JP4334154B2 - 呼吸補助装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者の血液の一部を体外に取り出してガス交換し、肺機能の補助を行う呼吸補助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
肺に疾患をもつ患者の肺機能を補うための呼吸補助装置が提案されている。例えば、「人工心肺(理論と実際)」(名古屋大学出版会、阿部稔雄著、1991年)には、患者の血液の一部を静脈より分流して体外に導き、ここでガス交換を行って、動脈より患者の体内に血液を戻す装置が記載されている。この装置においては、動脈に血液を送り込むので、血液ポンプを用いて昇圧を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述の装置においては、血液ポンプ等が必要となり、装置が大型化するという問題がある。この問題を解決するために、本願出願人は、特願平11−142001号において、動脈から血液を分流し、静脈へ戻す呼吸補助装置を提案している。動脈の血圧を利用して体外の血液循環を行うことができるために、血液ポンプが不要となり、装置を簡略なものとすることができる。しかし、この提案された呼吸補助装置において、血液の流量を測定するための提案がなされておらず、この装置に適した簡易な流量測定装置の開発が望まれていた。
【0004】
本発明は、簡易な流量測定装置によって、呼吸補助装置の全体構成を簡易なものとすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明にかかる呼吸補助装置は、患者の動脈から血液を分流し、人工肺を通してガス交換を行い、患者の静脈に血液を戻す体外循環を患者の動脈の血圧のみにより行う呼吸補助装置であって、血液の体外循環路に、動脈側と静脈側の差圧を検出するように配置された差圧検出手段を有している。差圧検出手段は、脱血チューブに連通する動脈側室と、送血チューブに連通する静脈側室とを有し、これらは、仕切り手段に仕切られて隣接している。仕切り手段は、動脈側と静脈側の差圧に応じて移動または変形が可能であって、また中立位置へと向かうように付勢されている。さらに、この仕切り手段の移動または変形量を検出するための手段が設けられている。
【0006】
肺機能の補助を行うための体外循環回路の流量は、この回路の圧力損失と、圧力差で決定する。回路を構成する各部品が一定のものであれば、圧力損失を固定値として考えることができ、流量は、回路の所定区間の圧力差に依存する。差圧検出手段は、この所定区間の圧力差を検出するものであり、これにより流量を測定することができる。流量調節手段を設け、圧力差が所望の値になるように、この調節手段を調節することにより流量が調節される。
【0007】
仕切り手段は、小さな応力でかなり大きな変形を起こし、その変形から急速に元の形に戻る、いわゆるゴム状弾性を有する膜とすることができる。膜は、それ自体の弾性力によって、中立位置に付勢され、簡易な構成の仕切りとなる。
【0008】
また、仕切り手段は、ゴム状弾性を有する2枚の膜を有し、これらの膜の間には、透明または半透明の液体が満たされたものとすることができる。2枚の膜は、それ自体の持つ弾性力によって中立位置に付勢される。膜間に透明または半透明の液体を満たすことによって、膜の変形、動きが観察しやすくなる。言い換えれば、膜の変形動きが観察できるような程度の透明性を有する液体により、2枚の膜の間を満たすことが好ましい。
【0009】
差圧検出手段のより具体的な構成は、透明または半透明のシリンダに、このシリンダ内部を軸方向に仕切る仕切り手段を設け、仕切られた一方が動脈側に、他方が静脈側に接続することができる。また、シリンダの表面に仕切り手段の移動または変形量を計るための目盛りが設けられている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。図1は、実施形態の概略構成図である。血液が体外を流れる主回路10は、動脈と接続するための動脈接続部12を有する脱血チューブ14と、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う膜型の人工肺16と、静脈と接続するための静脈接続部18を有する送血チューブ20を含む。血液を分流する動脈は、鎖骨下動脈、前腕動脈、橈骨動脈、大腿動脈などとすることができ、適切な部位を選択する。また、ガス交換後の血液を戻す静脈は、鎖骨下静脈、前腕静脈、橈骨静脈、大腿静脈などとすることができる。
