以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
図1は、本発明のカメラ用レンズ鏡筒の実施形態を示す分解斜視図、図2は、その断面側面図である。このカメラ用レンズ鏡筒100は、4群のレンズから成るズームレンズ系を有するインナーフォーカス方式のカメラ用レンズ鏡筒であり、光軸Iに沿って被写体側より順に正、負、正、正の屈折力の第1群レンズ110、第2群レンズ120、第3群レンズ130、第4群レンズ140が配設されており、第4群レンズ140の焦点位置に図示しないCCD等の撮像素子が配置される。
第1群レンズ110は、鏡筒内に固定されて被写体の像を合焦する合焦用レンズ群であり、図示の場合は3枚のレンズで構成されている。第2群レンズ120は、鏡筒内で光軸Iに沿って像面側に移動してワイド端からテレ端への変倍を行うズーム(変倍)用レンズ群であり、図示の場合は3枚のレンズで構成されている。第3群レンズ130は、鏡筒内に固定されて変倍に伴う像面変動を補正する補正用レンズ群であり、図示の場合は1枚のレンズで構成されている。第4群レンズ140は、鏡筒内で光軸Iに沿って移動してピント合わせ(フォーカシング)を行うフォーカス用レンズ群であり、図示の場合は2枚のレンズで構成されている。
このカメラ用レンズ鏡筒100は、第2の鏡筒構成部の第1の例を示す前部鏡筒111、移動枠の第1の例を示すZ移動枠121、第1の鏡筒構成部である中間鏡筒131、移動枠の第2の例を示すF移動枠141及び第2の鏡筒構成部の第2の例を示す後部鏡筒151を備えている。前部鏡筒111には、第1群レンズ110がカシメ等により固定支持されており、この前部鏡筒111は、タッピンビス112により中間鏡筒131の一端面に固定されている。後部鏡筒151には、撮像素子を取り付けるための素子取付部152が設けられており、タッピンビス153により中間鏡筒131の他端面に固定されている。
Z移動枠121には、第2群レンズ120がカシメ等により固定支持されており、このZ移動枠121は、中間鏡筒131の一端面側に設けた第1の空間部131Aの内部に移動可能に収納されている。F移動枠141には、第4群レンズ140がカシメ等により固定支持されており、このF移動枠141は、中間鏡筒131の他端面側に設けた第2の空間部131Bの内部に移動可能に収納されている。
即ち、Z移動枠121は、前部鏡筒111と中間鏡筒131にそれぞれ設けられている図3に示すZ軸取付部113、133間に平行に架け渡されているガイド軸の第1の例を示す2本のZガイド軸(第1案内軸)124に係止され、第1の例のレンズ駆動手段のステッピングモータ122の駆動により連結ナット123を介してZガイド軸124に沿って移動制御可能に構成されている。また、F移動枠141も、後部鏡筒151と中間鏡筒131にそれぞれ設けられている図3に示すF軸取付部154、134間に平行に架け渡されているガイド軸の第2の例を示す2本のFガイド軸(第2案内軸)144に係止され、第2の例のレンズ駆動手段のステッピングモータ142の駆動により連結ナット143を介してFガイド軸144に沿って移動制御可能に構成されている。
ここで、Zガイド軸124の両端は、前部鏡筒111のZ軸取付部113に設けた第2の圧入穴113aと中間鏡筒131のZ軸取付部133に設けた第1の圧入穴133aにそれぞれ圧入されており、Fガイド軸144の両端も、後部鏡筒151のF軸取付部154に設けた第2の圧入穴154aと中間鏡筒131のF軸取付部134に設けた第1の圧入穴134aにそれぞれ圧入されているが、本発明の特徴的な構成は、Zガイド軸124の一端と中間鏡筒131のZ軸取付部133の第1の圧入穴133aとの圧入度合が、Zガイド軸124の他端と前部鏡筒111のZ軸取付部113の第2の圧入穴113aとの圧入度合より大きくなるように構成されていると共に、Fガイド軸144の一端と中間鏡筒131のF軸取付部134の第1の圧入穴134aとの圧入度合が、Fガイド軸144の他端と後部鏡筒151のF軸取付部154の第2の圧入穴154aとの圧入度合より大きくなるように構成されている。
