以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
〔第1の実施の形態〕
複合型マイクロ反応装置の製造方法について説明する。
図1に示すように、発熱電気抵抗体である電熱パターン6を反応器1の表面に形成する。具体的には、反応器1の複数面のうち1つの平坦な面1aに電熱膜を成膜し、これらの電熱膜をフォトリソグラフィー法、エッチング法を用いて形状加工する。これにより、電熱パターン6を形成する。電熱パターン6は所定の電圧が印加されると発熱する特性を持ち、電熱パターン6自体の温度に依存して電気抵抗が変化する特性を持つ。そのため、電熱パターン6は、抵抗値の変化から温度の変化を読み取る温度センサとしても機能する。電熱パターン6は、抵抗値の再現性の良い金(Au)を有する発熱層と、発熱層に接し且つ発熱層が熱拡散しにくいタングステン等の高融点金属を含む拡散抑制層と、拡散抑制層と反応器1との間の密着性を向上するために介在された、タンタル、モリブデン、チタン、クロム等の金属を含む密着層と、を備える。また、反応器1が導電性部材である場合、電熱パターン6を反応器1と電気的に絶縁するために、反応器1の面1aに絶縁膜が形成されていればよく、反応器1が絶縁部材である場合、面1aの表面にさらに絶縁膜を介在させる必要はない。
電熱パターン6を形成するに際して、電熱パターン6の両端部が他の部分よりも幅広くなるよう電熱パターン6の両端部を端子部7,8にする。端子部7,8は、略矩形状で電熱パターン6が形成された面1aの縁近傍にある。
反応器1は、溝又は凹部が形成された複数の基板を重ねて接合し、溝又は凹部を基板で蓋したものである。溝又は凹部が基板で蓋されることで、その溝が基板間の接合部において反応炉となる流路となり、或いは凹部が基板間の接合部において内部空間となる。反応器1の主たる材料はガラス、セラミック、金属等から適宜選択することができる。
反応器1の溝又は凹部の壁面には、反応器1の用途に応じて触媒が担持されていても良い。例えば、反応器1を燃料電池に供給する水素を改質する水素改質器として用いる場合には、流路、内部空間を規定する溝や凹部の壁面に改質触媒(例えば、Cu/ZnO系触媒)を担持させ、反応器1を一酸化炭素除去器として用いる場合には、溝や凹部の壁面に一酸化炭素選択酸化触媒(例えば、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム)を担持させ、反応器1を気化器として用いる場合には、触媒を担持させない。これら触媒は、直接反応器1に固定化されても良く、また反応器1の溝又は凹部に被膜された酸化アルミニウム等の担体によって担持されていても良い。
また、複数の種類の触媒を反応器1の溝や凹部に担持させて、反応器1が触媒の種類に応じた複数種類の反応を引きおこす反応器の複合体でも良い。例えば、反応器1が、ある流路が燃料と水から水素を生成する改質器の反応炉になり、後続する流路が改質器で生成された生成物中の一酸化炭素を酸化させることで除去する一酸化炭素除去器の反応炉になるような複合した複合体であっても良い。
なお、図1では、反応器1は2枚の基板2,3を接合したものであり、反応器1の側面には内部の流路、内部空間に通じる導入口4及び排出口5が形成されている。この場合、基板3が第1基板に対応し、後述するヒータ封止基板20が第2基板に対応する。
電熱パターン6を形成する工程は、反応器1を組み立てる前に行っても後に行っても良い。即ち、最上部又は最下部の基板に電熱パターン6を形成した後に、最下部又は最上部の基板を接合しても良いし、最下部又は最上部の基板を接合した後に、その基板の接合面と反対面に電熱パターン6を形成しても良い。電熱パターン6は、所定温度に加熱されるべき箇所に重なるように配置されている。
電熱パターン6を形成した後、端子部7,8の部分を除いた電熱パターン6の上に保護絶縁膜(例えば、窒化シリコン、酸化シリコン)を被覆する。そして、端子部7にリード線9の端部を配置し、その上から絶縁材を挟んだ電極で加圧し、そこに通電することによる抵抗発熱を利用して抵抗溶接する。そして、端子部8にリード線10の端部を配置し、その上から絶縁材を挟んだ電極で加圧し、そこに通電することによる抵抗発熱を利用して抵抗溶接する。リード線9,10には、コバール線、鉄ニッケル合金線、ジュメット線(鉄ニッケル合金の芯材を銅で被覆したもの)等を用いることができる。なお、リード線9,10を接合する工程は、絶縁膜をパターニングする前でも後でも良い。
一方、図2、図3に示すようなヒータ封止基板20を準備する。このヒータ封止基板20の一方の面20aに、電熱パターン収納室となるジグザグ状の溝21をサンドブラスト法又はフォトリソグラフィー・エッチング法により凹設する。溝21を凹設するに際して、溝21の一端部をヒータ封止基板20の縁まで連ならせ、ヒータ封止基板20の一方の側端面20bにおいて溝21の一端部21aを開口させ、溝21の他端部をヒータ封止基板20の縁まで連ならせ、ヒータ封止基板20の側端面20bにおいて溝21の他端部21bを開口させる。また、この下面20aの縁部の近傍に、溝21と独立して2つの略矩形状の端子部収納室23,24を凹設し、端子部収納室23,24と溝21の間を連通する連通溝25,26を凹設し、端子部収納室23,24とヒータ封止基板20の縁面の間を連通する通し溝27,28を凹設し、通し溝27,28の端部をヒータ封止基板20の側端面20bに対向する側端面20cにおいて開口させる。連通溝25,26の幅は、いずれも電熱パターン6の配線幅よりやや長く、それぞれ端子部収納室23,24の幅より十分短く、それぞれ端子部7,8の幅より十分短い。通し溝27,28の幅は、それぞれリード線9及びリード線10の配線幅よりやや長く、それぞれ端子部収納室23,24の幅より十分短く、それぞれ端子部7,8の幅より十分短い。端子部収納室23,24の幅は、それぞれ端子部7,8の幅よりやや長く、端子部収納室23,24の長さは、それぞれ端子部7,8の長さよりやや長いため、端子部収納室23,24は、端子部7,8を内部に収容できる。端子部7,8は例えば楕円形状のように矩形以外でもよく、端子部収納室23,24は、端子部7,8を収容できるように端子部7,8より一回り大きい寸法であれば形状は限定されない。このような溝21、端子部収納室23,24、連通溝25,26及び通し溝27,28によってひとまとまりの凹部が形成される。ヒータ封止基板20の主たる材料は反応器1に合わせてガラス、セラミック、金属等から適宜選択することができる。
