以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
まず、本発明の基本構成につき説明すると、水洗便器は、ボウル部1と、ボウル部1を覆うスカート部2と、ボウル部1の上端部に配されるリム部3を備え、リム部3でボウル部1の上端開口縁部1aの内側に洗浄水流路16を形成し、該洗浄水流路16の下部に洗浄水流路16とボウル部1内を連通する洗浄水流出口23を形成したもので、図1や図2に示すように上記ボウル部1及びスカート部2及びリム部3の夫々を独立した合成樹脂製の分割体1〜3とし、これら3つの合成樹脂製の分割体1〜3を溶着により接着一体化して成る。
各分割体1〜3は射出成形や圧縮成形等により成形した肉厚3〜7mmの樹脂成形品からなり、成形材料としては比較的強度のあるアクリルや、補強材入りABS、PBT等が用いられる。なお各分割体は比較的大型であるため、アニール処理を施すことが好ましい。また表面品質を向上させるためにハードコート材をコーティングしても良い。
ボウル部1は型抜き方向を上下方向とする椀状部4の下部に後方に向けて排水筒部5を一体に突出して形成している。図3に示すように椀状部4の周壁の上端よりもやや下側に位置する箇所には下側よりも上側の径を段階的に大きくした段差部6を周方向に亘って形成している。
スカート部2は型抜き方向を上下方向とするもので、図1や図2に示すように上側程徐々に開口径が大きくなる抜き勾配をつけている。スカート部2のボウル部1外側を囲む前半部2aの上端部はこれよりも後方に位置する後半部2bよりも上方に突出している。スカート部2の前半部2aの上端面は前側程下方に位置するように徐々に傾斜した傾斜面としてあり、また後半部2bの上端面は水平面としている。
図4〜6に示すようにスカート部2にはボウル部1を下方から支持する支持部として複数の補強リブ9と保持片10を設けている。補強リブ9はスカート部2の前半部2aの周壁の内面に周方向に適宜間隔を介して複数設けている。この補強リブ9はスカート部2の外面にヒケが出ることを防止するために、角300〜400mm程度の投影面積に収まる便器において肉厚2mm以下で且つスカート部2の周方向に6〜10設けることが好ましい。なお補強リブ9は図2に示すようにスカート部2の下端から上端部にまで至るように設けても良いし、図7に示すようにスカート部2の上部にのみ部分的に設けても良い。
また保持片10は図5や図6のようにスカート部2の前半部2aの周壁の下端から内方に向けて突出した底面部12上に立設している。保持片10の上面には排水筒部5を受ける湾曲受面10aを形成している。なおスカート部2の周壁によって覆われ且つボウル部1の下方に位置して外部に露出しないようになっている底面部12にはヒケが発生しても構わないので、保持片10は補強リブ9のように肉厚を制限する必要がなく、このため上記と同条件下で幅2mm以上としても良い。
リム部3は型抜き方向を上下方向とするもので、図1や図2に示すように後半部3bの前端に形成した立上壁部13の上部に前半部3aの後端を一体に接続して形成されている。
リム部3の前半部3aには平面視円環状で断面で外側方に向けて開口する略コ字状のコ字状部15を形成してあり、この環状のコ字状部15をボウル部1の上端開口縁部1a内に嵌め込むことで、コ字状部15とボウル部1の上端開口縁部1aで囲まれた断面ロ字状の洗浄水流路16をボウル部1の上端開口縁部1aの内側に全周に亘って形成できるようになっている。なおコ字状部15内の空所の成形は例えば図8に示すように矢印方向(左右方向)にスライドする2つのサイドコア7でリム部3を左右両側から挟むことで形成されるものである。
上記洗浄水流路16は図9に示す接続管19を介して水源(図示せず)に連通するもので、接続管19は図10に示す立上壁部13に形成した管挿通孔17及びボウル部1の椀状部4の後側壁部の上部(詳しくは段差部6よりも上位に位置する部分)に形成した管通し孔18に通して設けられる。また図3等に示すようにコ字状部15の縦片部20の下端から水平に突出した下横片部22の内側端部(即ち洗浄水流路16の下部)には下横片部22に形成した孔からなる洗浄水流出口23を周方向に複数並設しており、これら洗浄水流出口23を介して洗浄水流路16はボウル部1内に連通している。これにより水源から接続管19、洗浄水流路16、洗浄水流出口23を順に介してボウル部1内に水を供給してボウル部1内面を洗浄できるようになっている。
