JP4336753B2 - 超薄膜の作製方法 - Google Patents

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本発明は、非常に薄い膜厚領域においても島状に成長する薄膜の初期成長領域の発生を抑え、材料本来の特性をもつ薄膜の製造方法に関するもので、超薄膜から構成される多層膜デバイスや連続的な非常に滑らかな表面が必要な光機能性薄膜に応用できる。
巨大磁気抵抗素子GMRやトンネル結合磁気抵抗素子TMRなど超薄膜から構成される多層膜人工格子デバイスの各層間には、形態的にも組成的にも急峻な界面が求められる。しかしながら、従来の熱平衡的な膜堆積方法では、膜堆積粒子のエネルギーが小さいために、膜の初期成長過程は膜の下地となる材料の表面エネルギーと膜材料の表面エネルギーの関係によって、膜の成長は次の3種類に決まっていた。それは、(1)2次元的な膜成長:Frank−van der Merwe、(2)2次元と3次元的の中間的膜成長:Stranski−Krastanov、(3)3次元的:Volmer−Weberである。膜が金属の場合は、(3)の3次元的膜成長することが多く、その膜が非常に薄い場合、膜のほとんどは結晶性の劣悪な島状の構造を持っていることが多い。これは膜が島状に堆積するとき、あちらこちらで結晶の核となる部分ができ、それぞれの島状の結晶粒子がバラバラな方向に成長することが原因である。そのため、膜と基板との間に表面エネルギーの異なる材料を挿入し、膜の濡れ性を制御するためのバッファ層や、結晶の核成長を制御するための非常に薄いシード層などの積層化技術により、膜の成長を改善することが多かった。しかしながら、これらの材料の最適な組み合わせを見つけるには、非常に多くの実験的データが必要であるとともに、膜の層構造が非常に複雑になり、歩留まりが悪くなる問題があった。
特開平11−172429号公報 特開2000−329934号公報
そこでそれらの問題を解決するため、膜堆積中にイオン衝撃を加えながら膜を堆積させることで膜表面での堆積粒子の拡散状態を非平衡に変化させ膜表面を滑らかにする作製方法を考案したが、この方法で膜を層状に堆積させるためには膜表面で弱いスパッタ現象を起こす必要があり、イオンのエネルギー値として最低でも150eVの大きさが必要になった。その条件では、基板と膜の界面でイオンによる衝突現象が無視できなくなり、基板と膜の間にそれら両者の混合領域が発生した。そのためこの方法で膜を作製する場合は、滑らかな膜表面を作製することができるが、急峻な組成変化を実現することはできなかった。
上記問題点を解決するために、本発明は、膜堆積中でなく、20nm以下の厚みの膜を堆積させた後に低エネルギーのイオン衝撃により膜表面の形態を変化させることで、膜厚が非常に薄い場合でも初期成長領域の発生を抑えた滑らかな層状の表面と基板と膜との混合領域の発生を抑えた急峻な組成変化をもつ超薄膜が作製できることを特徴とする。
本発明は、膜堆積を行った後に150〜300eVのエネルギーを持つNeより重い希ガスのイオンを膜表面に膜の原子数と同程度以上衝撃させる機構を膜作製装置に具備することで、膜表面のあれた島状の部分を取り去るとともに、膜を原子オーダーで平坦にする膜表面の形態的効果とイオンのノックオン効果と熱スパイクによるアニール効果を利用した膜構造の緻密化効果によって、劣悪な特性を示す膜の初期成長領域の発生を抑制し、どの厚みの膜においても材料本来の特性を実現できる膜を作製するための方法である。そのため本発明では、膜堆積過程の表面粗さによる自己陰影効果は少なく、膜が厚い領域でも緻密な構造をもつ膜を作製することができる。