溝21が形成された面20aは、反応器1の電熱パターン6が形成された面1aに接合される面である。図4に示すようにヒータ封止基板20と反応器1の接合面に対して垂直な方向に投影視して、端子部7が端子部収納室23の縁の内側に配置され、端子部8が端子部収納室24の縁の内側に配置され、電熱パターン6が溝21から連通溝25,26にかけてこれらの縁の内側に配置されるよう、電熱パターン6や溝21、端子部収納室23,24、連通溝25,26、通し溝27,28の形状を決める。なお、通し溝27,28は直線状でなくても良く、屈曲した形状であっても良い。
次に、溝21の壁面に、燃焼触媒(例えば、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム)を担持させる。燃焼触媒は、燃焼ガス(例えば、水素ガス、メタノールガス、エタノールガス、ジメチルエーテルガス等)を酸化させることで燃料ガスを燃焼させる触媒である。
次に、反応器1の面1aとヒータ封止基板20の面20aを貼りあわせて燃焼触媒を備えた燃焼器が形成される。電熱パターン6を溝21、連通溝25,26に、端子部7を端子部収納室23に、端子部8を端子部収納室24に収容するとともに、通し溝27,28にリード線9,10を嵌め込むように反応器1とヒータ封止基板20の位置合わせを行い、電熱パターン6をヒータ封止基板20で覆うようにする。そして、反応器1の面1aをヒータ封止基板20の面20aに接合する。接合は、反応器1とヒータ封止基板20の材料に応じて適宜陽極接合や蝋付け等を選択することができる。ヒータ封止基板20を反応器1に接合することによって溝21、端子部収納室23,24、連通溝25,26及び通し溝27,28が蓋される。端子部収納室23,24内においてリード線9,10を弓なり状に湾曲させたり、複数回折り曲げたり、波形状に折り曲げたりすることで、リード線9,10を端子部収納室23,24内において撓ませると良い。このようにリード線9,10を撓ませることで、端子部7,8から面20aの左縁までのリード線9,10の長さを端子部7,8から面20aのまでの直線的距離の1.5倍以上とする。
次に、挿入されたリード線9,10が端子部7,8に接合された状態で、側端面20cにおける通し溝27,28の開口に封着剤40(例えば、低融点ガラス封着剤)に注入して、通し溝27,28の開口を封着剤40でシールする。封着剤の注入に際しては、封着剤によって通し溝27,28の開口が完全に塞がれて気密性を確保するとともにリード線9,10に応力が加わったときにリード線9,10が容易に撓むことができるようなスペースを維持するために端子部収納室23,24が完全に埋まらないようにする。封着剤としてはリード線9,10の熱膨張係数に略等しい材料が望ましく、例えばリード線9,10がコバール線の場合、封着剤を低融点ガラス封着剤が好ましい。反応器1が金属であれば、膨張係数が反応器1に近似した反応器1の金属よりも低融点の材料が好ましい。
次に、導入口4、排出口5それぞれにガラス、セラミック、金属等の反応器1に合わせた材料からなる配管を嵌め込み、溝21の両端部における開口にもそれぞれ配管を嵌め込み、これら配管を反応器1やヒータ封止基板20に接合する。配管は、反応装置で反応される反応材料を導入する管及び反応によって生じた生成材料を導出する管である。そして、10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧された雰囲気の製造装置炉内で、反応器1、ヒータ封止基板20を、配管の材料に合わせてガラス、セラミック、金属等からなる断熱パッケージ内に収容し、導入口4、排出口5、溝21の開口に嵌め込んだ配管を断熱パッケージに貫通させてから配管が断熱パッケージを貫通した箇所を封着剤で封止し、更にリード線9,10も断熱パッケージに貫通させてリード線9,10が断熱パッケージを貫通した箇所を封着剤で封止する。このため、断熱パッケージ内の圧力を10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧に維持できる。このような低圧雰囲気は熱伝搬性が低く、反応器1及びヒータ封止基板20を保温する効果を奏する。また、断熱パッケージの内面には、Au、Ag、Alといった赤外線領域で断熱パッケージよりも反射率の高い赤外線反射膜を成膜しておくと、熱効率が良い。
この複合型マイクロ反応装置においては、リード線9,10の間に電圧を印加することによって、電熱パターン6が発熱する。このとき、燃焼ガスを酸素(空気)とともに配管を介して一端部21a及び他端部21bの一方から溝21の流路に送り込むことによって燃焼ガスが燃焼触媒により燃焼し、燃焼熱が発する。燃焼された排ガスは、一端部21a及び他端部21bの他方から排出される。配管を介して反応物を導入口4に送り込むことによって反応物が反応器1内の流路や内部空間を流動し、反応物がリード線9,10の熱や溝21での燃焼熱により加熱されて反応物の反応が起こる。例えば、反応器1内の触媒が改質触媒であり、反応物としてメタノールガスと水の混合気を供給した場合、次式(1)、(2)のような化学反応が起こる。また、反応器1内の触媒が一酸化炭素除去触媒であり、反応物として水素ガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス(次式(1)、(2)の反応により生成されたもの)等を供給した場合、次式(3)のように一酸化炭素が選択的に酸化される。また、反応器1内における反応は化学反応のみならず、状態変化を伴う反応でも良い。例えば、反応器1内に触媒が担持されておらず、反応物として液体(例えば、水とメタノールの混合液)を供給した場合、液体が蒸発する。また次式(4)のように燃焼ガス及び酸素を、表面に燃焼触媒が担持された溝21によって形成された流路に送り込むことによって燃焼ガスが燃焼触媒により燃焼し、燃焼熱が発する。
