JP4327965B2 - 安全機器部品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器、電気回路の過電流の防止、異常発熱による発火、火災等の防止の為に使用されるサーモスタットや温度ヒューズ等の安全機器部品において、各種素子を包囲するように形成されたケース、チューブ、キャップ形状あるいはその封止に用いられるディスク、蓋等の外装部品を形成する樹脂複合体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、サーモスタットに代表される安全機器部品では、ON−OFF時に発生する電波障害の抑制用にキャパシタ等の抑制素子が使用されている。ところが、何年もの使用後のキャパシタの故障あるいは特性劣化が原因で、電波障害が発生するといった問題があった。英国における電波通信局の調査によると、電波障害には季節的なピークがあり、頻繁に問題が起きているのはセントラルヒーティング・ボイラ用サーモスタットであることが報告されている(1997年CISPR横須賀会議報告;不要電波吸問題対策協議会編)。
しかしながら、通常、サーモスタット等の安全機器部品に配置されるキャパシタ等の抑制素子の特性劣化、故障の対策として、定期的な部品交換によるメンテナンス、あるいは高品質な抑制素子が求められているが、いずれもコストUPとなり現実的ではなかった。
【0003】
また、電気機器、電気回路部品に使用される安全機器部品のようにアークが発生する場所に使用される電気絶縁物には、耐熱性、耐難燃性、耐アーク性、耐トラッキング性、耐絶縁性が要求される。従って、安全機器部品における各種素子を収納するケースのような外装部品としては耐熱性、耐難燃性に優れたフェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に無機物を充填した複合材料が多く使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記複合材料からなる外装部品自体には電波障害を防止する作用がないため、放射電波を抑制するためには、電波障害を発生させる各種素子を配置するケース等の外装部品内部に、合成ゴムをマトリックスとした電波吸収シートを貼付する必要があり、この場合、合成ゴムの耐熱性が低く、長時間高温に曝される電気絶縁物においては使用することができなかったといった問題があった。
また、これらに用いられる該複合材料は、一般に樹脂を加熱して流動性を持たせ所定の金型内に充填し硬化させるといった射出成形法で成形されている。この為、充填材の総量が著しく制限されており、耐熱性すなわち荷重たわみ温度が120〜150℃と低いといった問題があった。さらに、樹脂の配合比率が多い樹脂複合体では、高電圧が印可されると、樹脂の表面が炭化されて導通路が発生し、この導電路にそって電流がながれてしまうあるいは、相対密度が低い場合では、成型体内部のボイド内に発生する放電現象よりトラッキング現象を引き起こし易く、その耐トラッキング性は125V程度と低い値しか得られないといった問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明の安全機器部品は、上記課題を解消するために電波の漏洩を抑制する外装部品内に各種素子を配置してなる安全機器部品において、前記外装部品は、熱硬化性樹脂に、フェライト材料が50〜90体積%、または、フェライト材料と誘電体材料が合計で50〜90体積%含有されてなり、荷重たわみ温度が225℃以上で、かつ相対密度が95%以上の樹脂複合体で形成されていることを特徴とする。また、この外装部品を粉末加圧成形法にて成形、離型後、所定の温度で加熱硬化することで成型することを特徴とする。これにより、キャパシタ等の破損或いは特性劣化が生じても、電波の漏洩を抑制出来る安全機器部品を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0007】
本発明の安全機器部品の一例であるサーモスタットは図1に示す様な構造をとる。すなわち、樹脂複合体からなるケース2および貫通孔を備えたピンガイド16で囲まれた容器中に接点開閉機構7を有し、周囲温度の変化により皿形バイメタル10が変形することにより、ピン9が接点開閉機構7を上下させる。これによって端子5と6の間を電気が流れたり、止まったりする。
【0008】
本発明では、上記ケース2、ピンガイド16などの外装部品を熱硬化性樹脂にフェライト材料、誘電体材料のうち少なくとも1種以上を50〜90体積%分散含有した樹脂複合体で形成してある。該樹脂複合体は粉末加圧成形法を用いて成形、離型後、所定の温度で加熱硬化して作製することにより、射出成形法では困難であった充填材の配合比率を90体積%まで高めることが出来る。これにより、荷重たわみ温度が180℃以上と耐熱性に優れ、耐トラッキング性(CTI)が250V以上である高い安全性と、放射電波の減衰量が20dB以上の優れた特性を有する電波吸収体として機能し、電波の漏洩を抑制出来る樹脂複合体からなる外装部品とすることができる。
【0009】
充填材の総量を50〜90体積%としたのは、50体積%以下であると加熱時に、ケース2、ピンガイド16などの外装部品の変形が大きく寸法精度が保てない上に、耐熱性すなわち、荷重たわみ温度が低くなってしまうからである。逆に充填材の配合量が90体積%より多くなると、充填材を分散するマトリックスである残部の樹脂が少なくなりすぎて、ケース2、ピンガイド16などの外装部品の強度が著しく低下する。
