JP3938418B2 - ステント - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は狭窄した血管の拡張に用いられるステントに関する。
【0002】
【従来の技術】
狭窄した血管(冠動脈)を、内腔側から押し広げ血流を確保するPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠動脈形成術)は、今や閉塞性冠動脈疾患−狭心症、心筋梗塞−の治療法として広く普及している。
【0003】
血管拡張後の再狭窄を防止するために特公平4−6377号公報に示されるような管腔内脈管移植片(expandable intraluminal graft 、“ステント”)が開発された。
【0004】
ステントは血管、胆管等の生体管腔の形状を維持するために用いられる円筒状の医療用具であり、細く小さく折り畳んだ状態で生体管腔内に挿入され、目的部位(狭窄部位)で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。
【0005】
拡張手段には2通りあり、一つはステント内側からバルーンを拡張して外力によって半径方向に拡張する手段であり、もう一つは細く小さく折り畳んだステントを保持している力を除くことで、自らの復元力でもってステントを半径方向に拡張する手段である。
【0006】
バルーンの拡張による外力によって半径方向に拡張するステントをバルーン拡張型のステントといい、それ自体に拡張機能はない。このバルーン拡張型のステントは拡張後の形状復帰が起こりにくい金属材料が使用されており、生体に対する安全性の面から生体内での反応性の低いステンレススチール、タンタル等が用いられている。
【0007】
自らの復元力で拡張するステントを自己拡張型ステントといい、それ自体が収縮および拡張機能を持っている。例えば、目的部位の内径より小さい外径のチューブ内にステントを収縮させて収納し、このチューブの先端を目的部位に到達させた後、ステントをチューブより押し出す。このような自己拡張型ステントは、元の形状への復元力が必要なことから、ステンレススチールや超弾性金属・形状記憶金属(ともにニッケルチタン合金)を用いて作製されている。
自己拡張型ステントのうち超弾性合金(形状記憶合金)を用いたステントは、特公平5−43392号公報に開示されている。
【0008】
このように、現在のステントのほとんどが金属で作製されたものである。しかし、金属はその物性・機能、生体組織に対する安全性・適合性の面から選ばれたものであり、血液に対しては異物認識されやすい材料、つまり血栓を形成し易く、血小板を活性化し血管平滑筋の遊走と増殖を招く材料である。
このため、一般的に複雑な網状構造をとることが多いステント留置後は常に血栓や血管平滑筋の遊走と増殖による血管の狭窄・閉塞の危険性が伴うので、ステント内面が血管内膜にほぼ覆われると言われている術後約2週間は患者にヘパリン(heparin )やワーファリン(warfarin) 等の抗血栓剤の投与を行う必要がある。この投与により、動脈穿刺部、及び末梢血管からの出血性合併症が起きる恐れがある。
ステント留置後短期間の間血小板の活性による血管平滑筋の遊走・増殖による再狭窄を防止し、抗血栓剤の投与期間の短縮、投与量の減少、あるいは投与が不必要となれば、必然的に入院期間の短縮や出血性合併症の減少が可能になる。
【0009】
一方、医療用材料あるいは医療用具に坑血栓性を付与する試みは行われてき
ている。
特公昭49−48336号公報は、プラスチック表面に吸着させたカチオン性界面活性剤にグルタールアルデヒドで架橋したヘパリンをイオン結合させることで、前記プラスチック表面に坑血栓性を付与させる方法を開示している。
特公昭60−28504号公報は、ヘパリンと4級アミンのコンプレックス化合物をプラスチック、ガラスまたは金属などの基材表面にコーテイングし、グルタールアルデヒドで処理し、シッフ塩基を生成することで前記基材表面に坑血栓性を付与させる方法とヘパリンと4級アミン(塩化ベンザルコニウム)のコンプレックス化合物を前記基材表面にコーテイングすることで前記基材表面に坑血栓性を付与させる方法を開示している。
【0010】
しかしながら、これらの方法は基材とヘパリンまたはヘパリンと4級アミンおよび/またはグルタールアルデヒドの化合物が共有結合ではなく、IPN(相互貫入編目)構造もしくは分子間力で結合しているため、共有結合に較べて結合力は弱い。
特開平8−52221号公報は、真空蒸着によるパリレン樹脂の被膜をステントに適用することで、ステントに抗血栓性を付与する方法を開示している。
また、各種プラスチック材料とヘパリンあるいはその化合物を共有結合させる方法を特公平6−38851号公報は開示している。この方法はヘパリンの化合物が基材と共有結合しているので、該ヘパリンの化合物が基材表面から失われることがない。しかし、各種プラスチック材料より金属材料は不活性なので同じように金属材料にヘパリン化合物を結合できるか否か不明である。
また血管内で拡張するステントに用いて血管平滑筋の遊走と増殖を抑制するか否かは全くわからない。
【0011】
現在ステントの材料として広く使用されているステンレススチールは、X線透過性が高く、またステントは網状構造をとり網目を構成するステンレス材の巾が0.2mm程度と細いため、手術時及び手術後はその位置・状態を確認することが極めて困難である。手術中にステントの位置を明確にするためにカテーテルに造影マーカーを設けているが、ステントがカテーテル上の所定の位置からずれてしまう危険性があり完全とは言えない。さらにステントの形状確認が行えないことから、拡張が不完全であったり、材料金属が若干もっている復元力によるエラスティックリコイル(拡張されたステントが元の状態にもどる)を発見することが困難である。
【0012】
このような問題を解決するためのラジオパク・マーカ付きのステントが特開平8−126704号公報に開示されている。このようなX線不透過処理金属めっきされたステントは留置後、血管の狭窄・閉塞の危険性がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決するための、抗血栓性が持続し、かつ、組織再形成性に優れたステントを提供する。また、X線造影下においてその位置、状態を確認することが可能なステントおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)から(6)の本発明により達成される。
(1)酸化剤により処理された基材上に、2つ以上のアミノ基を有するカップリング剤ならびに2つ以上のアルデヒド基あるいはエポキシ基を有する架橋剤を介して抗血栓剤が共有結合されていることを特徴とするステント。
(2)前記酸化剤がオゾンである上記(1)に記載のステント。
(3)前記抗血栓剤がアミノ化ヘパリンである上記(1)または(2)に記載のステント。
(4)前記金属製の基材がステンレススチールである上記(1)に記載のス
テント。
