JP4333204B2 - 繊維強化樹脂製部材の製造方法およびその成形用両面金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば移動体用機器、建築材料、各種産業機器の部材などに好適に使用できる、繊維強化樹脂(以下、「FRP」と略記する。)製部材の製造方法および該製造方法で使用する両面金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、FRP製成形体を製造する際に用いる加圧注入成形方法として、自動車のボンネットや航空機のドアフレームなどの製造に用いられるいわゆるレジン・トランスファー・モールディング法(RTM)が知られている。この成形方法は、内部に成形すべき所定形状のキャビティを有する型内に樹脂を圧入し、その圧入された樹脂を型内に配置した繊維基材を介して流動・含浸する方法である。このRTM成形方法は、ハンドレーアップ成形方法、スプレーアップ成形方法や真空バッグ成形方法に比べ、製造工程の省力化、製造環境の改善、品質の再現性、成形技能等の制約から脱却できるため、近年、成形効率の良い製造方法として注目を集めている。
【0003】
しかし、RTM成形方法は型内に配置される繊維基材の樹脂流動抵抗が高いため、さらにRTM成形サイクルを短くするべく注入圧力を高くしても飛躍的な樹脂注入時間短縮を望むことができず、また注入圧力が繊維基材に直接負荷するため型内に配置された繊維基材にしわが寄ったり、型内の樹脂の流動しやすい部分、すなわち流動抵抗の低い部分ばかりに樹脂が供給され、成形品の一部に未含浸部分やピットができてしまうなどの問題点があった。
【0004】
これに対し、特許文献1では、片面型(下型)全体を可撓性のあるバギングフィルムで覆い密着させた後、真空吸引した状態でバッグ内の繊維基材に樹脂を含浸させる減圧注入方法を採用し、その際片面型に樹脂の進入溝を設けることにより、未含浸部分を少なくすると共に、短時間で繊維基材全体に樹脂を含浸できることが記載されている。しかし、この方法は樹脂を注入する圧力が負圧であるため、注入圧力を高くしても0.1MPa程度の真空圧であり、樹脂注入速度をそれ以上に早めることができないという問題があった。そこで、加圧注入により樹脂の含浸速度を早める方法をとると、上型として使用しているバギングフィルムが可撓性を有しているため、その加圧力によりバギングフィルムが浮き上がってしまい、正常な寸法精度を持つ成形品を得ることができなかった。また、樹脂の硬化時間を短縮し製造サイクルを短くするため、注入時の樹脂温度を高くしたり、または注入時の型温度を高くしてもよいが、この成形方法においては、大気とバギングフィルム間の熱伝導率が小さいため、バギングフィルム側の熱放出が極めて悪く、型内で発生した樹脂の反応熱の逃げ場がなくなり、成形品の厚みの大きい部分で樹脂の暴走反応が始まる可能性があった。
【0005】
さらに、片面型をバギングフィルムで覆い、型内を真空にすることで所定形状の型を作り出す製造方法では、バギングフィルムが片面型の凹凸に追従できない問題や、片面型とバギングフィルムの隙間からの真空漏れで所定形状ができない問題があり、成形品の寸法精度が安定しないばかりか、成形品における繊維基材の体積含有率が低くなってしまう問題もあった。
【0006】
そればかりか、上記可撓性のあるバギングフィルムは、シリコンシーラントなどの粘着材で製造ごとに片面型に張り付けなくてはいけないため、非常に時間がかかる作業であり、多くの副資材がゴミとして残るため、環境にも良くない製造方法であった。
【0007】
以上のように、FRP製部材のRTM成形方法において、型内に樹脂を未含浸部分やピットなく高速で含浸せしめ、安定した寸法精度のFRP成形品が得られるとともに、繊維基材の体積含有率を高く安定させることのできる改良技術が切望されていた。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−62932号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決すること、すなわちRTM成形方法において、型内に樹脂を未含浸部分やピットなく高速で含浸せしめ、安定した寸法精度の成形品が得られるとともに、繊維基材の体積含有率を高く安定させることのできる、FRP製部材の製造方法および該製造方法で使用する両面金型を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した問題点を解決するために、樹脂流路溝を加工した両面金型内で加圧注入成形することで、バギングフィルムを上型としたRTM成形方法では到底達し得なかった短い時間で樹脂を注入・含浸し、また安定した寸法精度および高い繊維基材の体積含有率を持つFRP製部材の製造方法を見いだすに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るFRP製部材の製造方法は、金型内部に成形部材用キャビティを有し、その内面の一部または全面に、その断面積が金型内面において変化し、かつ、抜き勾配が0.5°以上30°以下の樹脂流路溝が形成された、上型と下型とからなる両面金型の前記キャビティ内に、強化繊維となる成形部材用基材および/または中子用基材を配置し、両面金型を密閉した後、キャビティ内部を真空吸引した状態で、両面金型の注入口から0.05以上5MPa以下の範囲内の注入圧力で前記樹脂流路溝を経由させ、高圧注入ステップと低圧注入ステップで構成される工程により、成形部材用基材および/または中子用基材内部に樹脂を加圧含浸し、その後、硬化、脱型することを特徴とするものからなる。
