JP4325522B2 - 加工性および加工部の特性が優れるステンレス鋼板とその製造方法 - Google Patents

加工性および加工部の特性が優れるステンレス鋼板とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高強度を維持しつつ、加工性および加工部の疲労特性、耐食性に優れる高性能ステンレス鋼板とその製造方法に関するものであり、本発明にかかるステンレス鋼板は自動車、家電製品、電子機器、建材およびそれらの部品等、ステンレス鋼板が使用される大部分の用途に適用可能である。
自動車関連での省エネ、環境問題等を初めとする、コストダウン、小型、軽量化等の数多くのユーザのニーズから、鋼板には薄板化とそれを補う高強度化が進行している。また、最近ではより複雑な形状への優れた加工性も同時に要求されている。これらは、ステンレス鋼においても例外では無い。
しかし、ステンレス鋼においても他の金属材料と同様、強度と加工性は両立せず、一方を満足させると他方が満足しないという相反する傾向を有し、高強度化に伴う加工性の劣化が避けられないのが現状である。更に、最近ではより複雑な形状への優れた加工性の要求も強い。
これらより、一例として自動車エンジン用ガスケット材において、最終焼鈍後の結晶粒径を従来の20μm(≒粒度番号8.5:JIS-G-0551)前後から10μm以下(≒番号10.5以上)に微細化し、従来と同等の高強度を維持した上で、加工により主に結晶粒界で生じると考えられるシワ、微少な割れ(き裂)等の欠陥の発生を大幅に抑制した材料およびその製造方法が提案されており、また、それらの欠陥を起点とした早期疲労破壊の抑制がなされることが報告されている。特許文献1ないし4参照。
しかし、ここに、ガスケットはシリンダーヘッドとブロック間の隙間に挿入されるシール部品であり、ガスケット用材料にみられるそのような改良手段をそのまま他用途のステンレス鋼板に適用しても所期の効果が確保できるとする一般的認識はない。また、そのような結晶粒微細化は比較的低温かつ狭い温度域での焼鈍により獲得されるため、従来の軟化を目的とする高温での焼鈍に対して安定した組織を得ることが難しい。また、このため、材料が高価となるという問題もあった。
特開平4−214841号公報 特開昭5−279802号公報 特開平5−117813号公報 WO00/14292公報
本発明は、高強度を有するとともに、加工性に優れ、加工部の疲労特性、耐食性に優れるステンレス鋼板およびその製造方法を提供するものであり、最近のユーザニーズに応える高性能材料を工業的に安定供給することを目指したものである。更に言えば、省エネ、環境問題等に対応し、安価かつ信頼性の高い、高性能材料の安定供給を目指したものである。
本発明は、結晶粒微細化による高強度化と、粒界密度上昇による粒界に集中する変形の分散とにより、加工時の欠陥発生を大幅に抑制し、高強度と優れた加工性との両立を目指したものである。
すなわち、基本原理は従来と同様に結晶粒微細化組織を活用したものであり、その組織の最適化と安定獲得方法を鋭意検討し、次の2点を見出した。
(a)変形量が最大となる板表面近傍部の結晶粒が微細化されていれば、内部がある程度粗粒であっても、材料は優れた性能を示す。
(b)これらに対して、一連の熱処理での窒素吸収(固溶・拡散)→窒素化合物(窒化物)析出が有効である。すなわち、微細な析出物の均一分散により粒成長が抑制され、板表面近傍部の結晶粒微細化は効果的に実現される。
更に言えば、(a) に関連して析出物が微細であると共に、その濃度(数)も板厚方向で連続的に減少するため不連続境界を形成することもなく、その結果、加工時に新たにシワ、き裂等の欠陥の発生を招くこともない。そして、欠陥を起点として早期に発生する疲労破壊、発錆も抑制されることが期待される。
本発明は上記の着想に基づき、課題解決のため鋭意研究を重ねた結果、以下の点を知り、完成した。