また縦片部20は抜き勾配をつけるために上方程外側に位置するように傾斜している。また縦片部20の上端から水平に突出した上横片部24の外側端部は下横片部22よりも更に外側に突出して下側被突き合わせ部25となっている。
また平面視環状のコ字状部15の前側縁部よりも後方部分の両側部においては、図3(b)に示すように縦片部20を上横片部24よりも更に上方に延出して延出部27を形成し、該延出部27の上端から外側方に向けて上面構成横片部28を突出している。図10や図17に示すように上面構成横片部28は上横片部24と略同じ厚みを有するもので、前述のスカート部2の前半部2aの上端面に対応するよう後方程徐々に上方に位置するように傾斜し、その前端がコ字状部15の前側縁部に設けた上横片部24aの後端に連続している。即ち上横片部24aは後端でこれよりも後方に位置する水平な上横片部24bと、傾斜した上面構成横片部28とに二股に分岐した形状となっていて、この上横片部24aと上面構成横片部28とでリム部3の前半部3aの上面を形成している。また図3(b)に示すように上面構成横片部28の外側端部は上横片部24よりも更に外側に突出して上側被突き合わせ部29となっている。なお上面構成横片部28の後端及びコ字状部15の後側縁部の中央部に設けた上横片部24の後端は立上壁部13に接続してあり、またコ字状部15の後側縁部の左右両側に設けた上横片部24の後端は上面構成横片部28の後端部に接続してある。
上記3つの分割体1〜3を接着一体化するには、図2や図3に示す溶着箇所A1、A2、B1〜B3、を溶着して行う。
即ちボウル部1とリム部3にあっては、ボウル部1の上端開口縁部1aの上面とリム部3の上横片部24の下側被突き合わせ部25の下面(溶着箇所A1)、ボウル部1の段差部6の上面とリム部3の下横片部22の外側端部の下面(溶着箇所A2)、の夫々を溶着する。ここで溶着箇所A1、A2は、環状のコ字状部15の全周に亘って溶着するもので、これにより環状の洗浄水流路16は溶着箇所A1、A2において全周に亘って水密される。
またスカート部2とリム部3にあっては、スカート部2の後半部2bの上端面とリム部3の後半部3bの下端面(溶着箇所B1、図2参照)、スカート部2の前側壁部の上端面とリム部3の上横片部24a(コ字状部の前側縁部に設けた上横片部24)の下側被突き合わせ部25の下面(溶着箇所B2、図3(c)参照)、スカート部2の前半部2aの周壁の上端面(前記前側壁部は除く)とリム部3の上面構成横片部28の上側被突き合わせ部29の下面(溶着箇所B3、図3(b)参照)、の夫々を溶着する。
このように従来の陶器製の分割体を含む便器と比較して、寸法精度の優れた合成樹脂製の分割体1〜3を接着一体化して合成樹脂製1〜3の分割体のみからなる水洗便器を形成しているので、分割体1〜3同士をぴったりと強固に接着することができ、またこの場合、特に洗浄水流路16を形成するリム部3とボウル部1の溶着箇所A1、A2、洗浄水流路16近傍のスカート部2とリム部3の溶着箇所B2、B3をぴったりと溶着できるので便器からの水漏れを防止できる。更には便器を複数の分割体1〜3を接着一体化して形成することで、アンダーカット部を少なくでき、これにより従来の簡易便器のような合成樹脂製で一体物の便器にあっては形成することができなかった平面視環状又はU字状の洗浄水流路16(本実施形態では環状)を形成することを可能としている。
ここで上記溶着箇所A1(即ちボウル部1の上端開口縁部1aの上面とリム部3の上横片部24の下側被突き合わせ部25の下面)は例えば図11や図12に示すように溶着される。
図11(a)ではボウル部1の上端開口縁部1aの上面中央から上方に向けて凸状の溶着代31を一体に突出し、リム部3の下側被突き合わせ部25の下面から下方に向けて凸状の溶着代32を一体に突出している。またボウル部1の上端開口縁部1aの内面及び上面でなす角部及び外面及び上面でなす角部を共に面取りして逃がし傾斜面33を形成している。そして溶着代31、32を加熱溶解し、この後、図11(b)に示すように溶着代31、32を溶解した溶解樹脂35(接着材料14)を介して上端開口縁部1aの上面を下側被突き合わせ部25の下面に突き合わせ、矢印の方向に圧縮することでこの部分が溶着される。なお図11(a)のd1〜d3の寸法及び角度θ1は夫々、d1=1〜2mm、d2=0.5mm、θ1=5〜45°、d3=1〜2mmである。
