JP4330264B2 - タイル類の製造方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、釉薬を塗布してぼかし模様付きタイル類を製造する製造方法およびその装置に関する。なお、ここでタイル類とは、タイル、煉瓦、瓦、インターロッキング用ブロック、陶磁製の壁面パネルを総称するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、窯変調ぼかし模様に似せた「ぼかし模様」付きのタイルを製造する手段として、図6に示したように、ベルトコンベア100の上方に設置したスプレーノズル101に上下方向の首振り運動と往復昇降運動を行わせ、タイルTをベルトコンベア100に載せて定速走行させながらスプレーノズル101の吹付け高さに高低差を設け、もって釉薬の塗布密度を増減させるようにしたものがある(特開平7−277859号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の製造方法及びその装置は、一列に並べたタイルTに一つのスプレーノズル101が対応するため生産効率が悪く、また、釉薬の濃淡が一定の間隔で繰り返されるのみであるから模様が単調になる問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記タイル類を搬送する搬送手段と、その搬送手段の上方に配設した釉薬吹き付け用の吹付け手段と、を使用し、前記搬送手段の上に載せたタイル類の上方で前記吹付け手段の吹出口をタイル類の搬送方向に対して横向きに水平移動させて施釉するようにしたタイル類の製造方法において、
前記吹付け手段の吹出口を、タイル類の搬送方向に対して横向きに水平移動させながらほぼ水平円運動をも行わせ且つこのときの横向きの移動を先の円運動による軌跡と次の円運動による軌跡が互いに交差する速度となし、さらに吹付け手段による釉薬の吹付け時に搬送手段によってタイル類も移動させるようにしたタイル類の製造方法を提供する。
【0005】
また、請求項2に記載したように、前記タイル類を搬送する搬送手段と、その搬送手段の上方に配設した釉薬吹き付け用の吹付け手段と、を有し、前記搬送手段の上に載せたタイル類の上方で前記吹付け手段の吹出口をタイル類の搬送方向に対して横向きに水平移動させて施釉するようにしたタイル類の製造装置において、
前記吹付け手段の吹出口を、タイル類の搬送方向に対する横向きの水平移動とほぼ水平円運動とが同時に行われるように形成し、さらに前記水平移動とほぼ水平円運動を同時に行った場合に先の円運動による軌跡と次の円運動による軌跡が互いに交差するように水平移動の速度を設定し、なおかつ、吹付け手段による釉薬の吹付け時に搬送手段を駆動させてタイル類も移動させるようにしたタイル類の製造装置を提供する。
【0006】
上記タイル類の製造方法及びその装置は、先の円運動による軌跡と次の円運動による軌跡が互いに交差した部分では釉薬が塗り重ねられるため濃部になる。しかも吹出口から吹き出される釉薬は拡散してぼかし状態になるため、濃部と淡部の境界線もぼやけて自然な状態に融合する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態をタイルを例示して図面に基づき説明する。なお、図1は要部を示す斜視図、図2は要部を示す断面側面図、図3は要部を示す平面図、図4は図2のX−X線拡大断面図、図5は施釉直後のタイルを示す斜視図である。
【0008】
製造装置1は、液状の釉薬2を吹き出す吹出口(ノズル)3を設けた吹付け手段4と、タイルTを搬送させる搬送手段5とからなる。搬送手段5は簀の子状のベルトをエンドレスにしたコンベアであり、複数枚のタイルT,T…(例えば227mm×60mmの二丁掛けタイル12枚)を横一列に並べる幅を有し、タイルTを定速で図2矢示Y方向に搬送する。
【0009】
吹付け手段4は、前記搬送手段5を跨ぐ鳥居形の装置フレーム6に水平往復直線運動と水平円運動可能なように取り付けられている。すなわち吹付け手段4は、図1において移動台7上に設置した円運動用モータ8のクランク回転アーム9の下端に連結されており、円運動用モータ8の回転によりクランク回転アーム9と一緒に水平円運動を行う(吹付け手段4の水平円運動関連の機構の詳細については後述する。)。一方、前記移動台7は、装置フレーム6の上端に敷設したレール部材10に摺動可能な状態に設置されており、装置フレーム6の上部に掛け渡したタイミング歯付きベルト11を介して横移動モータ12の駆動で水平往復直線運動を行う。
【0010】
