JP4337215B2 - 複写機の電波強度を評価する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受の回転時における電気抵抗を的確に評価することで、複写機の電波強度を評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気機器から漏れる電磁波の放射ノイズ(EME)を所定レベル以下に抑える必要がある。また、当該電気機器に使用される転がり軸受から放射ノイズが発生し、例えば、複写機やレーザプリンタにおいては、当該機器に使用されている転がり軸受からの放射ノイズが大きい場合には、複写画像や印刷画像を歪めたりするなどの画像悪化の一因となる。このため、軸受からの放射ノイズが、3m離れたところでキャッチされるノイズレベルを1m当たりに換算して、例えば30(dB/m)以下の低ノイズに抑えることが要求される。
【0003】
このようなことから、軸受からの放射ノイズを評価する必要がある。従来、軸受からの放射ノイズの評価のための電波試験は、電波ノイズが外部から入らない電波暗室内で軸受から発生する電波強度を測定することで行っている。
また、従来にあっては、内外輪間の電気抵抗値の平均値を求めることで、軸受内外輪と転動体との間の油膜厚さを推定し、その推定した油膜厚さによって、軸受内のグリースの劣化を診断する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような軸受からの放射ノイズの評価では、電波暗室内で電波強度を測定する必要があるなど、評価のための測定が大がかりとなりコストが高くなる。
また、従来における、内外輪間の電気抵抗値の測定は、アナログ式つまりサンプリング周波数が低く追従性の遅い測定系での測定であるために、変動する抵抗値の平均値を求めているにすぎず、膜厚の推定精度が良くなかった。またこのため、油膜厚さの変動による抵抗値の変化を考慮することができなかった。
【0005】
ここで、複写機などにあっては、感光ドラム部に使用する軸受の種類によって、かなり電波強度が異なることが知られており、これは、軸受内部を通過してアースされる電流の大小の違いであろうと思われる。したがって、電流の流れにくさを表す抵抗値と電波強度の大きさとは良好な相関があると考えられ、軸受における抵抗値を正確に求めることで、放射ノイズを評価することが可能になると本発明者らは考えた。
【0006】
しかしながら、上述の従来の抵抗値の測定を採用しても、追従性の遅い機器で測定していることから、抵抗値の平均値を求めるにとどまり、平均値が同程度の値でも、電波強度に違いのある現象を解明できなかった。つまり、従来の抵抗値評価では、軸受からの放射ノイズを評価するために使用できない。
本発明は、上記のようなことに鑑みてなされたもので、軸受からの放射ノイズ等を評価することが可能な、軸受の抵抗値評価方法を利用して、複写機の電波強度を評価する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、複写機の電波強度を評価する方法であって、
複写機の感光ドラムを支持する転がり軸受について内外輪間に定電圧を印加した状態で、軸受回転中の内外輪間の電気抵抗を、1ms以下のサンプリング時間間隔で連続的に測定し、その測定値に基づいて求めた、最大抵抗値、若しくは所定時間間隔当たりの測定値の変動回数によって、軸受の電気抵抗を評価することで、複写機の電波強度を評価することを特徴とするものである。
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記転がり軸受には、導電性グリースが封入されていることを特徴とするものである。
【0008】
上記「測定の変動回数」とは、所定閾値以上の測定値の時系列的な変化の波山の数をいう。
本発明者らは、鋭意研究の結果、1 ms以下というサンプリング時間間隔でデジタル的に測定した抵抗値に基づく、電気抵抗の最大値と、ある閾値を越える単位時間あたりの抵抗値の変動回数(波数)が、上述の放射ノイズ評価の善し悪しと大いに相関があることを発見した。すなわち、本発明のように、1ms以下のサンプリング時間間隔で測定した抵抗値の最大抵抗値、若しくは所定間隔当たりの測定値の変動回数が、軸受の抵抗値を的確に評価できるとの認識を得たことからなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明による評価方法によって、軸受の抵抗値が、精度良く相対評価可能となる。
