JP4330691B2 - 法面保護用植生シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、整地した河川堤、切土、盛土等の法面保護用植生シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
治山、治水、鉄道・道路建設等において、法面保護や緑化は必須の工事であり、これまで種々の材料や工法が提案され、施工されている。最近は単に法面をコンクリートブロックやコンクリート擁壁で固めるのではなく、自然を活かした、自然の景観を損なわないように配慮された緑化を伴う多自然型河川改修や、土砂災害復旧、災害防止の工事がなされるようになってきた。
【0003】
法面を緑化するには芝草の種を蒔いたり、張芝をしたりする旧来工法があるが、これらが活着するまでの間、土砂の流失を防止するために、各種の繊維からなるメッシュ織物やネット、合成樹脂ネットや多孔シートなどが目的に応じて併用されている。これらはジオテキスタイルと総称されているものである。
【0004】
一方において、公園やゴルフ場あるいはサッカー場、ラグビー場、野球場のような競技場の芝フィールドの早期完工を目的に生育芝のロール巻製品が各種提案され、本発明者も特許第2783756号で提案し、製品「プリードグラスE.M.R」として広く使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
法面等の土砂流失防止を目的とする各種ジオテキスタイル製品そのものには緑化機能はなく、芝草の種子からの植生を待つほかない。そのために緑化完成に年月を要するし、その間に豪雨に見舞われると、ジオテキスタイルが土砂流失を防止するとはいえ、はげしい風雨には耐えられない。また、芝フィールド植生用の芝ネットはたとえ活着後であっても根の浅く粗なうちは、法面、急斜面の土砂の流失防止には無力である。そこで、これら両者の特徴を生かし、法面保護用としての性能に優れた植生シートの開発を課題として検討を加えて、ここにその手段の完成をみたのである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の法面保護用植生シートの要旨は、法面浸食防止シート2と植生芝シート3との一体化複合シート4からなる法面保護用植生シートであって、法面浸食防止シート2は、芝根5又は芝芽6が生育貫通可能な天然素材又は人工素材からなる多孔性シートであり、植生芝シート3は、前記法面浸食防止シート2とは別個の法面浸食防止シートに芝根5の絡んだ芝シートであるか、あるいは別個のネットに芝根5の絡んだ芝シートであるかのいずれかであり、一体化複合シート4は、新規圃場又は芝根の残存する残芝圃場で法面浸食防止シート2と植生芝シート3を展開した状態で芝を育成し、植生芝シート3の生育した芝根5又は芝芽6の絡みによって一体化したものであることを特徴とする法面保護用植生シートである。
【0007】
法面浸食防止シート2と植生芝シート3との複合一体化は、成育した芝根又は芝芽の絡みにより一体化された一体化複合シート4とする。したがって、新規圃場又は芝根の残存する残芝圃場に法面浸食防止シート2と植生芝シート3を展開した状態で芝を生育し、芝根の絡みによって一体化複合シート4とする。新規圃場においても、比較的短期日、例えば1〜2ヶ月で達成できるので、植生芝シート3の植生圃場において両者を複合シートにして芝根の絡みによって一体の製品として出荷できる。具体的には、植生芝シート3を切り出した残芝圃場の上に法面浸食防止シート2を敷き、その上へ植生芝シート3を敷いて芝の成育により一体化した複合シートとするが、芝の生育とシートへの絡みを待つ方法でも6ヶ月以内に一体化できる。また、圃場の上に法面浸食防止シート2を敷き、その上へ植生芝シート3を敷き、更にその上へ法面浸食防止シート2を敷いて芝の成育により三重一体化する。このようにして得られた一体化複合シート4は、施工現場の法面に敷き詰めるだけでよい。この一体化複合シート4はそれ自身、法面浸食防止シート2の存在のため法面保護効果と植生効果を兼備している。複合シートの形態は、緑化景観を重視するか、流失防止を重視するか、目的や施工時期などに応じて複合する法面浸食防止シート2と植生芝シート3のシート材料や施工方法を決定する。