(5)前記カップリング剤がポリエチレンイミン、ポリエチレングリコールジアミン、エチレンジアミンあるいはテトラメチレンジアミンの群の中から選択された少なくとも1種類である上記(1)に記載のステント。
(6)前記架橋剤がグルタルアルデヒドあるいはエチレングリコールジグリシジルエーテルである上記(1)に記載のステント。
(7)前記金属製の基材の外面の少なくとも一部にX線不透過性の金属メッキが施されている上記(1)に記載のステント。
(8)血液と接する面は抗血栓性を有し、血液と接しない面はX線不透過性を有するステント。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のステントの基材は、樹脂、金属等の基材を用いることができ特に限定されるものではない。
ステンレススチール、タンタル、超弾性ニッケル−チタン(Ni−Ti)合金、熱可塑性ポリマー等が例示され生体適合性材料であることが好ましい。
【0016】
本発明のステントの形状は、特に限定されるものではないが、収縮状態から膨張状態まで半径方向で伸縮可能であり長手方向に可撓性のある形状とするのが好ましい。
コイル状、網状またはジャバラ状の円筒体の1単位またはこの1単位が軸方向に複数個連続する形状が例示される。図1にステントの形状の1例を示した。(a)は、収縮状態の形状の展開図であり(b)は、拡張状態の形状の展開図である。
【0017】
本発明のステントの1例を図2に斜視図で示す。本発明のステント1は、その表面に抗血栓剤2が共有結合されているが、さらに少なくとも一部にX線不透過性の金属メッキ3が施されている。図2の例は、図3にその一部の断面図を示すように血液と接する面に抗血栓剤2が共有結合され、血液と接しない面にX線不透過性の金属メッキ3が施されている1例を示す。すなわちステントの外表面はX線不透過性の金属メッキ3が設けられ金属メッキ3表面の裏面および側面には抗血栓剤2が共有結合されている。
ステントの表面処理には抗血栓性とX線造影性を付与する処理がある。これらの表面処理はそれぞれ単独で行ってもよいし両方行ってもよい。両方行う場合はX線造影性処理を行った後に抗血栓性処理を行うのが好ましい。
【0018】
X線造影性処理には、Au、Ag、プラチナ、イリジウム、タンタル等のX線不透過性金属メッキを行う。従来このようなX線不透過処理金属メッキ面は貴金属が多く、その表面は不活性であるためさらに表面処理することは困難であると考えられていたので抗血栓処理等は全く試みられていない。本発明ではステントの基材の一部に金属メッキし、他を抗血栓処理することで簡易な工程でX線不透過性と抗血栓性を兼ね備えたステントを始めて得ることができた。メッキはステントの外表面(血液と接しない面)にするのが好ましい。メッキは外表面の一部であってもかまわない。X線不透過性の観点からは、ステントの外表面全長にメッキを施した方が視認性がよいので好ましい。X線不透過性金属としては安定性に優れた金が好ましい。造影性の程度はメッキする金属の種類により様々であるので、ステント留置後の血管造影に支障をきたさない程度の造影性をもたせるような厚さのメッキを施すことが好ましい。金を用いた場合は10〜40μmの厚さのメッキが好ましい。
【0019】
円筒形等のステントの外面のみをメッキする場合は内側にマスク等をかけてメッキが及ばないようにして行う。好ましくはステント形状にする前の金属製のパイプの両端を栓などで閉じることで密封し、メッキ液が内側に入らないようにして、その外面のみをメッキし、その後ステント形状に打抜き、又はレーザー加工する。
ステント基材にX線不透過処理を行った場合も行わない場合も以下の抗血栓性処理を行う。
【0020】
1)ステントの表面を酸化剤により処理する。
酸化剤処理には、ハロゲンガス、クロム酸関連化合物等による処理が挙げられるがオゾン処理が好ましい。オゾン処理は酸化剤の中でもかなり強力であるのでステンレススチール等の化学的に不活性な金属表面を活性化するのに適している。
【0021】
オゾンによる酸化作用により、基材表面は化学的に活性化される。一方、表面が荒らされるために凹凸が形成されカップリング剤のアンカーとも成りうるので物理的にも活性化される。また、オゾンによりカップリング材との結合を妨害するような不純物も酸化分解されて消滅するのでより強固な結合が形成される。
【0022】
オゾン処理はオゾン発生機で酸素を酸化することで発生したオゾンをステント基材と接触させる。オゾン濃度、酸素(オゾン)流量、反応温度、反応時間等は、用いるステントの材質により選択する。処理表面が金属化合物の場合は、有機樹脂より強い条件で行うのが好ましい。オゾン濃度は20〜100mg/lの範囲とするのが好ましい。即ち、20mg/l未満では十分な活性化が得られず、100mg/lより大きいと不均一な反応が起こることが懸念される。また、酸素(オゾン)流量は50〜1000ml/minの範囲とするのが好ましい。50ml/min未満では基材の場所により反応むらが生じ、1000ml/minより大きいと反応にあずからないオゾンが増加し無駄である。また、反応温度については常温で酸化不可能な場合にその材質の特性を考慮した上で、0〜70℃の範囲内で上昇させていくのが好ましい。また、反応時間については30〜120分であるのが好ましい。30分未満では反応の制御が困難になり、120分より長いと工程に時間がかかり効率が悪くなる。
【0023】
2)次に、2つ以上のアミノ基を有するカップリング剤ならびに2つ以上のアルデヒド基あるいはエポキシ基を有する架橋剤を介して抗血栓剤を共有結合させる。
活性化した基材表面に対して、抗血栓剤、好ましくはヘパリン分子を一時的にイオン結合させるために必要なアミノ基を2以上有するカップリング剤を反応させる。カップリング剤はポリエチレンイミン、ポリエチレングリコールジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等が挙げられる。
このようにアミノ基を表面に付与した基材に対してヘパリン分子を接触しイオン結合させる。このイオン結合は基材とヘパリンを後に共有結合させるため、一時的に固定する。
【0024】
結合させるヘパリン分子はそのままでも良いが、より強固に固定するためにヘパリン分子中にいくつか存在するN−硫酸基の一部を脱硫酸化して第1級アミノ化しておくことが好ましい。ただし、脱硫酸化の程度に比例してヘパリンの活性は低下していくので、ヘパリン分子中の第1級アミノ基の量は5〜25%にしておくのがより好ましい。抗血栓剤としてヘパリンを用いるとステントを体内に留置した直後の二週間位は充分な抗血栓性を有する。一方、長期間経過後の体内の組織の復元率も高い。
【0025】
抗血栓剤として、ヘパリンやアミノ化ヘパリンの代わりに抗血栓性や血管平滑筋の遊走を抑制する化合物、例えば、カルシウム拮抗剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、血小板膜糖タンパク受容体拮抗剤(IIb IIIa拮抗剤)等でアミノ基とイオン結合可能な化合物を用いても良い。
【0026】