【0012】
また、本発明に係る繊維強化樹脂製部材成形用の両面金型は、上型と下型とからなる両面金型であって、その合わせ面に少なくとも、樹脂の注入口と、均一注入用ランナーと、成形部材用キャビティと、樹脂溜め用ランナーと、該樹脂溜め用ランナーに接続された樹脂出口用ベントとからなる樹脂流路系が設けられた両面金型において、キャビティに接する金型内面の一部または全面に、前記均一注入用ランナーと前記樹脂溜め用ランナーの一方あるいは両方に接続する複数本の樹脂流路溝が形成されており、樹脂流路溝の深さが0.5mm以上30mm以下、幅が0.5mm以上20mm以下であり、かつ樹脂流路溝のキャビティ表面に対する表面積の比率が3%以上30%以下であり、かつ樹脂流路溝の断面積が金型内面において変化し、かつ、抜き勾配が0.5°以上30°以下であることを特徴とするものからなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のFRP製部材の製造方法の望ましい実施の形態を図面を用いて説明する。
(本発明の両面金型の説明)
まず、本発明の製造方法に用いる本発明の両面金型の一例を説明する。図1はキャビティ13に繊維基材4が配置された状態を示している両面金型1、2の縦断面図、図2は図1の金型のA−A矢視の横断面図、図3は両面金型内での樹脂の流動状態を示した図1の金型のB−B矢視の平面図、図4は図2の樹脂流路溝3の部分拡大図である。
【0014】
図1〜4において、1は、内面に樹脂の流路となる樹脂流路溝3が加工された上型、2は、下型であり、これら二つの型で両面金型を構成し、図示しない型締め手段で両金型が一体になるように構成されている。4はキャビティ13内に配置されたFRP製成形部材の補強繊維となる繊維基材であり、必要に応じて図示は省略したがさらに中子用基材が配置される。両面金型1、2の合わせ面17には、この繊維基材4に樹脂を含浸するための注入口10から樹脂を注入し、均一供給のためのランナー6に樹脂を導き、その後ゲート7を通過して上型内面の複数本の樹脂流路溝3(図4参照)に樹脂が供給される樹脂流路系が設けられている。そして樹脂は樹脂流路溝3を流れると同時にキャビティ内13に配置された繊維基材4の内部にその毛細管現象により進入する。キャビティ内13の繊維基材4に樹脂が十分含浸した後、余剰の樹脂は隙間8を通過して樹脂溜め用ランナー9に蓄えられることで、繊維基材4への樹脂含浸工程が終了する。なお、樹脂がキャビティ13内を流動する際にキャビティ13から押し出される空気、ガスや余剰樹脂は、ベント11から排出される。すなわち本発明の両面金型1、2の合わせ面17には、図3に示すように、注入口10→ランナー6→ゲート7→複数本の樹脂流路溝3→繊維基材4→隙間8→樹脂溜め用ランナー9→ベント11からなる樹脂流路系が設けられている。
【0015】
本発明の金型において、注入口10とは両面金型1、2内に樹脂を注入する入り口のことである。注入口の配置される位置および数は、繊維基材4に樹脂が未含浸部分がない状態で含浸すれば特に限定されるものではない。また、ランナー6とは、注入口10から両面金型1、2内に注入された樹脂をキャビティ13の周囲まで導く流路、キャビティ13とは、両面金型1、2のそれぞれの内面に形成された空間により作り出される、これから成形すべきFRP製部材の空間のことである。また、ゲート7とは、ランナー6からキャビティ13に樹脂を均一に供給するための隙間のことであり、ランナー6の長手方向に見た断面積がゲート7の断面積より大きいと、ランナー6よりゲート7を通過する樹脂の流路抵抗が小さくなるため、樹脂をゲート7の幅方向のどの部分においても、ほぼ均一な圧力でキャビティ13内に樹脂を供給できるようになっている。ベント11は、キャビティ13内に残存している空気や、樹脂の反応に伴い発生するガスまたキャビティ13内から押し出された余剰樹脂を排出するための出口であり、キャビティ13内から排出できなかった空気が溜まってできる空気溜まりを少なくすることができ、未含浸部分やピットの少ない成形品とすることができる。
【0016】
本発明の両面金型1、2の概略構成は以上の通りであるが、その特徴を構成要素毎にさらに詳しく説明する。
【0017】
本発明の金型は、上述したように樹脂の加圧注入成形をしても、その注入圧力でキャビティ形状が変形しないように、型締め手段により一体に構成された両面金型となっている。そのため金型材質は、鉄、鋼、アルミニウム、ニッケル、銅、亜鉛合金等の金属製とされている。このような剛直な両面金型を使用し、樹脂を加圧注入成形することで、両面金型1、2内に配置した繊維基材4への樹脂含浸時間を短くすることができるばかりか、得られるFRP製部材が他部材との取り合い時の寸法精度が問題になる組み立て部品の場合においても、金型の加工精度を成形品の寸法精度に直接反映することができ、安定した寸法精度を有した成形品を得ることができる。
