JP4332775B2 - 極小金属複合繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電気除去や導電性あるいは電磁波遮蔽性などの電磁気的な特性を利用した各種、衣料やクロス類あるいはロープ、フィルター、各種材料に応用可能な金属と有機材料の複合繊維に関する。さらには、各種化学反応に触媒機能として作用し有用な金属種が微粒子化されて有機繊維に固定されたいわゆる高性能な担持触媒や、さらには金属と有機繊維が複合されることで、防刃衣料や耐切創手袋等に用いることができる極めて高い耐刃性を有する金属と有機材料の複合繊維、あるいは防弾チョッキを始めとする防護衣料やスポーツ衣料、あるいはヘルメットや耐衝撃性コンポジット,スポーツ用コンポジット用補強材に用いることができる衝撃吸収繊維、さらには金属の保有する触媒機能を担持させた機能性繊維等に応用することができる、新規な繊維およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属の持つさまざまな特徴、導電性・電磁波遮蔽性・触媒機能を利用して有機繊維の機能を高めることは過去より精力的に試みられてきた。これらの多くは、比較的低融点の各種合金を合成高分子と例えば芯鞘型に複合し(合金は芯部に配置される)ようとするもので、ナイロンを鞘部に、特定の金属酸化物を芯部に配置した複合繊維が開示されており、静電気防止繊維としての応用が記述されている(例えば特許文献1参照)。これら断面複合糸では大部分の金属は糸の中心部に配置され表面との接触面が少ないことにより十分静電効果あるいは金属そのものの効果が出ないことや、断面の均一性を保証するための紡糸技術的な制約(あまりにも金属が少ないと芯鞘構造を安定して形成できない)や導電性等の性能自体を保持するために、糸に非常に高価である金属類を多量に充填する必要があり、経済的とは言えず用途も部分使いなど限られたものであった。また、かかる複合系では繊維の強度は著しく低くなり、例えば衣料用の防塵服等に少量混ぜて使用することは可能であるが、それ自体が強度を保持せしめる、あるいは産業資材用途として大きな強度が必要な用途には使用することが出来なかった。
【0003】
【特許文献1】
特開昭59−47474号公報
【0004】
一方で、単純に強度という面においては、近年「スーパー繊維」と呼ばれる有機系の高強度繊維は、極めて高い強度・弾性率を実現することが可能であり、既に各種産業資材として活用されている。その代表例である高強度ポリエチレン繊維(例えば、特許文献2参照)は有機繊維として非常に高い強度・弾性率を有し、特に耐衝撃性が非常に優れる事が知られており、防弾チョッキや各種防護材料に好適な繊維であるとの地位を獲得しつつある。しかしながら、高強度ポリエチレン繊維の様に、一方向に高度に分子が配向した当該繊維は耐弾性能としては優れるものの、刃物等による切断(横方向からの剪断破壊)を防ぐ耐切創性の観点からは必ずしも性能が優れるとは言えず、防弾性能と防刃機能の双方に優れた高性能繊維の出現が期待されていた。また、高強度ポリエチレン繊維をさらに例とすれば、原料がポリエチレンで絶縁性が高く本来電気的に中性であるため、非常に静電気を帯びやすく、静電気を嫌う用途への適応が不可能であった。さらに、ポリエチレン繊維は基本的に堅牢度の高い染色が困難であり、当該繊維の用途を限られたものにしていた。
【0005】
【特許文献2】
特開昭56−15408号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上の観点に基づき、本発明は金属と複合して尚、高い強度、好ましくは「スーパー繊維」並の極めて高い強度を有する微小金属複合繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、下記の構成からなる。
1.合成高分子を主成分としてなる繊維の微細構造を構成するフィブリルとフィブリルの間隙に沿って、微小な金属微粒子が列状に配位してなることを特徴とする極小金属複合繊維。
2.繊維強度が少なくとも10cN/dtexであることを特徴とする上記第1記載の極小金属複合繊維。
3.合成高分子を主成分としてなる繊維がポリエチレン繊維であることを特徴とする上記第1記載の極小金属複合繊維。
4.繊維形成性高分子を溶融、乾式もしくは湿式法にて得られた繊維状に吐出した未延伸或いは半延伸状態糸に、金属塩の希釈溶液を吸着させ、次いで加熱下で延伸するに際して、その前処理もしくは延伸時に繊維内部で微小な金属粒子を還元析出させることにより繊維の内部に構成されるフィブリル状の構造に沿って列状に金属微粒子を配列せしめることを特徴とする極小金属複合繊維の製造方法。