【0011】
動脈接続部12は、動脈血を分流し、脱血チューブ14に血液が送られればよいため、注射針とすることができる。また、繰り返し呼吸補助装置を用いる患者に対しては、動脈に動脈ポートを埋設し、装置使用時に、これに脱血用カニューレを接続して分流血が脱血チューブに流れるようにする。脱血チューブ14は、従来からの人工肺のバイパス用チューブを用いることができる。
【0012】
人工肺16の入口には、脱血チューブ14のもう一方の端が接続され、動脈より分流された血液が、ここから送り込まれる。人工肺16の内部には、中空糸膜などにより構成されたガス交換フィルタが配置され、送り込まれてきた血液のガス交換を行う。人工肺16には、ガス交換に必要な酸素を供給する酸素ライン22が接続されている。酸素ライン22は、酸素ボンベなどを含む酸素供給源24と、これより酸素を人工肺16の酸素供給ポート26へ送る酸素供給チューブ28を含む。ガス交換後の気体、すなわち血液中からの二酸化炭素と、ガス交換されずに残った酸素は、人工肺16に設けられた排出ポート30より排出される。
【0013】
人工肺16でガス交換された血液を静脈に戻す送血チューブ20には、調節弁32が設けられ、この弁の開閉の程度によって、血液の流量調節が行われる。静脈との接続は、前述した動脈と同様、静脈に埋め込まれる静脈ポートと装置使用時に静脈ポートに接続される送血用カニューレにより達成される。送血チューブ20には、その他、血液の流れる主回路10の空気を取り除く空気除去機構が設けられている。以上の人工肺16の血液循環は、動脈と静脈の血圧の差により実現され、血液ポンプを必要としない。このため、簡易な構成の呼吸補助装置が実現できる。
【0014】
脱血チューブ14には、ヘパリンなどの抗血液凝固剤を体外循環路中に供給する抗血液凝固剤供給ライン34が接続されている。この抗血液凝固剤供給ライン34は、シリンジポンプ36などを含む。
【0015】
さらに、主回路10には、人工肺16に並列して配置されるように、差圧検出機構38が設けられている。差圧検出機構38は、シリンダ40と、シリンダの一方の端を脱血チューブ14に連通させる動脈側連通ライン42と、シリンダの他方の端を送血チューブ20の調節弁32に上流側と連通させる静脈側連通ライン44を含む。
【0016】
図2は、差圧検出機構38の詳細な構成図である。シリンダ40は、透明または半透明の材料で構成され、図中上方の端が動脈側に連通され、下方の端が静脈側に連通される。シリンダ40のほぼ中央部には、2枚の仕切り膜46,48が設けられ、動脈側と静脈側の血液が混ざらないようになっている。すなわち、仕切り膜46より図中上方は動脈側に連通された動脈側室50、仕切り膜48より図中下方は静脈側に連通された静脈側室52となっている。さらに、仕切り膜46,48の間の部分には、透明または半透明の液体、例えば生理食塩水が満たされている。また、シリンダ40の表面には、軸方向に目盛り54が刻設されている。
【0017】
仕切り膜46,48は、膜面の全ての方向に対して弾性を有する材料で構成され、例えば、材料として天然ゴムや合成ゴムが使用される。そして、動脈側室50と静脈側室52の差圧により、例えば図3のように変形する。目盛り54は、この仕切り膜46,48の変形量を読みとるために設けられている。変形量hは、前記差圧と関数関係にあり、よって、この変形量hは、主回路10の、動静脈側連通ライン42,44と分岐する点の間の圧力差ΔPと関数関係にある。圧力差ΔP、この圧力差が生じている区間の流路抵抗R、血液の粘度μとすれば、血液の流量Qは、
【数1】
Q=(1/Rμ)ΔP
で表される。流路抵抗Rは装置固有の一定値と考えられ、さらに同一の部品を用いて作成された装置であれば、大きく異なることはないと考えられる。血液の粘度μも、厳密には患者ごとに異なるが、およその流量を求めればよい場合、定数として扱うことも可能である。圧力差ΔPは、前述のように仕切り膜46,48の変形量hと関数関係にあるから、この変形量hと血液の流量Qの関係をあらかじめ求めておけば、装置使用時に、変形量hを目視しつつ、調節弁32を操作して、所定の変形量hとなるように調節すれば、所定の流量Qを得ることができる。