【0010】
熱硬化性樹脂に充填材を添加する方法はなんら制限が無く公知の方法を使用することができる。例えば、熱硬化性樹脂に配合物をミキサーで混合し、ブラベンダーで混練した後、粉砕する方法。あるいは、配合物を加熱ロールで溶融混練後、粉砕する方法等が挙げられる。また、必要に応じて所定の粒度になるように造粒し、あるいは分級して成型に用いても良い。さらに、樹脂と混合した際に、充填材の表面改質を目的としてカップリング剤をコートしても良い。
【0011】
また、加熱硬化の工程は、金型から離型し、熱処理は80〜250℃の範囲の温度で樹脂の性状と充填材の配合量に合わせて行う。また、熱処理の際には場合によって、型治具を使用しても良い。
【0012】
しかしながら、上記以外の一般に知られている樹脂の成型法、すなわち射出成形、トランスファー成形、熱ロール法、圧延法、熱間プレス法、鋳込み成型法等の所定の金型内あるいはロールで、樹脂を溶融した状態で成型すると、上記のようなダレ、膨れ等の成形体の変形といった不具合は避けられるが、一方、樹脂の流動性が必要なことから、充填材の総量が著しく制限されてしまう為、耐熱性、耐トラッキング性、電波吸収特性の向上は望めず適切な方法でない。
【0013】
ここで、熱硬化性樹脂に混合するフェライト材料及び誘電体材料は、それぞれ電波吸収特性における複素比透磁率、複素比誘電率を調整するために含有するもので、その含有量を増やすと電波吸収特性に重要な影響を与える複素比透磁率、複素比誘電率を高めることができる。
【0014】
また、無機充填材を混合することも出来、複素比誘電率の調整、熱伝導率の調整、強度補強、軽量化を目的として配合される。
【0015】
このような樹脂複合体を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂が使用出来、これらの中でも耐熱性、寸法安定性、強度、コスト等の点からフェノール樹脂が特に好適である。
【0016】
一方、フェライト材料としては例えば、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Cu−Zn−Mgフェライト、Mn−Mg−Alフェライト、Y型六方晶フェライト、Z型六方晶フェライト、M型六方晶フェライト等が好適に用いられる。
【0017】
さらに、誘電体材料としては、誘電率5以上の材料、例えば、Al23、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、MgTiO3、PbTiO3、PZT(PbZrTiO3)等が好適に用いられる。
【0018】
尚、いずれの材料も非常に比重が大きく、成形体を常圧で熱硬化する際、その温度条件を制御することで、樹脂中に含まれる揮発成分の気化や硬化反応に伴う生成ガスによって、成形体内部に微細な気孔が発生するが、熱硬化時の温度をコントロールすることで、気孔を成形体内部に残留させることができ、相対密度を制御し軽量化を図ることもできる。ここで、複合体の強度を維持する観点から樹脂複合体の相対密度は理論密度の95% 以上、好ましくは97%以上の範囲とする。ここで、相対密度が95%未満になると、樹脂複合体の強度が著しく低下するため、成形体の肉厚を薄くできず実用的でない。
【0019】
また、軽量化を目的として、種々の比重の軽い無機充填材を混合しても良く、シリカ、硅砂、酸化カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサリト、ガラス繊維、ガラスビーズ、中空体のガラスバルーンあるいは、シリカバルーン、シラスバルーン等を要求特性に応じて使用できる。
【0020】
また、本発明の樹脂複合体からなる安全機器部品においては、図2に示す様にケ−ス断面20を観察した場合、熱硬化性樹脂21の中に存在するフェライト材料、誘電体材料、無機充填材からなる充填材22が特定方向に配向していないことが好ましい。また、本発明の樹脂複合体中には気孔23が存在する。一方、射出成形、トランスファー成形、熱ロール法、圧延法、熱間プレス法、鋳込み成形法で作製された電波吸収体では、例えば図3に示すように、ケ−ス断面24を観察すると、熱硬化性樹脂樹脂25の流動方向への充填材26の配向等が発生する。充填材26の配向は、特にアスペクト比が大きいフレーク状、針状、繊維状の充填材で顕著に現れ、特定の面から入射する電波に対する電波吸収特性は良好であるが、それ以外の面では、電波吸収特性が低下し、また機械的強度が低下するという問題があった。本発明の樹脂複合体では、粉末加圧成形によって配向を無くすことにより、従来の電波吸収体で起きていたこれらの問題を解決できる。
【0021】
本発明の安全機器部品の使用形態としては、例えば、図1の様な電気機器、電気回路の過電流の防止、異常発熱による発火、火災等の防止の為に使用されるサーモスタットや温度ヒューズ等の安全機器部品において、各種素子を包囲するように形成されたケース、チューブ、キャップ形状あるいはその封止に用いられるディスク、蓋等の外装部品である。
【0022】
【実施例】
実施例1
フェライト材料の配合量が異なる樹脂複合体を作製し、0.001GHz〜1GHzの電波に対する放射電波の強度を調べる実験を行った。
【0023】