5.繊維形成性高分子が、ポリエチレンであることを特徴とする上記第4記載の極小金属複合繊維の製造方法。
6.ポリエチレンが、極限粘度10以上の高分子量ポリエチレンであることを特徴とする上記第4記載の極小金属複合繊維の製造方法。
7.極小金属複合繊維を得るまでの総延伸倍率が10倍以上であることを特徴とする上記第4記載の極小金属複合繊維の製造方法。
8.金属塩を含有する高分子溶液をノズルから押し出した後、冷却し、次いで延伸するに際して、その直前あるいは延伸時に金属イオンを還元して微小な金属粒子を析出させることを特徴とする極小金属複合繊維の製造方法。
9.高分子が、ポリエチレンであることを特徴とする上記第8記載の極小金属複合繊維の製造方法。
10.ポリエチレンが、極限粘度10以上の高分子量ポリエチレンであることを特徴とする上記第8記載の極小金属複合繊維の製造方法。
11.極小金属複合繊維を得るまでの総延伸倍率が10倍以上であることを特徴とする上記第8記載の極小金属複合繊維の製造方法。
12.高分子を溶剤に溶解した溶液をノズルから押し出した後、冷却もしくは冷却前の未延伸あるいは半延伸状の中間体に、前記高分子を溶剤と同一の溶剤に金属塩を含有するの溶液を接触させることで、該金属イオンを繊維中間体中に含有せしめ、引き続き延伸するに際して、その直前あるいは延伸時に金属イオンを還元して微小な金属粒子を析出させることを特徴とする極小金属複合繊維の製造方法。
13.高分子が、ポリエチレンであることを特徴とする上記第12記載の極小金属複合繊維の製造方法。
14.ポリエチレンが、極限粘度10以上の高分子量ポリエチレンであることを特徴とする上記第12記載の極小金属複合繊維の製造方法。
15.極小金属複合繊維を得るまでの総延伸倍率が10倍以上であることを特徴とする上記第12記載の極小金属複合繊維の製造方法。
【0008】
以下、本発明を詳述する。
本発明における金属塩とは、金属種としては、それらが有機物、無機物との塩、もしくはキレートを形成するのであれば、アルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属、もしくは遷移金属類から広く選択することが可能である。複合後の導電性等の電気的な性能、あるいは電磁波遮蔽や磁性特性等を期待すれば金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、コバルト等の遷移金属類が好ましい。又、チタン、ニッケル、コバルト、パラジウム以外にアンチモン、ゲルマニウム、アルミニウム等のいわゆる非遷移金属系の金属種の選択も有益である。これら金属が形成する金属塩についても種々の有機塩、無機塩、あるいはキレート化合物として各種選択することを形成する事が可能である。パラジウムを例にとれば、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、塩化パラジウム、臭化パラジウム、硫酸パラジウム等が挙げられる。
【0009】
本発明におけるこれら金属塩の利用方法として、先ずこれら金属塩を適当な溶剤に溶解して溶液Aを得ることが肝要である。従って、適当な有機溶液、無機溶液によいて実質可溶で金属種としてイオンを形成せしめる化合物を選択する事が必要である。
【0010】
一方、高分子材料とその溶剤よりなる紡糸溶液(溶液B)を紡糸して得られた固化した状態の未延伸糸あるいは中間延伸糸を得て、この中に残留していた溶剤を、先ほどの溶液Aで置換する、もしくは拡散により混合させることにより実質的に金属イオンを未延伸糸ないしは中間延伸に含有せしめ、その後、延伸を経て高強度の繊維を得るにおいて、その延伸の前段階あるいは延伸の途中で金属に還元することで、繊維内部に金属原子を析出させるというのが発明の骨子である。
【0011】
このような新規な製造方法を経ることに、非常に新規でかつ有用な繊維を得ることができる。即ち、本発明で得られた繊維の微細構造は図1に透過型電子顕微鏡像で観察した一例を示すごとく、その主要構成組織であるフィブリルとフィブリルの間隙に沿って、非常に微細なサイズ、場合によってはナノオーダーのサイズの金属微粒子が極めて規則的に列状に連なって配位してなる新規な複合構造を有する。このように、析出する金属の粒子が非常に微細な大きさを有していることにより、後に示す繊維の強度そのものの低下を防ぐばかりか(大きい異物が入ると強度低下の欠陥となることが知られている)、金属微粒子の表面を極めて増大させ、金属の持つ導電性や電磁波遮蔽性等各種特性が極めて少量の含有量でも、効率良く発揮されることが期待される。また、金属と高分子との界面の量も圧倒的に多くなり、本発明にかかる繊維の極めて優れた耐切創性、防刃性に寄与していると推定される。
