JP4334904B2 - グリース組成物および該グリース組成物封入軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はグリース組成物に関し、特にオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受用のグリース組成物およびこのグリース組成物が封入されたグリース組成物封入軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車においては、小型軽量化を目的としたFF(フロントエンジン・フロント駆動)車の普及により、またさらに居住空間の拡大により、エンジンルームの縮小を余儀なくされ、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の電装部品、補機等の小型軽量化が一層進められている。加えて電装部品、補機自体は高性能、高出力のものがますます求められており、例えばオルタネータでは、小型化による出力低下分を設計上高速化することにより補っている。さらに、静粛性向上の要望によりエンジンルームの密閉化が進み、エンジンルーム内の高温化が促進されるため、より一層高温に耐える部品が必要になっている。
これら電装部品、補機等には転がり軸受が多用されており、転がり軸受の潤滑には主としてグリース組成物が封入使用されている。ところが、このような使用条件の高速回転化および高温化、ならびに急加減速に伴なう荷重変化が大きい転がり軸受において、転がり軸受の内外輪の負荷がかかる転走面に特異的な剥離現象が生じ早期に軸受寿命に至る事例が報告されている。
【0003】
このような剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)、アンチモン化合物またはモリブデン化合物を添加する手段により軸受の剥離寿命を延長させる方法(特許文献2参照)がそれぞれ報告されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−210394号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【特許文献2】
特再平6−803565号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、代表的な不動態化剤である亜硝酸ナトリウムは、第2級アミンと酸性条件下で反応して、N−ニトロソアミンを生成させることが知られている。このニトロソアミンが環境負荷物質であることから、その使用は好ましくないが、代替添加剤がないという問題がある。
亜硝酸ナトリウムは防錆剤としても有効であリ、走行中に車体下部から水分が侵入する自動車部品に用いられる転がり軸受用グリース組成物に多用されているが、上記理由で代替品が求められている。
また、亜硝酸ナトリウム以外の不動態化剤やアンチモン化合物またはモリブデン化合物についても人体や環境に悪影響をおよぼすおそれがある重金属が含まれているという問題がある。
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、高温使用時の寿命が長く、人体や環境に悪影響をおよぼさず、かつ転がり軸受の剥離寿命、防錆性に優れたグリース組成物およびこのグリース組成物が封入されたグリース組成物封入軸受の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るグリース組成物は、基油に、増ちょう剤と、添加剤とを配合してなるグリース組成物であって、上記基油の 40℃における動粘度が 20〜150 mm2/s であリ、上記添加剤は、その必須成分として、亜硫酸金属塩、亜硫酸水素金属塩およびピロ亜硫酸金属塩より選ばれた少なくとも一つの化合物を前記基油および前記増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部含有することを特徴とする。
また、上記亜硫酸金属塩、上記亜硫酸水素金属塩または上記ピロ亜硫酸金属塩がそれぞれのアルカリ金属塩であることを特徴とする。
また、上記基油は、アルキルジフェニルエーテル油を主成分とすることを特徴とする。
また、上記増ちょう剤がウレア系増ちょう剤であり、基油および増ちょう剤の合計量に対して該ウレア系増ちょう剤が 5〜30 重量%配合されてなることを特徴とする。
また、上記ウレア系増ちょう剤が(1)式で示される芳香族ジウレア化合物および脂環族ジウレア化合物より選ばれた少なくとも一つのジウレア化合物であることを特徴とする。
【化2】
(1)式において、R1 およびR3 は、同一または異なってもよい、炭素数が 6〜15 の芳香族炭化水素基または炭素数が 6〜12 の脂環式炭化水素基であり、R2 は炭素数が 6〜15 の芳香族炭化水素基をそれぞれ示す。
【0008】
本発明に係るグリース組成物封入軸受は、軸受内部に上述したグリース組成物が封入されてなることを特徴とする。
【0009】
グリース組成物に亜硫酸誘導体、亜硫酸水素誘導体およびピロ亜硫酸誘導体より選ばれた少なくとも一つの化合物を含有させることにより、高温での潤滑寿命を大幅に改善でき、かつ転がり軸受の剥離寿命を向上させ、亜硝酸ナトリウムを含有しないでもグリースの防錆性能が大幅に改善できることが分かった。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に使用できる基油は 40℃における動粘度が 20〜150mm2/s 、好ましくは 50〜100mm2/s であれば使用できる。動粘度が 20mm2/s 未満であると耐熱性に劣り、150mm2/s をこえると回転発熱が大きいため不具合が発生する。
上記粘度範囲を有する基油としては通常グリース組成物に使用される鉱油、合成油あるいはこれらの混合油が挙げられる。
鉱油としてはパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油を挙げることができる。
合成油としては合成炭化水素油、エーテル油、エステル油等を挙げることができ、具体的には、エーテル油としてアルキルジフェニルエーテル油、アルキルトリフェニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油等を、エステル油としてジエステル油、ポリオールエステル油またはこれらのコンプレックスエステル油、芳香族エステル油等をそれぞれ挙げることができる。
【0011】