すなわち、高強度と優れた加工性の両立、それによる高疲労特性強化、さらに、成形時に発生するき裂、シワ等の欠陥の発生抑制に板表面近傍部の結晶粒微細化が有効なことを見出した。
また、低露点の高純度窒素ガスおよび窒素を混合した還元性ガス雰囲気中の熱処理において、窒素の吸収が起こることを見出した。さらに、次の熱処理を低温で実施することにより、窒化物の析出が起こることを見出した。
そして、上記熱処理の組合せにより、板表面近傍部には微細な窒化物が均一分散し、粒成長が効果的に抑制され、内部に比較して結晶粒より微細化した組織が得られ、そのような組織により高強度を維持した上、加工部でのシワ、き裂等の発生が抑制され、優れた加工性を示し、また、加工部の疲労特性および耐食性が向上することを見出した。
ここに、本発明は、結晶粒微細化による高強度化、粒界密度増加での変形分散による欠陥の発生抑制を活用したものであり、その要旨とするところは、次の通りである。
(1) ステンレス鋼板の鋼組成が、JIS G 4305に規定されるSUS301、SUS301L、SUS316、SUS430、またはSUS403鋼の組成からなり、少なくとも板表面から板厚方向3μm以内の領域において、粒径10nm以上200nm以下の窒素化合物が100μm2 当たりに200個以上、且つ板厚中心部の前記大きさの窒素化合物の個数に比較して2倍以上存在し、存在し、板表面から板厚方向3μm以内の領域におけるマトリックスの粒度番号が11以上であり、且つ前記粒度番号が板厚中心部におけるマトリックスの粒度番号に比較して、1以上大きいことを特徴とするステンレス鋼板。
(2) 前記窒素化合物の板中心方向への濃度勾配が暫減的である請求項1記載のステンレス鋼板。
(3) 前記鋼板を構成する組織が加工組織からなることを特徴とする、請求項1または2に記載のステンレス鋼板。
(4) 更に、Ti、Nb、V の1種以上を合計で、0.02〜0.5質量%含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼板。
(5) 請求項1〜4のいずれかに記載されるステンレス鋼板の製造方法であって、冷間圧延鋼板に焼鈍を施す工程を含むステンレス鋼板の製造方法において、前記焼鈍を施す際に下記の工程を含むことを特徴とする、ステンレス鋼板の製造方法。
(i)5体積%以上の窒素を含み、露点が−40℃以下である雰囲気中で、1000〜1200℃の温度範囲で、20秒以上の焼鈍を行って、前記冷間圧延鋼板に窒素を吸収させる前熱処理工程、次いで
(ii)前記前熱処理工程後に、前記前熱処理工程より50℃以上低い温度で(但し、650℃以下を除く)焼鈍を行って、前記前熱処理工程後の冷間圧延鋼板に窒化物を析出させることによって板表面近傍部におけるマトリックスの結晶粒を微細化する最終熱処工程。
本発明にあっては、高強度を維持した上で加工性に優れ、更に加工後の疲労特性、耐食性に優れるステンレス鋼板に関するものであり、これにより最近のユーザニーズに応える高性能材料を工業的に安定して提供することができる。更に言えば、環境問題等に対応し、安価で信頼性の高い、高性能材料を安定供給できる。
本発明の特徴は、変形量が最大となる板表面近傍部の結晶粒を微細化するという最適な組織と、窒素の吸収→析出を主工程とする上記組織を獲得するための熱処理(手段)との組み合わせにある。
更に言えば、同熱処理により加工時に新たな欠陥を発生する可能性のある粗大な析出物、不連続境界の起点を形成しない点にある。すなわち、これは析出物によるピン留効果を最大限に活用し、微細な窒化物を板表面近傍部に均一分散させ、その濃度を板厚方向で連続して減少させた組織である。
したがって、本発明は基本的にステンレス鋼全般への適用が可能であり、耐食性を維持するために最低限必要とされる10%以上のCrを含有する鋼が対象となる。ただし、窒素の吸収と析出に関して熱処理温度での固溶度の差を活用していることから、窒素がより多く固溶し、温度による固溶量の差の大きなオーステナイト(γ)系ステンレス鋼が他のフェライト(α)、マルテンサイト(α’)系に比べてより適切である。
