JP4330970B2 - ステントおよびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道などの生体内の管腔に生じた狭窄部もしくは閉塞部に留置することにより、これら病変部を開存状態に維持するステントに関する。
より具体的には、ステントの生体組織と接触する外側表面からは再狭窄抑制効果を有する第一の生物学的生理活性物質を徐放、すなわち少量ずつ長期間にわたって放出し、かつ、ステントの生体組織と接触しない内側表面には、抗血栓能、細胞接着能、タンパク吸着能等の機能を有する第二の物質が固相化されていることにより、これら病変部を長期にわたって開存状態に維持することができる、マルチな機能表面を有するステントに関する。
一つの例として、虚血性心疾患に適用される血管形成術について説明する。わが国における食文化の欧米化が、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の患者数を急激に増加させていることを受け、それらの心疾患を治療する方法として経皮的経血管的冠動脈形成術(PTCA)が広く普及するに至った。現在では、技術的な発展により適用症例も拡大し、病変部の短い一枝病変のみならず、遠位部の偏心的石灰化病変、多枝病変等も適用症例となっている。
PTCAとは、患者の脚または腕の動脈に小さな切開を施してイントロデューサーシース(導入器)を留置し、イントロデューサーシースの内腔を通じて、ガイドワイヤを先行させながら、ガイドカテーテルと呼ばれる長い中空のチューブを血管内に挿入して冠状動脈の入り口に配置した後ガイドワイヤを抜き取り、別のガイドワイヤとバルーンカテーテルをガイドカテーテルの内腔に挿入し、ガイドワイヤを先行させながらバルーンカテーテルをX線造影下で患者の冠状動脈中を血管の狭窄部または閉塞部である病変部まで進めて、バルーンを病変部内に位置させて、その位置で医師がバルーンを所定の圧力で30秒〜60秒間、1回或いは複数回膨らませる手技である。これにより、病変部の血管内腔は拡張され開存状態を維持し、それにより血管内腔を通る血流は増加する。しかしながら、カテーテルによって血管壁が傷つけられたりすると、血管壁の治癒反応である血管内膜の増殖が起こり、30%程度の割合で再狭窄が起きることが報告されている。
この再狭窄を予防する方法は、これまで確立されるに至っていないが、ステントやアテローム切除カテーテル等の器具を用いる方法等が検討され、ある程度再狭窄率を低下させる効果があることがわかっている。ここで言うステントとは、血管または他の生体管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄部もしくは閉塞部である病変部を拡張し、その内腔を開存状態に維持するためにそこに留置することができる中空管状の医療用具である。それらの多くは、金属材料または高分子材料よりなる医療用具であり、例えば金属材料や高分子材料よりなる中空円筒状の側面に細孔を設けたものや、金属材料のワイヤや高分子材料の繊維を編み上げて円筒状にしたもの等様々な形状のものが提案されている。ステント留置の目的は、PTCA等の手技を施した後に起こる再狭窄の予防、およびその低減化を狙ったものであるが、これまでのところステントのみでは再狭窄を顕著に抑制することはできていないのが現状である。
そして近年では、このステントに免疫抑制剤、抗がん剤等の生物学的生理活性物質を担持させることにより、管腔内のステントを留置した部位でこの生物学的生理活性物質を局所的に徐放させ、再狭窄率の低減化を図る試みが盛んに提案され、高い効果を発揮することが報告されている。例えば、特許文献1にはステント本体の表面に治療のための物質(生物学的生理活性物質)とポリマーの混合物をコーティングしたステントが、また特許文献2にはステント本体の表面に対生物作用材料層(生物学的生理活性物質層)を設け、さらにこの対生物作用材料層の表面にポリマー製の多孔質材料層を設けたステントが、また特許文献3にはステント表面の生物学的生理活性物質層を設け、さらにこの生物学的生理活性物質層の上に生物学的生理活性物質の徐放を制御し、且つ抗血栓能を有するトップコーティングを施したステントが、それぞれ提案されている。
しかしながら、特許文献1、特許文献2で提案されているステントは、いずれも生物学的生理活性物質の徐放が等方的に行われるため、生体組織側のステント表面のみならず、生体組織と接触していないステント表面からも生物学的生理活性物質が放出される。そのため生物学的生理活性物質の効果発現が効率的でなく、ステント一個に対して搭載される生物学的生理活性物質の殆どが組織側に取り込まれることなく消費されてしまうといった問題がある。
一方、特許文献3で提案されているステントは、トップコーティング層に抗血栓能を有しているものの、生物学的生理活性物質の放出されている間は抗血栓能が優先的に機能発現する可能性が低いこと、また、生物学的生理活性物質がすべて放出された後にも抗血栓能を維持しているのか、或いは、その時点で既にステントが組織に埋め込まれてしまっていた場合、その抗血栓能が必要とされるのかといった点についても疑問が残る。