これら基油の中で、高温、高速での潤滑性能並びに潤滑寿命に優れるアルキルジフェニルエーテル油を主成分とする基油が好ましい。アルキルジフェニルエーテル油単独で基油を構成しても、あるいは他の合成油または鉱油と混合して基油を構成してもよい。混合基油とする場合、優れた潤滑性能並びに潤滑寿命を得るためには、基油全体に対してアルキルジフェニルエーテル油を少なくとも 20 重量%以上、好ましくは 60 重量%以上配合する。
【0012】
アルキルジフェニルエーテル油は、以下の(2)式で示されるモノアルキルジフェニルエーテル油、(3)式で示されるジアルキルジフェニルエーテル油、またはこれらの混合アルキルジフェニルエーテル油が使用できる。
【化3】
ここで、R4、R5およびR6は、それぞれ炭素数 8〜20 のアルキル側鎖であり、一つのフェニル環に結合しているか、あるいは二つのフェニル環にそれぞれ結合している。
これらの中で、耐熱性、蒸発特性を考慮するとアルキル側鎖R5およびR6を有するジアルキルジフェニルエーテル油が好ましい。
アルキルジフェニルエーテル油を含有する基油においても、その動粘度は 40℃において 20〜150mm2/s である。
【0013】
グリース組成物に必須成分として添加される亜硫酸誘導体、亜硫酸水素誘導体およびピロ亜硫酸誘導体より選ばれた少なくとも一つの化合物は、それぞれの金属塩であることが好ましく、以下の(4)式〜(6)式で示される。
【化4】
(4)式〜(6)式において、一価金属であるMとしては、アルカリ金属が好ましく、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)が特に好ましく、最も好ましいのはナトリウム(Na)である。例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムが好ましい。具体的に好ましい化合物は亜硫酸ナトリウムである。亜硫酸ナトリウムを配合することにより、亜硝酸ナトリウムを含有しないでもグリースの防錆性能および高温での潤滑寿命を大幅に改善できる。
【0014】
亜硫酸誘導体、亜硫酸水素誘導体およびピロ亜硫酸誘導体より選ばれた少なくとも一つの化合物は、上記基油および増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部、好ましくは 0.1〜5 重量部配合される。0.05 重量部未満であると効果が現れず、10 重量部をこえると回転発熱が大きいため不具合を生じる問題がある。
【0015】
本発明に使用できる増ちょう剤は、通常のグリース組成物に使用されている増ちょう剤を使用できる。例えば、金属石けん、複合石けん、ウレア化合物、有機化ベントナイト、シリカ等が挙げられる。
金属石けんとしては、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ステアリン酸リチウム、リチウムコンプレックス等が挙げられる。ウレア化合物としては、脂肪族ジウレア、脂環族ジウレア、芳香族ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ウレアウレタン等が挙げられる。有機ベントナイトとしては、第4級アンモニウム塩で処理したモンモリロナイト等が挙げられる。シリカとしては、気相反応にて製造された超微粒子のシリカ粉末またはそれらの表面を例えば、メタノールのような低級アルコールで処理した粉末が挙げられる。その他、スルホネートコンプレックスや四フッ化エチレン樹脂粉末等が挙げられる。
上記増ちょう剤の中で、高温特性に優れたウレア化合物が好ましい。より好ましくは、上記(1)式で示される芳香族ジウレア化合物および/または脂環族ジウレア化合物である。
【0016】
上記(1)式で示される芳香族ジウレア化合物において、R1およびR3は炭素数が 6〜15 の1価の芳香族炭化水素基であり、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。炭素数が上記範囲未満であると増ちょう剤の耐熱性が劣り、上記範囲をこえると増ちょう性が劣る。芳香族ジウレア化合物におけるR1およびR3は、例えば、フェニル基、トリイル基、キシリル基、t−ブチルフェニル基、ベンジル基などが挙げられる。
【0017】
上記(1)式で示される脂環族ジウレア化合物において、R1およびR3は炭素数が 6〜12 の1価の脂環式炭化水素基であり、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。炭素数が上記範囲未満であると耐熱性が劣り、上記範囲をこえると増ちょう性が劣るため、軟化しなくなる。脂環族ジウレア化合物におけるR1およびR3は、例えば、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0018】
R3は炭素数が 6〜15 の2価の芳香族炭化水素基である。炭素数が上記範囲未満であるとグリースの増ちょう性が劣り、上記範囲をこえるとグリースが硬化し易くなる。R3としては、例えば、芳香族単環、芳香族縮合環、これらがメチレン鎖、シアヌル環、イソシアヌル環等で連結された基等が挙げられ、好ましい芳香族炭化水素基としては以下の(7)式で示されるそれぞれの基が挙げられる。
【化5】
これらの基の中で特に好ましい基の具体例としては、以下の(8)式で示されるそれぞれの基が挙げられる。
【化6】
芳香族ジウレア化合物を増ちょう剤として用いることにより、グリース組成物の耐熱性が向上する。
【0019】
ウレア化合物は、イソシアナート化合物とアミノ化合物を反応させることにより得られる。反応性ある遊離基を残さないため、イソシアナート化合物のイソシアナート基とアミノ化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
【0020】
グリース組成物は、基油中でイソシアナート化合物とアミノ化合物とを反応させてもよく、またあらかじめ合成されたウレア化合物を基油と混合してもよい。好ましい作製方法は、グリース組成物の安定性を保ちやすい前者の方法である。
【0021】
上記芳香族ウレア化合物および/または脂環族ジウレア化合物の増ちょう剤としての配合割合は、基油および増ちょう剤の合計量全体に対して 5〜30 重量%である。 5 重量%未満では、粘度の低い液状となって漏洩しやすく軸受に密封することが困難になる。また 30 重量%をこえると固化して混和ちょう度が 200以下となるので、軸受封入用のグリース組成物として実用性がなくなる。
【0022】