次に、本発明において前述のように材料の組織、製造方法を規定した理由の説明を行う。
まず、窒化物は主に前熱処理により吸収した窒素を最終焼鈍時に析出するものであり、微細であることが望ましい。窒化物の直径を200nm以下としたのは、同値を超えた場合に欠陥を発生する可能性が高まるためである。更に好ましくは、150nm以下である。ただし、溶製時の固溶窒素が窒化物として析出したときの窒化物と区別するため、対象となる窒化物の直径の下限値を10nm以上とした。好ましくは15nm以上、更に好ましくは20nm以上である。
窒化物の分散は板表面近傍が高密度、かつ連続して濃度低下することが望ましい。このため、結晶粒微細化効果の得られた実績値より、100μm2辺りに200個以上とした.更に、好ましくは、300個以上である.また、板表面近傍部の密度 (窒化物個数)を板厚中心部に比べて2倍以上としたのは、目視で濃度差の確認が可能であり、効果(結晶粒微細化)も得られたためである。更に好ましくは、3倍以上である。
板表面近傍部のマトリックスの結晶粒は微細であることが必要であり、微細とすることが材料の加工性、それにともなう疲労特性、耐食性の改善の主因である。より微細であることが望ましい。窒化物が分散した板表面近傍部の結晶粒径が板厚中心部に比べてJIS-G-0551の粒度番号で1以上(結晶粒径で1/√2倍)大きいとしたのは、目視で差の確認が可能であり、効果(加工性改善、加工部特性が向上)も得られたためである。更に好ましくは、粒度番号で2以上(粒径で1/2倍)である。
なお、窒化物が分散し、結晶粒が微細化する領域は、前熱処理で吸収される窒素の侵入深さに対応すると考えられる。工業的ライン生産(コイルでの連続焼鈍)を想定し、実用的熱処理条件の上限を1200℃加熱、600sec.保持とした場合、γ系ステンレス鋼での窒素の拡散による侵入深さ(Nt)は下記式にて算出される。
Nt=(2Dt)1/2≒(2×2×10−6×900)1/2=489.9μm
D:γ鋼中での窒素の拡散常数(1200℃の場合≒2×10-6cm2/sec.)
t:保持時間(sec.)
すなわち、侵入深さは500μm前後が限界(最大)と推定される。しかし、同条件に近い前熱処理後に確認された窒素吸収層の厚さは後述する図1に示すように200μm 程度に留まった。これは、酸化被膜、表面汚染等が拡散の障害となったためと推定される。また、窒化物が分散し、結晶粒が微細化した領域は現実には最終熱処理後に確認される。しかし、窒化物分散、結晶粒微細化とも連続的に変化するため、その境界は不明瞭である。更に、製品板は後述の表2に示すような前熱処理→中間圧延→最終熱処理→調質圧延とういうような工程で製造される。このとき、各工程後の領域の深さは圧延率に対応して減少するはずである。
すなわち、熱処理時の窒素侵入の深さが図1のように200μmの場合、本試験では中間圧延(圧下率58.3%、板厚さ1.2mm→0.5mm)、最終熱処理後には83μm、調質圧延(圧下率60%、→板厚さ0.2mm)後には33μmとなる。更に、圧延率をRed.0%とすることも可能である。したがって、熱処理の段階で窒化物が分散し、結晶粒が微細化した領域の厚さは特に規定しない。「少なくとも板表面から板厚方向3μm以内の領域において」本発明を満足すればよい。
参考データとして、後述する表3の前熱処理後の本発明材11のEPMA (Electron Probe Micro Analyzer)での窒素のライン分析(板厚方向での濃度分布)を図1に、更に冷間圧延、最終焼鈍を施した後の同材の板表面近傍と板厚中心部での透過型電子顕微鏡 (TEM:Transmission Electron Microscope)での組織を図2(a),(b)にそれぞれ示す。
図1より実際の製造ライン相当の前熱処理条件において、板表面から200μm程度までの窒素濃度がその内部に比べて高いことがわかる。また、図2(a)と図2(b)との対比によって、前熱処理に対して最終熱処理を十分に低温で実施することで、板表面近傍には微細な窒化物が高密度で分布し、マトリックスの結晶粒径も微細化し、粒度番号で1以上大きくなることが確認される。なお、本観察での大部分の析出物は微細なクロム窒化物であった。