CH3OH+H2O→3H2+CO2・・・(1)
2CH3OH+H2O→5H2+CO+CO2・・・(2)
2CO+O2→2CO2・・・(3)
2CH3OH+3O2→2CO2+4H2O・・・(4)
このように本実施形態によれば、反応器1の接合面1aに電熱パターン6が形成され、その電熱パターン6がヒータ封止基板20の溝21に収容された状態でヒータ封止基板20が反応器1に接合されているので、電熱パターン6や反応器1に接するように設けられた燃焼器から発した熱輻射が直接溝21まで伝搬され、或いは断熱パッケージの内面に設けられた赤外線反射膜によって反射されて溝21に伝搬される。そのため、熱が、反応器1内における反応物の反応や、溝21内における燃焼ガスの燃焼に効率よく用いられる。
また、反応器1の表面に形成された電熱パターン6がヒータ封止基板20の溝21、連通溝25,26等に収容されるので、ヒータ封止基板20と反応器1の密着度が高まる。また、通し溝27,28がヒータ封止基板20の縁まで連なってその縁において開口し、リード線9,10が通し溝27,28を通っているので、ヒータ封止基板20と反応器1の密着度がリード線9,10によって低下することがない。このようにヒータ封止基板20と反応器1の密着度が高いので、電熱パターン6の熱や溝21内の燃焼ガスが漏れない。
また、通し溝27,28の端の開口が封着剤によってシールされているので、電熱パターン6で発した熱が逃げず、その熱が反応器1における反応物の反応に効率よく用いられる。また、溝21に燃焼ガスが供給されるので、電熱パターン6の熱が燃焼ガスの触媒燃焼にも利用される。特に電熱パターン6がその溝21内において露出しているから、電熱パターン6の発熱を燃焼ガスの触媒燃焼に効率よく用いることができる。そして、通し溝27,28の端の開口が封着剤によってシールされているから、溝21に供給された燃焼ガスがその開口からリークしない。
〔第2の実施の形態〕
第2実施形態について説明する。
図5は燃料電池に供給する水素を改質する複合型マイクロ反応装置100の外観斜視図であり、図6は破断して示した複合型マイクロ反応装置100の正面断面図である。
図5及び図6に示すように、ガラス製又は金属製の断熱パッケージ150は中空を有した六面体状の箱体であり、断熱パッケージ150の内壁面には、赤外線のような熱源となる電磁波に対して断熱パッケージ150よりも高い反射性の赤外線反射膜(例えば、Au、Ag、Al)が成膜され、断熱パッケージ150の中空の圧力が10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧された状態に保たれている。
また、断熱パッケージ150と同じ材料で形成された供給排出部材151が断熱パッケージ150を貫通している。この供給排出部材151内には、改質燃料ガス供給用の燃料供給流路と、空気供給用の2つの吸気流路と、燃焼ガス供給用の燃焼ガス供給流路と、生成ガス排出用の生成ガス排出流路と、燃焼排ガス排出用の排ガス排出流路とが形成されている。
また、リード線109〜112が断熱パッケージ150を貫通している。リード線109〜112にはコバール線、鉄ニッケル合金線又はジュメット線が用いられている。供給排出部材151、リード線109〜112が断熱パッケージ150を貫通した箇所は封着剤によってシーリングされている。
断熱パッケージ150内には、第1基板としての下基板103と上基板102を接合してなる反応器101が収容され、更に反応器101の下面、即ち下基板103の下面に接合した第2基板としてのヒータ封止基板120も断熱パッケージ150内に収容されている。なお、反応器101が改質器と一酸化炭素除去器の複合体となり、下基板103に接合した状態のヒータ封止基板120が燃焼器となる。このようにリード線109〜112のうち、燃焼器内に配置されている部分は、燃焼器によって加熱されるのに対し、燃焼器外、特に断熱パッケージ150から外部に露出されている部分は、燃焼器で加熱される温度より低いため、燃焼器内の熱がリード線109〜112を介して燃焼器の外に漏洩しやすい。このため、リード線109〜112の直径は、熱効率の観点から0.2mm以下として熱容量及び断面積を小さくすることが好ましい。
図7は、図6の切断線VII−VIIに沿った面の上基板102の矢視断面図である。図7に示すように、上基板102の両面のうち下基板103との接合面には、いずれも溝部又は凹部である、燃料供給流路部161と、改質反応炉となる改質流路部162と、連通溝163と、空気供給流路部164と、一酸化炭素除去反応炉となる一酸化炭素除去流路部165とが凹設されている。更に、上基板102の中央部において厚さ方向に貫通した矩形状の貫通孔166が形成されている。配管と連結される上基板102に設けられた溝等の複数の端部は、上基板102の一方の縁102aにのみ形成されている。燃料供給流路部161が、上基板102の縁102aから縁102aに隣接する縁102bにかけて沿うように形成され、燃料供給流路部161の一端部が上基板102の縁102aまで連なり、燃料供給流路部161の他端部が改質流路部162の一端部に連なっている。改質流路部162は、貫通孔166の左側においてジグザグ状に形成されている。連通溝163は貫通孔166の後ろ側において上基板102の縁102bに対向する縁102cに沿って形成され、連通溝163の一端部が改質流路部162の他端部に連なり、連通溝163の他端部が空気供給流路部164及び一酸化炭素除去流路部165に合流している。空気供給流路部164は上基板102の縁102aから縁102cにかけて沿うように形成され、空気供給流路部164の一端部が上基板102の縁102aまで連なり、空気供給流路部164の他端部が連通溝163及び一酸化炭素除去流路部165に連なっている。一酸化炭素除去流路部165は貫通孔166の右側においてジグザグ状に形成され、一酸化炭素除去流路部165の一端部が上基板102の縁102aまで連なり、一酸化炭素除去流路部165の他端部が連通溝163及び空気供給流路部164に連なっている。なお、空気供給流路部164の一端部及び一酸化炭素除去流路部165の一端部は、ともに供給排出部材151の一部と嵌合し、さらに上基板102の縁102aには、供給排出部材151に嵌合する溝201,205,206が凹設されている。