本発明に係るグリース組成物は、上記の基油、増ちょう剤に対して、亜硫酸誘導体、亜硫酸水素誘導体およびピロ亜硫酸誘導体より選ばれた少なくとも一つの化合物を必須成分とするものであるが、極圧剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、油性剤等の従来のグリース用添加剤をさらに配合できる。
極圧剤を配合することにより、耐荷重性や極圧性を向上させることができる。例えば以下の化合物を使用できる。有機金属系のものとしては、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオリン酸亜鉛、亜鉛フェネート等の有機亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸セレン等の有機セレン化合物、ナフテン酸ビスマス、ジチオカルバミン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、ジチオカルバミン酸鉄、オクチル酸鉄等の有機鉄化合物、ジチオカルバミン酸銅、ナフテン酸銅等の有機銅化合物、マレイン酸スズ、ジブチルスズスルファイド等の有機スズ化合物、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホネート、フェネート、ホスホネート、金、銀、チタン等の有機金属化合物も必要なら使用できる。硫黄系化合物としては、ジベンジルジスルフィド等のスルフィドあるいはポリスルフィド化合物、硫化油脂類、無灰系カルバミン酸化合物類、チオウレア系化合物、もしくはチオカーボネート類等を使用することができる。リン酸系極圧剤としては、トリオクチルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物を使用することができる。また、その他、塩素化パラフィン等のハロゲン系の極圧剤、あるいは、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、ポリ四フッ化エチレン、硫化アンチモン、窒化硼素などの硼素化合物等の固体潤滑剤を使用することができる。これらの極圧剤の中で、ジチオカルバミン酸系化合物やジチオリン酸系化合物を好適に使用できる。
【0023】
酸化防止剤としては、ゴム、プラスチック、潤滑油等に添加する老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤から適宣選択して使用できる。例えば、以下の化合物が使用できる。すなわち、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、p,p−ジオクチルジフェニルアミン、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系化合物等が使用できる。
【0024】
またフェノール系酸化防止剤が使用できる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス−(メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、2,2'−メチレンビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などが挙げられる。
【0025】
防錆剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。すなわち、有機スルホン酸のアンモニウム塩、バリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、フェネート、ホスホネート、アルキルもしくはアルケニルこはく酸エステル等のアルキル、アルケニルこはく酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、オレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、1−メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類あるいはその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトチアジアゾール等のチアゾール類、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール系化合物、あるいは、トリスノニルフェニルフォスファイト等のリン酸エステル類、ジラウリルチオプロピオネート等のチオカルボン酸エステル系化合物等を使用することができる。
金属不活性化剤として、例えばベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物を使用することができる。
【0026】
油性剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。すなわち、オレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸、オレインアルコール等の脂肪酸アルコール、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルやポリグリセリルオレイン酸エステル等の脂肪酸エステル、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリル酸エステルまたはポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。
【0027】
本発明に係るグリース組成物封入軸受の一例を図1に示す。図1は深溝玉軸受の断面図である。
グリース組成物封入軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6とにより構成される。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。
【0028】
グリース組成物7が亜硝酸塩を含まない添加剤を用いているので、耐環境性に優れたグリース組成物封入軸受1が得られる。また、防錆性に優れているので、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受に好適に使用できる。
【0029】
【実施例】
実施例1〜実施例9