また、これらのステントは、ステントのバルーンへのマウント操作またはバルーンの拡張操作の際に、バルーンと接触する側のステント表面に形成されたコーティング層が破壊されるおそれがある。コーティング層が破壊された場合、該コーティング層に含まれる生物学的生理活性物質の所望の徐放挙動が得られないことが懸念される。自己拡張型のステントでも、同様にステント内側表面のコーティング層が破壊されるおそれがある。
コーティング層の破壊を防止しようとした場合、ステントのバルーンへの十分なかしめ操作が行えない場合もあり、この場合ステントのバルーンに対する把持力の低下、さらにはステントの脱落さえも懸念される。
特開平8−33718号公報 特開平9−99056号公報 米国特許第6120536号明細書
従って、本発明の目的は、ステントに搭載することが求められる生物学的生理活性物質の量を最低限に抑えることができ、かつ、ステントのバルーンへのマウント操作またはバルーンの拡張操作の際に、バルーンと接触する側のステント表面に形成されたコーティング層が破壊されるおそれがないステントおよびその製造方法を提供することを目的とする。
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1)管腔内に留置可能なステントであって、両端部が開口した、該2つの末端開口部の間に長手方向に延在する円筒状のステント本体と、管腔内に留置した際に、生体組織と接触する前記ステント本体の外側表面に形成された、再狭窄抑制効果を有する第一の生物学的生理活性物質の層と、前記ステント本体の内側表面に形成された第二の物質が固相化された層よりなるステント。
(2)前記第二の物質は、抗血栓能、細胞癒着防止能、細胞接着能、血漿タンパク吸着能、血漿タンパク接着能のうち、少なくとも1つを有することを特徴とする(1)に記載のステント。
(3)前記第一の生物学的生理活性物質の層は、1μm以上の厚さを有する(1)または(2)に記載のステント。
(4)前記第二の物質が固相化された層は、3μm以下の厚さを有する(1)ないし(3)のいずれかに記載のステント。
(5)前記ステント本体は、金属材料で形成されていることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のステント。
(6)前記ステント本体は、高分子材料で形成されていることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のステント。
(7)前記第一の生物学的生理活性物質は、急性または慢性の狭窄を予防する効果を有することを特徴とする(1)ないし(6)のいずれかに記載のステント。
(8)前記ステント本体の表面全体に、前記第二の物質を固相化させた後に、前記ステント本体の生体組織と接触する外側表面のみに、前記第一の生物学的生理活性物質の層を形成することを特徴とする(1)ないし(7)のいずれかに記載のステントの製造方法。
本発明のステントは、生体管腔の再狭窄抑制効果を有する第一の生物学的生理活性物質がその効果を発揮する上で最も好適な部位であるステント本体の生体組織と接触する外側表面にのみ層を形成している。したがって、ステントを生体管腔に留置した際に、再狭窄を抑制する効果に優れており、かつステントに搭載することが求められる生物学的生理活性物質の量を最低限に抑えることができる。
また、本発明のステントは、ステントを生体管腔に留置した際に有用な第二の物質、より好ましくはステントを留置した際に何らかの生物学的作用を発揮する第二の物質が、ステント本体の内側表面に固相化されて層を形成している。したがって、ステントのバルーンへのマウント操作またはバルーンの拡張操作の際に、バルーンと接触する側にある第二の物質の層が破壊されるおそれがない。このため、バルーンへの十分なかしめ操作を行うことができ、ステントのバルーンに対する把持力の低下や、ステントの脱落といった問題が生じるおそれがない。
また、第二の物質が抗血栓能を有する物質である場合、ステントを生体管腔に留置したことに伴う血栓の形成を長期的に防止する。これにより生体管腔の再狭窄が抑制される。
また、第二の物質が細胞癒着防止能を有する物質である場合、ステントを生体管腔に留置した際に、形質転換した平滑筋細胞(SMC)等の細胞のステント内側表面への癒着を防止して、それにより再狭窄を抑制する。
また、第二の物質が細胞接着能を有する物質である場合、ステント内側表面への内皮細胞の接着を促進する。ステントの表面に内皮細胞が生えれば、生体管腔の再狭窄がそれ以上進行しないと言われている。したがって、ステントの内側表面に内皮細胞を積極的に呼び込むことで、再狭窄を抑制する効果が期待される。
また、第二の物質が血漿タンパク吸着能または血漿タンパク接着能を有する物質である場合、アルブミン等の血中タンパクがステントの内側表面に吸着または接着される。この結果、ステントの内側表面に血小板が接着しにくくなり、生体管腔の再狭窄を抑制する効果が期待される。
以下、本発明のステントを添付図面に示す好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のステントの一態様を示す側面図であり、図2は図1の線A−Aに沿って切断した拡大横断面図である。