次に、本発明における製造条件の限定理由について述べる。
本発明においても、冷間圧延鋼板を製造するまでの工程は、従来のそれと同様であってもよく、制限はない。したがって、所定鋼組成に調整された溶湯は、例えば連続鋳造装置によって鋼片とされ、粗圧延、仕上げ圧延をへて熱延鋼板とする。熱延鋼板は、脱スケールなどの前処理をへてから、冷間圧延工程に送られ、所定厚さの冷延鋼板に仕上げられる。必要により途中焼鈍工程を加えてもよい。
本発明の場合、鋼組成的には、SUS301、US304、SUS301L、US304Lさらには、SUS430、SUS403のそれでよい場合には、市販の冷延鋼板を用いてもよい。所望のより、これにTi、Nb、V の1種以上を合計で0.02〜0.5%含有させる場合には、前述の溶湯の段階で成分調整を行えばよい。なお、これらの添加元素はいずれも窒化物を生成し、強度改善および加工性改善に大きく寄与する。
このようにして用意された冷延鋼板は、本発明にしたがって、所定の焼鈍処理を行い、窒素の吸収と窒化物の析出処理を行う。かかる処理工程に先立って、必要により、冷延鋼板には脱脂、脱スケール処理などの前処理を行ってもよい。
次に、窒素の吸収を行う前熱処理の露点はガス中の水分に対応し、高い場合には酸化皮膜を形成して窒素吸収が抑制される。このため、前熱処理の露点を−40℃以下とした。更に好ましくしくは、−45℃以下である。
雰囲気ガスは窒素吸収を目的とするため、窒素成分の含有が不可避である。他に還元性ガス(水素等)を加えるのは露点を −40℃以下にするのと同様、材料表面の酸化被膜形成を防止し、充分な窒素を吸収させるためである。より好ましくは、還元性雰囲ガスとの混合使用である。
次に、最終熱処理を行うが、最終熱処理を前熱処理に比べて 50℃以上低い温度で実施するのは、高温での窒素の固溶度の差を利用して窒素吸収後に窒化物を析出させるためである。好ましくは、100℃ 以上低い温度での最終熱処理の実施である。
これらを満足した場合、熱処理条件自体は工業的に実施されるもので問題ないと考える。すなわち、前熱処理は温度が1000〜1200℃、保持時間が20秒以上、好ましくは20〜600秒にて必要な窒素の吸収がなされる。更に、好ましくは、1050℃以上である。保持時間の下限を20sec.としたのは必要な窒素を雰囲気ガスからの拡散により吸収するためである。更に好ましくは、30sec.以上である。冷却は可能な範囲で急速であることが望ましい。これは冷却時の窒素化合物析出を避け、過飽和固溶状態を維持し、最終熱処理の窒素化合物の均一微細析出を促進するためであり、100℃/sec.以下とする。
前熱処理に際しては、それ以前に窒素吸収促進のために脱脂工程および板表面の洗浄、酸化皮膜除去等を目的とした酸洗工程を実施することにより、さらに確実に、かつ効率的に窒素の吸収を行うことができる。また、次いで最終熱処理を行うこととなるが、前熱処理と最終熱処理の間に冷間加工を行うことが好ましい。これは窒化物の析出サイトとなる内部欠陥を導入し、最終熱処理時の窒化物の均一微細析出を促進するためである。
最終焼鈍の温度は前述の通りに前熱処理よりも50℃以上低ければ良く、好ましくは、100℃ 以上低温での実施である。更に好ましくは、前熱処理温度よりも低温となる1000℃以下である。保持時間は1sec.以上で充分であり、更に好ましくは、10sec.以上である。
実施例によって本発明の作用効果についてさらに具体的に説明する。
供試材の成分を表1、製造工程を表2に示す。供試材はオーステナイト(γ)系ステンレスのSUS301、301L、316鋼、フェライト(α)系ステンレスのSUS430鋼、マルテンサイト(α’)系ステンレスの工業的に実機溶製した。