図12(a)ではボウル部1の上端開口縁部1aの上面中央から上方に向けて凸状の溶着代31を一体に突出し、上端開口縁部1aの内面及び上面でなす角部を面取りして逃がし傾斜面33を形成している。またリム部3の下側被突き合わせ部25の最も外側に位置する部分の下面をこれよりも内側の部分の下面よりも一段上方に位置させて段部39を形成すると共に、段部39の側面を上方に行く程外側に位置するように傾斜した逃がし傾斜面33としている。そして溶着代31を加熱溶解し、この後、図12(b)に示すように溶着代31を溶解した溶解樹脂35(接着材料14)を介して上端開口縁部1aの上面を下側被突き合わせ部25の下面に突き合わせ、矢印の方向に圧縮することで溶着される。なお図12(a)のd4の寸法、角度θ2は夫々、d4=1〜2mm、θ2=5〜45°である。
上記図11及び図12のいずれの例にあっても、溶着した際には、下側被突き合わせ部25と上端開口縁部1aの上面における下側被突き合わせ部25に突き合わされる部分との間に溶解樹脂35が充填される。またこの場合、各逃がし傾斜面33と上横片部24の下面との間に形成された空所42にも溶解樹脂35がはみ出して充填される。従って溶解樹脂35が硬化した後は、上横片部24の下面と上端開口縁部1aの上面との間には、下側被突き合わせ部25の下面と同面に近接対向する上端開口縁部1aの上面との間に介在する薄肉部分43と、薄肉部分43に連続すると共に薄肉部分43よりも厚みのある両側の厚肉部分44とで構成された溶解樹脂35が介在することとなり、しかして上端開口縁部1aの上面と下側突き合わせ部25の下面が確実に水密された状態で溶着されることとなる。また溶解樹脂35の薄肉部分43及び厚肉部分44の外側方には覆い部としてスカート部2の周壁の上端部(図3(b)、(c)参照)や立上壁部13(図3(a)参照)が位置し、これら覆い部で溶解樹脂35の薄肉部分43及び厚肉部分44が外側から覆われている。従って溶解樹脂35の薄肉部分43及び厚肉部分44が外部に露出することがなくて溶解樹脂35により便器の外観が損なわれることがない。また特に図12に示すコ字状部15の上横片部24の下面にはアンダーカット部となる図11の凸状の溶着代32を設けていないため、リム部3の成形が容易になる。
また溶着箇所A2(即ちボウル部1の段差部6の上面とリム部3の下横片部22の外側端部の下面)は図13に示すように溶着される。
図13(a)ではリム部3の下横片部22の外側端部からなる載置部48の下面から下方に向けて凸状の溶着代49を一体に突出し、段差部6の上面の前記溶着代49よりもやや内側に控えた箇所に凹状の逃がし凹所50を形成している。また段差部6の内縁角部を面取りして逃がし傾斜面51を形成している。そして溶着代49を加熱溶解し、この後、図13(b)に示すように溶着代49を溶解してなる接着材料14としての溶解樹脂52を介して段差部6上に載置部48を載置し、矢印方向に圧縮することで、段差部6の上面と下横片部22の下面が溶着される。このように溶着した際には、載置部48と段差部6の載置部48が載置される部分との間に溶解した溶解樹脂52が充填される。またこの場合、逃がし凹所50内と、逃がし傾斜面51及び下横片部22の下面との間に形成された空所53に、溶解樹脂52がはみ出して充填される。従って溶解樹脂52が硬化した後は、段差部6の上面と載置部48の下面との間にある溶解樹脂52は、載置部48の下面と同面に近接対向するボウル部1の段差部6の上面との間に介在する薄肉部分54と、逃がし凹所50内や空所53に充填されて前記薄肉部分54に連続すると共に薄肉部分54よりも厚みのある厚肉部分55とで構成されることとなり、しかして段差部6の上面と載置部48の下面が確実に水密された状態で溶着されることとなる。なお図13(a)のd5〜8の寸法は、夫々、d5=1〜2mm、d6=0.5mm〜2mm、d7=1〜2mm、d8=0〜2mmである。