ここで、測定の際に軸受に印加する電圧は35V以下、かつ、制限抵抗により軸受に流れる電流の最大値は200μA以下となるように設定するのが好ましい。上記印加電圧若しくは最大電流のどちらかが上記値を越えると、軸受軌道面や軸受材料自体に損傷をきたし、正確な測定ができなくなるおそれがあるからである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態で使用する抵抗値を測定する装置の概略構成図を示すものである。
図1中、符号1は、測定対象の転がり軸受を表し、その内輪1aに取付けられた軸部材2をモータ3によって回転駆動することによって、軸受1を回転するように構成されている。そして、内輪1aと一体となっている軸部材2と外輪1bとの間に、定電圧電源4によって、所定の定電圧が印加されると共に、当該定電圧電源4と並列に抵抗測定装置5が接続されている。
【0011】
抵抗測定装置5は、測定した電圧値(アナログ値)を、A/D変換回路6に出力する。A/D変換回路6は、予め設定されたサンプリング周期でデジタル値に変換し、当該変換したデジタル信号を演算処理装置7に出力する。本実施形態では、サンプリング周期として1000Hz(サンプリング時間間隔=1ms)に設定してある。
【0012】
演算処理装置7は、最大抵抗値演算部7Aと、閾値処理部7Bと、波数カウント部7Cとを備える。最大抵抗値演算部7Aは、入力したデジタル信号に基づき最大抵抗値を演算する。閾値処理部7Bは、図2に示すように、入力したデジタル信号について所定閾値で閾値処理を行い雑音を除去する。波数カウント部7Cは、閾値処理部7Bからのパルスカウントについて、図2(b)に示すように、経時的なパルス値の増減変化によって、所定時間単位毎の変動回数つまり波山の波数をカウントし、その単位時間当たりの波数の平均値を求める。例えば、図2(b)では、波数は4個となる。また演算処理装置7は、求めた最大抵抗値及び単位時間当たりの波数の平均値を表示装置8に出力する。
【0013】
本実施形態では、上記波数をカウントする単位時間を0.328秒に設定してある。
表示装置8は、ディスプレイなどから構成され、演算処理装置7が求めた最大抵抗値及び単位時間当たりの波数の平均値を表示する。
次に、上記構成の装置を使用した、転がり軸受1の抵抗値評価の方法について説明する。
【0014】
モータ3を駆動して軸部材2つまり内輪1aを所定回転速度で回転させた状態で、定電圧電源4から軸受1の内外輪1b間に所定の定電圧を印加する。このとき、内外輪1b間に電流が流れるが、スパーク等によって、電圧が変動する。その電圧が抵抗測定装置5で測定され、続いてA/D変換回路6によってデジタル値に変換され、そのデジタル信号に基づいて、演算処理装置7が、最大抵抗値及び、所定単位時間当たりの波数を求め、その値が表示装置8に表示される。
【0015】
このとき、本実施形態では、サンプリング周期を1000Hzにすることで有意な最大抵抗値及び波数が求められる。すなわち、対象とする軸受1の抵抗値について的確な相対評価が可能となり、その最大抵抗値若しくは波数に基づく抵抗値評価を行うことで、放射ノイズの正確な評価が行われる。
しかも、抵抗値によって放射ノイズの電波強度を正確に評価できるので、電波暗室で行う必要がなく、簡易つまり低コストで評価ができる。
【0016】
また、対象軸受1についての抵抗値について的確な相対評価が可能であることから、本発明に基づいて抵抗値を評価すれば、油膜厚さの推定精度も向上する。その結果、軸受1に封入したグリースの劣化診断の精度が向上する。また、油膜厚さの評価が正確に行えるため、長寿命となる潤滑油の評価についても正確且つ簡便に行える。
【0017】
なお、既知の油膜厚さでの抵抗値を予め測定しておき、当該測定との相対評価で対象軸受1の膜厚を推定すれば膜厚は求められる。
ここで、上記実施形態では、サンプリング周期として1000Hzを例示したが、これに限定されず、1000Hzよりも短くても構わない。要は、サンプリング時間間隔が1ms以下で有ればよい。
【0018】
また、波数をカウントする所定時間間隔も、0.328秒に限定されない。
また、上記最大抵抗値及び波数のカウントする装置構成例も上記構成に限定されるわけではない。
また、上記説明では、最大抵抗値及び波数の両方を求めているが、一方だけであっても良い。例えば波数だけから、軸受1の抵抗値について相対評価を行っても構わない。
【0019】
【実施例】