図2に示すように、本発明のステント1では、ステント本体を構成する線状部材2の生体組織と接触する外側表面に第一の生物学的生理活性物質の層3が形成されている。一方、ステント本体を構成する線状部材2の内側表面には、第二の物質が固相化された層4が形成されている。ここで、ステント本体(を構成する線状部材2)の生体組織と接触する外側表面とは、ステント1を生体管腔に留置した際に、生体管腔を形成する生体組織、具体的には例えば、血管の内壁等、と接触する側の表面をいう。一方、ステント本体(を構成する線状部材2)の内側表面とは、ステント1を生体管腔に留置した際に、血液等の体液と接触する側の表面をいう。
図2では、層4は、ステント本体を構成する線状部材2の表面のうち、層3が形成された表面を除く表面全体に形成されている。ただし、層4は、ステント本体を構成する線状部材2の表面のうち、少なくとも内側表面に形成されていればよい。
また、図2では、ステント本体を構成する線状部材2の表面全体にわたって、層3および層4が形成されているが、本発明のステントはこれに限定されず、ステント本体を構成する線状部材2の表面のうち、少なくとも一部に層3および層4が形成されていればよい。従って、線状部材2の表面のうち、ステント本体をバルーンによって拡張させた際に変形の生じない部分にのみ、層3および層4を形成してもよい。
ステント1を構成する各構成要素について、以下により詳細に説明する。
ステント本体は、両端部が開口し、該両末端部の間を長手方向に延在する円筒体である。
円筒体の側面は、その外側面と内側面とを連通する多数の切欠部を有し、この切欠部が変形することによって、円筒体の径方向に拡縮可能な構造になっており、血管のような脈管、または胆管等の生体管腔内に留置され、その形状を維持する。
図1に示す態様において、ステント本体は、弾性線材2からなり、内部に切欠き部を有する略菱形の要素21を基本単位とする。複数の略菱形の要素21が、略菱形の形状がその短軸方向に連続して配置され結合することで環状ユニット22をなしている。環状ユニット22は、隣接する環状ユニットと線状の弾性部材23を介して接続されている。これにより複数の環状ユニット22が一部結合した状態でその軸方向に連続して配置される。ステント本体(ステント)1は、このような構成により、両末端部が開口し、該両末端部の間を長手方向に延在する円筒体をなしている。ステント本体(ステント)1は、略菱形の切欠き部を有しており、この切欠き部が変形することによって、円筒体の径方向に拡縮可能な構造になっている。
但し、本発明において、ステント本体は図示した態様に限定されず、両末端部が開口し、該両末端部の間を長手方向に延在する円筒体であって、その側面上に、外側面と内側面とを連通する多数の切欠き部を有し、この切欠き部が変形することによって、円筒体の径方向に拡縮可能な構造を広く含む。
このような径方向の拡縮可能な構造のステント本体の具体例としては、例えば特開平9−215753号公報、特開平7−529号公報に開示されているような弾性線材をコイル状に屈曲させて、それを複数接続して円筒状にされた例で弾性線材同士の隙間が切欠き部をなすステント本体;特表平8−502428号公報および特表平7−500272号公報に開示されているような、弾性線材をジグザグ状に屈曲させてそれを複数接続して円筒状にされた例で弾性線材同士の隙間が切欠き部をなすステント本体;特表平2000−501328号公報および特開平11−221288号公報に開示されているような、弾性線材をへび状平坦リボンの形に曲げて、これをマンドリルにヘリックス状に巻きつけて円筒形状にされた例で弾性線材同士の隙間が切欠き部をなすステント本体;特表平10−503676号公報に開示されているような、図1のステント本体とは切欠き部の形状が異なり、メアンダー(meander)模様の形状であるメッシュ形状の構造をしたステント本体;特表平8−507243号公報に開示されているような、板状部材をコイル状に屈曲させて円筒形状にされた例で隣接するコイル部分間の隙間が切欠き部をなすステント本体等が挙げられる。また、特公平4−68939号公報には、弾性板状部材をらせん状に成形して円筒状にされた例で隣接するらせん部分の隙間が切欠き部なすステント本体、弾性線材を編組して円筒状にされた例で弾性線材同士の隙間が切欠き部をなすステント本体を含む複数の異なる構造を有する円筒形状のステント本体等が例示される。この他、ステント本体は、板バネコイル状、多重螺旋状、異型管状等であってもよい。また、特公平4−68939号公報の図2(a)、(b)には弾性板状部材を渦巻き状に曲げて円筒形状にしたステント本体が記載されているが、このように円筒体の側面に切欠き部を有しないが、円筒体の径方向に拡縮変形可能に構成された円筒形状のステント本体も本発明のステント本体として使用することができる。これら上記の全ての文献および特許出願は、引用することで本明細書の一部をなす。
ステント本体を構成する弾性線材の断面形状についても、図2に示すような矩形に限定されず、円形、楕円形、矩形以外の多角形等、他の形状であってもよい。
留置後のステント本体の拡張手段は、特に限定されず、自己拡張型、すなわち細く小さく折り畳んだステント本体を保持している力を除くことで、自らの復元力で半径方向に拡張するタイプのものであってもよい。但し、本発明のステントは、バルーン拡張型、すなわちステント本体を内側からバルーンを拡張してその外力によってステントを半径方向に拡張するタイプのものであることが好ましい。