a)カップリング剤の付与は基材表面への溶液の塗布もしくは浸漬により行うことができる。pHは4〜12が好ましい。pHが4未満あるいは12より大きいと基材である金属の種類によってはイオンの流出が懸念され、活性化した表面を失うおそれがあるので好ましくない。また、反応温度は0〜80℃未満が好ましい。0℃未満では反応性が低下し、80℃以上だとカップリング剤が変性するおそれがあるので好ましくない。また、反応時間は10分〜24時間が好ましい。反応時間は10分未満では十分に反応が進行せず、24時間より長いとpH値や反応温度によってはカップリング剤が変性するおそれがあるので好ましくない。
【0027】
次に、抗血栓剤、好ましくはヘパリンのイオン結合はカップリング剤を付与した基材にヘパリン溶液を塗布、もしくは浸漬することで行うことができる。その際の条件は、pHは2〜5が好ましい。pHが2未満ではヘパリンの安定性が低下し、5より大きいと基材表面の陽電荷が低下し結合ヘパリン量が低下するので好ましくない。また、反応温度は0〜80℃が好ましい。反応温度が0℃未満ではヘパリンのイオン結合速度が著しく低下し、80℃より高いとヘパリンの安定性が低下するので好ましくない。反応時間は10分〜24時間が好ましい。反応時間が10分未満ではイオン結合が不十分であり、24時間より長いとヘパリンの活性が低下するので好ましくない。また、ヘパリン濃度は0.05%以上飽和濃度以下が好ましい。
【0028】
次に、架橋剤による共有結合化は架橋剤溶液の基材表面への塗布、もしくは浸漬で行うことができる。架橋剤濃度は0.1〜0.5%が好ましい。架橋剤濃度は0.1%未満では十分に架橋されず、0.5%より高いとヘパリンの活性に悪影響を及ぼすので好ましくない。pHは2〜5が好ましい。pHが2未満ではヘパリンの安定性が低下し、5より高いとイオン結合したヘパリンの架橋反応が行われる前に基材表面から速やかに離脱するので好ましくない。また、反応温度は0〜60℃が好ましい。反応温度が0℃未満では反応が十分進行せず、60℃より高いとヘパリンの活性を失活させるので好ましくない。また、反応時間は30分〜24時間が好ましい。反応時間は30分未満では十分に架橋反応が進行せず、24時間より長いとヘパリンの活性を失活させるので好ましくない。
【0029】
b)引き続き、抗血栓剤、好ましくはヘパリンを共有結合化するためにカップリング剤とヘパリン分子との架橋剤として、少なくとも2つ以上のアルデヒド基やエポキシ基等を有する化合物を反応させる。架橋剤としてはグルタールアルデヒドあるいはエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられるが、ジアルデヒド誘導体を用いた場合には形成された結合は不安定であるためさらに還元反応による安定化が必要となる。
カップリング剤としてジアルデヒド誘導体を用いた場合に形成された不安定な結合(シッフ塩基)を安定化させるのに還元剤の溶液を塗布、もしくは浸漬する。好ましくは、架橋反応中の溶液の中に還元剤を混入する。これにより一連の反応系の中でヘパリンの固定が行え、不安定な共有結合を壊すことなく還元することができる。還元剤は還元すべき結合と化学当量的に同量、もしくはそれ以上加えればよい。還元剤を混入する場合は反応中の架橋剤の温度、濃度を変化させないために、高濃度の還元剤を少量添加するのがよい。反応時間はヘパリンの失活が起きないように2時間を越えないようにするのがよい。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
厚さ1mmのステンレススチール製の板(材質:SUS316L)を切断して8×8mmに加工しサンプルとした。これらのサンプルに対してオゾン濃度88mg/l、酸素流量800ml/分の条件で反応時間を0、30、60、120および180分としてオゾン処理を行った。X線分光分析法(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis 、以下、ESCAと略記)により表面に存在する酸素元素分率を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
【0032】
反応時間60分以上では酸素元素分率はほぼ平行線をたどっていることから、反応時間60分でサンプル表面の酸化物が飽和に達したと考えられる。従って60分以上の反応は無駄である。また、60分未満では上昇傾向を示していることから反応が不十分である。以上よりオゾン処理により基材表面が活性化されることを確認し、同時にSUS316Lに対する至適条件も求めることができた。同様にして他の金属基材についても至適条件を求めることができる。
【0033】
(実施例2)
実施例1のサンプルにカップリング剤としてポリエチレンイミン(以下、PEIと略記)を付与するために、PEIの0.5%水溶液に5時間浸漬した。また、付着ではなく表面に結合していることを確認するために、ポリエチレンテレフタレートのフィルムによる擦過試験を各サンプルに対して行った。それぞれのサンプルのESCAにより分析した。なお、測定元素はPEIに由来する窒素とした。結果を表2に示す。
【0034】
【0035】
オゾン処理を行っていないサンプル(反応時間0分)で明らかにPEIの剥離が認められた。また、反応時間60分で最も多くPEIが固定されていることも確認した。以上よりオゾン処理により基材表面が有効に活性化されること、実施例1で求めたSUS316Lに対する至適条件がPEIに対して有効であることを確認した。
【0036】
(実施例3)
実施例2のオゾン反応時間60分のサンプルに対してヘパリンをイオン結合させるために、N−硫酸基の一部を脱硫酸化して第1級アミンに変換したヘパリン(アミノ化ヘパリンの合成は特公平8−38851号に従った)を、pH4.0に調整した50mMのコハク酸バッファーで溶解した濃度0.05%の溶液に45℃で2時間浸漬した。ここまでのサンプル(ヘパリンがイオン結合している状態)をAサンプルとする。さらにAサンプルを除く全てに対して共有結合化させるために以下の一連の反応を行った。架橋剤として、0.1、0.2、0.3および0.5%のグルタルアルデヒド水溶液2mlに55℃で2時間浸漬した。浸漬後、結合部位を還元するために、各グルタルアルデヒド溶液の20倍濃度の水素化シアノホウ素ナトリウム水溶液を0.2ml添加し、よく攪拌して55℃で2時間放置した。余剰の架橋剤、還元剤を除去するために、55℃の蒸留水に1時間浸漬した。これらのサンプルをそれぞれB1、B2、B3およびB5とする。また、架橋反応および還元反応を4℃で行ったサンプルをC1、C2、C3およびC5とする。
【0037】
これらのサンプルに対して、37℃の生理食塩水による410ml/minでの循環流洗浄を3日行い、表面に残存しているヘパリンの活性を市販の測定キット(テストチームヘパリンsキット、第一化学薬品)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0038】
【0039】
【0040】
架橋反応を行っていないAサンプルで、洗浄後に明らかに活性が低下していることから架橋反応のヘパリン固定の有用性を確認した。また、この実施例3における架橋反応は温度が4℃で濃度が0.2もしくは0.3%が最適であった。