図1に膜堆積部とイオン衝撃部を持つ本発明の概要図を示す。膜堆積部16から堆積粒子1を放出させ基板3上にその膜2を堆積させる。その膜厚が20nmに達する前に膜堆積を終了し、その後、150〜300eVの範囲のエネルギーをもつNeより重い希ガスのイオンを衝撃させる。
図2から4は膜堆積時における膜表面の部分を拡大した概要図である。一般に、蒸着法などの堆積粒子のエネルギーが低い場合、その表面拡散は小さいために、基板に飛来した場所の近くの堆積粒子同士が結合し、図2の様な島状に成る傾向がある。そのため、従来の膜作製の技術では図2のように、基板材料の原子の表面エネルギーと堆積粒子の表面エネルギーの関係によって膜の成長が決まる。つまり最初に、島状の膜が堆積しその後、膜が成長するにしたがって、それらの島が互いに結合し、層状の膜が形成される。図2では、斜めに入射している状態を示しているが、膜面に対し垂直に入射する場合も同様である。
図3は、膜表面にイオン衝撃を行っている状態を示している。イオン4の衝撃によって、結合の弱い部分は再スパッタされ、スパッタ原子7として、外部へ飛び出していく。一方、膜面内方向にはじかれた原子5は、膜表面を拡散して行く。その過程で、窪んだ部分に付着する現象と面内方向に拡散する原子との衝突現象により、凸凹の部分が取り除かれ、膜表面が滑らかになる効果が発生する。膜の内部ではイオン衝撃によるコリジョンカスケードにより、膜原子のノックオン現象6が発生する。そのため膜の一部が基板方向へ押し込まれ、膜はより緻密な構造へと変化する。結果として作製される膜は、細密な構造をとる。
そこでこの現象を利用して、膜表面を滑らかにし、かつ、混合領域の発生を抑えて急峻な組成を実現するためには、イオンのエネルギーと量の両者を最適化する必要がある。一般的に、イオンのエネルギーによって膜表面に起きる現象は異なっていることが知られている。数十eV以下のエネルギーでは、表面拡散の効果が現れ、数十から数百eVのエネルギーで、膜表面上でスパッタ現象が起こる。更に、エネルギーが高くなるとイオンが膜に侵入するイオン注入の現象が発生する。
そこで、質量数が56の鉄と197の金について、Arイオンを用いてその最適な値を実験的に調べた結果を図18に示す。図中加速電圧VAは、イオンのエネルギー値に相当している。エネルギーが150eVより低い場合には、再スパッタなどの効果が現れず、本発明で期待する現象は発生してはいない。また、エネルギーが300eVより高すぎても、膜表面はあれる傾向があることがわかった。滑らかな表面を作製するための最適値は150〜300eVの範囲内で、200eVが最適であることが分かった。このとき、膜の表面粗さはRaは、0.2〜0.6nmとイオン衝撃しないときの1/3以下の値であり、原子レベルに近い凹凸の膜表面をもつ膜を作製することができた。このように本発明は、膜表面での弱いスパッタ効果と表面拡散の両者が期待できる領域のエネルギーを利用して膜の表面構造を変化させその特性を改善するものである。
当然、この最適条件はイオンと材料の密度や原子質量数に依存しているが、実験の結果、Neより重いイオンのエネルギーは150〜300eVの範囲で、表面の粗さが減少する効果が認められた。Arと同様にそれ以下の範囲では効果が薄く、それ以上の範囲では、逆に膜表面があれる傾向が認められた。
そのため本発明においては、衝撃イオンの種類をNeより重い希ガスに限定する。その理由は次のことによる。膜堆積原子より非常に軽い希ガスを用いた場合、その質量数の違いが原因で、本発明で期待している効果が現れる最適エネルギーは千eV以上の非常に高い領域になってくる。したがって、衝撃イオンが膜内部に多く侵入するイオン注入現象が無視できなくなり、緻密な構造を持つ膜が作製されることはない。