即ち、例えばZガイド軸124の一端と中間鏡筒131のZ軸取付部133の第1の圧入穴133aとの圧入度合がしまりばめであって、Zガイド軸124の他端と前部鏡筒111のZ軸取付部113の第2の圧入穴113aとの圧入度合が中間ばめとなるように構成され、Fガイド軸144の一端と中間鏡筒131のF軸取付部134の第1の圧入穴134aとの圧入度合がしまりばめであって、Fガイド軸144の他端と後部鏡筒151のF軸取付部154の第2の圧入穴154aとの圧入度合が中間ばめとなるように構成されている。
中間鏡筒131には、略中央部に第3群レンズ130がカシメ等により固定支持されていると共に、側面にZ移動枠121及びF移動枠141を移動させるレンズ駆動手段のステッピングモータ122、142を取り付けるためのモータ取付部132a、132bと、アイリス160を取り付けるためのアイリス取付部132cが設けられている。ステッピングモータ122、142は、モータ取付部132a、132bに挿入されてタッピンビス125、145により固定されている。アイリス160は、光軸Iと交差するようにアイリス取付部132cから挿入されてタッピンビス161により固定されている。
図4は、Z移動枠121とステッピングモータ122の連結状態を説明するためのZ移動枠121及び連結ナット123の詳細を示す分解斜視図である。このZ移動枠121は、第2群レンズ120がはめ込まれるレンズ枠121aの一端に、光軸I方向に延びるスリーブ部121bが一体的に設けられ、このスリーブ部121bから略180°隔てたレンズ枠121aの一端に、U溝部121cが設けられている。スリーブ部121bには、Z移動枠121とステッピングモータ122とを連結するための連結ナット123が挿入される溝部121dが形成されており、さらに溝部121dの光軸I方向の両端には、Zガイド軸124が挿入される一対の軸受部121eが形成され、溝部121dの中央には、連結ナット123が嵌合されるナット嵌合部121fが形成されている。
連結ナット123は、溝部121d内に収納されてZガイド軸124が挿入されるパイプ部123aと、その側面に一体的に形成され、ナット嵌合部121fに嵌合される突起部123b及び図5に示すステッピングモータ122のリードスクリュー122aとかみ合って支持するラック部123c、ストッパ部123d、クランプバネ部123eを備えている。尚、以上の構成は、F移動枠141及び連結ナット143も同一である。
このような構成のカメラ用レンズ鏡筒100の組立手順は、先ず、2本のZガイド軸124の一端を中間鏡筒131に設けられているZ軸取付部133の第1の圧入穴133aに圧入すると共に、2本のFガイド軸144の一端を中間鏡筒131に設けられているF軸取付部134の第1の圧入穴134aに圧入する。次に、連結ナット123をZ移動枠121に係合させる。即ち、連結ナット123のパイプ部123aをZ移動枠121の溝部121d内に挿入し、連結ナット123の突起部123bをZ移動枠121のナット嵌合部121fに嵌合する。
このZ移動枠121の軸受部121e内及び連結ナット123のパイプ部123a内に一方のZガイド軸124の他端を挿入・貫通させると共に、Z移動枠121のU溝部121c内に他方のZガイド軸124の他端を挿入・貫通させ、Z移動枠121を中間鏡筒131の一端面側の第1の空間部131Aの内部に収納する。そして、各Zガイド軸124の他端を前部鏡筒111に設けられているZ軸取付部113の第2の圧入穴113aに圧入し、前部鏡筒111と中間鏡筒131をタッピンビス112によりネジ止めする。これにより、Z移動枠121は、中間鏡筒131の一端面側の第1の空間部131Aの内部にて、各Zガイド軸124をガイドにして光軸I方向に移動可能となる。
同様に、連結ナット143をF移動枠141に係合させ、このF移動枠141にFガイド軸144の他端を挿入・貫通させ、F移動枠141を中間鏡筒131の他端面側の第2の空間部131Bの内部に収納する。そして、各Fガイド軸144の他端を後部鏡筒151に設けられているF軸取付部154の第2の圧入穴154aに圧入し、後部鏡筒151と中間鏡筒131をタッピンビス153によりネジ止めする。これにより、Fガイド軸144は、中間鏡筒131の他端面側の第2の空間部131Bの内部にて、各Fガイド軸144をガイドにして光軸I方向に移動可能となる。