【0041】
(実施例4)
実施例3において最適条件であったC3サンプルと対象サンプル(未処理のステンレススチール(材質:SUS316L))についてエチレンオキサイドガス滅菌(以下、EOG滅菌と省略)を行った後、血小板拡張能試験を行った。滅菌条件は温度50℃、湿度65%、EOG圧0.7Kgf/cm2 、反応時間3時間、ガス置換回数3回で、サンプルは滅菌後それぞれ7日間放置した。結果を表5に示す。これからサンプル表面の血小板に対する反応性が求められる。
【0042】
血小板拡張能試験の方法、及び意義は以下の通りである。
血小板数を予め調整した多血小板血漿(以下、PRPと省略)をサンプル表面に一定時間接触させ、付着した血小板数、形態を知ることで、その表面の抗血栓性レベルを評価できる。
【0043】
人静脈血(3.8%クエン酸ナトリウム加血)を遠心分離してPRPを分離し、その一部をさらに遠心分離して乏血小板血漿(以下、PPPと省略)を分離する。PRPとPPPを用いて血小板数10×104 個/μlの調整済みPRPを調整する。8×8mmのサンプル表面に200μlの調整済みPRPを滴下し、液厚2mmになるようにポリスチレン製シャーレをのせ、そのまま30分間放置する。洗浄後、1%グルタルアルデヒド水溶液で固定し、電子顕微鏡で観察、撮影する。写真より一定面積に付着した血小板の数を以下に示した形態別に数えた。結果を表4に示す。
【0044】
ヘパリンコートによってステンレススチール基材表面の血小板に対する反応性が軽減され、その結果抗血栓性を示すことが確認された。
【0045】
(実施例5および比較例1、2)
ステンレススチール製のパイプ9本(材質:SUS316L、長さ20mm、外径:1.4mm、肉厚:0.1mm)をレーザー加工によりバルーンで拡張可能なステント形態とした。これらの内3本に対して実施例3のC3サンプルの条件でヘパリンコートを行い(HCサンプル、Heparin Coated sample)、対象として3本に公知の技術であるヘパリン−ベンザルコニウム(ヘパリン−ジメチルステアリルベンジルクロライド)の塗布を行い(HBサンプル、Heparin−Benzalkonium sample)、残りの3本をそのままとした(NHサンプル、Non Heparin sample)。
それぞれのステントに対して、37℃の生理食塩水で14日間410ml/
minの流量で循環洗浄を行った後、実施例3と同様の方法でヘパリン活性の
値を測定した。結果を表5に示す。
【0046】
この結果から明らかなように、本発明による方法でヘパリンを基材表面に固定することによって、長時間その活性を維持できることを確認した。
【0047】
(実施例6および比較例3、4)
実施例5および比較例1、2と同様にして3種類のサンプルを3本ずつ作製し、得られた9本のステントに実施例4の条件でEOG滅菌を行い、滅菌後7日間放置してガス抜きを行った。これらのステントを体重2.5〜3.0Kgの白色家兎(北山ラベス種)9羽の腹部大動脈(血管径3mm)に、大腿動脈から経カテーテル的にバルーンカテーテルを用いて挿入、拡張後留置した。バルーン径は拡張時3mmのものを用いた。術中のみヘパリン投与による抗凝固療法を行った。術後2週間経過後に、ヘパリン投与、麻酔薬の過剰投与により死亡させステントを摘出した。HCサンプル群3例には血栓の付着はほとんどなかったのに対し、HBサンプル群、及びNHサンプル群ではそれぞれ3例中2例に、血管閉塞まではいかないものの、大量の血栓、また残りの1例にも中程度の血栓の付着が認められた。
また、前記ステントを留置した血管をパラフィン包埋させ、軟組織の病理標本を作製し、血管内皮細胞を観察したところHCサンプル群およびHBサンプル群は平滑筋の新生組織が見られなかったがNHサンプルでは1例に新生組織の兆候が見られた。結果を表6に示す。
【0048】
表6 動物実験結果(n=3)
◎:3例中、1例も血栓または新生組織の兆候が見られなかった。
△:3例中、1例に血栓または新生組織の兆候が見られた。
×:3例全てに血栓または新生組織の兆候が見られた。
【0049】
(実施例7)
ステンレススチール製のパイプ2本(材質:SUS316L、長さ20mm、外径:1.4mm、肉厚:0.1mm)の内1本の外面のみに電気メッキにより、厚さ30μmの金メッキを施した。これらのパイプをレーザー加工によりバルーンエクスパンド可能なステント形態とし、これらのステントに実施例3のC3サンプルの条件でヘパリンコートを行った。これらのステントをバルーンにより拡張させ、X線造影装置を用いて視認性を確認したところ、メッキを施していないステントではほとんど造影されなかったのに対し、金メッキを施したステントではその外観だけでなくレーザーカットのデザインまでもはっきりと造影されていた。
【0050】
以上、実施例にステンレス製ステントを中心に説明したが、当然、全面に金メッキをほどこしたバルーン拡張型ステントや、拡張型ステントに必要により本発明のX線造影処理を行い、または行わずに、各種合成樹脂(使用できる合成樹脂は特公平6−38851号参照)を被覆し、その後本発明の抗血栓処理を行って本発明のステントとすることもできる。
また、ステントに限らず、本発明の抗血栓処理および/またはX線造影処理を血液と接触する金属製の医療材料や医療器具にも適用することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の抗血栓剤を表面に固定した抗血栓性ステントは、公知の技術であるヘパリン−ベンザルコニウムの塗布に比べてヘパリン分子をより強固に固定することが可能であり、血流にさらされるという厳しい条件下でもその活性を維持することができる。このことから、血栓付着によるステント閉塞の危険性の回避や抗血栓剤投与などの療法の軽減が可能である。
【0052】
また、抗血栓剤を表面に固定することで、血管平滑筋の遊走・増殖が原因となっている血管肥厚による再狭窄を低減できる。
また、ステントに抗血栓剤を固定する前にX線不透過性金属をメッキすることで、X線造影性のほとんどない金属基材のステントに簡易な工程で抗血栓性とX線造影性を同時に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)、(b)は本発明のステントの1例を示す展開図である。
【図2】 本発明のステントの1例を示す斜視図である。
【図3】 図2に示すステントの一部の断面図である。
【符号の説明】
1 ステント
2 抗血栓剤
3 X線不透過性の金属メッキ
【発明の属する技術分野】
本発明は狭窄した血管の拡張に用いられるステントに関する。
【0002】
【従来の技術】
狭窄した血管(冠動脈)を、内腔側から押し広げ血流を確保するPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠動脈形成術)は、今や閉塞性冠動脈疾患−狭心症、心筋梗塞−の治療法として広く普及している。
【0003】