【0012】
さらには、金属がフィブリルとフィブリルの間に列状に配列していることである。このことは金属が繊維の強度を維持するフィブリルの中には混在せず強度低下の原因とならないことや、フィブリル間の分布が1本の単繊維の断面で考えれば丁度、木の年輪の様に幾層・幾重にも帯状に分布していることになり、この特異な構造が耐切創性・防刃性に寄与していると考えている。
【0013】
かかる繊維は好ましくは10cN/dtex以上、さらに好ましくは20cN/dtex以上の引張り強度を持つ事が重要である、強度が高いほど広く資材用への利用範囲が増えるばかりか、特に防弾チョッキの場合、防弾性能に関しては引張り強度は高ければ高い程よい。特に高性能の防弾チョッキを設計する場合は25cN/dtex以上の強度が好ましい。
【0014】
本発明により微細金属と複合して尚、各種資材用途として十分の強度を持つためにはポリマーの選択が重要である。一般的には溶剤に可溶なポリマーであれば広く選択することが可能であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、等の各種ポリオレフィンおよびその共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ボリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフフタレンテレフタレート等のポリエステル類およびその共重合体や混合物、さらにナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド類およびその共重合物やブレンド、p-フェニレンテレフタルアミド等のアラミド系化合物、ポリベンズビズオキサゾールやポリベンズビスチアゾール等の複素環を含有するアゾール類等、特に限定しない。前項の記述の如く、防弾チョッキ等のより高性能の用途を目的とする場合、ポリエチレンを中心とするポリオレフィン、特に重量平均分子量が80万を超える、あるいはまたは極限粘度が10を超えるような超高分子量ポリエチレン繊維は高強度の繊維を得て、かつ前述のフイブリルに沿った特異な金属分布構造を具現化するには好ましい選択である。同様の理由で、いわゆるスーパー繊維の原料であるp-フェニレンテレフタルアミド等のアラミド化合物、ポリベンズビズオキサゾールやポリベンズビスチアゾール等の複素環を含有するアゾール類等も好ましい選択である。
【0015】
ここで言う、超高分子量ポリエチレンとは、その繰り返し単位が実質的にエチレンであることを特徴とし、少量の他のモノマー例えばα−オレフィン,アクリル酸及びその誘導体,メタクリル酸及びその誘導体,ビニルシラン及びその誘導体などとの共重合体であっても良いし、これら共重合物どうし、あるいはエチレン単独ポリマーとの共重合体、さらには他のα−オレフィン等のホモポリマーとのブレンド体であってもよい。
【0016】
本発明のもう一方の新規な骨子は、未延伸状態あるいは半延伸状態で糸中に含有された金属イオンを延伸の途中あるいはその前に還元して金属に析出することである。還元の方法として実質金属が析出せしめる手法であれば良く、特に限定しないが、例えばパラジウム塩の場合、少量のアルコール等の溶媒の添加や、延伸過程で糸を高温に加熱することでも簡単に金属に還元されることが判明した。延伸を阻害しない、フィブリルに沿って理想的に微粒子が析出するという観点では延伸途中で金属が析出することが好ましい。この点、通常合成高分子は高温に加熱して延伸することが必要であり、その温度域と処理時間を適性化すること、例えば温度を多段階で上昇させるなど、金属形成と延伸条件を最適化することが比較的容易になり、所望の複合化組織を具現化することができることを見出し本発明に到達した。
【0017】
繰り返しになるが、かかる金属類やカーボンブラックや各種顔料などの無機物を有機繊維に複合する場合に、当該技術者に広く知られる問題点はその粒子の大きさおよび分散性の不良により得られる繊維の強度が著しく低下することである。本発明の推奨する製造方法によれば、少なくとも延伸される途上までは金属種はイオン状態で非常に均一に分散することが期待されるとともに、最終析出した金属も場合によってはナノオーダーからサブミクロンのサイズと非常に微小であり、かつ本発明の骨子であるその主な分布位置が繊維の強度等の力学物性を支えるフィブリルとフィブリル間に分布することとなり、強度の低下を著しく抑制する。実際、本発明によって得られた複合繊維が、金属粒子を多数含有しながら、スーパー繊維並の引張り強度を維持していることは驚異的である。
【0018】
【実施例】