【0018】
また、本発明の剛直な両面金型1、2を使用することで、従来の可撓性のあるフィルムを上型とするときとは異なり、キャビティ13内の容積が変化しないので、注入した樹脂には常に均一な圧力がかかり、さらに高い圧力がかけられるため、毛細管現象による繊維基材4への樹脂の含浸が促進される。
【0019】
さらに、本発明の両面金型は金属製であるので、従来の樹脂や木材やセラミックスからなる型に比べて熱容量が大きく、また熱伝導率も高いため、樹脂をキャビティ内に注入・含浸した後、反応・硬化する際に発生する熱を両面金型1、2で吸収することができ、樹脂反応時の蓄熱により起こる樹脂の暴走反応を防ぐことができるので好ましい。
【0020】
本発明の両面金型は、樹脂流路溝3を両面金型1、2の内面の一部または全面に複数本形成しているので、両面金型1、2内に注入された樹脂の流動抵抗を著しく小さくすることができる。すなわち、繊維基材4等の充填物がない樹脂流路溝3部分の樹脂流動抵抗が、繊維基材4の充填されているキャビティ13内の樹脂流動抵抗よりも小さくなり、その結果、注入樹脂が樹脂流路溝3の方を優先的に流動することになる。その結果、樹脂の注入圧力が繊維基材4に直接作用せず、基材4の周囲から均一な圧力でまんべんなく進入することとなり、樹脂の注入圧力で繊維基材4にしわが発生せず、品質のよいFRP製部材を得ることができる。
【0021】
樹脂流路溝3の金型内面での配置例としては、図3に示すように連続した樹脂流路溝3が平行または放射線状に配列された状態や、連続した樹脂流路溝3がメッシュ状に配列された状態、または放射線状に配列した樹脂流路溝3と環状に配列した樹脂流路溝3が交錯した状態などがあるが、樹脂が樹脂流路溝3に沿ってキャビティ13全体に供給出来るのであればどのような配置方法であっても構わない。
【0022】
図3に示すように、樹脂流路溝3は、キャビティ13内へ注入樹脂がスムーズ流れ込み排出出来るよう、両面金型のゲート7または隙間8を介して、ランナー6とベント11の一方あるいは両方に接続していることが好ましい。ただし、注入樹脂の注入圧力が高い場合は、繊維基材4の内部にその毛細管現象により樹脂が含浸する前に、注入樹脂がベント11に流れ出してしまうことがあり、この現象により未含浸部分やピットが多くなることがあるので、樹脂流路溝3がベント11に接続していない方がより好ましい。好ましくは樹脂流路溝3がベント11の手前5mm以上70mm以下の位置で止まっていると良い。
【0023】
樹脂流路溝3の形状としては、キャビティ13に接する金型内面であれば直線であっても、曲線であっても構わない。キャビティ13表面の幅が場所によって異なる場合は直線形状の樹脂流路溝3だけではキャビティ全面の一部に樹脂流路溝3の全くない部分が出来てしまい、その部分には樹脂が全く供給されないため、未含浸部分となり好ましくない。好ましくは、キャビティの外周形状に沿って曲線の樹脂流路溝3を配置し、さらにキャビティ13の幅方向に対し均等に配置されていると良い。この時、隣り合う樹脂流路溝の間隔が広がることによる、繊維基材4に樹脂の未含浸を避けるため、隣り合う樹脂流路溝3の間隔は500mm以下であると好ましい。さらに好ましくは300mm以下である。
【0024】
樹脂流路溝3の深さとしては、0.5mm以上30mm以下であると良い。樹脂流路溝3の深さとは図4の矢視間寸法14のことである。これが30mmより大きいと、樹脂の成形収縮により成形品の表面に樹脂流路溝3に沿ったひけが発生し、FRP製部材の見栄えが大変悪くなるので好ましくない。0.5mmより小さいと、樹脂の流動抵抗が大きくなり、短時間でキャビティ13内に樹脂を供給することができなくなり好ましくない。好ましくは1mm以上10mm以下の範囲内である。また、樹脂流路溝3の幅としては、0.5mm以上20mm以下であると良い。樹脂流路溝3の幅とは図4の矢視間寸法12のことである。これが20mmより大きいと、繊維基材4が溝に入り込み、実質的に溝の断面積が減ってしまい、溝のサイズに対して期待できる樹脂の流動挙動を満たすことができなくなるばかりか、成形品に繊維基材4のくびれた形状ができてしまい好ましくない。0.5mmより小さいと型を非常に細いドリルで加工することになり、加工作業が困難なものとなるので好ましくない。好ましくは1mm以上15mm以下の範囲内である。
【0025】
樹脂流路溝3のキャビティ13表面全体に対する面積比率としては、3%以上30%以下である両面金型1、2を使用すると良い。3%より小さいと、樹脂の流動抵抗が大きくなり、繊維基材4に注入圧力が直接作用し、繊維基材4にしわが寄るため、成形品内部に生じる残留応力により成形品の変形が生じ、好ましくない。30%より大きいと、成形時に使用する樹脂量が極めて多くなり、重量の重いFRP製部材になるばかりか、両面金型1、2内に注入した樹脂が硬化する前にベント11から排出される、いわゆるウエットスルー現象が顕著に起こるようになるため、使用する樹脂の無駄が多くなり、生産コストが高くなる。好ましくは5%以上25%以下である。
【0026】