本実験にあたり、樹脂複合体を形成する熱硬化性樹脂にはレゾール型フェノール樹脂、フェライト材料にはNi−Znフェライトを用いた。これらを配合し、常温で成形圧0.5ton/cm2〜8ton/cm2として粉末加圧成形、離型後、80〜250℃で加熱硬化し、図1に示したケース2、ピンガイド16を作製し、成形体の保形性、及び破壊強度を確認した。尚、試験片の肉厚は、1mmとした。また、破壊強度についてはケース2側面に40MPaの応力をかけ、その破壊を確認した。破壊しなかったときを○、破壊したときを×とした。
【0024】
次に、得られたケース2、ピンガイド16を、サーモスタットのケースとして用いて、放射電界強度の減衰量を測定した。放射電界強度が減衰したときを○、全く減衰しなかったときを×とした。また、荷重たわみ温度(JIS K6911)、耐トラッキング性(IEC Pub.112−1979)の測定、また10000回ON−OFFを繰り返し、サーモスタットが故障するまでの作動回数の確認も行った。結果を表1に示す。
【0025】
表1で分かる様に、フェライトの含有量が50体積%未満(No.1)であると成形体の変形、角のダレ等の発生あるいは相対密度が低いことから、破壊強度、耐トラッキングが低い結果となった。また、放射電波の減衰がほとんど無く不適である。また、フェライト材料の含有量が90体積%より多い場合(No.2)は、破壊強度が小さくなりすぎて不適である。また、相対密度が95体積%より低い場合(No.3)も、破壊強度が低いため不適である。また、No.1〜No.3のサンプルは、熱による変形、破損が原因でサーモスタットとして作動しなかった。
【0026】
一方、本発明の範囲内(No.4〜No.6)では、すべて荷重たわみ温度180℃以上、耐トラッキング250V以上で且つ放射電波の減衰効果があった。また、10000回以上ON−OFFを繰り返しても故障せずにサーモスタットとしての機能を維持した。
【0027】
【表1】
Figure 0004327965
【0028】
実施例2
フェライト材料としてMn−Znフェライト、誘電体材料としてBaTiO3、熱硬化性樹脂にエポキシ樹脂を、均一混合した後、50℃で3時間撹拌しながら乾燥して造粒した。これを成形圧2ton/cm2として常温で加圧成形し、80〜250℃で加熱硬化し、ケース2、ピンガイド16を作製し、実施例1と同様の実験を行った。
【0029】
表2で分かる様に、Mn−ZnフェライトとBaTiO3の含有量の合計が50体積%未満(No.7)であると成形体の変形、角のダレ等の発生あるいは相対密度が低いことから、破壊強度、耐トラッキングが低い結果となった。また、放射電波の減衰がほとんど無く不適である。また、Mn−ZnフェライトとBaTiO3の含有量の合計が90体積%より多い場合(No.8)は、破壊強度が小さくなりすぎて不適である。また、相対密度が95体積%より低い場合(No.3)も、破壊強度が低いため不適である。また、No.1〜No.3のサンプルは、熱による変形、破損が原因でサーモスタットとして作動しなかった。
【0030】
一方、本発明の範囲内(No.10〜No.12)では、すべて荷重たわみ温度180℃以上、耐トラッキング250V以上で且つ放射電波の減衰効果があった。また、10000回以上ON−OFFを繰り返しても故障せずにサーモスタットとしての機能を維持した。
【0031】
【表2】
Figure 0004327965
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性、耐トラッキング性に優れ、且つ電波障害を抑制する安全機器部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の安全機器部品の一例であるサーモスタットを示す断面図である。
【図2】本発明の安全機器部品の外装部における断面の模式図である。
【図3】従来の安全機器部品の外装部における断面の模式図である。
【符号の説明】
1:サーモスタット
2:ケース
3:スルーホール
4:導電材
5,6:端子
7:接点開閉機構
8:皿形バイメタル
9:ピン
10:キャップ
11:開口縁
12:環状縁面
13:内端
14:外縁
15:内底面端縁部
16:ピンガイド
20:ケース断面
21:熱硬化性樹脂
22:充填材
23:気孔
24:ケース断面
25:熱硬化性樹脂
26:充填材

Claims (4)

  1. 電波の漏洩を抑制する外装部品内に各種素子を配置してなる安全機器部品において、記外装部品は、熱硬化性樹脂に、フェライト材料が50〜90体積%、または、フェライト材料と誘電体材料が合計で50〜90体積%含有されてなり、荷重たわみ温度が225℃以上で、かつ相対密度が95%以上の樹脂複合体で形成されていることを特徴とする安全機器部品。
  2. 前記外装部品は、熱硬化性樹脂にNi−Znフェライトが50〜90体積%含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の安全機器部品。
  3. 前記外装部品は、熱硬化性樹脂にMn−ZnフェライトとBaTiO が合計で50〜90体積%含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の安全機器部品。
  4. 上記外装部品は、粉末加圧成形法により成形し、離型後、所定の温度で加熱硬化して所定形状としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の安全機器部品の製造方法。
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