吹付け手段4は、水平軸部13aと縦軸部13bで鍵型にしたスライダー13と、そのスライダー13の縦軸部13bに固着した吹付け主部14と、吹付け主部14の正面に接続したエアホース15と、吹付け主部14の下面に突設した吹出口3で構成され、スライダー13の縦軸部13bが前記クランク回転アーム9の軸下端の軸受片9aに回動自在に連結されている。一方、スライダー13の水平軸部13aは、前記移動台7から垂設した補助板16に対して水平揺動及びスライド自在に支持されている。すなわち、補助板16には固定的な軸受板17,17の間に首振り自在なようにスライド軸受18が取り付けられており、そのスライド軸受18にスライダー13の水平軸部13aが摺動自在に通されている。
【0011】
なお、吹付け手段4のスライダー13は全体がパイプ状になっていて、その中を通って吹付け主部14に液状の釉薬2が供給される。また、吹付け主部14の正面に接続したエアホース15からエアが供給されており、そのエアと一緒に釉薬2が霧状になって吹出口3から吹き出す。もちろん吹付け主部14のスライダー13を中実丸棒で形成し、吹付け主部14の正面に釉薬供給用のホースを別途接続するようにしてもよい。
【0012】
吹付け手段4を斯かる構成にしたことの契機は、円運動を行う吹出口3にエア(気体)や釉薬(液体)を漏れることなく長期間供給することの困難性に行き着いたことにある。すなわち、最も簡単な構成で吹出口3を円運動させるには前記クランク回転アーム9をパイプ状にしてその中にエアと釉薬2を通すようにすればよい。しかしその場合には回転するクランク回転アーム9に対してホース類のジョイントが難しくなる問題点がある。
【0013】
そこで上記のように、回転体(クランク回転アーム9)にリンク(スライダー13)の先端(縦軸部13b)を回り対偶(縦軸部13bと軸受片9a)をもって接合させ、一方、リンク(スライダー13)の後端を円、摺動、揺動運動等に規制する別の要素(スライド軸受18)に連結して全体で連鎖を構成し、リンク(スライダー13)の先端(縦軸部13b)に吹付け主部14を設置する手段を講じた。そうすることにより回転体(クランク回転アーム9)の円運動でリンク(スライダー13)の先端(縦軸部13b)と一緒に吹出口3が円運動を行い、一方、吹付け主部14の向きは常にリンク(スライダー13)後端の別の要素(スライド軸受18)との連結部に向かっているため、吹付け主部14の正面にエアホース15を接続することができる。
【0014】
次に上記製造装置1によるぼかし模様付きタイルの製造方法について説明する。先ず、図3に示したように、搬送手段5の上に12枚のタイルTを横一列に並べ、その列の後ろに同様の列を次々に並べながら定速でタイルTを走行させる。なお、図示しないが吹付け手段4の手前(上流)又は後ろ(下流)にタイルTの全面に釉薬を塗布する施釉装置が別途設けられており、そこで地色となる釉薬がタイルTに満遍なく吹き付けられる。
【0015】
次に吹付け手段4の吹出口3からエアと一緒に前記地色と同色又は異色の釉薬2を吹き出させながらクランク回転アーム9を回転させ、同時に移動台7を横向きに動かす。図4に示したようにクランク回転アーム9が円軌道Cを描いて回転すると、軸受片9aと一緒にスライダー13の縦軸部13bがほぼ円軌道Cに沿って近似的な水平円運動をし、スライダー13の水平軸部13aがスライド軸受18を中心に揺動しながら摺動する。なお、図4二点鎖線に示したようにクランク回転アーム9の軸受片9aは一定の方向を向いたまま回転するようになっているが、これはクランク回転アーム9の水平なアーム部分9bにタイミング歯付きベルト9cを使った公知の遊星歯車装置(図示せず)が組み込まれているためである。
【0016】
スライダー13の縦軸部13bには吹付け主部14が固着されているから吹出口3も前記円軌道Cに沿ってほぼ水平円運動をする。この吹出口3の円運動と同時に移動台7が横向きに移動するから、吹出口3のタイルTに対する相対的な動線Aが図3一点鎖線で示したように螺旋状になる。しかも実施形態では搬送手段5の駆動でタイルTも移動するから螺旋が後ろに流れて後続のタイルTにも掛かる。
【0017】
螺旋の態様は、吹付け手段4の回転数と移動台7の移動速度とタイルTの搬送速度を適宜調整したり吹付け手段4の回転半径を変えることにより変更可能である。
【0018】
これらの一連の動きにより搬送手段5のタイルTに図5に示したように釉薬2による螺旋状の模様ができる。なお、図5の図面は遠近感を持って表現されているのであって、手前側の螺旋と向こう側の螺旋の大きさは当然同じである。また、図5では理解を容易にするため釉薬2の線を細幅で明瞭に描いたが、実際には釉薬2の線は太く且つ境界がぼやけている。