また、図3に示すように樹脂流路溝3は、1本の樹脂流路溝3が途中で複数本に分岐していても構わない。上述のように曲線状の樹脂流路溝3を配置し、キャビティ13表面の幅が場所によって異なる製品形状に対応するときは隣り合う樹脂流路溝3の間隔が500mmより大きくなってしまう部分があるが、この場合は、隣り合う樹脂流路溝3の間隔が500mmより大きくならないよう、1本の樹脂流路溝3を複数本に分岐すると解決できる。このとき、分岐後の複数本の樹脂流路溝3の長手方向の断面積の合計と、分岐前の樹脂流路溝3の長手方向の断面積の比が0.5以上2.0以下であると、樹脂流路溝3内での樹脂量の過不足をなくすことが出来る。さらに好ましくは0.7以上1.5以下である。逆に複数本の樹脂流路溝3が途中で1本に結合していても構わない。上述のように曲線状の樹脂流路溝3を配置し、キャビティ表面の幅が場所によって異なる形状に対応するとき、隣り合う樹脂流路溝3の間隔が非常に小さくなる場合、複数本の樹脂流路溝3を1本に結合することで、樹脂流路溝3を合理的に配置することができ好ましい。この時、結合前の複数本の樹脂流路溝3の長手方向の断面積の合計と、結合後の樹脂流路溝3の長手方向の断面積の比が0.5以上2.0以下であると、樹脂流路溝3内での樹脂量の過不足をなくすことが出来好ましい。さらに好ましくは0.7以上1.5以下である。
【0027】
樹脂流路溝3の断面積は、金型内面において変化している。キャビティ13内に配置する繊維基材4には、繊維基材の厚み斑が存在するため、樹脂流路方向に一定の断面積を持つ樹脂流路溝3では未含浸部分の多いFRP製部材しか成形できず、そのような場合は樹脂流路溝3の断面積を変化させることで、繊維基材4全体に樹脂をまんべんなく供給することが出来るようになる。その際、樹脂流路溝3の断面積は、得られるFRP製部材に出来る未含浸部分の位置により、局部的にあるいは流路方向に沿ってランダムに適宜制御すべきであり、その断面積を大きくしても小さくしても差し支えない。要は樹脂が繊維基材4の全体にまんべんなく含浸できるように流路断面積を変化させるのである。
【0028】
樹脂流路溝3の抜き勾配θ(図4参照)は、0.5°以上30°以下である。0.5°より小さいと、脱型時、成形品と両面金型1、2の摩擦大きく脱型することができず、無理矢理脱型すると成形品の表面にひびが入り、健全な製品を得ることができない。30°より大きいと、繊維基材4が樹脂流路溝3に落ち込んでしまい、繊維基材4にしわが寄り好ましくない。断面形状としてはV字、U字、半円、円弧、台形、多角形などを好適に用いることができる。ここで抜き勾配とは、成形品を型から脱型するために、成形品が抜けるよう型に付与するテーパーのことを言う。好ましくは、金型への樹脂の濡れ性の観点から円弧が良い。
【0029】
樹脂流路溝3は上型1と下型2のどちらか一方に加工されていても、また両方に加工されていても構わない。要は上型1と下型2の合わせ面において、どちらかの型のあるいは両方の型のキャビティに接する金型内面に樹脂流路溝3が加工されていればよい。仮に一方の型のみに樹脂流路溝を設けた場合には、樹脂流路溝3のない一方の面を意匠面とすることができ好ましい。また、成形品の厚みが厚いとき、上型1と下型2の両方に樹脂流路溝3を加工することで、繊維基材4の毛細管現象で含浸する距離を軽減することができ、厚み方向の含浸斑を無くすことができるので好ましい。
【0030】
また、両面金型1、2は、密閉できる型構造であれば良いので、上下型だけでなく、左右型や傾斜型などでも良い。
【0031】
また、注入口10、ランナー6、ゲート7、ベント11などは、両面金型を作製した初期の状態では、樹脂の流路が適正化されていなく、得られるFRP製部材に未含浸部分が多発することがほとんどであり、この時両面金型の注入口10、ランナー6、ゲート7、ベント11の一部を埋め、両面金型内の樹脂の流れを強制的に変えることで未含浸部分がなくなることがあり、このような樹脂流路系の形状に変更しても良い。樹脂流路系を一部埋める材料として、例えばポリパテなどの有機系樹脂硬化物や、粘土などの無機系硬化物や、金型と同じ材質の金属などが挙げられる。
(使用する繊維基材および注入樹脂の説明)
FRP製部材を構成する補強繊維としては、ポリアラミド、ナイロン6、ナイロン66、ビニロン、ビリデン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリポロピレン、ポリウレタン、アクリル、ポリアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサドール、ポリベンゾビスオキサドール、ポリグリルアミド、ビニロン、PBT、PVA、PBI、PPSなどからなる有機繊維や、炭素繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイド繊維などの無機繊維であっても、実際の製品形状としたとき十分な全体剛性を得ることができればいかなる繊維であっても良い。
【0032】
また、上記の繊維を組み合わせて使用しても差し支えないが、中でも炭素繊維は、耐熱性も高く、繊維の弾性率が高いので、FRP製部材の一部または全部に含まれていると、FRP製部材の軽量化を促進させることができるので好ましい。その繊維形態としては、長繊維、短繊維またはその組み合わせであっても良い。
【0033】