上記構成の装置を使用して、軸部材2の回転を100rpmとし、軸受に4.9Nのラジアル荷重のみを与え、また、封入するグリースの種類を変えた3種類の軸受A〜Cを用意して評価した。つまり、各軸受A〜Cについて、内外輪1b間の抵抗値及び波数を求めると共に、その各軸受A〜Cをそれぞれ複写機の感光ドラムに組み付けて、コピー機を稼働させたときの電波強度を測定した。
【0020】
ここで、軸受A〜Cは共に内径8mmφ、外径22mmφ、幅7mmの玉軸受である。また、グリースの封入量は共に0.1グラムであるが、軸受Cには、リチウム石けんを増ちょう剤とし基油を鉱油系とするグリースを使用し、軸受A及びBには、導電性グリースを使用した。すなわち、軸受Aには、軸受Cに封入するグリースに対してZn−DTP(ジチオリン酸亜鉛)を添加剤として3重量%添加したものを使用している。また、軸受Bには、軸受Cに封入するグリースに対して、Zn−DTP(ジチオリン酸亜鉛)とグラファイトとを混合してなる添加剤を3重量%添加したものを使用している。
【0021】
また、波数をカウントする単位時間は0.328秒としてある。
また、表1では、サンプリング周期を1000Hzとした場合であり、表2は、サンプリング周期を5000Hz(サンプリング間隔=0.2ms)とした場合であり、ともに本発明に基づくものである。また、表3は、サンプリング周期を500Hz(サンプリング間隔=2ms)とした場合であり、本発明外の場合である。
【0022】
また、放射ノイズ評価の電波試験では、30dB/m以下を良とした。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
表1〜表3から分かるように、本発明外である表3においては、最大抵抗値及び波数について、電波試験の結果の良否に関係なく、余り差がついていない。つまり、抵抗値の相対評価、さらには放射ノイズの評価が出来ないことが分かる。
これに対して、本願発明に基づく表1及び表2では、電波試験の結果と求めた最大抵抗値及び波数が対応していて、当該最大抵抗値若しくは波数によって軸受の放射ノイズについて正確に評価できることが分かる。すなわち、最大抵抗値及び波数が小さい方が、抵抗値が小さく、放射ノイズの電波強度が小さいと評価できる。
【0027】
また、表1及び表2において、最大抵抗値では有意な差はないものの、波数では、表2の場合、つまりサンプリング周波数が短く方がより確実に、抵抗値の相対評価、つまり放射ノイズの評価が可能となることが分かる。
このように、本発明に基づいた抵抗値の相対評価と、電波試験の良否と良い相関を示していることが分かる。
【0028】
したがって、この抵抗値の評価方法を用いれば、放射ノイズを抑えるために、軸受に封入するグリース、特に導電性をどのように付与すればよいかが正確に評価できる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の軸受の電気抵抗評価方法を使用した複写機の電波強度を評価する方法では、軸受の内外輪間の抵抗値を正確に相対評価できる。このため、軸受から発生する電磁波の放射ノイズの評価や軸受に封入されている油膜厚さの評価が、正確且つ簡易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る装置構成の概要図である。
【図2】演算処理装置を説明する図であって、(a)は抵抗値のデジタル表示及び位置値処理を説明する図であり、(b)は波数のカウント例を説明する図である。
【符号の説明】
1 転がり軸受
1a 内輪
1b 外輪
2 軸部材
3 モータ
4 定電圧電源
5 抵抗測定装置
6 A/D変換回路
7 演算処理装置
7A 最大抵抗値演算部
7B 閾値処理部
7C 波数カウント部
8 表示部
Claims (2)
- 複写機の電波強度を評価する方法であって、
複写機の感光ドラムを支持する転がり軸受について内外輪間に定電圧を印加した状態で、軸受回転中の内外輪間の電気抵抗を、1ms以下のサンプリング時間間隔で連続的に測定し、その測定値に基づいて求めた、最大抵抗値、若しくは所定時間間隔当たりの測定値の変動回数によって、軸受の電気抵抗を評価することで、複写機の電波強度を評価することを特徴とする複写機の電波強度を評価する方法。 - 上記転がり軸受には、導電性グリースが封入されていることを特徴とする請求項1に記載した複写機の電波強度を評価する方法。
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