JP4324392B2 - 霧化式スプレーガン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2液型の反応硬化型樹脂材料を塗布するのに用いる霧化式スプレーガンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリオールを主成分とする主剤とイソシアネートの硬化剤とを用いた2液型の反応硬化型樹脂材料が知られ、塗料や成形型による表皮成形の材料として用いられている。
【0003】
上記の反応硬化型樹脂材料を被塗工物に塗布するのに霧化式スプレーガンが用いられるが、該スプレーガンは、液状の主剤と硬化剤とを混合すると共に、混合された液状の樹脂材料を被塗工物に向けたノズルの先端部に導いて、先端部に設け噴出口から噴霧し、被塗工物に混合液を塗布するものである。
【0004】
従来、霧化式スプレーガン塗布の自由度を広げることを目的として、ノズルの先端部に角度に持たせ、その先端面に噴出口を設けることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、ノズルの先端部に角度を持たせて噴出口を傾斜させることにより、塗布の自由度は広がるものの、ノズルの先端がノズルの断面径方向にはみ出す形となる。このため、例えば被塗工物の窪まった凹部に塗布する場合、ノズルが入り込めず、入り込めても、必要な距離から塗布するためには、ノズルの中心を凹部の中心から横方向にずらして位置さなければならない。即ち、ノズルに対して凹部の内面が周方向に同等でない所謂異方性があることから、ノズルを回転して凹部の内面を周方向に塗布しようとすると、ノズルの先端部が凹部の内面に緩衝して塗布ができなくなったり、複数回に分けて塗布する不都合がある。
【0006】
普通、スプレーガンはロボットアームに取付けて使用しているが、凹部内でのノズルの先端部の緩衝を防ぐためには、凹部の内面の一所を塗布したらノズルを横方向に移動してから回転し、再度塗布を開始する動作を何度か繰り返す必要がある。このため、ロボットに対するティーチング動作のステップ数が増大し、また塗布のサイクルタイムが増大する等の問題が生じる。特に自動車のインパネ(インストルメントパネル)などの内装品の装飾や保護用の表皮材を表皮成形で製造する場合には、樹脂材料の塗布に使用する表皮型が入り組んだ部位を持つことが少なくないことから、ノズル先端部の緩衝の問題は重要になる。
【0007】
またノズルの先端部に角度を持たせると、混合液を供給する供給路をノズル先端部で屈曲させなければならないため、供給路内を一定の流速で流れてきた混合液にノズル先端部で流速変化が生じ、混合液をノズルの噴出口に一定の流速分布で供給できなくなる問題もある。流速分布に偏りが生じ、圧力変化がある状態で混合液をノズルの噴出口に供給して、被塗工物に塗布させると、特にエアレスで塗布を行う表皮成形の場合、その影響が大きく、被塗工物に得られる塗膜の厚さが不均一になったり、塗布方向が安定しなかったり、エア噛み込みによる塗布むら等の不具合が生じたりし、所定の塗布パターンの良好な塗膜を得ることができなくなる。
【0008】
【特許文献1】
実開昭58−178357号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記の問題に鑑み、反応硬化型樹脂材料を被塗工物の窪まった部位でも容易に塗布することが可能で、しかもノズルの噴出口に樹脂材料を流速変化を防止して供給し、塗布することを可能とした霧化式スプレーガンを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、ノズルの先端部に、主剤と硬化剤とを混合した反応硬化型樹脂材料を噴霧する噴出口を備え、ノズルの内部に、前記噴出口に前記混合した反応硬化型樹脂材料を供給する供給路を接続して形成した霧化式スプレーガンにおいて、前記噴出口を前記ノズルの先端部にノズル軸線に対して先端側へ傾斜した姿勢で、かつ前記ノズルの先端部に没した形態に形成し、そして前記供給路を前記噴出口側の側面から離間する方向に一旦屈曲させた後、前記噴出口側の側面方向に再度屈曲させて前記噴出口に連続するように連結したことを特徴とする。
【0011】