ステント本体の材料としては、高分子材料、金属材料、炭素繊維、セラミックス等が挙げられ、ある程度の剛性と弾性を有するものであれば特に制限はないが、生体適合性を有する材料であることが好ましい。具体的には、高分子材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、セルロースアセテート、セルロースナイトレート等のセルロース系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等の含フッ素ポリマー等が挙げられる。金属材料としては、例えばステンレス鋼、タンタル、チタン、ニッケルチタン合金、タンタルチタン合金、ニッケルアルミニウム合金、インコネル、金、プラチナ、イリジウム、タングステン、コバルト系合金等が挙げられる。ステンレス鋼の中では、最も耐食性が良好であるSUS316Lが好適である。
ステント本体は、上記例示した材料から、その適用箇所または拡張手段に応じて適宜選択した材料により好適に形成することができる。例えばステント本体を金属材料で形成した場合、金属材料は強度に優れているため、ステントを病変部に確実に留置することが可能である。ステント本体を高分子材料で形成した場合、高分子材料は柔軟性に優れているため、ステントの病変部への到達性(デリバリー性)という点で優れた効果を発揮する。
また、ステントが自己拡張型である場合、元の形状への復元力が必要なことからチタンニッケル等の超弾性合金等が好ましく、バルーン拡張型である場合、拡張後の形状復帰が起こりにくいことが好ましいことからステンレス鋼等が好ましい。
また、ステント本体を炭素繊維で作製した場合、高強度で、かつ柔軟性に優れており、しかも生体内での安全性が高いという点で優れた効果を発揮する。
ステント本体の大きさは適用箇所に応じて適宜選択すればよい。例えば、心臓の冠状動脈に用いる場合は、通常拡張前における外径は1.0〜3.0mm、長さは5〜50mmが好ましい。図1に示すように、ステント本体が線状部材で構成される場合、ステント本体を多数の切欠き部を有するように構成する線状部材の幅方向の長さは、好ましくは0.01〜0.5mmであり、より好ましくは0.05〜0.2mmである。
ステント本体の製造方法は、特に限定されず、ステントの構造および材料に応じて、通常使用される製造方法から適宜選択すればよい。
上記したように、本発明のステントでは、ステント本体を構成する線状部材2の生体組織と接触する外側表面に第一の生物学的生理活性物質の層3が形成されており、ステント本体を構成する線状部材2の内側表面に、第二の物質が固相化された層4が形成されている。ここで、層3は、ステント本体を構成する線状部材2の外側表面に、第一の生物学的生理活性物質が担持された層であり、ステントを生体管腔に留置した際に、該層3から第一の生物学的生理活性物質を徐放させることができる。一方、層4は、ステント本体を構成する線状部材2の内側表面に、第二の物質を固相化させて形成した層であり、ステントのバルーンへのマウント操作またはバルーンの拡張操作の際に、バルーンと接触する側の表面に形成された第二の物質の層が破壊されるおそれがない。
ステント本体の外側表面に形成される層3は、ステント1を生体管腔の病変部に留置した際に再狭窄を抑制する効果を有する少なくとも1種類以上の第一の生物学的生理活性物質を含む。層3に含まれる第一の生物学的生理活性物質は、本発明のステント1を生体管腔の病変部に留置した際に再狭窄を抑制する効果を有するものであれば特に限定されない。ここで、第一の生物学的生理活性物質は、生体管腔の慢性的な狭窄を抑制するものであってもよく、または急性的な狭窄を抑制するものであってもよい。ここで、慢性的な狭窄とは、ステントの留置後、平滑筋細胞の増殖等、生体管腔における新生内膜の増殖によって、生体管腔が経時的に閉塞する器質性閉塞をさす。一方、急性的な閉塞とは、スパスムスに代表される一過性の機能的狭窄をさす。
再狭窄を抑制する効果を有する生物学的生理活性物質としては、具体的には、例えば抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、抗高脂血漿薬、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、血管平滑筋増殖抑制薬、抗炎症剤、生体由来材料、インターフェロン、NO産生促進物質等が挙げられる。
抗癌剤としては、より具体的には例えば硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンデシン、塩酸イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル水和物、メトトレキサート、シクロフォスファミド等が好ましい。
免疫抑制剤としては、より具体的には、例えばシロリムス、タクロリムス水和物、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、塩酸グスペリムス、ミゾリビン等が好ましい。
抗生物質としては、より具体的には、例えばマイトマイシンC、塩酸ドキソルビシン、アクチノマイシンD、塩酸ダウノルビシン、塩酸イダルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸エピルビシン、硫酸ぺプロマイシン、ジノスタチンスチマラマー等が好ましい。