【0008】
本発明の複合シートを形成する法面への施工方法の形態は二つある。一つは、芝の植生圃場において既に芝根の絡みにより複合シート化した製品に仕上げ、これを法面へ敷設する方法である。他の一つは、芝根を絡ませる日数が待てない場合は、法面浸食防止シートと圃場で形成した植生芝シートを拈り紐又は縫合糸により一体化した複合シートを法面に敷設することで、現場でこれらを芝根の絡みにより強固に一体化させた法面保護用植生シートに仕上げる方法である。
【0009】
ここにいう法面浸食防止シートはそれ自身で法面浸食に有効な性能を有する天然又は人工の各種シートで、これまで法面浸食に利用されている各種のものが利用できるが、一般に可撓性があり、かつ芝根や芝芽が自由に生長通過しうるネット状又は多孔性を有する必要がある。天然素材からなるジオテキスタイルと総称されるものは好適に使用できる。例えば、ヤシ、ココナッツ、麦藁、シュロ、砂糖キビ、トウモロコシなどの各種繊維の単品又は複合品シート状織物、ラテックスで結合させたり、ネットで挟んで糸で絡み縫いしたブランケットなどである。もちろんこれらは人工のポリオレフィン系、ポリエステル系、ナイロン系等の合成繊維との混合系もあるし、人工の公知の方法によって生物分解性や光分解性を付与し、芝根の密生によって十分な法面保護が可能になる年月の後には分解消失する対策も講じることができる。
【0010】
植生芝シートもこれまで公知のほぐした芝根をネットに挟着してロール状に巻き取った製品(例えば特開平2-104216号、特開平3-164111号)や、圃場にネットを張ってから芝を生長させネットごと剥ぎ取ってシート状にしてロール巻製品としたもの(例えば特許第2783756号)が任意に利用できるが、後者の技術を利用して圃場において生育芝根を絡ませるに際し、ネット自体に法面浸食防止機能を有するシートを残芝圃場に敷き、施肥散水する肥培管理をして圃場に残った芝根を法面浸食防止シートに直接絡ませて、一体化複合シート製品に仕上げるのが好ましい。植生芝シートや法面浸食防止シートに対する芝の被覆面積は30〜100%の範囲で使用できるが、製品重量と生育期間を勘案すると50〜70%程度が好適である。本発明の法面保護用植生シートは、前述したように、施工現場において、整地した法面に複合シートを敷設するだけでよいが、更に複合シートの安定化により土砂の流失を防止する機能を高めるために、予め法面浸食防止シートの敷設してある法面上にこの複合シートを敷いたり、複合シートの上へ合成樹脂メッシュシートを敷いて各シート全体を固定することも任意に実施可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づいて本発明の法面保護用植生シート及びその施工方法を具体的に説明する。図1〜図5は圃場での製造による複合シートを示す断面図である。図1〜図4は芝根のない新規圃場からの製造による複合シートを示し、図5は芝根の残る残芝圃場からの製造による複合シートを示す。この新規圃場での複合シートの製造は、そのまま法面上でも適用できる。
【0012】