ポリ−α−オレフィン油(新日鉄化学社製商品名、シンフルード601)とアルキルジフェニルエーテル油(松村石油社製商品名、LB100)とを基油成分として表1に示す配合割合で調製した。この基油を2液に分割し、その半量に4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を溶解し、残りの半量の基油に4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)の2倍当量となるp−トルイジンまたはシクロヘキシルアミンを溶解した。なお、ジウレア化合物として表1に示す配合割合となるように4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナートを溶解した。4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナートを溶解した溶液を撹拌しながらp−トルイジンまたはシクロヘキシルアミン溶液を加えた後、100〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させてジウレア化合物を基油に配合した。これに亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムまたはピロ亜硫酸ナトリウム、防錆剤としてのソルビタントリオレエート、Baスルホネート、および酸化防止剤としてアルキル化ジフェニルアミンをそれぞれ表1に示す配合割合で加えてさらに100〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し三本ロールで均質化しグリース組成物を得た。このグリース組成物の高温高速試験、急加減速試験、防錆試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
【0030】
高温高速試験
転がり軸受(6204)に試験用グリース組成物を 0.7g 封入し、軸受外輪外径部温度 150 ℃、ラジアル荷重 67 N 、アキシャル荷重 67 N の下で 10000 rpm の回転数で回転させ、焼き付きに至るまでの時間を測定した。
【0031】
急加減速試験
電装補機の一例であるオルタネータの回転ベルトを巻き掛けたプーリを支持する回転軸を内輪で支持する転がり軸受において、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、プーリに対する負荷荷重を 3234 N 、回転速度は 0〜18000 rpm で運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間を計測した。
【0032】
防錆試験
ASTM D 1743 に規定される錆試験法に準じて、試験条件を錆発生に対してより過酷な条件で行なった。あらかじめ有機溶剤により脱脂し、乾燥させた円錐ころ軸受30204に試験用グリース組成物を 1.9〜2.1 g 封入した後、アキシャル荷重を 98 N 加えて毎分 1800 回転で 1 分間慣らし運転した。次に、1 重量%食塩水に浸漬した後、この軸受を 40 ℃で飽和水蒸気圧に達した密封高湿容器に入れ、40 ℃で 48 時間放置した後、発錆状況を調べた。発錆状況は外輪レースを周方向に 32 等分して錆のあった区間を数え、錆発生率を測定した。試験回数n=4回の平均を錆評点とした。
【0033】
比較例1〜比較例4
実施例1に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調製し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
各実施例に示されたように本発明に係るグリース組成物は、高温高速試験、急加減速試験および防錆試験のすべてを満足した。
【0037】
【発明の効果】
本発明に係るグリース組成物は、基油の 40℃における動粘度が 20〜150mm2/sであリ、添加剤の必須成分として亜硫酸誘導体、亜硫酸水素誘導体およびピロ亜硫酸誘導体より選ばれた少なくとも一つの化合物を基油および増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部含有するので、人体や環境に悪影響をおよぼさず、高温高速試験、急加減速試験および防錆試験結果のすべてを満足するグリース組成物が得られる。
また、基油がアルキルジフェニルエーテル油を主成分とし、増ちょう剤がウレア系増ちょう剤、特に芳香族ジウレア化合物および/または脂環族ジウレア化合物であるので、高温高速試験、急加減速試験および防錆試験結果がより優れる。
【0038】
本発明に係るグリース組成物封入軸受は、封入グリースが上記グリース組成物であるので、優れた高温高速試験、急加減速試験および防錆試験結果を有する軸受が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】深溝玉軸受の断面図である。
【符号の説明】
1 グリース組成物封入軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
Claims (6)
- 基油に、増ちょう剤と、添加剤とを配合してなるグリース組成物であって、
前記基油の 40℃における動粘度が 20〜150 mm2/s であリ、
前記添加剤は、その必須成分として、亜硫酸金属塩、亜硫酸水素金属塩およびピロ亜硫酸金属塩より選ばれた少なくとも一つの化合物を前記基油および前記増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部含有することを特徴とするグリース組成物。 - 前記亜硫酸金属塩、前記亜硫酸水素金属塩または前記ピロ亜硫酸金属塩がそれぞれのアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
- 前記基油は、アルキルジフェニルエーテル油を主成分とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載のグリース組成物。
- 前記増ちょう剤がウレア系増ちょう剤であり、前記基油および前記増ちょう剤の合計量に対して 5〜30 重量%配合されてなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のグリース組成物。
- 軸受内部にグリース組成物が封入されてなるグリース組成物封入軸受であって、
前記グリース組成物が請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載のグリース組成物であることを特徴とするグリース組成物封入軸受。
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