また上記スカート部2とリム部3の溶着箇所B1〜3では、例えば図14〜16のように接着一体化されるスカート部2とリム部3の内、一方の分割体に突出部56を形成すると共に、他方の分割体に凹没部57を形成し、突出部56を凹没部57に嵌合すると共に突出部56と凹没部57の対向面を溶着している。
図14(a)では、一方の分割体であるスカート部2の溶着部分59(後半部2bの上端面、又は前側壁部の上端面、又は前半部2aの周壁の上端面)に上方に向けて凸状の突出部56を突出すると共に、該突出部56の上面の中央に凸状の溶着代60を形成し、また他方の分割体であるリム部3の溶着部分61(後半部3bの下端面、上横片部24aの下側被突き合わせ部25の下面、上面構成横片部28の上側被突き合わせ部29の下面)に凹状の凹没部57を形成している。そして溶着代60を加熱溶解し、この後、図14(b)に示すように溶着代60を溶解してなる接着材料14としての溶解樹脂62を介して突出部56を凹没部57に凹凸嵌合することで、突出部56と凹没部57がこの間に溶解樹脂62を介在させた状態で溶着される。なお図14(a)のd9〜12の寸法は、夫々、d9=d10=1.5〜3mm、d11=0.5〜1mm、d12=2〜3mmである。
また図15(a)では、一方の分割体であるスカート部2の溶着部分59に上方に向けて凸状の突出部56を複数形成すると共に、他方の分割体であるリム部3の溶着部分61にV溝状の凹没部57を形成してあり、この例では突出部56の表面部が溶着代となる。そして本例では突出部56の表面部を加熱溶解し、この後、図15(b)に示すように突出部56の表面部を溶解してなる接着材料14としての溶解樹脂64を介して突出部56を凹没部57に嵌合することで、突出部56の表面部を除いた部分と凹没部57がこの間に溶解樹脂64を介在させた状態で溶着される。なお図15(a)のd13〜17の寸法は、d13=1mm、d14=1mm、d15=0〜0.3mm、d16=d17=0.5〜2mmである。
上記図14や図15に示す溶着例にあっては突出部56を凹没部57に嵌合すると共に突出部56と凹没部57の対向面を溶着して2つの分割体2、3を接着一体化しているので、便器に力が加わった際に分割体2、3間に位置ずれが生じることを防止できる。
また上記図14や図15に示すように溶着部分59を部分的に突出させて突出部56を形成した場合には、例えば溶着箇所B2(即ちスカート部2の前側壁部の上端面とリム部3の上横片部24aの下側被突き合わせ部25の下面)、溶着箇所B3(スカート部2の前半部2aの周壁の上端面とリム部3の上面構成横片部28の上側被突き合わせ部29の下面)では凹没部57がアンダーカット部となってしまうという問題がある。そこで例えば上記溶着箇所B2、B3にあっては、図16に示すように溶着することが好ましい。
図16(a)では一方の分割体であるスカート部2の溶着部分59の最外側に位置する部分の上面をこれよりも内側の下面よりも一段上方に位置させて段状の突出部56を形成し、該突出部56の上面に上方に向けて突出する凸状の溶着代67を形成している。また他方の分割体であるリム部3の溶着部分61の最も外側に位置する部分をこれよりも内側の部分の下面よりも一段上方に位置させて段状の凹没部57を形成し、また凹没部57の外側角部を面取りして逃がし傾斜面68を形成している。そして本例では溶着代67を加熱溶解し、この後、図16(b)に示すように溶着代67を溶解してなる接着材料14としての溶解樹脂69を介して段状の突出部56を段状の凹没部57に嵌合することで、段状の突出部56と段状の凹没部57がこの間に溶解樹脂69を介在させた状態で溶着される。また逃がし傾斜面68とリム部3の溶着部分61の間に形成される空所66には溶解樹脂69がはみ出して充填される。即ちこの場合、スカート部2の溶着部分59とリム部3の溶着部分61の間には、スカート部2の溶着部分59と同部に近接対向するリム部3の溶着部分61との間に介在する薄肉部分63と、薄肉部分63に連続すると共に薄肉部分63よりも厚みのある外側の厚肉部分65とで構成された溶解樹脂69が介在することとなる。なお図16(a)のd18〜d23の寸法及び角度θ3は夫々、d18=d23=1.5〜3mm、d19=0.5〜2mm、d20=1〜3mm、d21>d20、d22=0.5〜1mm、θ3=10〜45°である。また本溶着例を前述の図12の溶着例と併用しても良い。また上記図14〜図16に示す溶着例は溶着箇所A1、A2に適用しても良いものとする。