図1において、耕耘後平坦に整地した新規圃場1に対して幅2m、長さ25mのジオテキスタイルA(ココナッツ繊維のマットをポリプロピレン製ネットで上下から挟みポリエステル糸で縫い合わせたブランケット、製品名:浸食コントロールブランケットC125、日本道路株式会社製)からなる法面浸食防止シート2を10列敷き詰め、その上へ植生芝シート3(ポリプロピレンメッシュ織物に芝根を面積の50%絡ませたネット付ロール芝シート、商品名:プリードグラスE.M.R、プリード湯谷株式会社製)を重ねて敷き、散水して乾燥を防ぎながら春から夏にかけて約1ヶ月養生し、ジオテキスタイルAの下側まで芝根5が貫通し、かつ芝芽6も生長してジオテキスタイルAと植生芝シート3とが一体化した後、これらを圃場の表土から剥がし、ロール状に巻き取って複合シート4からなる法面保護用植生シート製品Aとした。
【0013】
図2において、耕耘後平坦に整地した新規圃場1に対して幅2m、長さ30mのジオテキスタイルB(ヤシ繊維不織布3mm厚)からなる法面浸食防止シート2を10列敷き詰め、その上へ引張強度の大なジオグリッドA(ジオネットMN、タキロン株式会社製)からなる法面浸食防止シート2を敷き、更にその上へ植生芝シート3(ポリプロピレンメッシュ織物に芝根を面積の70%絡ませたネット付ロール芝シート、商品名:プリードグラスE.M.R、プリード湯谷株式会社製)を重ねて敷き、散水して乾燥を防ぎながら春から夏にかけて約1ヶ月養生し、ジオテキスタイルBの下側まで芝根5が貫通し、ジオテキスタイルBとジオグリッドAからなる法面浸食防止シート2と植生芝シート3とが一体化した後、これらを圃場の表土から剥がし、ロール状に巻き取って複合シート4からなる法面保護用植生シート製品Bとした。芝根5の絡みが糸による絡みの作用をし、簡便であり、かつこのジオテキスタイルBが保水保肥作用をし、ジオグリッドAが高強度で施工時の取扱いが荒くても破損することがない。
【0014】
図3において、耕耘後平坦に整地した新規圃場に対して幅2m、長さ30mのジオテキスタイルBからなる法面浸食防止シート2を10列敷き詰め、その上へ植生芝シート3(ポリプロピレンメッシュ織物に芝根を面積の90%絡ませたネット付ロール芝シート、商品名:プリードグラスE.M.R、プリード湯谷株式会社製)を重ねて敷き、更にその上へジオグリッドAからなる法面浸食防止シート2を重ねて敷き、散水して乾燥を防ぎながら春から夏にかけて約1ヶ月養生し、ジオテキスタイルBの下側まで芝根5が貫通し、芝芽6が生長してジオテキスタイルBと植生芝シート3とジオグリッドAとが一体化した後、これらを新規圃場1の表土から剥がし、ロール状に巻き取って複合シート4からなる法面保護用植生シート製品Cとした。
製品Cは現場法面施工中もジオグリッドAで表面が覆われているので、植生芝シート3の剥離もなく、潅水してもジオテキスタイルBがあるため十分な保水性を維持し、かつ土砂や芝の流失もない。
【0015】
図4は、新規圃場1又は残芝圃場7で植生芝が20〜40%生えた段階で、ジオグリッドAからなる法面浸食防止シート2をその上に敷き、芝が50〜70%植生した段階でジオグリッドAと植生芝シート3を一体に切り出して複合シート4の製品Dとしたものである。
【0016】
図5は、芝の生長に期間がかかるが、残芝圃場での法面保護用植生シート製品Eの生育状況を示す断面図であり、左は複合前、右は複合後である。図5においては、予め本発明に使用する植生芝シート3を圃場で生育して、ネットに対して所定の芝根が50〜100%の範囲で絡んだ状態で、表土から剥がして取り除く。次にこの植生芝シート3を切り出して芝根5が残存する状態で施肥、潅水等を行って芝芽6の生育条件を整えた残芝圃場7を出発点とする。
この残芝圃場に対して、幅2m、長さ25mのジオテキスタイルC(70%麦藁と30%ココナッツ繊維からなる3〜5mm厚のマットを10mm目のポリプロピレンネットで挟み、ポリエステル糸で縫い合わせたブランケット、製品名:SC150、日本道路株式会社製)を2列敷き詰め、春から秋にかけて約6ヶ月生育させ、芝芽6や芝根5がこのブランケットを貫通、一体になった時期に幅1m、長さ25mとして切り出し、ロール状に巻き取って複合シート4からなる法面保護用植生シート製品Eとした。
