞部である繊維状構造体又は島部が空洞部である繊維状構造体を面状体に加工したものを、プラスチックボトル容器の主材樹脂に配合し、容器の面に、繊維状構造体に含まれる空洞部を周期的に配列することにより加飾を行う。
繊維状構造体又は繊維状構造体を面状体に加工したものは、プラスチックボトル容器の主材樹脂に配合され、一般的な方法、例えば、射出成形等によりプリフォームに加工される。
この繊維状構造体又は繊維状構造体を面状体に加工したものを含むプリフォームを、例えば、延伸ブロー成形することにより、加飾されたプラスチックボトル容器を得ることができる。
【0029】
ボトル容器の主材樹脂にポリエチレンテレフタレートを使用し、繊維状構造体の海部に主材と同じポリエチレンテレフタレートを使用した場合、このような繊維状構造体又は繊維状構造体を面状体に加工したものと主材樹脂であるPETとの混合時において、海部であるPETは溶融し主材のPETと一体化する。これにより、容器の面に、主材樹脂からなる部分と空洞部(島部)からなる部分が、周期的に配列した構造を形成することができる。
【0030】
[第四の実施形態]
図3は、繊維状構造体を使用した加飾方法の第四の実施形態を説明するための図である。
本実施形態では、繊維状構造体を面状体に加工したものを、プラスチック包装体に貼着することにより加飾している。
図3においては、プラスチックボトル容器1の胴面11に繊維状構造体からなる面状体22を貼付してある。
面状体としては、上記と同様に、繊維状構造体を不織布、織物等に加工したものを使用する。
【0031】
繊維状構造体からなる面状体22を貼付する方法としては、例えば、プラスチックボトル容器の成形時に、繊維状構造体からなる織物を金型内壁にインサートし、ヒートセット時の熱により、プラスチックボトル容器表層に貼付する方法や、プリフォームを圧縮成形によって成形するときに、繊維状構造体からなる織物を成形金型内にインサートし、圧縮圧力によって、プリフォームに貼付する方法がある。
【0032】
上記第一〜第四の実施形態の方法で加飾されたプラスチックボトル容器は、顔料や染料のような化学的発色による着色剤を使用していないため、化学物質の使用量を低減することができることから、環境負荷の小さい容器である。
また、プラスチック包装体の主材である樹脂と、同じ樹脂又は相溶性の高い樹脂からなる繊維状構造体を用いた場合は、リサイクル時の加熱、混練(再ペレット化)によって、容易に消色することができる。従って、容器として使用しているときは加飾がされているものの、再処理後においては無色・透明となるので、リサイクル性が非常によい。
さらに、化学的発色と異なり、深色と光沢を有する鮮やかな色調を得ることができるため、加飾効果による商品の差別化にも有効である。
【0033】
尚、上記の実施形態のように、成形したプラスチックボトル容器に加飾を施してもよいが、プリフォームに予め繊維状構造体による加飾を施してから、最終製品であるボトル容器に成形してもよい。
また、上記の実施形態の方法は、プラスチックボトル容器だけではなく、他の包装体にも適用できる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、物理的発色機構による加飾ができ、また、加飾を施してもリサイクルが容易であるプラスチック包装体及びその加飾方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる繊維状構造体の径方向断面を示す図であり、(a)は分割側の例、(b)は海島型の例を示す。
【図2】本発明の加飾方法の第一の実施形態を説明するための図である。
【図3】本発明の加飾方法の第四の実施形態を説明するための図である。
【図4】化学的発色機構と物理的発色機構を説明するための図であり、(a)は、化学的発色機構、(b)は、物理的発色機構を示す。
【符号の説明】
1a、1b 繊維状構造体
2 扇形状部
3 直線状部
4 海部
5 島部
10 プラスチックボトル容器
11 胴部
12 繊維状構造体
22 面状体
Claims (7)
- プラスチック包装体の少なくとも一部の面に、繊維状構造体を用いて、前記面と光学的特性の異なる部分が周期的に配列した構造を形成したプラスチック包装体。
- 前記光学的特性の異なる部分が、前記プラスチック包装体の面と、屈折率が異なる部分である請求項1に記載のプラスチック包装体。
- 前記光学的特性の異なる部分が、前記繊維状構造体の内部に形成した空洞部である請求項1に記載のプラスチック包装体。
- プラスチック包装体の少なくとも一部の面に、繊維状構造体を用いて、前記面と光学的特性の異なる部分を周期的に配列した構造を形成することにより加飾をするプラスチック包装体の加飾方法。
- 前記繊維状構造体を前記プラスチック包装体表層に巻きつけることよって加飾をする請求項4に記載のプラスチック包装体の加飾方法。
- 前記繊維状構造体を、前記プラスチック包装体を形成する樹脂に配合することによって加飾をする請求項4に記載のプラスチック包装体の加飾方法。
- 前記繊維状構造体を面状体に加工したもので、前記プラスチック包装体に加飾をする請求項4に記載のプラスチック包装体の加飾方法。
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