繊維基材の形態としては、マット、織物、ニット、ブレイド、1方向シートなどを好適に使用することができる。また、これら繊維基材を組み合わせて使用しても良い。
【0034】
FRP製部材を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、変性エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、または、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂、およびこれらの樹脂をアロイ化した変性樹脂などが挙げられるが、どのような樹脂であっても良い。
【0035】
FRP製部材の構成としては、FRP単体で構成される成形品、FRPスキン層および中子基材で構成されるサンドイッチ構造の成形品またはカナッペ構造の成形品などがあげられる。サンドイッチ構造成形品およびカナッペ構造成形品に用いられる中子基材としては、プラスチック、セラミックス、金属の発泡体または多孔質体またはハニカム部材、シンタクチックフォーム、バルサなどの天然多孔質体、またはそれらの組み合わせ等を好適に用いることができる。さらに、無垢の金属、プラスチックや、セラミックからなる部品を適宜配置し、一体製造しても構わない。
【0036】
以上が本発明の両面金型および繊維基材の全体構成である。次に上記両面金型と基材を用いた本発明の製造方法を工程順に具体的に説明する。
(1.金型準備工程)
まず、図1〜4で示した両面金型1、2を準備する。両面金型を開いた後、両面金型1、2内を清掃し、離型処理を行う。この時、樹脂流路溝3の無いキャビティ13表面であれば、ゲルコートやフィルムや表面意匠成形体などの表面意匠膜を形成してもよい。
(2.基材準備工程)
前述した繊維基材4を、キャビティ13内に収納できる所定形状に裁断し、キャビティ13内に所定の積層構成で配置する。この時、基材にできる限りしわが寄らないよう配置する。また、必要な場合は樹脂流路溝3が配置されている型のキャビティ13表面と繊維基材4との間にピールプライ5を介在させる。ピールプライとは得られる成形品から、後に成形品から引き剥がすことのできる不織布のことである。ピールプライ5を補助的に介在させ成形したFRP製部材は、FRP製部材表面に転写された樹脂流路溝3部分の樹脂およびピールプライを一緒に除去することで、成形品に残存する帯状の突起をなくすことができ、表面性状の均一なFRP製部材を得ることができるばかりかFRP製部材の重量を軽減することができ好ましい。ピールプライ5としては、樹脂流路溝3から繊維基材4に樹脂を透過させることができれば良く、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維の織物や不織布などが挙げられる。
【0037】
また、メディアと呼ばれるメッシュ状基材を該ピールプライと型のキャビティ表面との間に配置してもよい。メディアを配置することで、樹脂流路溝3のみ、すなわち線状で型の製品面内に樹脂が供給するのに対して、面状で型の製品面内に樹脂が供給することとなり、さらに均一かつ高速に型のキャビティ13内に樹脂が供給できるようになり、樹脂の未含浸部分が生じる可能性をさらに減らすことができるようになるので好ましい。メディアは、型内での樹脂流動を補助的に促進できればどのようなものであっても構わなく、金属メッシュ、プラスチックメッシュなどがある。
(3.型締め工程)
続いて両面金型1、2を型締めする。両面金型1、2の型締め構造は、樹脂注入圧力に耐えることができれば特に限定されるものではない。例えば、油圧、空気、水圧、真空圧、ボルト、クランプ、上型の自重などの手段である。
(4.樹脂注入工程)
続いて、両面金型内に樹脂を注入する。
【0038】
本発明の樹脂注入圧力は0.05MPa以上5MPa以下の範囲内である。ここで樹脂注入圧力は両面金型の注入口に樹脂が注入される直前の位置で測定した値である。0.05MPaより小さいと、繊維基材4への樹脂の含浸速度が遅いため、繊維基材4全体に樹脂が含浸する前に硬化してしまい、未含浸の多い成形品となり好ましくない。5MPaより大きいと、繊維基材部分が受け持つ樹脂注入圧力が大きくなるため繊維基材4にしわが寄り、成形品中の残留応力によりFRP製部材がそってしまい、寸法精度の良い成形品を得ることができない。好ましくは0.1MPa以上3MPa以下の範囲内である。
【0039】
樹脂の注入時、注入前の樹脂温度および両面金型1、2の温度を温調しておくと良い。注入前の樹脂温度を本範囲内の温度とすることで、樹脂の粘度を下げることができ、注入時の樹脂流動速度を早めることができる。また両面金型を温調しておくことで、その樹脂温度を維持したままキャビティ内へ樹脂を供給することができるため、基材への樹脂含浸を短時間で完了することができるばかりか、大きなサイズの成形品にも樹脂を未含浸部分なく含浸することができるようになり好ましい。温度範囲としては、使用する樹脂の種類によっても異なるが、20℃以上150℃以下の範囲に温調できると良い。20℃より低いと、樹脂の粘度が高すぎ、150℃より高いと樹脂の硬化反応が非常早く起こるため、キャビティ13内全体に樹脂を供給することができない。この時、注入前の樹脂温度と両面金型の温度は同じである必要はない。