血管拡張後の再狭窄を防止するために特公平4−6377号公報に示されるような管腔内脈管移植片(expandable intraluminal graft 、“ステント”)が開発された。
【0004】
ステントは血管、胆管等の生体管腔の形状を維持するために用いられる円筒状の医療用具であり、細く小さく折り畳んだ状態で生体管腔内に挿入され、目的部位(狭窄部位)で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。
【0005】
拡張手段には2通りあり、一つはステント内側からバルーンを拡張して外力によって半径方向に拡張する手段であり、もう一つは細く小さく折り畳んだステントを保持している力を除くことで、自らの復元力でもってステントを半径方向に拡張する手段である。
【0006】
バルーンの拡張による外力によって半径方向に拡張するステントをバルーン拡張型のステントといい、それ自体に拡張機能はない。このバルーン拡張型のステントは拡張後の形状復帰が起こりにくい金属材料が使用されており、生体に対する安全性の面から生体内での反応性の低いステンレススチール、タンタル等が用いられている。
【0007】
自らの復元力で拡張するステントを自己拡張型ステントといい、それ自体が収縮および拡張機能を持っている。例えば、目的部位の内径より小さい外径のチューブ内にステントを収縮させて収納し、このチューブの先端を目的部位に到達させた後、ステントをチューブより押し出す。このような自己拡張型ステントは、元の形状への復元力が必要なことから、ステンレススチールや超弾性金属・形状記憶金属(ともにニッケルチタン合金)を用いて作製されている。
自己拡張型ステントのうち超弾性合金(形状記憶合金)を用いたステントは、特公平5−43392号公報に開示されている。
【0008】
このように、現在のステントのほとんどが金属で作製されたものである。しかし、金属はその物性・機能、生体組織に対する安全性・適合性の面から選ばれたものであり、血液に対しては異物認識されやすい材料、つまり血栓を形成し易く、血小板を活性化し血管平滑筋の遊走と増殖を招く材料である。
このため、一般的に複雑な網状構造をとることが多いステント留置後は常に血栓や血管平滑筋の遊走と増殖による血管の狭窄・閉塞の危険性が伴うので、ステント内面が血管内膜にほぼ覆われると言われている術後約2週間は患者にヘパリン(heparin )やワーファリン(warfarin) 等の抗血栓剤の投与を行う必要がある。この投与により、動脈穿刺部、及び末梢血管からの出血性合併症が起きる恐れがある。
ステント留置後短期間の間血小板の活性による血管平滑筋の遊走・増殖による再狭窄を防止し、抗血栓剤の投与期間の短縮、投与量の減少、あるいは投与が不必要となれば、必然的に入院期間の短縮や出血性合併症の減少が可能になる。
【0009】
一方、医療用材料あるいは医療用具に坑血栓性を付与する試みは行われてき
ている。
特公昭49−48336号公報は、プラスチック表面に吸着させたカチオン性界面活性剤にグルタールアルデヒドで架橋したヘパリンをイオン結合させることで、前記プラスチック表面に坑血栓性を付与させる方法を開示している。
特公昭60−28504号公報は、ヘパリンと4級アミンのコンプレックス化合物をプラスチック、ガラスまたは金属などの基材表面にコーテイングし、グルタールアルデヒドで処理し、シッフ塩基を生成することで前記基材表面に坑血栓性を付与させる方法とヘパリンと4級アミン(塩化ベンザルコニウム)のコンプレックス化合物を前記基材表面にコーテイングすることで前記基材表面に坑血栓性を付与させる方法を開示している。
【0010】
しかしながら、これらの方法は基材とヘパリンまたはヘパリンと4級アミンおよび/またはグルタールアルデヒドの化合物が共有結合ではなく、IPN(相互貫入編目)構造もしくは分子間力で結合しているため、共有結合に較べて結合力は弱い。
特開平8−52221号公報は、真空蒸着によるパリレン樹脂の被膜をステントに適用することで、ステントに抗血栓性を付与する方法を開示している。
また、各種プラスチック材料とヘパリンあるいはその化合物を共有結合させる方法を特公平6−38851号公報は開示している。この方法はヘパリンの化合物が基材と共有結合しているので、該ヘパリンの化合物が基材表面から失われることがない。しかし、各種プラスチック材料より金属材料は不活性なので同じように金属材料にヘパリン化合物を結合できるか否か不明である。
また血管内で拡張するステントに用いて血管平滑筋の遊走と増殖を抑制するか否かは全くわからない。
【0011】
現在ステントの材料として広く使用されているステンレススチールは、X線透過性が高く、またステントは網状構造をとり網目を構成するステンレス材の巾が0.2mm程度と細いため、手術時及び手術後はその位置・状態を確認することが極めて困難である。手術中にステントの位置を明確にするためにカテーテルに造影マーカーを設けているが、ステントがカテーテル上の所定の位置からずれてしまう危険性があり完全とは言えない。さらにステントの形状確認が行えないことから、拡張が不完全であったり、材料金属が若干もっている復元力によるエラスティックリコイル(拡張されたステントが元の状態にもどる)を発見することが困難である。
【0012】
このような問題を解決するためのラジオパク・マーカ付きのステントが特開平8−126704号公報に開示されている。このようなX線不透過処理金属めっきされたステントは留置後、血管の狭窄・閉塞の危険性がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決するための、抗血栓性が持続し、かつ、組織再形成性に優れたステントを提供する。また、X線造影下においてその位置、状態を確認することが可能なステントおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)から(6)の本発明により達成される。
(1)酸化剤により処理された基材上に、2つ以上のアミノ基を有するカップリング剤ならびに2つ以上のアルデヒド基あるいはエポキシ基を有する架橋剤を介して抗血栓剤が共有結合されていることを特徴とするステント。
(2)前記酸化剤がオゾンである上記(1)に記載のステント。
(3)前記抗血栓剤がアミノ化ヘパリンである上記(1)または(2)に記載のステント。
(4)前記金属製の基材がステンレススチールである上記(1)に記載のス
テント。
(5)前記カップリング剤がポリエチレンイミン、ポリエチレングリコールジアミン、エチレンジアミンあるいはテトラメチレンジアミンの群の中から選択された少なくとも1種類である上記(1)に記載のステント。
(6)前記架橋剤がグルタルアルデヒドあるいはエチレングリコールジグリシジルエーテルである上記(1)に記載のステント。
(7)前記金属製の基材の外面の少なくとも一部にX線不透過性の金属メッキが施されている上記(1)に記載のステント。
(8)血液と接する面は抗血栓性を有し、血液と接しない面はX線不透過性を有するステント。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のステントの基材は、樹脂、金属等の基材を用いることができ特に限定されるものではない。