以下に本発明における特性値に関する測定法および測定条件を説明する。
【0019】
(強度・弾性率)
本発明における強度,弾性率は、オリエンティック社製「テンシロン」を用い、試料長200mm、伸長速度100%/分の条件で歪ー応力曲線を雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で測定し、曲線の破断点での応力を強度(cN/dtex)、曲線の原点付近の最大勾配を与える接線より弾性率(cN/dtex)を計算して求めた。なお、各値は10回の測定値の平均値を使用した。
【0020】
(極限粘度)
135℃のデカリンにてウベローデ型毛細粘度管により、種々の希薄溶液の比粘度を測定し、その粘度の濃度にたいするプロットの最小2乗近似で得られる直線の原点への外挿点より極限粘度を決定した。測定に際し、原料ポリマーのがパウダー状の場合はその形状のまま、パウダーが塊状であったり糸状サンプルの場合は約5mm長の長さにサンプルを分割または切断し、ポリマーに対して1wt%の酸化防止剤(商標名「ヨシノックスBHT」吉富製薬製)を添加し、135℃で4時間撹はん溶解して測定溶液を調整した。
【0021】
(耐切創性測定用サンプルの調整)
440dtex±40dTexになるように得られた延伸糸を予め合糸し、100本丸編み機で測定する繊維を編み立てた。サンプリングは、編み立ての糸跳びがない部分を選んで、7×7cm以上のサイズになるよう切断した。編目が粗いので、薬包紙をサンプルの下に1枚敷いて試験を行った。測定する部分は、丸編みの外側部分で、編目方向に対し90°になるようセットした。
【0022】
(耐切創性測定)
評価方法としては、クープテスターを用いた。この装置は、円形の刃を試料の上を走行方向と逆方向に回転しながら走らせ、試料を切断していき、切断しきると試料の裏にアルミ箔があり、円形刃とアルミが触れることにより電気が通り、カット試験が終了したことを感知する。カッターが作動している間中、装置に取り付けられているカウンターがカウントを行うので、その数値を記録する。この試験は、目付け約200g/m2の平織りの綿布をブランクとし、試験サンプルとの切創レベルを評価する。ブランクからテストを開始し、ブランクと試験サンプルとを交互にテストを行い、試験サンプルが5回テストし、最後にブランクが6回目のテストをされた後、この1回のテストは終了する。ここで算出される評価値はIndexと呼ばれ、次式により算出される。
A=(サンフ゜ルテスト前の綿布のカウント値+サンフ゜ルテスト前の綿布のカウント値)/2
Index=(サンプルのカウント値+A)/A
今回の評価に使用したカッターは、OLFA社製のロータリーカッターL型用φ45mmを用いた。材質はSKS−7タングステン鋼であり、刃厚0.3ミリ厚であった。また、テスト時にかかる荷重は320gにして評価を行った。
【0023】
(透過型電子顕微鏡観察)
低温硬化型エポキシ樹脂(硬化温度80度程度であれば特に選ばない)にて包埋された繊維状サンプルをダイヤモンドナイフを装着したウルトラミクロトーム(LKB社製ULTROTOME V型)を用いて超薄切片を作製する。超薄切片は、ダイヤモンドナイフのナイフボートに充填した水の表面上に切り出される。切り出された超薄切片は、支持膜を貼った銅製150メッシュあるいは口径0.5mmの単孔メッシュの上に回収し、カーボンを薄く蒸着した。上記のように調製した超薄切片を透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010)を用いて加速電圧200kVで観察した。
【0024】
以下、実施例をもって本発明を説明する。
(実施例1〜3)
酢酸パラジウムを室温にてアセトンに溶解して5wt%の溶液を調整した。一方で、極限粘度が16.0の超高分子量ポリエチレン(三井化学社製ハイゼックス240M)のパウダー10重量部とデカヒドロナフタレン90重量をスラリー状で混合し、さらにポリマーに対して1%の酸化防止剤(BHT)を添加したものを、210℃のスクリュー型混合機で溶解した後、ただちに0.6mm直径を有するオリフィスが48ホール設置されかつ190℃に調整された口金を通じて吐出量が1.2g/minとなるように押し出して後、直ちに室温に調整した不活性ガスにて溶剤を一部除去しつつ冷却し、90m/minの速度で引き取り多孔質のアルミ製のボビン上に巻取り、未延伸のゲル糸を得た。引き取り直後のゲル状の繊維のポリマー含有量は82重量%であった。
【0025】
得られた溶剤を含有したゲル糸は、先ほど調整した酢酸パラジウムのアセトン5wt%wの入った容器に浸漬し、室温で5時間放置した。ただし、容器内ではボビンの内側から溶液を強制的に循環させるポンプを設置しており、なるべく溶液が容器内で均一に攪拌し、ボビンに巻き取られた繊維の内部にも十分均一に溶液が届くように工夫した。