一方、図4にデュアルイオンビームスパッタ法などのこれまでの技術としてある膜堆積中にイオン衝撃を行った場合の膜表面状態を示している。この場合、膜堆積初期段階でも基板を衝撃しているために、原理的に基板と堆積原子からなる混合領域8が発生する。そのため、初期成長段階の発生を抑えた滑らかな膜表面が形成できるものの、数nmから数十nmの膜厚の範囲で基板の一部の原子と堆積原子からなる混合領域8が発生する。
一般に、イオンや原子間の衝突では、それらの質量数の大小が重要で、質量数の大きな原子ほど動きにくい。そのため、本発明の作製方法は、基板原子の質量数が堆積原子の質量数より小さいときほど、混合領域8の発生が抑えられ、有効になってくる。
図5は、従来の作製方法のあれた表面上の膜成長過程を示す。この場合、堆積粒子の入射角に対して影の領域10が発生する。したがって、自己陰影効果がその部分で発生し、その部分に大きな粒界が発生する。また、膜の初期成長段階で発生する島状組織の結晶方位はまちまちであるために、膜本体2の結晶性も悪く、緻密な膜は作製できない。さらに、このような状態の膜表面9に、他の材料の膜を堆積させても、その粗さの影響を受けるため平坦な膜は堆積できず、作製された多層膜の特性は優れたものにはならない。
図6は、本発明で作製した膜の成長過程を表している。基板の表面粗さが原因となって、一部に非常に薄い混合領域8が形成されるが、膜堆積前に、発明の条件のエネルギーでイオン衝撃を行うことにより膜表面を平坦にした後、膜堆積を実施することで、この部分の厚みを更に減少させることができる。非常に滑らかな表面上での膜の成長は、自己陰影効果が発生しないために、膜表面には明確な粒界が発生せず、緻密な膜本体2が作製できる。また、初期成長領域も薄く、膜本体2が膜全体の大部分を占めるために、膜はどの膜厚においてもバルクに近い理想的な特性をもつことができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図7は実施例の概略図であり、図8は従来のデュアルイオンビームスパッタ法やイオンアシスト法による膜堆積の実施例である。図9〜13は、様々な方法で作製された金膜のSEM像、図14はそれら金膜の抵抗率の膜厚依存性、図15は分光特性、図16は鉄膜の膜表面形態の変化、図17は鉄膜の飽和磁化の膜厚依存性を示している。
図7に、膜堆積機構にイオン衝撃機構を備えた本発明を実現するために使用した装置の例を示す。膜堆積機構は、スパッタや蒸着などのPVD法などを利用する。当然、CVDなどの他の作製方法を用いてもよい。イオン衝撃機構は、対象とする20nm以下の膜原子と同程度の量のイオンを150から300eVの範囲のエネルギーで、引き出せる性能をもつものを用いる。この図では、装置の膜堆積部はイオンビームスパッタ法を用い、スパッタ用イオン源13から希ガス14をイオン化し、それを加速しターゲット12に照射する。このとき、ターゲット12から膜堆積原子であるスパッタ原子1が発生し、3の基板にダイレクトに到達し膜が堆積する。スパッタ原子の入射角16は0から90度のどの値でもよく、膜厚モニタなどを利用して20nm以下の膜厚になったところで膜の堆積をやめ、その後、膜にイオン衝撃用イオン源15から150〜300eVのエネルギーをもつ希ガスのイオン4を膜3に堆積させた膜の原子数とオーダー的に同程度以上衝撃する。このとき、膜が完全に島状になっているときよりも、層状の部分がある程度残っている状態で、島状の部分の厚みを取り除くことができる程度の量の希ガスのイオンを衝撃した方がより滑らかな層状の膜を作製することができる。
図8は、従来の膜堆積である膜へのイオン衝撃を同時に行うデュアルイオンビームスパッタ装置を示してある。当然、この装置で膜堆積を行うスパッタとイオン衝撃を別々に行っても良い。