ステンレススチール、タンタル、超弾性ニッケル−チタン(Ni−Ti)合金、熱可塑性ポリマー等が例示され生体適合性材料であることが好ましい。
【0016】
本発明のステントの形状は、特に限定されるものではないが、収縮状態から膨張状態まで半径方向で伸縮可能であり長手方向に可撓性のある形状とするのが好ましい。
コイル状、網状またはジャバラ状の円筒体の1単位またはこの1単位が軸方向に複数個連続する形状が例示される。図1にステントの形状の1例を示した。(a)は、収縮状態の形状の展開図であり(b)は、拡張状態の形状の展開図である。
【0017】
本発明のステントの1例を図2に斜視図で示す。本発明のステント1は、その表面に抗血栓剤2が共有結合されているが、さらに少なくとも一部にX線不透過性の金属メッキ3が施されている。図2の例は、図3にその一部の断面図を示すように血液と接する面に抗血栓剤2が共有結合され、血液と接しない面にX線不透過性の金属メッキ3が施されている1例を示す。すなわちステントの外表面はX線不透過性の金属メッキ3が設けられ金属メッキ3表面の裏面および側面には抗血栓剤2が共有結合されている。
ステントの表面処理には抗血栓性とX線造影性を付与する処理がある。これらの表面処理はそれぞれ単独で行ってもよいし両方行ってもよい。両方行う場合はX線造影性処理を行った後に抗血栓性処理を行うのが好ましい。
【0018】
X線造影性処理には、Au、Ag、プラチナ、イリジウム、タンタル等のX線不透過性金属メッキを行う。従来このようなX線不透過処理金属メッキ面は貴金属が多く、その表面は不活性であるためさらに表面処理することは困難であると考えられていたので抗血栓処理等は全く試みられていない。本発明ではステントの基材の一部に金属メッキし、他を抗血栓処理することで簡易な工程でX線不透過性と抗血栓性を兼ね備えたステントを始めて得ることができた。メッキはステントの外表面(血液と接しない面)にするのが好ましい。メッキは外表面の一部であってもかまわない。X線不透過性の観点からは、ステントの外表面全長にメッキを施した方が視認性がよいので好ましい。X線不透過性金属としては安定性に優れた金が好ましい。造影性の程度はメッキする金属の種類により様々であるので、ステント留置後の血管造影に支障をきたさない程度の造影性をもたせるような厚さのメッキを施すことが好ましい。金を用いた場合は10〜40μmの厚さのメッキが好ましい。
【0019】
円筒形等のステントの外面のみをメッキする場合は内側にマスク等をかけてメッキが及ばないようにして行う。好ましくはステント形状にする前の金属製のパイプの両端を栓などで閉じることで密封し、メッキ液が内側に入らないようにして、その外面のみをメッキし、その後ステント形状に打抜き、又はレーザー加工する。
ステント基材にX線不透過処理を行った場合も行わない場合も以下の抗血栓性処理を行う。
【0020】
1)ステントの表面を酸化剤により処理する。
酸化剤処理には、ハロゲンガス、クロム酸関連化合物等による処理が挙げられるがオゾン処理が好ましい。オゾン処理は酸化剤の中でもかなり強力であるのでステンレススチール等の化学的に不活性な金属表面を活性化するのに適している。
【0021】
オゾンによる酸化作用により、基材表面は化学的に活性化される。一方、表面が荒らされるために凹凸が形成されカップリング剤のアンカーとも成りうるので物理的にも活性化される。また、オゾンによりカップリング材との結合を妨害するような不純物も酸化分解されて消滅するのでより強固な結合が形成される。
【0022】
オゾン処理はオゾン発生機で酸素を酸化することで発生したオゾンをステント基材と接触させる。オゾン濃度、酸素(オゾン)流量、反応温度、反応時間等は、用いるステントの材質により選択する。処理表面が金属化合物の場合は、有機樹脂より強い条件で行うのが好ましい。オゾン濃度は20〜100mg/lの範囲とするのが好ましい。即ち、20mg/l未満では十分な活性化が得られず、100mg/lより大きいと不均一な反応が起こることが懸念される。また、酸素(オゾン)流量は50〜1000ml/minの範囲とするのが好ましい。50ml/min未満では基材の場所により反応むらが生じ、1000ml/minより大きいと反応にあずからないオゾンが増加し無駄である。また、反応温度については常温で酸化不可能な場合にその材質の特性を考慮した上で、0〜70℃の範囲内で上昇させていくのが好ましい。また、反応時間については30〜120分であるのが好ましい。30分未満では反応の制御が困難になり、120分より長いと工程に時間がかかり効率が悪くなる。
【0023】
2)次に、2つ以上のアミノ基を有するカップリング剤ならびに2つ以上のアルデヒド基あるいはエポキシ基を有する架橋剤を介して抗血栓剤を共有結合させる。
活性化した基材表面に対して、抗血栓剤、好ましくはヘパリン分子を一時的にイオン結合させるために必要なアミノ基を2以上有するカップリング剤を反応させる。カップリング剤はポリエチレンイミン、ポリエチレングリコールジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等が挙げられる。
このようにアミノ基を表面に付与した基材に対してヘパリン分子を接触しイオン結合させる。このイオン結合は基材とヘパリンを後に共有結合させるため、一時的に固定する。
【0024】
結合させるヘパリン分子はそのままでも良いが、より強固に固定するためにヘパリン分子中にいくつか存在するN−硫酸基の一部を脱硫酸化して第1級アミノ化しておくことが好ましい。ただし、脱硫酸化の程度に比例してヘパリンの活性は低下していくので、ヘパリン分子中の第1級アミノ基の量は5〜25%にしておくのがより好ましい。抗血栓剤としてヘパリンを用いるとステントを体内に留置した直後の二週間位は充分な抗血栓性を有する。一方、長期間経過後の体内の組織の復元率も高い。
【0025】
抗血栓剤として、ヘパリンやアミノ化ヘパリンの代わりに抗血栓性や血管平滑筋の遊走を抑制する化合物、例えば、カルシウム拮抗剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、血小板膜糖タンパク受容体拮抗剤(IIb IIIa拮抗剤)等でアミノ基とイオン結合可能な化合物を用いても良い。
【0026】
a)カップリング剤の付与は基材表面への溶液の塗布もしくは浸漬により行うことができる。pHは4〜12が好ましい。pHが4未満あるいは12より大きいと基材である金属の種類によってはイオンの流出が懸念され、活性化した表面を失うおそれがあるので好ましくない。また、反応温度は0〜80℃未満が好ましい。0℃未満では反応性が低下し、80℃以上だとカップリング剤が変性するおそれがあるので好ましくない。また、反応時間は10分〜24時間が好ましい。反応時間は10分未満では十分に反応が進行せず、24時間より長いとpH値や反応温度によってはカップリング剤が変性するおそれがあるので好ましくない。
【0027】