次に、ステッピングモータ122を中間鏡筒131のモータ取付部132aに収納して、ステッピングモータ122のリードスクリュー122aを連結ナット123のラック部123cとストッパ部123d及びクランプバネ部123eとの間に形成される溝内にはめ込み、ステッピングモータ122をタッピンビス125により中間鏡筒131にネジ止めする。これにより、ステッピングモータ122のリードスクリュー122aは、連結ナット123のクランプバネ部123eにより付勢されてラック部123cとかみ合うことになる。
同様に、ステッピングモータ142も中間鏡筒131のモータ取付部132bに収納してタッピンビス145により中間鏡筒131にネジ止めする。これにより、ステッピングモータ142のリードスクリュー142aも、連結ナット143のラック部143cとかみ合うことになる。そして、アイリス160を光軸Iと交差するように中間鏡筒131のアイリス取付部132cから挿入してタッピンビス161により中間鏡筒131にネジ止めする。
以上のようにして組立てられたカメラ用レンズ鏡筒100の図5に示す各ステッピングモータ122、142の端子部122b、142bに図示しない駆動回路から駆動電流が通電されると、各ステッピングモータ122、142のリードスクリュー122a、122aが回転する。この回転運動は、連結ナット123、143のラック部123c、143cで直線運動に変換されてZ移動枠121、F移動枠141に伝達される。従って、Z移動枠121及びF移動枠141は、中間鏡筒131の一端面側の第1の空間部131Aの内部及び他端面側の第2の空間部131Bの内部にて、Zガイド軸124及びFガイド軸144に沿って光軸I方向に移動する。
そして、カメラ用レンズ鏡筒100を修理等により分解する場合、前部鏡筒111と中間鏡筒131及び後部鏡筒151と中間鏡筒131を外したときに、Zガイド軸124及びFガイド軸144の各一端と中間鏡筒131のZ軸取付部133の第1の圧入穴133a及びF軸取付部134の第1の圧入穴134aとの圧入度合が、Zガイド軸124及びFガイド軸144の各他端と前部鏡筒111及び後部鏡筒151のZ軸取付部113の第2の圧入穴113a及びF軸取付部154の第2の圧入穴154aとの圧入度合よりも大きいので、Zガイド軸124及びFガイド軸144はZ移動枠121及びF移動枠141と共に、常に中間鏡筒131側にそれぞれ付いた状態で、前部鏡筒111及び後部鏡筒151が外れることになる。
従って、上述した組立手順とは逆手順で行うことができるので、Z移動枠121及びF移動枠141を中間鏡筒131の第1の空間部131Aの内部及び第2の空間部131Bの内部から取出すときに、Z移動枠121及びF移動枠141が中間鏡筒131の内壁と干渉するようなことはなく、他の部材に損傷を与えることを防止することができる。さらに、再組立時にZガイド軸124及びFガイド軸144を前部鏡筒111及び後部鏡筒151のZ軸取付部113及びF軸取付部154から一旦引き抜く必要もなくなるので、組立工数を大幅に低減させることができる。
以上のように、本発明によれば、分解・組立が容易となり、分解時における部品損傷や組立工数を低減してコストダウンを図ることが可能となる。
100‥カメラ用レンズ鏡筒、 110‥第1群レンズ、 111‥前部鏡筒(第2の鏡筒構成部)、 113,133‥Z軸取付部、 113a,154a‥第2の圧入穴、 120‥第2群レンズ、 121‥Z移動枠(移動枠)、 122,145‥ステッピングモータ、 123,143‥連結ナット、 124‥Zガイド軸(ガイド軸)、 130‥第3群レンズ、 131‥中間鏡筒(第1の鏡筒構成部)、 131A、131B‥空間部、 133a,134a‥第1の圧入穴、 134,154‥F軸取付部、 140‥第4群レンズ、 141‥F移動枠(移動枠)、 144‥Fガイド軸(ガイド軸)、 151‥後部鏡筒(第2の鏡筒構成部)、 152‥素子取付部、 160‥アイリス