図8は、図6の切断線VIII−VIIIに沿った面の下基板103の矢視投影断面図である。図8に示すように、下基板103の両面のうち上基板102との接合面には、いずれも溝部又は凹部である、燃料供給流路部171と、改質反応炉となる改質流路部172と、連通溝173と、空気供給流路部174と、一酸化炭素除去反応炉となる一酸化炭素除去流路部175とが凹設されている。更に、下基板103の中央部において矩形状の貫通孔176が形成されている。下基板103と上基板102の接合面に関して、燃料供給流路部171と燃料供給流路部161は互いに面対称であり、同様に、改質流路部172と改質流路部162が、連通溝173と連通溝163が、空気供給流路部174と空気供給流路部164が、貫通孔176と貫通孔166が互いに面対称である。下基板103は、上基板102の縁102a、縁102b、縁102c、縁102dに対応する縁103a、縁103b、縁103c、縁103dが形成されている。一酸化炭素除去流路部165の一端部が上基板102の縁102aまで連なっているのに対して、一酸化炭素除去流路部175の一端部が、上基板102の縁102aに対応する下基板103の縁103aに達していないことを除き、一酸化炭素除去流路部175と一酸化炭素除去流路部165は、互いに面対称である。また、下基板103の縁103aには、供給排出部材151に嵌合する切り欠き211〜216が凹設されている。燃料供給流路部171、空気供給流路部174、一酸化炭素除去流路部175は下基板103の縁103aまで連なっていないが、燃焼供給流路部171の端部が切欠き212の近くに、空気供給流路部174の端部が切欠き214の近くに、一酸化炭素除去流路部175が切欠き213の近くにある。
改質流路部162,172の壁面には、アルミナを担体として改質触媒(例えば、Cu/ZnO系触媒)が担持され、一酸化炭素除去流路部165,175の壁面には、アルミナを担体として一酸化炭素選択酸化触媒(例えば、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム)が担持されている。なお、これら触媒は、アルミナゾルを塗布した後にウォッシュコート法で形成したものである。
上基板102が下基板103に接合されており、燃料供給流路部171と燃料供給流路部161が重なっており、同様に、改質流路部172と改質流路部162が、連通溝173と連通溝163が、空気供給流路部174と空気供給流路部164が、一酸化炭素除去流路部175と一酸化炭素除去流路部165が、貫通孔176と貫通孔166とが重なっている。
上基板102と下基板103は例えば、ガラス材料からなり、特に熱膨張係数が33×10-7/℃程度で可動イオンとなるアルカリ金属(例えば、Na、Li等)を含有したガラス材料からなる。また、上基板102と下基板103が陽極接合法により接合する場合は、上基板102と下基板103のどちらか一方の接合面には陽極接合のために他方のガラスに含まれる酸素原子と結合する金属膜又はシリコン膜を有する陽極接合用膜が気相成長法(例えば、スパッタリング法、蒸着法)により成膜されている。なお、上基板102と下基板103のうちのどちらか一方がガラス材料ではなく金属又はシリコンからなるものとしても良い。上基板102には、縁102aに対向する縁102dと、縁102cとの間の角部を切り欠いた面取縁102eが形成されており、下基板103の接合面に陽極接合用膜が成膜されている場合、この陽極接合用膜が面取縁102eによって一部露出されるので陽極接合時に電圧を印加する電極端子に容易に接続しやすくなる。これにより、上基板102と下基板103が容易に陽極接合を行うことができる。
上基板102と下基板103の接合体である反応器101のうち、貫通孔166,176よりも左側に位置する改質流路部162及び改質流路部172で囲まれた流路での部分が、燃料と水の混合気から水素を生成する改質反応が行われる改質器となり、貫通孔166,176よりも右側に位置する一酸化炭素除去流路部165及び一酸化炭素除去流路部175で囲まれた流路での部分が、その改質器で生成された生成物の中に含まれる一酸化炭素を優先的に酸化させることで除去する一酸化炭素除去器となる。具体的には改質流路部162及び改質流路部172で囲まれた流路で、燃料と水の混合気から水素を生成する改質反応が行われ、一酸化炭素除去流路部165及び一酸化炭素除去流路部175で囲まれた流路で、改質反応時に生成された生成物の中に含まれる一酸化炭素を酸化させる。
図9は、下基板103の両面のうちヒータ封止基板120との接合面を示した図面であって、図6の切断線IX−IXに沿った面の矢視図である。図9に示すように、下基板103の両面のうちヒータ封止基板120との接合面には、電熱パターン106及び電熱パターン136が形成されている。また、電熱パターン106の形成面に対して垂直な方向に投影視して、電熱パターン106が改質流路部172に重なり、電熱パターン136が一酸化炭素除去流路部175に重なっている。電熱パターン106の両端部の端子部107,108が他の部分よりも幅広く、電熱パターン136の両端部の端子部137,138が他の部分よりも幅広い。端子部107,108は、縁103aに対向する縁103d近傍にあり、端子部137,138は縁103a近傍にあり、端子部107,108から縁103dまでの距離は2〜4mmであり、端子部137,138から縁103aまでの距離は2〜4mmと短くすることで下基板103のヒータ封止基板120との接合面で電熱パターン106を広く引き回すことができる。端子部107にリード線109が接合され、端子部108にリード線110が接合され、端子部137にリード線111が接合され、端子部138にリード線112が接合されている。接合方法としては、リード線を端子部に接するように配置させてから、絶縁材を挟んだ電極で加圧し、そこに通電することによって生じる抵抗発熱を利用して抵抗溶接することで、端子部107,108をそれぞれリード線109,110と電気的に接続させる。