【0017】
図示は省略するが、残芝圃場の上へジオテキスタイルDとしてトップネット+ミドルネット+ココナッツ繊維+ボトムネットの4層構造で、厚み約10mmの法面浸食防止シート(商品名:浸食コントロールブランケットC350、日本道路株式会社製)を幅2m、長さ25mにわたって敷き詰め、春から秋にかけて約6ヶ月生育させ、芝芽や芝根がこのブランケットを貫通、一体になった時期に幅1m、長さ25mとして切り出し、ロール状に巻き取って複合シートからなる法面保護用植生シート製品Fとした。
【0018】
他の例としては、高強度なジオグリッドCをまず残芝圃場に敷き、その上へ比較的粗なジオテキスタイルDを敷き、図5に示す同じ圃場で春から秋にかけて約6ヶ月生育させ、芝芽や芝根がこのブランケットを貫通、一体になった時期に幅1m、長さ25mとして切り出し、ロール状に巻き取って複合シートからなる法面保護用植生シート製品Gとした。
【0019】
【発明の効果】
本発明の法面保護用植生シートの製品A〜Gは、用いるジオテキスタイルやジオグリッドの材質、積層枚数及び植生芝シートとの組合せによって、広範囲な法面浸食防止機能を有する植生シートとなるから、そのまま河川堤防のように水流にさらされたり、切土のような急斜面に施工して早期に法面の浸食を防止すると共に緑化が達成され、景観保全にも役立つものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】新規圃場での法面保護用植生シート製品Aの生育状況を示す断面図であり、左は複合前、右は複合後である。
【図2】新規圃場での法面保護用植生シート製品Bの生育状況を示す断面図であり、左は複合前、右は複合後である。
【図3】新規圃場での法面保護用植生シート製品Cの生育状況を示す断面図であり、左は複合前、右は複合後である。
【図4】新規圃場での法面保護用植生シート製品Dの生育状況を示す断面図であり、左は複合前、右は複合後である。
【図5】残芝圃場での法面保護用植生シート製品Eの生育状況を示す断面図であり、左は複合前、右は複合後である。
【符号の説明】
1 新規圃場
2 法面浸食防止シート
3 植生芝シート
4 複合シート
5 芝根
6 芝芽
7 残芝圃場
Claims (3)
- 法面浸食防止シート(2)と植生芝シート(3)との一体化複合シート(4)からなる法面保護用植生シートであって、
法面浸食防止シート(2)は、芝根(5)又は芝芽(6)が生育貫通可能な天然素材又は人工素材からなる多孔性シートであり、
植生芝シート(3)は、前記法面浸食防止シート(2)とは別個の法面浸食防止シートに芝根(5)の絡んだ芝シートであるか、あるいは別個のネットに芝根(5)の絡んだ芝シートであるかのいずれかであり、
一体化複合シート(4)は、新規圃場又は芝根の残存する残芝圃場で法面浸食防止シート(2)と植生芝シート(3)を展開した状態で芝を育成し、植生芝シート(3)の生育した芝根(5)又は芝芽(6)の絡みによって一体化したものであることを特徴とする法面保護用植生シート。 - 一体化複合シート(4)は、圃場の上に法面浸食防止シート(2)を敷き、その上へ植生芝シート(3)を敷いて生育した芝根(5)又は芝芽(6)の絡みにより一体化した複合シート(4)である請求項1記載の法面保護用植生シート。
- 一体化複合シート(4)は、圃場の上に法面浸食防止シート(2)を敷き、その上へ植生芝シート(3)を敷き、更にその上へ法面浸食防止シート(2)を敷いて生育した芝根(5)又は芝芽(6)の絡みにより三重一体化した複合シート(4)である請求項1記載の法面保護用植生シート。
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