【0018】
仕切り膜46,48の変形量hを確実に目視するために、仕切り膜を2枚設け、この間を透明の液体で満たしている。変形を容易に目視するために液体は透明であることが望ましいが、少なくとも変形が目視できる程度の透明度の液体であればよい。また、シリンダ40についても、透明であることが好ましいが、内部の変形を目視することができれば、透明度のやや劣る材料を用いることができる。
【0019】
また、膜の変位の読み取りに関し、光源と、光源からの光の内、仕切膜46,48の間の透明の部分を透過した光を受光する受光素子を配列し、受光素子の出力により透明部分の位置を検出する構成を採ることもできる。透明部分の移動を検出することで、膜の変位を電気信号に変換することができる。この信号について、2乗平均等の処理を行い、これに基づき流量を算出することもできる。
【0020】
図4は、差圧検出機構の他の例を示す図である。差圧検出機構60は、一方が動脈側、他方が静脈側に通じているシリンダ62を有している。シリンダ62内には筒状の蛇腹64と膜板66を含む仕切膜68を有する。この仕切膜68により、動脈側と、静脈側を仕切っている。仕切膜68は、例えばステンレスの薄板で構成することができる。また、仕切膜68は、中立位置、すなわち体外循環血流量が0の位置に向けてばね70によって付勢されている。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、簡易な構成の流量検出機構を提供することができ、呼吸補助装置の全体構成についても簡易、小型のものとすることができる。また、操作も容易となり、専門の操作者以外のものであっても、流量調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態の呼吸補助装置の概略構成図である。
【図2】 差圧検出機構の詳細構成図である。
【図3】 差圧検出機構の詳細構成図であり、仕切り膜が変形した状態を示す図である。
【図4】 差圧検出機構の他の例を示す図である。
【符号の説明】
10 主回路、14 脱血チューブ、16 人工肺、20 送血チューブ、32 調節弁(流量調節手段)、38 差圧検出機構(差圧検出手段)、40 シリンダ、46,48 仕切り膜(仕切り手段)、50 動脈側室、52 静脈側室、54 目盛り。
Claims (4)
- 患者の血液の一部を脱血し、人工肺にてガス交換を行った後、患者の体内に血液を戻す体外循環を患者の動脈の血圧のみにより行い、肺機能の補助をする呼吸補助装置であって、
酸素源から供給される酸素と血液内の二酸化炭素とのガス交換を行う人工肺と、
患者の動脈から血液の一部を分流し、動脈の血圧により人工肺へと血液を送る脱血チューブと、
人工肺から患者の静脈へとガス交換後の血液を戻す送血チューブと、
前記脱血チューブと前記送血チューブの間に配置され、動脈側と静脈側の差圧を検出する差圧検出手段と、
前記検出された差圧に応じて人工肺を通過する血液の流量を調節する流量調節手段と、
を有し、
前記差圧検出手段は、
前記脱血チューブと連通する動脈側室と、
前記送血チューブと連通する静脈側室と、
前記動脈側室と前記静脈側室とを仕切り、動脈側と静脈側の差圧に応じて移動または変形可能であって、中立位置に向けて付勢されている仕切り手段と、
前記仕切り手段の移動または変形量を検出するための手段と、
を含む、
呼吸補助装置。 - 請求項1に記載の呼吸補助装置であって、前記仕切り手段は、ゴム状弾性を有する膜であり、この膜自体の有する弾性により中立位置に向けて付勢される、呼吸補助装置。
- 請求項1に記載の呼吸補助装置であって、前記仕切り手段は、2枚のゴム状弾性を有する膜を有し、これらの膜の間は透明の液体で満たされ、この膜自体の有するゴム状弾性により中立位置に向けて付勢される、呼吸補助装置。
- 請求項1から3のいずれかに記載の呼吸補助装置において、前記差圧検出手段は、内部に、前記仕切り手段に仕切られた前記動脈側室と前記静脈側室が形成された略透明のシリンダを含み、当該シリンダの表面には、前記仕切り手段の移動または変形を読むための目盛りが設けられている、呼吸補助装置。
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