そして、リード線111及びリード線112をそれぞれ端子部137、端子部138に接するように配置させてから、リード線111及びリード線112に電圧を印加し、電熱パターン136及び端子部137,138を通電して加熱する抵抗溶接によって、端子部137,138をそれぞれリード線111,112と電気的に接続するように接合する。電熱パターン106,136は、端子部107,108,137,138の部分を除いて保護絶縁膜によって被覆されている。なお、電熱パターン106及び電熱パターン136は、成膜時に下基板103に応力を加わってしまい、応力が大きすぎると下基板103が歪んでしまい接合が困難になる。電熱パターン106及び電熱パターン136の厚さは、下基板103に加わる応力を抑えるために絶縁膜の厚さを含めて600nm以下と薄く成膜されることが望ましい。また、端子部107,108のサイズは、接合しやすさから長さ、幅が1mm×3mmであるのが望ましく、端子部137,138のサイズは、幅、長さが1mm×3mmであるのが望ましい。なお、下基板103が金属板等のように導電性を有する場合には、電熱パターン106,136の下層に絶縁膜が成膜されている。この絶縁膜は、下基板103におけるヒータ封止基板120との接合面には形成されていない。下基板103における改質流路部172が設けられている部分の厚みは、0.2mm〜0.3mm程度に設定されている。
図10は、図6の切断線X−Xに沿った面の矢視断面図である。図10に示すように、ヒータ封止基板120の両面のうち下基板103との接合面には、いずれも溝部又は凹部であり、電熱パターン106を収納する電熱パターン収納室であり、燃焼反応炉となる燃焼流路部121と、燃焼流路部121と独立して端子部収納室123,124と、燃焼流路部121と端子部収納室123,124との間を連通する連通溝125,126と、リード線を外部に引き出す通し溝127,128と、電熱パターン136を収納する電熱パターン収納室であるヒータ収容溝129と、燃焼燃料供給流路部131と、空気供給流路部132と、連通溝133と、排ガス排出流路部134とが凹設されている。ヒータ封止基板120は、下基板103の縁103a、縁103b、縁103c、縁103dに対応する縁120a、縁120b、縁120c、縁120dが形成されている。更に、ヒータ封止基板120の中央部において矩形状の貫通孔156が形成されている。また、ヒータ封止基板120の縁120aには、供給排出部材151に嵌合する溝222,223,224が凹設されている。ヒータ封止基板120には、ヒータ収容溝129の両端からヒータ封止基板120の縁120aまで連通する通し溝141、142が設けられている。なお、燃焼流路部121、端子部収納室123,124、連通溝125,126、通し溝127,128、ヒータ収容溝129、燃焼燃料供給流路部131、空気供給流路部132、連通溝133、排ガス排出流路部134の深さが約5μmであるのが望ましい。上基板102、下基板103及びヒータ封止基板120は、互いに同一形状、同一寸法であり、上基板102の縁102aの位置は、下基板103の縁103aの位置、ヒータ封止基板120の縁120aの位置に合わせており、上基板102の縁102bの位置は、下基板103の縁103bの位置、ヒータ封止基板120の縁120bの位置に合わされており、上基板102の縁102cの位置は、下基板103の縁103cの位置、ヒータ封止基板120の縁120cの位置に合わせており、上基板102の縁102dの位置は、下基板103の縁103dの位置、ヒータ封止基板120の縁120dの位置に合わされている。
排ガス排出流路部134がヒータ封止基板120の縁120aから縁120bにかけて沿うように形成され、排ガス排出流路部134の一端部がヒータ封止基板120の縁120aまで連なり、排ガス排出流路部134の他端部が燃焼流路部121の一端部に連なっている。燃焼流路部121は、貫通孔156の左側においてジグザグ状に形成されている。連通溝133は貫通孔156の周縁の一辺側においてヒータ封止基板120の縁120cから縁120aにかけて沿うように形成され、連通溝133の一端部が燃焼流路部121の他端部に連なり、連通溝133の他端部が燃焼燃料供給流路部131及び空気供給流路部132に合流している。燃焼燃料供給流路部131の他端部がヒータ封止基板120の縁120aまで連なり、空気供給流路部132の他端部がヒータ封止基板120の縁120aまで連なる。端子部収納室123,124はヒータ封止基板120の縁120d近傍に凹設され、端子部収納室123,124と燃焼流路部121が連通溝125,126によって通じ、端子部収納室123,124とヒータ封止基板120の縁120dが通し溝127,128によって通じ、通し溝127,128の端部がヒータ封止基板120の側端面において開口している。このように燃焼流路部121、端子部収納室123,124、連通溝125,126、通し溝127,128、燃焼燃料供給流路部131、空気供給流路部132、連通溝133及び排ガス排出流路部134によってひとまとまりの凹部が形成される。
溝206、切欠き216、燃焼燃料供給流路部131は、上基板102、下基板103及びヒータ封止基板120を重ね合わせることによって燃焼燃料供給口となり、溝205、切欠き215、空気供給流路部132は、上基板102、下基板103及びヒータ封止基板120を重ね合わせることによって燃焼器の空気供給口となり、空気供給流路部164の一端部、切欠き214、溝224は、上基板102、下基板103及びヒータ封止基板120を重ね合わせることによって一酸化炭素除去器の空気供給口となり、一酸化炭素除去流路部165の一端部、切欠き213、溝223は、上基板102、下基板103及びヒータ封止基板120を重ね合わせることによって水素排出口となり、燃料供給流路部161の一端部、切欠き212、溝222は、上基板102、下基板103及びヒータ封止基板120を重ね合わせることによって燃料供給口となり、溝201、切欠き211、排ガス排出流路部134の一端部は、上基板102、下基板103及びヒータ封止基板120を重ね合わせることによって燃焼器の排ガス排出口となる。供給排出部材151は、燃焼燃料供給口、燃焼器の空気供給口、一酸化炭素除去器の空気供給口、水素排出口、燃焼器の排ガス排出口にそれぞれ挿入される配管部151a、151b、151c、151d、151eが設けられている。配管部151a、151b、151c、151d、151eは、内径が0.8mm〜1.2mm、厚さ方向の外径が、1.4mm〜1.6mmに設定されている。