次に、抗血栓剤、好ましくはヘパリンのイオン結合はカップリング剤を付与した基材にヘパリン溶液を塗布、もしくは浸漬することで行うことができる。その際の条件は、pHは2〜5が好ましい。pHが2未満ではヘパリンの安定性が低下し、5より大きいと基材表面の陽電荷が低下し結合ヘパリン量が低下するので好ましくない。また、反応温度は0〜80℃が好ましい。反応温度が0℃未満ではヘパリンのイオン結合速度が著しく低下し、80℃より高いとヘパリンの安定性が低下するので好ましくない。反応時間は10分〜24時間が好ましい。反応時間が10分未満ではイオン結合が不十分であり、24時間より長いとヘパリンの活性が低下するので好ましくない。また、ヘパリン濃度は0.05%以上飽和濃度以下が好ましい。
【0028】
次に、架橋剤による共有結合化は架橋剤溶液の基材表面への塗布、もしくは浸漬で行うことができる。架橋剤濃度は0.1〜0.5%が好ましい。架橋剤濃度は0.1%未満では十分に架橋されず、0.5%より高いとヘパリンの活性に悪影響を及ぼすので好ましくない。pHは2〜5が好ましい。pHが2未満ではヘパリンの安定性が低下し、5より高いとイオン結合したヘパリンの架橋反応が行われる前に基材表面から速やかに離脱するので好ましくない。また、反応温度は0〜60℃が好ましい。反応温度が0℃未満では反応が十分進行せず、60℃より高いとヘパリンの活性を失活させるので好ましくない。また、反応時間は30分〜24時間が好ましい。反応時間は30分未満では十分に架橋反応が進行せず、24時間より長いとヘパリンの活性を失活させるので好ましくない。
【0029】
b)引き続き、抗血栓剤、好ましくはヘパリンを共有結合化するためにカップリング剤とヘパリン分子との架橋剤として、少なくとも2つ以上のアルデヒド基やエポキシ基等を有する化合物を反応させる。架橋剤としてはグルタールアルデヒドあるいはエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられるが、ジアルデヒド誘導体を用いた場合には形成された結合は不安定であるためさらに還元反応による安定化が必要となる。
カップリング剤としてジアルデヒド誘導体を用いた場合に形成された不安定な結合(シッフ塩基)を安定化させるのに還元剤の溶液を塗布、もしくは浸漬する。好ましくは、架橋反応中の溶液の中に還元剤を混入する。これにより一連の反応系の中でヘパリンの固定が行え、不安定な共有結合を壊すことなく還元することができる。還元剤は還元すべき結合と化学当量的に同量、もしくはそれ以上加えればよい。還元剤を混入する場合は反応中の架橋剤の温度、濃度を変化させないために、高濃度の還元剤を少量添加するのがよい。反応時間はヘパリンの失活が起きないように2時間を越えないようにするのがよい。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
厚さ1mmのステンレススチール製の板(材質:SUS316L)を切断して8×8mmに加工しサンプルとした。これらのサンプルに対してオゾン濃度88mg/l、酸素流量800ml/分の条件で反応時間を0、30、60、120および180分としてオゾン処理を行った。X線分光分析法(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis 、以下、ESCAと略記)により表面に存在する酸素元素分率を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
【0032】
反応時間60分以上では酸素元素分率はほぼ平行線をたどっていることから、反応時間60分でサンプル表面の酸化物が飽和に達したと考えられる。従って60分以上の反応は無駄である。また、60分未満では上昇傾向を示していることから反応が不十分である。以上よりオゾン処理により基材表面が活性化されることを確認し、同時にSUS316Lに対する至適条件も求めることができた。同様にして他の金属基材についても至適条件を求めることができる。
【0033】
(実施例2)
実施例1のサンプルにカップリング剤としてポリエチレンイミン(以下、PEIと略記)を付与するために、PEIの0.5%水溶液に5時間浸漬した。また、付着ではなく表面に結合していることを確認するために、ポリエチレンテレフタレートのフィルムによる擦過試験を各サンプルに対して行った。それぞれのサンプルのESCAにより分析した。なお、測定元素はPEIに由来する窒素とした。結果を表2に示す。
【0034】
【0035】
オゾン処理を行っていないサンプル(反応時間0分)で明らかにPEIの剥離が認められた。また、反応時間60分で最も多くPEIが固定されていることも確認した。以上よりオゾン処理により基材表面が有効に活性化されること、実施例1で求めたSUS316Lに対する至適条件がPEIに対して有効であることを確認した。
【0036】
(実施例3)
実施例2のオゾン反応時間60分のサンプルに対してヘパリンをイオン結合させるために、N−硫酸基の一部を脱硫酸化して第1級アミンに変換したヘパリン(アミノ化ヘパリンの合成は特公平8−38851号に従った)を、pH4.0に調整した50mMのコハク酸バッファーで溶解した濃度0.05%の溶液に45℃で2時間浸漬した。ここまでのサンプル(ヘパリンがイオン結合している状態)をAサンプルとする。さらにAサンプルを除く全てに対して共有結合化させるために以下の一連の反応を行った。架橋剤として、0.1、0.2、0.3および0.5%のグルタルアルデヒド水溶液2mlに55℃で2時間浸漬した。浸漬後、結合部位を還元するために、各グルタルアルデヒド溶液の20倍濃度の水素化シアノホウ素ナトリウム水溶液を0.2ml添加し、よく攪拌して55℃で2時間放置した。余剰の架橋剤、還元剤を除去するために、55℃の蒸留水に1時間浸漬した。これらのサンプルをそれぞれB1、B2、B3およびB5とする。また、架橋反応および還元反応を4℃で行ったサンプルをC1、C2、C3およびC5とする。
【0037】
これらのサンプルに対して、37℃の生理食塩水による410ml/minでの循環流洗浄を3日行い、表面に残存しているヘパリンの活性を市販の測定キット(テストチームヘパリンsキット、第一化学薬品)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0038】
【0039】
【0040】
架橋反応を行っていないAサンプルで、洗浄後に明らかに活性が低下していることから架橋反応のヘパリン固定の有用性を確認した。また、この実施例3における架橋反応は温度が4℃で濃度が0.2もしくは0.3%が最適であった。
【0041】
(実施例4)
実施例3において最適条件であったC3サンプルと対象サンプル(未処理のステンレススチール(材質:SUS316L))についてエチレンオキサイドガス滅菌(以下、EOG滅菌と省略)を行った後、血小板拡張能試験を行った。滅菌条件は温度50℃、湿度65%、EOG圧0.7Kgf/cm2 、反応時間3時間、ガス置換回数3回で、サンプルは滅菌後それぞれ7日間放置した。結果を表5に示す。これからサンプル表面の血小板に対する反応性が求められる。