【0019】
しかして、図5から明らかなように横一列の多くのタイルTには位置を違えて複数回釉薬2が吹き付けられ、また、それらの釉薬2同士が交差して部分的に重複している。釉薬2が重複した部分は塗り重ねられて釉薬量が倍になるため濃部となり、なおかつ境界線がぼやけた調子になるため濃部と淡部が自然に融合する。しかも隣り合う各タイルTの模様は全部異なる。もちろん施釉時の配列を保ったまま施工すれば螺旋模様がうっすらと浮かび上がることになるが、一旦施釉時の配列を崩して再配列させれば螺旋の印象は全く残らず、自然なぼかし模様のタイルTにしか見えなくなる。
【0020】
以上本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば実施形態では吹付け手段4を一つにしたが、二つ以上設置するようにしてもよい。そうすることにより各吹付け手段4で異色の釉薬を吹き付けてぼかし模様にさらなる変化を持たせるようにすることができる。また、実施形態では液状の釉薬2を吹き付けるようにしたが、粉状の乾燥釉薬を吹き付けるようにしてもよい。この場合の吹き付けには、エアと一緒に噴出させる場合の他、乾燥釉薬を自然落下させて振り掛けるような場合も含む。
【0021】
また、吹付け手段4の駆動手段として数値制御方式のロボットアームを使用することも可能である。
【0022】
また、実施形態ではタイルTを例示して説明したが、煉瓦、瓦、インターロッキング用ブロック、陶磁製の壁面パネルなどの加工品も同様にして製造することができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、先の円運動による軌跡と次の円運動による軌跡が互いに交差した部分では釉薬が塗り重ねられるため濃部になり、しかも吹出口から吹き出される釉薬は拡散してぼかし状態になるため、濃部と淡部が融合したぼかし模様付きのタイル類が簡単に量産できる。しかも濃部と淡部の出現パターンは複雑で変化に富んでいるため、窯変調ぼかし模様に極めて近いぼかし模様となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 要部を示す斜視図である。
【図2】 要部を示す断面側面図である。
【図3】 要部を示す平面図である。
【図4】 図2のX−X線拡大断面図である。
【図5】 施釉直後のタイルを示す斜視図である。
【図6】 従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 …製造装置
2 …釉薬
3 …吹出口
4 …吹付け手段
5 …搬送手段
T …タイル
Claims (2)
- タイル又は煉瓦又は瓦又はインターロッキング用ブロック又は陶磁製の壁面パネル(本請求項において、これらを総称して「タイル類」という。)を搬送する搬送手段と、その搬送手段の上方に配設した釉薬吹き付け用の吹付け手段と、を使用し、前記搬送手段の上に載せたタイル類の上方で前記吹付け手段の吹出口をタイル類の搬送方向に対して横向きに水平移動させて施釉するようにしたタイル類の製造方法において、
前記吹付け手段の吹出口を、タイル類の搬送方向に対して横向きに水平移動させながらほぼ水平円運動をも行わせ且つこのときの横向きの移動を先の円運動による軌跡と次の円運動による軌跡が互いに交差する速度となし、さらに吹付け手段による釉薬の吹付け時に搬送手段によってタイル類も移動させるようにしたことを特徴とするタイル類の製造方法。 - タイル又は煉瓦又は瓦又はインターロッキング用ブロック又は陶磁製の壁面パネル(本請求項において、これらを総称して「タイル類」という。)を搬送する搬送手段と、その搬送手段の上方に配設した釉薬吹き付け用の吹付け手段と、を有し、前記搬送手段の上に載せたタイル類の上方で前記吹付け手段の吹出口をタイル類の搬送方向に対して横向きに水平移動させて施釉するようにしたタイル類の製造装置において、
前記吹付け手段の吹出口を、タイル類の搬送方向に対する横向きの水平移動とほぼ水平円運動とが同時に行われるように形成し、さらに前記水平移動とほぼ水平円運動を同時に行った場合に先の円運動による軌跡と次の円運動による軌跡が互いに交差するように水平移動の速度を設定し、なおかつ、吹付け手段による釉薬の吹付け時に搬送手段を駆動させてタイル類も移動させるようにしたことを特徴とするタイル類の製造装置。
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