ヒータ収容溝129は貫通孔156の右側においてジグザグ状に形成され、ヒータ収容溝129の一端部が突き当たった状態とされ、ヒータ収容溝129の他端部が二股に分かれてヒータ封止基板120の縁120aまで連なっている。
接合面に関して、燃焼流路部121と改質流路部172は互いにほぼ面対称であり、ヒータ収容溝129と一酸化炭素除去流路部175がほぼ面対称である。
燃焼流路部121の壁面には、アルミナを担体として燃焼触媒(例えば、白金)が担持されている。
ヒータ封止基板120も特に可動イオンとなるアルカリ金属(例えば、Na、Li等)を含有したガラス材料からなる。また、ヒータ封止基板120と下基板103が陽極接合法により接合するために、ヒータ封止基板120と下基板103のどちらか一方の接合面には金属膜又はシリコン膜が気相成長法(例えば、スパッタリング法、蒸着法)により成膜されている。なお、ヒータ封止基板120、上基板102及び下基板103の材料としてパイレックス(登録商標)ガラスを用いた場合、熱膨張率は33×10-7/℃である。ヒータ封止基板120には、縁120aに対向する縁120dと、縁120bとの間の角部を切り欠いた面取縁120eが形成されており、下基板103の接合面に陽極接合用膜が成膜されている場合、この陽極接合用膜が面取縁120eによって一部露出されるので陽極接合時に電圧を印加する電極端子に容易に接続しやすくなる。
下基板103とヒータ封止基板120が接合された状態では、電熱パターン106が燃焼流路部121、連通溝125,126に収納され、端子部107が端子部収納室123に収納され、端子部108が端子部収納室124に収容され、リード線109,110が通し溝127,128に嵌め込まれている。電熱パターン136がヒータ収容溝129に収容され、リード線111,112が通し溝142、141を介してヒータ収容溝129の端部に嵌め込まれている。図11に示すようにリード線110は端子部収納室124内において弧状に撓んでいる曲げ部110aを有しており、リード線109も同様に端子部収納室123内において弧状に撓んでいる曲げ部109aを有している。このようにリード線109,110がリード線109,110の長手方向と異なる方向に婉曲するように撓むことで、端子部107,108から、リード線109,110が導出している縁103d、120dまでのリード線109,110の長さが、端子部107,108から縁103d、120dまでの直線的距離の1.1倍〜5.0倍、好ましくは1.5倍となっている。
また、図11に示すように、通し溝128の開口においてリード線110の周りに封着剤140が形成され、通し溝128の開口が封着剤140により閉塞され、リード線110と通し溝128の間の隙間が封着剤140によってシールされている。同様に、通し溝127の開口においてリード線109の周りに封着剤が形成され、通し溝127の開口が封着剤により閉塞され、リード線109と通し溝127の間の隙間が封着剤によってシールされている。このため、燃焼流路部121による流路は通し溝127,128から閉塞されるので、燃焼流路部121の流体が通し溝127,128から漏洩することはない。封着剤としては下基板103、ヒータ封止基板120のいずれかの材料の膨張係数に近似していることが好ましく、下基板103、ヒータ封止基板120がともにガラス材料で形成されていれば低融点ガラス封着剤を用いると良く、金属でできていれば、ろう材として金属であってもよい。なお、リード線111,112が端子部137,138に接続している状態で、通し溝141,142が封着剤によって封止されている場合、同様にリード線111,112もそれぞれヒータ収容溝129内においてリード線111,112の長手方向と異なる方向に婉曲するように撓んでいる曲げ部を有していることが好ましい。このとき、電熱パターン136の各端部から、リード線111,112が導出している縁103a、120aまでのリード線111,112の長さが、電熱パターン136の各端部から縁103a、120aまでの直線的距離の1.1倍〜5.0倍、好ましくは1.5倍となっている。曲げ部は、封着剤での封着箇所に位置すると応力分散しにくくなるので、封着箇所以外に設けられていることが好ましい。
なお、端子部収納室124、通し溝128、連通溝126の形状を図12又は図13のように変形しても良い。図12において端子部収納室124の対角において通し溝128及び連通溝126が連なっている。リード線110は、U字状に二箇所で折れ曲がって撓んでいる曲げ部110aを有している。図13においては、通し溝128がL字状を呈し、リード線110が通し溝128においてL字状に折れ曲がって撓んでいる曲げ部110aを有している。このように通し溝128及び連通溝126は互いに、図11に示すような同一直線状に位置していない。同様に、端子部収納室123、通し溝127、連通溝125を図12、図13の端子部収納室124、通し溝128、連通溝126と同じ形状にしてもよい。
また、リード線111,112が、図12に示す形状と同様に、U字状に二箇所で折れ曲がって撓んでいる曲げ部を有するようにしても良いし、図13に示す形状と同様に、通し溝141,142が折れ曲がり、リード線111,112が通し溝142,141において折れ曲がって撓んでいる曲げ部を有していてもよい。
例えば、リード線109,110を、熱膨張係数が50×10-7/℃程度のコバール線からなる曲げ部のない直線形状とし、封着剤を、熱膨張係数が33×10-7/℃程度で低融点ガラス封着剤とした場合、複合型マイクロ反応装置100を300℃程度に加熱して反応させたところ、リード線109,110の熱膨張による応力が低融点ガラス封着剤の熱膨張による応力より大きいために、リード線109,110における封着剤での封着部に応力の歪みが集中してしまい、リード線109,110が封着剤から外れてしまうことが生じる。リード線109,110が曲げ部を有しているので熱応力が分散され、350℃まで加熱してもリード線109,110が封着剤から外れてしまうことはなかった。図12及び図13に示す構造においても同様の結果が得られた。