抗リウマチ剤としては、より具体的には、例えば金チオリンゴ酸ナトリウム、ペニシラミン、ロベンザリット二ナトリウム等が好ましい。
抗血栓薬としては、より具体的には、例えば、ヘパリン、塩酸チクロピジン、ヒルジン等が好ましい。
抗高脂血症剤としては、より具体的にはHMG−CoA還元酵素阻害剤やプロブコールが好ましい。そして、HMG−CoA還元酵素阻害剤としては、より具体的には、例えば、セリバスタチンナトリウム、アトルバスタチン、ニスバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチンナトリウム、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンナトリウム等が好ましい。
ACE阻害剤としては、より具体的には、例えば、塩酸キナプリル、ペリンドプリルエルブミン、トランドラプリル、シラザプリル、塩酸テモカプリル、塩酸デラプリル、マレイン酸エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル等が好ましい。
カルシウム拮抗剤としては、より具体的には、例えば、ニフェジピン、ニルバジピン、塩酸ジルチアゼム、塩酸ベニジピン、ニソルジピン等が好ましい。
抗アレルギー剤としては、より具体的には、例えば、トラニラストが好ましい。
レチノイドとしては、より具体的には、例えば、オールトランスレチノイン酸が好ましい。
抗酸化剤としては、より具体的には、例えば、カテキン類、アントシアニン、プロアントシアニン、リコピン、β−カロチン等が好ましい。カテキン類の中では、エピガロカテキンガレートが特に好ましい。
チロシンキナーゼ阻害剤としては、より具体的には、例えば、ゲニステイン、チルフォスチン、アーブスタチン等が好ましい。
抗炎症剤としては、より具体的には、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイドやアスピリンが好ましい。
生体由来材料としては、より具体的には、例えば、EGF(epidermal growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、PDGF(platelet derived growth factor)、BFGF(basic fibroblast growth factor)等が好ましい。
層3には、上記例示した生物学的生理活性物質のうち、一種類のみを含んでいてもよく、または二種類以上の異なる生物学的生理活性物質を含んでいてもよい。二種類以上の生物学的生理活性物質を含む場合、その組み合わせは上記例示した生物学的生理活性物質から必要に応じて適宜選択すればよい。また、層3は、生物学的生理活性物質のみで形成されていてもよいが、さらに生物学的生理活性物質以外の他の物質を構成要素として含んでいてもよい。層3の構成要素として含有してもよい他の物質は特に限定されないが、ポリマーであることが好ましい。ポリマーの中でも、生体安定性が高く、組織刺激性の低いことから、例えば、シリコーン系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、熱可塑性エラストマー等が好適に使用される。また、層3の構成要素として含有してもよいポリマーとして、生体内分解性ポリマーも好適に使用される。生体内分解性ポリマーの具体例としては、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリグラクチン、ポリヒドロキシ酪酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、フィブリン、ポリオルソエステル、ポリヒドロキシブチレート吉草酸、これらの混合物または共重合体等が好適に使用される。
層3が第一の生物学的生理活性物質と、他の物質とで構成される場合、その構造は特に限定されないが、生物学的生理活性物質と他の物質、好ましくはポリマーとのマトリックス構造、または、生物学的生理活性物質を他の物質、好ましくはポリマーで被覆したリザーバー構造であることが好ましい。これらの構造であれば、層3から生物学的生理活性物質を徐放させるのに好適である。
層3の厚さは、ステントの形状および寸法によるが、病変部への到達性(デリバリー性)や血管壁への刺激性などのステント本体の性能を著しく損なわない範囲で、なおかつ生物学的生理活性物質の放出による効果が十分に発揮される範囲で設定される。層3の厚さは、好ましくは1μm〜75μmであり、より好ましくは1μm〜30μmであり、さらに好ましくは1μm〜10μmである。層3の厚さが1μm〜75μmであれば、ステントを生体管腔に留置した際に、第一の生物学的生理活性物質を徐放する効果に優れており、かつステント1自体の外径が大きくなりすぎず、ステントの到達性(デリバリー性)、特に病変部への到達性(デリバリー性)に支障をきたすおそれがない。
また、層3に含まれる第一の生物学的生理活性物質の量は、ステントの形状および寸法によるが、病変部への到達性(デリバリー性)や血管壁への刺激性などのステント本体の性能を著しく損なわない範囲で、なおかつ生物学的生理活性物質の放出による効果が十分に発揮される範囲で設定される。層3に含まれる第一の生物学的生理活性物質の量は、好ましくは0.01〜3mg/cm2の範囲である。