【0040】
また、加圧注入工程は、高圧注入ステップと低圧注入ステップから構成されている。樹脂の加圧注入時、キャビティ13内の端部に空気が溜まってしまったとき、加圧注入工程で注入圧力が一定であると、空気がキャビティ13内の端部から動くことができなく、未含浸部分の多い成形品となってしまうため、注入時の樹脂に圧力変化を作ることで、キャビティ13内の端部に溜まった空気に動きをつけることができ、両面金型1、2の型外に空気を押し出すことができるようになる。この高圧注入ステップと低圧注入ステップのサイクルを複数回かけることが好ましい。ここで、高圧注入ステップと低圧注入ステップの注入圧力は、0.05MPa以上5MPa以下の範囲内の圧力のことである。
【0041】
また、両面金型1、2内を真空吸引する。真空吸引することで型内に残存する空気を吸引除去し、かつ樹脂が型内を流動する際にキャビティ13内の端部へ追いやられる空気を吸引除去することができるため、両面金型1、2内の空気溜まりにより、発生する樹脂の未含浸部分を軽減することができるばかりか、両面金型1、2内を負圧にすることでキャビティ13内の樹脂流動速度を促進でき、より短時間で繊維基材4への樹脂の含浸することができる。また、真空吸引により樹脂中に含まれる微小気泡を吸引除去することができるので、得られるFRP製部材も、断面にボイドの少ない成形品となる。好ましい真空圧の範囲は0.05MPa以上0.1MPa以下である。0.05MPaより小さいと、樹脂中に残存する微小気泡を吸引除去することができないので好ましくない。また真空圧はたかだか0.1MPaである。さらに真空吸引に関しても、注入圧力同様、真空圧を0.05〜0.1MPaの範囲内で変動させることで、キャビティ13内の端部に溜まる空気に動きつけ、両面金型1、2の型外に空気を除去することができるので好ましい。
(5.樹脂硬化工程)
両面金型1、2全体を適当な加温手段で注入した樹脂の硬化温度に温調し、両面金型1、2内の樹脂が十分硬化するまで放置する。
(6.脱型工程)
両面金型1、2を開き、成形品を型内から脱型する。両面金型1、2の脱型方法は、特に限定されるものではないが、例えば脱型ピン、エアー、両面金型1、2の温調、人力などである。
(作用および効果の説明)
本発明の金型は、上型と下型とからなる剛直な金属製の両面金型であり、両型の合わせ面17に高い面圧をかけられるため、繊維基材4をキャビティ13内に高密度で詰め込むことができ、よって繊維基材4の体積含有率の高いFRP製部材を製造することができる。
【0042】
また、両面金型1、2内に導かれた樹脂が金型内面に形成された複数本の樹脂流路溝3を流動することで、キャビティ13全体に均一、かつ高速に供給され、その後、繊維基材4にその毛細管現象により繊維基材4の全体にまんべんなく均一に含浸する含浸工程へと移行するため、得られるFRP製部材のサイズが大きなものであろうとも、また、複雑な形状を有するものであろうとも、未含浸部分やピットの少ないFRP製部材を製造することができるようになる。
【0043】
さらに、従来法のバギングフィルムのような可撓製のある上型を使用する成形方法に対して、キャビティ13内の体積がほとんど変化しないため、得られるFRP製部材の繊維基材4の体積含有率の変動率が非常に小さくなり、同じ品質のFRP製部材を安定して生産することができるようになる。
【0044】
さらに、本発明の両面金型を使用することで、従来のバギング法を採用したときのような再利用できないフィルム等の多量のゴミの発生が減ることになり、環境的にも優しい成形型となり好ましい。
【0045】
以上により、本発明により製造されるFRP製部材は、寸法精度が良く、繊維基材の体積含有率が高いことから、自動車や鉄道車輌や航空機などの輸送機器、また壁や床材などの建築材料、および各種産業機器の部材として好適である。
【0046】
【実施例】
以下、本発明にかかる金型を用いた実施の態様(参考実施例、参考比較例)に基づき説明する。
【0047】
(参考実施例1)
使用した型は、図1の金型において、断面形状が幅3mm、深さが3mm、抜き勾配が2°の台形形状をした樹脂流路溝3を、隣り合う樹脂流路溝の間隔が20〜100mmピッチで30本が放射線状に、かつランナー6とベント11の両方に接続して加工された上型1と、樹脂流路溝の加工が施されていない下型2とからなる両面金型である。
【0048】
まず、金型1、2を離型処理した後、繊維基材4として、目付190g/m2の炭素繊維織物(CK6250E、東レ(株)製)のドライクロスをキャビティ形状に6ply(0/90°方向)切り出し、キャビティ13内に配置した。 続いて、ナイロン製のピールプライ5(AIRTECK社製、Release Ply A)をキャビティ形状に切り出し、キャビティ13内の繊維基材4の上に配置した。その後、上下型を密閉し、油圧プレスによって型締めした。この時の型締め圧は7MPaである。この時、型の温度は90℃に設定した。
【0049】