次に上記ボウル部1、スカート部2、リム部3からなる3つの分割体を溶着するにあたっては例えば図18に示す溶着装置70が用いられる。
溶着装置70は、上下方向に相対的に移動自在となった上下の圧縮プレート71a、71bと、各溶着箇所A1、A2、B1〜3を加熱する加熱板73とを備えている。上側圧縮プレート71aの下面にはリム支持部76を設けている。また下側圧縮プレート71bには上下方向に移動自在となったシャフト74を設けてあり、下側圧縮プレート71bよりも上方に突出したシャフト74の上端にはボウル支持部75を設けている。
上記溶着装置70を用いて、3つの分割体1〜3を溶着して一体化するには、図18(a)に示すように下側圧縮プレート71b上にスカート部2を載置すると共に、シャフト74のボウル支持部75でボウル部1の排水筒部5を下方から支持し、同時に上側圧縮プレート71aのリム支持部76でリム部3を支持し、加熱板73によって非接触で溶着箇所A1、A2、B1〜B3を加熱する(例えば加熱温度300〜700℃、加熱時間5〜10秒)。この後、図18(b)に示すように上下の圧縮プレート71a、71bを近づけると共に、下側圧縮プレート71bに対してシャフト74を上方に移動し、これによりスカート部2の前半部2aに上方からボウル部1を収納すると共に、リム部3のコ字状部15を上方からボウル部1の上端開口縁部1a内に嵌め込んで、分割体1〜3を上下方向に圧縮し、この後30秒以上冷却する。
ここでスカート部2には図4〜6等に示すようにボウル部1を下方から支持する補強リブ9及び保持片10を設けているので、リム部3とボウル部1の溶着時(即ちリム部3とボウル部1を上下方向に圧縮した時)には、スカート部2の複数の補強リブ9の上面にボウル部1の椀状部4を載置すると共に、保持片10の湾曲受面10aにボウル部1の排水筒部5を載置して、スカート部2でボウル部1を安定して支持でき、これによりボウル部1とリム部3を確実に溶着できる。また上記複数の補強リブ9及び保持片10は、溶着後の便器使用時における着座荷重も安定して支持できるようになっており、着座時の便器の変形を抑制できる。なお補強リブ9及び保持片10は前記溶着時や便器使用時においてボウル部1に下向きの荷重がかかった際にこの荷重を支持できる位置に配されていれば足り、図3等に示す補強リブ9のように上面をボウル部1の下面に当接しても良いし、図13に示す補強リブ9のように上面とボウル部1の下面との間にわずかな隙間を形成し、前記溶着時や便器使用時においてボウル部1に下向きの荷重がかかった際にのみ上面がボウル部1の下面に当接するようにしても良い。
また本例にあっては図10や図17のようにコ字状部15の前側縁部に設けた上横片部24aをこれよりも後方に位置する水平な上横片部24bと傾斜した上面構成横片部28とに分岐しているので、上記のように分割体1〜3を上下方向に圧縮して溶着するものにおいて上横片部24を確実に溶着できる水平とすることができ、尚且つ上横片部24b及び上面構成横片部28をヒケの生じない略均一な厚肉としたまま、リム部3の前半部2aの上面を上記傾斜面のような水平面以外のデザイン性に優れた面とすることができる。
ところで上記図18に示す溶着装置70にあっては、溶着前の分割体1〜3を溶着後と同じ傾斜姿勢である水平に保持して、ボウル部1の上端開口縁部1aの上面及びリム部3のコ字状部15の下横片部22の下面を水平とし、この溶着後と同じように水平にした分割体1〜3の溶着箇所A1、A2、B1〜3を加熱板73で加熱し、この後、分割体1〜3を上下の圧縮プレート71a、71b及びシャフト74で上下方向に圧縮して溶着を行っている。これはボウル部1及びリム部3を溶着後と同じように水平姿勢にして溶着することで、溶着面が水平となっている溶着箇所A1、A2、B1、B2を確実に溶着するためである。しかし上記溶着装置70は、図18(a)に示すように加熱板73による加熱時におけるボウル部1の上端開口縁部1aの水平な上面とスカート部2の前半部2aの傾斜した上端面とが面一となるようにボウル部1及びスカート部2を保持しておらず、このためボウル部1の上端開口縁部1aの上面とスカート部2の前半部2aの上端面を加熱板73で加熱するには、図18に示すように加熱板73の形状を複雑な形状にする必要がある。