ステント本体の内側表面に形成される層4は、ステントを生体管腔に留置した際に有用な第二の物質を固相化して形成されている。第二の物質は、ステントを生体管腔に留置した際に有用な物質であれば特に限定されないが、ステントを留置した際に何らかの生物学的作用を発揮する物質であることが好ましい。ここで、生物学的作用としては、抗血栓能、細胞癒着防止能、細胞接着能、血漿タンパク吸着能、または血漿タンパク接着能のうち、少なくとも一つであることが好ましい。
第二の物質は、生物学的生理活性物質であってもよく、またはそれ以外の物質であってもよい。生物学的生理活性物質としては、上記の作用を有する限り、層3に含まれる第一の生物学的生理活性物質として、上で例示したものを使用してもよい。第二の物質が生物学的生理活性物質である場合、特に第一の生物学的生理活性物質として上で例示したものである場合、層3に含まれる第一の生物学的生理活性物質との有効な組み合わせにより、固相化させる生物学的生理活性物質を適宜選択すればよい。
また、第二の物質が生物学的生理活性物質以外である場合、例えば合成ペプチド等の合成高分子、または他の合成物質のような合成物が挙げられる。
本発明のステントにおいて、固相化させて層4を形成するのに好適な第二の物質としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)等の抗血栓能を有する合成高分子、または、アルギニン(Arg)−グリシン(Gly)−アスパラギン酸(Asp)(RGD)等の細胞接着性を有する合成ペプチド、または、オクタデシル基、オレイル基等、アルブミン等のタンパク吸着能を有する基を持った合成物質等が挙げられる。第二の物質としてこれらの合成高分子または合成物質を固相化させた場合、層4をサブミクロンオーダーの厚さで形成することができ、かつステントのバルーンへのマウント操作またはバルーンの拡張操作の際に、バルーンと接触する層4が破壊されるおそれがない。
層4の厚さは、ステントの形状および寸法、さらには固相化させる第二の物質の種類によるが、ステントを生体管腔に留置した際に、第二の物質を固相化させたことによる効果が十分に発揮され、かつステントのバルーンへのマウント操作またはバルーンの拡張操作の際に、層4が破壊されることがなく、なおかつステントのバルーンへの十分なかしめ力が得られる範囲で設定されることが好ましい。層4の具体的な厚さとしては、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。層4の厚さが3μm以下であれば、ステントのバルーンへのマウント操作またはバルーンの拡張操作の際に、層4が破壊されることがなく、なおかつステントのバルーンへの十分なかしめ力が得られる。
上記した本発明のステントを製造する方法(以下、「本発明の製造方法」とする。)を以下に説明する。
本発明の製造方法では、ステント本体の表面全体に第二の物質を固相化させる。第二の物質を固相化させる方法は、ステントを生体管腔に留置した際に、第二の物質が脱離されることないように、ステント本体の表面に固相化できる限り特に限定されない。したがって、後述する実施例に示すように、共有結合により第二の物質をステント本体の表面に固相化してもよく、またはイオン結合により第二の物質をステント本体の表面に固相化させてもよい。さらにまた、ステントを生体管腔に留置した際に、第二の物質が脱離しないようにできるのであれば、ステント本体の表面に第二の物質を塗布若しくはスプレーし、または第二の物質を含む溶液にステント本体を浸漬した後、乾燥または熱処理を行い第二の物質を固化させて、固相化を行ってもよい。
次に、ステント本体の生体組織と接触する外側表面のみに、第一の生物学的生理活性物質の層を形成する。ここで、第一の生物学的生理活性物質は、上記した第二の物質のようにステント本体の表面に固相化させるのではなく、ステントを生体管腔に留置した際に、該第一の生物学的生理活性物質が徐放されるようにステント本体の外表面に担持させる。。ステント本体の外表面に第一の生物学的生理活性物質を担持させる方法は、ステント本体の外表面にのみ第一の生物学的生理活性物質を担持することができ、かつステントを生体管腔に留置した際に、担持された第一の生物学的生理活性物質が徐放可能である限り特に限定されない。
具体的には、例えば第一の生物学的生理活性物質のみで第一の生物学的生理活性物質の層を形成する場合には、第一の生物学的生理活性物質を溶液として、若しくは加熱融解させてステント本体を構成する線状部材2の外側表面(実際には、第二の物質を固相化させた層上)にのみ塗布若しくはスプレーし、その後第一の生物学的生理活性物質を固化させるか、またはステント本体を構成する線状部材2の内側表面(実際には、第二の物質を固相化させた層)をマスクした状態で、ステント本体をマンドリル等で固定して、第一の生物学的生理活性物質を含む溶液、または加熱融解させた第一の生物学的生理活性物質中に浸漬し、その後第一の生物学的生理活性物質を固化させればよい。前者については、溶液の状態若しくは加熱融解させた第一の生物学的生理活性物質を微量吐出可能なディスペンサまたはインクジェット等を使用すれば、マスク等の前処理を必要とすることなしにステント本体の外側表面にのみに、第一の生物学的生理活性物質の層を選択的に形成させることができる。