続いて、30℃に温調した樹脂を注入圧5MPaで型内に注入した。また、ベントからは、真空ポンプでガスの吸引を行った。注入した樹脂は、セロキサイド2021P(ダイセル化学工業(株)製エポキシ樹脂)25.0重量部、ERL-4299(ユニオンカーバイド日本(株)製エポキシ樹脂)75.0重量部、ジエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)9.6重量部、SEESORB 704(シプロ化成(株)製、紫外線吸収剤)0.1重量部、リカシッド MH-700(新日本理化(株)製酸無水物)91.3重量部、キュアゾール1,2-DMZ(四国化成工業(株)製イミダゾール)5.7重量部を調合したものである。
【0050】
樹脂がベントからでてきた時点から、3時間、90℃で樹脂の硬化を行い、その後型を開き、脱型し、さらに脱型した成形品13からピールプライおよび溝部分の樹脂14を剥ぎ取り、図5に示す縦1.4m、横2.2m、高さ5mmのFRP製部材15を得た。
【0051】
成形性については、含浸時間は8分であった。また、成形品に未含浸部はなく、繊維基材のしわは見られなかった。さらに、FRP製部材の片面は樹脂流路溝がなく意匠面して十分美しい成形面であり、反対の面は図5に示す樹脂流路溝の跡16が見える成形面となっていた。繊維基材の体積含有率を測定したところ42%であった。得られたFRP製部材は、そりのない品質の優れた成形品であった。
【0052】
(参考実施例2)
樹脂の注入圧を0.05MPaにしたこと以外は、参考実施例1と同じ条件でFRP製部材を成形した。
【0053】
成形性については、含浸時間は10分であった。また、成形品に未含浸部はなく、繊維基材のしわは見られなかった。さらに、FRP製部材の片面は樹脂流路溝がなく意匠面して十分きれいな成形面、また片面樹脂流路溝の跡が見える成形面となっていた。繊維基材の体積含有率を測定したところ40%であった。得られたFRP製部材は、そりのない成形品であった。
【0054】
(参考実施例3)
ベントの手前30mmの部分に位置する樹脂流路溝3をポリパテで埋めて十分硬化させ、ポリパテの不要部分を研磨し、調整し、上型1に加工されている全ての樹脂流路溝3がベントに接続させていない状態にした以外は参考実施例1と同じ条件でFRP製部材を成形した。なお、成形性については、樹脂の含浸時間は10分であった。
【0055】
得られたFRP製部材に未含浸部はなく、繊維基材のしわは見られなかった。さらに、FRP製部材の片面は樹脂流路溝がなく、意匠面として十分美しい成形面であり、また、片面樹脂流路溝の跡が見える成形面であり、反対の面は図6に示す樹脂流路溝の跡18が見える成形品となっていた。繊維基材の体積含有率を測定したところ43%であり、そりのない成形品であった。
【0060】
(参考比較例1)
上型(雄型)に溝が加工されていないこと以外は、参考実施例1と同じ条件でFRP製部材を成形した。成形性については、含浸時間は60分であった。成形品には一部未含浸部があり、また成形品には繊維基材の大きなしわが見られた。さらに、FRP製部材の片面に溝が無いものの、未含浸部分があるため、意匠面として使えるレベルでは無かった。未含浸のない健全な部分で、繊維基材の体積含有率を測定したところ39%であった。得られたFRP製部材は、そりが有り、寸法精度の正しくない成形品であった。
【0061】
(参考比較例2)
下型2として、図2で示す幅3mm、深さ3mm、抜き勾配2°の台形形状をした樹脂流路溝3が20〜100mmピッチで40本、放射線状に加工された下型を使用し、上型1としては型全体をポリプロピレンフィルムからなるバギングフィルムで覆い、空気が漏れないようバギングフィルムの周囲をシール材で接着した後、型内を真空ポンプで真空状態とし、バギングフィルムを下型形状に沿わせた。
【0062】
上記の型を用いたこと以外は、参考実施例1と同じ条件でFRP製部材を製造した。
【0063】
成形性であるが、樹脂の注入圧により、上型として使用しているバギングフィルムが浮き上がり、得られたFRP製部材は、そりが有り、寸法精度の正しい成形品ができなかった。繊維基材の体積含有率を測定したところ5%であった。
【0064】
以上の結果を表1にまとめた。
【0065】
【表1】
【0066】
表1において、まず、評価基準として、液状樹脂の含浸時間については、注入口から樹脂を注入開始した時間とベントから余剰樹脂が出てくる時間のタイム差(分)とした。
【0067】
含浸状態(未含浸)の評価基準は、未含浸部分が成形品の表面積の5%以下を○印とし、5%より大きい場合を×印とした。また、表面状態(表面ピット)の評価基準は、表面ピットの数が50個以下の場合を◎印とし、51個以上100個以下の場合を○印とし、100個より多い場合を×印とした。繊維基材のしわの評価基準は、しわ部分が成形品の表面積の5%以下の場合を○印とし、5%より大きい場合を×印とした。
【0068】
表1に示すように、参考実施例1、2、3のものは樹脂流路溝の加工が施された両面金型に、適正な注入圧で樹脂を注入することで、樹脂の注入圧力が繊維基材に直接負荷することが無くなるため、しわのない成形品を得ることができ、その成形品はしわにより成形品内部に発生する残留応力により、そりのない成形品を得ることができた。また、両面金型によりキャビティ形状がほとんど変化せず、高い面圧内で成形することが出来たため、繊維基材の体積含有率が高く、安定した成形品を得ることができた。