そこで図19に示すように溶着装置70にシャフト74に対してボウル支持部75を左右軸回りに回動自在に設け、加熱板73による加熱時においては、ボウル部1を前側を下げた姿勢として、ボウル部1の上端開口縁部1aの上面とスカート部2の前半部2aの上端面を同一面上に位置させ、またこの後、分割体1〜3を上下に圧縮して溶着する時においては、図18のようにボウル部1をリム部3と同じく水平姿勢となるように回動して保持することが好ましく、この場合、図19のように加熱板73の形状を単純化できる。
ここで、図2等に示すように洗浄水流路16の下面部を構成するコ字状部15の下横片部22を水平とすると、洗浄水流路16内に水垢等がたまるといった問題が生じる。そこで、本発明においては、図20や図21に示すようにコ字状部15の下横片部22を傾斜させて洗浄水流路16の下面部に水勾配をつけ、この洗浄水流路16の下端部にボウル部1内に連通する水抜き用開口77を形成している。これによりボウル部1を水で洗浄した後に洗浄水流路16内の水を水抜き用開口77から図20や図21の矢印に示すようにスムーズに水抜きできる。ここで図20ではコ字状部15の下横片部22を前側程下方に位置するように水平面に対して角度θ4傾斜させて、洗浄水流路16の下面部に水勾配をつけると共に、コ字状部15の前側縁部に設けた下横片部22の前端部に水抜き用開口77を形成してあり、また図21ではコ字状部15の下横片部22を後側程下方に位置するように水平面に対して角度θ5傾斜させて、洗浄水流路16の下面部に水勾配をつけると共に、コ字状部15の後側縁部に設けた下横片部22の後端部に水抜き用開口77を形成している。
また洗浄水流路16の水抜きをスムーズに行うには、図22に示すようにコ字状部15の下横片部22を外側に行く程下方に位置するように傾斜させ、該コ字状部15の下横片部22の外側端部に水抜き用開口77を設けても良く、この場合、下横片部22の傾斜は前述のサイドコア7の抜き勾配として利用できる。
なお上記図20〜22における水抜き用開口77は下横片部22の内外方向において前述の洗浄水流出口23とは別位置に設けても良いし、洗浄水流出口23と水抜き用開口77とを下横片部22の内外方向における同位置に設けても良い。また水抜き用開口77は下横片部22を上下に貫通する貫通孔で構成しても良いし、下横片部22の外側端面とボウル部1の周壁内面との間に形成される隙間で構成しても良い。
なお以上説明した水洗便器は、2つの分割体を接着一体化するにあたって、A1、A2、B1〜3における分割体の対向面に溶着代を形成し、該溶着代を加熱溶解して成る溶解樹脂を介して分割体の対向面同士を溶着したが、溶着代を設けず分割体の対向面に別途接着剤を塗布し、該接着剤により分割体の対向面同士を接着しても良く、即ち各分割体を接着する接着材料14は溶着代を溶解してなる溶解樹脂であっても良いし、接着剤であっても良い。また上記水洗便器はボウル部1、スカート部2、リム部3からなる三つの合成樹脂製の分割体を接着一体化して形成したが、図23及び図24に示すように便器を2つの合成樹脂製の分割体83、84を接着一体化して形成しても良い。ここで図23及び図24に示す便器は、ボウル部1と、ボウル部1の一部を覆うボウル覆い部85と、コ字状部15を備えたリム部3を備えたもので、上記実施形態と同様にボウル部1とリム部3で洗浄水流路16を形成している。そしてボウル部1及び該ボウル部1と一体に成形したボウル覆い部85の前半部とで構成された合成樹脂製の分割体83と、リム部3及び該リム部3と一体に成形したボウル覆い部85の後半部とで構成された合成樹脂製の分割体84とを接着一体化して水洗便器を形成している。またこの他に図示は省略するが、4つ以上の合成樹脂製の分割体を接着一体化しても良く、即ち互いに独立した2以上の合成樹脂製の分割体を接着一体化して便器を形成すれば良いものとする。