【0026】
浸漬後取り出したサンプルは表面の余剰の薬液を軽く除去してのち、120℃に調整したオーブン型の延伸機にて4倍に延伸し一旦巻き取ったあと、145℃に温度を上げて、2倍(実施例1)、3倍(実施例2)、4倍(実施例3)の各種条件で完成糸を得ることができた。繊維は延伸途中で金属が還元し、褐色色の繊維が得られた。得られた繊維の力学特性を表1に示す。得られた繊維は倍率とともに強度が向上し、特に総延伸倍率16倍ではスーパー繊維として十分の強度・弾性率を得ることが判った。従来の知見より、このように高い強度を持つ繊維は十分優れた耐弾性能を示す事が予測される。この最も高い強度を持つ糸を用いて、耐切創性を評価したところ、次に示す無添加の繊維に比べて極めて優れた防刃性が得られることが判明した。
【0027】
さらに、得られた繊維は外観上、延伸倍率とともに黄色から黄褐色に着色し、4倍延伸(総延伸16倍)のものは表面に金属的な光沢も生じ、ポリエチレン繊維としては外観上も非常に異なる繊維が得られた。アセトンおよび沸騰水等により簡単な脱落テストを実施したが、色落ちも無く堅牢度にも優れることが判明した。従来、高強度ポリエチレン繊維は染色がほとんど不可能であったことから着色が可能となったことでその利用価値は高まることが期待される。尚、実施例2の繊維を繊維軸方向と直角方向に超薄切片を作成し、染色処方を施すことなく、透過型電子顕微鏡像を観察した結果が図1である。白く見えるフィブリルとフィブリル間の間隙にそって、黒く見える微小な金属が列状に配列した非常に新規な構造を観察することができる。
【0028】
(比較例1)
実施例1とまったく同じ条件で得られた溶剤含有の未延伸糸を、酢酸パラジウムを溶解していないアセトンのみに浸漬する処理を行った。その際の時間、溶液の攪拌条件等は同一にした。浸漬後実施例1と同様の延伸操作を実施した、ただし、2段目の延伸倍率は4倍のみを実施した。得られた繊維は極めて高い強度を示したが、耐切創性試験においては満足の行く結果ではなかった。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】
微小金属粒子の持つさまざまな効果を適応し、かつ各種産業資材として十分以上の力学強度を持つ新規な微小金属複合繊維を提供することを可能とすることで、例えば防弾性能と防刃性能を両方満足する高性能ポリエチレン繊維や、高強度を維持したまま静電性や電磁遮蔽性能等が期待できる新規な繊維の実現を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属微粒子が取り込まれた高強力ポリエチレン繊維の縦断面方向の超薄切片より観察された透過型電子顕微鏡像。図中黒く見える部分が析出した微小金属。矢印の方向は繊維の長手方向を示す。
Claims (6)
- ポリエチレンを溶融、乾式もしくは湿式法にて得られた繊維状に吐出した未延伸或いは半延伸状態糸に、金属塩の希釈溶液を吸着させ、次いで加熱下で延伸するに際して、その前処理もしくは延伸時に繊維内部で微小な金属粒子を還元析出させることにより繊維の内部に構成されるフィブリル状の構造に沿って列状に金属微粒子を配列せしめることを特徴とする極小金属複合繊維の製造方法。
- ポリエチレンが、極限粘度10以上の高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項1記載の極小金属複合繊維の製造方法。
- 極小金属複合繊維を得るまでの総延伸倍率が10倍以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の極小金属複合繊維の製造方法。
- ポリエチレンを溶剤に溶解した溶液をノズルから押し出した後、冷却もしくは冷却前の未延伸あるいは半延伸状の中間体に、前記高分子を溶剤と同一の溶剤に金属塩を含有する溶液を接触させることで、該金属イオンを繊維中間体中に含有せしめ、引き続き延伸するに際して、その直前あるいは延伸時に金属イオンを還元して微小な金属粒子を析出させることを特徴とする極小金属複合繊維の製造方法。
- ポリエチレンが、極限粘度10以上の高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項4記載の極小金属複合繊維の製造方法。
- 極小金属複合繊維を得るまでの総延伸倍率が10倍以上であることを特徴とする請求項4又は5記載の極小金属複合繊維の製造方法。
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