この作製技術の応用の具体例として、紫外域から可視光までの広帯域で透明で導電性を示す金膜と磁性材料の代表としての鉄膜を述べる。
紫外線が透過できる透明電極としては、材料の禁止帯の幅が5eV近く必要であり、通常透明電極としてよく用いられるITO膜では、禁止帯の幅が3eV程度で不十分である。また、禁止帯の幅が5eV程度ある酸化ガリュウム系の材料も提案されているが、低温で作製することが不可能で、ITOに匹敵するほど充分に低抵抗な膜は作製されてはいない。このとき、金属である金を導電性の超薄膜として作製することができれば、遠紫外線域から可視光に及ぶ広範囲は範囲で利用可能な透明電極として使用することができる。
一般に、金をガラス(SiO2)基板に堆積させる場合、金の膜成長は、それらの表面エネルギーの関係から初期段階において3次元的な島が形成されるVolmer−Weber型であることが知られている。従来のPVDなどの作製方法においては、約20nm程度の膜厚までこの成長が続くために、それ以下の厚みにおいては、金属膜でありながら膜は導電性を示すことはなかった。そのため従来の作製方法では、薄くて透明な導電性を示す膜を作製するためには、約20nm以上の膜厚にすることが必要で、高い透明度をもたせることができなかった。
そこで、島状の成長を抑制できる本発明の有効性を示すために、次の4種類の方法で膜を作製し、それらを比較した。従来の作製方法である(1)RF2極マグネトロンスパッタ法、(2)イオンビームスパッタ法、(3)膜堆積中のアルゴンイオン衝撃を行うデュアルイオンビームスパッタ法と(4)膜堆積後にアルゴンイオン衝撃を行う本発明の方法で作製された膜の特性評価を行った。
図9に、RF2極マグネトロンスパッタ法にて作製した膜のSEM像を示す。この方法では膜堆積時の真空度が悪く、ターゲットから派生するスパッタ原子が雰囲気ガスと多く衝突し基板に到達するので、スパッタ原子の低いエネルギー状態での膜堆積になる。そのため、この方法で作製された膜は島状構造を取りやすく、膜厚が8nmのときには明確な島状の構造が観察され、膜は導電性を全く示さなかった。膜厚が10nm以上になって、初めて各島が結合した層状の膜が形成された。
次に、イオンビームスパッタ法にて作製した膜のSEM像を図10に示す。この方法は膜堆積時の真空度が高く、比較的高いエネルギーのスパッタ原子を利用することができる。しかしながら、この方法でも膜厚が4nmの時には、島状の組織が観察され、膜は導電性を示さなかった。膜厚が8nmになって、初めて導電性を示す層状の膜が形成された。
今度はデュアルイオンビームスパッタ方を用いて、膜堆積中に200eVに加速されたArイオン衝撃を行いながら、膜堆積を行った。その結果、図11に示すように膜厚が1.4nmでは、膜はまだ島状の構造をしているが、膜厚が2.8nmで膜は、一部にピンホールが存在するものの、全体的に層状構造に変化し、導電性を示す膜を作製することができた。
次に、本発明の作製方法を用いて、イオンビームスパッタ膜に、膜堆積中と同じ量の200eVに加速されたArイオン衝撃を行ったSEM像を図12に示す。膜厚が1.4nmの場合、膜堆積中にイオン衝撃をしたものよりも細かな島状の組織が観察され、膜厚が2.8nmでピンホールの少ない非常に綺麗な層構造の膜を作製することができた。この膜は膜厚が2.8nmから導電性を示した。
更に、イオンの衝撃量を増加させて、作製条件を最適化したところ図13に示すように膜厚が約1.4nmにおいても導電性を示す膜が得られた。このことは、本発明のイオンのエネルギーとともにその衝撃量を最適化することで、従来の作製方法では不可能な膜厚範囲において連続的な層状構造の膜を作製することができることを示している。