本発明の霧化式スプレーガンによれば、ノズルの先端部に噴出口を傾斜させて配置したので、基本的に塗布の自由度が広い上、噴出口をノズルの先端部内に没した形態に形成したので、ノズルの先端がノズルの断面径方向にはみ出すようなことがなく、ノズルを容易に被塗工物の窪まった凹部に入れて、ノズルの先端部を凹部内で衝突させることなく回転して、内面を周方向に塗布することができ、塗布の自由度がさらに向上する。またノズル内の樹脂材料の供給路を複数回互いに反対方向に屈曲してノズル先端部の噴出口に接続したので、ノズル軸線に対し噴出口が傾斜していても、複数回の屈曲部で樹脂材料の流速変化を噴出口に至るまでに相殺して、樹脂材料を一定流速で圧力変化なく噴出口に供給して噴霧でき、特に圧力変化の影響の大きいエアレスによる噴霧でも、厚さが均一で、塗布方向が安定し、エア噛み込みによる塗布むら等の不具合がない、所定の塗布パターンの良好な塗膜を得られ、良好な品質の表皮材を成形することができる。
【0012】
本発明によれば、前記噴出口に、複数の吐出孔を有する吹付けピースを該噴出口に没した態様で設けることができ、これにより、樹脂材料の噴霧を制御して、所望の形状の噴霧層を形成させた状態で噴霧させることが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に示す霧化式スプレーガン10Aは、ガン本体10の下部にノズル11を取り付けてなり、ロボットアーム24等にクランプして使用される。そして例えばインパネの表皮材用の成形型20の被塗工面である成形面21に、ノズル11先端部の噴出口15から直接または吹付けピースを通して反応硬化型樹脂材料を塗布し、成形面21に樹脂材料30による表皮材を成形するものである。本実施の形態は、ノズル11の噴出口15に吹付けピースを設置した例を示すが、噴出口に吹付けピースはなくてもよい。
【0015】
本実施の形態によれば、ノズル11の先端部には、図2に示すように、先端の角部に開口した短柱状の凹部12がノズル軸線に対し先端側に傾斜させた姿勢で形成され、該凹部12に噴出口15が同一の傾斜姿勢で開口し、さらに凹部12内に、円錐台状の吹付けピース16が同一の傾斜姿勢で収容されている。傾斜角度としては10°〜80°、好ましくは30°〜60°がよい。この吹付けピース16には、ピース16の外面と嵌合する円錐形の空洞を有するピースカバー13が被せられ、カバー13の外面に形成したねじ13aを凹部12の内面に形成したねじ12bに螺合することにより、ピース16がカバー13ごと凹部12内に完全に埋没するように取り付けられる。
【0016】
上記のノズル11内には、スプレーガン本体10内の主剤および硬化剤を混合する混合室に一端が接続し、他端が噴出口15に接続した円筒状の材料供給路14が設けられている。この供給路14は、ノズル11の先端部近くのA、Bの2箇所で屈曲されており、ガン本体10の混合室から来たノズル11の軸方向の流路14aに対し、屈曲部Bで吹付けピース16側の側面から離間する方向に傾斜した流路14bを接続し、該流路14bに対し、屈曲部Aで流路14bとは反対に吹付けピース16側の側面方向に傾斜した流路14cを接続した態様に形成されている。末端の流路14cは、噴出口15の傾斜姿勢と同一の傾斜を有し、噴出口15に平行(噴出口15の断面に直角)に接続されている。
【0017】
吹付けピース16は、図3に示すように、基本的に、円筒部16aとこれに続く円錐台部16bが一体に形成され、ピースカバー13の空洞に嵌合する大きさを有している。ピース16の円錐台部16bの周面には、軸線回りに複数、例えば4条の吐出孔としての螺旋溝16cが形成され、円筒部16aの底面(円筒部16aの円錐台部16bとは反対側の面)には、上記の螺旋溝16cに外周部で接続する傾斜溝16dが同数、放射状に設けられている。この傾斜溝16dは、噴出口15に面接触しており、螺旋溝16cに対する樹脂材料の受け入れ端となる。
【0018】
スプレーガン本体10の混合室からノズル11に供給路14を通って圧送されてきた反応硬化型樹脂材料は、供給路14aから供給路14bへ、該供給路14bから供給路14cへと順に経て、ノズル11先端部の噴出口15に入り、吹付けピース16の円筒部16a底面の放射状の傾斜溝16dの交差部から受け入れられる。傾斜溝16dに受け入れられた樹脂材料は、各傾斜溝16dの終端部で円錐台部16b周面の螺旋溝16cに受け渡され、各螺旋溝16cに受け渡された樹脂材料は、螺旋溝16cを通って回転を与えられながらノズル11の吹付けピース16の中心軸線方向外方に噴霧され、ピース16の軸線を中心にした円錐状の噴霧層を形成して被塗工物に塗布される。
【0019】
本スプレーガン10Aを用いて成形型によりインパネの表皮材を成形するには、先の図1に示したように、ノズル11から樹脂材料を成形型20の成形面21に塗布し、その塗布をロボットアーム24でガン10Aを操作することにより、成形型20の例えば左側から始めて右側に向けて行い、成形型20の凹部22を経て右端まで行えばよい。
【0020】