【0069】
一方、参考比較例1では両面金型に樹脂流路溝が加工されていないため、繊維基材に樹脂の注入圧力が直接負荷されるため、繊維基材にしわができることは避けることができなかった。参考比較例2では、両面金型ではなく上型としてフィルムを使用しているため、注入圧力をかけることでフィルムが浮き上がってしまい、目的の製品形状のものを得ることができなかった。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のFRP製部材の製造方法およびその成形用両面型によれば、RTM成形方法において、型内に樹脂を未含浸部分やピットがない状態で高速で含浸せしめることができ、安定した寸法のFRP製部材を製造することができるとともに、繊維基材の体積含有率を高く安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金型内部のキャビティ部分に繊維基材が配置された状態を示す両面金型の縦断面図である。
【図2】図1の金型のA−A矢視の横断面図である。
【図3】図1の金型のB−B矢視の平面図である。
【図4】図2の金型の樹脂流路溝の部分拡大図である。
【図5】本発明の実施例で得られたFRP製部材の概略斜視図である。
【図6】本発明の実施例で得られたFRP製部材の概略斜視図である。
【符号の説明】
1 両面金型の上型
2 両面金型の下型
3 樹脂流路溝
4 繊維基材
5 ピールプライ
6 ランナー
7 ゲート
8 隙間
9 樹脂溜め用ランナー
10 注入口
11 ベント
12 樹脂流路溝の幅
13 キャビティ
14 樹脂流路溝の深さ
15 実施例で成形した成形品の形状
16 実施例で成形した成形品の片表面に残る樹脂流路溝の跡
17 合わせ面
18 実施例で成形した成形品の形状
19 実施例で成形した成形品の片表面に残る樹脂流路溝の跡
Claims (9)
- (A)金型内部に成形部材用キャビティを有し、その内面の一部または全面に、その断面積が金型内面において変化し、かつ、抜き勾配が0.5°以上30°以下の樹脂流路溝が形成された、上型と下型とからなる両面金型の前記キャビティ内に、強化繊維となる成形部材用基材および/または中子用基材を配置し、
(B)両面金型を密閉した後、
(C)キャビティ内部を真空吸引した状態で、両面金型の注入口から0.05以上5MPa以下の範囲内の注入圧力で前記樹脂流路溝を経由させ、高圧注入ステップと低圧注入ステップで構成される工程により、成形部材用基材および/または中子用基材内部に樹脂を加圧含浸し、
(D)硬化、脱型すること、
を特徴とする繊維強化樹脂製部材の製造方法。 - 樹脂流路溝の深さが0.5mm以上30mm以下、幅が0.5mm以上20mm以下であり、かつ樹脂流路溝のキャビティ外表面に対する表面積の比率が3%以上30%以下である両面金型を使用する、請求項1に記載の繊維強化樹脂製部材の製造方法。
- 真空吸引の圧力が0.05MPa以上0.1MPa以下の範囲内である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂製部材の製造方法。
- 成形部材用基材および/または中子用基材と、樹脂流路溝が形成された金型表面との間に、ピールプライを介在させる、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂製部材の製造方法。
- 成形部材用基材の一部または全部が炭素繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂製部材の製造方法。
- 上型と下型とからなる両面金型であって、その合わせ面に少なくとも、樹脂の注入口と、均一注入用ランナーと、成形部材用キャビティと、樹脂溜め用ランナーと、該樹脂溜め用ランナーに接続された樹脂出口用ベントとからなる樹脂流路系が設けられた両面金型において、
(A)キャビティに接する金型内面の一部または全面に、前記均一注入用ランナーと前記樹脂溜め用ランナーの一方あるいは両方に接続する複数本の樹脂流路溝が形成されており、
(B)樹脂流路溝の深さが0.5mm以上30mm以下、幅が0.5mm以上20mm以下であり、かつ
(C)樹脂流路溝のキャビティ表面に対する表面積の比率が3%以上30%以下であり、かつ
(D)樹脂流路溝の断面積が金型内面において変化し、かつ、抜き勾配が0.5°以上30°以下であること、
を特徴とする繊維強化樹脂製部材成形用の両面金型。 - 樹脂流路溝は、金型内面において、1本の樹脂流路溝が複数本に分岐および/または複数本の樹脂流路溝が1本に結合している、請求項6に記載の繊維強化樹脂製部材成形用の両面金型。
- キャビティに接する金型内面の温度を20℃以上150℃以下の範囲に加熱する加熱手段を有している、請求項6または7に記載の繊維強化樹脂製部材成形用の両面金型。
- 樹脂の注入口と、均一注入用ランナーと、成形部材用キャビティおよび樹脂流路溝と、樹脂出口用ベントを有してなる樹脂流路系の一部を埋めることで、樹脂流路系の形状を変更する、請求項6〜8のいずれかに記載の繊維強化樹脂製部材成形用両面金型の調整方法。
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