このことを詳細に検証するために、上記膜の電気体積抵抗率ρの膜厚依存性を図14に示す。図中、RFMSはRF2極マクネトロンスパッタ膜、BNONはイオンビームスパッタ膜、BDURは膜堆積とイオン衝撃を同時に行ったデュアルイオンビームスパッタ膜、BAFTは本発明の膜堆積後にイオン衝撃を行った膜の特性を示してある。導電性が現れるのは、RFMS:10nm、BNON:8nm、BDUR:2.8nm、BAFT:1.4nmであった。導電性がある範囲で同じ膜厚の条件で抵抗率ρは、RFMS>BDUR>BNON>BAFTの順になった。抵抗率上昇の原因は、TEM観察の結果、RFMSとBDURは微結晶化のため、一方、BDURは膜が10nm以下の薄い領域においては基板との厚い混合領域が発生していたためであった。つまり、滑らかな界面と急峻な組成変化を持ち緻密な膜構造をもっているのは、本発明の方法で作製したBAFTだけであった。
次に、これらの方法で作製した導電性が現れる金膜の透過率の分光特性を図15に示す。本発明で作製した膜は200nmの遠紫外域からでも77%以上の高い透過率Tをもっていることが分かった。また、可視光の400〜800nmの波長範囲においても、83%以上の高いTを示した。したがってこの膜は、紫外線域の透明電極として優れた特性を示し、紫外線発光素子の取り出し電極、あるいは、紫外線を利用した太陽電池などのエネルギー変換デバイスなど、広範囲に利用することができる。
また、本発明で作製した3nm以下の膜厚の膜は、網の目状の構造をもっており、この構造を生かすことでナノ構造を利用したセンサ電極としての利用も可能である。さらに、超薄膜の電極は、下地となる基板に歪みなどの力学的影響を及ぼさないために、下地の特性を利用したセンサの電極としての応用が期待できる。
一方、この領域の膜厚になると、膜の抵抗率はバルク状態で起きている格子や粒界による電子散乱よりも、膜の表面と基板との界面での電子散乱の効果(サイズ効果)が大きくなり、それが、膜の抵抗を決定することになる。そのため薄い膜の抵抗値には、限界があることが分かった。図14にその計算値を波線で示してある。実験データの膜の抵抗率変化も、10nm以下の範囲でこの直線を漸近線として近づく傾向があった。このとき、電子散乱メカニズムがバルクと著しく異なるため膜の電気抵抗の温度依存性は、バルク値に比べ非常に小さくなることが確認され、低温度係数の薄膜抵抗体としても有望であることが確認された。
このような膜厚が数nmと薄い場合、水晶振動型の膜厚モニタをもってしても膜厚の制御が困難になるが、図14に示すように、膜が非常に薄い領域の膜の抵抗変化は急激であるため、膜の電気抵抗をモニタしながら作製することで、その精度を更に上げることが可能である。
次に、鉄をガラス基板に堆積させたときの、膜形態の変化を図16に示す。この図では、原子間力顕微鏡AFM像から、島状になっている部分の厚みと層状の厚みの比率(RL/I)膜厚依存性を示してある。このとき、 RL/Iの値が1より大きい場合、膜は層構造であることを示し、その値が大きいほど、膜は滑らかな層構造になっている。BNONの場合は、約10nm以下の膜厚で島状構造になっているが、イオン衝撃を加えたBDURとBAFTの両者とも、1nmより厚い膜厚で層状構造に変化した。このことは、膜表面のArイオン衝撃が、膜の表面形態を滑らかにし、層構造の膜を作製するために非常に有効であることを示している。
しかしながら、BAFTのものはRL/Iの値は膜厚が約10から20nmのところでBNONのものに近くなっていた。この傾向は前述の、金膜の作製でも同じで、本発明方法で、約20nm以上の膜厚では滑らかな膜表面をもつ膜を作製することはできなかった。これは、あまり膜表面があれてしまうと、低エネルギーのイオン衝撃による平坦効果にも限界があり、十分な効果が得られないことを示している。そのため、本発明の作製方法は20nm以下の膜厚に対して効果があることが分かった。