このとき、ノズル11の先端部に噴出口15をノズル軸線に対し先端部側に傾斜させて、樹脂材料をノズルの先端側に同一傾斜方向に噴霧するので、ノズルの先端面や側面に噴出口を設けて、その噴出口から樹脂材料を噴霧し、あるいはその噴出口に吹付けピースを設けて樹脂材料を噴霧する場合に比べ、ノズル11を傾斜させたりせずに広い自由度で、成形型20の成形面21に樹脂材料30を塗布することができる。
【0021】
また噴出口15および吹付けピース16の全体をノズル11の先端部内に収容したので、ノズル11の先端がノズルの断面径方向にはみ出すようなことがなく、ノズル11を成形型20の窪まった凹部22に入れることができる。このため、ノズル11に対して凹部22の内面が周方向に同等でない異方性があっても、ノズル11の先端部を凹部22内で衝突させることなく回転して、凹部22の成形面(内面)を周方向に塗布することができる。したがって、ノズルの先端部の緩衝を防ぐために、凹部の内面の一所を塗布したらノズルを横方向に移動してから回転し、再度塗布を開始する動作を繰り返す必要がなく、ロボットに対するティーチング動作のステップ数を減らし、塗布のサイクルタイムを低減することができる。
【0022】
またノズル11内の樹脂材料の供給路14を複数回互いに反対方向に屈曲して、噴出口15に平行に接続したので、噴出口15が傾斜していても、複数回の屈曲部で樹脂材料の流速変化を噴出口15に至るまでに相殺して、樹脂材料を一定流速で圧力変化なく噴出口15に供給して、吹付けピース16から噴霧することができる。特に影響の大きいエアレスによる噴霧であっても、厚さが均一で、塗布方向が安定し、エア噛み込みによる塗布むら等の不具合がない、所定の塗布パターンの良好な塗膜を得られ、良好な品質の表皮材を成形することができる。
【0023】
以上の実施の形態では、ノズル11の先端部に噴出口15をノズル軸線に対し先端側に傾斜して設け、噴出口15に吹付けピース16を同一傾斜で設けて、これら噴出口15および吹付けピース16をノズル内に没した態様で配置したが、本発明はこれに限られず、ノズル11の先端部に吹き付けピースを設置せず、噴出口だけを設けてもよい。即ち、ノズル11の先端部に噴出口15と同様な噴出口を傾斜姿勢でかつ直に開口した形態に設けてもよい。同様に、樹脂材料を一定流速で圧力変化なく噴出口に供給して噴霧でき、特に圧力変化の影響の大きいエアレスによる噴霧でも良好な樹脂材料の塗布を行って、良好な品質の表皮材を成形することができる。
【0024】
また吹付けピース16は、上述した形態のものに限られず、複数の吐出孔を有するものであればよく、各種の形態のものを使用することができる。さらに反応硬化型樹脂材料の被塗工物は、インパネ等の表皮成形型に限られず、種々の被塗工物に塗布して良好な品質の塗工物を得ることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明によれば、反応硬化型樹脂材料を被塗工物の窪まった部位でも容易に、しかもノズルの噴出口に樹脂材料を一定流速で圧力変化なく供給して塗布することができ、被塗工物に良好な品質の塗工物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の霧化式スプレーガンにより表皮成形を行うところを示す説明図である。
【図2】図1の霧化式スプレーガンのノズルの要部を示す図で、ノズルの要部の断面図(a)、ノズルの要部の分解断面図(b)、吹付けピースとピースカバーとを取り付ける前のノズルの要部を示す平面図(c)である。
【図3】図2のノズルに取り付ける吹付けピースを示す斜視図で、円錐台側から見た図(a)と円筒部側から見た図(b)である。
【符号の説明】
10A スプレーガン
10 ガン本体
11 ノズル
12 凹部
13 ピースカバー
14 供給路
14a〜14c 流路
15 噴出口
16 吹付けピース
20 成形型
21 成形面
A、B 屈曲部
Claims (2)
- ノズルの先端部に、主剤と硬化剤とを混合した反応硬化型樹脂材料を噴霧する噴出口を備え、ノズルの内部に、前記噴出口に前記混合した反応硬化型樹脂材料を供給する供給路を接続して形成した霧化式スプレーガンにおいて、
前記噴出口を前記ノズルの先端部にノズル軸線に対して先端側へ傾斜した姿勢で、かつ前記ノズルの先端部に没した形態に形成し、そして前記供給路を前記噴出口側の側面から離間する方向に一旦屈曲させた後、前記噴出口側の側面方向に再度屈曲させて前記噴出口に連続するように連結したことを特徴とする霧化式スプレーガン。 - 前記噴出口に、複数の吐出孔を有する吹付けピースを該噴出口に没した態様で設けたことを特徴とする請求項1に記載の霧化式スプレーガン。
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