下基板103は、改質流路部172が設けられている部分では厚みが薄く、改質流路部172が一酸化炭素除去流路部175よりも広く形成されているために外部応力に対する強度が弱く、端子部107,108を改質流路部172の裏面に配置すると、抵抗溶接時の圧力で破壊又は変形してしまう。このため、端子部107,108は、改質流路部172の外に位置する裏面部分、具体的には下基板103において、裏面に接合されるヒータ封止基板120の端子部収納室123,124に対応する位置に配置させる。端子部収納室123,124に対応する下基板103の部位は十分厚くなっているので、抵抗溶接時の圧力によって下基板103の破壊又は変形を防止できる。なお、端子部収納室123,124を大きくしすぎると、改質流路部172から縁103dまでの距離が長くなり、改質流路部172の流路が相対的に小さくなってしまい、また小さくしすぎると端子部107,108が小さくなり溶接しにくくなるので、端子部を1mm×3mmとし、改質流路部172から縁103dまでの距離を2mm〜4mmとしている。
そして、リード線109、110は、曲げ部が複数あってもよい。
次に、複合型マイクロ反応装置100の製造方法について説明する。
まず、上基板102、下基板103、ヒータ封止基板120を準備し、これらの接合面に必要に応じて金属膜又はシリコン膜を気相成長法により成膜する。次に、下基板103の下面に電熱膜を成膜し、その電熱膜をフォトリソグラフィー・エッチング法により形状加工することによって、電熱パターン106,136をパターニングする。そして、端子部107,108,137,138を除いて電熱パターン106,136を絶縁膜によって被覆する。次に、上基板102に、いずれも溝部又は凹部である、燃料供給流路部161、改質流路部162、連通溝163、空気供給流路部164、一酸化炭素除去流路部165を形成し、さらに貫通孔166及び溝201,205,206を形成する。下基板103にも、いずれも溝部又は凹部である、燃料供給流路部171、改質流路部172、連通溝173、空気供給流路部174、一酸化炭素除去流路部175を形成し、さらに貫通孔176及び切欠き211〜216を形成する。また、ヒータ封止基板120に、燃焼流路部121、端子部収納室123,124、連通溝125,126、通し溝127,128、ヒータ収容溝129、燃焼燃料供給流路部131、空気供給流路部132、連通溝133、排ガス排出流路部134、通し溝141,142及び溝222,223,224を形成し、さらに貫通孔156を形成する。
次に、改質流路部162及び改質流路部172にアルミナゾルを塗布し、更にウォッシュコート法により改質触媒を形成する。また、一酸化炭素除去流路部165及び一酸化炭素除去流路部175にアルミナゾルを塗布し、更にウォッシュコート法により一酸化炭素除去触媒を形成する。また、燃焼流路部121にアルミナゾルを塗布し、更にウォッシュコート法により燃焼触媒を形成する。
次に、上基板102及び下基板103を陽極接合法により接合する。次に、端子部107に、曲げ部を有するリード線109を抵抗溶接により接合し、端子部108に、曲げ部を有するリード線110を抵抗溶接により接合し、端子部137にリード線111を抵抗溶接により接合し、端子部138にリード線112を抵抗溶接により接合する。
次に、下基板103とヒータ封止基板120を貼りあわせ、下基板103とヒータ封止基板120の位置合わせを行い、電熱パターン106,136をヒータ封止基板120により覆う。つまり、電熱パターン106を燃焼流路部121、連通溝125,126に、端子部107を端子部収納室123に、端子部108を端子部収納室124に収容し、通し溝127,128にリード線109,110を嵌め込み、電熱パターン136をヒータ収容溝129に収容し、リード線111,112をヒータ収容溝129に連通する通し溝142,141に嵌め込む。そして、下基板103にヒータ封止基板120を陽極接合法により接合する。
次に、通し溝127,128に封着剤を注入することで、通し溝127,128の開口をシールする。通し溝141,142に封着剤を注入する場合、リード線111,112は曲げ部を有している。
次に、上基板102、下基板103、ヒータ封止基板120の接合体の右端面の開口(溝201、切欠き211、排ガス排出流路部134の端部を重なり部分等)に供給排出部材151を嵌め込み、改質燃料ガス供給用の燃料供給流路を燃料供給流路部161に接続し、1つの空気供給用の吸気流路を空気供給流路部164に接続し、もう1つの空気供給用の吸気流路を空気供給流路部132に接続し、燃焼ガス供給用の燃焼ガス供給流路を燃焼燃料供給流路部131に接続し、生成ガス排出用の生成ガス排出流路を一酸化炭素除去流路部165に接続し、燃焼排ガス排出用の排ガス排出流路を排ガス排出流路部134に接続する。
次に、断熱パッケージ150を準備し、その断熱パッケージ150の内面に赤外線反射膜を成膜する。そして、10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧された雰囲気の製造装置炉内で、上基板102、下基板103、ヒータ封止基板120の接合体を断熱パッケージ150内に収容し、供給排出部材151を断熱パッケージ150に貫通させ、リード線109,110,111,112を断熱パッケージ150に貫通させる。そして、供給排出部材151、リード線109,110,111,112の貫通箇所を封着剤でシーリングし、断熱パッケージ150内をの雰囲気を10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧させる。
複合型マイクロ反応装置100においては、リード線109,110の間に電圧を印加すると電熱パターン106が発熱し、リード線111,112の間に電圧を印加すると電熱パターン136が発熱する。このとき、燃焼ガス(例えば、水素ガス、メタノールガス、エタノールガス、ジメチルエーテルガス)を燃焼燃料供給流路部131に送り込み、空気(酸素)を空気供給流路部132に送り込むと、燃焼ガスと空気の混合気が燃焼流路部121を流動し、燃焼ガスが燃焼触媒により燃焼し、燃焼熱が発する。また、燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル)と水の混合気を燃料供給流路部161に供給すると、混合気が改質流路部162を流れているときに改質触媒により反応して水素ガスが生成され、僅かながら一酸化炭素ガスも生成される(燃料がメタノールの場合には、上記式(1)、(2)を参照。)。空気供給流路部164に空気を供給すると、水素ガス、一酸化炭素ガス、空気等が混合した状態で一酸化炭素除去流路部165を流れる。このとき、一酸化炭素ガスが一酸化炭素除去触媒により優先的に酸化する選択酸化反応が起こり、一酸化炭素ガスが除去される。そして、水素ガス等を含むガスが一酸化炭素除去流路部165から排出される。
なお、燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル)と空気(酸素)の混合気を燃料供給流路部161に供給するようにしても良い。この場合、燃料が部分酸化改質反応を起こして水素ガスが生成されるが、その場合、改質流路部162,172の壁面に担持させる触媒は部分酸化改質触媒とする。改質流路部162,172の担持させる触媒を2種類にし、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応(上記式(1))を組み合わせても良い。
複合型マイクロ反応装置100の用途について説明する。
この複合型マイクロ反応装置100は、図14に示すような発電装置900に用いることができる。この発電装置900は、燃料と水を液体の状態で貯留した燃料パッケージ901と、燃料パッケージ901から供給された燃料と水を気化させる気化器902と、複合型マイクロ反応装置100と、複合型マイクロ反応装置100の反応器101から供給された水素ガスにより電気エネルギーを生成する燃料電池903とを備える。気化器902で気化した燃料と水は燃料供給流路部161,171に流れ込み、一酸化炭素除去流路部165,175から流れ出た水素ガス等は燃料電池903の燃料極に供給され、燃料電池903の酸素極には空気が供給され、燃料電池903における電気化学反応により電気エネルギーが生成される。ここで、燃料電池903の燃料極に供給された水素ガスは全てが反応しなくてもよく、残留した水素ガスがある場合、その水素ガスが燃焼燃料供給流路部131(燃焼器145)に供給されるようにしてもよい。
このような第2実施形態においては、下基板103の下面に電熱パターン106が形成され、その電熱パターン106がヒータ封止基板120の燃焼流路部121に収容された状態でヒータ封止基板120が下基板103に接合され、通し溝127,128が密閉されているので、電熱パターン106から発した熱が燃焼流路部121内に籠もる。そのため、電熱パターン106で発した熱が、改質流路部162,172内における燃料の改質反応や、燃焼流路部121内における燃焼ガスの燃焼に効率よく用いられる。
また、電熱パターン106がヒータ封止基板120の燃焼流路部121、連通溝125,126等に収容されるので、ヒータ封止基板120と下基板103の密着度が高まる。また、通し溝127,128がヒータ封止基板120の縁まで連なってその縁において開口し、リード線109,110が通し溝127,128を通っているので、ヒータ封止基板120と下基板103の密着度がリード線109,110によって低下することがない。同様に、リード線111,112の一部や電熱パターン136がヒータ収容溝129に収容されているので、下基板103とヒータ封止基板120の密着度が高くなっている。このようにヒータ封止基板120と下基板103の密着度が高いので、電熱パターン106の熱や燃焼流路部121内の燃焼ガスが漏れない。
また、通し溝127,128の端の開口が封着剤によってシールされているので、電熱パターン106で発した熱が逃げず、その熱が改質流路部162,172内における燃料改質反応に効率よく用いられる。また、燃焼流路部121に燃焼ガスが供給されるので、電熱パターン106の熱が燃焼ガスの触媒燃焼にも利用される。特に電熱パターン106がその燃焼流路部121内において露出しているから、電熱パターン106の電熱を燃焼ガスの触媒燃焼に効率よく用いることができる。そして、通し溝127,128の端の開口が封着剤によってシールされているから、燃焼流路部121に供給された燃焼ガスがその開口からリークしない。
また、ヒータ封止基板120の縁におけるヒータ収容溝129の開口は封着剤によって閉塞されていない場合、温度変化に伴ってヒータ収容溝129内の気体が膨張・収縮しても、ヒータ収容溝129内の気圧が極端に変化しない。そのため、ヒータ封止基板120、下基板103の寿命を延ばすことができる。
なお、上記実施形態では、上基板102、下基板103のいずれにも、改質流路部,一酸化炭素除去流路部を形成したが、これに限らず、上基板102のみに改質流路部,一酸化炭素除去流路部を形成するか、或いは下基板103のみに改質流路部,一酸化炭素除去流路部を形成してもよい。
また上記実施形態では、ヒータ封止基板120を用いて、電熱パターン106,136が改質流路部172,一酸化炭素除去流路部175内に収納されたが、これに限らず、電熱パターン106,136の少なくとも一方が上基板102、下基板103の一方に設けられてもよい。この場合、上基板102、下基板103の一方又は他方には、改質流路部とは別に設けられ且つ端子部収納室123,124に相当する端子部収納室と、連通溝125,126に相当し、改質流路部内の電熱パターンを端子部収納室に収納される端子部まで引き回す連通溝と、通し溝127,128に相当する通し溝と、が設けられている。特に、改質流路部によって外部応力に対する強度が著しく弱くなる場合には、改質流路部を上基板102、下基板103の一方のみに形成し、他方のみに電熱パターンを形成すればよい。