以上の実施結果は、20nm以内の膜厚に対して膜堆積とイオン衝撃を交互に行うことで、滑らかな表面をもった緻密な膜が作製できることを示している。
次に、作製された鉄膜の飽和磁化の膜厚依存性を図17に示す。BNONの膜は、バルクの値と同じ21.5kGの値を示したが、BDURにおいては、10nm以下の範囲で、その値が急激に減少していた。これは、膜と基板との間に混合領域が発生し、鉄の一部が酸化されるために減少したものである。それに対して、本発明のBAFTにおいては、約1nmから最大5%程度の減少が認められたが、その厚み概算すれば、原子1から2個の若干の混合領域の発生であり、混合領域の発生効果より膜形態の改善による軟磁気特性の向上の効果の方が強く現れていた。一方、BDURの値は、非磁性の酸化物基板との混合領域が発生することが原因で減少した。そのため、膜表面の平坦化の効果を生かしながら、混合領域の発生を抑えるためには、本発明のBAFTの膜作製方法が有効であることを示している。上記BDURにおける混合領域は、X線光電子分光:XPSによる各元素の深さ分析の結果からも確認されたが、BAFTの膜と基板との界面のXPSプロファイルはBNONの膜とほぼ同じであり、膜と基板との混合領域は非常に小さいことが確認できた。
この様に本発明は、実施例から、連続的な滑らかで、組成的にも急峻な層構造をもつ超薄膜を作製するために、非常に有効な作製方法であることが示された。
本発明の作製方法では、材料本来の特性をもつ薄膜を作製することができ、超薄膜から構成される多層膜デバイスや光機能性薄膜の特性向上に応用できる。
本発明の概念図である。 従来の膜堆積の概要図である。 本発明の膜堆積の概要図である。 従来のデュアルイオンビームスパッタ法やイオンアシスト法による膜堆積の概要図である。 従来の膜堆積過程の概要図である。 本発明の膜堆積過程の概要図である。 本発明の実施例である。 従来のデュアルイオンビームスパッタ法やイオンアシスト法による膜堆積の実施例である。 RFマグネトロンスパッタ法で作製した金膜のSEM像である。 イオンビームスパッタ法で作製した金膜のSEM像である。 デュアルイオンビームスパッタ法で作製した金膜のSEM像である。 本発明で作製した金膜のSEM像である。 本発明でイオン衝撃量を最適化して作製した金膜のSEM像である。 様々な方法で作製した金膜の抵抗率の膜厚依存性を測定した図である。 分光特性を測定した図である。 鉄膜の膜表面形態の変化を測定した図である。 鉄膜の飽和磁化の膜厚依存性を測定した図である。 金膜と鉄膜の表面粗さのイオン加速依存性を測定した図である。
符号の説明
1 膜堆積粒子
2 膜
3 基板
4 イオン衝撃粒子
5 表面拡散
6 ノックオン
7 再スパッタ原子
8 混合領域
9 島構造の膜表面
10 自己陰影効果
11 層構造の膜表面
12 ターゲット
13 スパッタ用イオン源
14 スパッタ用イオン
15 イオン衝撃用イオン源
16 スパッタ原子

Claims (2)

  1. 金属膜の作製において、100〜300eVの範囲内のエネルギーをもつNeより重い希ガスのイオンを膜堆積後の膜表面にその堆積した金属の原子数と同量以上衝撃させることにより、滑らかな表面の層状構造とその下地層と急峻な界面をもつ膜厚が8nm以下の膜の作製方法
  2. 請求項1の膜堆積方法を繰り返すことで、自己陰影効果を抑えた滑らかな表面の緻密な構造をもつ膜の作製方法
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