【0042】
血小板拡張能試験の方法、及び意義は以下の通りである。
血小板数を予め調整した多血小板血漿(以下、PRPと省略)をサンプル表面に一定時間接触させ、付着した血小板数、形態を知ることで、その表面の抗血栓性レベルを評価できる。
【0043】
人静脈血(3.8%クエン酸ナトリウム加血)を遠心分離してPRPを分離し、その一部をさらに遠心分離して乏血小板血漿(以下、PPPと省略)を分離する。PRPとPPPを用いて血小板数10×104 個/μlの調整済みPRPを調整する。8×8mmのサンプル表面に200μlの調整済みPRPを滴下し、液厚2mmになるようにポリスチレン製シャーレをのせ、そのまま30分間放置する。洗浄後、1%グルタルアルデヒド水溶液で固定し、電子顕微鏡で観察、撮影する。写真より一定面積に付着した血小板の数を以下に示した形態別に数えた。結果を表4に示す。
【0044】
ヘパリンコートによってステンレススチール基材表面の血小板に対する反応性が軽減され、その結果抗血栓性を示すことが確認された。
【0045】
(実施例5および比較例1、2)
ステンレススチール製のパイプ9本(材質:SUS316L、長さ20mm、外径:1.4mm、肉厚:0.1mm)をレーザー加工によりバルーンで拡張可能なステント形態とした。これらの内3本に対して実施例3のC3サンプルの条件でヘパリンコートを行い(HCサンプル、Heparin Coated sample)、対象として3本に公知の技術であるヘパリン−ベンザルコニウム(ヘパリン−ジメチルステアリルベンジルクロライド)の塗布を行い(HBサンプル、Heparin−Benzalkonium sample)、残りの3本をそのままとした(NHサンプル、Non Heparin sample)。
それぞれのステントに対して、37℃の生理食塩水で14日間410ml/
minの流量で循環洗浄を行った後、実施例3と同様の方法でヘパリン活性の
値を測定した。結果を表5に示す。
【0046】
この結果から明らかなように、本発明による方法でヘパリンを基材表面に固定することによって、長時間その活性を維持できることを確認した。
【0047】
(実施例6および比較例3、4)
実施例5および比較例1、2と同様にして3種類のサンプルを3本ずつ作製し、得られた9本のステントに実施例4の条件でEOG滅菌を行い、滅菌後7日間放置してガス抜きを行った。これらのステントを体重2.5〜3.0Kgの白色家兎(北山ラベス種)9羽の腹部大動脈(血管径3mm)に、大腿動脈から経カテーテル的にバルーンカテーテルを用いて挿入、拡張後留置した。バルーン径は拡張時3mmのものを用いた。術中のみヘパリン投与による抗凝固療法を行った。術後2週間経過後に、ヘパリン投与、麻酔薬の過剰投与により死亡させステントを摘出した。HCサンプル群3例には血栓の付着はほとんどなかったのに対し、HBサンプル群、及びNHサンプル群ではそれぞれ3例中2例に、血管閉塞まではいかないものの、大量の血栓、また残りの1例にも中程度の血栓の付着が認められた。
また、前記ステントを留置した血管をパラフィン包埋させ、軟組織の病理標本を作製し、血管内皮細胞を観察したところHCサンプル群およびHBサンプル群は平滑筋の新生組織が見られなかったがNHサンプルでは1例に新生組織の兆候が見られた。結果を表6に示す。
【0048】
表6 動物実験結果(n=3)
◎:3例中、1例も血栓または新生組織の兆候が見られなかった。
△:3例中、1例に血栓または新生組織の兆候が見られた。
×:3例全てに血栓または新生組織の兆候が見られた。
【0049】
(実施例7)
ステンレススチール製のパイプ2本(材質:SUS316L、長さ20mm、外径:1.4mm、肉厚:0.1mm)の内1本の外面のみに電気メッキにより、厚さ30μmの金メッキを施した。これらのパイプをレーザー加工によりバルーンエクスパンド可能なステント形態とし、これらのステントに実施例3のC3サンプルの条件でヘパリンコートを行った。これらのステントをバルーンにより拡張させ、X線造影装置を用いて視認性を確認したところ、メッキを施していないステントではほとんど造影されなかったのに対し、金メッキを施したステントではその外観だけでなくレーザーカットのデザインまでもはっきりと造影されていた。
【0050】
以上、実施例にステンレス製ステントを中心に説明したが、当然、全面に金メッキをほどこしたバルーン拡張型ステントや、拡張型ステントに必要により本発明のX線造影処理を行い、または行わずに、各種合成樹脂(使用できる合成樹脂は特公平6−38851号参照)を被覆し、その後本発明の抗血栓処理を行って本発明のステントとすることもできる。
また、ステントに限らず、本発明の抗血栓処理および/またはX線造影処理を血液と接触する金属製の医療材料や医療器具にも適用することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の抗血栓剤を表面に固定した抗血栓性ステントは、公知の技術であるヘパリン−ベンザルコニウムの塗布に比べてヘパリン分子をより強固に固定することが可能であり、血流にさらされるという厳しい条件下でもその活性を維持することができる。このことから、血栓付着によるステント閉塞の危険性の回避や抗血栓剤投与などの療法の軽減が可能である。
【0052】
また、抗血栓剤を表面に固定することで、血管平滑筋の遊走・増殖が原因となっている血管肥厚による再狭窄を低減できる。
また、ステントに抗血栓剤を固定する前にX線不透過性金属をメッキすることで、X線造影性のほとんどない金属基材のステントに簡易な工程で抗血栓性とX線造影性を同時に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)、(b)は本発明のステントの1例を示す展開図である。
【図2】 本発明のステントの1例を示す斜視図である。
【図3】 図2に示すステントの一部の断面図である。
【符号の説明】
1 ステント
2 抗血栓剤
3 X線不透過性の金属メッキ
Claims (6)
- 基材の表面が酸化剤により処理されており、
前記基材の外表面にX線不透過性の金属メッキが施されており、
前記基材の裏面および側面に2つ以上のアミノ基を有するカップリング剤ならびに2つ以上のアルデヒド基あるいはエポキシ基を有する架橋剤を介して抗血栓剤が共有結合されていることを特徴とするステント。 - 前記酸化剤がオゾンである請求項1に記載のステント。
- 前記抗血栓剤がアミノ化ヘパリンである請求項1または2に記載のステント。
- 前記基材がステンレススチール製である請求項1に記載のステント。
- 前記カップリング剤がポリエチレンイミン、ポリエチレングリコールジアミン、エチレンジアミンあるいはテトラメチレンジアミンの群の中から選択された少なくとも1種類である請求項1に記載のステント。
- 前記架橋剤がグルタルアルデヒドあるいはエチレングリコールジグリシジルエーテルである請求項1に記載のステント。
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