また、第一の生物学的生理活性物質の層が第一の生物学的生理活性物質と他の物質とで構成される場合、第一の生物学的生理活性物質と、所望の他の物質とを適当な溶媒に溶解させて溶液を作製し、上記と同様の手順を実施すればよい。これにより、マトリックス構造またはリザーバー構造であるものを含んだ、第一の生物学的生理活性物質と、他の物質とを構成要素とする第一の生物学的生理活性物質の層が形成される。
ただし、ステント本体を構成する線状部材の外側表面に第一の生物学的生理活性物質の層が形成され、かつステント本体を構成する線状部材の内側表面に第二の物質が固相化された層が形成された本発明のステントが得られるのであれば、上記した本発明の方法以外の方法で製造してもよい。例えば、第二の物質をステント本体の表面全体に固相化させるのではなく、第一の生物学的生理活性物質の層と同様にステント本体の表面の所望の部位にのみ固相化させてもよい。この場合、第二の物質を固相化する手順と、第一の生物学的生理活性物質を担持する手順の順序は、特に限定されず、ステント本体の外側表面に第一の生物学的生理活性物質を担持してから、ステント本体の内側表面に第二の物質を固相化させてもよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す外径1.8mm、長さ30mmの円筒形状で、略菱形の切り欠き部を有するステント本体(材質:SUS316L)を構成する線状部材2(幅0.1mm)の表面全体(外側表面および内側表面のいずれも)に、数nmの厚さで金(Au)をスパッタリングした。次に、ステント本体2表面全体に、第二の物質として、末端にSH基を有するPEG(Mn=20,000)の水溶液を塗布し、AuとSH基とを反応させた。これにより、ステント本体の表面に形成されたスパッタAu膜と、SH基との間で共有結合が形成され、ステント本体の表面全体に末端にSH基を有するPEGがモノレイヤーで固相化された。ステント本体の表面に固相化されたPEGの層厚は、スパッタAu膜を含めて約数nmであった。
次に、このステント本体の組織と接触する外側表面のみに、マイクロディスペンサーを用いて、ステントストラットに沿って幅80μm、厚さ10μmで、予め60℃で溶融状態にあるパクリタキセルを30wt%含むポリカプロラクトン(PCL)を塗布し、乾燥させてパクリタキセルの層(第一の生物学的生理活性物質の層、厚さ10μm)を形成した。ステント総重量の増加分から、ステント本体の外側表面に塗布されたパクリタキセルの量を算出すると100μgであった。
このようにして得られたステントをシリコーン製の内径3.0mmのチューブ内面にバルーンにより拡張させて固定し、このチューブ内にplatelet rich plasma(PRP)を充填させて10分間保持させた。ステントをシリコーンチューブ内で拡張した後に、CCDカメラによりステント内表面の観察を行ったが、ステントの内側表面に全く損傷はみられず、バルーンによる拡張後においても平滑な表面を維持していることが確認された。
10分後にステントをシリコーンチューブから取り出し、RO水で軽く表面洗浄を行った後、ステント内表面を電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、血小板の付着は確認されなかった。
また、このステントからのパクリタキセルの徐放をin vitroにおいて、calf serum添加PBS溶液 10ml(37℃)を用いて確認したところ、3日で1%程度の非常に遅い速度でパクリタキセルが徐放されていることが確認された。
(実施例2)
実施例1と同様に、図1に示すステント本体の表面全体に、厚さ数nmのスパッタAu膜を形成した。次に、ステント本体2表面全体に、第二の物質として、片末端がアルギニン(Arg)−グリシン(Gly)−アスパラギン酸(Asp)(RGD)により修飾されたオクタデシル(C18)SHのクロロホルム溶液を塗布した。これにより、ステント本体の表面に形成されたスパッタAu膜と、SH基との間で共有結合が形成され、ステント本体の表面全体にアルギニン(Arg)−グリシン(Gly)−アスパラギン酸(Asp)(RGD)で修飾されたオクタデシル(C18)(末端RGD)がモノレイヤーで固相化された。ステント本体の表面に固相化されたアルギニン(Arg)−グリシン(Gly)−アスパラギン酸(Asp)(RGD)で修飾されたオクタデシル(C18)の層厚は、スパッタAu膜を含めて約数nmであった。
次に、このステント本体の組織と接触する外側表面のみに、マイクロディスペンサーを用いて、ステントストラットに沿って幅80μm、厚さ10μmで、予め60℃で溶融状態にあるパクリタキセルを30wt%含むポリカプロラクトン(PCL)を塗布し、乾燥させてパクリタキセルを含むポリカプロラクトン層(第一の生物学的生理活性物質の層、厚さ10μm)を形成した。ステント総重量の増加分から、ステント本体の外側表面に塗布されたパクリタキセルの量を算出すると100μgであった。
このステントをヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)の培地に3日間浸漬させて放置しておいたところ、ステント内側表面においては、HUVECが徐々に増殖していく様子が確認された。これは該内側表面に固相化させたオクタデシル(C18)を修飾するアルギニン(Arg)−グリシン(Gly)−アスパラギン酸(Asp)(RGD)の細胞接着能による。このようにステント内側表面に内皮細胞を接着することで再狭窄が抑制される。一方、ステント外側表面には全くHUVECが確認されず、パクリタキセルの層が形成されたステント外側表面は細胞増殖抑制能を有していることが明らかとなった。
(実施例3)
実施例1と同様に、図1に示すステント本体の表面全体に、厚さ数nmのスパッタAu膜を形成した。次に、ステント本体2表面全体に、第二の物質として、片末端がオクタデシル(C18)SHのクロロホルム溶液を塗布した。これにより、ステント本体の表面に形成されたスパッタAu膜と、SH基との間で共有結合が形成され、ステント本体の表面全体にオクタデシル(C18)基がモノレイヤーで固相化された。ステント本体の表面に固相化されたオクタデシル(C18)の層厚は、スパッタAu膜を含めて約数nmであった。
次に、このステント本体の組織と接触する外側表面のみに、マイクロディスペンサーを用いて、ステントストラットに沿って幅80μm、厚さ10μmで、予め60℃で溶融状態にあるパクリタキセルを30wt%含むポリカプロラクトン(PCL)を塗布し、乾燥させてパクリタキセルを含むポリカプロラクトン層(第一の生物学的生理活性物質の層、厚さ10μm)を形成した。ステント総重量の増加分から、ステント本体の外側表面に塗布されたパクリタキセルの量を算出すると100μgであった。
このステントをウシ血清アルブミン(BSA)を4%添加したリン酸緩衝液(PBS)中に5分間浸漬させた。5分後にこのステントを取り出し、このステントの内外表面をSEM観察したところ、ステントの内側表面には全体にアルブミンの吸着が確認された。これはステントの内側表面に固相化させたオクタデシル(C18)のタンパク吸着能による。このようにステントの内側表面にアルブミンが吸着することで、該内側表面に血小板が接着しにくくなる。一方、ステント外側表面には全くアルブミン吸着が確認されず、パクリタキセルの層が形成されたステント外側表面は細胞増殖抑制能を有していることが明らかとなった。
(比較例1)
スプレー法を用いて、パクリタキセルを30wt%(対PCL)含むPCL 1wt%のクロロホルム溶液を図1に示すステント本体2の表面全体に均一に噴霧した。スプレー後の重量増加は、500μg、ステント本体2の表面に形成されたパクリタキセルを含むPCL層の内外表面の平均の厚さは7μmであった。
このステントをシリコーン製の内径φ3.0mmのチューブ内面にバルーンにより拡張させて固定した後に、CCDカメラによりステント内表面の観察を行ったところ、ステント内表面に、バルーン拡張時に引き起こされたと思われる膜のよれ、ねじれ、破れといった損傷部分が至る箇所に確認された。
図1は、本発明のステントの一態様を示す側面図である。 図2は、図1の線A−Aに沿って切断した拡大横断面図である。
符号の説明
1:ステント
2:線状部材
21:略菱形の要素
22:環状ユニット
23:弾性部材
3:第一の生物学的生理活性物質の層
4:第二の物質が固相化された層

Claims (8)

  1. 管腔内に留置可能なステントであって、
    両端部が開口した、該2つの末端開口部の間に長手方向に延在する円筒状のステント本体と、
    管腔内に留置した際に、生体組織と接触する前記ステント本体の外側表面に形成された、再狭窄抑制効果を有する第一の生物学的生理活性物質の層と、
    前記ステント本体の内側表面に形成された第二の物質が固相化された層よりなり、
    前記第二の物質は、内皮細胞の接着を促進する細胞接着能を有する物質であるステント。
  2. 前記細胞接着能を有する物質が、合成ペプチドである請求項1に記載のステント。
  3. 前記第一の生物学的生理活性物質の層は、1μm以上の厚さを有する請求項1または2に記載のステント。
  4. 前記第二の物質が固相化された層は、3μm以下の厚さを有する請求項1ないし3のいずれかに記載のステント。
  5. 前記ステント本体は、金属材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のステント。
  6. 前記ステント本体は、高分子材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のステント。
  7. 前記第一の生物学的生理活性物質は、急性または慢性の狭窄を予防する効果を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のステント。
  8. 前記ステント本体の表面全体に、前記第二の物質を固相化させた後に、前記ステント本体の生体組織と接触する外側表面のみに、前記第一の生物学的生理活性物質の層を形成することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のステントの製造方法。
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