表2に製造工程を示すように、供試材SUS301、301L、316、430については、市販の板厚さ1.2mmの冷延鋼板を出発材料とし、前熱処理における窒素吸収をともなう焼鈍処理を行ってから、板厚さ0.5mmにまで冷間圧延を行い、次いで最終熱処理として、窒化物析出を伴う焼鈍を行った。焼鈍処理終了後、調質圧延によって、板厚さ0.2mm程度とすることで、SUS 301、301LについてはHv460前後に、SUS 316についてはHv360前後に、そしてSUS430についてはHv280前後に調整した。かかる調質圧延後に、図3に示すような形状への成形を行った。
一方、SUS403については、市販の厚さ0.2mmの冷間圧延鋼板を出発材料とし、前熱処理により窒素吸収を行って、次いで最終熱処理により窒化物析出を伴う焼き入れを行い、硬度をHv380前後となるように調整した。得られた鋼板を同じく図3に示す形状に成形した。
なお、301L材には粒成長の抑制に有効と考えられるNb窒化物を析出させるため、微量のNbを添加した。SUS301、301L、316、430鋼はt1.2mmの冷間圧延後に素材を採取し、実験室レベルの設備を用いて前熱処理、t0.5mm前後へ冷間圧延、最終熱処理、t0.2mm前後への調質圧延を施した。SUS403鋼はt0.2mmの冷間圧延後に素材を採取し、前熱処理、最終熱処理を施した。その後、全てを図3に示す形状に加工した。
試験片は最終熱処理後に採取し、板表面近傍部での均一微細に析出した窒化物の有無、板表面近傍部および板厚中心部でのマトリックスの結晶粒度を調査した。
また、図3に示す形状への加工後に採取し、曲げR部表面での割れの有無、疲労特性、耐食性を調査した。なお、図3に示す形状への加工前の試験片の硬度は鋼種毎に統一した。具体的にはSUS301、SUS301LがHv460、SUS316がHv360、SUS430がHv280、SUS403がHv380の前後となるように調整した。
前熱処理の雰囲気は、AX:75%H2+ 25%N2 、 AX’: 50%H2 + 50%N2 であった。
発明材1〜14は窒化物の分散した板表面近傍部の結晶粒度が板厚中心部に比べて1以上大きく(結晶粒径が微細であり)、比較材15〜21に対して同様の硬度(強度)を維持した上で優れた加工性、疲労特性を示し、耐食性も同等以上となった。
具体的に説明すると、発明材3より最終熱処理の温度を前熱処理に比べて50℃低下させることで、板表面近傍部は板厚中心部に比べて高濃度の窒化物が分散し、粒度で1以上大きく(粒径が微細化)なる。また、N2:H2のガス比率を25:75としたAXガス、50:50としたAX’ガス(発明材 8、11)にて露点を−40℃(発明材 9)以下とすることで、同様の組織が得られる。すなわち、前熱処理は加熱温度1000〜1200℃かつ窒素成分を含有する雰囲気ガスの露点を−40℃以下とすることで必要な窒素の吸収がなされると推定される。なお、板表面近傍部と板厚中心部の結晶粒度の差は基本的には最終熱処理温度の低下に対応して増加すると考えられる。
これに対し、同一条件で前熱処理を施した発明材に対して、前熱処理と同じ温度で最終熱処理した比較材は窒化物が析出せず、結晶粒の微細化が認められない(301の発明材1と比較材15、301Lの発明材6と比較材18、316の発明材12と比較材19、430の発明材13と比較材20、403の発明材14と比較材21)。また、加工性、疲労特性に劣り、耐食性も同等以下である。更に、前熱処理時の雰囲気ガスに窒素成分を含有しない比較材16、酸化皮膜の形成が懸念される露点−30℃の比較材17では充分な窒素吸収がなされないと考えられ、最終熱処理温度を低下しても窒化物が析出せず、板表面近傍部の結晶粒が微細化しない。
ここで、上記の試験方法について補足説明する。
窒化物有無:
最終焼鈍後の試験片について、SEM (Scanning Electron Microscope)を用いて、板表面部と板厚中心部での析出物の有無を観察した。また、付属の分析機を用いて、窒素の有無を確認した。その後、有と判定した試験片について、TEM (Transmission Electron Microscope)を用いて、板表面部と板厚中心部より採取した母相を腐食除去後の抽出(析出)物によるレプリカを観察し、平均的部位の写真を撮影した。なお、抽出物の同定は電子線回折での構造解析により実施した。
窒化物の有無の判断は次のようにして行った。
◎: 板表面近傍部に直径10nm以上の窒化物が100μm2 当たり200個以上、かつ、中厚部の2倍以上の高濃度で分布
○: 板表面近傍部に直径20nm以上の窒化物が100μm2 当たり200個以上、かつ、中厚部の2倍以上の高濃度で分布
×: 板全体に微細、一定かつ低い濃度で窒化物が分布
××: なし
結晶粒径:
最終焼鈍後の試験片について、光学顕微鏡、SEMを用いて、板表面部と板厚中心部での組織を観察した。また、一部試験片についてはTEMを用いて、板表層部と板厚中心部より作成した薄膜の組織を観察した。そして、各々で平均的な組織の写真を撮影し、結晶粒径、結晶粒度を測定した。
硬度:
ビッカース硬度計を用いて、板表面を加重9.8Nで測定し、測定数(n)=5での最大、最少を除く中央3点での平均値を算出した。
曲げR部表面割れ:
図3に示す形状に加工した試験片について、SEMを用いて、曲げR外周部表面を観察し、シワ、き劣(微少な割れ)の有無を確認した。
疲労特性:
図3に示す形状に加工した試験片について、繰返し曲げ試験機を用いて、鋼種毎に一定振幅での107回繰返し後の破断有無を○(無)、×(有)で評価した。
耐食性:
図3に示す形状に加工した試験片について、JIS-Z-2371に準じて塩水噴霧試験を実施し、レイティングNo.により評価した。
Figure 0004325522
Figure 0004325522
Figure 0004325522
前熱処理後の表3−本発明材11のEPMAでの窒素のライン分析結果を示す図である。 図2(a) 、(b) は、それぞれ最終熱処理後の表3−本発明材11の板表面近傍部と板厚中心部でのTEM 組織写真である。 曲げ加工試験片を示す模式図である。

Claims (5)

  1. ステンレス鋼板の鋼組成が、JIS G 4305に規定されるSUS301、SUS301L、SUS316、SUS430、またはSUS403鋼の組成からなり、少なくとも板表面から板厚方向3μm以内の領域において、粒径10nm以上200nm以下の窒素化合物が100μm2 当たりに200個以上、且つ板厚中心部の前記大きさの窒素化合物の個数に比較して2倍以上存在し、板表面から板厚方向3μm以内の領域におけるマトリックスの粒度番号が11以上であり、且つ前記粒度番号が板厚中心部におけるマトリックスの粒度番号に比較して、1以上大きいことを特徴とするステンレス鋼板。
  2. 前記窒素化合物の板中心方向への濃度勾配が暫減的である請求項1記載のステンレス鋼板。
  3. 前記鋼板を構成する組織が加工組織からなることを特徴とする、請求項1または2に記載のステンレス鋼板。
  4. 更に、Ti、Nb、V の1種以上を合計で、0.02〜0.5質量%含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載されるステンレス鋼板の製造方法であって、冷間圧延鋼板に焼鈍を施す工程を含み、前記焼鈍を施す際に下記の工程を含むことを特徴とする、ステンレス鋼板の製造方法。
    (1)5体積%以上の窒素を含み、露点が−40℃以下である雰囲気中で、1000〜1200℃の温度範囲で、20秒以上の焼鈍を行って、前記冷間圧延鋼板に窒素を吸収させる前熱処理工程、次いで
    (2)前記前熱処理工程後に、前記前熱処理工程より50℃以上低い温度で(但し、650℃以下を除く)焼鈍を行って、前記前熱処理工程後の冷間圧延鋼板に窒化物を析出させることによって板表面近傍部におけるマトリックスの結晶粒を微細化する最終熱処理工程。
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